(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119175
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】プリント配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
H05K1/02 N
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-229772(P2012-229772)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-82360(P2014-82360A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】永渡 麻衣子
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−191346(JP,A)
【文献】
特開2007−123741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00−1/02
H05K 3/46
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の表面に一対の信号線からなる信号線対を有する第1の配線層が形成され、前記絶縁基板の裏面に前記信号線対に対応するグランドプレーンを有する第2の配線層が形成されたプリント配線基板であって、
前記第1の配線層において、接地配線からなる一対の仕切片間に形成された、前記信号線対の端子パッド部は、空隙を介して互いに隣接配置された一対の端子パッドを含み、
前記第2の配線層における前記信号線対の前記端子パッド部に対向する領域に、前記端子パッド部の中心線を通り前記絶縁基板に垂直な中心面に関して対称でありかつ前記一対の仕切片間の間隔よりも幅が狭い切欠部が形成されるとともに、この切欠部の、前記空隙に対向する領域に、前記中心面に関して対称な接地片が形成されていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
差動インピーダンス及びコモンインピーダンスがそれぞれ基準インピーダンスに整合するように、前記接地片の幅又は前記切欠部の幅が調整されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記絶縁基板が柔軟性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板の表面に一対の信号線からなる信号線対を含む信号線が形成されたプリント配線基板に関し、特に、信号線対の端子パッド部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、標準機能としてカメラ機能を備えた、携帯電話、携帯型ゲーム端末、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯端末が普及している。このような携帯端末のカメラ機能は、カメラモジュールと呼ばれる小型の電子部品によって実現される。
【0003】
図1は、一般的なカメラモジュール100の構成を示す図である。
図1に示すように、カメラモジュール100は、ベースユニット101、ベースユニット101に実装された撮像素子に被写体の像を結像させるレンズユニット102、レンズユニット102を光軸方向に移動させるアクチュエータユニット103等を備える。
ベースユニット101は、プリント配線基板(PWB:printed wiring board、以下、センサ基板)101aの部品実装面に、撮像素子、CSP(Chip Size Package)部品、回路部品等のチップ部品が実装された構成を有する。撮像素子は、レンズユニット102により受光面上に結像した被写体像の光信号を電気信号(画像データ)に変換して出力する。
【0004】
この画像データは、センサ基板101aの部品実装面の裏面側に接続されたフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuits)101bを介して携帯端末本体側に伝送される。最近では、画像の高画素化(画像データの大容量化)が著しく、これに対応すべく、フレキシブルプリント基板101bには高速信号伝送に適した差動伝送方式(一対の信号線(差動信号線)を伝送路として画像データを伝送する方式)が用いられる。
差動信号線対を有するプリント配線基板に関する先行技術文献としては、例えば特許文献1がある。
【0005】
ところで、プリント配線基板において、伝送路(信号線)内にインピーダンスの不連続点があると、そこで電気信号が反射するため、電圧波形が乱れ、良好な信号伝送が阻害されてしまう。この問題は、高速で信号伝送する場合に顕著となる。そこで、差動信号線対を有するプリント配線基板においては、差動信号線対にインピーダンスの不連続点が生じないように、配線パターンの設計が行われる。
【0006】
図2に示すように、プリント配線基板がマイクロストリップ構造を有する場合、絶縁基板(誘電体)の厚さt2及び比誘電率ε
r、差動信号線の厚さt1、幅W、及び間隔Sなどの設計仕様によって、差動信号線対の特性インピーダンス(以下、差動インピーダンス)Z
diffを調整することができる。なお、マイクロストリップ構造とは、絶縁基板の一方の面に差動信号線対が形成され、他方の面に差動信号線対に対向してグランドプレーンが形成された構造である。
