特許第6119396号(P6119396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000002
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000003
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000004
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000005
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000006
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000007
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000008
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000009
  • 特許6119396-焼結機パレット 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119396
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】焼結機パレット
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/08 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   F27B21/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-88640(P2013-88640)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-211288(P2014-211288A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】笠間 俊次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋之
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭51−042563(JP,B2)
【文献】 特開2003−014377(JP,A)
【文献】 特公昭51−023445(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/00−21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグレートバーを配列して焼結原料の載置面が形成された焼結機パレットであって、
前記焼結機パレットの基台上に設けられ、当該焼結機パレットの進行方向に配列された、当該進行方向に対して直交する幅方向に延びる、前記グレートバーを支持する複数の支持梁と、
前記グレートバーが載置される前記各支持梁の先端部に設けられ、前記支持梁の先端部を覆う複数のインシュレーションピースと、
前記各支持梁において、それぞれに設けられた前記複数のインシュレーションピースの間に着脱可能に設けられる少なくとも1つのスペーサと、
を備え
前記スペーサは、前記グレートバーの取り出し・補充が可能なスペースと同等以上の寸法を有し、
前記焼結機パレット上の積載面には、前記グレートバーを幅方向の一方に寄せたとき、前記グレートバー間から前記スペーサを取り出し可能なクリアランスが存在することを特徴とする、焼結機パレット。
【請求項2】
前記スペーサは、前記支持梁の長手方向を等間隔に区分する位置に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の焼結機パレット。
【請求項3】
前記焼結機パレットの進行方向に隣接する前記支持梁に設けられた前記各スペーサは前記パレットの幅方向の同一位置に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の焼結機パレット。
【請求項4】
配列された前記グレートバー間に焼結スタンドをさらに備え、
前記スペーサは、同一支持梁上に設置されるすべての前記焼結スタンドから所定範囲内に設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結機パレット。
【請求項5】
前記支持梁は、前記インシュレーションピースおよび前記スペーサが嵌合する先端部と、当該先端部を支持して前記基台に固定される鉛直部とからなり、
前記焼結パレットの進行方向における前記先端部の幅は前記鉛直部の幅よりも大きく、
前記スペーサは、前記先端部形状を包み込むように嵌合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼結機パレット。
【請求項6】
前記スペーサは、前記支持梁の先端部のうち前記載置面側の部分と対向する内周部分に、前記先端部との間に隙間を形成する隙間調整部材を備えることを特徴とする、請求項5に記載の焼結機パレット。
