特許第6119286号(P6119286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119286
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/56 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   H01H50/56 K
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-25692(P2013-25692)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-154496(P2014-154496A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】柿本 俊行
(72)【発明者】
【氏名】桝井 保幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 啓介
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−079544(JP,U)
【文献】 特開平08−017319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定接触片と、
一端から他端へと延びる板状で、前記固定接点に接離可能に対向する可動接点を一端側に有する、弾性変形可能な可動接触片と、
電磁石と、
前記電磁石の励磁によって駆動し、前記可動接触片を弾性変形させる中間部材と、
前記可動接触片が弾性変形して可動接点を固定接点に閉成する前に、可動接触片の一部に当接し、当接部分よりも先端側の部分のみを弾性変形させる当接部と、
を備えたことを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記当接部の可動接触片への当接位置は、前記可動接触片の固定部から先端側に設けた可動接点までのいずれかの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記可動接触片に対する前記中間部材の押圧位置は、前記当接部の当接位置よりも、可動接触片の先端側であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記可動接触片は、前記可動接触片の固定部から前記可動接点に至るまでの範囲に、前記当接部から離れる方向に折曲する折曲部を形成され、
前記当接部は、前記可動接触片の折曲部が当接する位置よりも前記固定部とは反対方向に突出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記当接部は、弾性変形する可動接触片に対して、順次、当接位置を先端側へと変化させる当接位置変位部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記当接位置変位部を段部で構成したことを特徴とする請求項5に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記固定接触片と前記可動接触片は、時間をずらせて閉成する複数組の接点対を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電磁石を励磁することによりアーマチュアを介して可動接点ばねを駆動し、可動接点を固定接点に閉成する際、可動接点ばねに当接するバックアップばねを備えた電磁継電器を開示する。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載された電磁継電器では、接点ばね間に、別途、バックアップばねを配置する必要がある。また、このバックアップばねにより、接点ばね間に十分な絶縁距離を確保することができない。特に、高電圧を印加したり、高電流を通電したりする環境下では、絶縁性能を確保することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−269927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、接触片間の絶縁性能を低下させることなく、動作特性及び耐衝撃性に優れた構成とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
固定接点を有する固定接触片と、
