特許第6119277号(P6119277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119277
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20170417BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20170417BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170417BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170417BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20170417BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CES
   C08L23/00
   C08K3/22
   C08K3/36
   C08K5/03
   C08K5/3415
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-21973(P2013-21973)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152218(P2014-152218A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛史
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−181432(JP,A)
【文献】 特表2009−521350(JP,A)
【文献】 特表2005−518471(JP,A)
【文献】 特開昭61−009444(JP,A)
【文献】 特開平06−080811(JP,A)
【文献】 特開昭59−071338(JP,A)
【文献】 日本精鉱株式会社 トピックス 2011年 ,2016年 9月20日,第1頁−第2頁,URL,http://www.nihonseiko.co.jp/news/topics10.html
【文献】 製品安全データシート STOX-501,2011年 1月 4日,第1頁−第9頁,URL,www.nihonseiko.co.jp/products/pdf/Q0770-00.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08K 3/22
C08K 3/36
C08K 5/03
C08K 5/3415
C08L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂100質量部に対し、臭素含有難燃剤1〜20質量部、天然鉱物、及び三酸化アンチモンの合計量が1〜10質量部であって、臭素含有難燃剤と天然鉱物及び三酸化アンチモンの合計量の比が3:1〜4:1である発泡体。
【請求項2】
天然鉱物及び三酸化アンチモンの質量比が、3:1〜1:3であることを特徴とする、請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
天然鉱物は、SiO、Al、及びFeを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の発泡体。
【請求項4】
臭素含有難燃剤が、エチレンビスペンタブロモジフェニル及び/又はエチレンビステトラブロモフタルイミドである、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性能に優れたオレフィン系樹脂を用いた発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂を用いた発泡体は、一般的に軽量性、緩衝性、断熱性等に優れ、建材、自動車内装材、電化製品等様々な分野で使用されている。この中には難燃性能を重視する用途があり、従来から各種方法で発泡体を難燃化し用いてきた。この各種難燃化方法の中でも臭素含有難燃剤を用いる方法が、少ない難燃剤の含有量で優れた難燃性能を発揮し、発泡体の機械物性低下を抑えられる点から広く用いられてきた(特許文献1)。なお、臭素含有難燃剤は、その難燃性能を更に高めるために三酸化アンチモンとの併用が一般的である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3516731号公報
【特許文献2】特許第3542907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、三酸化アンチモンは、発泡剤の分解開始温度を低くし、分解速度を早める効果がある。このため製造条件のバラツキによって意図せぬ発泡剤の分解が発生し、発泡体の厚さ、密度が不均一になったり、急激な発泡に樹脂が追従できず発泡体が切れる等、製造条件が狭い範囲に限定されていた。
【0005】
また、アンチモンはレアメタルの一つであり、近年安定した調達が困難になりつつある。そのため、アンチモンの使用量を低減することが求められている。
【0006】
そこで本発明では、従来技術の課題を解決し、難燃性能の優れたオレフィン系樹脂を含む発泡体を安定して製造し提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は以下である。
1)オレフィン系樹脂100質量部に対し、臭素含有難燃剤1〜20質量部、天然鉱物、及び三酸化アンチモンの合計量が1〜10質量部であって臭素含有難燃剤と天然鉱物及び三酸化アンチモンの合計量の比が3:1〜4:1である発泡体。
2)天然鉱物及び三酸化アンチモンの質量比が、3:1〜1:3であることを特徴とする、1)記載の発泡体。
3)天然鉱物は、SiO、Al、及びFeを含むことを特徴とする1)又は2)記載の発泡体。
4)臭素含有難燃剤が、エチレンビスペンタブロモジフェニル及び/又はエチレンビステトラブロモフタルイミドである、1)〜3)のいずれかに記載の発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発泡体は、優れた難燃性能を有し、かつ、外観が良好であるため、テープ基材、断熱材、緩衝材等に使用できる。また、難燃剤添加による機械特性の低下が少なく、真空成型等の加工性が良好であるため、自動車内装材に好適に用いることができる。
【0009】
更に、レアメタルの一つであるアンチモンの使用量を抑えることから、安定した提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を具体的に説明する。本発明の発泡体は、オレフィン系樹脂、臭素含有難燃剤、天然鉱物、三酸化アンチモンを含むことを特徴とする。

