(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の電流検知装置としては、種々の構成を有するものが提案され、実施されているが、構造的に簡単で微小電流の検知が可能なものとしてフラックスゲート型の電流センサが知られている(例えば、特許文献1参照)
この特許文献1に記載された従来例では、
図9(a)に示す構成を有する。すなわち、軟質磁性体製の同形、等大に構成された円環状をなすコア101及び102と、各コア101及び102に等しい回数巻回された励磁コイル103と、各コア101及び102にわたるように一括して巻回された検出コイル104とを備えている。
【0003】
励磁コイル103には、図示しない交流電源が接続されており、また、検出コイル104には図示しない検出回路が接続されている。そして、両コア101及び102の中心に電流を測定する対象物たる被測定導体105が挿通されている。
【0004】
励磁コイル103はこれに通電したとき両コア101及び102に生じる磁場が逆相であって互いに打ち消すようコア101及び102に巻回されている。
そして、励磁コイル103に励磁電流iexを通電したとき、各コア101及び102に生じる磁束密度Bの経時変化は、
図9(b)に示すようになる。軟質磁性体製のコア101及び102の磁気特性は磁場の大きさHが所定の範囲内では磁場の大きさHと磁束密度Bとは直線的な関係にある。しかしながら、磁場の大きさHが所定値を超えると、磁束密度Bが変化しない磁気飽和の状態となる関係にあることから、励磁コイル103に励磁電流iexを通電すると、各コア101及び102に発生する磁束密度Bは実線図示のように上下対称の台形波状に変化し、しかも相互に180°位相がずれた状態となる。
【0005】
今、被測定導線105に矢印で示す如く下向きに直流電流値Iが通電しているものとすると、この直流分に相当する磁束密度が重畳される結果、磁束密度Bは
図9(b)に破線で示す如く、台形波のうち、上方の台形波はその幅が拡大され、一方下方の台形波はその幅が縮小された状態となる。
【0006】
ここで、両コア101及び102に生じた磁束密度Bの変化を正弦波(起電力に対応)で表現すると
図9(c)に示すようになる。この
図9(c)では、前述した
図9(b)で実線図示の台形波に対応して実線図示のように180°位相がずれた周波数fの正弦波(起電力)が表れるが、これらは180°ずれているため互いに打ち消し合う。一方、
図9(b)で破線図示の台形波に対応して
図9(c)には破線図示のような2倍の周波数2fの2次高調波が表れる。この2次高調波は位相が180°ずれているため、相互に重畳すると
図9(c)の最下段に示すような正弦波信号となり、これが検出コイル104で検出される。
【0007】
この検出コイル104で捉えられた検出信号は被測定導線105を流れる直流の電流値Iに対応しており、これを処理することで電流値Iを検出することができる。
また、フラックスゲート型の他の電流センサとして、特許文献2に示された構成が知られている。
図10は、特許文献2に示された電流センサの動作を説明するためのブロック図である。
【0008】
図において、感知される電流21は、ソフトフェライトのトロイダルコアを有する小型変成器からなる可飽和コア磁気検知素子24の一次巻線を通って流れる。この変成器の2次巻線は一端が電力スイッチ23に接続され、この電力スイッチ23は、電源22から2次巻線に供給される電圧の極性を交互に切り替える。また、2次巻線の他端は、検知装置25に接続されている。
【0009】
電力スイッチ23が正極性を有する電流を供給すると、可飽和コア磁気検知素子24の2次巻線に流れる電流によりコアを飽和させる。コアが飽和すると、検知装置25の両端の電圧が急激に上昇し、検知装置25から出力される制御信号27はヒステレシススイッチ26に供給される。制御信号27があるレベルに到達したとき電力スイッチ23を反転させることで、可飽和コア磁気検知素子24の2次巻線に流れる電流の極性を切り替える。
【0010】
