(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カバー形成工程において、上記コアと接するカバーが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱硬化性ポリウレタン樹脂及びポリアミドエラストマーから選ばれる1種以上を主成分とする材料で形成される請求項1〜5のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
上記表面処理工程を実施した後、表面処理されたコアの表面を、洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程を更に含む請求項1〜7のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の製造方法について更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールの製造方法は、ゴム組成物で形成されたソリッドコアと、該コアを被覆する1層以上のカバーとを有するゴルフボールを製造する場合に好適に使用し得るものであり、ソリッドコアを形成するコア形成工程、
ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を水に溶かし、得られた水溶液のpHを1以上3以下に調整して処理液を調製する工程、得られたコアの表面をハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を
水に溶かした水溶液にて処理する表面処理工程、表面処理されたコアの表面を洗浄する洗浄工程、及び洗浄されたコアの表面にカバー材を被覆するカバー被覆工程を含むものである。
【0016】
まず、ソリッドコアを形成するコア形成工程において、該ソリッドコアはゴム組成物で形成されたものであることを要する。上記ゴム組成物の配合については、ボールの要求性能等に応じて適宜設定し得、特に制限されるものではないが、本発明においては下記の各成分、
(A)シス−1,4−結合を60%以上含有したポリブタジエンを60〜100質量%含む基材ゴム、
(B)有機過酸化物、
(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(E)無機充填剤
を含むゴム組成物を好適に用いることができる。
なお、上記ゴム組成物には、必要に応じて(D)有機硫黄化合物を配合することができる。
【0017】
上記(A)シス−1,4−結合を60%以上含有したポリブタジエンを60〜100質量%含む基材ゴムにおいて、上記ポリブタジエンに含まれるシス−1,4−結合の含量としては、特に制限されるものではないが、60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。上記ポリブタジエンに含まれるシス−1,4−結合の含量が60%未満であると、好適な反発性が得られない場合がある。また、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)の範囲は、特に制限されるものではないが、1.0以上、好ましくは2.0以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、8.0以下、好ましくは7.5以下、更に好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下であることが好ましい。Mw/Mnが小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下する場合がある。
【0018】
上記ポリブタジエンは、特に限定されるものではないが、希土類元素系触媒で合成されたものが高反発性の点から好ましく用いられる。希土類元素系触媒としては、公知のものを使用することができるが、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、更に、必要に応じルイス塩基との組み合わせよりなる触媒を挙げることができる。
【0019】
上記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
【0020】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、AlR
1R
2R
3(ここで、R
1、R
2及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示されるものを用いることができる。
【0021】
上記アルモキサンは、下記式(I)又は下記式(II)で示される構造を有する化合物を好適に挙げることができる。この場合、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体でもよい。
【0022】
【化1】
(式中、R
4は炭素数の炭素原子を含む1〜20の炭化水素基、mは2以上の整数である。)
【0023】
上記ハロゲン含有化合物としては、AlX
nR
3-n(ここで、Xはハロゲン原子を示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3である)で示されるアルミニウムハライド、Me
3SrCl、Me
2SrCl
2、MeSrHCl
2、MeSrCl
3などのストロンチウムハライド(Meはメチル基を示す)、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、四塩化チタンなどの金属ハライド等が用いられる。
【0024】
上記ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えば、アセチルアセトン、ケトンアルコールなどを挙げることができる。
【0025】
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
【0026】
また、ランタン系列希土類元素化合物を用いた希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、シス結合含量及び分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)を上記範囲とするために、ブタジエン/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で1000〜200万、特には5000〜100万とすることが好ましく、また、AlR
