(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同様の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
本発明者らは、本発明の課題(生産性向上、充填性向上、端子間の樹脂噛み防止)を解決する手段として、複数個の積層体を形成した後に行う接合工程において、電子部品が有する端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥し、半田層を介して端子どうしを繋げる手段を検討した。
【0013】
上記課題に対して、第1電子部品、第1樹脂層、第2電子部品を積層した積層体を形成する場合、加熱・加圧を行っている時点ではこれら電子部品の端子間に介在している樹脂
層を当該領域から排斥し、半田層を介して端子どうしを繋げることができる。
しかし、その後、別の積層体を形成するために荷重を開放すると、端子間に樹脂層が入り込み(樹脂噛みの発生)、端子−半田層−端子の連結状態が解消されることがある。そして、その後これら端子間の接合を行っても、上記荷重開放時に端子間に侵入した樹脂層を十分に排斥できない場合がある。
【0014】
本発明者らは、接合時に端子間に介在する樹脂層を十分に排斥できない理由を検討した結果、積層体形成時に作用させる圧力により半田層を潰し過ぎていること、すなわち、接合工程の前の段階で半田層が充分な高さを有していないことが原因であることを見出した。そして、積層体形成時に半田層が潰れ過ぎないように制御し、接合前に充分な半田層の高さを確保しておき、第2の荷重を加える際に半田層が十分に押し潰されるように制御するとともに、複数個の積層体をまとめて接合することにより、接合時に端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥でき、接合工程を含めた電子装置の製造に際して生産性を向上させることができることを見出した。
以下、このような新たな知見に基づいた本発明の第1の実施形態の構成を、
図1〜
図12を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1には、本実施形態の電子装置の製造方法の工程の流れの一例(第1の実施形態)を示すフローチャートが示されている。
図2〜12には、本実施形態の電子装置の製造工程模式図の一例が示されている。
【0015】
図1に示した、本発明の電子装置の製造方法の実施形態の一例は、第1積層工程S10と、第1開放工程S20と、第2積層工程S30と、第2開放工程S40と、第1接合工程S50と、半田ボール形成工程S60と、設置工程S70と、第2接合工程S80とを有するものである。
<第1積層工程S10>
第1積層工程S10は、第1の面の複数の領域に第1a端子を有するとともに、上記第1の面に対応する第2の面の複数の領域に第1b端子を有する第1電子部品、第1樹脂層、第2端子を有する第2電子部品を、上記第1a端子と上記第2端子とが、上記第1樹脂層を挟んで対峙するように積層するとともに、上記第1樹脂層が溶融し、かつ、上記第1a端子及び上記第2端子の少なくとも一方が備える第1半田層が溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第1Aの荷重を加えるものであり、第1積層体を形成する前段工程に相当するものである。
以下、具体例を用いて、当該工程を詳細に説明する。
【0016】
まず、例えば、
図2に示すように、第1電子部品としてインターポーザ基板10を、第2電子部品として半導体素子12Aを用意する。
【0017】
インターポーザ基板10は、基板表面に、半導体素子12Aに接続される第1a端子101Aが設けられたものである。インターポーザ基板10の他方の基板表面(裏面)側には、第1b端子102Aが設けられている。
【0018】
上記第1a端子101Aと第1b端子102Aとは、インターポーザ基板10に埋め込まれたビア103Aで接続されている。
【0019】
インターポーザ基板10が有する第1a端子101A、及び、第1b端子102Aを構成する成分としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、基板側から、銅層、ニッケル層、金層の順に積層された構造とすることができる。
【0020】
また、ビア103Aは、例えば、銅等の金属や、不純物がドープされた導電性のポリシ
リコンで構成することができる。
インターポーザ基板10を構成する素材としては特に限定されないが、例えば、ガラス繊維樹脂含浸基材を用いた有機基板、シリコン基板、ガラス基板、セラミック基板などの無機基板などが挙げられる。
上記シリコン基板の場合、TSV構造(Through Silicon Via)構造を有するものを適用することができる。また、ガラス基板の場合、TGV(Through Glass Via)構造を有するものを適用することができる。
さらに、シリコン基板、ガラス基板ともに、例えば、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等から構成されるビルドアップ層を有していてもよい。
これらのインターポーザ基板の中でも、シリコン基板、ガラス基板が好ましい。これにより、熱膨張挙動を小さく抑えることができる。
第1電子部品としてインターポーザ基板を用いるとき、その厚みとしては特に限定されないが、例えば、50μm以上、600μm以下とすることができる。より好ましくは、100μm以上、500μm以下とすることができる。これにより、電子装置の反りを抑制することができる。
また、第2電子部品としては、上記に例示した半導体素子として、例えば、DRAM、SRAM等のメモリチップやロジックチップ、CMOSイメージセンサー、MEMSチップなどを挙げることができる。
【0021】
半導体素子12Aには、インターポーザ基板の端子101Aと半田層122Aを介して接合される第2端子121Aが設けられている。
【0022】
図2に示した形態では、第2端子121Aは、表面に第1半田層122Aを有する。第2端子121Aは、例えば、銅層上にニッケル層を積層し、さらにこのニッケル層を被覆するように第1半田層122Aを設けた構造である。
第1半田層122Aの材料は、特に限定されず、錫、銀、鉛、亜鉛、ビスマス、インジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む合金等が挙げられる。これらのうち、錫、銀、鉛、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む合金が好ましい。第1半田層122Aの融点は、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、また、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0023】
