(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119401
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/10 20060101AFI20170417BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
B32B37/10
B32B17/10
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-92561(P2013-92561)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-213524(P2014-213524A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】磯本 武彦
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆行
【審査官】
相田 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−278212(JP,A)
【文献】
特開平08−336932(JP,A)
【文献】
特開昭60−094304(JP,A)
【文献】
特開昭58−102707(JP,A)
【文献】
ゴム材料の性能一覧表,日本,URL,http://fa-ubon/tech/005_perfomace_gm.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なガラス板と透明な樹脂板とで構成される複数枚の板材が、隣り合う板材間にフィルム状の接着剤を介在させて重ね合わされた組立材を、高周波誘電加熱により加熱することで、前記複数枚の板材が一体に接合された平坦な積層体を製造する方法であって、
前記組立材を加熱する際に、該組立材の表面側及び裏面側を一対の平坦な樹脂製の当て板で挟み、
前記組立材の表面側の前記当て板は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、又は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成され、
前記組立材の裏面側の前記当て板は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、又は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成されることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記複数枚の板材は、前記組立材の最表面側と最裏面側とに配列された前記ガラス板と、それらの相互間に配列された前記樹脂板とからなることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記一対の当て板における損失係数の値が、いずれも、0.01〜1であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記組立材を加熱する際に、該組立材に対して真空減圧を実施することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記組立材を加熱する際に、該組立材を板厚方向に圧縮することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の板材を隣り合う板材間にフィルム状の接着剤を介在させて重ね合わせた組立材を、高周波誘電加熱により加熱すると共にプレスすることで、複数枚の板材が一体に接合された積層体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラスは、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性に優れる反面、物理衝撃や熱衝撃に対し、破損しやすいという欠点を持つ。この欠点を解消するため、例えば、透明な樹脂板の表面側、及び裏面側に、フィルム状の接着剤によって、薄肉のガラス板であるガラスフィルムを貼り合わせた積層体(合わせガラス)が提案されている。
【0003】
樹脂は、ガラスと比較して、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性に劣る反面、ガラスよりも比重が小さく、物理衝撃にも強いという利点がある。そのため、この積層体においては、ガラスフィルムと樹脂板の各々における短所を、各々の長所によって補うことが可能となると共に、同じ板厚を有するガラス板に比べて、大幅な軽量化を図ることができる。
【0004】