1R
2R
3/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で1〜1000、特には3〜500とすることが好ましい。更に、ハロゲン化合物/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で0.1〜30、特に0.2〜15であることが好ましい。ルイス塩基/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で0〜30、特に1〜10とすることが好ましい。重合にあたっては、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよい。なお、重合温度は、通常−30〜150℃、好ましくは10〜100℃である。
【0027】
本発明で用いられるポリブタジエンのムーニー粘度(ML
1+4(100℃))は、特に制限されるものではないが、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは35以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは140以下、より好ましくは120以下、更に好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。ムーニー粘度が上記範囲外であると、作業性が悪くなったり、反発性が低下する場合がある。
【0028】
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、いずれも回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML
1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0029】
上記ポリブタジエンは、上記の希土類元素系触媒による重合に引き続き、ポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させることにより得られるものであってもよい。
【0030】
ここで、上記末端変性剤は、公知のものを使用でき、下記〔1〕〜〔7〕に記載した末端変性剤を使用することができる。
【0031】
〔1〕まず、アルコキシシリル基を持つ化合物が挙げられる。アルコキシシリル基を持つ化合物としては、エポキシ基又はイソシアナート基を分子内に少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物が好適に使用される。具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのエポキシ基含有アルコキシシラン;3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのイソシアナート基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0032】
また、上記アルコキシシリル基を持つ化合物を活性末端に反応させる際、反応を促進させるためにルイス酸を添加することもできる。ルイス酸が触媒としてカップリング反応を促進させ、変性ポリマーのコールドフローが改良され貯蔵安定性がよくなる。ルイス酸の具体例としては、ジアルキルスズジアルキルマレート、ジアルキルスズジカルボキシレート、アルミニウムトリアルコキシドなどが挙げられる。
【0033】
〔2〕R
5pM′X
4-p、M′X
4、M′X
3、R
5pM′(−R
6−COOR
7)
4-p又はR
5pM′(−R
6−COR
7)
4-p(式中、R
5及びR
6は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R
7は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M′はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子、Xはハロゲン原子、pは0〜3の整数を示す)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物、又は、エステル基又はカルボニル基を分子中に含有した有機金属化合物、
〔3〕分子中に、Y=C=Z結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す)を含有するヘテロクムレン化合物、
〔4〕分子中に下記式(III)に示す結合を含有するヘテロ3員環化合物、
【化2】
(式中、Zは、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)
〔5〕ハロゲン化イソシアノ化合物、
〔6〕R
8−(COOH)
q、R
9(COX)
q、R
10−(COO−R
11)
q、R
12−OCOO−R
13、R
14−(COOCO−R
15)
q、又は下記式(IV)で示されるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物、
【化3】
(式中、R
8〜R
16は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Xはハロゲン原子、qは1〜5の整数を示す。)
〔7〕R
17rM″(OCOR
18)
4-r、R
19rM″(OCO−R
20−COOR
21)
4-r、又は下記式(V)で示されるカルボン酸の金属塩
【化4】
(式中、R
17〜R
23は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M″はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子、rは0〜3の整数を示す。)
等を挙げることができる。
【0034】
以上に示される末端変性剤の具体例及び反応させる方法は、例えば、特開平11−35633号公報、特開平7−268132号公報、特開2002−293996号公報等に記載されている具体例及び方法を挙げることができる。
なお、上述した触媒の中では、希土類元素系触媒、特にNd系触媒が好ましい。
【0035】