なお、上記第1半田層122Aは、接続される第1電子部品の第1a端子101Aと、第2電子部品の第2端子121Aとの少なくとも一方に形成されていればよい。
図2では、第2端子121Aが第1半田層122Aを有しているが、この形態に限定されるものではなく、第2端子121Aの代わりに第1a端子101Aが第1半田層を有していてもよいし、あるいは、第1a端子101A及び第2端子121Aの両方が第1半田層を有していても構わない。
【0024】
第2電子部品である半導体素子12Aの第2端子121Aが設けられた側の表面には、第1樹脂層11Aが設けられている。第1樹脂層11Aは、第2端子121A及び第1半田層122Aを被覆している。この第1樹脂層11Aは、第1電子部品と第2電子部品とを積層後、第1電子部品と第2電子部品との隙間を埋めて封止するのに用いられるものである。
【0025】
なお、本発明の形態の場合、互いに接続される電子部品、すなわち、第1電子部品及び第2電子部品の少なくとも一方が第1樹脂層を有していればよい。
図2に示した例では、第2電子部品である半導体素子12Aの第2端子121A側に第1樹脂層11Aを有しているが、この形態に限定されず、第1電子部品であるインターポーザ基板の第1a端子101A側に第1樹脂層を有してもよいし、あるいは、第1電子部品及び第2電子部品の両
方が第1樹脂層を有していても構わない。
【0026】
第1樹脂層は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成されていてもよい。また、第1樹脂層を形成する樹脂組成物は、フラックス活性を有するフラックス活性化合物を含有することができる。フラックス活性化合物を含むことにより、第1電子部品と第2電子部品とを半田接合した際の接続信頼性を向上させることができる。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂等を用いることができる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂が好適に用いられる。
第1樹脂層が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成されている場合、樹脂組成物全体に対する熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されないが、15質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
第1樹脂層を形成する樹脂組成物に含有されるフラックス活性化合物としては、半田接合に用いられるものであれば特に制限されないが、カルボキシル基又はフェノール性水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びフェノール性水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
【0029】
第1樹脂層がフラックス活性化合物を含む樹脂組成物から形成されている場合、樹脂組成物全体に対するフラックス活性化合物の含有量は特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは3質量%以上である。また、30質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0030】
このような樹脂組成物を用いて第1樹脂層を形成した場合、フラックス活性化合物が有するフラックス作用により、半田接合の際に、半田層や端子の表面の酸化被膜を除去することができる。
第1樹脂層は、特に限定されないが、無機充填材を含む樹脂組成物から形成されていてもよい。第1樹脂層中に無機充填材を含有させることで、第1樹脂層の最低溶融粘度を高め、電子部品間に隙間が形成されてしまうことを抑制することができるとともに、第1樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができる。
無機充填材としては特に限定されないが、例えば、シリカや、アルミナ等が挙げられる。
【0031】
上述したように、第1電子部品及び/又は第2電子部品は第1樹脂層を有していればよいが、例えば、
図2に示したように第2電子部品として半導体素子を用い、第2電子部品の第2端子側に第1樹脂層を設ける場合は、例えば、以下の方法により実施することができる。また、第1電子部品の第1a端子側に第1樹脂層を設ける場合も、同様の方法を採用することができる。なお、第1電子部品の第1a端子側に第1樹脂層を設ける場合は、通常、第2電子部品が搭載される領域に第1樹脂層を形成する。
(1)個片化後の第2電子部品(例えば、半導体素子)に対し、フィルム状の第1樹脂層を貼り付けることで、第1樹脂層付きの第2電子部品を得る。
(2)複数の第2電子部品(例えば、半導体素子)が個片化される前のウェハに、フィルム状の第1樹脂層を貼り付ける。その後、ウェハをダイシングすることで、第1樹脂層付きの第2電子部品を得る。
(3)複数の第2電子部品(例えば、半導体素子)が個片化される前のウェハに、スピン
コート法により第1樹脂層を形成する。その後、ウェハをダイシングすることで、第1樹脂層付きの第2電子部品を得る。
【0032】
本発明の形態で用いられる第2電子部品として、半導体素子を用いる場合、その厚みとしては特に限定されないが、10μm以上が好ましく、40μm以上がさらに好ましく、45μm以上が特に好ましい。また、400μm以下が好ましく、150μm以下がさらに好ましく、110μm以下が特に好ましい。
これにより、本発明により製造された電子装置を非常に薄いものとすることができる。
【0033】
上述したように、第1電子部品10としてインターポーザ基板、第2電子部品12Aとして半導体素子(第1樹脂層付き半導体素子)を用意した後、第1電子部品に設けられた第1a端子101Aと、第2電子部品12Aに設けられた第2端子121Aとが、第1樹脂層11Aを介して対峙するように、第1電子部品10、第1樹脂層11A、第2電子部品12Aを積層した積層体を形成する。
【0034】
このとき、第1電子部品10に形成されたアライメントマークと、第2電子部品12Aに形成されたアライメントマークとを確認し、位置あわせを行ってもよい。
【0035】
その後、この積層体に対して、第1樹脂層11Aが溶融し、かつ、第1半田層122Aが溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第1Aの荷重を加えることで、
図3に示すように、第1電子部品10、第1樹脂層11A、及び、第2電子部品12Aがこの順に圧着した積層体を形成することができる。
【0036】
上記第1積層工程は、