本発明においてオレフィン系樹脂は、いかなるオレフィン系炭化水素の単独重合体または共重合体であっても良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとからなるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンと非オレフィンとの共重合体などが挙げられる。炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンなどが挙げられ、これらは2種類以上を併用しても良い。また、非オレフィンとしては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、エチレンメチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレートなどが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂には、グラフトのような化学的修飾が施されていてもよい。
【0011】
本発明の発泡体において、オレフィン系樹脂の含有量に特に制限はなく、オレフィン系樹脂を含有することが重要である。発泡体中のオレフィン系樹脂の含有量に関して、オレフィン系樹脂の持つ特性、成形加工性ならびに外観美麗性の点から、発泡前シート(発泡前シートとは、発泡工程を経る前のシートを意味する。)の全成分中の樹脂分100質量%において、オレフィン系樹脂を70質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。また、優れた難燃性と機械特性を有する発泡体を得るために、発泡前シートの全成分中の樹脂分は60質量%以上95%質量%以下とすることが好ましい。

さらに、本発明の特徴を著しく損なわない範囲であれば、本発明の発泡体中に、他の様々な熱可塑性樹脂を必要な特性に応じて、1種類もしくは2種類以上混合して含有させてもよい。
【0012】
なお、成形加工性及び耐熱性に優れた発泡体を得るために、本発明の発泡体においては、オレフィン系樹脂として下記のポリプロピレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)を原料として併用することが好ましい。そしてこのポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との含有割合に特に制限は無いが、質量比(ポリプロピレン系樹脂(A)の質量:ポリエチレン系樹脂(B)の質量)で4:6〜9:1の範囲とすることが好適に用いられる。
【0013】
このポリプロピレン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%中のエチレン含有率が1〜5質量%、融点が135〜155℃、MFRが0.5〜5.0のランダムポリプロピレン、及び/又は、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%中のエチレン含有率が5〜10質量%、融点が150〜165℃、MFRが1.0〜7.0のブロックポリプロピレンが特に好ましく用いられる。
【0014】
また、ポリエチレン系樹脂(B)は、密度が890〜950kg/m、MFRが1〜15g/20分の範囲内にあるものが好ましく用いられ、中でも密度が920〜940kg/m、MFRが2〜10g/10分、融点が100〜130℃のエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく用いられる。

本発明の発泡体は、天然鉱物を含有することが重要である。ここで天然鉱物とは、天然に産する一定の化学組成、結晶構造を持つ無機質を意味する。
【0015】
そして本発明で用いられる天然鉱物は、SiO、AlおよびFeの全てを含むことが好ましい。そして本発明の発泡体が、SiO、Al及びFeの全てを含む天然鉱物を有する態様の場合には、天然鉱物100質量%中のこれら各成分の含有量が、SiOが50質量%〜70質量%、Alが10質量%〜25質量%、Feが4質量%〜15質量%であることがより好ましい。さらに本発明の発泡体が、SiO、Al及びFeの全てを含む天然鉱物を有する態様の場合には、天然鉱物100質量%中に危険有害不純物のAsは0質量%以上0.1質量%以下、Pbは0質量%以上0.1質量%以下であるものが、高い難燃性能を発揮し好適に用いることができる点でさらに好ましく、天然鉱物100質量%中のAs及びPbの含有量は、As及びPb共に0質量%であることが特に好ましい。なお、天然鉱物中の各成分の含有量は、蛍光X線分析により定量することができる。

本発明の発泡体は、天然鉱物及び三酸化アンチモンを含むことが重要である。そして発泡体を製造する際には、天然鉱物及び三酸化アンチモンはそれぞれ粒子状であり、事前に混合したものを発泡体を製造するための原料として使用することが、天然鉱物と三酸化アンチモンとがオレフィン系樹脂中に均一分散され、難燃性能が高まるため好ましい。
【0016】