一端から他端へと延びる板状で、前記固定接点に接離可能に対向する可動接点を一端側に有する、弾性変形可能な可動接触片と、
電磁石と、
前記電磁石の励磁によって駆動し、前記可動接触片を弾性変形させる中間部材と、
前記可動接触片が弾性変形して可動接点を固定接点に閉成する前に、可動接触片の一部に当接し、当接部分よりも先端側の部分のみを弾性変形させる当接部と、
を備えたものである。
ここで、中間部材とは、電磁石の励磁・消磁に伴う駆動力を可動接触片に伝える役割をする部材を言い、例えば可動鉄片やカード部材等がそれに含まれる。


【0007】
前記当接部の可動接触片への当接位置は、前記可動接触片の固定部から先端側に設けた可動接点までのいずれかの範囲であればよい。
【0008】
また、前記可動接触片に対する前記中間部材の押圧位置は、前記当接部の当接位置よりも、可動接触片の先端側であればよい。
【0009】
前記構成により、可動接触片を弾性変形させると、接点が閉成する前に、可動接触片に当接部が当接する。このため、可動接触片は、当接部に当接した後は、当接部分よりも先端側の部分のみが弾性変形する。したがって、駆動初期と、当接部が当接した後とで、可動接触片のばね定数を変化させることができ、弾性変形させるのに必要となる駆動力が相違する。
すなわち、駆動初期で、電磁石により吸引力があまり大きくない状態であれば、可動接触片の変形範囲が広く弾性変形させやすい。一方、可動接触片が当接部に当接し、電磁石により中間部材に大きな吸引力を作用させることができる段階となれば、可動接触片は弾性変形させにくくなっていても何ら問題がない。そして、電磁石を消磁した場合、当接部の当接位置の変化によって弾性力が大きくなった可動接触片によって容易に接点を開放することができる。
また、当接部を設けただけの構成であるので、可動接触片自体を弾性変形容易な、例えば薄板で構成することができる。
さらに、衝撃力が作用して可動接触片が弾性変形して接点が閉成しようとしても、当接部に当接した時点でばね定数が変化して変形しにくくなる。つまり、耐衝撃性に優れている。
【0010】
前記可動接触片は、前記可動接触片の固定部から前記可動接点に至るまでの範囲に、前記当接部から離れる方向に折曲する折曲部を形成され、
前記当接部は、前記可動接触片の折曲部が当接する位置よりも前記固定部とは反対方向に突出しているのが好ましい。
【0011】
前記構成により、可動接触片が弾性変形する前の初期段階で、接点間距離を十分に大きく取ることができる。つまり、折曲部を形成しただけの簡単な構成により接点間の絶縁性能を高めることができる。また、可動接触片は、当初、折曲部を始点として弾性変形し、当接部に当接した後は、この当接位置に始点を移動させ、ばね定数を変化させることができる。
【0012】
前記当接部は、弾性変形する可動接触片に対して、順次、当接位置を先端側へと変化させる当接位置変位部を備えるのが好ましい。
【0013】
前記構成により、可動接触片を弾性変形させる際に必要とされる力を段階的に大きくすることができ、より一層、電磁石の吸引力曲線の変化に適した無駄の少ない駆動力を得ることが可能となる。
【0014】
前記当接位置変位部は、段部で構成することができる。
【0015】
前記固定接触片と前記可動接触片は、時間をずらせて閉成する複数組の接点対を備えるのが好ましい。
【0016】
前記構成により、時間差で接点が閉成するので、接点溶着が発生しにくい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可動接触片に対して、弾性変形して接点が閉成する前に当接する当接部を備えたので、可動接触片の弾性変形に必要となる駆動力を段階的に変化させることができる。このため、動作特性及び耐衝撃性に優れた構成とすることができ、接点間の絶縁性も向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る電磁継電器の斜視図である。
図2図1の分解斜視図である。
図3図2のベースの斜視図である。
図4図2の電磁石の分解斜視図である。
図5】(a)は図2の可動鉄片及びカード部材の拡大斜視図、(b)は(a)を異なる角度から見た状態を示す斜視図である。
図6図2の固定接触片の拡大斜視図である。
図7図2の可動接触片及び補助部材の拡大斜視図である。
図8図1に示すケースの一部破断斜視図である。
図9】吸引力曲線と可動接触片に作用する力(駆動力)との関係を示すグラフである。
図10図1に示す電磁継電器の電磁石が無励磁の状態に於けるケースを除き、ベースのガイド部を除去した正面図である。
