特許第6119461号(P6119461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119461
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】ボールペン用油性インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   C09D11/18
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-136210(P2013-136210)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10156(P2015-10156A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森本 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】有澤 克二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 勝教
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/031845(WO,A1)
【文献】 特開2003−041170(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/060060(WO,A1)
【文献】 特開2005−162794(JP,A)
【文献】 特開2000−212496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅フタロシアニン顔料と、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤と、インキ組成物全量に対して1.0重量%以上のエチルセルロースと、溶剤として溶解性パラメーター(SP値)が8.0(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下で分子内に水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤を少なくとも含み、前記銅フタロシアニン顔料の添加量がエチルセルロースの添加量に対して重量%比で4.5倍以上含有し、前記分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比が顔料全量を1としたとき0.11以上0.19以下であり、前記顔料分散剤の重量比が、溶解性パラメーター(SP値)が8.0(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下で水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤全量を1としたとき、0.21以上0.49以下であり、インキ粘度が25℃で、剪断速度0.019s−1の時に7500000mPa・s以上で、剪断速度10000s−1の時に520mPa・s以下で、角周波数0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が560Pa以上であり、角周波数0.019rad/secにおけるtanδが0.62以下であるボールペン用油性インキ組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用油性インキ組成物に関し、更に詳しくは、筆跡幅が細く、筆跡と紙面との境目には僅かな凹凸やヒゲ状の滲みもなく、中抜けもない綺麗な筆跡が得られる少なくとも銅フタロシアニン顔料を用いたボールペン用油性青色インキ組成物に関して、低温環境下においても軽い書き味が得られるボールペン用油性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筆跡幅が細く、筆跡と紙面との境目には僅かな凹凸やヒゲ状の滲みもなく、中抜けもない綺麗な筆跡を得るために、インキの粘度や貯蔵弾性率、tanδを調整したインキ組成物が開示されている。例えば、特許文献1には、青色インキの着色剤として銅フタロシアニン顔料を使用し、顔料分散剤として分子内にアミノ基を有する高分子活性剤とエチルセルロースを用いてインキ粘度が25℃で、剪断速度0.019s−1の時に200000mPa・s以上で、剪断速度10000s−1の時に5000mPa・s以下で、角周波数0.019rad/secにおける貯蔵弾性率を10Pa以上にすることで綺麗な筆跡を得られることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、着色剤として銅フタロシアニン顔料を使用し、顔料分散剤としてスルホン基を有する顔料誘導体と分子内にアミノ基を有する高分子活性剤を使用した青色インキにおいて、ベンジルアルコールを配合することにより顔料の分散が良好で0℃1週間低温保管後も顔料と顔料誘導体及び分散剤や添加物の溶解安定性が保たれカスレが発生しない青色インキが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2013/031845号公報
【特許文献2】特開2000−212496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、銅フタロシアニン顔料を分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤で分散した青色インキにおいて、寒冷地を想定した−20℃環境での書き味が非常に重くなるという問題が発生した。
【0006】
この現象は以下のような機構で発生していると推察される。
【0007】
分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤が着色顔料表面に吸着されずに過剰にインキ中に存在すると、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤とエチルセルロースとの間で分子間相互作用による弱いネットワークが形成される。
【0008】
通常は、25℃以上などの常温下を想定して、当該弱いネットワークも加味された流動性の設定がなされるので、常温下では筆記に好ましいインキの流動性となるが、低温環境下(−20℃程度)においては、エチルセルロースの分子運動が大きく低下するのに加え、ネットワークの構造が強固になるものと推察され、筆記時の剪断力では十分に流動することができず、書き味が非常に重くなってしまう。
【0009】
