(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119354
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】建設機械の駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/12 20060101AFI20170417BHJP
F16D 55/40 20060101ALI20170417BHJP
F16D 65/14 20060101ALI20170417BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20170417BHJP
F16D 65/84 20060101ALI20170417BHJP
F16H 1/28 20060101ALN20170417BHJP
【FI】
E02F9/12 B
F16D55/40 A
F16D65/14
F16D65/18
F16D65/84
!F16H1/28
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-62015(P2013-62015)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185474(P2014-185474A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】寺内 謙一
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭62−020527(JP,Y2)
【文献】
特開2010−209637(JP,A)
【文献】
特開2006−025580(JP,A)
【文献】
特開2002−114490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/18,9/24−9/28
F16D 121/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としての油圧または電動のモータと、
このモータの回転力を被駆動部に減速して伝達する減速機と、
上記減速機の回転軸に制動力を付与するブレーキ機構であって、ブレーキピストンと、このブレーキピストンの押圧力により互いに圧接してブレーキ力を発揮する回転側及び固定側両ブレーキ板と、上記ブレーキピストンをブレーキ作動方向に押圧するブレーキバネと、モータ回転時に作動油が導入されて上記ブレーキピストンをブレーキ解除方向に押圧するブレーキ解除圧を発生させる圧力室と、を備えるブレーキ機構と、
上記ブレーキ機構の圧力室にタンク内の作動油を供給する油圧ポンプと、
上記油圧ポンプ及びタンクと上記圧力室とを結ぶ作動油供給管路と、
上記作動油供給管路に設けられ、上記モータの回転/停止に応じて上記圧力室に対する作動油の供給/停止を切換えるブレーキ切換弁と、
上記作動油供給管路とは別に上記ブレーキ機構の圧力室に接続され、上記油圧ポンプから導入された作動油をタンクに戻す戻り管路と、
この戻り管路に設けられ、上記圧力室を上記ブレーキ解除圧に保持する圧力保持弁と、を備え、
上記油圧ポンプは、当該油圧ポンプ、上記作動油供給管路、上記圧力室、上記戻り管路、及び上記タンクの経路で上記作動油を循環させることを特徴とする建設機械の駆動装置。
【請求項2】
上記圧力保持弁は、上記作動油の流量を絞ることによって上記圧力室内に上記ブレーキ解除圧を発生させる絞りであることを特徴とする請求項1記載の建設機械の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベルやハイブリッドショベル等の建設機械において、たとえば旋回駆動装置の減速機を冷却し、または暖める冷却/暖機システムを備えた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルの旋回駆動装置を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、クローラ式の下部走行体上に上部旋回体が地面に対して鉛直となる軸のまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体に作業アタッチメントが取付けられて構成される。