図3に示したように、例えば、ヒータが内蔵された一対の挟圧部材51及び52で加熱しながら、第1電子部品10、第1樹脂層11A、第2電子部品12Aを挟みこみ(挟圧し)、荷重を加えることで、第1電子部品10、第1樹脂層11A、及び、第2電子部品12Aを圧着する。フリップチップボンダーを使用して、大気圧下、大気中で、当該加熱を行うとともに荷重を加えることもできる。
【0037】
ここで、上記第1積層工程における、「第1樹脂層11Aが溶融し、かつ、第1半田層122Aが溶融しない温度」としては、例えば、60℃以上とすることが好ましく、80℃以上とすることがさらに好ましい。また、220℃以下とすることが好ましく、180℃以下とすることがさらに好ましい。
第1積層工程における温度を上記範囲とすることにより、樹脂層の溶融粘度を適切に制御とすることができる。
なお、本工程における加熱は、第1樹脂層11Aの硬化反応は進行してもよいが、完全硬化しないような加熱条件で実施する。
【0038】
また、上記第1積層工程において、一対の挟圧部材で加える第1Aの荷重の大きさとしては、具体的には、0.005MPa以上とすることが好ましい。また、0.4MPa以下とすることが好ましく、0.2MPa以下とすることがさらに好ましい。
第1Aの荷重の大きさを上記範囲とすることにより、第1半田層122Aを大きく押し潰すことを抑制することができ、これにより、後述する接合工程において高い信頼性を有する半田接合を行うことができる。
ここで、上記第1Aの荷重の大きさは、積層時の第1樹脂層の溶融粘度を考慮した上で、上記の数値範囲内で、適宜調整することができる。
上記第1Aの荷重を大きくし過ぎると、第1半田層122Aが端子101A及び端子121A間に挟まれて強く挟圧され、結果、大きく押し潰されてしまう。そして、このように第1半田層122Aが大きく押し潰されてしまうと、上述した通り、第1半田層122Aの高さが低くなり過ぎ、その後の半田接合工程を経ても端子間の樹脂層を十分に排斥でき
なくなる。
【0039】
そこで、本実施形態では、この荷重(第1Aの荷重)を制御することにより、第1半田層122Aが潰され過ぎないようにする。これにより、第1半田層122Aが潰れ過ぎず、かつ、後述する第1接合工程において押し潰されることで端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥でき、接続信頼性を確保することができる。
【0040】
なお、第1積層工程(加熱及び加圧下)においては、第1a端子101A、第1半田層122A、及び、第2端子121Aが直接繋がってもよい。この時、半田層122Aは、第1a端子101A及び第2端子121A間に挟まれて多少変形した状態であってもよいし、ほとんど変形していない状態であってもよいし、または、全く変形していない状態であってもよい。また、第1a端子101A、第1半田層122A、及び、第2端子121Aが直接繋がらず、第1a端子101Aと第1半田層122Aとの間に、第1樹脂層11Aがわずかに存在する状態であってもよい。
<第1開放工程S20>
第1開放工程S20は、第1積層工程S10の後に行われる。第1開放工程S20では、挟圧部材による第1積層体への荷重を開放し、これにより、第1積層体14Aが得られる。
【0041】
例えば、
図3に示すように一対の挟圧部材51及び52で挟み込み、所定の荷重を加えていた第1電子部品、第1樹脂層、第2電子部品の積層体から、荷重を開放する。
【0042】
本発明者らは、当該荷重の開放により、第1a端子101Aと第1半田層122Aとの間に、第1樹脂層11Aが侵入し得ることを確認している。
【0043】
当該工程の後、第1積層体14Aにおける第1電子部品と第2電子部品の位置が正確であるかどうかを確認してもよい。当該確認は、例えば、X線顕微鏡や、赤外線顕微鏡を使用して行うことができる。
<第2積層工程S30>
第2積層工程S30は、上記第1開放工程S20の後に行われる。
第2積層工程S30は、
図4、
図5に示すように、上述した第1積層体14Aを形成した領域とは異なる第1電子部品上の領域に、第1積層工程で用いたのと同様の第1電子部品10、第1樹脂層11B、第2電子部品12Bを積層し、第2積層体14Bを形成する前段工程に相当するものである。本工程は、第1積層体14Aを形成した前段工程と同様の手法により行うことができる。
【0044】
第2積層工程において用いられる第2電子部品12Bは、第1積層工程において用いられる第2電子部品12Aと同じものを用いてもよいし、異なったものを用いることもできる。
【0045】
この第2積層工程においては、上記第1積層工程と同様に、第1樹脂層11Bが溶融し、かつ、第1半田層122Bが溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第1Bの荷重を加える。
ここで、「第1樹脂層11Bが溶融し、かつ、第1半田層122Bが溶融しない温度」としては、上記第1積層工程の際と同様の水準とすることができる。これにより、第1積層工程の際と同様の作用効果を得ることができる。
そして、一対の挟圧部材で加える第1Bの荷重の大きさとしても、上記第1積層工程(第1Aの荷重)と同様の水準とすることができる。これにより、第1積層工程の際と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
また、第2積層工程においても、上記第1積層工程と同様に、第2積層工程において加える荷重(第1Bの荷重)を制御することにより、第1半田層122Bが潰され過ぎないようにする。これにより、第1半田層122Bが潰れ過ぎず、かつ、後述する第1接合工程において押し潰されることで端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥でき、接続信頼性を確保することができる。
【0047】
また、第1積層体14Aを形成する際に加える荷重(第1Aの荷重)と、第2積層体14Bを形成する際に加える(第1Bの荷重)とは、用いる第2電子部品の種類や大きさなどにより、適宜最適な水準を選択して適用することができる。
【0048】
そして、後述するように、第1積層工程、第1開放工程、第2積層工程、第2開放工程の後、第2積層工程と第2開放工程とをセットとし、これを所定回数繰り返すことにより、第2積層体を複数形成する形態においても、用いられる第2電子部品、及び、加えられる荷重については上述のように適宜選択することができる。
<第2開放工程S40>
第2開放工程S40は、第2積層工程S30の後に行われる。第2開放工程S40では、挟圧部材による第2積層体への荷重を開放し、これにより、
図6に示したように第1積層体と同じ構成の第2積層体14Bが得られる。
【0049】
なお、第1積層体、第2積層体において、第1電子部品に積層された第1樹脂層と第2電子部品との大きさ(面積)は、同じであってもよいし、第1樹脂層のほうが大きくてもよいし、第2電子部品のほうが大きくてもよい。
<第1接合工程S50>
次に、第1接合工程について説明する。