特許文献2に記載の発明では、低温でも液状であるベンジルアルコールを使用することで0℃1週間低温保管後のカスレを防止しているが、−20℃環境での効果は不十分でありまた、特許文献1に記載のような大きな剪断減粘性を有することによる軽い書き味が得られるインキ組成物に対しては、エチルセルロースを均一に溶解することができず、筆跡滲みや中抜けが非常に多く綺麗な筆跡が得られないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、銅フタロシアニン顔料と、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤と、インキ組成物全量に対して1.0重量%以上のエチルセルロースと、溶剤として溶解性パラメーター(SP値)が8.0(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下で分子内に水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤を少なくとも含み、前記銅フタロシアニン顔料の添加量がエチルセルロースの添加量に対して重量%比で4.5倍以上含有し、前記分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比が顔料全量を1としたとき0.11以上0.19以下であり、前記顔料分散剤の重量比が、溶解性パラメーター(SP値)が8.0(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下で水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤全量を1としたとき、0.21以上0.49以下であり、インキ粘度が25℃で、剪断速度0.019s−1の時に7500000mPa・s以上で、剪断速度10000s−1の時に520mPa・s以下で、角周波数0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が560Pa以上であり、角周波数0.019rad/secにおけるtanδが0.62以下であるボールペン用油性インキ組成物を第1の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボールペン用油性インキ組成物は、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比を顔料全量に対して一定の範囲にすることにより分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤がインキ中に過剰に存在することを抑制する。また過剰な分子活性剤があったとしてもネットワーク構造が低温環境下で強固になりすぎることを防止し、顔料分散性が良好で沈降や分離が発生せず低温環境下でも軽い書き味が得られるものである。分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比を顔料全量に対して0.19以下にすることにより、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤がインキ中に過剰に存在することを抑制することができる。
【0012】
過剰な顔料分散剤が存在しない様にする事で、エチルセルロースと分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤との間で分子間相互作用による弱いネットワークを形成するのを防ぎ、低温環境下(−20℃)でも高い剪断減粘性を保ち軽い書き味を維持できる。
【0013】
分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比を顔料全量に対して0.13未満とした場合、顔料を安定に分散させることができないため、顔料の凝集や沈降によるカスレが生じてしまう。
【0014】
本発明における溶解度パラメーターとは、ヒルデブラントにより提唱されたSP値を示しており(以下、単にSP値とする)、単位は(cal/cm1/2で(以下、単位は省略する)、20℃での値とする。SP値が8.0以上9.5以下で分子内に水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤はエチルセルロースに対する適度に高い溶解力があるが、大きな疎水基を持たないため顔料表面に吸着しない過剰な分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の溶解性はやや低い。このためエチルセルロースを過剰な高分子活性剤からある程度保護することができる。従って低温環境下でもエチルセルロースと分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤とのネットワーク構造が強固になりすぎず、高い剪断減粘性を保持して軽い書き味を維持する効果が高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
着色材としては銅フタロシアニン顔料が少なくとも必要である。銅フタロシアニン顔料は安価で耐光・耐候性が高く、さらに高い耐溶剤性を持つため樹脂や各種添加剤との相溶性により多種類の溶剤を調製して作成される油性ボールペン用インキに最適である。また分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤での分散性が他の青色顔料に比べても良好で高い流動性と分散安定性を持った分散体が得られる。具体的にはC.I.PIGMENT BLUE 15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6などが使用できる。また、顔料の分散性や流動性を高めるためにスルホン基を導入したフタロシアニン誘導体などで顔料表面をあらかじめ処理したものなども好適に使用できる。
【0016】
色調の調整や特に高い耐光性を得るために他の青〜紫の色調を持つ顔料も併用することができる。具体的にはC.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同37、同38、同50、C.I.PIGMENT
BLUE 2、同9、同16、同17、同22、同25、同28、同29、同36、同60、同66、同68、同76などが使用でき、これらの有機顔料は1種又は2種以上混合して使用することができ、その使用量は、高い筆跡濃度や高い剪断減粘性を得るためにインキ組成物全量に対して顔料全量が20〜40重量%になるようにする。
【0017】
そのほかにも従来油性ボールペンに使用されている各種の染料・顔料を併用することもできる。
【0018】
顔料の分散効率を上げるため、高分子化合物中に顔料をあらかじめ微分散したものを粒子化したものを使用しても良い。特に、このような顔料を用いた場合は、製造上容易に分散できるので、製造上有用な手段として用いることが出来る。一例を挙げると、マイクロリス BLUE GS−T(ロジンエステル樹脂に微分散させた顔料、チバ・ジャパン(株)製)、マイクロリス VIOLET B−A、同BLUE 4G−A、(エチルセルロース樹脂に微分散させた顔料、チバ・ジャパン(株)製)、L1/8バイオレットRN50(ニトロセルロース樹脂に微分散させた顔料、太平化学製品(株)製)等が挙げられる。
【0019】
着色材として染料を用いる場合は、従来公知の染料を使用することができ、ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199等の直接染料や、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158等の酸性染料、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、ローダミンF4G(C.I.45160)等の塩基性染料等が挙げられる。これらは、1種もしくは2種以上混合して用いることが出来、その使用量は、インキ組成物全量に対して20〜40重量%である。
【0020】
上記染料、有機顔料は銅フタロシアニン顔料と混合して使用する。
【0021】
