(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離工程において、前記焼成された拘束層のうち、前記波長変換部材形成用グリーンシートの焼成体に付着したシリカ粉末を除いた部分を前記焼成された積層体から分離する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換部材の製造方法。
前記波長変換部材の厚みが300μm以下となるような厚みに前記波長変換部材形成用グリーンシートを形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の波長変換部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末を分散させた波長変換部材の製造方法としては、例えば、ガラス粉末と無機蛍光体粉末とを含むグリーンシートを焼成する方法が考えられる。グリーンシートの焼成時においては、グリーンシートが収縮し、変形する。このことから、グリーンシートの少なくとも一方の面に拘束層を圧着させた状態でグリーンシートの焼成を行うことが考えられる。拘束層として、例えば、アルミナ粉末を含むグリーンシートを設けることが考えられる。
【0005】
アルミナ粉末を含むグリーンシートを圧着させたグリーンシートを焼成した場合、得られた波長変換部材は、アルミナ粉末の層と融着している。波長変換部材の表面にアルミナ粉末の層が融着していると、励起光が波長変換部材表面で反射して、波長変換部材内部の無機蛍光体粉末に励起光が十分に照射されにくい。このため、波長変換部材に融着したアルミナ粉末層を研磨により除去する必要がある。
【0006】
しかしながら、波長変換部材が薄い場合など、波長変換部材の剛性が低い場合には、アルミナ粉末を研磨により除去することが困難である。従って、剛性が低い波長変換部材の製造が困難である。
【0007】
本発明の主な目的は、剛性が低い波長変換部材であっても好適に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る波長変換部材の製造方法では、無機蛍光体粉末と、ガラス粉末とを含む波長変換部材形成用グリーンシートを用意する。波長変換部材形成用グリーンシートの少なくとも片面上に、シリカ粉末を含む層を表層として備えた拘束層を、シリカ粉末を含む層が波長変換部材形成用グリーンシートと接触するように積層することにより、積層体を得る積層体作製工程を行う。積層体を焼成する。焼成された積層体から焼成された拘束層を分離する分離工程を行う。
【0009】
シリカ粉末を含む層は、焼成により、シリカ粉末からなる層となることが好ましい。
【0010】
シリカ粉末を含む層は、ガラスを含まないことが好ましい。
【0011】
シリカ粉末を含む層として、シリカ粉末を含む拘束層形成用グリーンシートを用いることが好ましい。
【0012】
積層体作製工程において、波長変換部材形成用グリーンシートの上に、シリカ粉末を含む層を介在させて、アルミナ粉末を含む層を積層することが好ましい。
【0013】
分離工程において、焼成された拘束層のうち、波長変換部材形成用グリーンシートの焼成体に付着したシリカ粉末を除いた部分を焼成された積層体から分離してもよい。
【0014】
シリカ粉末の平均粒子径(D
50)は1μm以下であることが好ましい。
【0015】
ガラス粉末の屈折率が1.47〜1.70であることが好ましい。
【0016】
シリカ粉末を含む層の厚みが5μm〜50μmであることが好ましい。
【0017】
波長変換部材の厚みが300μm以下となるような厚みに波長変換部材形成用グリーンシートを形成することが好ましい。
【0018】
本発明に係る波長変換部材は、ガラスマトリクスと、ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体粉末とを含む波長変換層と、波長変換層の少なくとも片面上に付着したシリカ粉末からなるシリカ粉末層とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、剛性が低い波長変換部材であっても好適に製造し得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0022】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0023】
本実施形態では、
図4に示される波長変換部材1の製造方法について、
図1〜
図3を主として参照しながら説明する。
【0024】
(波長変換部材形成用グリーンシート10の用意)
まず、
図1に示される波長変換部材形成用グリーンシート10を用意する。波長変換部材形成用グリーンシート10は、無機蛍光体粉末11と、ガラス粉末12とを含む。本実施形態では、波長変換部材形成用グリーンシート10は、無機蛍光体粉末11と、ガラス粉末12とに加えて、バインダー13をさらに含む。波長変換部材形成用グリーンシート10は、例えば、無機蛍光体粉末11と、ガラス粉末12とバインダー13とを含むスラリーをPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなるシート上に塗布し、乾燥させることにより作製することができる。なお、スラリーの塗布は、例えば、ドクターブレード法等により行うことができる。
【0025】
無機蛍光体粉末11は、製造しようとする波長変換部材1に要求される特性等によって適宜選択される。無機蛍光体粉末11は、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、カルコゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体、ガーネット系化合物蛍光体から選ばれた少なくとも一種により構成することができる。
