特許第6119449号(P6119449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119449
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170417BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170417BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F01N3/08 A
   F01N3/24 E
   F01N3/24 L
   F01N3/18 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-128926(P2013-128926)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-4284(P2015-4284A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−272187(JP,A)
【文献】 特開平07−042538(JP,A)
【文献】 特開2011−179338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を吸収剤により吸収する吸収部と、
吸収剤により吸着した未燃燃料成分を前記吸収剤から脱離させ、該未燃燃料成分を前記燃焼器へ供給する脱離部と、
循環流路を用いて、前記吸収部と前記脱離部との間で、前記吸収剤を循環移送する循環手段と、
前記吸収部内の吸収剤の温度を前記脱離部内の吸収剤の温度より低くする温度調整手段と、を備え
前記温度調整手段は、前記吸収部内に流入する吸収剤を冷却する冷却手段と、前記脱離部に流入する吸収剤を加熱する加熱手段と、を有し、
前記脱離部は、前記燃焼器から排出される排気ガスの流れに対して、前記吸収部より上流側に位置され、
前記加熱手段は、前記排気ガスの熱を利用して前記脱離部に流入する吸収剤を加熱する熱交換器であることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を吸収剤により吸収する吸収部と、
吸収剤により吸着した未燃燃料成分を前記吸収剤から脱離させ、該未燃燃料成分を前記燃焼器へ供給する脱離部と、
循環流路を用いて、前記吸収部と前記脱離部との間で、前記吸収剤を循環移送する循環手段と、
前記吸収部内の吸収剤の温度を前記脱離部内の吸収剤の温度より低くする温度調整手段と、を備え、
前記未燃燃料成分は未燃アンモニアを含み、前記吸収剤は極性溶媒であることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記循環流路は、前記脱離部から前記吸収部へ前記吸収剤を移送する第1流路と、前記吸収部から前記脱離部へ前記吸収剤を移送する第2流路と、を有し、
前記冷却手段は、前記第1流路に設けられることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記循環手段は、前記脱離部内の吸収剤の温度に応じて、前記循環流路を流れる吸収剤の循環速度を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記吸収剤は水であり、
前記循環手段は、前記第2流路を流れる水を昇圧するポンプを有することを特徴とする請求項記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等の燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を吸収して、燃焼器に供給する排気ガス浄化装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関、ボイラ、産業用燃焼炉等の燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を回収し、燃焼器に供給する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、内燃機関に設けられる排気管の途中のバイパス通路に、排気ガス中の未燃燃料成分を吸着、脱離可能なHCトラップを設置した車両用排気ガス浄化装置が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、内燃機関の排気通路から排気ガスの一部をEGRガスとして取り込み、該EGRガスを冷却することにより得られる凝縮液体から未燃燃料成分と水とに分離して、未燃燃料成分を回収する内燃機関の排気還流装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−42538号公報
