特許第6119332号(P6119332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119332
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】パワーコンディショナおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170417BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   H02J3/38 130
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-54146(P2013-54146)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-180182(P2014-180182A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】平島 正裕
【審査官】 戸次 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−020956(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/066005(WO,A1)
【文献】 特開昭52−092324(JP,A)
【文献】 特開2009−247184(JP,A)
【文献】 特開2004−319946(JP,A)
【文献】 特開2002−271991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電圧を昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧回路から出力される直流を交流に変換し、負荷または系統電源に出力するインバータと、
前記インバータと前記系統電源または前記負荷との間を電気的に遮断するか否かを切り替える遮断部と、
前記昇圧回路および前記インバータの動作を制御する制御部と、
前記電源から出力される電圧が基準電圧以上になったことに対応して、前記遮断部を介して前記インバータと前記系統電源または前記負荷との間を電気的に遮断した状態で、前記制御部により前記インバータを動作させて、前記電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する起動判定部と、
前記起動判定部が前記電源から前記起動可能電力が得られると判定したことに対応して、前記遮断部を介して前記インバータと前記負荷または前記系統電源との間を電気的に接続する遮断制御部と
を備えるパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記起動判定部は、前記昇圧回路から出力される電圧が前記基準電圧より高い上限電圧より小さい場合、前記遮断部を介して前記インバータと前記系統電源または前記負荷との間を電気的に遮断した状態で、前記制御部により前記インバータおよび前記昇圧回路を動作させて、前記電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する、請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記起動判定部は、前記昇圧回路から出力される電圧が前記上限電圧以上の場合、前記遮断部を介して前記インバータと前記系統電源または前記負荷との間を電気的に遮断した状態で、かつ前記昇圧回路を停止させた状態で、前記制御部により前記インバータを動作させ、前記電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する、請求項2に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記起動判定部は、前記昇圧回路から出力される電力が基準電力に達したときの前記昇圧回路から出力される電圧が起動可能電圧以上の場合に、前記電源から前記起動可能電力が得られると判定する、請求項1から3の何れか1つに記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記起動判定部は、前記制御部により前記インバータの各スイッチをデューティ比50%に制御することで前記インバータを動作させて、前記電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する、請求項1から4の何れか1つに記載のパワーコンディショナ。
【請求項6】
電源からの電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路から出力される直流を交流に変換し、負荷または系統電源に出力するインバータと、前記インバータと前記系統電源または前記負荷との間を電気的に遮断するか否かを切り替える遮断部とを備えるパワーコンディショナの起動判定を行う制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記昇圧回路および前記インバータの動作を制御する制御部と、
前記電源から出力される電圧が基準電圧以上になったことに対応して、前記遮断部を介して前記インバータと前記系統電源または前記負荷との間を電気的に遮断した状態で、前記制御部により前記インバータを動作させて、前記電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する起動判定部と、