分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤は有機顔料、特に表面に強い極性基を持たない難分散性の顔料に好適な顔料分散剤として従来公知である。具体的には例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース28000、ソルスパース13240、ソルスパース32550、ソルスパース34750、ソルスパース31845(以上、ZENECA社製)、EFKA 46、EFKA 47、EFKA 48、EFKALP4008、EFKA 4009、EFKA LP4010、EFKA LP4050、EFKA LP4055、EFKA POLYMER 400、EFKA POLYMER 401、EFKA POLYMER 402、EFKAPOLYMER 403、EFKA POLYMER 451、EFKA POLYMER 452、EFKA POLYMER 453、EFKA 120、EFKA 150(以上、EFKA CHEMICALS B.V.社製)、アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB821(以上、味の素(株)製)、DISPERBYK 101、DISPERBYK 108、DISPERBYK 160、DISPERBYK 161、DISPERBYK 162、DISPERBYK 163、DISPERBYK 164、DISPERBYK 166、DISPERBYK 170、DISPERBYK110、DISPERBYK 111、DISPERBYK 130、(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いても良い。
【0022】
また、分子中にスルホン基を有する顔料誘導体を上記分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤と併用すると分散安定性が更に向上する。
【0023】
分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比が顔料全量を1としたとき0.11以上0.19以下とすることで顔料分散剤がインキ中に過剰に存在することを抑制する。また、過剰な高分子活性剤があったとしてもネットワーク構造が低温環境下で強固になりすぎることを防止し、顔料分散性が良好で沈降や分離が発生せず低温環境下でも軽い書き味が得られる。
【0024】
本発明のインキの剪断減粘性を付与する増粘材として、エチルセルロースが少なくとも必要である。エチルセルロースは、セルロースの水酸基をエチル基で置換した構造であるので、セルロースの結晶化への最も強い結合力となる水素結合部分が減少すると共に、置換基のエチル基が有機溶剤への親和性が高く、SP値も10.3とセルロース誘導体の中では最も小さい。このため、セルロース誘導体の中でも最も有機溶剤への溶解性と保溶剤力が高く高い剪断減粘性による軽い書き味が得られる。
【0025】
エチルセルロースが高い剪断減粘性を持つのは、エチルセルロースは有機溶剤中においてゲルとして存在しており、剪断がかかっていない状態では高い粘度値の組成物が得られやすいが、このゲルは曳糸性が小さく、接着性が非常に弱い特徴を持つことから、筆記時のボールの回転による剪断速度の変化によりゲルが崩れやすく、急激な粘度変化を伴うからである。
【0026】
更に、エチルセルロースに対して着色材である顔料が高濃度に存在することにより、エチルセルロース層のクラックのように働き、ボールの回転による剪断速度の変化で、崩れやすくなり、大きな粘度低下を実現する。
【0027】
エチルセルロースの市販品としては、エトセル4、同7、同10、同14、同20、同45、同70、同100、同200、同300(ダウ・ケミカル日本(株)製)、AQUALON N50、同N100、同N200、同N300(アシュランド社製、アメリカ合衆国)等が挙げられる。
【0028】
また、前述したが、エチルセルロース中に顔料をあらかじめ微分散したものを粒子化したものを使用しても良い。具体例を挙げると、マイクロリス VIOLET B−A、同BLUE 4G−A(エチルセルロース樹脂に微分散させた顔料、BASF社製、ドイツ)等が挙げられる。
【0029】
エチルセルロースの使用量は、インキ全体に対してエチルセルロースを1%以上含み、顔料の量をエチルセルロースの4.5倍以上にすれば、静置時のインキの粘度が高くなり、且つ大きな剪断減粘性を有することで、極めて軽い書き味が得られ、エチルセルロースが顔料の分散を十分に補助できるので、顔料分散性、顔料分散安定性も良好になるので好ましい。
【0030】
このほかにも剪断減粘性を補助する他の増粘剤を併用することもできる。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロースの具体例を挙げると、NISSO HPC−SSL、同SL、同L、同M、同H(日本曹達(株)社製)、クルーセルL、クルーセルM、クルーセルH、クルーセルHX、クルーセルG、クルーセルJ、クルーセルE、クルーセルEX(三晶(株)社製)等が挙げられる。
【0031】
ヒドロキシエチルセルロースの具体例を挙げると、HECダイセルSP200、同SP600、同SP900、SE550、同EP850(ダイセルファインケム(株)社製)、SANHEC(三晶(株)社製)等が挙げられる。
【0032】
メチルセルロースの具体例を挙げると、METOLOSE SM(信越化学工業(株)社製)が挙げられる。
【0033】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの具体例を挙げると、METOLOSE 60SH、同65SH、同90SH−100SR、同90SH−4000SR、同90SH−15000SR、同90SH−100000SR(信越化学工業(株)社製)、NEOVISCO MC(三晶(株)社製)等が挙げられる。
【0034】
カルボキシメチルセルロースの具体例を挙げると、CMCダイセル1110、同1120、同1130、同1140、同1150、同1160、同1170、同1180、同1190、同1220、同1230、同1240、同1250、同1260、同1330、同1350、同1380、同1390、同2200、同2260、同2280、同2340、同2450(ダイセルファインケム(株)社製)、サンローズB、同S、同P、同A、同F(日本製紙ケミカル(株)社製)、FINFIX、CEKOL(三晶(株)社製)等が挙げられる。
【0035】
上記高分子化合物以外にも、通常ボールペンインキ組成物に増粘付与剤として使用されている高分子として、例えばアラビアガム、トラガカントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン、キサンテンガム、デキストラン、ウェランガム、ラムザンガム、アルカガム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒドロキシプロピル化グァーガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、アクリル樹脂塩、アクリル酸とアルキルメタクリレートの共重合体又はそれらの塩、ヒアルロン酸等の多糖類、ベンジリデンソルビトール、シリカ、ベントナイト系無機化合物、有機ベントナイトが挙げられる。また、定着剤や分散剤として使用されている樹脂、例えばケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を併用することが出来る。これらの樹脂は単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良く、その配合量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜15重量%範囲である。これらの樹脂は、インキ組成物の粘度を調整したり、固着性、耐水性等を向上させる作用がある。
【0036】
ただ、使用量が多くなると書き味が重くなる傾向にある。
【0037】