【特許文献2】特開2009−150281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の装置では、未燃燃料成分を脱離している間は、未燃燃料成分を吸着することはできず、効率的な未燃燃料成分の回収及び供給を行うことは困難である。また、特許文献2の装置では、例えば、未燃燃料成分が常温付近で気体状態である場合等、未燃燃料成分の性質によっては、未燃燃料成分を水から分離して回収することは困難となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、未燃燃料成分を効率的に回収し、燃焼器に供給することが可能な排気ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の排気ガス浄化装置は、燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を吸収剤により吸収する吸収部と、吸収剤により吸着した未燃燃料成分を前記吸収剤から脱離させ、該未燃燃料成分を前記燃焼器へ供給する脱離部と、循環流路を用いて、前記吸収部と前記脱離部との間で、前記吸収剤を循環移送する循環手段と、前記吸収部内の吸収剤の温度を前記脱離部内の吸収剤の温度より低くする温度調整手段と、を備え、前記温度調整手段は、前記吸収部内に流入する吸収剤を冷却する冷却手段と、前記脱離部に流入する吸収剤を加熱する加熱手段と、を有し、前記脱離部は、前記燃焼器から排出される排気ガスの流れに対して、前記吸収部より上流側に位置し、前記加熱手段は、前記排気ガスの熱を利用して前記脱離部に流入する吸収剤を加熱する熱交換器である
【0011】
また、前記排気ガス浄化装置において、前記循環流路は、前記脱離部から前記吸収部へ前記吸収剤を移送する第1流路と、前記吸収部から前記脱離部へ前記吸収剤を移送する第2流路と、を有し、前記冷却手段は、前記第1流路に設けられることが好ましい。
【0012】
また、本実施形態の排気ガス浄化装置は、燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を吸収剤により吸収する吸収部と、吸収剤により吸着した未燃燃料成分を前記吸収剤から脱離させ、該未燃燃料成分を前記燃焼器へ供給する脱離部と、循環流路を用いて、前記吸収部と前記脱離部との間で、前記吸収剤を循環移送する循環手段と、前記吸収部内の吸収剤の温度を前記脱離部内の吸収剤の温度より低くする温度調整手段と、を備え、前記未燃燃料成分は未燃アンモニアを含み、前記吸収剤は極性溶媒である。
【0013】
また、前記排気ガス浄化装置において、前記循環手段は、前記脱離部内の吸収剤の温度に応じて、前記循環流路を流れる吸収剤の循環速度を制御する制御手段を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記排気ガス浄化装置において、前記吸収剤は水であり、前記循環手段は、前記第2流路を流れる水を昇圧するポンプを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、未燃燃料成分を効率的に回収し、燃焼器に供給することが可能な排気ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る排気浄化装置の構成の一例を示す模式概観図である。
図2】水によるアンモニアの溶解量と水の温度との関係を示す図である。
図3】本実施形態に係る排気ガス浄化装置の他の構成の一例を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る排気ガス浄化装置の他の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る排気浄化装置の構成の一例を示す模式概観図である。図1に示すように、排気ガス浄化装置1は、排気ガス流路10、吸収部12、排気ガス排出流路14、脱離部16、未燃燃料排出流路18、循環装置(循環手段)、加熱装置22、冷却装置24、温度センサ26、を備えるものである。本実施形態の循環装置は、第1流路28及び第2流路30を有する循環流路、循環ポンプ32、制御装置34を備えている。