【請求項7】
前記支持梁から前記スペーサを着脱する際、前記スペーサの両端の内周部分は前記支持梁の先端部側面側の部分と点接触することを特徴とする、請求項5または6に記載の焼結機パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石焼結鉱製造プロセスに用いられる焼結機のグレート式焼結機パレットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結鉱は、焼結機の焼結機パレット上に積載された焼結原料に着火し、パレットの下側から吸気して、焼結原料を焼き固めることにより製造される。ドワイドロイド式焼結機は、焼結原料を積載して移動可能な複数のパレットが無端状に連結されており、これらのパレットを周回させる間に焼結原料層の上方表面から下方に向かって燃焼帯を進行させて、焼結鉱を連続的に製造する。
【0003】
焼結機パレットにおいて、焼結原料が積載される載置面は、複数のグレートバーを配列して形成されている。パレットの基台上には当該パレットの進行方向に対して直交する幅方向に延びる複数の支持梁が当該パレットの進行方向に複数配置されており、各グレートバーはパレットの進行方向に対向する支持梁の間に取り付けられる。なお、支持梁のグレートバーが取り付けられる部分は、耐熱保護用のインシュレーションピースが複数配置され覆われている。支持梁に取り付けられたグレートバーは、当該インシュレーションピース上を支持梁長手方向(すなわち、パレットの幅方向)にのみスライド可能に設けられる。
【0004】
支持梁の両端には、支持梁にグレートバーを取り付けて焼結原料の載置面が形成された状態でサイドウォールが取り付けられる。サイドウォールによって載置面に積載された焼結原料や生成された焼結鉱の落下が防止される。また、サイドウォールには、グレートバーの支持梁長手方向への移動を規制するグレートバー押さえ治具が取り付けられ、グレートバー押さえ治具によりグレートバーを取り付けて形成された載置面が保持される(例えば、下記特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4485640号
【特許文献2】特開平11−325741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グレートバーは、支持梁に取り付けられた際にあそびがあるようにインシュレーションピースの外形に対して数ミリ程度の余裕をもって設計されるため、インシュレーションピース上を支持梁長手方向にスライドすることができる。一方、支持梁に取り付けられたグレートバーは、焼結機に取り付けられた焼結機パレットの姿勢によって外れることがないように、上記スライド方向以外にはほとんど動かないように構成されている。したがって、パレットのグレートバーを交換するためには、まず、サイドウォールのグレート押さえ治具を緩めて拘束されていないグレートエンドバーを取り外してグレートバーを取り出すスペースを確保した後、当該スペースへ古いグレートバーをスライドさせて順番に取り外した後、新しいグレートバーを補充する作業が行われる。
【0007】
このように、上記特許文献1、2のような焼結機パレットの構成では、グレートバーの交換はサイドウォール側から行わなければならず、例えばパレットの幅方向の中央部分のグレートバーを交換する場合にもサイドウォール側から順番にグレートバーを抜き出す必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、グレートバーの交換作業を容易にすることが可能な、新規かつ改良された焼結機パレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、複数のグレートバーを配列して焼結原料の載置面が形成された焼結機パレットが提供される。かかる焼結機パレットは、焼結機パレットの基台上に設けられ、当該焼結機パレットの進行方向に配列された、当該進行方向に対して直交する幅方向に延びる、グレートバーを支持する複数の支持梁と、グレートバーが載置される各支持梁の先端部に設けられ、支持梁の先端部を覆う複数のインシュレーションピースと、各支持梁において、それぞれに設けられた複数のインシュレーションピースの間に着脱可能に設けられる少なくとも1つのスペーサと、を備え、スペーサは、グレートバーの取り出し・補充が可能なスペースと同等以上の寸法を有し、焼結機パレット上の積載面には、グレートバーを幅方向の一方に寄せたとき、グレートバー間からスペーサを取り出し可能なクリアランスが存在する。
【0010】
本発明によれば、グレートバーを支持する支持梁に設けられたインシュレーションピース間に少なくとも1つのスペーサを備える。これにより、スペーサを取り外すことで部分的なグレートバーの交換を容易に可能とし、交換作業の負荷が軽減され、作業時間も短縮できる。
【0011】
ここで、スペーサは、支持梁の長手方向を等間隔に区分する位置に設けてもよい。これにより、焼結機パレットの幅方向に並べられたグレートバーのいずれも交換する際の作業負荷を同程度に軽減することができる。
【0012】