【0007】
ここで、差動信号線対を構成する2本の差動信号線は、それぞれ電子部品を実装するための端子パッドを両端に有しており、この端子パッド間が導体パターン(以下、接続配線部)で接続される。そして、差動信号線の厚さt1、絶縁基板の厚さt2及び比誘電率ε
rは、差動信号線対の接続配線部における差動インピーダンスが所望の値(基準インピーダンス)となることを優先して設定される。そのため、差動信号線対の端子パッドの部分(以下、端子パッド部)の差動インピーダンスは、端子パッドの幅W、又は端子パッド間の間隔Sによって調整されることとなる。
【0008】
しかしながら、端子パッドは、実装される電子部品と電気的に接続する部分であり、パッドのサイズや大きさの設定に制約があるため、差動インピーダンスの不連続が生じやすい。一般に、差動信号線の端子パッドは、接続配線部よりも幅広に形成されるが、この場合、端子パッド部の差動インピーダンスは接続配線部の差動インピーダンスよりも小さくなってしまう。そのため、プリント配線基板において、差動信号線対の端子パッド部に対向する領域の導体パターンを工夫することで、端子パッド部の差動インピーダンスを調整することが試みられている(
図3〜6参照)。
【0009】
図3〜6は、従来のプリント配線基板における差動信号線対の端子パッド部の一例を示す図である。
図3に示すプリント配線基板30では、絶縁基板11の裏面(差動信号線対12が形成される面と反対の面)に形成されるグランドプレーン13が、差動信号線対12の端子パッド部12aに対応する領域にも形成されている。
図4に示すプリント配線基板40では、絶縁基板11の裏面に形成されるグランドプレーン13の、端子パッド部12aに対向する領域に切欠部13bが形成されている。また、それぞれの端子パッド121a、122aに対向して、端子パッド121a、122aよりも一回り大きいパッド18がグランドプレーン13と離間して形成されている(パッド18は電気的に浮いている)。
図5に示すプリント配線基板50では、絶縁基板11の裏面に形成されるグランドプレーン13の、端子パッド部12aに対向する領域に切欠部13bが形成されている。
図6に示すプリント配線基板60では、絶縁基板11の裏面に形成されるグランドプレーン13の、端子パッド部12aに対向する領域にメッシュ部13cが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4371766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、
図3、4に示すプリント配線基板30、40のように、端子パッド部12aに対向する領域に導体パターン(グランドプレーン13又はパッド18)が形成されている場合、差動インピーダンスが目標とする基準インピーダンスよりも大きくなりやすい。
逆に、
図5に示すプリント配線基板50のように、端子パッド部12aに対向する領域に導体パターンが形成されない場合、差動インピーダンスが目標とする基準インピーダンスよりも小さくなりやすい。
また、
図6に示すプリント配線基板60のように、端子パッド部12aに対向する領域における導体パターンをメッシュ状に形成した場合、極小な端子パッド121a、122aに対して最適なメッシュ条件の配線ピッチが粗くなる。そのため、端子パッド部12aを信号伝送方向にマクロ的に観察すると、差動インピーダンスは不連続になる。
【0012】
このように、従来のプリント配線基板30〜60においては、差動信号線対の端子パッド部12aの差動インピーダンスを容易に整合させることができない。そのため、端子パッド部12aがインピーダンスの不連続点となり、この部分で電気信号が反射してしまうため、高速信号伝送に対応することが困難となる。
【0013】
また最近では、携帯端末の分野において、画像データの伝送に用いられる差動信号線対を利用して、制御信号をコモンモードで伝送できることが要求されている。この場合、信号線対のパッド部において、差動インピーダンスが基準インピーダンス(例えば100Ω)に整合するとともに、コモンインピーダンスも基準インピーダンス(例えば25Ω)に整合することが必要となる。
【0014】
しかしながら、
図3〜5に示すような従来のマイクロストリップ構造では、差動インピーダンスの整合とコモンインピーダンスの整合を両立させ、それぞれの基準インピーダンスからのずれを例えば10%以内に抑えることは極めて困難である。
例えば、
図5に示すプリント配線基板50においては、グランドプレーン13の切欠部13bの幅gを変化させることにより、差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを調整することができるが、切欠部13bの幅gの変化に対する差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの変化量が急峻なため、製造ばらつきの影響を受けやすくなる(
図17参照)。
【0015】
本発明の目的は、信号線対の端子パッド部の差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの整合を容易に図ることができ、高速信号伝送に好適なプリント配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るプリント配線基板は、絶縁基板の表面に一対の信号線からなる信号線対を有する第1の配線層が形成され、前記絶縁基板の裏面に前記信号線対に対応するグランドプレーンを有する第2の配線層が形成されたプリント配線基板であって、