【0019】
図1に示す排気ガス流路10は、内燃機関等の燃焼器から排出される排気ガスが流通する排気管をなしており、吸収部12に接続されている。排気ガス排出流路14の一端は吸収部12に接続され、他端は浄化装置系外の他の装置に接続されているか又は大気に開放されている。第1流路28の一端は脱離部16の吸収剤排出口に接続され、他端は吸収部12の吸収剤流入口に接続され、吸収剤が脱離部16から第1流路28を介して吸収部12へ導入されるように構成されている。また、第2流路30の一端は吸収部12の吸収剤排出口に接続され、他端は脱離部16の吸収剤流入口に接続され、吸収剤が吸収部12から第2流路30を介して脱離部16へ導入されるように構成されている。未燃燃料排出流路18の一端は、脱離部16に接続され、他端は燃焼器に燃料を供給する吸気管又は燃料を貯留する燃料タンク等の燃料供給系に接続されている。
【0020】
加熱装置22は、脱離部16に流入する吸収剤を加熱する機能を有するものである。図1に示す加熱装置22は、脱離部16の外周を覆うように設置されているが、設置個所はこれに制限されるものではなく、例えば、第2流路30上に設置する等してもよい。加熱装置22は、例えば、ヒータ、加熱ジャケット、又は後述するように加熱媒体が流通する熱交換器等が挙げられる。図1に示す温度センサ26は、脱離部16内に設置されており、脱離部16内の吸収剤の温度を検出するものである。
【0021】
図1に示す冷却装置24は、吸収部12に流入する吸収剤の温度を冷却する機能を有するものである。図1に示す冷却装置24は、第1流路28に設置されているが、設置個所はこれに制限されるものではなく、例えば、吸収部12上に設置する等でもよい。吸収部12内の吸収剤の吸収効率の観点等から、図1に示すように、第1流路28上に冷却装置24を設置することが好ましい。冷却装置24は、例えば、冷却媒体が流通する熱交換器、ヒートシンク等の放熱器等が挙げられる。
【0022】
本実施形態では、加熱装置22及び冷却装置24は、吸収部12内の吸収剤の温度を脱離部16内の吸収剤の温度より低くする温度調整手段として機能するものである。加熱装置22及び冷却装置24は、例えば、コントローラ(不図示)から供給される制御信号によって制御される。なお、加熱装置22により加熱された吸収剤が、脱離部16から吸収部12に移送される間に自然冷却され、吸収部12内の吸収剤の温度を脱離部16内の吸収剤の温度より十分に低くすることができる場合には、冷却装置24を必ずしも設置する必要はない。
【0023】
本実施形態の循環装置は、第1流路28及び第2流路30を有する循環流路、循環ポンプ32、制御装置34を備えているが、循環流路を用いて、吸収部12と脱離部16との間で、吸収剤を循環移送する機能を有していれば、上記構成に制限されるものではなく、例えば、循環ポンプ32の代わりにフィーダー等を用いてもよい。また、図1に示す循環ポンプ32は、第2流路30に設置されているが、例えば第1流路28に設置されていてもよい。制御装置34は、例えばマイクロコンピュータを主とするデジタル回路で構成され、温度センサ26、循環ポンプ32と電気的に接続されている。また、制御装置34は、温度センサ26の温度データを元に、循環ポンプ32の出力を制御して、吸収剤の循環速度が調整される。
【0024】
循環流路、吸収部12、脱離部16等には、吸収剤が充填又は注入されている。吸収剤は、吸収剤の温度によって、燃焼器から排出される排ガス中の未燃燃料成分を吸収したり脱離したりするものであり、例えば、ゼオライト、活性炭等の多孔質粒状物、オイル等の非極性溶媒、水、イオン液体等の極性溶媒等が挙げられる。ここで、本願明細書における吸収剤による未燃燃料成分の吸収とは、多孔質粒状物等による未燃燃料成分の吸着、非極性溶媒や極性溶媒等による未燃燃料成分の溶解のことである。
【0025】
