(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119169
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】コアレス配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 X
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-222086(P2012-222086)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-75473(P2014-75473A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西浦 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小池 元紀
(72)【発明者】
【氏名】高畠 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松澤 宏
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−087524(JP,A)
【文献】
特開昭62−056247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/02−3/08
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層の金属箔を互いに剥離可能に密着して密着金属箔とし、この密着金属箔を補強基板に積層して密着金属箔付き補強基板を製造し、この密着金属箔付き補強基板を使用してコアレス配線基板を製造する方法であって、
前記密着金属箔の上に誘電体層と導体パターン層とを交互に積層して、これら誘電体層と導体パターン層とで構成される配線積層部を形成する積層体形成工程と、
配線積層部が形成された前記基板の外周部を切断除去して、前記密着金属箔の端面が露出した断面を切り出す周囲部切除工程と、
外周部が切断除去された基板の端部であって、密着金属箔の端面が断面に露出した部位の近傍の端部を表裏両面から加圧した後開放することにより、2層の前記金属箔の間に隙間を形成し、形成された隙間から2層の前記金属箔を互いに剥離する剥離工程と、
を備え、
加圧する前記端部が、断裁して廃棄する余白部分であることを特徴とするコアレス配線基板の製造方法。
【請求項2】
加圧する前記端部が角隅部であることを特徴とする請求項1に記載のコアレス配線基板の製造方法。
【請求項3】
加圧する前記端部の面積が8〜32mm2の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のコアレス配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記加圧が、前記基板の辺方向にローラーを転がしながら行うものであることを特徴とする請求項1に記載のコアレス配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記加圧が、配線積層部が形成された前記基板の厚みが70〜80%になるまで行うものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコアレス配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記剥離が、前記隙間が形成された端面から圧縮ガスを吹き付けることによって行うものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコアレス配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器における高機能化及び軽薄短小化の要求からICチップやLSI等の電子部品では高密度集積化が急速に進んでおり、これに伴い電子部品を搭載するパッケージ基板には、従来にも増して高密度配線化及び多端子化が求められている。最近では、このようなパッケージ基板として、コア基板を有さないコアレス配線基板が提案されている(例えば特許文献1)。コアレス配線基板は、樹脂材料(高分子材料)からなる誘電体層と導体配線層とが交互に形成された高密度配線化が可能なビルドアップ層を主体とし、コア基板を省略することで全体の配線長を短くして高周波用途に対応するものである。