また、焼結機パレットの進行方向に隣接する支持梁に設けられた各スペーサはパレット幅方向(Y方向)の同一位置に配置される。グレートバーは、焼結機パレットの進行方向に隣接する支持梁間に渡されるように支持梁に取り付けられている。このため、焼結機パレットの進行方向に対向するように各スペーサを設けることでグレートバーを取り外し易くすることができる。
【0013】
焼結機パレットは、配列されたグレートバー間に焼結スタンドをさらに備えてもよい。このとき、スペーサは、同一支持梁上に設置されるすべての焼結スタンドから所定範囲内に設けられる。焼結スタンドはグレートバーと比較して重量がはるかに大きく、支持梁上をスライドさせて移動させる作業の負荷は大きい。そこで、スペーサを同一支持梁上に設置されるすべての焼結スタンドから所定範囲内に設けることで、グレートバーあるいは焼結スタンドの交換時に各焼結スタンドを移動させる距離を小さくすることができる。
【0014】
支持梁は、インシュレーションピースおよびスペーサが嵌合する先端部と、当該先端部を支持して基台に固定される鉛直部とからなり、焼結機パレットの進行方向における先端部の幅は鉛直部の幅よりも大きい。このとき、スペーサは、先端部形状を包み込むように嵌合する。スペーサをこのような形状とすることで、焼結機に取り付けられた焼結機パレットの姿勢によらず、スペーサが支持梁から脱落するのを防止することができる。
【0015】
また、スペーサは、支持梁の先端部のうち載置面側の部分と対向する内周部分に、先端部との間に隙間を形成する隙間調整部材を備えてもよい。これにより、スペーサと先端部との間に空気層を形成し、支持梁を熱的に保護する。
【0016】
さらに、支持梁からスペーサを着脱する際、スペーサの両端の内周部分は支持梁の先端部側面側の部分と点接触するように構成してもよい。これにより、支持梁とスペーサとの間に異物が噛み込み難くなる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、支持梁に少なくとも1つのスペーサを設けることでグレートバーの交換作業を容易にすることが可能な焼結機パレットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る焼結機パレットの構成を示す平面図である。
図2図1のA−A切断線における断面図である。
図3図2のB部分を示す部分拡大図である。
図4図1のC−C切断線における部分断面図である。
図5】同実施形態に係る第1のスペーサを示す平面図である。
図6】同実施形態に係る第2のスペーサを示す平面図である。
図7】スペーサを支持梁に取り付けるときの状態を示す説明図である。
図8】スペーサを支持梁の先端部に嵌め込んだ状態を示す説明図である。
図9】スペーサを支持梁から外すときの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
<1.焼結機パレットの構成>
まず、図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る焼結機パレットの構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る焼結機パレット100の構成を示す平面図である。図2は、図1のA−A切断線における断面図である。図3は、図2のB部分を示す部分拡大図である。図4は、図1のC−C切断線における部分断面図である。図1図4において、x方向は焼結機100における焼結機パレット100の進行方向であり、y方向は焼結機パレット100の幅方向である。z方向は焼結機パレット100の高さ方向であって、焼結機パレット100の載置面に積載される焼結原料の積載方向でもある。また、図1図3では、支持梁140、インシュレーションピース120、スペーサ130等の関係を示すため、支持梁140上にグレートバー150が一部だけ配列されている状態を示している。実際は、グレートバー150は図1の右側部分と同様焼結機パレット100の幅方向に配列して敷き詰められている。
【0021】
本実施形態に係る焼結機パレット100は、図1および図2に示すように、焼結機においてレールRに沿って焼結機パレット100を移動させる4つの車輪114a〜114dが設けられた基台110に、複数のグレートバー150により形成された焼結原料が積載される載置面と、載置面のパレット100の幅方向における両側にサイドウォール112とが設けられてなる。基台110は、載置面を支持する支持梁140が設けられる支持部分と、焼結機パレット100の幅方向における支持部分の両側でサイドウォール112が設けられるサイド部分と、サイド部分よりさらに焼結機パレット100の幅方向外側で車輪114a〜114dを支持する車輪支持部とからなる。
【0022】
載置面は、複数のグレートバー150を支持梁140に取り付け配列して形成される。グレートバー150が取り付けられる支持梁140は、基台110の支持部分から載置面側に向かって立設されている。本実施形態では、図1に示すように、焼結機パレット100の幅方向に延びるように4つの支持梁140が進行方向に所定の間隔で設けられる。隣接する支持梁140間の間隔は、グレートバー150の長さに対応する。支持梁140のx方向における断面は、図4に示すようにI型形状となっており、先端部142にはインシュレーションピース120およびスペーサ130が嵌合される。