吸収剤は、回収する未燃燃料成分に応じて適宜選択されるものである。未燃燃料成分としては、例えば、アンモニア、炭化水素等の気体成分等が挙げられる。未燃燃料成分としてアンモニアを回収する場合には、吸収効率の観点から、例えば、吸収剤は極性溶媒である水を用いることが好ましく、炭化水素等の場合には、例えば、吸収剤はゼオライト、活性炭等を用いることが好ましい。なお、吸収剤として溶媒を用いる場合には、本実施形態のように循環ポンプ32が用いることが好ましいが、例えば、吸収剤として多孔質粒状物を用いる場合には、循環ポンプ32の代わりにフィーダーを用いることが好ましい。
【0026】
吸収部12は、吸収部12内に供給される吸収剤と燃焼器から排出された排気ガスとが接触するように構成されている。例えば、第1流路28が接続される吸収部12の吸収剤流入口にノズル等を設置して、第1流路28から供給される吸収剤がノズルを介して吸収部12内に噴霧され、吸収部12内で排気ガスと接触するように構成されていてもよい。この場合、吸収剤が排気ガスと共に排気ガス排出流路14から排出されることを防止するために、排気ガス排出流路14が接続される吸収部12の出口に、例えば疎水性の多孔質膜やフィルター等を設置することが好ましい。また、その他の例としては、吸収部12内であって、第1流路28が接続される吸収部12の吸収剤流入口から第2流路30が接続される吸収部12の吸収剤排出口に亘って、疎水性の多孔質膜や、当該膜により形成されるパイプ等を設置して、吸収部12内を通過する排気ガスが、吸収部12内の上記膜や上記パイプを流れると吸収剤と接触するように構成されていてもよい。
【0027】
脱離部16は、吸収剤から未燃燃焼成分を脱離させ、未燃燃焼成分と吸収剤とが分離するように構成されている。例えば、吸収剤として多孔質粒状物等を用いる場合には、脱離部16内で吸収剤の旋回流を発生させて、吸収剤から未燃燃料成分を分離させるサイクロン式固気分離装置等を用いることが好ましい。また、例えば、吸収剤として溶媒等を用いる場合には、上記サイクロン式固気分離装置や、気液分離膜を用いた脱気装置等を用いることが好ましい。
【0028】
以下に、吸収剤による未燃燃料成分の吸着量と吸収剤の温度との関係及び本実施形態の排気ガス浄化装置1の動作について説明する。
【0029】
図2は、水によるアンモニアの溶解量と水の温度との関係を示す図である。図2に示すように、アンモニアの溶解量は、水の温度が高くなるにつれて小さくなる。したがって、吸収部12内の吸収剤の温度を脱離部16内の吸収剤の温度より低くすることにより、吸収部12でアンモニアを溶解した水は、脱離部16においてアンモニア溶解量が低下するため、脱離部16にて水からアンモニアが放出(脱離)される。脱離部16におけるアンモニアの放出量は、例えば、図2に示すように、吸収部12内の吸収剤の温度がAの時の溶解量と、脱離部16内の吸収剤の温度Bの時の吸収剤の溶解量との差となる。なお、吸収剤に対する未燃燃料成分の吸着量、溶解量等の吸収量と温度との関係は、図2に示す水に対するアンモニアの溶解量と温度との関係と同様の関係を示すため、水とアンモニア以外においても本実施形態に適用可能である。
【0030】
次に、本実施形態に係る排気ガス浄化装置1の動作の一例について説明する。
【0031】
まず、例えば燃焼器が始動されると、冷却装置24、加熱装置22、循環ポンプ32等が起動され、吸収部12と脱離部16との間で、吸収剤が循環移送される。燃焼器から排出された未燃燃料成分を含む排気ガスは、排気ガス流路10から吸収部12内に導入される。また、第1流路28を通る吸収剤が冷却装置24により冷却され、吸収部12内に導入される。吸収部12内では、排気ガスと吸収剤とが接触し、排気ガス中の未燃燃料成分が吸収剤により吸着される。吸収部12内を通過した排気ガスは、排気ガス排出流路14から装置系外へ排出される。一方、未燃燃料成分を吸着した吸収剤は、第2流路30を通り脱離部16に導入される。脱離部16内の吸収剤は、加熱装置22により加熱されて、吸着されていた未燃燃料成分が吸収剤から脱離される。脱離した未燃燃料成分は未燃燃料排出流路18から排出され、吸収剤は第2流路30から排出される。
【0032】
このように、吸収剤を吸収部12と脱離部16との間で循環させながら、吸収部12の吸収剤の温度を脱離部16の吸収剤の温度より低くする、言い換えれば脱離部16の吸収剤の温度を吸収部12の吸収剤の温度より高くすることにより、燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分を効率的に回収し、燃焼器に供給することが可能となる。さらに、本実施形態では、燃焼器から排出される排気ガス中の未燃燃料成分をより効率的に回収し、回収した未燃燃料成分を燃焼器に供給するために、所定量の未燃燃料成分が吸収可能な所定温度(吸収温度)まで、吸収部12に流入する吸収剤を冷却し、該吸収温度より高い温度において未燃燃料成分を脱離させている。例えば、吸収剤として水を用い、未燃燃料成分としてアンモニアを回収する場合には、吸収部12に流入する水を40℃以下まで冷却し、脱離部16に流入する吸収剤の温度を70℃以上に加熱することが好ましい。