これにより、可飽和コア磁気検知素子24には負極性の電流が供給され、コアの磁化は減少し、反対方向にコアが飽和される。すると、検知装置25の両端の電圧は、急速に負方向に上昇し、ヒステレシススイッチ26を介して電力スイッチ23は極性を切替え、2次巻線に供給されている電圧の極性を反転させる。このように、このシステムは、安定して周期的パターンで動作を繰り返す。
【0011】
感知される電流21に比例する出力を得るために、ローパスフィルタ28が電力スイッチ23の出力に接続されて、混在する磁化電流成分の大部分を除去する。このローパスフィルタ28の出力線29における信号は感知される電流21に含まれる直流成分を含む非常に低い周波数成分である。感知される電流21の高周波成分は変成器31の2次巻線に誘起されるので、変成器31の出力信号32は、出力線29における信号を電力増幅器30で増幅した直流成分を含む非常に低い周波数成分と高周波成分を含んでいる。これにより、広い周波数帯域にわたって電流の測定ができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態を示す電流検知装置の構成図、
図2は、本発明の電流検知装置の一例を示す回路構成図、
図3は、
図1の発振回路の一例を示す回路図、
図4は、発振回路の出力電圧波形と励磁コイルの励磁電流波形を示す模式図、
図5は磁気コアの磁界の強さと磁束密度の関係を示す特性線図及び磁気コアのインダクタンス特性を示す特性線図、
図6は本発明の各検出回路の出力電圧波形を示す模式図である。
【0023】
図において、1は電流検知装置であって、例えば、漏電検知等の対象物に設けられた例えば10A〜800Aの往復の電流Iが流れる導線2a,2bの微小な差異電流を検知する。ここで、健全状態では導線2a,2bに流れる電流の和はゼロであるが、漏電や地絡などで導線2a,2bに流れる電流の和がゼロにならず、検出対象とする例えば15mA〜500mA程度の微小な差異電流が流れる。これら導線2a,2bの回りに例えば、ナノ結晶軟質磁性材料からなるリング状の磁気コア3が配設されている。つまり、磁気コア3内に導線2a,2bが挿通されている。
【0024】
磁気コア3には、励磁コイル4が所定巻数で巻回されており、この励磁コイル4に発振手段としての発振回路5が接続されており、発振回路5から励磁電流が供給される。
また、発振回路5には、デューティ比を検出する電流検知手段としての第1の電流検出回路6a及び第2の電流検出回路6bと、周波数検知手段としての周波数検出回路7と、振幅検知手段としての振幅検出回路8が接続されている。そして、4つの検出回路には出力判別回路9が接続されている。
【0025】
図2に示すように、第1の電流検出回路6aは、低域通過フィルタ61aと絶対値回路62aから構成することができ、低域通過フィルタ61aの遮断周波数よりも高域側にある発振回路5の出力パルスを平滑することで、発振回路5の出力パルスのデューティ変化を検知することができる。また、第2の電流検出回路6bは、帯域通過フィルタ
61bと絶対値回路62bから構成することができ、帯域通過フィルタ61bの中心周波数よりも高域側にある発振回路5の出力パルスを平滑することで、発振回路5の出力パルスのデューティ変化を検知することができる。本実施例では、第1の電流検出回路6aは、例えば直流から100Hzまでの低周波域の電流を検出対象とし、第2の検出回路6bは、例えば、100Hzから1kHzまでの高周波域の電流検出を対象とするようにする。
【0026】
このように、2つの電流検出回路で、周波数の帯域を分割することにより、ノイズ除去を容易に行うことができ、耐ノイズ性を向上させることができる。
また、周波数検出回路7は、高域通過フィルタ71と絶対値回路72とから構成することができ、発振回路5の出力パルスの周波数増加を検知することができる。更に、振幅検出回路8は、絶対値回路81から構成することができ、発振回路5の出力パルスの振幅低下を検知することができる。
【0027】
また、出力判別回路9は、4つの検出回路6a、6b、7、8の出力にそれぞれ接続された比較回路91、92、93、94と、この4つの比較回路91、92、93、94の出力が入力される論理和回路95から構成することができる。
【0028】
発振回路5は、