【0003】
コア基板を備えないコアレス配線基板を安定的に製造する方法として、金属箔を表裏面に備えた補強基板を使用してコアレス配線基板を製造する方式が提案されている(例えば特許文献2)。
【0004】
コアレス配線基板は、誘電体層と導体配線層とが、交互に積層された配線積層部を主体
に構成されている。
【0005】
導体配線層は、Cuメッキからなる配線やパッド等の金属パターンにより構成されてい
る。
また、パッドの表面には、Ni−Auメッキが施されている。導体配線層同士はビアによって層間接続がなされており、これによって、パッド間の導通経路(信号用、電源用、グランド用)が形成されている。
【0006】
誘電体層は、主にエポキシ樹脂等の高分子材料からなり、誘電率や絶縁耐圧を調整するシリカ粉末等の無機フィラーを適宜含んでいる。このうち、導体配線層に挟まれた誘電体層は、ビルドアップ樹脂絶縁層もしくはビア層と呼ばれ、導体配線層間を絶縁するとともに、層間接続のためのビアが貫通形成されている。他方、最表面にあたる誘電体層は、ソルダーレジスト層と呼ばれ、パッドを露出させるための開口部が形成されている。また、ビルドアップ樹脂絶縁層は、配線積層部の内部に生じる応力を緩和するために、例えばソルダーレジスト層の高分子材料よりもヤング率の低い高分子材料を用いることができる。
【0007】
最表面誘電体層がなす主面は、ICチップやLSI等の電子部品の搭載面とされ、パッドには、電子部品をフリップチップ接続するための半田バンプ(Sn/Pb等)が形成されている。他方、最下面誘電体層がなす裏面は、外部基板への接続面とされ、パッドは、ボールグリッドアレイ(BGA)等によって外部基板へ接続するための裏面ランドとして利用される。
【0008】
以上の如く構成されるコアレス配線基板は、中央の半田バンプを取り囲む形で金属製の補強枠(スティフナー)が主面に接着される。スティフナ−の内側は電子部品の搭載部となり、電子部品が半田バンプにフリップチップ接続されて、電子部品と主面の隙間(半田バンプの周り)にガラスフィラー入りエポキシ樹脂等からなるアンダーフィル材が充填形成されることで電子装置が構成される。
【0009】
またこのコアレス配線基板の製造方法では、補強基板上の表面に剥離可能な金属箔が配置されてなる金属箔付き補強基板の上に、金属箔を覆い囲む形で樹脂シートを形成して配線
基板の主面とし、さらに導体配線層と樹脂シートを交互に積層して、配線基板となるべき配線積層部を形成した後、配線積層部と補強基板を金属箔部分から剥離する。補強基板から剥離した配線積層部に付着している金属箔をエッチング等により除去することで、コアレス配線基板となる配線積層体が得られる。
【0010】
前記補強基板上の金属箔は、金属メッキを介して2枚の銅箔を密着させた金属箔密着層を構成しており、2枚の銅箔が補強基板側と配線積層部側にそれぞれ付着した状態で剥離する形態となっている。なお、更に2枚の銅箔の間に極薄い膜厚で接着剤層が形成される場合もある。
【0011】
ところが金属箔の界面で剥離する工程は、有効な装置化がされておらず、作業員の手作業による工程とされている場合が多く、量産化対応が遅れている。
特に剥離開始の隙間をつくる際、基板角端部の金属箔密着面を剥離させる部分では、薄い刃物状のもの、例えばカッターナイフ等で正確に剥離面に差し入れて開く作業となるため作業のタクトタイムが長くなる上に、作業者の怪我の原因にもなりやすい。また、剥離工程を手作業で行うと、剥離時に非定常的に積層配線部を反らせることで、内部の配線となるべき金属パターンが破断する不良発生の原因となるなどのため装置化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−186265号公報
【特許文献2】特許第4542201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、安定した品質で量産可能なコアレス配線基板の製造方法を提供することを課題とする。更に具体的には、金属箔の界面で剥離する工程を自動化することが可能なコアレス配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、2層の金属箔を互いに剥離可能に密着して密着金属箔とし、この密着金属箔を補強基板に積層して密着金属箔付き補強基板を製造し、この密着金属箔付き補強基板を使用してコアレス配線基板を製造する方法であって、