【0026】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると青色の蛍光発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu
2+、(Sr,Ba)MgAl
10O
17:Eu
2+などが挙げられる。
【0027】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると緑色の蛍光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0028】
波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の蛍光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0029】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると黄色の蛍光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、ZnS:Eu
2+などが挙げられる。
【0030】
波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の蛍光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、Lu
3Al
5O
12:Ce
2+などが挙げられる。
【0031】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると赤色の蛍光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、Gd
3Ga
4O
12:Cr
3+、CaGa
2S
4:Mn
2+などが挙げられる。
【0032】
波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の蛍光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末11の具体例としては、例えば、Mg
2TiO
4:Mn
4+、K
2SiF
6:Mn
4+などが挙げられる。
【0033】
無機蛍光体粉末11の平均粒子径が大きすぎると、発光色が不均一になる場合がある。従って、無機蛍光体粉末11の平均粒子径(D
50)は、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。但し、無機蛍光体粉末11の平均粒子径が小さすぎると、発光強度が低下する場合がある。従って、無機蛍光体粉末11の平均粒子径(D
50)は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。
【0034】
波長変換部材形成用グリーンシート10における無機蛍光体粉末11の含有量は、所望する波長変換部材1の発光強度等に応じて適宜設定することができる。高強度の蛍光が得られる波長変換部材1を製造する観点からは、波長変換部材形成用グリーンシート10における無機蛍光体粉末11の含有量は、0.01体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましく、20体積%以上であることがさらに好ましい。但し、波長変換部材形成用グリーンシート10における無機蛍光体粉末11の含有量が高すぎると、波長変換部材1の強度が低くなりすぎる場合がある。従って、波長変換部材形成用グリーンシート10における無機蛍光体粉末11の含有量は、90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましい。
【0035】
ガラス粉末12は、無機蛍光体粉末11の分散媒として好適なものである限りにおいて特に限定されない。ガラス粉末12は、例えば、硼珪酸塩系ガラスや、珪酸塩系ガラスなどにより構成することができる。ガラス粉末12の軟化点は、900℃以下であることが好ましく、250℃〜850℃であることがより好ましく、300℃〜650℃であることがさらに好ましい。ガラス粉末12の軟化点を低くすることにより、後に詳述する焼成工程における焼成温度を低くすることができる。このため、焼成工程における無機蛍光体粉末11の劣化を抑制することができる。従って、蛍光の発光効率が高い波長変換部材1を得ることができる。
【0036】
ガラス粉末12の平均粒子径が大きすぎると、製造された波長変換部材1における無機蛍光体粉末11の分散性が低下する場合がある。よって、ガラス粉末12の平均粒子径(D
50)は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。但し、ガラス粉末12の平均粒子径が小さすぎると、ガラス粉末12の二次凝集が起こりやすく、波長変換部材1の均質性が低下する場合がある。従って、ガラス粉末12の平均粒子径(D
50)は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
【0037】
ガラス粉末12の屈折率が高すぎると、波長変換部材1の表面における光反射率が高くなり、励起光が波長変換部材1内部の無機蛍光体粉末11に照射されにくくなる場合がある。従って、ガラス粉末12の屈折率は、1.70以下であることが好ましく、1.65以下であることがより好ましく、1.54以下であることがさらに好ましく、1.52以下であることが特に好ましい。ガラス粉末12の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.47以上であることがより好ましい。