本発明において使用する溶剤としては油性ボールペンインキに汎用される有機溶剤が使用できる。有機溶剤は、ペン先の乾燥に影響を及ぼさないためにも沸点は、170℃以上が必要であり、好ましくは、220℃以上である。
【0038】
有機溶剤の具体例を挙げると、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル(沸点229℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点188.9℃)ジエチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル(沸点272℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230.6℃)、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル(沸点170℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点209℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点190℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点171℃、SP値8.2)、ジプロピレングリコールノルマルプロピルエーテル(沸点212℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点242℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点274℃)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(沸点174℃)、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート(沸点188℃)等が挙げられる。
【0039】
特にSP値が8.0以上9.5以下で分子内に水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤は、エチルセルロースに対する適度に高い溶解力があるが、大きな疎水基を持たないため顔料表面に吸着しない過剰な分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の溶解性はやや低い。このためエチルセルロースを過剰な高分子活性剤からある程度保護することができる。従って低温環境下でもエチルセルロースと分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤とのネットワーク構造が強固になりすぎず、高い剪断減粘性を保持して軽い書き味を維持する効果が高いため好適である。具体的にはエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル(SP値9.0)、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル(SP値9.2)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(SP値9.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値9.5)、ジエチレングリコールイソブチルエーテル(SP値8.7)2−エチルヘキサノール(SP値9.5)、3−メトキシ−3−メチルブタノール(SP値9.3)、ラウリルアルコール(SP値8.1)やトリメチル−3,5,5−ヘキサノール(SP値8.4)などが挙げられる。添加量が多すぎるとエチルセルロースの溶解性が良いため筆記後剪断力がなくなった状態で増粘するのが遅くなり筆記幅が太くなってしまうことがあるため、エチルセルロースに対する良好な溶解性能を発揮しながら筆記幅の細さ筆跡綺麗さを保つため前記顔料分散剤の重量比が、SP値8.0以上9.5以下で水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤全量を1としたとき、0.21以上0.49以下であることが好ましい。
【0040】
また、上記有機溶剤以外に従来公知のボールペン用有機溶剤を併用しても良い。沸点が150℃以上であること望ましく、150℃以下のものを用いた場合は、製品形体がキャップ式ならば、使用できる。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルグリコール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶剤、酢酸−2−エチルへキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等のエステル系溶剤、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリドデシルアルコール、等のアルコール系溶剤等が使用可能である。これらは、単独で用いても2種以上混合して用いても良く、配合量はインキ全量に対し20〜90重量%好ましくは35〜75重量%である。
【0041】
その他必要に応じて、防腐剤、防錆剤、消泡剤、潤滑剤、分散剤、カスレ防止剤、洩れ防止剤、界面活性剤等のインキ組成物に慣用されている助剤を含有させても良い。
【0042】
本発明のボールペン用インキ組成物は、上記各成分をダイノーミル、ボールミル、ロールミル、アトライター、サンドグラインダー、ターボミキサー、ラボミキサー、ホモミキサー等の分散機を使用して分散混合することによって得られる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
ファストゲンブルーAE−8(青色顔料、ピグメントブルー15:6、DIC株式会社製
) 20.90重量部
マイクロリスブルー 4G−A(顔料をエチルセルロースキャリアーに微分散させた加工顔料、ピグメントブルー15:3とエチルセルロースとの比率が6:4、BASF(株)
製、ドイツ) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(紫色顔料、ピグメントバイオレット23、DIC株式会社製) 2.03重量部
ソルスパース12000(顔料誘導体、日本ルーブリゾール(株)製) 1.04重量部
ソルスパース20000(分子内にアミノ基を有する高分子活性剤、日本ルーブリゾール
(株)製) 4.10重量部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学(株)製)
3.85重量部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学(株)製)
2.35重量部
トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル 47.20重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 11.30重量部
フォスファノールLB400(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸)
0.30重量部
ナイミーンL201(ポリエチレングリコール−1−ラウリルアミン)
0.20重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が7600000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が330mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が760Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.25の青色インキを得た。