図11図10から電磁石を励磁し、接点閉成前の状態を示す正面図である。
図12図11から可動接触片が駆動した、接点閉成直後の状態での正面図である。
図13】他の実施形態に係るベースの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る電磁継電器の外観を示す斜視図、図2は、その分解斜視図を示す。この電磁継電器は、大略、ベース1と、電磁石部2と、接点開閉部3と、ケース4とで構成されている。
【0021】
図2、詳しくは図3に示すように、ベース1は、合成樹脂材料を成形加工することにより板状としたものである。ベース1の上面中央部には仕切壁5が形成され、電磁石部2が配置される第1装着部6と、接点開閉部3が配置される第2装着部7とに2分されている。
【0022】
第1装着部6の上面中央部分には、平面視矩形状の複数の凹部によって格子状のリブ8が形成されている。また、第1装着部6の両側には、上下面を貫通する平面視矩形状のコイル端子穴9がそれぞれ形成されている。
【0023】
第2装着部7には、一端面に沿う幅方向の2箇所に上下面を貫通する固定端子穴10がそれぞれ形成されている。固定端子穴10は、中央の補助壁12によって仕切られている。また、固定端子穴10に沿って、幅方向に延びる取付凹部13が形成されている。取付凹部13は、中央部に他端側へと広がった逃がし凹部14を有する。逃がし凹部14の底面中央部には下面に貫通する位置決め孔15が形成されている。さらに、各固定端子穴10と取付凹部13の間には、当接片11がそれぞれ突出している。各当接片11の片側は、取付凹部13の内側面と面一の平坦面11aで構成されている。また、各当接片11の反対側は、2列で上下方向に延びるリブ11bによって補強されている。さらに、各当接片11の上端部には平坦面11a側から円弧面11cが形成されている。後述するように、前記平坦面11aに沿って可動接触片39が配置されている。
【0024】
仕切壁5の両側には、この仕切壁5よりも突出するガイド部16が形成されている。各ガイド部16には、対向面に上下方向に延びるガイド溝17を形成されている。
【0025】
電磁石部2は、電磁石18と、この電磁石18によって駆動する可動鉄片19とで構成されている。
【0026】
図4に示すように、電磁石18は、鉄心20にスプール21を介してコイル22を巻回したものである。
【0027】
鉄心20は、磁性材料を円柱状としたもので、下端部には鍔部20aが形成され、その下面が吸引面20bとなっている。鉄心20の上端部にはヨーク23が加締固定される。
【0028】
スプール21は合成樹脂材料を略円筒状に成形加工したものである。スプール21の胴部(図示せず)にはコイル22が巻回される。スプール21の両端部には鍔部が形成されている。上端側鍔部25の上面には、ヨーク23の水平部が配置される溝部が形成されている。下方側鍔部26の両側にはコイル端子27が圧入されるコイル圧入孔28がそれぞれ形成されている。
【0029】
コイル端子27は、導電性を有する金属性の板材からなり、上端部分には幅広部29が形成されている。幅広部29の一部は切り起こされて、コイル22の引出線を巻き付ける巻付部30となっている。幅広部29の片面中央部には突起29aが形成されている。また、コイル端子27の両側部には、幅広部29の近傍に側方に突出する突起29bが形成されている。これら突起29a、29bは、スプール21の下方側鍔部26に形成したコイル圧入孔28にコイル端子27を挿入する際、圧入状態となって、スプール21に対してコイル端子27を位置決めする。
【0030】
ヨーク23は、磁性材料からなる板材を略L字形に折り曲げたものである。水平部の中央部分には貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aには、前記鉄心20の上端部が挿通して加締られる。この加締状態で、ヨーク23の水平部がスプール21に巻回したコイル22に沿って下端側へと延びる。垂直部の下端両側は側方及び下方側へと突出する圧入部31となっている。圧入部31は、ベース1のガイド部16に形成したガイド溝17に圧入され、ベース1に対してヨーク23すなわち電磁石18を位置決めする。また、垂直部の外面には上下2箇所に加締用の突起23bが形成されている。これら突起23bを利用して、ヨーク23にヒンジバネ32が加締固定される。
【0031】