上記(A)成分は、上記のようなポリブタジエンを主材とした基材ゴムであるが、この主材のポリブタジエンの含有量としては、基材ゴム中60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。また、基材ゴムの100質量%が上記ポリブタジエンであってもよく、95質量%以下、場合によっては90質量%以下の含有量とし得る。ポリブタジエンの含量が60質量%未満であると、反発性が劣る場合がある。
【0036】
なお、上記(A)成分に含まれるポリブタジエン以外のゴム成分としては、例えば、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等が挙げられる。
【0037】
上記ポリブタジエン以外のゴム成分の基材ゴム中における含有量は、上記ポリブタジエンの含有量の残部とすることができ、40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0038】
次に、(B)有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これら有機過酸化物は市販品を用いることができ、例えば、パークミルD(日油社製)、トリゴノックス29−40(アクゾノーベル社製)、パーヘキサ3M(日油社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)、等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0039】
また、上記有機過酸化物の配合量は、特に制限されるものではないが、上記(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。(B)成分の配合量が少なすぎると、架橋に要する時間が長くなり、生産性の低下が大きく、コンプレッションも大きく低下してしまう場合がある。配合量が多すぎると、反発性、耐久性が低下してしまう場合がある。
【0040】
次に、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩において、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸の金属塩としては、亜鉛塩、マグネシウム塩等が挙げられ、中でもアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0041】
上記(C)成分の配合量は、特に制限されるものではないが、上記(A)成分100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下である。(C)成分の配合量が上記範囲を外れると、反発性や打感が低下する(劣る)場合がある。
【0042】
上記(D)成分の有機硫黄化合物は、ボールの反発性を高めるための任意成分であり、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩が挙げられる。より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール又はそれらの亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド、アルキルフェニルジスルフィド類、フラン環を有する硫黄化合物類、チオフェン環を有する硫黄化合物類が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0043】
上記(D)成分の配合量は、特に制限されるものではないが、上記(A)成分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.4質量部以上、最も好ましくは0.5質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。その配合量が少なすぎると、反発性を向上させる効果がなくなる場合があり、多すぎると、硬度が低くなりすぎ、十分な反発性が得られない場合がある。
【0044】
上記(E)成分の無機充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。その配合量は、特に制限されるものではないが、上記(A)成分100質量部に対し、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは80質量部以下、より好ましくは65質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正な重量及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0045】
また、上記(A)〜(E)成分を含んでなるゴム組成物には必要に応じ、更に老化防止剤を添加することもできる。老化防止剤の添加量は、特に制限されるものではないが、上記(A)成分100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下を配合することができる。上記老化防止剤としては市販品を用いることができ、例えば、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30(大内新興化学工業社製)、ヨシノックス425(吉富製薬社製)等が挙げられる。
【0046】
上記のゴム組成物を用いてソリッドコアを形成する場合、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって形成することができる。加硫条件については、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分の条件を挙げることができる。
【0047】
また、上記のように形成されるソリッドコアの局部的な硬度は適宜調整することができ、特に制限されるものではなく、局部的な硬度の分布としては、中心から成形物表面までが同等の硬度であっても、中心と成形物表面までに硬度差があってもよい。
【0048】
コア形成工程で得られるソリッドコアの直径は、好ましくは35mm以上、より好ましくは37mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは42mm以下、より好ましくは41mm以下、更に好ましくは40mm以下である。ソリッドコアの直径が小さすぎると、打感や反発性が悪くなる場合があり、一方、大きすぎると、割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0049】