第1接合工程S50は、上述した方法により得られた第1積層体と第2積層体とをまとめて、第1樹脂層が溶融し、かつ、第1半田層が溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第2の荷重を加えることで、各端子間に介在する樹脂層を排斥し、第1a端子、第1半田層、及び、第2端子を直接繋げ、次いで、第1半田層が溶融する温度で加熱しながら一対の挟圧部材で第3の荷重を加えることで、第1a端子、及び、第2端子間を半田接合して第3積層体を形成するものである。
【0050】
第1接合工程は、前段工程と後段工程を有する。まず、前段工程について説明する。
前段工程は、まず、第1積層体14Aと第2積層体14Bとをまとめて、第1樹脂層(11A、11B)が溶融し、かつ、第1半田層(122A、122B)が溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第2の荷重を加え、各端子間(本実施形態の場合は、第1a端子101Aと第1半田層122Aとの間、及び、第1a端子101Bと第1半田層122Bとの間)に介在する樹脂層を排斥し、第1a端子、第1半田層、及び、第2端子を直接繋げ、例えば、
図7に示された状態とするものである。
ここで、「第1樹脂層が溶融し、かつ、第1半田層が溶融しない温度」としては、例えば、60℃以上とすることが好ましく、80℃以上とすることがさらに好ましい。また、220℃以下とすることが好ましく、180℃以下とすることがさらに好ましい。
前段工程における温度を上記範囲内とすることにより、端子間に介在する樹脂層を効率的に排斥とすることができる。
【0051】
この方法としては、例えば、ヒータが内蔵された一対の挟圧部材53及び54で加熱しながら、第1積層体14A、第2積層体14Bをまとめて挟みこみ(挟圧し)、荷重をかけることで、第1電子部品10、第2電子部品(12A、12B)、第1樹脂層(11A、11B)を圧着する方法を採用することができる。また、フリップチップボンダーを使用して、大気圧下、大気中で、当該加熱を行いながら荷重を作用させてもよい。
【0052】
なお、いずれの方法においても、第1樹脂層(11A、11B)の硬化反応は進行してよいが、完全硬化しないような加熱条件で実施する。
【0053】
第1接合工程の前段工程においては、第1積層工程において第1Aの荷重を制御し、さらに、第2積層工程において第1Bの荷重を制御したのと同様に、第2の荷重を制御する。
【0054】
具体的には、第1接合工程の前段工程において加える第2の荷重は、第1積層工程において加える第1Aの荷重、及び、第2積層工程において加える第1Bの荷重のいずれよりも大きいものである。
【0055】
これにより、第1半田層は、第1積層工程および第2積層工程において変形量(押し潰される量)が小さくなるように制御され、第2の荷重を加える前の段階で充分な高さを有している。そして、この第1半田層に第1Aの荷重、及び、第1Bの荷重のいずれよりも大きい第2の荷重を加えることにより、第1半田層を充分に押し潰すことができ、端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥することができ、電子装置の接続信頼性を確保することができる。
【0056】
第2の荷重は、具体的には、0.1MPa以上とすることが好ましい。また、1MPa以下とすることが好ましく、0.5MPa以下とすることがさらに好ましい。
第2の荷重の大きさを上記範囲内とすることにより、上記作用をより効果的に発現させることができる。
ここで、上記第2の荷重の大きさは、積層時の第1樹脂層の溶融粘度を考慮した上で、上記の数値範囲内で、適宜調整することができる。
【0057】
なお、第1樹脂層が溶融し、かつ、第1半田層が溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第2の荷重を加えている状態(加熱及び加圧下)においては、
図7に示すように、第1a端子(101A、101B)、第1半田層(122A、122B)、及び第2端子(121A、121B)が直接繋がった状態となる。このとき、第1半田層は、第1a端子及び第2端子間に挟まれ、通常、変形した状態となっている。
【0058】
ここまでの工程では、端子間に位置する第1半田層は溶融しておらず、第1a端子と第2端子どうしは、半田接合していない。
【0059】
次に、第1接合工程の後段工程について説明する。
第1接合工程の後段工程では、
図8に示すように、第1半田層が溶融する温度で加熱しながら一対の挟圧部材で第3の荷重を加えることで、第1a端子、及び、第2端子を第1半田層122A、同122Bを介して半田接合して第3積層体を形成する。第3積層体16が形成された状態を
図9に示す。
ここで、「第1半田層が溶融する温度」としては、例えば、110℃以上、280℃以下とすることができる。後段工程における温度を上記範囲内とすることにより、第1半田層を均一に溶融させることができる。
【0060】
上記第1接合工程の後段工程は、例えば、第1接合工程の前段工程の後、ヒータが内蔵された一対の挟圧部材53及び54で加熱しながら、第1積層体14A、第2積層体14Bをまとめて挟みこみ(挟圧し)、荷重を加えることで、第1・第2積層体に荷重をかけている状態を維持したまま、装置の加熱及び加圧の設定を変更し、そのまま連続的に行うことができる。すなわち、第1接合工程の前段工程と後段工程とは、連続して実施することができる。図面では、
図7が前段工程、
図8が後段工程に相当する。
【0061】
第1接合工程の後段工程で加えられる第3の荷重の大きさは、具体的には、0.005MPa以上とすることが好ましい。また、1MPa以下とすることが好ましく、0.5MPa以下とすることがさらに好ましい。
第3の荷重の大きさを上記下限値以上とすることにより、接合する端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥した状態を保持することができる。また、上記上限値以下とすることにより、接合する端子間の位置ずれを抑制することができる。
【0062】
ここで、上記第3の荷重の大きさは、接合時の第1樹脂層の溶融粘度を考慮した上で、上記の数値範囲内で、適宜調整することができる。
【0063】
ここで、第1接合工程において、各端子間が半田接合されるとは、次のことをいう。第1積層体、第2積層体が第1半田層の融点以上に加熱され、第1電子部品と第2電子部品との接合に使用される第1半田層が溶融するとともに、各端子(101Aと121A、101Bと121B)どうしが第1半田層を介して接合し、少なくとも一部が合金を形成している状態である。
なお、上記第1接合工程において、第1積層体、第2積層体の各端子間を半田接合して形成した第3積層体を、さらに加熱することで、第1樹脂層の硬化を進行させた第4積層体を得ることができる。