【0038】
無機蛍光体粉末11及びガラス粉末12の波長変換部材形成用グリーンシート10中に占める割合は、例えば、50質量%〜80質量%程度とすることができる。
【0039】
バインダー13は、例えば、結合材、可塑剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0040】
結合剤は、乾燥後の膜強度を高め、また柔軟性を付与する成分である。バインダー13における結合剤の含有量は、例えば、0.1質量%〜30質量%程度とすることができる。結合剤としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、メタアクリル樹脂等を、単独または混合して使用することができる。
【0041】
可塑剤は、乾燥速度をコントロールすると共に、乾燥膜に柔軟性を与える成分である。バインダー13における可塑剤の含有量は、例えば、0〜10質量%程度とすることができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、ブチルベンジルフタレート等を、単独または混合して使用することができる。
【0042】
溶剤は、材料をスラリー化するための材料である。バインダー13における溶剤の含有量は、例えば、1質量%〜30質量%程度とすることができる。溶剤としては、例えばトルエン、メチルエチルケトン等を単独または混合して使用することができる。
【0043】
なお、波長変換部材形成用グリーンシート10は、例えば、アルミナ粉末やシリカ粉末等の光拡散材をさらに含んでいてもよい。
【0044】
(拘束層の積層)
次に、波長変換部材形成用グリーンシート10の少なくとも片面上に、シリカ粉末21aを含む層を表層として備えた拘束層20を積層することにより、積層体30を得る。ここで、拘束層20は、後に詳述する焼成工程において、波長変換部材形成用グリーンシート10の収縮を抑制するための層である。
【0045】
本実施形態では、具体的には、以下の要領で積層体30を作製する。
【0046】
まず、第1及び第2の拘束層形成用グリーンシート21,22をそれぞれ作製する。
【0047】
第1の拘束層形成用グリーンシート21は、拘束層20の表層を構成する、シリカ粉末21aを含む層を構成する。第1の拘束層形成用グリーンシート21は、シリカ粉末21aを含む層であり、後述する焼成工程において軟化流動し、残存するようなガラス等を含まない。具体的には、本実施形態では、第1の拘束層形成用グリーンシート21は、通常、シリカ粉末21aと、バインダー21bとを含む。第1の拘束層形成用グリーンシート21のシリカ粉末21a以外の成分は、焼成により消失する。このため、第1の拘束層形成用グリーンシート21は、焼成により、実質的にシリカ粉末21aからなる層となるものである。
【0048】
第1の拘束層形成用グリーンシート21は、例えば、シリカ粉末21aとバインダー21bとを含むスラリーを、ドクターブレード法などによりシート上に塗布し、乾燥させることにより作製することができる。なお、バインダー21bとしては、例えば、バインダー13において例示した材料を用いることができる。
【0049】
第1の拘束層形成用グリーンシート21におけるシリカ粉末21aの含有量は、例えば、40質量%〜80質量%であることが好ましく、50質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0050】
第2の拘束層形成用グリーンシート22は、第1の拘束層形成用グリーンシート21と共に拘束層20を構成している。第2の拘束層形成用グリーンシート22は、例えば、アルミナ粉末22aを含む層により構成することができる。第2の拘束層形成用グリーンシート22は、後述する焼成工程において軟化流動し、残存するようなガラス等を含まない。具体的には、本実施形態では、第2の拘束層形成用グリーンシート22は、例えば、アルミナ粉末22aとバインダー22bとを含んでいる。第2の拘束層形成用グリーンシート22のアルミナ粉末22a以外の成分は、焼成により消失する。このため、第2の拘束層形成用グリーンシート22は、焼成により、実質的にアルミナ粉末22aからなる層となるものである。
【0051】
第2の拘束層形成用グリーンシート22は、例えば、アルミナ粉末22aとバインダー22bとを含むスラリーを、ドクターブレード法などによりシート上に塗布し、乾燥させることにより作製することができる。なお、バインダー22bとしては、例えば、バインダー13において例示した材料を用いることができる。
【0052】
アルミナ粉末22aの平均粒子径(D
50)は、例えば、0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.5μm〜5μmであることがより好ましい。
【0053】
第2の拘束層形成用グリーンシート22におけるアルミナ粉末22aの含有量は、例えば、40質量%〜80質量%であることが好ましく、50質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0054】
アルミナ粉末22aとシリカ粉末21aとは、それぞれ、扁平状であってもよいが、球状であることが好ましい。ここで、「球状」とは、短径に対する長径の比((長径)/(短径))であるアスペクト比が2以下であることをいう。
【0055】
