【0019】
この臭素含有難燃剤について、エチレンビスペンタブロモジフェニル、及び/又は、エチレンビステトラブロモフタルイミドであることが、発泡体中に比較的少量含有させるだけで優れた難燃性を示すこと、発泡体製造時にブリードアウトや分解しないことから、特に好ましく用いられる。
本発明の発泡体における臭素含有難燃剤の含有量は、少なすぎると難燃性を発現しないことがあり、多すぎると得られた発泡シートの成形性が低下することがある。そのため、発泡前シート中のオレフィン系樹脂100質量部に対して、臭素含有難燃剤は1〜20質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがより好ましい。
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内で、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、エチレンビニルジメタクリレート、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,3−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸ジアリルエステル等の架橋助剤、金属害防止剤、マイカ、タルク等の充填剤、帯電防止剤、滑剤、顔料などを添加してもよい。また、燃焼時のドリップ性を改善するため、ポリテトラフルオロエチレンを難燃剤と共に併用しても良い。ポリテトラフルオロエチレンとしては特に制限はなく、公知のものを使用することができる。
本発明の発泡体は、オレフィン系樹脂、臭素含有難燃剤、天然鉱物、及び三酸化アンチモンを含む樹脂組成物に、気体を生ずることができる発泡剤を混合して製造するものであり、その製造方法は特に限定されないが、熱分解型化学発泡剤を加えて溶融混錬し常圧加熱にて発泡する常圧発泡法、押出機内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し高圧下で押出ながら発泡する押出発泡法、プレス金型内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し減圧しながら発泡するプレス発泡法、押出機内で気体あるいは気化する溶剤を溶融混合し高圧下で押出しながら発泡する押出発泡法等の方法が挙げられる。ここで用いる熱分解型化学発泡剤とは、熱を加えることで分解しガスを放出する化学発泡剤であれば特に限定するものではなく、例えばアゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシベンゼンスルフォニルヒドラジドなどの有機系発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルシウムアジドなどの無機系発泡剤が挙げられる。また、気体あるいは気化する溶剤は特に限定されないが、炭酸ガス、窒素、ヘリウム等の気体、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等の気化する溶剤が挙げられる。発泡剤は、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、表面平滑で優れた難燃性能を有する架橋された発泡体を得るためには、アゾジカルボンアミドが好適に使用される。
本発明の発泡体の製造方法を例示する。オレフィン系樹脂、臭素含有難燃剤、天然鉱物、三酸化アンチモンを含む樹脂組成物に、更にアゾジカルボンアミド等の熱分解型発泡剤を加え、ヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機器を用いて均一に混合する。その後、押出機、加圧式ニーダー等の溶融混練機器を用いて熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練しT型口金にてシート(前述の、発泡前シート)形状に成形した後、電離性放射線を照射し架橋させる。該シートを熱媒となる塩浴上に浮かべる方法や、熱風等の雰囲気下中に投じる方法により、熱分解型発泡剤の分解温度以上に昇温させて、分解により発生したガスにより発泡させることで、発泡体を得ることが出来る。電離性放射線照射による架橋にかえて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。
【実施例】
【0021】
実施例
(但し、実施例3及び5は比較例4及び5と読み替える)、比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0022】
(1)難燃性
ASTM D 1692(1968)に準拠して測定した水平方向燃焼速度の数値で評価した。なお、標線まで炎が伝播しない場合、自己消火性を有すとする。
○: 自己消火性を有す、及び/又は、水平方向燃焼速度が100mm/min未満
×: 水平方向燃焼速度が100mm/min以上
(2)発泡体の厚さ
ISO1923(改正1981/09/01)「発泡プラスチック及びゴム一線寸法の測定方法」に従って測定を行った値である。
(3)発泡体のみかけ密度
JIS K6767(改正1999/10/20)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準じて測定した値である。
(4)ゲル分率
発泡体を約0.5mm四方に切断し、約100mgを0.1mgの単位で秤量する。130℃のテトラリン200mlに3時間浸漬した後、100メッシュのステンレス製金網で自然濾過し、金網上の不溶解分を1時間120℃下で熱風オーブンにて乾燥する。次いで、シリカゲルを入れたデシケータ内で10分間冷却し、この不溶解分の質量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出する。
【0023】
ゲル分率(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量した発泡体の質量(mg)}×100
(5)ポリオレフィン系樹脂のMFR
JIS K7210(改正1999/10/20)に準じて、ポリエチレン系樹脂は190℃、また、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。
(6)ポリオレフィン系樹脂の密度
JIS K7112(改正1999/05/20)「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準じて測定した。
(7)平均粒子径
堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920を用い、装置のセル中に分散媒として脱イオン水200mlを加え、自動設定にて適正濃度となるよう試料を添加後に測定したメジアン径である。
(8)発泡剤の分解開始温度
分解開始温度の測定は、SIIナノテクノロジー製「TG/DTA6200」を用い、サンプル量:10mg、リファレンス:アルミナ、空気流量:100mL/分、昇温速度:1℃/分で、常温から300℃まで昇温させ、TG曲線から求めた重量減少開始温度を発泡剤の分解開始温度とした。
(9)生産性
発泡前シートの生産性を、発泡前シート中の発泡剤の含有量および発泡剤の分解開始温度の低下温度から以下の通り評価した。発泡剤の分解開始温度の低下温度は、発泡剤単独の分解開始温度と発泡剤に天然鉱物と三酸化アンチモンを混合した時の分解開始温度の差である。
○: 発泡剤の含有量が10質量部未満、及び/又は、分解開始温度の低下温度が5度未満。
×: 発泡剤の含有量が10質量部以上かつ分解開始温度の低下温度が5度以上。
参考例1
発泡剤であるアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ)を、TG/DTAで測定すると、発泡剤の分解開始温度は171℃であった。
参考例2
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ)を100mg、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501、天然鉱物(SiO
2=62質量%、Al
2O
3=15質量%、Fe
2O