前記起動判定部が前記電源から前記起動可能電力が得られると判定したことに対応して、前記遮断部を介して前記インバータと前記負荷または前記系統電源との間を電気的に接続する遮断制御部と
して、前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンバータに入力された入力電力とコンデンサに蓄積された電圧とに基づき推定された太陽電池モジュールの最大電力推定値を起動判定値と比較し、比較結果に基づいてパワーコンディショナの起動の可否を判定する太陽光発電システムが開示されている。
特許文献1 特開2009−247184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、パワーコンディショナに接続される太陽電池モジュールの種類が増加し、様々な仕様の太陽電池モジュールがパワーコンディショナに接続される可能性がある。これに伴い、太陽電池モジュールの電力を推定する精度が低下し、パワーコンディショナの起動の可否の判定の精度が低下する場合がある。そこで、パワーコンディショナの起動の可否の判定の精度を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係るパワーコンディショナは、電源からの電圧を昇圧する昇圧回路と、昇圧回路から出力される直流を交流に変換し、負荷または系統電源に出力するインバータと、インバータと系統電源または負荷との間を電気的に遮断するか否かを切り替える遮断部と、インバータの動作を制御する制御部と、電源から出力される電圧が基準電圧以上になったことに対応して、遮断部を介してインバータと系統電源または負荷との間を電気的に遮断した状態で、制御部により昇圧回路およびインバータを動作させて、電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する起動判定部と、起動判定部が電源から起動可能電力が得られると判定したことに対応して、遮断部を介してインバータと負荷または系統電源との間を電気的に接続する遮断制御部とを備える。
【0005】
上記パワーコンディショナにおいて、起動判定部は、昇圧回路から出力される電圧が基準電圧より高い上限電圧より小さい場合、遮断部を介してインバータと系統電源または負荷との間を電気的に遮断した状態で、制御部によりインバータおよび昇圧回路を動作させて、電源から起動可能電力が得られるか否かを判定してもよい。
【0006】
上記パワーコンディショナにおいて、起動判定部は、昇圧回路から出力される電力が基準電力に達したときの昇圧回路から出力される電圧が起動可能電圧以上の場合に、電源から起動可能電力が得られると判定してもよい。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、電源からの電圧を昇圧する昇圧回路と、昇圧回路から出力される直流を交流に変換し、負荷または系統電源に出力するインバータと、インバータと系統電源または負荷との間を電気的に遮断するか否かを切り替える遮断部とを備えるパワーコンディショナの起動判定を行う制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、昇圧回路および前記インバータの動作を制御する制御部と、電源から出力される電圧が基準電圧以上になったことに対応して、遮断部を介してインバータと系統電源または負荷との間を電気的に遮断した状態で、制御部によりインバータを動作させて、電源から起動可能電力が得られるか否かを判定する起動判定部と、起動判定部が電源から起動可能電力が得られると判定したことに対応して、遮断部を介してインバータと負荷または系統電源との間を電気的に接続する遮断制御部として、コンピュータを機能させる。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る太陽電池システムの全体構成の一例を示すシステム構成図である。
図2】制御装置により行われる起動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3】本実施形態に係る制御装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図4】制御装置がパワーコンディショナの起動判定を行う手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る太陽電池システムの全体構成の一例を示すシステム構成図を示す。太陽電池システムは、太陽電池アレイ200と、パワーコンディショナ10とを備える。太陽電池アレイ200は、複数の太陽電池モジュールが直列に接続された複数の太陽電池ストリングが並列に接続されている。複数の太陽電池アレイ200は、直流電圧を出力する電源の一例である。
【0012】
パワーコンディショナ10は、太陽電池アレイ200から出力される直流電圧を昇圧し、昇圧された直流電圧を交流電圧に変換して、系統電源300側に出力する。パワーコンディショナ10は、コンデンサC1、昇圧回路20、コンデンサC2、インバータ40、コイルL2、コンデンサC3、リレー50、供給電源60、および制御装置100を備える。
【0013】
コンデンサC1の一端および他端は、太陽電池アレイ200の正極端子および負極端子に電気的に接続され、太陽電池アレイ200から出力される直流電圧を平滑化する。昇圧回路20は、コイルL1、スイッチTrおよびダイオードD1を有する。昇圧回路20は、いわゆるチョッパ方式スイッチングレギュレータでよい。昇圧回路20は、太陽電池アレイ200からの電圧を昇圧する。
【0014】