発泡体を製造する際の原料として天然鉱物および三酸化アンチモンを混合して使用する場合には、これらをオレフィン系樹脂中に分散させるために、天然鉱物および三酸化アンチモンは粒子状態であることが好ましい。そして原料として天然鉱物と三酸化アンチモンとを含む粒子を使用する場合、この粒子の平均粒子径は0.1〜10μmであることが望ましい。該粒子の平均粒子径が大きくなると、難燃性能が低下することがあるため、該粒子の平均粒子径は10μm以下が好ましい。しかし、平均粒子径が小さくなりすぎると、粒子同士が凝集しやすくなり、製造時にフィルターへ詰まったり、凝集物が核となり発泡体に粗大な気泡が発生することがあるため、該粒子の平均粒子径は0.1μm以上が好ましい。
【0017】
また、発泡体中の天然鉱物と三酸化アンチモンとの質量比(天然鉱物:三酸化アンチモン)は、3:1〜1:3が好ましい。発泡体中の天然鉱物の質量比がこの範囲より多いと難燃性能が低下することがあり、難燃剤の含有量を増やすことになるため、発泡体の機械特性が低下することがある。発泡体中の天然鉱物の質量比がこの範囲より少なくても、難燃性能は変わらず、三酸化アンチモンが多くなると発泡剤の分解開始温度が低くなり樹脂の融点に近づくため、発泡前シートの生産時に発泡剤が分解する場合があり、温度条件範囲が狭くなったり、生産能力を低下させる等の条件制約が大きくなることがある。また、レアメタルであるアンチモン使用量に関して、低減効果が小さくなる。
【0018】
本発明において、発泡前シートの樹脂組成物に含まれる天然鉱物と三酸化アンチモンは、少なすぎると難燃性を発現しないことがあり、多すぎると得られた発泡前シートの成形性が低下することがあるため、発泡前シート中の天然鉱物と三酸化アンチモンとの合計量は、発泡前シート中のオレフィン系樹脂100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。

本発明の発泡体は、オレフィン系樹脂、天然鉱物、及び三酸化アンチモンだけでなく、さらに臭素含有難燃剤を含有する。発泡体中にこれらを併用することで、その相乗効果により難燃効果が向上するため、本発明の発泡体は、オレフィン系樹脂、天然鉱物、三酸化アンチモン、及び臭素含有難燃剤を含むことが好ましい。発泡体中の、臭素含有難燃剤と、天然鉱物及び三酸化アンチモンの合計の質量比(臭素含有難燃剤:天然鉱物及び三酸化アンチモンの合計)は、1:1〜5:1が好ましく、2:1〜4:1がより好ましい。臭素含有難燃剤と、天然鉱物及び三酸化アンチモンの合計の質量比が、1:1〜5:1の範囲から外れると、難燃性能が低下することがある。

本発明において臭素含有難燃剤とは、例えば、デカブロモジフェニルエーテルなどのポリブロモジフェニルエーテル系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(アリールエーテル)などのテトラブロモビスフェノールAおよびその誘導体、エチレンビスペンタブロモジフェニル、1,2−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,6−/(2,4−)ジブロモフェノール、ホモポリマーなどの多ベンゼン環化合物、臭素化ポリスチレン系難燃剤、ポリ臭素化スチレン系難燃剤、エチレンビステトラブロモフタルイミドなどのフタル酸系難燃剤、ヘキサブロモシクロドデカンなどの環状脂肪族系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート(モノマー)などが挙げられる。
【0019】
この臭素含有難燃剤について、エチレンビスペンタブロモジフェニル、及び/又は、エチレンビステトラブロモフタルイミドであることが、発泡体中に比較的少量含有させるだけで優れた難燃性を示すこと、発泡体製造時にブリードアウトや分解しないことから、特に好ましく用いられる。

本発明の発泡体における臭素含有難燃剤の含有量は、少なすぎると難燃性を発現しないことがあり、多すぎると得られた発泡シートの成形性が低下することがある。そのため、発泡前シート中のオレフィン系樹脂100質量部に対して、臭素含有難燃剤は1〜20質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがより好ましい。