上記ソリッドコアのたわみ変形量は、特に制限されるものではないが、ソリッドコアに対し初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量として、2.0mm以上、好ましくは3.0mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、は5.5mm以下、好ましくは5.0mm以下である。当該たわみ変形量が2.0mm未満であると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなり、一方、5.5mmを超えると、打感が鈍くなると共に、反発性が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0050】
上記ソリッドコアの比重は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、1.4以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
【0051】
次に、上記コア形成工程で形成されたソリッドコアに対して、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を
水に溶かした水溶液を処理液として用いた表面処理が施される。以下、当該ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を
水に溶かした水溶液を用いた表面処理工程について詳述する。
【0052】
まず、表面処理工程で用いられる処理液に含まれるハロゲン化イソシアヌル酸及びその金属塩は、下記式(VI)で表される化合物である。
【0053】
【化5】
(ここで、Xは、水素原子、ハロゲン原子又はアルカリ金属原子を表す。Xの少なくとも1個はハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、F、Cl、Brが好ましく、特にClが好ましい。アルカリ金属原子としては、Li、Na、Kが好ましい。)
【0054】
ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の具体例としては、クロロイソシアヌル酸、クロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸、三臭化イソシアヌル酸、二臭化イソシアヌル酸、臭化イソシアヌル酸、二臭化イソシアヌル酸ナトリウム等の塩、及びこれらの水和物、ジフルオロイソシアヌル酸等が例示される。これらの中でも、好ましくはクロロイソシアヌル酸、クロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸である。これらは水分により容易に加水分解し、酸と塩素を生成し、ジエン系ゴム分子中の二重結合への付加反応の開始剤的な役割を果たすからである。本発明では、水への溶解度が高く、コア表面と反応しやすいことから、特にジクロロイソシアヌル酸及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを好適に用いることができる。
【0055】
表面処理工程では、上記のハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の水溶液を処理液として用いる。本発明では、処理液の溶媒として水を用いるため、従来使用していたアセトン等の有機溶媒に比較して環境に対する負荷を小さくすることができる。また、水は容易に入手することができ、低コストであるため、環境的側面だけでなく、生産性の観点からも好ましい。更に、アセトン等の有機溶媒は、危険物に指定されているものが多いが、水はそうではないため取扱いも容易である。
【0056】
上記処理液におけるハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.5質量%以上とすることができる。ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の含有量が低すぎた場合、コア表面処理後に期待される接着性改善効果が得られず、打撃耐久性が劣る場合がある。また、その上限は飽和溶液濃度であるが、10質量%である。また、コアの上記処理液への浸漬時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.3秒以上、より好ましくは3秒以上、更に好ましくは10秒以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは5分以内、より好ましくは4分以内である。短すぎると処理効果が得られない場合があり、長い場合は生産性が損なわれる場合がある。
【0057】
本発明においては、上記処理液のpHを1以上5未満に調整する必要がある。処理液のpHの好ましい上限値は4以下であり、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。処理液のpHが高すぎると、耐擦過傷性、打撃耐久性が低下してしまう場合がある。また、処理液のpHは、塩酸、硝酸、硫酸等の酸を用いて上記の範囲となるように適宜調整すればよく、特に塩酸を好適に用いることができる。処理液における酸の含有量は、上記の範囲にpHを調整できればよく、特に制限されるものではないが、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。また、その上限は飽和溶液濃度であるが、10質量%である。
【0058】
上記の処理液でコア表面を処理する方法としては、当該水溶液をコア表面に刷毛塗りや吹き付け等により塗布する方法、もしくはコアを上記処理液へ浸漬する方法等を採用することができる。本発明では、特に生産性、コア表面への処理液の高浸透性という観点から、浸漬法を好適に採用し得る。
【0059】
また、ソリッドコアに対して上記の表面処理を施す前に、該コア表面を研磨する研磨工程を実施することにより、コア表面と隣接するカバー材との接着性を更に向上させることができる。
【0060】
上記研磨工程を実施することにより、加硫後のコア表面からスキン層を取り除き、上記処理液のコア表面への浸透性を高めると共に、隣接するカバー材との接触面積を増やすことが出来る。その具体的な方法としては、バフ研磨、バレル研磨、センタレス研磨等が挙げられる。