第3積層体をさらに加熱し、第1樹脂層を硬化させる方法としては特に限定されないが、例えば、上記第1接合工程において、挟圧部材を用いて第3積層体を形成する際に、所定温度・時間で加熱することにより、第3積層体の形成と第4積層体の形成を実質的に同時に実施する方法、あるいは、加熱した流体を入れることができる容器内に第3積層体を設置し、加熱した流体により第3積層体を加熱・加圧する方法などを適用することができる。ここで流体としては、気体が好ましく、例えば、空気、不活性ガス(窒素ガス、希ガス)等が挙げられる。加熱した流体により加熱・加圧する方法により電子部品間のボイドの発生を低減することができる。
第4積層体の形態も、
図9に示したものと同じである。
<半田ボール形成工程>
次に、上記第3積層体あるいは第4積層体を構成する第1電子部品の第1b端子の少なくとも一部に、半田ボール131A、131Bを形成する。これにより、第1電子装置17を製造することができる。
第1電子装置17を
図10に示す。
【0064】
本工程において、第1電子部品の第1b端子に半田ボールを形成する方法としては特に限定されないが、例えば、第1電子部品の第1b端子側のパッドにマイクロボールマウンタなどを用いて半田ボールを搭載した後、IRリフロー装置などを用いて加熱し、半田ボールと第1電子部品の第1b端子とを接合することにより形成することができる。
<設置工程>
本工程は、第3端子を有する第3電子部品13を準備する工程と、第1電子装置17の半田ボール(131A、131B)と上記第3端子とが対峙するように、第3電子部品上に第1電子装置を設置する工程である。設置した状態を
図11に示す。
【0065】
第3端子を有する第3電子部品としては特に限定されないが、例えば、樹脂基板、シリコン基板、ガラス基板、セラミック基板などを適用することができる。
【0066】
第3電子部品の表面には、第3端子141(第1電子装置17接続用端子)が形成されている。第3端子は、第1電子部品の第1a端子などと同様の構造、材料で構成することができ、表面に半田層を有することもできる。第3端子は、第1電子装置の第1b端子に接続されるものである。
【0067】
また、第3電子部品上に第1電子装置を設置する方法としても特に限定されないが、例えば、マウンターなどを適用することができる。
<第2接合工程>
本工程は、上記設置工程の後、第1b端子と第3端子とを溶融した半田ボールを介して半田接合する工程である。これにより、第2電子装置18を製造することができる。第2接合工程が終了した第2電子装置を
図12に示す。
本工程を実施する方法としては特に限定されないが、例えば、半田リフロー装置などを適用することができる。
半田リフロー装置を用いた場合の処理条件としては、例えば、ピーク温度245〜260℃、時間10〜20秒間とすることができる。
(第2の実施形態)
以上、本願発明の電子装置の製造方法の第1の実施形態について説明したが、本願発明の実施形態はこれに限定されるものではない。
【0068】
例えば、第1積層工程、第1開放工程、第2積層工程、第2開放工程の後、第2積層工程と第2開放工程とをセットとし、これを所定回数繰り返すことで、第2積層体を複数形成することもできる。第2積層体の数としては特に限定されないが、例えば、1〜63個とすることができる。好ましくは3〜35個、さらに好ましくは、3〜15個とすることができる。
【0069】
その後、第1接合工程以降は上述した第1の実施形態と同様に行い、第1電子装置、第2電子装置を製造することができる。
【0070】
以上説明したように、本願発明の電子装置の製造方法では、第1電子部品、第1樹脂層、第2電子部品を接合する際、複数個の積層体を半田接合は行わずに積層した後、これら複数の第2電子部品と第1電子部品間(端子間)の半田接合をまとめて行う技術において発生しうる端子間の樹脂噛みに起因した端子間の接続不良の問題を解決することができるとともに、複数個の積層体を1個ずつ半田接合した場合と比較して、接合回数を1回とすることができ、複数の積層体を有する電子装置を効率良く製造することができる。さらに、接合回数を1回とすることができることから、電子装置製造時の半導体チップ等に対する熱ダメージを低減させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、第1積層工程、及び、第2積層工程において、第1半田層が潰れ過ぎないように制御しているので、半田接合前の段階で第1半田層の高さを十分に確保することができる。このため、第1接合工程の前段工程において第2の荷重を加えた際に第1半田層が十分に押し潰され、各端子間に介在する樹脂層を当該領域から排斥し、第1半田層を介して各端子間を繋げることができる。そして、当該状態を維持したまま半田接合を行うことで、端子間に樹脂層が介在しない状態で、端子間を半田接合できるので、良好な端子間接続ができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
1.樹脂フィルム(第1樹脂層)の作製
フェノールノボラック樹脂9g(住友ベークライト株式会社製、商品名:PR−55617)と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂26.8g(DIC株式会社製、商品名:EPICLON−840S)と、フェノールフタリン9g(東京化成工業株式会社製)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.8g(新日化エポキシ製造株式会社製、商品名:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、商品名:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−403)と、
をメチルエチルケトンに溶解し、ここに、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、商品名:SC1050、平均粒径0.25μm)を、混合・撹拌し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
【0073】
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み26μmの樹脂フィルムを得た。
【0074】
この樹脂フィルムの80℃における溶融粘度は1,200Pa・s、150℃における溶融粘度は230Pa・sであった。
2.樹脂フィルム付きシリコンチップ(第1樹脂層+第2電子装置)の作製
ダイシングフィルムが形成された8インチシリコンウエハーを準備した。このシリコンウエハーの厚みは100μmtで、ダイシングフィルムが形成された面と反対側の面には、φ40μm、高さ8μmの銅バンプが形成されており、その上に厚み6μmのSn−3.5Ag半田層が形成されている。ダイシングフィルムが形成された面側には、バンプは形成されていない。