【0023】
インシュレーションピース120は、支持梁140の先端部142を熱から保護するための部材であり、図4に示すように先端部142を覆っている。図1および図2に示すようにインシュレーションピース120は支持梁140の長さより短く、支持梁140の先端部142を覆うため複数設けられる。また、支持梁140には、少なくとも1つのスペーサ130がインシュレーションピース120間に設けられる。スペーサ130は、インシュレーションピース120と同様に先端部142に嵌合される部材であり、着脱可能に設けられる。スペーサ130を支持梁140から取り外すことで、グレートバー150を取り出したり補充したりするスペースを作ることができる。なお、スペーサ130の詳細な構成は後述する。
【0024】
インシュレーションピース120およびスペーサ130が設けられた支持梁140の先端部142の間には、図1に示すようにグレートバー150が取り付けられる。図4に示すように、グレートバー150は、隣接する支持梁140間に延びるように配置される。焼結機パレット100の載置面を形成するグレートバー150の上面は平坦である。グレートバー150の両端は、インシュレーションピース120またはスペーサ130が設けられた支持梁140の先端部142と嵌合する形状となっており、下側(焼結機パレット100の基台110側)はインシュレーションピース120あるいはスペーサ130に係合するように爪部が形成されている。このためグレートバー150は、インシュレーションピース120またはスペーサ130が設けられている部分においては支持梁140の延びる方向にのみスライド可能であり、支持梁140から引き上げて取り出すことはできない。グレートバー150が図1に示すように隣接する支持梁140間に敷き詰められることにより載置面が形成される。
【0025】
また、本実施形態に係る焼結機パレット100には、幅方向に所定の間隔でシンターケーキを支持する焼結スタンド160が設けられる。焼結スタンド160は、グレートバー150と同様、焼結機パレット100の進行方向に隣接する支持梁140間に取り付けられる。本実施形態では、図1に示すように、グレートバー150が進行方向に3列配列されるうち、進行方向下流側(x正方向側)の2列に焼結スタンド160が設けられている。焼結スタンド160もインシュレーションピース120またはスペーサ130が設けられている部分においては支持梁140の延びる方向にのみスライド可能であり、支持梁140から引き上げて取り出すことはできない。
【0026】
なお、焼結機パレット100の載置面には、幅方向に僅かなクリアランスが設けられている。このクリアランスは、載置面を形成するグレートバー150あるいは焼結スタンド160を一方向に寄せたとき、グレートバー150の下にある支持梁140に設けられたスペーサ130を取り出し可能な程度に設定される。例えば、グレートバー150あるいは焼結スタンド160を両側のサイドウォール112側に寄せたときにできるクリアランスを数十ミリ程度に設定することができる。このクリアランスとインシュレーションピース120の間に配置されたスペーサ130とを利用して、本実施形態に係る焼結機パレット100では、グレートバー150あるいは焼結スタンド160の取り外しをサイドウォール112側以外からも可能にする。以下では、スペーサ130の構成とその作用について説明していく。
【0027】
<2.スペーサ>
[2−1.スペーサの形状]
まず、図5および図6に基づいて、本実施形態に係るスペーサ130の形状について説明する。なお、図5は、本実施形態に係る第1のスペーサ130Aを示す平面図である。図6は、本実施形態に係る第2のスペーサ130Bを示す平面図である。
【0028】
図4に示すように、本実施形態に係る焼結機パレット100の支持梁140は、当該パレットの進行方向に支持するグレートバー150の数により、当該パレット100の進行方向両側にある支持梁140Bとその間にある2つの支持梁140Aとで先端部142の幅が異なる。これより、スペーサ130には、中央部にある幅の大きい支持梁140A用の第1のスペーサ130Aと、支持梁140Aの両側にある幅の小さい支持梁140B用の第2のスペーサ130Bとがある。第1のスペーサ130Aと第2のスペーサ130Bとは取り付けられる支持梁140の先端部142の形状に応じてその形状が異なるが、その作用は同一である。そこで、以下では主に第1のスペーサ130Aについて詳細に説明する。この際、「第1のスペーサ」を単に「スペーサ」とも称する場合もある。
【0029】
第1のスペーサ130Aは、図5に示すように、支持梁140Aの先端部142の形状に対応して形成された、直線部131とその両側にある曲げ部132、133とからなる部材である。直線部131と曲げ部132、133とからなる部分を本体部とも称する。第1のスペーサ130Aの本体部は、スペーサ130Aの製作容易性と重量軽量化との観点より、例えば丸鋼を曲げ加工して形成するのが好適である。第1のスペーサ130Aは、約500℃程度の高温に耐え得る金属から形成されるのが望ましく、例えば炭素鋼あるいはSUS材等から形成される。第1のスペーサ130Aは、焼結機パレット100の載置面側から見て支持梁140Aの先端部142の表面が包み込まれて覆われる形状とされ、これにより支持梁140Aを熱から保護する。