【0061】
上記の表面処理を施されたソリッドコアは、その表面についた余分な処理液を落とすために洗浄される。以下、洗浄工程について詳述する。
【0062】
洗浄工程では、洗浄液として、水、又は上記表面処理工程で用いられる処理液よりも低濃度のハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を
水に溶かした水溶液を用いることができる。また、洗浄液としてハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を
水に溶かした水溶液を用いる場合、ジクロロイソシアヌル酸又はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを
水に溶かした水溶液を好適に使用することができる。
【0063】
上記洗浄液におけるハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の含有量は、上記表面処理工程で用いられる処理液よりも低濃度であれば、特に制限されるものではない。より具体的には、上記洗浄液の濃度は、処理液よりも低濃度であることを前提として、好ましくは0.5質量%未満とすることができる。ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の含有量が高すぎた場合、外観性が悪くなる場合がある。
【0064】
洗浄工程において、コア表面の洗浄は、流水や吹付け、洗浄槽を用いた漬け置き等の方法により行うことができるが、単に洗浄するだけではなく、所望の処理反応を開始・促進する目的もあるため、余り急激な洗浄方法は適さない。よって、本発明では洗浄漕を設けた漬け置き洗いが好適に用いられる。この場合、水、又は所定の濃度の洗浄液を入れた洗浄漕に1〜5回くらい入れることが好ましい。また、洗浄液として、低濃度のハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を
水に溶かした水溶液を用いる場合は、洗浄の段階毎に水溶液の濃度を変化させることも任意である。例えば、洗浄の回数を追う毎に洗浄液の濃度を徐々に低下させてもよい。なお、表面処理工程の後、上記の洗浄処理を実施しなかった場合、コア表面に残った余分なハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩が、カバー形成後のボール表面を部分的に黄変させてしまう場合がある。
【0065】
本発明においては、コア表面をハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩により処理することによってカバーとの接着性が大きく向上する。その理由は明確ではないが、次のようなことが考えられる。
【0066】
まず、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩は溶媒と共にコアを形成するジエン系ゴム内部へと浸み込み、主鎖の二重結合の周りへと近づく。その後、コア表面に水が入り込み、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩は水により加水分解されてハロゲンを放出する。そして、ハロゲンは近くにあるジエン系ゴム主鎖の二重結合を攻撃し、付加反応が進んでいく。その付加反応の過程で、遊離したイソシアヌル酸が環構造を保ったままジエン系ゴム主鎖に塩素とともに付加していく。なお、付加したイソシアヌル酸は分子内に−NHCO−の構造を3つ持つものである。
【0067】
従って、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩で処理されたコア表面は−NHCO−の構造が付与されるためカバー材との接着性がより向上し、そのためゴルフボールとしての打撃耐久性が改良されると考えられる。更に、カバー材としてそのポリマー分子中に同じ−NHCO−の構造を有するポリウレタンエラストマーやポリアミドエラストマーを用いるとより一層親和性が増すので打撃耐久性が高くなると考えられる。
【0068】
また、表面処理後のソリッドコアの表面部分の材料は、示差走査熱量測定(DSC)により、室温から300℃までに発熱および吸熱のいずれのピークも確認されない。これは、この温度範囲において、導入された官能基が安定した状態で維持されることを意味する。つまり、導入された官能基がカバーを形成する過程において、熱による分解などを起こさず、効力を持続すること、また、ホットメルト系樹脂のような溶融を起こさず、パーティングラインへの滲みだし等、耐久性や外観品質へ悪影響を及ぼすような心配がないことを意味している。なお、上記の通り表面処理後のソリッドコアの表面部分の材料が安定であることは、300℃以上の融点を持つイソシアヌル酸がその分子構造を維持した状態で付加したことを示す裏づけのひとつであるともいえる。
【0069】
次に、上記洗浄工程で洗浄されたソリッドコアに対して、カバー材を被覆してカバーを形成する。以下、当該カバー形成工程について詳述する。
【0070】
カバー形成工程では、カバー材の主成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱硬化性ポリウレタン樹脂、ポリアミドエラストマーから選ばれる1種以上を用いることができる。これらの樹脂は、その樹脂骨格中にイソシアヌル酸と同じ−NHCO−の分子構造を持っており、上記の処理を施したソリッドコア表面と強い分子間力により強固に密着する。
【0071】
上記ポリウレタンエラストマーとしては、ポリウレタンを主成分とする熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であれば特に限定されるものではなく、ソフトセグメントを構成する高分子ポリオール化合物と、ハードセグメントを構成するジイソシアネート及び単分子鎖延長剤とから構成されていることが好適である。
【0072】
まず、熱可塑性ポリウレタンエラストマーについて説明すると、高分子ポリオール化合物としては、特に制限されるものではないが、例えばポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられ、反発弾性の観点あるいは低温特性の観点から、ポリエーテル系ポリオールが好ましく用いられる。
【0073】