本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内で、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、エチレンビニルジメタクリレート、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,3−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸ジアリルエステル等の架橋助剤、金属害防止剤、マイカ、タルク等の充填剤、帯電防止剤、滑剤、顔料などを添加してもよい。また、燃焼時のドリップ性を改善するため、ポリテトラフルオロエチレンを難燃剤と共に併用しても良い。ポリテトラフルオロエチレンとしては特に制限はなく、公知のものを使用することができる。

本発明の発泡体は、オレフィン系樹脂、臭素含有難燃剤、天然鉱物、及び三酸化アンチモンを含む樹脂組成物に、気体を生ずることができる発泡剤を混合して製造するものであり、その製造方法は特に限定されないが、熱分解型化学発泡剤を加えて溶融混錬し常圧加熱にて発泡する常圧発泡法、押出機内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し高圧下で押出ながら発泡する押出発泡法、プレス金型内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し減圧しながら発泡するプレス発泡法、押出機内で気体あるいは気化する溶剤を溶融混合し高圧下で押出しながら発泡する押出発泡法等の方法が挙げられる。ここで用いる熱分解型化学発泡剤とは、熱を加えることで分解しガスを放出する化学発泡剤であれば特に限定するものではなく、例えばアゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシベンゼンスルフォニルヒドラジドなどの有機系発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルシウムアジドなどの無機系発泡剤が挙げられる。また、気体あるいは気化する溶剤は特に限定されないが、炭酸ガス、窒素、ヘリウム等の気体、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等の気化する溶剤が挙げられる。発泡剤は、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、表面平滑で優れた難燃性能を有する架橋された発泡体を得るためには、アゾジカルボンアミドが好適に使用される。

本発明の発泡体の製造方法を例示する。オレフィン系樹脂、臭素含有難燃剤、天然鉱物、三酸化アンチモンを含む樹脂組成物に、更にアゾジカルボンアミド等の熱分解型発泡剤を加え、ヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機器を用いて均一に混合する。その後、押出機、加圧式ニーダー等の溶融混練機器を用いて熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練しT型口金にてシート(前述の、発泡前シート)形状に成形した後、電離性放射線を照射し架橋させる。該シートを熱媒となる塩浴上に浮かべる方法や、熱風等の雰囲気下中に投じる方法により、熱分解型発泡剤の分解温度以上に昇温させて、分解により発生したガスにより発泡させることで、発泡体を得ることが出来る。電離性放射線照射による架橋にかえて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。
【0020】
本発明の発泡体を架橋させる場合、つまり、本発明の発泡体を架橋発泡体とする場合、架橋状態を示すゲル分率は、10〜70%が好ましい。このゲル分率が10%未満では発泡時表面から発泡剤のガスが逸散し、表面が荒れたり、所望の発泡倍率の製品が得られにくくなり、一方、70%を越えると過度の架橋となり高発泡品が得られにくくなることと、引張伸度が低下し成形性が低下することがある。
【実施例】
【0021】
実施例(但し、実施例3及び5は比較例4及び5と読み替える)、比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0022】
(1)難燃性
ASTM D 1692(1968)に準拠して測定した水平方向燃焼速度の数値で評価した。なお、標線まで炎が伝播しない場合、自己消火性を有すとする。
○: 自己消火性を有す、及び/又は、水平方向燃焼速度が100mm/min未満
×: 水平方向燃焼速度が100mm/min以上

(2)発泡体の厚さ
ISO1923(改正1981/09/01)「発泡プラスチック及びゴム一線寸法の測定方法」に従って測定を行った値である。

(3)発泡体のみかけ密度
JIS K6767(改正1999/10/20)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準じて測定した値である。

(4)ゲル分率
発泡体を約0.5mm四方に切断し、約100mgを0.1mgの単位で秤量する。130℃のテトラリン200mlに3時間浸漬した後、100メッシュのステンレス製金網で自然濾過し、金網上の不溶解分を1時間120℃下で熱風オーブンにて乾燥する。次いで、シリカゲルを入れたデシケータ内で10分間冷却し、この不溶解分の質量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出する。
【0023】
ゲル分率(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量した発泡体の質量(mg)}×100