【0033】
図3は、本実施形態に係る排気ガス浄化装置の他の構成の一例を示す模式図である。図3の排気ガス浄化装置2において、図1の排気ガス浄化装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図3に示す排気ガス浄化装置2では、脱離部16は、燃焼器から排出される排気ガスの流れに対して吸収部12より上流側に配置されている。すなわち、脱離部16が燃焼器と吸収部12との間に配置され、吸収部12より燃焼器に近い位置にある。また、図3に示す排気ガス浄化装置2では、排気ガス流路10の一部が、加熱手段としての熱交換器36となっている。脱離部16は、排気ガス流路10(熱交換器)上に設置されており、脱離部16と排気ガスは、排気ガス流路10により遮断されている。このように構成された熱交換器36によれば、排気ガス流路10を通過する排気ガスの熱により、脱離部16に流入した吸収剤が加熱され、脱離部16内の吸収剤の温度を上昇させることができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る排気ガス浄化装置2の動作の一例について説明する。
【0035】
まず、例えば燃焼器が始動されると、冷却装置24、循環ポンプ32等が起動され、吸収部12と脱離部16との間で、吸収剤が循環移送される。燃焼器から排出された未燃燃料成分を含む排気ガスは、排気ガス流路10から吸収部12内に導入される。また、第1流路28を通る吸収剤が冷却装置24により冷却され、吸収部12内に導入される。吸収部12内では、排気ガスと吸収剤とが接触し、排気ガス中の未燃燃料成分が吸収剤により吸着される。吸収部12内を通過した排気ガスは、排気ガス排出流路14から装置系外へ排出される。一方、未燃燃料成分を吸着した吸収剤は、第2流路30を通り脱離部16に導入される。脱離部16内の吸収剤は、熱交換器36(排気ガス流路10)を通過する排気ガスの熱によって加熱されて、吸着されていた未燃燃料成分が吸収剤から脱離される。脱離した未燃燃料成分は未燃燃料排出流路18から排出され、吸収剤は第2流路30から排出される。
【0036】
本実施形態では、制御装置34は、温度センサ26により検出した脱離部16の吸収剤の温度データに応じて、循環ポンプ32の出力等を制御し、循環流路を流れる吸収剤の循環速度(流速)を制御している。ここで、脱離部16の吸収剤の温度に応じて、吸収剤の循環速度(流速)を制御する方法としては、例えば、制御装置34に予め設定した上限閾値、下限閾値を記憶させておき、制御装置34によって、温度センサ26により検出された脱離部16の吸収剤の温度データが下限閾値以下であると判定された場合には、循環ポンプ32の出力を下げて、吸収剤の循環速度を低下させ、脱離部16の吸収剤の温度データが上限閾値以上であると判定された場合には、循環ポンプ32の出力を上げて、吸収剤の循環速度を上昇させる方法が挙げられる。このような制御により、例えば、脱離部16の吸収剤の温度が低くなり過ぎることが抑えられるため、脱離部16での未燃燃料成分の脱離量、ひいては吸収部12での未燃燃料成分の吸着量の低下を抑制することが可能となる。また、脱離部16の吸収剤の温度が高くなり過ぎることが抑えられるため、吸収部12の吸収剤の温度が十分に低下せず、吸収部12での未燃燃料成分の吸着量が低下することを抑制することができる。また、吸収剤が水等の場合、脱離部16の吸収剤の温度が高くなり過ぎることが抑制されれば、脱離部16での水の蒸気圧が上昇して、分離した未燃燃料成分中に水蒸気が混入することが抑えられるため、燃焼器への再利用が容易となる。ここで、水を吸収剤とした場合には、上限閾値を70℃、下限閾値を40℃に設定することが好ましい。このような吸収剤の循環速度(流速)の制御は、脱離部16の加熱を制御することが困難な場合、例えば、脱離部16の加熱を排気ガスとの熱交換により行う場合に特に有効である。
【0037】