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、特に、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。また、これらの数平均分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下である。
【0074】
ジイソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。本発明では、後述するイソシアネート混合物を配合した場合の、イソシアネート混合物との反応安定性の観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0075】
単分子鎖延長剤としては、特に制限されるものではないが、通常の多価アルコール、アミン類を用いることができ、例えば、1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。これら鎖延長剤の平均分子量は20〜15000であることが好ましい。
【0076】
このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298、パンデックスTR3080、パンデックスT8190、パンデックスT8195(ディーアイシーバイエルポリマー社製)やレザミン2593、レザミン2597(大日精化工業社製)などが挙げられる。これらは一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0077】
これら熱可塑性ポリウレタンエラストマーには、所望により他の成分、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等や無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等)を配合することもできる。
【0078】
上記添加剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。添加剤の配合量が多すぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が少なすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0079】
上記カバー材の材料硬度(ショアD)は、特に制限されるものではないが、好ましくは40以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは70以下、より好ましくは60以下である。上記材料硬度が低すぎると反発性に劣る場合がある。一方、上記材料硬度が高すぎると打感、コントロール性の改善が見られない場合がある。なお、本発明において材料硬度とは、カバー材を厚さ2mmのシート状にプレス成形し、成形したシートを厚さ6mm以上に重ね合わせて、ASTM D2240に準じてタイプDデュロメータを用いて測定した硬度である。
【0080】
他方、熱硬化性ポリウレタン樹脂カバーとは、上記熱可塑性ポリウレタンエラストマーの主成分を混合したものを、反応前にコア表面に被覆させ、加熱等によりコア表面上で反応硬化させたものである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーとの違いは、反応によって溶融点を持たない分子量以上に高分子化させる点である。
【0081】
上記熱硬化性ポリウレタン樹脂には、所望により他の成分、例えば、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等や無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等)、硬化促進剤などを配合することができる。
【0082】
上記添加剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記熱硬化性ポリウレタン樹脂主成分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。添加剤の配合量が多すぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が少なすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0083】
ポリアミドエラストマーとしては、その分子内にポリアミド成分を有している熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではない。このポリアミドエラストマーは、その硬度が低いもの程、反発弾性が高いという特徴があるため、ゴルフボールのカバー材をソフト化させ、かつ高反発性のゴルフボールを設計する上で非常に好適な材料である。
【0084】
上記ポリアミドエラストマーは、ハードセグメントとして、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、芳香族ポリアミドなどのポリアミド成分を有し、ソフトセグメントとして、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールのようなポリオキシアルキレングリコールあるいは脂肪族ポリエステルなどの成分を有するブロック共重合体が使用できる。
【0085】
上記カバー材の材料硬度(ショアD)は、特に制限されるものではないが、好ましくは20以上、より好ましくは40以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは70以下、より好ましくは60以下である。上記材料硬度が低すぎるとハードセグメントのポリアミド成分の含有量が少ないため、改質したコア表面との相性が悪くなり、層間密着力が低下する場合がある。上記材料硬度が高すぎると良好な打感、コントロール性の改善が見られない場合がある。
【0086】
このポリアミドエラストマーには、市販品を用いることができ、例えば、ARKEMA社のPEBAX2533、PEBAX3533、PEBAX4033、ダイセル・ヒュルス社製のダイアミド−PAE E40、ダイアミド−PAE E47、エムスジャパン社製のグリロン、グリルアミド、DIC社製のグリラックスA、三菱化学社製のノバミッドEL、宇部興産社製のUBE−PAE等を挙げることができる。
【0087】