真空ラミネーター(名機製作所株式会製、型番:MVLP−500/600−2A)を用い、95℃/30sec/0.8MPaの条件で、8インチシリコンウエハーの銅バンプが形成されている面側に上記で得られた樹脂フィルムをラミネートした。
次に、ダイシング装置(株式会社ディスコ製、型番:DFD−6340)を用い、以下の条件で(ダイシングフィルム/シリコンウエハー/樹脂フィルム)積層体をダイシングし、サイズが6mm角、半田バンプ数1,089(バンプピッチ180μm、エリアアレイ配置)である樹脂フィルム付きシリコンチップを得た。
<ダイシング条件>
ダイシング速度 :20mm/sec
スピンドル回転数 :40,000rpm
刃品番 :ZH05−SD 3500−N1−50 BB(株式会社ディスコ製)
3.シリコン基板(第1電子部品)の準備
第1電子部品として、シリコンチップが搭載される側(表側:第1a端子側)にφ40μm、高さ10μmのパッドが2,178個形成され、はんだボールが搭載される側(裏側:第1b端子側)に、φ70μmパッドが3,200個形成されたシリコン基板を準備した。シリコン基板の表側と裏側のパッド表面には、Ni/Auめっきが形成されており、シリコン基板のサイズは20mm×10mm、厚みは0.4mmである。
シリコン基板には、シリコン基板の表裏を導通するTSV(Through Silicon Via)が形成されている。また、シリコン基板は、サイズが10mm角で、表側にパッド数1,089(パッドピッチ180μm、エリアアレイ配置)が形成され、裏側にパッド数1,600(パッドピッチ200μm、エリアアレイ配置)が形成された領域2個からなる。
4.積層体(第1積層体、第2積層体)の作製
フリップチップボンダー(パナソニックファクトリーソリューションズ株式会社製、型番:FCB3)を用いて、上記で得られた樹脂フィルム付きシリコンチップをシリコン基板上に積層した。
フリップチップボンダーの下側ステージを100℃に設定し、その上にシリコン基板を搭載した。次に、150℃に設定したボンディングツールに樹脂フィルム付きシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラでシリコン基板と樹脂フィルム付きシリコンチップを位置合せし、荷重0.1MPa/2secの条件で積層した後、荷重を開放して、(シリコン基板/樹脂フィルム/シリコンチップ)積層体(第1積層体)を作製した。
なお、ここでは、シリコン基板の任意の1個の領域に樹脂フィルム付きシリコンチップを搭載した。
次に、上記で得られた(シリコン基板/樹脂フィルム/シリコンチップ)積層体を100℃に設定したフリップチップボンダーの下側ステージに搭載し、150℃に設定したボンディングツールに樹脂フィルム付きシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラで上記積層体におけるシリコンチップが搭載されていない領域のシリコン基板と樹脂フィルム付きシリコンチップを位置合せし、荷重0.1MPa/2secの条件で積層した後、荷重を開放して積層体(第2積層体)を得た。
5.積層体の接合(第1接合工程:第3積層体の製造)
フリップチップボンダーを用いて、上記で得られた積層体(第1積層体と第2積層体)のシリコンチップが積層された2つの領域全てをまとめて1つのボンディングツールで加圧・加熱して各積層体の(半田バンプ/パッド)間の接合を行った。
まず、フリップチップボンダーの下側ステージを100℃に設定し、上記積層体を搭載した。150℃に設定したボンディングツールで、荷重0.5MPa/12secの条件で積層体を加圧し、次いで、ボンディングツールを急昇温し、ボンディングツールの温度を280℃に設定し、0.5MPa/12secで加圧して、各積層体の(半田バンプ/パッド)間を半田接合し、第3積層体を得た。
次に、加圧・加熱装置(株式会社協真エンジニアリング製、型番:HPV−5050MAH−D)を用いて、第3積層体を加圧・加熱硬化した。
加圧・加熱流体として空気を用い、180℃/2hr/0.8MPaの条件で加圧・加熱硬化し、第4積層体を得た。
6.半田ボール形成(第1電子装置の製造)・2次実装(設置工程及び第2接合工程/第2電子装置の製造)
第4積層体の裏側(第1電子部品の第1b端子側)のパッドに手動式マイクロボールマウンタを用いて、φ100μmの半田ボールを搭載した後、IRリフロー装置(株式会社大和製作所製、型番:NRY−325−5Z)を用いて、最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で第1b端子と半田ボールとを接合して、第1電子装置を得た。
その後、第3端子を有するマザーボード(第3電子部品)としてFR−5基板を用意し、第3端子と上記第1電子部品の半田ボールとが対峙するように設置した後、半田リフロー装置を用いて、最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で半田接合して、第1電子装置を第3電子部品に実装し、第2電子装置を得た。
7.電子装置の評価
上記で得られた第1電子装置をエポキシ樹脂で包埋し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果(シリコン基板/シリコンチップ)間の半田接合は良好であり、また、シリコンチップのクラックが観察されなかった。さらに、(シリコン基板/シリコンチップ)間の樹脂層に空隙は観察されなかった。
(実施例2)
実施例1と同様にして、樹脂フィルム(第1樹脂層)の作製、樹脂フィルム付きシリコンチップ(第1樹脂層+第2電子部品)の作製を行った。
3.シリコン基板(第1電子部品)の準備
シリコンチップが搭載される側(表側:第1a端子側)にφ40μm、高さ10μmのパッドが4,356個形成され、はんだボールが搭載される側(裏側:第1b端子側)に、φ70μmパッドが6,400個形成されたシリコン基板を準備した。シリコン基板の表側と裏側のパッド表面には、Ni/Auめっきが形成されおり、シリコン基板のサイズは20mm角、厚みは0.4mmである。
シリコン基板には、シリコン基板の表裏を導通するTSV(Through Silicon Via)が形成されている。また、シリコン基板は、サイズが10mm角で、表側にパッド数1,089(パッドピッチ180μm、エリアアレイ配置)が形成され、裏側にパッド数1,600(パッドピッチ200μm、エリアアレイ配置)が形成された領域4個からなる。
4.積層体(第1積層体、第2積層体)の作製
フリップチップボンダーを用いて、上記で得られた樹脂フィルム付きシリコンチップをシリコン基板上に積層した。