図3に示すように、コンパレータとして動作するオペアンプ11を備えている。このオペアンプ11の出力側と反転入力側との間に励磁コイル4が接続されている。また、オペアンプ11の反転入力側は抵抗12を介してグランドに接続され、オペアンプ11の非反転入力側は、オペアンプ11の出力側及びグランド間に直列に接続された分圧抵抗13及び14間に接続されている。
【0029】
そして、オペアンプ11の出力側及びグランドが出力端子to1及びto2に接続されている。
このため、発振回路5では、分圧抵抗13及び14の接続点Eの閾値電圧Vthがオペアンプ11の非反転入力側に供給されており、この閾値電圧Vthと励磁コイル4及び抵抗12との接続点Dの電圧Vdとが比較される。そして発振回路5の出力電圧Aが
図4(a)に示す矩形波として出力側から出力される。
【0030】
今、
図4(a)に示すように、時点t1で、オペアンプ11の出力側の出力電圧Aがハイレベルになると、これが励磁コイル4に印加される。このため、励磁コイル4を出力電圧Aと抵抗12の抵抗値R12とに応じた励磁電流Ibで励磁する。このとき、励磁電流Ibは、
図4(b)に示すように、出力電圧Aの立ち上がり時点t1から比較的急峻に立ち上がり、その後、緩やかに増加する放物線状に増加する。
【0031】
このとき、オペアンプ11の非反転入力側に出力電圧Aを分圧抵抗13及び14の接続点Eで得られる分圧抵抗13及び14の抵抗値R13及びR14で分圧された比較的大きな閾値電圧Vthが入力されている。一方、オペアンプ11の反転入力側の励磁コイル4及び抵抗12の接続点Dの電圧Vdは、励磁コイル4の励磁電流Ibの増加に応じて増加し、この電圧Vdが時点t2で非反転入力側の閾値電圧Vth、すなわち
図4(b)の+Ith1を上回ると、オペアンプ11の出力電圧Aが
図4(a)に示すように、ローレベルに反転する。これに応じて励磁コイル4を流れる励磁電流Ibの極性が反転し、励磁電流Ibは最初は急峻に低下し、その後、緩やかに低下する放物線状に減少する。
【0032】
このとき、閾値電圧Vthは、ローレベルとなっていることにより、閾値電圧Vthも低い電圧となっている。そして、オペアンプ11の反転入力側の励磁コイル4及び抵抗12の接続点Dの電圧Vdが、励磁コイル4の励磁電流Ibの減少に応じて減少し、この電圧Vdが時点t3で非反転入力側の閾値電圧Vth、すなわち
図4(b)の−Ith1を下回ると、オペアンプ11の出力電圧Aが
図4(a)に示すように、時点t1と同様にハイレベルに反転し、再び励磁電流Ibが上昇し続ける。
【0033】
このため、出力電圧Aは、
図4(a)に示すように、ハイレベル及びローレベルを繰り返す矩形波電圧となり、発振回路5が非安定マルチバイブレータとして動作する。そして、励磁コイル4の励磁電流Ibは、
図4(b)に示すように増加及び減少を繰り返す鋸歯状波電流となる。
【0034】
ところで、磁気コア3は、
図5(a)に示すように角型比の大きな磁束密度Bと磁界の強さHとの関係を表すB−H特性を有し、高透磁率材料の非線型な特性を有する。このB−H特性を有する磁気コア3のインダクタンスは、導線2a,2bの差電流が零であるときに、
図5(b)に示すように飽和電流付近Gで急激に消失する。磁気コア3を貫通する導線2a,2bに任意の検出対象となる微小な差電流Cが生じると、
図5(b)のインダクタンス特性は、破線図示のように差電流Cに応じてインダクタンスが消失するタイミングが変化する。
【0035】
このため、電流が零のときにインダクタンスが飽和する電流(
図5(b)のG)と励磁電流Ibの極性が切り換わる電流(
図4(b)のF)とを一致させる。そうすると、インダクタンスが飽和する電流(
図5(b)のJ)が導線2a,2bの差電流の電流値Cに応じて変化するので、励磁電流Ibの極性が切り換わる電流(
図4(b)のH)も同様に変化することになる。
【0036】
この励磁電流Ibの極性が切り換わる電流値が変化することにより、励磁コイル4と抵抗12との接続点Dの電圧Vdが閾値電圧Vthを上回るタイミングが遅れることになり、オペアンプ11から出力される出力電圧Aの立ち下がり時点が導線2a,2bの差電流の電流値Cに応じて
図4(a)で破線図示のように遅れる。このため、出力電圧Aの矩形波電圧のデューティ比が導線2a,2bの差電流の電流値Cに応じて変化する。