前記密着金属箔の上に誘電体層と導体パターン層とを交互に積層して、これら誘電体層と導体パターン層とで構成される配線積層部を形成する積層体形成工程と、
配線積層部が形成された前記基板の外周部を切断除去して、前記密着金属箔の端面が露出した断面を切り出す周囲部切除工程と、
外周部が切断除去された基板の端部であって、密着金属箔の端面が断面に露出した部位の近傍の端部を表裏両面から加圧した後開放することにより、2層の前記金属箔の間に隙間を形成し、形成された隙間から2層の前記金属箔を互いに剥離する剥離工程と、
を備え
、
加圧する前記端部が、断裁して廃棄する余白部分であることを特徴とするコアレス配線基板の製造方法
、である。
【0016】
請求項
2に記載の発明は、加圧する前記端部が角隅部であることを特徴とする請求項
1に記載のコアレス配線基板の製造方法である。
【0017】
請求項
3に記載の発明は、加圧する前記端部の面積が8〜32mm
2の範囲であることを特徴とする請求項
2に記載のコアレス配線基板の製造方法である。
【0018】
請求項
4に記載の発明は、前記加圧が、前記基板の辺方向にローラーを転がしながら行うものであることを特徴とする請求項1に記載のコアレス配線基板の製造方法である。
【0020】
請求項
5に記載の発明は、前記加圧が、配線積層部が形成された前記基板の厚みが70〜80%になるまで行うものであることを特徴とする請求項1〜
4のいずれかに記載のコアレス配線基板の製造方法である。
【0021】
請求項
6に記載の発明は、前記剥離が、前記隙間が形成された端面から圧縮ガスを吹き付けることによって行うものであることを特徴とする請求項1〜
5のいずれかに記載のコアレス配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるコアレス配線基板製造方法を用いることにより、安定した品質で効率よく量産することが可能となる。また、作業者の怪我に対するリスクが回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】・・・本発明によるコアレス配線基板の一例を示す概略断面図。
【
図2】・・・本発明によるコアレス配線基板の一例を示す概略平面図。
【
図3】・・・本発明によるコアレス配線基板の製造方法の一例を示す概略断面図。
【
図4】・・・本発明によるコアレス配線基板の製造方法の一例を示す概略断面図。
【
図5】・・・本発明によるコアレス配線基板の製造方法の一例を示す概略断面図。
【
図6】・・・本発明によるコアレス配線基板の製造方法の実施の一例を示す概略俯瞰図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、
図1〜
図6を参照しながら詳しく説明する。
【0025】
<コアレス配線基板の製造方法>
本発明に係るコアレス配線基板の製造方法の実施形態を説明する。本発明のコアレス配線基板の製造方法は、簡略に説明すると、補強基板1上に配線積層部2を周知のビルドアップ法によって形成し(
図1および2参照)、その後、配線積層部2を補強基板1から剥離することで製造を容易とするものである(
図4および5参照)。また、補強基板1の表裏両面に同時に配線積層部2を形成できるので量産が容易である。以下、各工程について詳細な説明を行う。
【0026】
(工程1:下地樹脂層形成工程)
下地樹脂層形成工程では、製造時の補強のための補強基板1上に下地樹脂層1aを形成する(
図1参照)。補強基板1の材質は特には限定されないが、例えば耐熱性樹脂板(例えばビスマレイミド−トリアジン樹脂板)や繊維強化樹脂板(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂)等を用いることができる。また、下地樹脂層1aは、後述する他層の樹脂層と同様に、主にエポキシ樹脂等の高分子材料からなる樹脂シートを真空ラミネートすることによって補強基板の主面に形成される。なお、本工程において下地樹脂層1aは補強基板1の表裏両面に同時に形成される。なお、
図3以降では下地樹脂層1aを省略する。
【0027】
(工程2:密着金属箔配置工程)
密着金属箔配置工程では、密着金属箔3aを下地樹脂層1a上に主面に包含される形で配置する。密着金属箔3aは、2枚の金属箔が、例えば薄いCrメッキを介して密着したものであり、その界面にて剥離可能なものである。また、密着金属箔3aは、金属箔の表面粗化処理によって表面が粗化されている。金属箔の表面粗化処理は、例えば無機酸と金属酸化剤を含む粗化剤等を用いて行うことができる。