3=7質量%、As=0.1質量%以下、Pb=0.1質量%以下):三酸化アンチモン=1:1、平均粒子径=3μm)を10mg秤量し、均一に混合してサンプル2を得た。このサンプル2をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は167℃であった。
参考例3
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ)を100mg、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K、平均粒子径=1.2μm)を10mg秤量し、均一に混合しサンプル3を得た。このサンプル3をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は160℃であった。
参考例4
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R)をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は183℃であった。
参考例5
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R)を100mg、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501)を20mg秤量し、均一に混合しサンプル5を得た。このサンプル5をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は179℃であった。
参考例6
発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R)を100mg、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K、平均粒子径=1.2μm)を20mg秤量し、均一に混合しサンプル6を得た。このサンプル6をTG/DTAで測定したところ、発泡剤の分解開始温度は172℃であった。
実施例1
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m
3):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010、エチレンビスペンタブロモジフェニル):3.9質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:2.0mmのポリエチレン系樹脂シートを作製した。このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さ:4.0mm、みかけ密度:33kg/m3、ゲル分率:25%の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価を表1に示す。
実施例2
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX BT−93、エチレンビステトラブロモフタルイミド):6.0質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):1.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.1質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。
【0024】
実施例3
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):4.5質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):3.0質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):6質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.1質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。
実施例4
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL UJ960、MFR=5g/10分、密度=935kg/m
3):55質量%と、ポリプロピレン(日本ポリプロ製ノバテックPP EG7F、MFR=1.3g/10分、密度=900kg/m
3):45質量%とをブレンドしたオレフィン系樹脂100質量部に、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):7.5質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):2.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R):13質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):1質量部、架橋助剤(和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン):3質量部 を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。
実施例5
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL UJ960):20質量%と、ポリプロピレン(日本ポリプロ製ノバテックPP EG7F):80質量%とをブレンドしたオレフィン系樹脂100質量部に、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX BT−93):13.5質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX−501):3.0質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R):9質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部、架橋助剤(和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン):5質量部 を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。
比較例1
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):5質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2に示す。
比較例2
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):3.9質量部、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2に示す。
比較例3
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL UJ960):30質量%と、ポリプロピレン(日本ポリプロ製ノバテックPP EG7F):70質量%とをブレンドしたオレフィン系樹脂100質量部に、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):7.5質量部、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K):2.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#R):13質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):1質量部、架橋助剤(和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン):3部 を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】