【0037】
したがって、発振回路5の出力端子to1及びto2にデューティ比を検出する電流検知手段としての第1の電流検出回路6aと第2の電流検出回路6bを接続し、測定電流の周波数に応じて第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bのいずれか一方で、出力電圧Aのハイレベル状態を維持している時間とローレベル状態を維持している時間とを計測することにより、デューティ比を検出することができ、数アンペア以下の小電流を検知することができる。なお、小電流とは、
図6(a)において、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bから求めた出力が線形に推移する電流を示す。
【0038】
本実施例では、第1の電流検出回路6aは、
図2に示すように、低域通過フィルタ61aと絶対値回路62aから構成することができ、第2の電流検出回路6bは、帯域通過フィルタ61bと絶対値回路62bから構成することができる。
【0039】
次に、数アンペア以上の大電流検知について、
図1と
図6を用いて説明する。ここで、大電流とは
図6(a)において、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bから求めた出力が飽和し始める電流よりも大きい電流を示す。
【0040】
図1において、本実施形態では、発振回路5に周波数検知手段としての周波数検出回路7と振幅検知手段としての振幅検出回路8を接続し、
図3に示す発振回路5の出力端子to1、to2から出力される出力電圧Aを、周波数検出回路7と振幅検出回路8にも供給するようにしている。
【0041】
周波数検出回路7は、
図2に示すように、高域通過フィルタ71と絶対値回路72から構成することができ、発振回路5の出力パルスの周波数増加を検知するものである。
また、振幅検出回路8は、絶対値回路81から構成することができ、発振回路5の出力パルスの振幅低下を検知するものである。
【0042】
ここで、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bと、周波数検出回路7と、振幅検出回路8の出力電圧を
図6に基づいて説明する。
図6は、本発明の各検出回路の出力電圧波形を示す模式図であり、(a)は電流検出回路の出力波形図、(b)は周波数検出回路の出力波形図、(c)は振幅検出回路の出力波形図である。
【0043】
図において、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bの出力電圧は、
図6(a)に示すように、最初線形に推移するが、電流の増加とともに一旦飽和し、その後、減少を続け、最終的にゼロとなる。これは測定電流の大きさに比例して
図4(b)の励磁電流Ibも大きくなることで、コアが十分飽和する前に閾値電圧(+Ith1、−Ith1)に達してしまうためである。
【0044】
これにより、発振回路5の出力電圧Aの周波数も急激に増加し、最終的には発振は停止する。
また、周波数検出回路7の出力電圧は、
図6(b)に示すように、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bの出力が飽和し始めると同時に急激に増加し始め、ある電流でゼロ出力となる。
【0045】
更に、振幅検出回路7の出力電圧は、測定電流の増加に伴い発振回路5の出力周波数が増加すると、オペアンプ11のスルーレートの制約により出力振幅が低下するため、
図6(c)に示すような出力波形となる。
【0046】
そこで、この4つの検出回路6a,6b,7,8の出力をもとに、表1に示すように検知を行うことで、微小電流から大電流までの電流検知が可能になる。表1は測定電流と4つの検出回路との関係を表したものである。
【0048】
表1において、測定電流が
図6(a)に示すように、ある電流値I1、−I1を超えないXの領域にあるときは、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bで出力電圧の大きさを検知する。
【0049】
また、測定電流が