なお、金属箔の表面粗化処理が施された密着金属箔3aの表面粗度によりコアレス配線基板のソルダーレジスト層の表面粗度が決定される。
【0028】
(工程3:誘電体層形成工程)
第1誘電体層形成工程では、密着金属箔3aを覆い囲む形で樹脂層を形成して、その樹脂層と下地樹脂層の間に密着金属箔3aを封止する。ここで、樹脂層は、コアレス配線基板の主面をなす誘電体層となるべき部分を密着金属箔3a上に含むものである。また、樹脂層は、樹脂シートを真空ラミネートすることにより形成される。このように、密着金属箔3aが樹脂層と下地樹脂層の間に封止され、且つ、樹脂層が表面粗化された密着金属箔3aに密着すること(アンカー効果)で、以後の工程で密着金属箔3aが樹脂層及び下地樹脂層から剥がれることなく配線積層部2を良好に得ることができる。
【0029】
(工程4:積層体形成工程)
積層体形成工程では、樹脂層上に導体配線パターン及び誘電体層である樹脂層を交互に積層して配線積層部2を得る。このような導体配線パターンと樹脂層の積層は、周知のビルドアップ法により行うことができる(補強基板の両面にビルドアップすることができる)。なお、配線積層部2は、コアレス配線基板となる配線パターン部6のブロックが複数個配列したものとして構成される(
図2参照)。
【0030】
(工程5:周囲部切除工程)
周囲部切除工程では、配線積層部2とその周囲部との境界に沿って補強基板1ごと切断して周囲部を除去する。境界は密着金属箔3aの外縁に沿って(若しくはそれよりも内側に)存在し、切断により周囲部が除去されると、樹脂層に封止されていた密着金属箔3aの外縁(外縁側が切除された場合は新たな外縁)が現れる。すなわち、周囲部の除去により樹脂層と下地樹脂層の密着部分が失われるので、配線積層部2と補強基板1(及び下地樹脂層)とは、積層方向において密着金属箔3aのみを介して連接した状態となる。
【0031】
(工程6:剥離工程)
剥離工程では、配線積層部2と補強基板1とを密着した密着金属箔3aを構成する2層の金属箔3の界面にて剥離する。
【0032】
(工程7:金属箔除去工程)
金属箔除去工程では、配線積層部2に付着している金属箔3を除去して誘電体層を露呈させる。金属箔3の除去は、例えば金属が銅である場合は、過酸化水素水−硫酸系のエッチング液を用いた化学エッチングにより行うことができる。ここで、金属箔3が誘電体層と密着する面は上述のように粗化処理が施されているので、金属箔3の除去により現れる誘電体層の主面も、金属箔3と同等の粗度を有するものとなる。このとき、誘電体層の主面の粗度が低いと製造後のコアレス配線基板の主面におけるアンダーフィル材の流れ性が不良となってボイド等を発生させるおそれがある。また、アンダーフィル材と誘電体層との密着性も悪くなる。他方、誘電体層の主面の粗度が高すぎてもNi/Auメッキ時にメッキダレ不良が発生したり、アンダーフィル材の流れ性が過度となり充填性が悪くなるおそれがある。
【0033】
(工程8:レーザ開口工程)
レーザ開口工程では、レーザによって誘電体層に開口を穿設する。開口は、誘電体層下に
形成されたパッドに当たる位置に穿設され、その底部にはパッドが露出する。このようなレーザによる開口の穿設には、CO
2レーザ、UVレーザやYAGレーザ等が用いられる。
【0034】
(工程9:デスミア工程)
デスミア工程では、開口底(パッド表面)の樹脂残渣(スミア)を除去する。
【0035】
(工程10:後工程)
デスミア工程(工程9)後には、パッドの表面にNi−Auメッキが施される。そして、配線積層部2は、コアレス配線基板となるブロック毎に切り分けられ、パッドには半田バンプ(Sn/Pb等)が形成される。その後、スティフナ−が主面に接着され、電気的検査、外観検査等の所定の検査を経てコアレス配線基板が完成する。
【0036】
<工程6剥離工程の詳細な説明>
前述のコアレス配線基板の製造方法のうち、特に剥離工程の詳細な実施形態について説明する。
【0037】
図1に示すような補強基板1上に配線積層部2が形成された基板に対して、その基板端部を一時的に加圧することにより、補強基板1と配線積層部2を容易に剥離することが出来る。
具体的には、
図3に示すように、基板端部を一対の加圧ブロック7ではさみ、加圧ブロック7に基板端部を圧縮する方向(
図3の矢印の方向)に加圧し、基板端部を圧縮変形させる。すると、補強基板1と配線積層部2は、構成材料が異なるので圧縮変形の度合いが異なるため、補強基板1と配線積層部2との間でズレが生じて、密着金属箔3aを構成する2枚の金属箔3の界面から剥離することになる。その後、