また、脱離部16の吸収剤の温度に応じて、吸収剤の循環速度(流速)を制御する他の方法としては、例えば、脱離部16の吸収剤の温度が高くなるにつれて、ポンプの出力が増加するように規定した制御マップ等を制御装置34に記憶させておき、制御マップに温度センサ26の温度データを当てはめて、循環ポンプ32の出力を決定する等でもよい。
【0038】
図4は、本実施形態に係る排気ガス浄化装置の他の構成の一例を示す模式図である。図4の排気ガス浄化装置3において、図3の排気ガス浄化装置2と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図4に示す排気ガス浄化装置3では、吸収剤を水、燃焼器を内燃機関、内燃機関に供給される燃料にはアンモニアが含まれ、内燃機関から排出される排気ガス中には、窒素酸化物や未燃燃料成分であるアンモニアが含まれる場合を一例として説明する。
【0039】
本実施形態では、脱離部16を加熱する熱交換器36と吸収部12との間の排気ガス流路10上に冷却装置44が設置されている。冷却装置44により、吸収部12に流入する排気ガスは冷却されるため、吸収部12内の水温の上昇をより抑制することができる。
【0040】
図4に示す排気ガス浄化装置3には、触媒装置38が設けられており、排気ガス流路10は触媒装置38を介して吸収部12に接続されている。本実施形態の触媒装置38は、主に排気ガス中の窒素酸化物、アンモニア等を処理するものであり、例えば、ハニカム構造等の担持体と、担持体に担持する三元触媒、又は未燃アンモニアを還元剤とする選択還元触媒とを備えるものである。本実施形態では、内燃機関から排出された排気ガスは、触媒装置38内に導入され、窒素酸化物等が浄化処理された後、吸収部12に供給され、触媒装置38で浄化しきれなかった排気ガス中のアンモニアが、吸収部12内を通る水に溶解される。その後の吸収剤の加熱・冷却、循環等については前述の通りである。
【0041】
三元触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属触媒等が挙げられ、選択還元触媒としては、例えば、チタニア−バナジウム、ゼオライト、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化タングステン等が挙げられる。
【0042】
図4に示す排気ガス浄化装置3には、水量調整器40が設けられており、第1流路28に設置されている。水量調整器40には、排水流路42の一端が接続され、排気ガス排出流路14には、排水流路42の他端が接続されている。例えば、排気ガスが、冷却装置44や吸収部12内に流入する冷却された水等により冷却され、排気ガス中の水蒸気が凝縮して、吸収部12内の水に混入すると、循環流路を流れる水の水量が増加する場合があるが、本実施形態では、水量調整器40によって、循環流路を流れる水量を検知して、水量が所定値以上となった場合には、循環流路を流れる水の一部が排水流路42から排気ガス排出流路14に排水されるようになっている。
【0043】
図4に示す排気ガス浄化装置3において、第2流路30に設けられる循環ポンプ32は、第2流路30を流れる水を、高圧に昇圧して、脱離部16へ圧送する高圧ポンプである。本実施形態のように、高圧ポンプにより、脱離部16内に加圧された水が導入されると、水から放出されるアンモニアガスも高圧状態となるため、例えば、アンモニアガスを加圧することなく内燃機関に供給される燃料供給系に導入することができ、燃料調量が容易となる。また、脱離部16内に加圧された水が導入されれば、脱離部16内での水温が高くても、水の蒸発が抑えられ、アンモニアガス中の水蒸気濃度を低く抑えることができる。高圧ポンプにより昇圧される水の圧力は、脱離部16での水の蒸発を抑制する観点から、例えば、2〜10気圧の範囲であることが好ましく、3〜5気圧の範囲であることがより好ましい。なお、加圧された水は、脱離部16から第2流路30を介して吸収部12へ流れる間に降圧すると考えられる。
【符号の説明】
【0044】
1〜3 排気ガス浄化装置、10 排気ガス流路、12 吸収部、14 排気ガス排出流路、16 脱離部、18 未燃燃料排出流路、22 加熱装置、24,44 冷却装置、26 温度センサ、28 第1流路、30 第2流路、32 循環ポンプ、34 制御装置、36 熱交換器、38 触媒装置、40 水量調整器、42 排水流路。
図1
図2
図3
図4