【0004】
このショベルにおいて、上部旋回体を旋回させる旋回駆動装置は、駆動源としての油圧または電動のモータと、このモータの回転力を歯車減速機構により減速して被駆動部である上部旋回体に伝達する減速機とによって構成される。
【0005】
モータと減速機とは、互いの回転軸が一致する状態で装置軸方向に並んで設けられ、モータが上となる縦置き姿勢でアッパーフレームに取付けられる。
【0006】
減速機は、回転軸のまわりにサンギヤと複数のプラネタリギヤとリングギヤとを備えた一〜複数段の遊星歯車式の減速部を設けて構成され、この減速機の出力が、減速機出力軸に設けられたピニオン、及び下部走行体のロワフレームに設けられた旋回ギヤを介して上部旋回体に伝えられる。
【0007】
また、特許文献1に示されるように、減速機内にブレーキ機構(ネガティブ式のパーキングブレーキ)が設けられる場合がある。
【0008】
このブレーキ機構は、ブレーキピストンと、ブレーキバネと、圧力室と、回転側及び固定側両ブレーキ板を備え、旋回停止時にブレーキバネのバネ力でブレーキピストンを押して両ブレーキ板を圧接させることにより減速機の回転軸に制動力を付与(ブレーキ作動)し、旋回作動時に油圧ポンプからの作動油を圧力室に導入してブレーキピストンを反対方向に押すことによりブレーキ力を解除(ブレーキ解除)するように構成される。
【0009】
このブレーキ機構には、油圧ポンプポンプ及びタンクと圧力室とを結ぶブレーキ回路が接続され、このブレーキ回路に、旋回レバーの操作に連動して作動油の給排を制御するブレーキ切換弁が設けられる。
【0010】
一方、減速機の減速機ハウジング内には潤滑油が封入され、減速部の潤滑作用が行われる。
【0011】
ここで、運転中、減速機が発熱し、これによって潤滑油も高温化するため、潤滑油を含めた減速機を冷却する冷却システムが採用されている。
【0012】
なお、冷却システムは、低温下では減速機を暖める暖機システムとしても機能するため、実際上は冷却/暖機システムとなる。
【0013】
この冷却/暖機システムとして、特許文献1に示されているように減速機ケーシングに媒体通路を設け、水、油等の冷却/暖機媒体をこの媒体通路に流して潤滑油を含めた減速機全体を外周から冷却/暖機する技術が公知である。
【0014】
また、特許文献2に示されているように、熱交換器を潤滑油中に浸して設け、この熱交換器に媒体を通す技術も公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4504899号
【特許文献2】特開2012−112122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
公知技術によると、エンジン運転中、媒体が常時流れ、旋回駆動装置の冷却/暖機の必要のないとき(旋回停止時)も稼働し続けるため、エネルギーロスとなる。
【0017】
また、媒体を循環させるための専用のポンプ、タンク及び配管を一から追加しなければならないため、大幅なコストアップとなるとともに配管スペースを含めた余分なスペースが必要となる。
【0018】
なお、上記エネルギーロスを回避するためには、温度管理して、必要時、すなわち旋回作動時にのみ媒体を流すシステムとすればよいが、こうすると温度管理のためのコントローラと専用の切換弁を追加しなければならないため、さらなるコストアップと追加設備のためのスペース増加を招く。
【0019】
そこで本発明は、必要時にのみ冷却/暖機作用を働かせてエネルギーロスを防ぎ、しかも追加設備を最小限に少なくできるとともに温度管理のための設備が不要な建設機械の駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、駆動源としての油圧または電動のモータと、このモータの回転力を被駆動部に減速して伝達する減速機と、上記減速機の回転軸に制動力を付与するブレーキ機構