前記第1の配線層において、接地配線からなる一対の仕切片間に形成された、前記信号線対の端子パッド部は、空隙を介して互いに隣接配置された一対の端子パッドを含み、
前記第2の配線層における前記信号線対の
前記端子パッド部に対向する領域に、前記端子パッド部の中心線を通り前記絶縁基板に垂直な中心面に関して対称
でありかつ前記一対の仕切片間の間隔よりも幅が狭い切欠部が形成されるとともに、この切欠部
の、前記空隙に対向する領域に
、前記中心面に関して対称な接地片が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、信号線対の2つの端子パッドのそれぞれと接地片間に静電容量が形成されるので、接地片の幅等を調整することで静電容量を変化させ、差動インピーダンス及びコモンインピーダンスをそれぞれ基準インピーダンスに整合させることができる。したがって、信号線対の端子パッド部の差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの整合を容易に図ることができ、高速信号伝送に好適なプリント配線基板が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一般的なカメラモジュールの構成を示す図である。
【
図2】マイクロストリップ構造を有するプリント配線基板の断面図である。
【
図3】従来のプリント配線基板における差動信号線対の端子パッド部の一例を示す図である。
【
図4】従来のプリント配線基板における差動信号線対の端子パッド部の他の一例を示す図である。
【
図5】従来のプリント配線基板における差動信号線対の端子パッド部の他の一例を示す図である。
【
図6】従来のプリント配線基板における差動信号線対の端子パッド部の他の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態に係るプリント配線基板の表面側の配線層(第1の配線層)を表面視で示す図である。
【
図8】実施の形態に係るプリント配線基板の裏面側の配線層(第2の配線層)を表面視で示す図である。
【
図9】プリント配線基板における信号線対の一方の端子パッド部の構造を示す図である。
【
図10】プリント配線基板における信号線対の一方の端子パッド部の変形例を示す図である。
【
図11】実施例(g/L=0.6)における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを示す図である。
【
図12】実施例(g/L=0.6)における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの基準インピーダンスからのずれを示す図である。
【
図13】実施例(g/L=0.8)における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを示す図である。
【
図14】実施例(g/L=0.8)における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの基準インピーダンスからのずれを示す図である。
【
図15】実施例(g/L=0.9725)における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを示す図である。
【
図16】実施例(g/L=0.9725)における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの基準インピーダンスからのずれを示す図である。
【
図17】比較例における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを示す図である。
【
図18】比較例における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの基準インピーダンスからのずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図7は本発明の一実施の形態に係るプリント配線基板10の表面側の配線層(第1の配線層)を表面視で示す図である。
図8は、実施の形態に係るプリント配線基板10の裏面側の配線層(第2の配線層)を表面視で示す図である。
実施の形態のプリント配線基板10は、例えば
図1に示すカメラモジュール1のフレキシブルプリント基板101bとして用いられる。
【0020】
図7、8に示すように、プリント配線基板10は、絶縁基板11と、絶縁基板11の表面側に形成される第1の配線層10Aと、絶縁基板11の裏面側に形成される第2の配線層10Bとを備える。
絶縁基板11は、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルム等の柔軟性を有する材料で構成される。絶縁基板11は帯状に形成され、長手方向一端側(
図7、8では右側)にカメラモジュール1のセンサ基板101aとの接続部(端子パッド群A1、A2)が形成され、長手方向他端側(
図7、8では左側)にコネクタとの接続部(端子パッド群B1、B2)が形成される。
【0021】
第1の配線層10Aは、