これらポリアミドエラストマーには、所望により他の成分、例えば、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等や無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等)などを配合することができる。
【0088】
上記添加剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記ポリアミドエラストマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。添加剤の配合量が多すぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が少なすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0089】
上記のカバー材は、非常に良好な耐擦過傷性を示し、良好な打感を実現するものである。
【0090】
本発明の製造方法で得られるゴルフボールは、上記コアに隣接したカバー層が上記カバー材で形成されたゴルフボールである。なお、本発明のゴルフボールは、上記処理液で表面処理されたソリッドコアの表面に、上記カバー材で1層のカバーを形成したツーピースソリッドゴルフボールとしてもよいし、上記カバー材で該コア表面を被覆して内層カバーを形成した後、更に他のカバー材でその外側に1層以上の外層カバーを形成して、上記コア表面に2層以上のカバーを形成した多層構造ソリッドゴルフボールとしてもよい。
【0091】
他のカバー材としては、ゴルフボール用のカバー材として公知の材料を使用することができ、特に制限されるものではないが、具体的には、アイオノマー樹脂、ポリエステルエラストマー、内層カバーに用いたポリウレタンエラストマー及びポリアミドエラストマーとは物性の異なるポリウレタンエラストマー及びポリアミドエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0092】
カバーの形成方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、予め作製したコアを金型内に配備し、上記カバー材を加熱溶融もしくは加熱混合溶融し、射出成形する方法等を採用できる。
【0093】
また、カバー材により予め一対の半球状のハーフカップを形成し、このハーフカップでコアを包んで120〜170℃、1〜5分間、加圧成形する方法を用いても良い。熱硬化型樹脂を用いる場合は、RIM成形もしくはLIM成形等の方法が採用できる。
【0094】
一方、射出成形法によりカバーを形成する場合は、上記カバー材を射出成形法に適した流動性を確保し、成形性を改良する観点から、材料のメルトフローレートを調整することが好適である。本発明では、特に制限されるものではないが、JIS K 6760に準拠して試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)の条件で測定したときのメルトフローレート(MFR)が、通常0.5dg/min以上、好ましくは1dg/min以上、より好ましくは1.5dg/min以上、更に好ましくは2dg/min以上に調整されることが推奨される。また、その上限も特に制限されないが、通常20dg/min以下、好ましくは10dg/min以下、より好ましくは5dg/min以下、更に好ましくは3dg/min以下に調整されることが推奨される。上記メルトフローレートが、大きすぎても小さすぎても加工性が著しく低下する場合がある。
【0095】
上記カバー材にて形成されるカバー厚みは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。カバー厚みが大きすぎると、反発性が低下する場合があり、カバー厚みが小さすぎると、耐久性が低下する場合がある。
【0096】
本発明の製法によって得られるゴルフボールにおいては、カバーの表面に多数のディンプルを形成し、更に該カバー上に下地処理、スタンプ、塗装等の種々の処理を行うことが好適である。ディンプルの配設に当たっては、ディンプルに交差しない大円線が1本もないようにディンプルを配設することが好適である。ディンプルと交差しない大円線が存在すると、飛びにバラツキが発生する場合がある。
【0097】
上記ディンプルとしては、更にディンプルの種類の数及び総数が適正化されたものであることが好ましく、ディンプルの種類の数及び総数の適正化による相乗効果で弾道がより安定し、飛距離性能に優れたゴルフボールを得ることができる。
【0098】
ここで、ディンプルの種類の数は、直径及び/又は深さが互いに異なるディンプルの種類の数をいい、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上であることが推奨される。なお、上限としては8種以下、特に6種以下であることが推奨される。
【0099】
また、ディンプルの総数は、特に制限されるものではないが、好ましくは250個以上、より好ましくは300個以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、500個以下、好ましくは455個以下にすることが推奨される。ディンプル総数が少なすぎても、ディンプル総数が多すぎても、最適な揚力が得られず、飛ばなくなる場合がある。
【0100】
また、本発明において、上記塗装を行う際には、特開平10−234884号公報に開示されている塗料組成物、即ち、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを反応させて得られる水酸基含有ポリエステルと、無黄変ポリイソシアネートとを含有し、前記の多価アルコール成分の少なくとも一部が、分子内に脂環構造を有するゴルフボール用塗料組成物、もしくは、特開2003−253201号公報に開示されている塗料組成物、即ち、水酸基価が30〜180mgKOH/g(固形分)であるポリエステル及び/又はポリエーテル含有アクリルポリオール、及びポリイソシアネートを含むゴルフボール用塗料組成物であって、成分がアクリル系重合体からなる主鎖とポリエステル及び/又はポリエーテルからなる側鎖とから構成されており、イソシアネート基と水酸基のモル比が[NCO]/[OH]=0.5〜1.5であるゴルフボール用塗料組成物を用いることが特に好適である。当該塗料組成物は、凝集破壊強度に優れ、ゴルフクラブによる繰り返し打撃に耐える耐衝撃性、バンカーショットに耐える耐砂摩耗性、優れた耐草汁汚染性、耐候性及び耐水性に優れる塗料組成物であるが、本発明におけるカバー層と良好に密着させることが可能であることが知見されたものである。