ヒンジバネ32は、下端側に略C字状の屈曲部33が形成されている。この屈曲部33は、ヨーク23の下端部との間に可動鉄片19を弾性的に支持する。これにより、可動鉄片19は、ヨーク23の下端部(詳しくは、図10中、左側の下端縁A)を中心として回動可能となる。
【0032】
図5に示すように、可動鉄片19は、磁性材料の板材からなり、中間部分で屈曲して略L字形となっている。屈曲されることにより得られた水平部19aは、鉄心20の吸引面20bに吸引される。垂直部19bには、ヒンジバネ32の屈曲部33が挿通する矩形孔19cが形成されている。また、垂直部19bには、矩形孔19cの上方部分にカード部材34と一体化するための貫通孔(図示せず)が2箇所に形成されている。
【0033】
可動鉄片19にはカード部材34がインサート成形により一体化されている(インサート成形ではなく、熱加締等により一体化してもよい。)。カード部材34は、合成樹脂材料を板状としたもので、背面には可動鉄片19の垂直部19bが当接し、この垂直部19bを囲むように周囲3辺には突条34aが形成されている。また、カード部材34の背面には、可動鉄片19の垂直部の上方部分に形成した切欠部を介して背面側へと突出する突出部35が形成されている。この突出部35は、ヨーク23に加締固定したヒンジバネ32に当接し、この方向への回動範囲を制限する。一方、カード部材34の前面には、幅方向に2列で上下に伸びる突条34aが形成され、各突条34aの上端部分には前面側へと突出する押圧部36がそれぞれ形成されている。カード部材34の下端部には、前方に突出し、次いで下方に向かって屈曲するガイド片部37が形成されている。ガイド片部37は、前記ベース1の仕切壁5を超えて第2装着部7側へと配置される。
【0034】
接点開閉部3は、固定接触片38と、可動接触片39とで構成されている。
【0035】
図6に示すように、固定接触片38は、導電性を有する金属材料を板状に形成したものである。固定接触片38は、ベース1に形成した固定端子穴10に圧入される圧入部41と、圧入部41から上方に延びる接触片部42と、圧入部41から下方側に延びる端子部43とで構成されている。圧入部41には、片面に幅方向に延びる突部41aが形成されている。接触片部42には中心位置に上下に延びるスリット44が形成されている。また、接触片部42の上端部には固定接点45が加締固定されている。また、端子部43は、両側から2つ折りにされている。
【0036】
図7に示すように、可動接触片39は、導電性及び弾性を有する金属材料を板状に形成したものである。可動接触片39は、圧入部46と、圧入部46の両側から上方側へとそれぞれ延びる一対の本体部47とで構成されている。
【0037】
圧入部46には、幅方向に所定間隔で、板厚方向に膨出する一対の突起48が形成されている(図7では、突起48を形成するための凹部側のみが図示されている。)。圧入部46の両端部はさらに側方へと延び、その側縁からは係止爪49が突出している。また、圧入部46の下縁中央部には、さらに下方へと延びる圧入片50が形成されている。
【0038】
本体部47は、圧入部46の上縁部両側から同一面内に延びる第1本体部47aと、その後折り曲げられて斜め上方へと延びる第2本体部47bとからなる。本体部47の上端側には貫通孔が形成され、そこには可動接点51がそれぞれ加締固定されている。また、本体部47の上端部には、固定接触片38側に向かって斜め上方へと屈曲する延在部52が形成されている。
【0039】
図8に示すように、ケース4は、合成樹脂材料を成形加工して底面が開口する箱体形状としたものである。ケース4のその下端側開口部をベース1の外側面に嵌合することにより、ベース1に対して固定され、ベース1に装着した各部品を覆う。59は、一対の接点開閉部分を分離する分離壁である。60は、電磁継電器の完成後に除去されて内外を連通するガス抜き孔を形成するための突起である。但し、この突起60は除去することなく、そのままの封止状態で使用することもある。
【0040】
続いて、前記構成からなる電磁継電器の組立方法について説明する。
【0041】
スプール21の胴部24にコイル22を巻回し、その中心孔に下方側から鉄心20を挿通し、圧入孔にコイル端子27を圧入する。この状態で、スプール21の下端側鍔部の下面に鉄心20の吸引面20bが露出する。また、スプール21の上端側鍔部25から突出する鉄心20の上端部をヨーク23の貫通孔に挿通して加締固定する。ヨーク23には予めヒンジバネ32を加締固定しておく。ここで、コイル22の引出線をコイル端子27の巻付部30に巻き付け、ハンダ付けした後、巻付部30を巻回したコイル22に沿うように折り曲げる。これにより、電磁石18が完成する。完成した電磁石18には、ヒンジバネ32の屈曲部33とヨーク23の下端部との間に可動鉄片19を弾性支持させる。可動鉄片19には、予めカード部材34を一体化しておく。