図7に示すように、5対の信号線対12、その他の信号線15(例えばCMOSセンサ制御用のシングルエンド信号線)、及び信号線対12とその他の信号線15の周辺に離間して敷設される接地配線14を有する。
第2の配線層10Bは、
図8に示すように、絶縁基板11の略全面に敷設されるグランドプレーン13を有する。
【0022】
信号線対12は、2本の信号線121、122で構成され、一端側にセンサ基板101aを実装するための端子パッド部12aを有し、他端側にコネクタを実装するための端子パッド部12bを有する。端子パッド部12aを構成する2つの端子パッド121a、122aと端子パッド部12bを構成する2つの端子パッド121b、122bが、それぞれ接続配線部12cで接続される。
【0023】
接続配線部12cは、
図2に示すマイクロストリップ構造を有する。一つの信号線対12の接続配線部12c(121c、122c)は、略同一の配線長を有し、できるだけ近接して配線される。接続配線部12cにおける差動インピーダンス及びコモンインピーダンスがそれぞれ所望の値(基準インピーダンス)となるように、信号線121、122の厚さt1、絶縁基板11の厚さt2及び比誘電率ε
rが設定される。
接続配線部12cの一端側には端子パッド部12aが形成される。接続配線部12cの他端側は、絶縁基板11に形成されためっきスルーホールを介して第2の配線層10Bに引き出され、端子パッド部12bが形成される。
【0024】
端子パッド部12aは、接続配線部12cから絶縁基板11の長手側縁部11aに向かって延在するように、第1の配線層10Aに形成される。端子パッド部12aは、接続配線部12cよりも幅広の矩形状に形成される。5対の信号線対12のそれぞれの端子パッド部12aは、絶縁基板11の長手側縁部11aに沿って1列に配置される(端子パッド群A1)。また、端子パッド群A1において、隣接する端子パッド部12a、12aは、接地配線14の仕切片14aにより分断される。
端子パッド群A1は、絶縁基板11の他方の長手側縁部11bに沿って形成された、その他の信号線15の端子パッド群A2とともに、センサ基板101aの接続端子と電気的に接続される。
【0025】
端子パッド部12bは、接続配線部12cから絶縁基板11の短手側縁部11cに向かって延在するように、第2の配線層10Bに形成される。端子パッド部12bは、接続配線部12cよりも幅広の矩形状に形成される。5対の信号線対12のそれぞれの端子パッド部12bは、絶縁基板11の短手側縁部11cに沿って2列に配置される(端子パッド群B1)。また、端子パッド群B1において、隣接する端子パッド部12b、12bは、グランドプレーン13の仕切片13aにより分断される。
端子パッド群B1は、端子パッド群B1と同様に絶縁基板11の短手側縁部11cに沿って2列に配置された、その他の信号線15の端子パッド群B2とともに、コネクタの接続端子と電気的に接続される。
【0026】
図9は、信号線対12の一方の端子パッド部12aの構造を示す図である。
図9(a)は端子パッド部12aの断面図であり、
図9(b)は端子パッド部12aの平面図である。
図9に示すように、プリント配線基板10では、信号線対12の端子パッド部12aに対向する第2の配線層10B内の領域に切欠部13bが形成されるとともに、この切欠部13bに端子パッド部12aと平行に延在する接地片16が形成される。具体的には、切欠部13b及び接地片16は、端子パッド部12aの中心線を通り絶縁基板11に垂直な中心面Pに関して対称となるように形成される。
【0027】
信号線対12の2つの端子パッド121a、122aのそれぞれと接地片16及びグランドプレーン13間に静電容量が形成されるので、接地片16の幅w又は切欠部13bの幅gを調整することで静電容量を変化させることができる。したがって、設計の自由度が向上するので、端子パッド部12aの差動インピーダンス及びコモンインピーダンスをそれぞれ基準インピーダンスに容易に整合させることができる。すなわち、接地片16の幅wや切欠部13bの幅gを適宜設定することで、信号線対12の端子パッド部12aの差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを最適化することができる。また、端子パッド部12aを信号伝送方向にマクロ的に観察してみても、差動インピーダンス及びコモンインピーダンスの不連続点は存在しない。
【0028】
このように、信号線対12の端子パッド部12aの差動インピーダンス及びコモンインピーダンスをそれぞれ基準インピーダンスに整合させることで、高速信号伝送時の反射・減衰が小さくなるので、プリント配線基板10は高速信号伝送用のプリント配線基板として好適である。また、プリント配線基板10は、高速インターフェースの規格に容易に対応することができる。
【0029】
また、切欠部13b及び接地片16は、2つの端子パッド121a、122a間の中心線を通り、絶縁基板11に垂直な中心面Pに関して対称に形成されているので、信号線対12の2つの端子パッド121a、122aのそれぞれと接地片16間に同じ静電容量が形成され、また2つの端子パッド121a、122aのそれぞれとグランドプレーン13間にも同じ静電容量が形成される。したがって、端子パッド部12aの差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを調整するための設計が容易になる。
【0030】