フリップチップボンダーの下側ステージを100℃に設定し、その上にシリコン基板を搭載した。次に、150℃に設定したボンディングツールに樹脂フィルム付きシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラでシリコン基板と樹脂フィルム付きシリコンチップを位置合せし、荷重0.1MPa/2secの条件で積層した後、荷重を開放して、(シリコン基板/樹脂フィルム/シリコンチップ)積層体(第1積層体)を形成した。
なお、ここでは、シリコン基板の任意の1個の領域に樹脂フィルム付きシリコンチップを搭載した。
次に、上記で得られた(シリコン基板/樹脂フィルム/シリコンチップ)積層体を100℃に設定したフリップチップボンダーの下側ステージに搭載し、150℃に設定したボンディングツールに樹脂フィルム付きシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラで、上記積層体におけるシリコンチップが搭載されていない領域のシリコン基板と樹脂フィルム付きシリコンチップを位置合せし、荷重0.1MPa/2secの条件で積層した後、荷重を開放して、第2積層体を形成した。
さらに、シリコンチップが搭載されていない残りの2つの領域についても、上記と同様にして樹脂フィルム付きシリコンチップを積層した後、荷重を開放して、第2積層体をさらに2つ形成し、シリコン基板に4つのシリコンチップが積層された積層体を得た。
5.積層体の接合(第1接合工程:第3積層体の製造)
フリップチップボンダーを用いて、上記で得られた積層体のシリコンチップが積層された4つの領域全てをまとめて1つのボンディングツールで加圧・加熱して、各積層体の(半田バンプ/パッド)間の接合を行った。
まず、フリップチップボンダーの下側ステージを100℃に設定し、上記で得られた積層体を搭載した。150℃に設定したボンディングツールで、荷重0.5MPa/12secの条件で積層体を加圧し、次いで、ボンディングツールを急昇温し、ボンディングツールの温度を280℃に設定し、0.5MPa/12secで加圧して、各積層体の(半田バンプ/パッド)間を半田接合し、第3積層体を得た。
次に、加圧・加熱装置を用いて、第3積層体を加圧・加熱硬化した。
加圧・加熱流体として空気を用い、180℃/2hr/0.8MPaの条件で加圧・加熱硬化し、第4積層体を得た。
6.半田ボール形成(第1電子装置の製造)・2次実装(設置工程・第2接合工程/第2電子装置の製造)
第4積層体の裏側(第1電子部品の第1b端子側)のパッドに手動式マイクロボールマウンタを用いて、φ100μmの半田ボールを搭載した後、IRリフロー装置を用いて、最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で第1b端子と半田ボールとを接合して、第1電子装置を得た。。
その後、第3端子を有するマザーボード(第3電子装置)としてFR−5基板を用意し、第3端子と半田ボールとが対峙するように設置した後、半田リフロー装置を用いて、最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で半田接合して、第1電子装置を第3電子部品に実装し、第2電子装置を得た。
7.第1電子装置の評価
上記で得られた第1電子装置をエポキシ樹脂で包埋し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果(シリコン基板/シリコンチップ)間の半田接合は良好であり、また、シリコンチップのクラックが観察されなかった。さらに、(シリコン基板/シリコンチップ)間の樹脂層に空隙は観察されなかった。
(比較例1)
1.積層体の接合
フリップチップボンダーを用いて、樹脂フィルム付きシリコンチップをシリコン基板上に下記の手順で積層・接合した。
フリップチップボンダーの下側ステージを100℃に設定し、その上に実施例2で用いたのと同じシリコン基板を搭載した。次に、150℃に設定したボンディングツールに実施例1で用いたのと同じ樹脂フィルム付きシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラでシリコン基板とシリコンチップを位置合せし、荷重0.5MPa/12secの条件で積層体を加圧し、次いでボンディングツールを急昇温し、ボンディングツールの温度を280℃に設定し、0.5MPa/12secの条件で加圧して、(半田バンプ/パッド)間を半田接合し、積層体を得た。
次に、上記で得られた積層体を100℃に設定した下側ステージに搭載し、150℃に設定したボンディングツールに樹脂フィルム付きシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラで上記積層体におけるシリコンチップが搭載されていない領域のシリコン基板と樹脂フィルム付きシリコンチップを位置合せし、荷重0.5MPa/12secの条件で積層体を加圧し、次いでボンディングツールを急昇温し、ボンディングツールの温度を280℃に設定し、0.5MPa/12secの条件で加圧して、(半田バンプ/パッド)間を半田接合し、積層体を得た。
さらに、シリコンチップが搭載されていない残りの2つの領域についても、上記と同様にして樹脂フィルム付きシリコンチップを積層し、シリコン基板に4つのシリコンチップが積層・接合された積層体(積層体(a))を得た。
次に、実施例1で用いたのと同じ加圧・加熱装置を用いて積層体(a)を加圧・加熱硬化した。
加圧・加熱流体として空気を用い、180℃/2hr/0.8MPaの条件で加圧・加熱硬化し、積層体(積層体(b))を得た。
2.はんだボール搭載
積層体(b)の裏側のパッドに手動式マイクロボールマウンタを用いて、φ100μmの半田ボールを搭載した後、IRリフロー装置を用いて、最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で、積層体(b)の裏側のパッドと半田ボールとを半田接合して、電子装置を得た。
3.電子装置の評価
比較例1では、2回目、3回目、4回目の半田接合工程の前段で、ボンディングツールを280℃から150℃に冷却する必要があるが、その冷却時間はそれぞれ30秒間であった。しかし、実施例においては、冷却する必要が無く、その分生産性が向上していることが確認できた。
(比較例2)
1.液状封止樹脂組成物の作製(下記質量%は液状封止樹脂組成物全体に対する含有割合を示す)
液状エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を15.955質量%およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂を15.955質量%、硬化剤(B)として、芳香族1級アミン型硬化剤を16.383質量%、無機充填剤(C)として平均粒径0.5μm、最大粒径24μmの球状シリカを50.000質量%、アミノ基を有する液状シリコーン化合物(D)を0.016質量%、シランカップリング剤としてエポキシシランカップリング剤を1.596質量%、着色剤を0.095質量%、配合し、プラネタリーミキサーと3本ロールを用いて混合し、真空脱泡処理することにより液状封止樹脂組成物を得た。