図6(b)に示すように、ある電流値I1、−I1より大きい領域Yでは、周波数検出回路7で出力電圧がある値、すなわちある電流値I1、−I1に対応した電圧V1よりも大きいことを検知することで、I1、−I1より大きい電流値を検知できる。さらに、測定電流が
図6(c)に示すように、電流値I1、−I1よりもさらに大きいある電流値I2、−I2より大きい領域Zでは、振幅検出回路8で出力電圧がある値、すなわち電流値I2、−I2に対応した電圧V2よりも小さいことを検知することで、I2、−I2より大きい電流値を検知できる。
【0050】
このように、
図6のX、Y、Zの領域に応じて、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6b、周波数検出回路7、振幅検出回路8の出力電圧を検知することで、小電流から大電流まで電流検知を行うことができる。
【0051】
すなわち、測定電流がXの領域であるときは、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bで発振回路5の出力パルスのデューティ変化を検出することで、微小電流を検出する。また、測定電流がYの領域であるときは、周波数検出回路7で発振周波数を検出し、発振回路5の出力パルスの周波数増加を検知することで、I1、−I1より大きい電流値を検出する。さらに、測定電流がZの領域であるときは、振幅検出回路8で発振回路5の出力パルスの振幅低下を検知することで、I2より大きい電流値を検知する。
【0052】
また、表1に示す電流検知を行うには、
図2に示す簡単な回路で構成することができる。
図2において、第1の電流検出回路6aまたは第2の電流検出回路6bは、発振回路5の出力パルスのデューティ変化を検出する必要があるが、本実施形態では、第1の電流検出回路6aを低域通過フィルタ61aと絶対値回路62aから構成し、第2の電流検出回路6bを帯域通過フィルタ61bと絶対値回路62bから構成することができる。また、周波数検出回路7は、発振回路5の出力パルスの周波数増加を検知する必要があるが、高域通過フィルタ71と絶対値回路72とから構成することができる。更に、振幅検出回路8は、発振回路5の出力パルスの振幅低下を検知する必要があるが、絶対値回路81のみで構成することができる。
【0053】
この4つの検出回路6a、6b、7、8の出力をもとにA/Dコンバータやマイコン等を用いて電流検知を行うことができるが、
図2に示す出力判別回路9を用いることで、より簡単な構成で出力判定を行うことができる。
【0054】
また、出力判別回路9は、4つの検出回路6a、6b、7、8の出力にそれぞれ接続された比較回路91、92、93、94と、この4つの比較回路91、92、93、94の出力が入力される論理和回路95から構成することができる。
【0055】
図において、発振回路5の出力電圧Aは、第1の電流検出回路6aの低域通過フィルタ61aを介して絶対値回路62aに入力されており、低域通過フィルタ61aの出力の絶対値を比較回路91の基準電圧と比較する。そして、絶対値回路91の出力が基準電圧を超えたときに比較回路91の出力がハイレベルとなる。
【0056】
また、発振回路5の出力電圧Aは、第2の電流検出回路6bの帯域通過フィルタ61bを介して絶対値回路62bに入力されており、帯域通過フィルタ61bの出力の絶対値を比較回路92の基準電圧と比較する。そして、絶対値回路92の出力が基準電圧を超えたときに比較回路92の出力がハイレベルとなる。
【0057】
更に、発振回路5の出力電圧Aは、周波数検出回路7の高域通過フィルタ71を介して絶対値回路72に入力されており、高域通過フィルタ71の出力の絶対値を比較回路92のI1に対応する電圧V1と比較する。発振回路5の出力パルスの周波数が高くなると、高域通過フィルタ71の出力が増大し、絶対値回路72の出力がV1を超えたときに比較回路93の出力がハイレベルとなる。
【0058】
また、発振回路5の出力電圧Aは、振幅検出回路8の絶対値回路81に入力されており、この絶対値回路81の絶対値を比較回路94のI2に対応する電圧V2と比較する。そして、絶対値回路81の出力がV2を下回ったとき、比較回路94の出力がハイレベルとなる。