スイッチTrは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)でよい。コイルL1の一端は、コンデンサC1の一端に接続され、コイルL1の他端は、スイッチTrのコレクタに接続される。スイッチTrのコレクタは、ダイオードD1のアノードに接続され、スイッチTrのエミッタは、コンデンサC1の他端に接続される。コイルL1は、スイッチTrがオン期間中に太陽電池アレイ200からの電力に基づくエネルギーを蓄積し、スイッチTrがオフ期間中に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、昇圧回路20は、太陽電池アレイ200からの直流電圧を昇圧する。ダイオードD1は、コイルL1からの出力を整流する。また、ダイオードD1は、昇圧された直流電圧が昇圧回路20の出力側から入力側に流れることを防止する。
【0015】
なお、昇圧回路20は、上記の構成には限定されず、例えば、ハーフブリッジ型昇圧回路、フルブリッジ型昇圧回路などのトランス巻線を有する絶縁型昇圧回路により構成してもよい。
【0016】
コンデンサC2は、昇圧回路20から出力される直流電圧を平滑化する。インバータ40は、スイッチを含み、スイッチがオンオフすることで昇圧回路20から出力された直流電圧を交流電圧に変換、系統電源300または負荷310に出力する。インバータ40は、例えば、ブリッジ接続された4つの半導体スイッチを含む単相フルブリッジPWMインバータにより構成してもよい。4つの半導体スイッチのうち、一方の一対の半導体スイッチは直列に接続される。4つの半導体スイッチのうち、他方の一対の半導体スイッチは、直列に接続され、かつ一方の一対の半導体スイッチと並列に接続される。
【0017】
インバータ40と系統電源300との間には、コイルL2およびコンデンサC3が設けられる。コイルL2およびコンデンサC3は、インバータ40から出力された交流電圧からノイズを除去する。また、コンデンサC3と系統電源300との間には、リレー50が設けられる。リレー50は、インバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に遮断するか否かを切り替える。リレー50がオンすることで、パワーコンディショナ10と系統電源300または負荷310とが電気的に接続され、オフすることでパワーコンディショナ10と系統電源300または負荷310とが電気的に遮断される。リレー50は、遮断部の一例である。
【0018】
供給電源60は、例えば、電源ICチップにより構成される。供給電源60は、昇圧回路20の出力側に接続され、昇圧回路20から取り出される直流電圧から、制御装置100に供給する予め定められた電圧を示す電力を生成し、生成された電力を制御装置100に供給する。供給電源60は、昇圧回路20のスイッチTrがオフ状態において、昇圧回路20からの出力電圧が、基準電圧に達すると起動する。起動後、供給電源60は、昇圧回路20から出力される電力を利用して制御装置100が駆動するための駆動電力を生成し、制御装置100に供給する。なお、供給電源60は、系統電源300からの電力を直接利用して、制御装置100に供給する電力を生成してもよい。
【0019】
制御装置100は、太陽電池アレイ200から最大電力が得られるように、昇圧回路20のスイッチング動作を制御して、太陽電池アレイ200から出力される直流電圧を昇圧し、昇圧された直流電圧を交流電圧に変換して、系統電源300側に出力する。
【0020】
パワーコンディショナ10は、電圧センサ12および16、電流センサ14および18をさらに備える。電圧センサ12は、太陽電池アレイ200の両端の電位差に対応する電圧Vinを検知する。電圧センサ16は、昇圧回路20の出力側の両端の電位差に対応する電圧Voutを検知する。電流センサ14は、太陽電池アレイ200から出力され、昇圧回路20の入力側に流れる電流Iinを検知する。電流センサ18は、昇圧回路20から出力される電流Ioutを検知する。
【0021】
図2は、制御装置100が起動時に実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0022】
昇圧回路20、インバータ40、供給電源60、および制御装置100が停止状態において、太陽電池アレイ200から入力され、昇圧回路20から出力される出力電圧Voutが基準電圧Vth1以上になったことに対応して(S10)、供給電源60が起動する。供給電源60は、太陽電池アレイ200からの電力を利用して、制御装置100を駆動するための駆動電力を生成する。制御装置100は、供給電源60からの電力を受けて、起動する(S12)。
【0023】
制御装置100は、リレー50を介してインバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に遮断した状態で、昇圧回路20の動作を開始する(S14)。制御装置100は、昇圧回路20に入力される入力電圧を変化させた場合の昇圧回路20から出力される電力の変化量などをパラメータとして、昇圧回路20から出力可能な電力Waを推定する(S16)。
【0024】
次いで、制御装置100は、電力Waが、制御装置100、昇圧回路20およびインバータ40を動作させるのに必要な電力Wt以上か否かを判定する(S18)。電圧Waが電力Wtより小さい場合には、太陽電池アレイ200から得られる電力が、パワーコンディショナ10を起動するのに必要な電力を満たさないと判断して、制御装置100は、昇圧回路20の動作を停止し(S20)、予め定められた待機期間が経過すると(S22)、改めて昇圧回路20の動作を開始させる。
【0025】
一方、制御装置100は、推定された電力Waが電力Wt以上であると判定した場合、リレー50をオンして(S24)、インバータ40の動作を開始し、系統電源300との系統連系を開始させる(S26)。