【0042】
このようにして可動鉄片19を組み付けられた電磁石18をベース1の第1装着部6に装着する。すなわち、ベース1のコイル端子穴9にコイル端子27を圧入し、ガイド部16に形成したガイド溝17にヨーク23の圧入部31を圧入する。
【0043】
ベース1の第2装着部7に接点開閉部3を装着する。すなわち、ベース1の上面側から固定端子穴10に固定接触片38の端子部43を圧入し、この端子部43をベース1の下面より突出させる。
【0044】
また、可動接触片39を取付凹部13に圧入する。可動接触片39は、本体部47が圧入部46に沿って延び、その後折曲されている。したがって、本体部47の上端側を把持すれば、(自動組立か否かに拘わらず)圧入部46側をベース1から突出する当接片11の平坦面11aに沿わせやすくなり、スムーズに取付凹部13側へと導くことが可能となる。つまり、平坦面11aがベース1に可動接触片39を取り付ける際の案内としての役割を果たす。
【0045】
このようにしてベース1に取り付けられた接点開閉部3では、可動接触片39は、圧入部46の一部及び第1本体部47aが当接片11の平坦面11aに面接触した状態となる。第2本体部47bは平坦面11aから離れるように延び、上端側でカード部材34の押圧部36を押圧する。そして、カード部材34を介して可動鉄片19を支点を中心として図中時計回り方向に回動させる。これにより、可動接点51が固定接点から離れた位置で対向する。
【0046】
最後に、ベース1にケース4を被せて電磁継電器が完成する。
【0047】
次に、前記構成からなる電磁継電器の動作について説明する。
【0048】
コイル22に電圧を印加していない電磁石18の消磁状態では、図10に示すように、可動接触片39は、それ自身が有する弾性力により固定接点45から可動接点51を離間させた位置に位置する。また、カード部材34の押圧部36を介して可動鉄片19を回動させる。すなわち、可動鉄片19は、ヨーク23の下端縁部Aを中心として、時計回り方向に回動し、水平部19aが電磁石18の鉄心20の吸引面20bから離間した状態を維持する。
【0049】
コイル22に電圧を印加して電磁石18を励磁すると、可動鉄片19の水平部19aに対して鉄心20の吸引面20bから磁力が作用する。これにより、可動鉄片19は、カード部材34の押圧部36を介して可動接触片39の当接片11の当接位置よりも先端側を押圧し、可動接触片39の付勢力に抗して支点を中心として図10中反時計回り方向に回動する。
【0050】
詳しくは、図9のグラフに示すように、電磁石18により可動鉄片19に作用させることができる吸引力曲線に対して、可動接触片39を駆動するのに必要とされる力(駆動力)を、当接片11への可動接触片39の当接位置を変化させることにより2段階で変更することが可能となる。
【0051】
まず、可動鉄片19の回動初期(図10参照)では、図9中、実線(a)で示すように、可動接触片39は第1本体部47aと第2本体部47bの境界位置47cを始点として弾性変形する。このため、可動接触片39から可動鉄片19に作用する弾性力は、第2本体部47b全体のばね定数による小さなものとなる。したがって、鉄心20の吸引面20bから可動鉄片19の水平部19aまでの距離が長くて吸引力を十分に発揮させることができない段階であっても、可動接触片39を弾性変形させることができる。
【0052】
続いて、可動鉄片19が回動して可動接触片39の第2本体部47bの下部側が当接片11に面接触(すなわち、可動接触片39の取付凹部13から可動接点51の間で当接片11に当接)すれば、可動接触片39は、当接片11の上端部(厳密には、平坦面11aと円弧面11cの境界位置11d)を中心として弾性変形する(図11参照)。つまり、弾性変形する際の始点が移動し、弾性変形可能な範囲が短くなってばね定数が変化する。このため、図9中、実線(b)で示すように、可動接触片39を弾性変形させるのに必要な力が大きくなる。但し、この時点では、可動鉄片19の水平部19aが鉄心20の吸引面20bに接近しており、十分に大きな吸引力を作用させることができる。したがって、可動接触片39のばね定数が変化して弾性変形に必要な力が大きくなっていても、可動鉄片19をスムーズに回動させることができる。
【0053】