であって、ブレーキピストンと、このブレーキピストンの押圧力により互いに圧接してブレーキ力を発揮する回転側及び固定側両ブレーキ板と、上記ブレーキピストンをブレーキ作動方向に押圧するブレーキバネと、モータ回転時に作動油が導入されて上記ブレーキピストンをブレーキ解除方向に押圧するブレーキ解除圧を発生させる圧力室と
、を備え
るブレーキ機構と、上記ブレーキ機構の圧力室に
タンク内の作動油を供給する油圧ポンプと、
上記油圧ポンプ及びタンクと上記圧力室とを結ぶ作動油供給管路と、上記作動油供給管路に設けられ、上記モータの回転/停止に応じて上記圧力室に対する作動油の供給/停止を切換えるブレーキ切換弁と
、上記作動油供給管路とは別に上記ブレーキ機構の圧力室に
接続され、上記油圧ポンプから導入された作動油をタンクに戻す戻り管路
と、この戻り管路に
設けられ、上記圧力室を上記ブレーキ解除圧に保持する圧力保持弁
と、を
備え、上記油圧ポンプは、当該油圧ポンプ、上記作動油供給管路、上記圧力室、上記戻り管路、及び上記タンクの経路で上記作動油を循環させるものである。
【0021】
この構成によると、旋回作動時にブレーキ機構の圧力室にブレーキ解除のための作動油が導入され、この作動油が冷却/暖機の媒体としてブレーキピストンを介して潤滑油を含めた減速機を冷却/暖機する。
【0022】
すなわち、ブレーキ機構とそのための油圧ポンプ及びタンク、切換弁を利用して冷却/暖機システムが構成される。
【0023】
この場合、作動油は、従来の駆動装置のブレーキ機構のように行き止まりとなった圧力室に滞留するのではなく、戻り管路を通って循環するため、高い冷却/暖機効果を得ることができる。
【0024】
しかも、作動油は旋回作動時のみに供給されて循環し、旋回停止時には供給も循環もしないため、いいかえれば冷却/暖機作用は、冷却/暖機の必要がある旋回作動時にのみ働き、それ以外の、旋回駆動装置の冷却/暖機が必要でない運転時(アイドリング時、走行時、旋回を伴わないアタッチメント作業時)には働かないため、エネルギーの無駄遣いを回避し、省エネルギーとなる。
【0025】
また、圧力保持弁によって戻り管路の圧力、つまり圧力室の圧力をブレーキ解除圧に保持できるため、ブレーキ機構に本来必要なブレーキ性能を確保することができる。
【0026】
さらに、温度管理の必要がないため、温度管理のための設備も制御も不要となり、追加設備は圧力室とタンクとを結ぶ戻り管路と圧力保持弁のみでよいため、専用のポンプ及びタンクが不要となることを含めて追加設備を必要最小限に少なくし、コストアップ及び必要スペースの増加を抑えることができる。
【0027】
本発明において、上記圧力保持弁
は、上記作動油の流量を絞ることによって
上記圧力室内に上記ブレーキ解除圧を発生させる絞り
であることが望まし
い。
【0028】
この構成によれば、圧力保持弁としての絞りにより、作動油の温度が低いときは油粘度が高くて通過流量(循環流量)が減少する。すなわち、潤滑油も減速機も低温で冷却の必要がなく、むしろ暖機するのが望ましい状況では冷却性能が自然に低下するため、速やかに暖機することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、必要時にのみ冷却/暖機作用を働かせてエネルギーロスを防ぎ、しかも追加設備を最小限に少なくできるとともに温度管理のための設備を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態にかかる旋回駆動装置の一部の断面と冷却/暖機の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施形態はショベルの旋回駆動装置を適用対象としている。
【0032】
図1に実施形態装置、
図2に従来装置をそれぞれ示す。
【0033】
まず、共通部分を説明すると、両装置は、油圧または電動のモータ1と、このモータ1の回転力を減速して被駆動部である上部旋回体に伝達する減速機2とによって構成される。
【0034】
モータ1はモータケーシング3、減速機2は筒状の減速機ケーシング4をそれぞれ備え、モータ1を上にして、互いの回転軸中心が一致する縦置き状態で、互いのケーシング3,4同士がボルト結合される。