なお、信号線対12の他方の端子パッド部12bも同様に構成される。すなわち、信号線対12の端子パッド部12bに対向する第1の配線層10A内の領域に、接地片17が形成される。これにより、信号線対12の他方の端子パッド部12bのインピーダンス整合が図られる。
【0031】
また、
図9に示すプリント配線基板10では、端子パッド部12aを構成する2つの端子パッド121a、122a間の領域に対向して接地片16が形成されているが、
図10に示すプリント配線基板20のように、2つの端子パッド121a、122aに対向する領域に跨がって接地片16を形成するようにしてもよい。
【0032】
[実施例]
実施例では、プリント配線基板10において、接地片16の幅w又は切欠部13bの幅gを変化させたときの端子パッド部12aにおける差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを検証した。
前提となる設計事項として、絶縁基板11の厚さは0.025mm、比誘電率ε
rは3.1とした。また、仕切片14a、14aの間隔Lは1.09mmとした。また、端子パッド121a、122aの幅は0.2mm、厚さは0.02mmとし、端子パッド121a、122aの間隔、及び端子パッド121a、122aと仕切片14a、14aとの間隔は等間隔(0.23mm)とした。
そして、切欠部13bの幅gを0.654mm(g/L=0.6)、0.872mm(g/L=0.8)、1.06mm(g/L=0.9725)とした場合のそれぞれについて、接地片16の幅wを変化させたときの差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを計算した。
なお、差動モードの基準インピーダンスは100Ωとし、コモンモードの基準インピーダンスは25Ωとした。
【0033】
[比較例]
比較例では、
図5に示すプリント配線基板50において、切欠部13bの幅gを変化させたときの端子パッド部12aにおける差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを検証した。前提となる設計事項は実施例と同じとした。
【0034】
実施例における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを
図11、13、15に示し、基準インピーダンスからのずれを
図12、14、16に示す。また、比較例における差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを
図17に示し、基準インピーダンスからのずれを
図18に示す。
【0035】
図18に示すように、比較例の場合は、切欠部13bの幅gをどのように調整しても、差動インピーダンスとコモンインピーダンスを、基準インピーダンス±10%以内とすることはできない。なお、比較例においても、他の設計事項(端子パッド121a、122aの幅、間隔等)を変えることで、差動インピーダンスとコモンインピーダンスを、基準インピーダンス±10%以内とすることはできるかもしれない。しかし、
図18に示すようにパターン幅(切欠部13bの幅g)の変化に対するインピーダンスの変化量が急峻であるため、差動インピーダンスとコモンインピーダンスを同時に基準インピーダンスに整合させることができる範囲は極めて狭く、製造ばらつきの影響を受けやすい。
【0036】
これに対して、
図12に示すように、g/L=0.6の場合は、接地片16の幅wを調整してw/gが0.15〜0.25とすることにより、差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを、それぞれ基準インピーダンス±10%以内とすることができる。
また、
図14に示すように、g/L=0.8の場合は、接地片16の幅wを調整してw/gが0.25〜0.29とすることにより、差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを、それぞれ基準インピーダンス±10%以内とすることができる。
また、
図16に示すように、g/L=0.8の場合は、接地片16の幅wを調整してw/gが0.22〜0.24とすることにより、差動インピーダンス及びコモンインピーダンスを、それぞれ基準インピーダンス±10%以内とすることができる。
【0037】
このように、プリント配線基板10によれば、差動インピーダンスとコモンインピーダンスが同時に基準インピーダンスに整合するように設計することが容易となる。
また、
図11、13、15に示すように、パターン幅(接地片の幅w、切欠部13bの幅g)の変化に対するインピーダンスの変化量が比較例よりも緩やかとなるため、製造ばらつきの影響が低減される。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0039】
例えば、本発明は、硬質の絶縁基板を用いたリジッドプリント基板や、柔軟性のある部分と硬質の部分を有する絶縁基板を用いたフレックスリジッドプリント基板にも適用できる。また、本発明に係るプリント配線基板は、高速信号伝送を要する様々な電子機器に好適である。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
10 プリント配線基板
10A 第1の配線層
10B 第2の配線層
11 絶縁基板
12 信号線対
12a、12b 端子パッド部
12c 接続配線部
121、122 信号線
13 グランドプレーン
14 接地配線
15 その他の信号線
16、17 接地片(インピーダンス整合用)