さらに、可動鉄片19が回動して、可動接触片39の当接片11から突出する部分が弾性変形し、所定の接点圧で接点が閉成する(図12参照)。このとき、さらに鉄心20の吸引面20bに可動鉄片19の水平部19aが接近し、最終的には当接して強固な吸引状態が得られる。
【0054】
その後、電磁石18を消磁すれば、前述の通り、可動接触片39のばね定数が変化して弾性力が大きくなっているので、この弾性力を利用してスムーズに接点を開放することができる。
【0055】
また、前記電磁継電器では、誤って落下させる等により衝撃力が作用したとしても、可動接触片39に沿って当接片11が設けられているので変形しにくい。また、固定接触片38側へと変形した場合には、当接片11によって弾性変形する際の始点が移動し、ばね定数が変化して変形しにくくなるので、可動接点51が固定接点45に衝突して損傷することもない。つまり、耐衝撃性に優れている。
【0056】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、前記実施形態では、2組の接点対を開閉する場合について説明したが、1組の接点対、あるいは、3組以上の接点対を開閉する構成であっても、前記実施形態に係る当接片11を利用した構成を採用することができる。
【0058】
また、前記実施形態では、当接片11の平坦面11aに対して、途中で折曲した第1本体部47aと第2本体部47bからなる本体部47を有する可動接触片39によって始点を変化させるようにしたが、次のような構成とすることもできる。すなわち、可動接触片39を、当接片11に当接可能な突起等を有する構成としてもよい。また、当接片11の平坦面11a側を傾斜させたり、段部を形成したり、突起を形成したりする等の構成としてもよい。また、これら当接片11と可動接触片39の各構成を適宜組み合わせたものとすることも可能である。
【0059】
また、前記実施形態では、可動接触片39が弾性変形する始点の位置を2箇所としたが、3箇所以上とすることも可能である。例えば、図13に示すように、当接片の平坦面11aに段部61を形成すればよい。これによれば、最初は第2本体部47bは、第1本体部47aとの境界位置47cを始点として弾性変形し、続いて、当接する段部61の角部62を第2の始点として弾性変形し、その後当接する当接片11の上端部(厳密には、平坦面11aと円弧面11cの境界位置11d)を始点として弾性変形させることができる。この構成により、より一層、可動接触片39の弾性変形に必要な力の変化を、電磁石18の吸引力曲線に沿わせることができる。したがって、可動接触片39を動作しやすく、かつ、接点を適切に開放させるのに適した構成とすることができる。
【0060】
また、前記実施形態では、可動接触片39の2つの本体部47が弾性変形して同時に当接片11の上端部に当接して始点を移動させるようにしたが、始点の移動時期をずらせるように構成することも可能である。例えば、当接片11の一方の平坦面11aに段部を形成するようにすればよい。これによれば、一方の接点が閉成してから時間差を持って他方の接点を閉成させることができる。この結果、閉成時の投入電流を受ける接点を特定できるので、この接点に耐溶着性に優れた接点材料を採用することにより、その溶融等を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1…ベース
2…電磁石部
3…接点開閉部
4…ケース
5…仕切壁
6…第1装着部
7…第2装着部
8…リブ
9…コイル端子穴
10…固定端子穴
11…当接片(当接部)
11a…平坦面
11b…リブ
11c…円弧面
12…補助壁
13…取付凹部(固定部)
14…逃がし凹部
15…位置決め孔
16…ガイド部
17…ガイド溝
18…電磁石
19…可動鉄片(中間部材)
20…鉄心
21…スプール
22…コイル
23…ヨーク
24…胴部
25…上端側鍔部
26…下方側鍔部
27…コイル端子
28…コイル圧入孔
29…幅広部
30…巻付部
31…圧入部
32…ヒンジバネ
33…屈曲部
34…カード部材(中間部材)
35…突出部
36…押圧部
37…ガイド片部
38…固定接触片
39…可動接触片
40…補助部材
41…圧入部
42…接触片部
43…端子部
44…スリット
45…固定接点
46…圧入部
47…本体部
48…突起
49…係止爪
50…圧入片
51…可動接点
52…延在部
53…圧入部
54…付勢部
55…凹部
56…第1切欠部
57…第2切欠部
58…押圧突部
59…分離壁
60…突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13