図4に示すように、加圧ブロック7を基板端部から外すと、圧縮変形時に剥離した密着金属箔3aの界面に隙間8が生じるので、この隙間8を剥離のキッカケにすることにより補強基板1から配線積層部2を簡易に剥離することが出来る。
【0038】
なお、
図2に示すように配線積層部2は、コアレス配線基板として製品になる配線パターン部6が複数個配列された周囲に、後工程(工程10)にて配線パターン部6を製品サイズに断裁する際に廃棄される余白部分4が構成されているが、その余白部分4のうち基板端部に当たる部分を
図3に示すように、一対の加圧ブロック7にて、図中の矢印の方向に一時的に加圧する。配線パターン部6にかかる部分を加圧した場合は積層された配線間を金属メッキで導通させているビアの部分の断線が発生するため、配線パターン部を加圧しないように実施する必要がある。
【0039】
上記加圧ブロック7の形態としては、平行に相対する加圧面を有する1対の金属ブロックを使用することができる。金属ブロックの加圧面で基板端部を圧縮する機構としては、万力の様なネジや歯車などを利用した減速送り機構や油圧・空圧シリンダー、梃子による加圧などが考えられるが、基板端部を圧縮変形させられる力をかけられる機構であればこれらに限定されるものではない。
【0040】
因みに、基板を圧縮変形するには、実測で20〜30kgf/mm
2程度の圧力が必要である。そのため、加圧する面積を大きくしすぎると、加圧圧縮に必要な力が大きくなりすぎてしまう。加圧面積32mm
2に対して800kgf程度の加圧程度までであれば、比較的簡易な装置で加圧処理が可能である。
【0041】
逆に加圧面積を小さくしすぎると、加圧処理にて生じる隙間8が小さすぎて、これをキッカケとして補強基板1と配線積層部2を剥離するのが困難になるため、少なくとも8mm
2以上の加圧面積が適当である。
【0042】
また、
図2に示す斜線で示した基板端角部5を加圧圧縮して隙間8を形成すると、加圧面積に対して、基板端面への露出する隙間8が大きくなるため、これをキッカケとして補強基板1と配線積層部2の剥離がより容易になる。
【0043】
また、加圧ブロック7の別の形態としては、
図6に示すようにロール状のブロックで基板端部をはさんで加圧しながら、ロール状加圧ブロック7aを回転させて基板端の辺に沿って移動する方式も考えられる。この方式によれば、加圧圧縮に大きな力を必要とせずに、広い隙間8を得ることが出来る。
【0044】
なお、基板端部を加圧圧縮する目安として、補強基板1と配線積層部2と密着金属箔3aを合わせた基板の総厚に対して、70〜80%の厚みになるまで圧縮するのが適当である。圧縮量がこれより少ないと、基板の変形が不十分で剥離が発生しない場合がある。逆にこれよりも圧縮が過剰となると、基板端部の加圧部分が加圧圧縮により破損、脱落してしまう可能性が高くなる。例えば、加圧前の総厚が0.5mmの基板に対して、総厚が0.4mmになるまで加圧して圧縮すると、基板の破損も無く隙間8を形成することが出来る。
【0045】
次に基板端部に形成した隙間8をキッカケとして、補強基板1と配線積層部2を剥離する手段としては、隙間8の上下の補強基板1の端部と配線積層部2の端部をそれぞれ保持して、隙間8を広げていく方法が考えられるが、この場合、配線積層部2が反りすぎると、内部の配線の導通部、特にビアの部分が破損する可能性がある。
【0046】
そこで、
図4および5に示すように、隙間8に向かって、基板端面側より圧空ノズル9から圧縮ガスを吹き付けることにより、圧縮ガスが隙間8の内部に送り込まれて押し広げるため、配線積層部2に大きな反りや歪みを与えることなく、補強基板1から剥離することが出来き、自動化した場合も、複雑な駆動部を必要とせずに安定した剥離処理が可能となり量産装置化も容易である。この時の圧縮ガスは、異物混入が少なく不活性なガスが望ましく、特にCDA(クリーンドライエア)、窒素、アルゴン等を好適に使用することができる。
【0047】
なお、金属箔3および密着金属箔3aの金属としては、銅、アルミニウム、銀、などを使用することができるが、とりわけ銅を好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・補強基板
2・・・配線積層部
3・・・金属箔
3a・・・密着金属箔
4・・・余白部分
5・・・基板角端部
6・・・配線パターン部
7・・・加圧ブロック
7a・・・ロール状加圧ブロック
8・・・隙間
9・・・圧空ノズル