(5)ポリオレフィン系樹脂のMFR
JIS K7210(改正1999/10/20)に準じて、ポリエチレン系樹脂は190℃、また、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。

(6)ポリオレフィン系樹脂の密度
JIS K7112(改正1999/05/20)「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準じて測定した。

(7)平均粒子径
堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920を用い、装置のセル中に分散媒として脱イオン水200mlを加え、自動設定にて適正濃度となるよう試料を添加後に測定したメジアン径である。

(8)発泡剤の分解開始温度
分解開始温度の測定は、SIIナノテクノロジー製「TG/DTA6200」を用い、サンプル量:10mg、リファレンス:アルミナ、空気流量:100mL/分、昇温速度:1℃/分で、常温から300℃まで昇温させ、TG曲線から求めた重量減少開始温度を発泡剤の分解開始温度とした。

(9)生産性
発泡前シートの生産性を、発泡前シート中の発泡剤の含有量および発泡剤の分解開始温度の低下温度から以下の通り評価した。発泡剤の分解開始温度の低下温度は、発泡剤単独の分解開始温度と発泡剤に天然鉱物と三酸化アンチモンを混合した時の分解開始温度の差である。
○: 発泡剤の含有量が10質量部未満、及び/又は、分解開始温度の低下温度が5度未満。
×: 発泡剤の含有量が10質量部以上かつ分解開始温度の低下温度が5度以上。

参考例1
発泡剤であるアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ)を、TG/DTAで測定すると、発泡剤の分解開始温度は171℃であった。

参考例2
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ)を100mg、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501、天然鉱物(SiO=62質量%、Al=15質量%、Fe=7質量%、As=0.1質量%以下、Pb=0.1質量%以下):三酸化アンチモン=1:1、平均粒子径=3μm)を10mg秤量し、均一に混合してサンプル2を得た。このサンプル2をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は167℃であった。

参考例3
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ)を100mg、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K、平均粒子径=1.2μm)を10mg秤量し、均一に混合しサンプル3を得た。このサンプル3をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は160℃であった。

参考例4
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R)をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は183℃であった。

参考例5
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R)を100mg、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501)を20mg秤量し、均一に混合しサンプル5を得た。このサンプル5をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は179℃であった。

参考例6
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R)を100mg、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K、平均粒子径=1.2μm)を20mg秤量し、均一に混合しサンプル6を得た。このサンプル6をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は172℃であった。

実施例1
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010、エチレンビスペンタブロモジフェニル):3.9質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:2.0mmのポリエチレン系樹脂シートを作製した。このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さ:4.0mm、みかけ密度:33kg/m3、ゲル分率:25%の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価を表1に示す。

実施例2
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX BT−93、エチレンビステトラブロモフタルイミド):6.0質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):1.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.1質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。
【0024】
実施例3
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):4.5質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):3.0質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):6質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.1質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。

実施例4
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL UJ960、MFR=5g/10分、密度=935kg/m):55質量%と、ポリプロピレン(日本ポリプロ製ノバテックPP EG7F、MFR=1.3g/10分、密度=900kg/m):45質量%とをブレンドしたオレフィン系樹脂100質量部に、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):7.5質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):2.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R):13質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):1質量部、架橋助剤(和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン):3質量部 を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。

実施例5
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL UJ960):20質量%と、ポリプロピレン(日本ポリプロ製ノバテックPP EG7F):80質量%とをブレンドしたオレフィン系樹脂100質量部に、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX BT−93):13.5質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):3.0質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R):9質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部、架橋助剤(和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン):5質量部 を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。

比較例1
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):5質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2に示す。

比較例2
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):3.9質量部、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2に示す。

比較例3
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL UJ960):30質量%と、ポリプロピレン(日本ポリプロ製ノバテックPP EG7F):70質量%とをブレンドしたオレフィン系樹脂100質量部に、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):7.5質量部、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K):2.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R):13質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):1質量部、架橋助剤(和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン):3部 を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のオレフィン系樹脂を用いた発泡体は、建材、自動車内装材、電化製品等に優れた難燃性能を重視する断熱材、緩衝材として利用される。