このような積層体の製造方法の一例としては、特許文献1に開示されるような方法が知られている。詳述すると、隣り合う板材の間に、合成樹脂製のフィルム状の接着剤を介在させると共に、複数枚の板材を重ね合わせて得られる組立材を、高周波誘電加熱によって加熱する。これにより、板材間に介在した接着剤を加熱し溶融させた後、当該接着剤を冷却し固化させることで、複数枚の板材を一体に接合し、積層体を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2897132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の高周波誘電加熱を用いた積層体の製造方法には、下記のような難点がある。すなわち、加熱の際に、誘電体である接着剤が急激に加熱されることから、当該接着剤の温度を制御することが非常に困難となる。このことに起因して、加熱によって溶融した接着剤は、その肉厚の分布が板材間で不均一となり、この不均一な状態下で冷却され、固化されてしまう場合がある。
【0007】
このような事態が生じると、固化した接着剤(積層体)を透過する光が、当該接着剤における肉厚の違いにより、不均一に屈折してしまうため、製造された積層体の光学的な用途における品質が、大きく低下してしまうという問題があった。
【0008】
上記事情に鑑みなされた本発明は、高周波誘電加熱を用いて積層体を製造する際に、板材間に介在させたフィルム状の接着剤における肉厚の分布が不均一となることを防止し、積層体の光学的な用途における品質を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために創案された本発明は、複数枚の板材が、隣り合う板材間にフィルム状の接着剤を介在させて重ね合わされた組立材を、高周波誘電加熱により加熱することで、前記複数枚の板材が一体に接合された積層体を製造する方法であって、前記組立材を加熱する際に、該組立材の表面側及び裏面側を一対の樹脂製の当て板で挟むことに特徴付けられる。
【0010】
このような方法によれば、高周波誘電加熱によって、誘電体であるフィルム状の接着剤と共に、同じく誘電体である樹脂製の当て板もが加熱されることになる。また、これらが互いに類似した誘電特性を有するため、組立材の内部(板材間)と外部(組立材の表面側、及び裏面側)とから、当該組立材の全体を均一に加熱することができ、接着剤が急激に加熱されることによる温度制御の不安定化が回避される。その結果、加熱後に冷却され、固化した接着剤における肉厚の分布が、板材間で不均一となることが防止されるため、製造された積層体の光学的な用途における品質を向上させることが可能となる。
【0011】
この場合、前記複数枚の板材は、前記組立材の最表面側と最裏面側とに配列された透明のガラス板と、それらの相互間に配列された透明の樹脂板とからなることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、製造された積層体が透明体となるため、光学的な用途における品質向上の効果が顕著になる。
【0013】
上記の方法において、前記当て板における損失係数の値が、0.01〜1であることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、フィルム状の接着剤と、樹脂製の当て板との誘電特性が、さらに似通ったものとなり、組立材の全体を均一に加熱する効果を、より高めることができる。これにより、固化した接着剤における肉厚の分布を板材間で均一とする上で、さらに有利となる。なお、損失係数とは、当て板の誘電率と誘電正接との積で算出される値であり、通常、高周波誘電加熱時に接着剤として使用されているエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン等の損失係数は、略0.01〜1の範囲内の値をとる。また、ここでいう損失係数とは、当て板の温度が−70〜200℃の範囲内にある場合の損失係数をいう。
【0015】
上記の方法において、前記組立材を加熱する際に、該組立材に対して真空減圧を実施することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、真空減圧によって空気の混入が抑制されると共に、高周波誘電加熱によって組立材を加熱する際に、空気の存在に起因して当該組立材を構成する板材に泡が発生した場合であっても、この泡を容易に取り除くことができる。そのため、泡の発生に起因する積層体の品質の低下を防止することが可能となる。
【0017】
上記の方法において、前記組立材を加熱する際に、該組立材を板厚方向に圧縮することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、板材に発生した泡を、当該板材の外部へと放出したり、板材の内部において微細化したりすることができる。この結果、積層体の品質の低下を、より効果的に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、高周波誘電加熱を用いて積層体を製造する際に、板材間に介在させたフィルム状の接着剤における肉厚が不均一となることを防止できるため、積層体の光学的な用途における品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層体の製造方法において、組立材を高周波誘電加熱する状態を示す概略側面図である。