【0059】
そして、4つの比較回路91〜94からの出力を論理和回路95の論理和出力としている。
このように本実施形態によれば、4つの検出回路6a、6b、7、8の出力電圧が測定電流に応じて
図6に示すように変化した場合、測定電流に応じて、比較回路91〜94は、上記したように、各検出回路毎に設定した閾値電圧と比較して出力電圧を発生するので、論理和回路95で出力和をとることで、微小電流から大電流までの広い電流範囲の検知を行うことができる。
【0060】
なお、上記実施形態においては、2本の導線2a及び2bの差電流を検知する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1本の導線に流れる電流を検出することもできる。
【0061】
次に、出力判別回路9の比較回路の構成例を
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、
図2に示す比較回路の一般的な回路構成図であり、
図8は
図2に示す比較回路の一実施例を示す回路構成図である。なお、
図7及び
図8では、
図2に示す比較回路91に適用した例について説明する。
【0062】
図7において、比較回路91Aは、比較器900と、電源901と、電源901に接続された可変抵抗器902とから構成されている。また、絶対値回路62aの出力が比較器900の非反転入力側に接続されており、比較器900の出力が論理和回路95に入力されている。この比較回路91Aでは、電源901と可変抵抗器902により基準電圧を設定する。そして、絶対値回路62aの出力が基準電圧よりも大きい場合に、比較器900は論理和回路95にハイレベルの電圧を出力する。
【0063】
なお、
図7では、
図2に示す比較回路91について説明したが、比較回路92、93、94についても基本的な回路構成は同様である。
図7に示す比較回路91Aは、電流定格等に応じて基準電圧の調整が必要であるが、手動で可変抵抗902を調整する必要がある。特に、本実施形態では出力判別回路9に4つの比較回路を用いているために、4つの比較回路をそれぞれ設定する必要があり、調整するためのコストや人が調整することによる精度の低下が課題となっている。
【0064】
そこで、この課題を解決するために、
図8に示す比較回路91Bを用いることができる。
図8において、比較回路91Bは、比較器900と、DAコンバータ905に接続された抵抗906及び抵抗907と、DAコンバータ905の出力電圧を設定する記憶素子であるメモリー904およびCPU903とから構成されている。そして、比較器900の反転入力側が抵抗906と抵抗907との間に接続されている。また、絶対値回路62aの出力が比較器900の非反転入力側に接続されており、比較器900の出力が論理和回路95に入力されている。
【0065】
なお、
図8では、
図2に示す比較回路91について説明したが、比較回路92、93、94についても基本的な回路構成は同様である。
図8に示す比較回路91Bでは、基板毎にメモリー904に設定された値をCPU903で読み込み、その設定に基づいてDAコンバータ905から電圧を出力し、その電圧を抵抗906と抵抗907で分圧することで基準電圧を設定する。そして、絶対値回路62aの出力が基準電圧よりも大きい場合に、比較器900は論理和回路95にハイレベルの電圧を出力する。
【0066】
このように
図8に示す比較回路を用いることにより、手動での調整が不要となり、自動的に比較回路の基準電圧を設定することが可能であり、低コスト化、高精度化を実現することができる。
【0067】
なお、
図8に示す実施形態では、4つの比較回路それぞれにメモリー904およびCPU903、DAコンバータ905を備えるようにしたが、一つのメモリー904、CPU903、DAコンバータ905で4つの比較回路の比較器の基準電圧を一度に設定することもできる。あるいは、一つのメモリー904、CPU903と、それぞれのDAコンバータで、4つの比較回路の比較器の基準電圧を一度に設定するようにしてもよく、一つのメモリー904と、それぞれのCPU903、DAコンバータで、4つの比較回路の比較器の基準電圧を一度に設定するようにしてもよい。