【0101】
本発明の製造方法を用いて得られる多層構造ソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上に形成することができる。その重量は、特に制限されるものではないが、通常45.0g以上、好ましくは45.2g以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、45.93g以下とすることが好適である。
【0102】
上記の多層構造ソリッドゴルフボールは上記コアと上記カバーとを具備し、好ましくはカバー表面に多数のディンプルを具備したものである。この場合、ボール全体のたわみ量は、特に制限されるものではないが、ボールに対し初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量として、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下である。当該たわみ変形量が少なすぎると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合があり、一方、大きすぎると、打感が鈍くなると共に、反発性が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0104】
〔実施例1〜
6、参考例1、比較例1,2〕
下記表1に示すゴム組成物を調製し、得られた組成物を155℃、17分間の条件で加硫成形して外径39.3mmのソリッドコアを形成した。次いで、上記ソリッドコアの表面をセンタレス研磨により研磨した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
BR01:JSR社製、Ni触媒で合成されたポリブタジエンゴム、シス−1,4−結合含量95%、ムーニー粘度(ML
1+4(100℃))45、分子量分布Mw/Mn4.1
酸化亜鉛:堺化学工業社製、商品名「酸化亜鉛3種」
硫酸バリウム:堺化学工業社製、商品名「沈降性硫酸バリウム♯100」
ノクラックNS−6:大内新興化学社製、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留工業社製
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:東京化成工業社製
パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド
トリゴノックス29−40:アクゾノーベル社製、ジクミルパーオキサイド
【0107】
上記で得られたソリッドコアを、表2に示す処理液が入った表面処理槽に表4に示す条件で浸漬した。なお、表2中のpHは、堀場製作所社製のpHメータ「Navih D−52」を用いて測定した値である。
【0108】
【表2】
【0109】
表2中の成分の詳細は以下の通りである。
ネオクロール60G:四国化成工業社製、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
【0110】
次に、表面処理後のソリッドコアを、水が入った洗浄漕に表4に示す条件で浸漬した。所定時間浸漬後、洗浄槽からソリッドコアを取り出し、室温にて自然乾燥させた。
【0111】
次に、表3に示す各成分を200℃で混練型二軸押出機にてミキシングし、ペレット状のカバー材を得た。得られたカバー材を、上記で得たソリッドコアを配置した金型内に射出し、厚さ1.7mmのカバーを形成してツーピースソリッドゴルフボールを作製した。
【0112】
【表3】
【0113】
表3中の各成分の詳細は以下の通りである。
パンデックスT8195:DICバイエルポリマー社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
酸化チタン:石原産業社製
【0114】
表4に、作製したゴルフボールの諸性能を示す。
【0115】
【表4】
【0116】
[ボールの諸物性の評価]
コアの外径(mm)
表面を5点測定した平均値。
カバーの厚み(mm)
(ボール外径−コア外径)÷2として算出した。
カバー材の材料硬度
カバー材を厚さ2mmのシート状にプレス成形し、成形したシートを厚さ6mm以上に重ね合わせて、ASTM D2240に準じてタイプDデュロメータを用いて測定した硬度。
ボールの外径(mm)
ディンプルのない部分を5点測定した平均値。
耐擦過傷性(ピール試験)
試験装置として、つかみ具、駆動装置、力計、記録装置から構成される引張試験機を用いた。
ゴルフボールを回転可能な固定用冶具に取り付け、幅4±0.3mmの厚みの帯状に切り込みを入れた。測定部位が半球状の金型を用いた射出成形によるカバー層を含む場合、少なくとも1個の射出ゲート及び少なくとも1個の極部が含まれるように切り込みを入れることに注意する。この場合、上記の“極部”とは、1個又は複数個の射出ゲートを大円線で囲んだ部位を赤道と仮定した場合、北極又は南極を意味する。
極部に切れ目を入れ、約20mm剥離させ、試験装置のつかみ具に固定出来る様にした。
切込みを入れたゴルフボールを、ベアリングを配した固定用冶具に設置し、上部開口部にて帯状試験片端をつかみ具に固定し、23±2℃の環境下で、試験速度50mm/minで引張試験測定し、測定個数3個の平均値を求めた。
上記で得られた結果について以下の基準で評価した。
◎:試料の平均値が1.5kgfを超えても全てのボールで荷重低下が見られなかった。
○:試料の平均値が1.5kgf未満で3個中の1〜2個のボールに荷重低下が見られた。
△:試料の平均値が1.5kgf未満で全てのボールに荷重低下が見られた。
打撃耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ゴルフボールの耐久性を評価した。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sとした。各ボールについて、初期10回の平均初速対比で、初速が97%以下になった時の回数を耐久性低下と判断した。表4には測定個数3個の平均値を記載した。
なお、表4において、発射回数が1000回を超えても耐久性低下が確認されなかったボールについては、全て「1000」と表記した。