【0026】
以上の処理手順によれば、制御装置100は、推定された電力が、制御装置100、昇圧回路20およびインバータ40を動作させることが可能な電力を満たしていると推定できた場合に、リレー50をオンして、インバータ40を動作させる。この場合、推定された電力の精度が不十分であると、太陽電池アレイから得られる実際の電力が不十分で、太陽電池アレイから得られる電力によりインバータ40を動作させることができない場合がある。この場合、制御装置100が、ステップS26の処理の後に、昇圧回路20およびインバータ40の動作を停止し、リレー50を一旦オフする。そして、制御装置100は、改めて昇圧回路20の動作を開始して、電力の推定をやり直すことになる。つまり、パワーコンディショナ10が起動する場合に、電力の推定を繰り返すことで、リレー50のオンオフが繰り返されてしまう場合がある。また、パワーコンディショナ10に接続される太陽電池アレイの種類によって、得られる電力が変わる場合があるので、パワーコンディショナ10に接続可能な太陽電池アレイの種類が多いと、制御装置100が精度よく電力の推定を行うことはさらに困難になる。
【0027】
そこで、本実施形態によれば、制御装置100は、リレー50をオフした状態で、昇圧回路20に加えて、インバータ40を動作させた場合に、昇圧回路20から出力される電力に基づいて、太陽電池アレイ200から、パワーコンディショナ10を起動するために最低限必要な電力に対応する起動可能電力が得られているか否かを判定する。これにより、パワーコンディショナ10の起動判定の精度を向上させることができる。また、パワーコンディショナ10が起動する場合に、電力の推定を繰り返すことで、リレー50のオンオフが繰り返されることを防止できる。よって、リレー50のオンオフに伴い発生する動作音の発生の頻度を低減できる。また、リレー50のオンオフに伴うリレー50の劣化の進行を抑制できる。
【0028】
図3は、本実施形態に係る制御装置100の機能ブロックの一例を示す。制御装置100は、制御部102、リレー制御部104、および起動判定部106を備える。制御部102は、昇圧回路20およびインバータ40の動作を制御する。制御部102は、昇圧回路20が備えるスイッチTrをPWM制御に基づきオンオフすることで、昇圧比を制御し、太陽電池アレイ200から極大または最大となる電力が得られるように、昇圧回路20の入力電圧Vinを制御する。制御部102は、インバータ40が備える各スイッチをPWM制御に基づきオンオフすることで、インバータ40の入力電圧を制御し、昇圧回路20から出力される直流を、系統電源300の電圧に同期させた交流に変換する。
【0029】
リレー制御部104は、リレー50をオンオフすることで、インバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に接続または遮断させる。起動判定部106は、太陽電池アレイ200から出力される電圧が基準電圧Vth1以上になったことに対応して、リレー50を介してインバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に遮断した状態で、制御部102により昇圧回路20およびインバータ40を動作させる。
【0030】
また、起動判定部106は、昇圧回路20およびインバータ40が動作した状態で、太陽電池アレイ200から起動可能電力が得られるか否かを判定する。起動判定部106は、昇圧回路20から出力される電力が基準電力Wthに達したときの昇圧回路20から出力される電圧が起動可能電圧Vth3以上の場合に、太陽電池アレイ200から起動可能電力が得られると判定してもよい(図3のステップS110)。
【0031】
制御部102がリレー50をオフした状態でインバータ40を動作させる目的は、起動判定部106が、太陽電池アレイ200から制御装置100および昇圧回路20に加えて、インバータ40を起動するのに必要な電力が得られるか否かをより正確に判定することにある。したがって、制御部102は、任意の条件で、インバータ40の各スイッチを制御して、インバータ40を動作させてもよい。制御部102は、例えば、インバータ40の各スイッチをデューティ比50%で制御することで、インバータ40を動作させてもよい。インバータ40の各スイッチをデューティ比50%で制御することで、制御装置100の処理負担を低減できる。
【0032】
リレー制御部104は、起動判定部106が太陽電池アレイ200から起動可能電力が得られると判定したことに対応して、リレー50を介してインバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に接続する。
【0033】
ここで、太陽電池アレイ200から出力される電圧が高いと、昇圧回路20を動作させた場合に、昇圧回路20から出力される電圧が高すぎる場合がある。この場合、昇圧回路20の出力側に設けられているコンデンサC2などの素子に悪影響を与える可能性がある。
【0034】
そこで、昇圧回路20の昇圧動作を停止した状態で、昇圧回路20から出力される電圧が、基準電圧Vth1より高い上限電圧Vth2以上の場合、起動判定部106は、リレー50を介してインバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に遮断した状態で、制御部102によりインバータ40を動作させてもよい(図3のステップ104およびステップS108)。そして、起動判定部106は、昇圧回路20の昇圧動作を停止させ、かつインバータ40のスイッチのオンオフ動作をさせた状態で、太陽電池アレイ200から起動可能電力が得られるか否かを判定してもよい(図3のステップS110)。つまり、起動判定部106は、昇圧回路20から出力される電圧が、基準電圧Vth1より高い上限電圧Vth2以上の場合、昇圧回路20の昇圧動作を停止させ、インバータ40のスイッチのオンオフ動作のみをさせて、太陽電池アレイ200から起動可能電力が得られるか否かを判定してもよい。