次に、波長変換部材形成用グリーンシート10と、第1の拘束層形成用グリーンシート21と、第2の拘束層形成用グリーンシート22とをこの順番で積層することにより積層体30を得る。すなわち、この積層体作製工程においては、波長変換部材形成用グリーンシート10の上に、シリカ粉末21aを含む層である第1の拘束層形成用グリーンシート21を介在させて、第2の拘束層形成用グリーンシート22を積層することにより積層体30を得る。その後、積層体30を熱圧着するなどして一体化させることが好ましい。拘束層形成用グリーンシートを、シリカ粉末を含む第1の拘束層形成用グリーンシートと、アルミナ粉末を含む第2の拘束層形成用グリーンシートの積層体からなる構成とすることにより、波長変換部材形成用グリーンシートが焼成により収縮または変形することを効果的に抑制できる。
【0056】
(焼成工程)
次に、積層体30を焼成する。これにより、
図2に示されるように、波長変換部材形成用グリーンシート10中のガラス粉末12が溶解し、ガラスマトリクス14中に無機蛍光体粉末11が分散した波長変換層(本体)15が形成される。本実施形態では、拘束層20が波長変換部材形成用グリーンシート10に密着して設けられているため、焼成工程において、波長変換部材形成用グリーンシート10の収縮が抑制される。従って、高い形状精度を有する波長変換部材1を得ることができる。
【0057】
第1の拘束層形成用グリーンシート21中のバインダー21bは焼成により消失し、第1の拘束層形成用グリーンシート21は、実質的にシリカ粉末21aのみからなるシリカ粉末層23となる。シリカ粉末層23を構成しているシリカ粉末21aのうち、波長変換層15の表面上に位置しているシリカ粉末21aの少なくとも一部は波長変換層15に密着している。
【0058】
第2の拘束層形成用グリーンシート22中のバインダー22bは焼成により消失し、第2の拘束層形成用グリーンシート22は、実質的にアルミナ粉末22aのみからなるアルミナ粉末層24となる。
【0059】
なお、積層体30の焼成温度は、例えば、750℃〜1000℃程度とすることができる。
【0060】
(分離工程)
次に、
図3に示されるように、焼成された積層体31から、焼成された拘束層25を分離する(分離工程)。これにより、波長変換部材形成用グリーンシート10の焼成体である波長変換層15を含む波長変換部材1を得る。詳細には、分離工程において、焼成された拘束層25のうち、波長変換部材形成用グリーンシート10の焼成体である波長変換層15に付着したシリカ粉末21aを含むシリカ粉末層16を除いた部分が焼成された積層体31から分離される。従って、
図4に示されるように、製造された波長変換部材1は、ガラスマトリクス14と、ガラスマトリクス14中に分散した無機蛍光体粉末11とを含む波長変換層(本体)15と、波長変換層15の表面に付着したシリカ粉末21aからなるシリカ粉末層16とを備えている。
【0061】
なお、拘束層25を容易に分離できるようにする観点からは、第1の拘束層形成用グリーンシート21の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることが好ましい。但し、第1の拘束層形成用グリーンシート21の厚みが厚すぎると、十分に脱バインダー処理ができない場合がある。従って、第1の拘束層形成用グリーンシート21の厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、拘束層20の波長変換部材形成用グリーンシート10側の表層を、シリカ粉末21aを含む層により構成する。このため、波長変換層15に付着するのは屈折率が低いシリカ粉末21aとなり、屈折率が高いアルミナ粉末22aは波長変換層15に付着しない。このため、表面に付着したシリカ粉末21aを取り除かなくとも、波長変換部材1の表面における光反射率が低い。よって、励起光が、波長変換部材1内部の無機蛍光体粉末11に十分に照射されるため、表面に付着したシリカ粉末21aを取り除く必要は必ずしもない。従って、波長変換部材1の製造に際して研磨等の必要がなく、薄く、剛性が低い波長変換部材1を製造することができる。また、高い良品率を得ることができる。
【0063】
例えば、第2の拘束層形成用グリーンシート22を波長変換部材形成用グリーンシート10の上に直接設け、屈折率が高いアルミナ粉末が波長変換層の表面に付着した場合よりも、波長変換部材1の表面における光反射率が低い。このため、励起光が、波長変換部材1内部の無機蛍光体粉末11に十分に照射されるため、高い発光効率を得ることができる。
【0064】
さらに、表面に付着したシリカ粉末21aによって、波長変換部材1の表面に凹凸が形成される。このため、波長変換部材1の表面における光反射率をより低くし得る。波長変換部材1の表面における光反射率をさらに低くする観点からは、シリカ粉末21aの平均粒子径(D
50)は、1μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。但し、シリカ粉末21aの平均粒子径が小さすぎると、シリカ粉末がガラスマトリックスに溶解してしまう場合がある。従って、シリカ粉末21aの平均粒子径(D
50)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。
【0065】
また、ガラス粉末12の屈折率が1.47〜1.70である場合は、ガラスマトリクス14とシリカ粉末21aとの間の屈折率差が小さいため、波長変換部材1の表面における光反射率をさらに低くすることができる。
【0066】
本実施形態において説明した波長変換部材1の製造方法は、どのような波長変換部材の製造にも適用できるが、波長変換部材1の厚みが300μm以下であり、波長変換部材1の剛性が低い場合に特に有効である。すなわち、波長変換部材1の厚みが300μm以下となるように波長変換部材形成用グリーンシート10を形成する場合に特に有効である。