2. シリコンチップの作製
ダイシングフィルムが形成された8インチシリコンウエハー(実施例1で用いたものと同じもの)をダイシングして、チップサイズ6mm角のシリコンチップを得た。
3.積層体の接合
実施例2で用いたものと同じシリコン基板の4つの領域のパッド形成面にフラックスを塗布し、フリップチップボンダーの下側ステージに搭載した。ボンディングツールにシリコンチップを吸着し、フリップチップボンダーの上下カメラでシリコン基板とシリコンチップを位置合せして、シリコンチップのバンプ形成面とシリコン基板のパッド形成面とが向
かい合わせになるよう積層した。
次に、上記と同様にして、シリコン基板の残り3つの領域すべてにシリコンチップを積層し、仮積層体を得た。
仮積層体をリフロー炉で最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で半田接合させた。さらに、フラックス除去洗浄を行い、積層体(積層体(c))を得た。
4.シリコンチップ間の封止
上記で得られた積層体(c)を110℃の熱板上で加熱し、積層体(c)の各シリコンチップの1辺に上記液状封止樹脂組成物をディスペンスし、シリコン基板/シリコンチップ間を充填させた後、液状封止樹脂組成物を150℃のオーブンで120分間加熱硬化させ、積層体(積層体(d))を得た。
5.はんだボール搭載
積層体(d)の裏側のパッドに手動式マイクロボールマウンタを用いて、φ100μmの半田ボールを搭載した後、IRリフロー装置を用いて、最高温度260℃、最高温度±5℃以内である時間15秒間、の条件で半田接合して、電子装置を得た。
6.電子装置の評価
得られた電子装置をエポキシ樹脂で包埋し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果(シリコン基板/シリコンチップ)間に多数の空隙が観察された。
【0075】
以上の結果から明らかなように、本発明の電子装置の製造方法で得られた電子装置は、半田の融点以上の熱処理を1回実施することで、各電子部品間の半田接合を一括して行えるため、生産性に優れていた。また、得られた電子装置における電子部品にクラックは観察されず、半田接合性も良好であり、信頼性に優れていた。
一方、比較例1では、4個の電子部品を逐次半田接合するために、半田の融点以上での熱処理を4回実施する必要があり、生産性が劣っていた。また、実施例2においては半田接合のための加熱によりシリコンチップが受ける熱ダメージは1回であるが、比較例1においては4回の熱ダメージを受けることとなった。
そして、比較例2では、電子部品間を接合した後に、液状封止樹脂組成物を用いて樹脂封止するため、電子部品間に多数の空隙が観察された。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 第1の面の複数の領域に第1a端子を有するとともに、前記第1の面に対応する第2の面の複数の領域に第1b端子を有する第1電子部品、第1樹脂層、第2端子を有する第2電子部品を、前記第1a端子と前記第2端子とが、前記第1樹脂層を挟んで対峙するように積層するとともに、前記第1樹脂層が溶融し、かつ、前記第1a端子及び前記第2端子の少なくとも一方が備える第1半田層が溶融しない温度で加熱しながら、一対の挟圧部材で第1Aの荷重を加える第1積層工程と、
前記第1積層工程後、前記第1Aの荷重を開放して第1積層体を形成する第1開放工程と、
前記第1積層体を形成した領域とは異なる前記第1電子部品上の領域に、前記第1積層工程と同様の手順により、前記第1電子部品、前記第1樹脂層、前記第2電子部品を積層するとともに、一対の挟圧部材で第1Bの荷重を加える第2積層工程と、
前記第2積層工程後、前記第1Bの荷重を開放して第2積層体を形成する第2開放工程と、
前記第2開放工程後、前記第1積層体と前記第2積層体とをまとめて、前記第1樹脂層が溶融し、かつ、前記第1半田層が溶融しない温度で加熱しながら一対の挟圧部材で第2の荷重を加えることで、各端子間に介在する樹脂層を排斥し、前記第1a端子、前記第1半田層、及び、前記第2端子を直接繋げ、次いで、前記第1半田層が溶融する温度で加熱しながら一対の挟圧部材で第3の荷重を加えることで、前記第1a端子と前記第2端子とを前記第1半田層を介して半田接合して第3積層体を形成する第1接合工程と、
前記第1の電子部品が有する第1b端子の少なくとも一部に半田ボールを形成して第1電子装置を製造する半田ボール形成工程と、を有し、
前記第1接合工程において加える前記第2の荷重は、前記第1積層工程において加える前記第1Aの荷重、及び、前記第2積層工程において加える前記第1Bの荷重のいずれよりも大きいものである電子装置の製造方法。
2. 1.に記載の電子装置の製造方法において、
前記第1接合工程では、前記第1樹脂層が溶融し、かつ、前記第1半田層が溶融しない温度で前記第1積層体及び第2積層体を加熱しながら、一対の挟圧部材で前記第2の荷重を加えると、前記第1半田層が変形しながら、各端子間に存在する樹脂を当該端子間から排斥するものである電子装置の製造方法。
3. 1.または2に記載の電子装置の製造方法において
前記第1樹脂層は、前記第1電子部品の前記第1a端子が設けられた面、及び、前記第2電子部品の第2端子が設けられた面のうち、少なくともいずれか一方の面上に形成されたものである電子装置の製造方法。
4. 1.ないし3.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法において、
第3端子を有する第3電子部品を準備する工程と、前記第1電子装置の半田ボールと前記第3端子とが対峙するように前記第3電子部品上に前記第1電子装置を設置する設置工程と、
前記第1電子装置と前記第3電子部品とを接合して第2電子装置を形成する第2接合工程と、
をさらに有する、電子装置の製造方法。
5. 1.ないし4.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法において、
前記第1電子部品は、インターポーザ基板である電子装置の製造方法。
6. 1.ないし5.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法において、
前記第2電子部品は、半導体部品である電子装置の製造方法。
7. 1.ないし6.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法において、
前記第1樹脂層は、フラックス活性化合物を含む電子装置の製造方法。
8. 1.ないし7.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法において、
前記第1接合工程の後に、前記第3積層体を加熱することで、前記第1樹脂層の硬化を進行させ、第4積層体を形成する電子装置の製造方法。