【0035】
減速機2は、減速機ケーシング4内で一〜複数段の遊星歯車式の減速部(図では第1段減速部5のみを示す)が同軸上に並設されて構成され、減速機ケーシング4内のほぼ全長範囲に亘って潤滑油(ギヤオイル)Oが封入される。
【0036】
減速部5は、モータ軸6に取付けられたサンギヤSと、減速機回転軸7と一体回転するスパイダ8を介してこのサンギヤSの周りに設けられた複数のプラネタリギヤPと、ケーシング内周に設けられたリングギヤRから成り、周知のようにプラネタリギヤPが自転しながら公転運動を行うことによってモータ回転を減速し、その出力が、図示しない減速機出力軸、ピニオン及びこれと噛み合う旋回歯車を介して被駆動部であるアッパーフレーム(上部旋回体)に伝達される。
【0037】
一方、減速機2の入力側(第1段減速部5)にネガティブ式のブレーキ機構9が設けられている。
【0038】
このブレーキ機構9は、円周方向複数のブレーキバネ10と、このブレーキバネ10によって下向きに押圧されるリング状のブレーキピストン11と、旋回作動時に作動油が導入される圧力室12と、ブレーキピストン11の下方において上下に重なり合って配置された回転軸側及び固定側両ブレーキ板13,14とによって構成される。
【0039】
回転軸側ブレーキ板13は、第1段減速部5のスパイダ8の外周にスプライン結合され、スパイダ8と一体回転可能でかつ上下移動可能となっている。
【0040】
固定側ブレーキ板14は、減速機ケーシング4の内周面にスプライン結合によって回転不能でかつ上下移動可能に取付けられている。
【0041】
こうして、旋回作動時に、圧力室12に作動油が導入されてブレーキ解除圧が立つことによりブレーキピストン11が上昇してブレーキ解除される一方、旋回停止時に、ブレーキ解除圧がタンクTに抜けるとともにブレーキピストン11の押し付け力により両側ブレーキ板13,14同士が圧接してブレーキ力を発揮し、このブレーキ力により減速機回転軸7、ひいては減速機出力軸が回転不能に制動されるように構成されている。
【0042】
一方、旋回作動時に圧力室12に作動油を導入するための油圧ブレーキ回路が設けられている。
【0043】
この油圧ブレーキ回路は、エンジン15によって駆動されるブレーキ解除用の油圧ポンプ16と、この油圧ポンプ16及びタンクTと圧力室12とを結ぶ作動油供給管路17と、この作動油供給管路17に設けられたブレーキ切換弁18によって構成される。図中、19は油圧アクチュエータ(モータ1として油圧モータが用いられる場合はその油圧モータを含めた油圧アクチュエータ)の油圧源となるメインポンプである。
【0044】
ブレーキ切換弁18は、旋回操作レバーの操作/非操作に基づくコントローラ20からの信号によって作動油供給位置イとタンク位置ロの間まで切換わる電磁切換弁として構成され、旋回作動時には作動油供給位置イに、旋回停止時にはタンク位置ロにそれぞれセットされる。
【0045】
上記作動油供給位置イでは、油圧ポンプ16から吐出された作動油が圧力室12に供給され、ブレーキ解除圧が立つことによりブレーキピストン11が上昇してブレーキ解除され、タンク位置ロでは圧力室12の作動油がタンクTに抜けてブレーキピストン11がバネ力で下降し、ブレーキ作動状態となる。
【0046】
なお、モータ1として油圧モータを用いる場合、ブレーキ切換弁18として油圧パイロット切換弁を用い、旋回操作手段としてのリモコン弁の操作に発生するパイロット圧によって同切換弁を切換作動させるようにしてもよい。
【0047】
ここで、ブレーキピストン11を冷却/暖機用の熱交換器、ブレーキ解除のために圧力室12に導入される作動油を冷却/暖機用の媒体と見ることができる。
【0048】
しかし、従来の旋回駆動装置においては、作動油供給管路17が戻り管路を兼ね、同管路17のみを通じて油圧ポンプ16及びタンクTと圧力室12の間で作動油が行き来するだけの構成、つまり、作動油が供給されても圧力室12で行き止まりとなって滞留するだけであるし、ブレーキ作動時にはその作動油もタンクTに抜けてしまうため、熱交換性能が低く、冷却/暖機設備としては実際上、機能しない。
【0049】