【
図2】高周波誘電加熱により積層体を製造する際、当て板として板ガラスを使用した場合に、組立材の各部位における温度の変化を示す図である。
【
図3】高周波誘電加熱により積層体を製造する際、当て板としてポリカーボネート板を使用した場合に、組立材の各部位における温度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法について添付の図面を参照して説明する。なお、本実施形態においては、透明な樹脂板(ポリカーボネート板)における表面側及び裏面側にそれぞれ、薄肉の透明なガラス板であるガラスフィルムを貼り合わせて、これらが一体に接合された積層体(合わせガラス)を製造する場合を例に挙げて説明する。しかしながら、後述するように、本発明に係る積層体の製造方法は、このような態様に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法において、組立材を高周波誘電加熱する状態を示す概略側面図である。同図に示すように、このような高周波誘電加熱によって製造される積層体(合わせガラス)の材料となる組立材1は、その表面側及び裏面側が、テフロンシート2を介して一対の当て板3で挟まれており、当て板3の両外方に設置された一対の電極板4から高周波電圧が印加されることで、高周波誘電加熱によって加熱される。
【0023】
また、高周波誘電加熱装置は、図示省略の密閉空間に封入されており、この空間内に存する空気は、組立材1を加熱する際に、当該空間に接続された負圧発生手段(例えば、真空ポンプ等)によって吸引され、空間外へと排出される。これにより、この空間内において、負圧を発生させることで、組立材1に対して真空減圧を実施することが可能となっている。
【0024】
組立材1は、板材としての透明なポリカーボネート板PPと、ポリカーボネート板PPの表面側及び裏面側に貼り合わされる板材としての二枚の透明なガラスフィルムGFと、ポリカーボネート板PPとガラスフィルムGFとの間に介在して、これらを貼り合わせるフィルム状の接着剤Bとしてのエチレン酢酸ビニル共重合体とが重ね合わされて構成される。
【0025】
ここで、組立材1を構成する板材としては、ガラスフィルムGF(ガラス板)、ポリカーボネート板PPの他、アクリル(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を使用することができる。また、フィルム状の接着剤Bとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルブチラール、アイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂を原料として製造されるもの、合成ゴム系のもの、ポリウレタン系のもの、ポリスチレン及びその共重合体、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリイソプレン(トランス)、ポリウレタン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等を使用することができる。なお、エチレン酢酸ビニル共重合体と、これらの接着剤における損失係数(誘電率と誘電正接との積)は、略0.01〜1(−70〜200℃)の範囲内の値をとる。
【0026】
当て板3は、ポリカーボネートで構成されており、その損失係数の値は、0.01〜1(−70〜200℃)の範囲内にある。また、テフロンシート2を介して組立材1の表面及び裏面と当接する当接面(好ましくは、当接面の反対側の面も同様)は、平滑に形成されている。さらに、個々の当て板3の板厚は、組立材1の板厚の0.5倍〜1.5倍とされ、本実施形態では、一対の当て板3の総板厚と組立材1の板厚とが同一とされている。
【0027】
電極板4は、一対の当て板3の両外方で対向して設置されており、組立材1に対して高周波電圧(周波数:数MHz〜数GHz)を印加することにより、当該組立材1を高周波誘電加熱によって加熱する。また、一対の電極板4のさらに外方には、電極板4越しに、当て板3を介して組立材1を板厚方向に圧縮する圧縮機が備えられており、組立材1を加熱する際に、当該組立材1に対して、0.1〜40MPaの圧縮応力を負荷する。
【0028】
以下、上記の高周波誘電加熱装置を用いた積層体の製造方法の作用について説明する。
【0029】
電極板4から組立材1に対して高周波電圧が印加されると、当該組立材1が高周波誘電加熱により加熱される。また、負圧発生手段による組立材1に対する真空減圧と、圧縮機による板厚方向への圧縮も同時に開始される。
【0030】
このとき、誘電体であり、ガラスフィルムGFとポリカーボネート板PPとの間に介在させた接着剤B(エチレン酢酸ビニル共重合体)と共に、同じく誘電体であるポリカーボネートで構成された当て板3もが加熱される。
【0031】
また、これらの損失係数が共に0.01〜1の範囲内の値をとり、互いに類似した誘電特性を有するため、組立材1の内部(ガラスフィルムGFとポリカーボネート板PPとの間)と外部(組立材1の表面側、及び裏面側)とから、当該組立材1の全体を均一に加熱することができ、接着剤Bが急激に加熱されるような事態の発生が回避される。