【0035】
図4は、制御装置100がパワーコンディショナ10の起動判定を行う手順を示すフローチャートを示す。
【0036】
昇圧回路20、インバータ40、供給電源60、および制御装置100が停止状態において、太陽電池アレイ200から入力され、昇圧回路20から出力される出力電圧Voutが基準電圧Vth1以上になったことに対応して、供給電源60が起動する。供給電源60は、太陽電池アレイ200からの電力を利用して、制御装置100を駆動するための駆動電力を生成する。制御装置100は、供給電源60からの電力を受けて、起動する(S102)。
【0037】
制御装置100が起動すると、起動判定部106は、昇圧回路20の出力電圧Voutが上限電圧Vth2以上か否かを判定する(S104)。出力電圧Voutが上限電圧Vth2より小さい場合、起動判定部106は、リレー50を介してインバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に遮断した状態で、制御部102により昇圧回路20およびインバータ40の動作を開始する(S106)。制御部102は、昇圧回路20およびインバータ40がそれぞれ備える各スイッチのオンオフ動作を開始してもよい。
【0038】
次いで、起動判定部106は、昇圧回路20から出力される電圧Voutおよび電流Ioutに基づいて昇圧回路20から出力される電力Woutを算出する。起動判定部106は、電力Woutが基準電力Wthに達したときの昇圧回路の出力電圧Voutが起動可能電圧Vth3以上か否かを判定する(S110)。出力電圧Voutが起動可能電圧Vth3以上の場合には、起動判定部106は、太陽電池アレイ200から起動可能電力が得られると判断して、制御部102は、インバータ40の動作を一旦停止し(S112)、リレー制御部104は、リレー50をオンする(S114)。リレー制御部104がリレー50をオンした後、制御部102は、再度インバータ40の動作を開始する(S116)。なお、パワーコンディショナ10が系統電源300と連系しない場合には、制御部102は、リレー50をオンする前に、一旦インバータ40を停止させなくてもよい。
【0039】
一方、出力電圧Voutが上限電圧Vth2以上の場合には、起動判定部106は、リレー50を介してインバータ40と系統電源300または負荷310との間を電気的に遮断した状態で、かつ昇圧回路20を停止させた状態で、制御部102によりインバータ40の動作を開始させる(S108)。次いで、起動判定部106は、電力Woutが基準電力Wthに達したときの昇圧回路の出力電圧Voutが起動可能電圧Vth3以上か否かを判定する(S110)。
【0040】
出力電圧Voutが起動可能電圧Vth3より小さい場合には、起動判定部106は、制御部102により昇圧回路20およびインバータ40の動作、またはインバータ40の動作を一旦停止させる(S118)。停止後、予め定められた待機期間が経過した場合(S120)、起動判定部106は、再びステップS104以降の処理を実行する。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、パワーコンディショナ10が起動判定を行う場合に、インバータ40を動作させた状態で、太陽電池アレイ200から出力される電力を推定し、推定された電力から起動判定ができる。したがって、パワーコンディショナ10に接続される太陽電池アレイ200の種類によらず、起動判定をより精度よく実行できる。よって、パワーコンディショナ10が起動する場合に、電力の推定を繰り返すことで、リレー50のオンオフが繰り返されることを防止できる。また、リレー50のオンオフに伴い発生する動作音の頻度を少なくでき、リレー50のオンオフに伴うリレー50の劣化の進行を抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態に係る制御装置100が備える各部は、パワーコンディショナ10の起動判定に関する各種処理を行う、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムをインストールし、このプログラムをコンピュータに実行させることで、構成してもよい。つまり、コンピュータにパワーコンディショナ10の起動判定に関する各種処理を行うプログラムを実行させることにより、制御装置100が備える各部としてコンピュータを機能させることで、制御装置100を構成してもよい。
【0043】
コンピュータはCPU、ROM、RAM、EEPROM(登録商標)等の各種メモリ、通信バス及びインタフェースを有し、予めファームウェアとしてROMに格納された処理プログラムをCPUが読み出して順次実行することで、制御装置100として機能する。
【0044】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0045】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0046】
10 パワーコンディショナ
20 昇圧回路
40 インバータ
50 リレー
60 供給電源
100 制御装置
102 制御部
104 リレー制御部
106 起動判定部
200 太陽電池アレイ
300 系統電源
310 負荷
図1
図2
図3
図4