【0030】
曲げ部132、133の端部134、135は、支持梁140Aの先端部142側に入り込むように曲げられており、その内側部分134a、135aは面取り加工されている。このとき、端部134、135の最狭部幅wminは、支持梁140Aの先端部142の外形幅W(図7参照)とほぼ同一に設定され、精度寸法を含めて0〜1mm程度とするのがよい。最狭部幅wminが支持梁140Aの外形幅Wより1mmより大きいと焼結機パレット100展開時に第1のスペーサ130Aが落下しやすく、一方、最狭部幅wminが支持梁140Aの外形幅Wより小さいと作業者の手作業による第1のスペーサ130Aの着脱が困難となるためである。
【0031】
また、端部134、135の最狭部幅wminを支持梁140Aの先端部142の外形幅Wとほぼ同一とすることで、第1のスペーサ130Aを支持梁140Aに着脱する際、端部134、135の最狭部134b、135bが支持梁140Aの先端部142と点接触する。このように最狭部134b、135bを点接触させることで、線接触や面接触とする場合と比較して異物を逃げ易くすることができ、異物の噛み込みの発生を低減することができる。これにより、第1のスペーサ130Aを支持梁140Aから容易に取り外すことができ、ハンマーで軽く叩く等手作業での着脱が可能となる。また、第1のスペーサ130Aを金属で形成することで、点接触でも十分な強度を確保することができるため、スペーサ自体の自重を支持できれば問題ない。
【0032】
さらに、第1のスペーサ130Aの直線部131には、支持梁140Aの先端部142と接触する部分に、支持梁140Aとの間に空間を形成するための隙間調整部材136、137が設けられる。隙間調整部材136、137は、支持梁140Aと線接触するような形状となっており、例えば本体部を形成する丸鋼により形成することもできる。隙間調整部材136、137によって空間を形成することで、支持梁140Aを熱から保護する空気層を確保することができる。この空気層の厚みは例えば5mm以上とするのがよい。
【0033】
第1のスペーサ130Aの外形寸法として、隙間調整部材136、137と支持梁140Aとの接触面からの高さhは、当該支持梁140Aに設けられるインシュレーションピース120の上面高さと同一となるように形成される。これはグレートバー150の移動が滑らかにするためである。即ち、上記両者の高さが異なると、支持梁140Aに設けられたインシュレーションピース120との間に段差が生じてしまい、第1のスペーサ130A上でのグレートバー150の移動が滑らかに行えなくなるためである。また、第1のスペーサ130Aのパレット幅方向(図7の奥方向)の幅は、グレートバー150取り付け時に当該グレートバー150の下部にある爪部が通過可能なサイズ以上であればよい。
【0034】
なお、第1のスペーサ130Aの上面(直線部131のグレートバー150と接触する部分)は必ずしも平坦でなくてもよく、例えば丸鋼等のようにグレートバー150との接触の少ない形状がよく、本実施形態のように線接触や点接触等とするのがよい。これにより第1のスペーサ130A上でグレートバー150を滑らかに移動させることができる。また、第1のスペーサ130Aの内径寸法にあそびを持たせることで、支持梁140Aと当該スペーサ130Aとの焼き付き固着を防止する。
【0035】
なお、支持梁140Bに設けられる第2のスペーサ130Bは、図6に示すように、スペーサ幅が外形および内形ともに第1のスペーサ130Aより短くなっており、隙間調整部材136が1つのみ設けられている点が第1のスペーサ130Aと相違するが、その他は同一構成であり、同一の機能を有する。
【0036】
[2−2.スペーサの着脱]
支持梁140に対して行われるスペーサ130の着脱について、図7図9に基づき説明する。図7図9では、第1のスペーサ130Aを支持梁140Aに着脱する際の状態を示しているが、第2のスペーサ130Bを支持梁140Bに着脱する場合も同様である。なお、以下においても「第1のスペーサ」を単に「スペーサ」と称する場合もある。
【0037】
図7は、第1のスペーサ130Aを支持梁140Aに取り付けるときの状態を示す説明図である。スペーサ130Aを支持梁140Aに取り付ける場合は、スペーサ130Aの曲げ部132、133の間で支持梁140Aの先端部142を挟み込む。上述したように、スペーサ130Aの本体部の最狭部幅wminは、支持梁140Aの先端部142の外形幅とほぼ同一であるため、図7に示すように、支持梁140Aの先端部142の側面142a、142cに最狭部134a、135aが点接触する。この状態でスペーサ130Aの直線部131を支持梁140A側へハンマー等で軽く叩くことで、図8に示すようにスペーサ130Aを支持梁140Aの先端部142へ嵌め込むことができる。
【0038】