【0032】
その結果、加熱後に冷却され、固化した接着剤Bにおける肉厚の分布が、ガラスフィルムGFとポリカーボネート板PPとの間で不均一となることが防止されるため、製造された積層体の光学的な用途における品質を向上させることが可能となる。
【0033】
ここで、高周波誘電加熱による加熱で積層体を製造する際に、当て板3として板ガラスを使用した場合と、ポリカーボネート板PPを使用した場合との間で、組立材1の各部位における温度の変化を比較する。
図2は、板ガラスを使用した場合、
図3は、ポリカーボネート板PPを使用した場合に、組立材1の各部位における温度の変化と、組立材1を加熱した時間との関係を示す図である。なお、これらの図に示す手前中央の接着層(曲線10)、ポリカの中心(曲線11)、ポリカのコーナー部(曲線12)、中央接着層(曲線13)、コーナーの接着層(曲線14)とは、それぞれ組立材1における端面付近の接着剤B、組立材1におけるポリカーボネート板PPの中心、組立材1におけるポリカーボネート板PPのコーナー部、接着剤Bの中心、接着剤Bのコーナー部を表している。
【0034】
これらの図から明らかなように、板ガラスを当て板3として使用した場合、ポリカーボネート板PPを使用した場合と比較して、加熱時に組立材1の各部位における温度の変化が大きくなっている。さらには、組立材1の各部位間で温度を均一とすることが不可能であった。一方、ポリカーボネート板PPを使用した場合には、加熱時に組立材1の各部位における温度の変化が小さく、組立材1の各部位間で温度を略均一とすることができた。このことから、当て板3としてポリカーボネート板PPを使用すれば、接着剤Bの肉厚の分布を均一とする上で、非常に有効であることがわかる。
【0035】
さらに、真空減圧の実施により、空気の存在に起因して組立材1を構成するポリカーボネート板PPに泡が発生した場合であっても、この泡を容易に取り除くことができる。そのため、泡の発生に起因した積層体の品質の低下を防止することが可能となる。なお、組立材1を板厚方向に圧縮していることで、ポリカーボネート板PPに発生した泡を、当該ポリカーボネート板PPの外部へと放出したり、ポリカーボネート板PPの内部において微細化したりしやすくなる。
【0036】
加えて、一対の当て板3の各々における板厚を足し合わせた総板厚が、組立材1の板厚と同一とされていることから、加熱時において組立材1の発熱量と、当て板3の発熱量との間に大きな差異が生じることが防止される。また、当て板3における組立材1の表裏面との当接面が平滑に形成されていることによって、当て板3における当接面の凹凸(表面の粗さ)が、加熱された接着剤Bに転写されてしまい、肉厚の分布が不均一となるような事態を好適に回避することが可能となる。さらには、ガラスフィルムGFとポリカーボネート板PPとの間から接着剤Bが食み出してしまうような事態の発生も防止することができる。
【0037】
また、当て板3と組立材1との間に、その表裏面が平滑なテフロンシート2を介在させたことで、以下のような効果も得られる。すなわち、加熱時において、当て板3と組立材1を構成するガラスフィルムGFとが、直接当接する場合、両者間の熱膨張率の差異に起因して、当て板3に圧縮されるガラスフィルムGFを移動させることが困難となる。そのため、加熱された接着剤Bに過度な負荷が掛かり、その肉厚が不均一となる可能性が高まってしまう。しかしながら、テフロンシート2を介在させておけば、当該テフロンシート2との摩擦抵抗が小さく、ガラスフィルムGFを移動させることができ、このような事態の発生を抑制することが可能となる。
【0038】
ここで、本発明に係る積層体の製造方法は、上記の実施形態で説明した態様に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態において、当て板は、樹脂であるポリカーボネートで構成されているが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂で構成することもできる。しかしながら、(I)硬度が高い、(II)表面が平滑、(III)加熱による変形
が小さい等の理由により、当て板をポリカーボネートで構成することが最も好ましい。また、当て板の損失係数の値は、必ずしも0.01〜1の範囲内にある必要はなく、高周波誘電加熱により加熱される性質を有するのみでもよい。
【0039】
さらに、上記の実施形態においては、一枚のポリカーボネート板と、二枚のガラスフィルムとで構成される三層構造の積層体を製造する態様となっているが、重ね合わせる板材の枚数(層の数)はこの限りではなく、適宜変更することが可能であり、二層、或いは、五層以上であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 組立材
2 テフロンシート
3 当て板(ポリカーボネート)
4 電極板
B フィルム状の接着剤(エチレン酢酸ビニル共重合体)
GF ガラスフィルム
PP ポリカーボネート板