【0067】
なお、本実施形態では、第1及び第2の拘束層形成用グリーンシート21,22により拘束層20を構成する例について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、シリカ粉末21aを含む第1の拘束層形成用グリーンシート21のみにより拘束層20を構成してもよい。
【0068】
また、シリカ粉末を含む層は、実質的に、シリカ粉末のみからなり、バインダー等を含んでいなくてもよい。同様に、アルミナ粉末を含む層は、実質的に、アルミナ粉末のみからなり、バインダー等を含んでいなくてもよい。
【0069】
第2の拘束層形成用グリーンシートは、アルミナ粉末に代えて、またはアルミナ粉末と共に、酸化マグネシウム粉末、酸化ジルコン粉末、酸化チタン粉末、酸化ベリリウム粉末、窒化ホウ素粉末などの少なくとも一種の粉末を含んでいてもよい。
【0070】
波長変換部材形成用グリーンシート10の両側に拘束層を設けてもよい。その場合は、波長変換層15の両面の上に、シリカ粉末層16が設けられるように、波長変換部材形成用グリーンシート10の両表面に、シリカ粉末を含む層を表層として備えた拘束層を、シリカ粉末を含む層が波長変換部材形成用グリーンシートと接触するように積層する。
【0071】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0072】
(実施例)
モル%でSiO
2:58%、Al
2O
3:6%、B
2O
3:17%、Li
2O:8%、Na
2O:8%、K
2O:3%となるように原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム状にガラスを成形した。得られたガラスフィルムを、ボールミルを用いて湿式粉砕し、平均粒子径(D
50)が2μmであるガラス粉末を得た。
【0073】
得られたガラス粉末と、平均粒子径(D
50)が15μmであるYAG(Yttrium Aluminum Garnet,Y
3Al
5O
12)の蛍光体の粉末とを、ガラス粉末:YAGの蛍光体粉末が30体積%:70体積%となるように、振動混合機を用いて混合した。得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥させることにより、波長変換部材形成用セラミックグリーンシートを作製した。ブレードのギャップは200μmとし、得られた波長変換部材形成用セラミックグリーンシートの厚みは100μmとなった。
【0074】
平均粒子径(D
50)が0.1μmの球状シリカ粉末40gに対して結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第1の拘束層形成用グリーンシートを作製した。得られた第1の拘束層形成用グリーンシートの厚みは10μmであった。
【0075】
平均粒子径(D
50)が1μmの球状アルミナ粉末50gに対して結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第2の拘束層形成用グリーンシートを作製した。得られた第2の拘束層形成用グリーンシートの厚みは300μmであった。
【0076】
波長変換部材形成用セラミックグリーンシート、第1の拘束層形成用グリーンシート及び第2の拘束層形成用グリーンシートをこの順番で重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10kPaの圧力を印加することにより積層体を作製した。大気中において、作製した積層体を500℃で1時間脱脂処理した。その後、脱脂処理した積層体を600℃で20分間焼成した。その後、拘束層を分離し、波長変換部材を得た。得られた波長変換部材の厚みは、130μmであった。波長変換部材の表面には、シリカ粉末が付着していた。
【0077】
(比較例)
上記実施例1と同様にして、波長変換部材形成用セラミックグリーンシート及び第2の拘束層形成用グリーンシートを作製した。次に、波長変換部材形成用セラミックグリーンシート及び第2の拘束層形成用グリーンシートをこの順番で重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10kPaの圧力を印加することにより積層体を作製した。大気中において、作製した積層体を500℃で1時間脱脂処理した。その後、脱脂処理した積層体を600℃で20分間焼成した。その後、拘束層を分離し、波長変換部材を得た。得られた波長変換部材の厚みは、126μmであった。波長変換部材の表面には、アルミナ粉末が付着していた。
【0078】
(評価)
実施例及び比較例のそれぞれにおいて作製した各サンプルのシリカ粉末またはアルミナ粉末が付着していない側の主面に、反射基板(マテリアルハウス社製のMIRO−SILVER)を、接着剤(信越化学工業社製の高反射樹脂)を用いて貼付し、測定サンプルを作製した。測定サンプルを15℃に設定したペルチェ素子上に固定し、出力が30Wであり、波長440nmの青色レーザー光を測定サンプルに照射し、得られた蛍光を、光ファイバーを通して小型分光器(USB−4000、オーシャンオプティクス社製)で受光し、発光スペクトルを得た。得られた発光スペクトルを
図5に示す。発光スペクトルから、蛍光の強度を求めた。
【0079】
その結果、実施例では、蛍光の強度(波長ピーク)が約1280(a.u.)であったのに対して、比較例では、蛍光の強度が約1000(a.u.)であった。
【0080】
また、励起光の反射強度は、実施例では約8000(a.u.)であったのに対し、比較例では約20000(a.u.)と高かった。このことから、実施例では、波長変換部材表面における励起光の反射が抑えられていることがわかる。