これに対し、実施形態装置においては、圧力室12に、作動油供給管路17とは別の戻り管路21を接続し、この戻り管路21をタンクTに接続することにより、旋回作動時に、作動油を油圧ポンプ16−作動油供給管路17−圧力室12−戻り管路21−タンクTの経路で循環させるように構成している。
【0050】
また、戻り管路21に圧力保持弁としての絞り(絞り弁と同義)22を設け、作動油の流量をこの絞り22で絞ることによって圧力室12をブレーキ解除圧に保持するように構成している。
【0051】
23は戻り管路21に設けたオイルクーラである。
【0052】
この構成によると、旋回作動時にブレーキ機構9の圧力室12にブレーキ解除のための作動油が導入され、この作動油が冷却/暖機の媒体としてブレーキピストン11を介して潤滑油Oを含めた減速機2を冷却または暖機する。
【0053】
すなわち、旋回作動時(とくに高負荷での旋回作動時)のように潤滑油O及び減速機2の温度が作動油温度よりも高い状況では冷却機能が働き、低温下での始動直後や非旋回作業時のように潤滑油Oや減速機2の温度が作動油温度よりも低い状況では暖機機能が働く。
【0054】
こうして、ブレーキ機構9とそのための油圧ポンプ16及びタンクT、ブレーキ切換弁18を利用した冷却/暖機システムが構成される。
【0055】
この場合、作動油は、従来の駆動装置のブレーキ機構のように行き止まりとなった圧力室12に滞留するのではなく、戻り管路21を通って循環するため、高い冷却/暖機効果を得ることができる。
【0056】
しかも、作動油は旋回作動時のみに供給されて循環し、旋回停止時にはブレーキ切換弁18のタンク位置ロへの切換わりによって供給も循環も停止する。いいかえれば、冷却/暖機作用は、実際に冷却/暖機の必要がある旋回作動時にのみ働き、それ以外の、旋回駆動装置の冷却/暖機が必要でない運転時(アイドリング時、走行時、旋回を伴わないアタッチメント作業時)には働かないため、エネルギーの無駄遣いを回避し、省エネルギーとなる。
【0057】
また、絞り22によって戻り回路の圧力、つまり圧力室12の圧力をブレーキ解除圧に保持できるため、ブレーキ機構9として本来必要なブレーキ性能を確保することができる。
【0058】
さらに、温度管理の必要がないため、温度管理のための設備も制御も不要となる。
【0059】
また、冷却/暖機システムのうち、作動油供給管路17及びブレーキ切換弁18は既存のものをそのまま利用でき、追加設備は圧力室12とタンクTとを結ぶ戻り管路21と絞り22のみでよいため、専用のポンプ及びタンクが不要となることを含めて追加設備を必要最小限に少なくし、コストアップ及び必要スペースの増加を抑えることができる。
【0060】
この場合、圧力保持弁として絞り22を用いているため、作動油の温度が低い(粘度が高い)ときは通過流量(循環流量)が減少する。すなわち、潤滑油Oも減速機2も低温で冷却の必要がなく、むしろ暖機するのが望ましい状況では冷却性能が自然に低下するため、速やかに暖機することができる。
【0061】
他の実施形態
(1) 圧力保持弁は、基本的には圧力室12にブレーキ解除圧を確保できる弁であればよく、上記実施形態で挙げた絞り22に限らず、リリーフ弁(安全弁)等の他の圧力制御弁を用いてもよい。
【0062】
(2) 上記実施形態では、第1段減速部5にブレーキ機構9を配置した場合を示したが、第2段または第3段減速部にブレーキ機構9を配置した旋回駆動装置にも上記同様に適用することができる。
【0063】
(3) 本発明は、ショベルの旋回駆動装置に限らず、他の旋回式建設機械の旋回駆動装置、旋回駆動装置以外のブレーキ機構付きの駆動装置で冷却/暖機機能を要するものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 モータ
2 減速機
5 減速機を構成する第1段減速部
6 モータ軸
7 減速機回転軸
9 ブレーキ機構
10 ブレーキバネ
11 ブレーキピストン
12 圧力室
13 回転軸側ブレーキ板
14 固定側ブレーキ板
O 潤滑油
15 エンジン
16 ブレーキ解除用の油圧ポンプ
17 作動油供給管路
18 ブレーキ切換弁
21 戻り管路
22 圧力保持弁としての絞り
T タンク