スペーサ130Aが支持梁140Aの先端部142に嵌め込まれた状態では、図8に示すように、スペーサ130Aは隙間調整部材136、137で支持梁140Aと線接触し、その他の部分は接触しない程度の隙間が存在する。特に、隙間調整部材136、137によりスペーサ130A側から支持梁140Aへの伝熱が抑えられる。スペーサ130Aは、支持梁140の長手方向にはスライドして移動可能であり、また、支持梁140Aの先端部142まわりの隙間の範囲で僅かに動くこともできる。しかし、スペーサ130Aの曲げ部132、133の端部134、135が内側に向いていることから、支持梁140Aの先端部142からは簡単には外れない。
【0039】
一方、支持梁140Aからスペーサ130Aを取り外す作業は、取り外し用具を用いて簡単に行うことができる。例えば図9に示すように、手鉤フック200をスペーサ130Aの隙間調整部材136、137間に掛けて引き上げることでスペーサ130Aを支持梁140Aから取り外すことができる。あるいは、てこの原理を利用してスペーサ130Aの曲げ部132、133のうちいずれか一方を引き上げることによってもスペーサ130Aを取り外すことができる。
【0040】
[2−3.グレートバーの交換作業]
本実施形態に係る焼結機パレット100は、当該パレット100の幅方向に延びる各支持梁140についてそれぞれ少なくとも1つのスペーサ130を備える。本実施形態に係る焼結機パレット100では、支持梁140のスペーサ130を取り外すことで、サイドウォール112側以外の箇所でグレートバー150を交換することができる。グレートバー150は、隣接する支持梁140間に架け渡して取り付けられる(図1参照)。ここで、図4に示すように、グレートバー150の爪部は、支持梁140にインシュレーションピース120あるいはスペーサ130が設けられている状態ではこれらの端部に引っかかり、支持梁140から取り外すことはできない。
【0041】
しかし、支持梁140からスペーサ130を取り外すことで、支持梁140とグレートバー150との間にスペーサ130が設けられていた分の空間ができ、グレートバー150を焼結機パレット100の高さ方向にも移動させることができるようになる。スペーサ130は、グレートバー150が懸架される2つの支持梁140のうち少なくともいずれか一方を外せばグレートバー150を取り外すことができるが、両方外すとより容易にグレートバー150を取り外すことができる。この場合、各スペーサ130は、図1に示すように焼結機パレット100の進行方向に対向するように設けるのがよい。
【0042】
スペーサ130は、1つの支持梁140の長手方向をほぼ等間隔に区分するように配置されるのがよい。これにより、支持梁140の長手方向、すなわち焼結機パレット100の幅方向に並べられたグレートバー150のいずれについても、交換する際の作業負荷を同程度に軽減することができる。
【0043】
また、グレートバー150間にシンターケーキ支持用の焼結スタンド160が設けられている場合、焼結スタンド160はグレートバー150と比較してはるかに重量が大きい。従来は、グレートバー150交換のためにこの焼結スタンド160をサイドウォール112までずらして移動させていたが、その作業に多大の労力が必要であった。
【0044】
これに対して、本実施形態に係る焼結機パレット100は、スペーサ130を設けることでグレートバー150着脱時における焼結スタンド160の移動量を小さくすることができ、グレートバー150の交換作業の負荷を軽減できる。特に、焼結機パレット100の幅方向において隣接する焼結スタンド160の中間位置にスペーサ130を設けると、いずれの焼結スタンド160の移動量も小さくすることができる。また、焼結スタンド160の交換も、グレートバー150の交換と同様に行うことができるので、当該焼結スタンド160の交換作業の負荷も軽減できる。
【0045】
以上、本実施形態に係る焼結機パレット100について説明した。本実施形態に係る焼結機パレット100は、グレートバー150を支持する支持梁140の先端部142に設けられたインシュレーションピース120の間に少なくとも1つのスペーサ130を備える。これにより、スペーサ130を取り外すことで部分的なグレートバー150の交換を容易に可能とし、交換作業の負荷が軽減され、作業時間も短縮できる。
【0046】
また、従来は、サイドウォールへのボルト等の取付孔が不可避であり、これらのシール部から漏風が生じていた。不要な漏風の増加は、焼結の有効風量を低下させ焼結生産率の悪化を招くとともに、サイドウォール近傍の冷却による歩留まり低下を引き起こす原因となっていた。このような問題に対しても、本実施形態の焼結機パレット100はサイドウォール112にボルト取付孔を設ける必要がないため漏風もなく、焼結機の生産性向上と歩留まり改善の効果を奏する。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
100 焼結機パレット
110 基台
112 サイドウォール
114a〜114d 車輪
120 インシュレーションピース
130 スペーサ
140 支持梁
142 先端部
150 グレートバー
160 焼結スタンド
200 手鉤フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9