(実施例2)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 20.90重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 2.03重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース24000(分子内にアミノ基を有する高分子活性剤、日本ルーブリゾール
(株)製) 5.10重量部
エスレックBH−3(前述) 5.00重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 47.10重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 12.10重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース24000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が8400000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が450mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が600Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.38の青色インキを得た。
(実施例3)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 20.90重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 2.03重量部
ソルスパース22000(前述) 1.00重量部
ソルスパース20000(前述) 3.00重量部
SKレジン(ケトン樹脂、ヒュルス(株)製) 5.60重量部
PVPK−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン(株)製) 0.50重量部
ヘキシレングリコール 48.94重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 11.30重量部
上記成分中のソルスパース22000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が7800000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が360mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が620Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.45の青色インキを得た。
(実施例4)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 23.00重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 1.41重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース20000(前述) 5.10重量部
エスレックBH−3(前述) 3.30重量部
PVPK−90(前述) 2.58重量部
トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル 46.64重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 10.20重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が8500000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が470mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が560Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.33の青色インキを得た。
(実施例5)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 1.35重量部
Chomofine Blue A3R(C.I.Pigment Blue 60、大
日精化工業(株)製) 25.60重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース24000(分子内にアミノ基を有する高分子活性剤、日本ルーブリゾール
(株)製) 3.70重量部
エトセル20(エチルセルロース、ダウ・ケミカル日本(株)製) 5.13重量部
エスレックBH−3(前述) 2.20重量部
SKレジン(前述) 4.49重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 46.59重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 9.9重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース24000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とChomofine Blue A3Rを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が8800000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が520mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が780Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.53の青色インキを得た。
(実施例6)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 20.90重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 2.03重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース20000(前述) 4.10重量部
エスレックBL−1(前述) 3.84重量部
SKレジン(前述) 4.00重量部
PVPK−90(前述) 0.17重量部
ヘキシレングリコール 48.39重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 8.3重量部
フォスファノールLB400(前述) 0.30重量部
ナイミーンL201(前述) 0.20重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が7700000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が340mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が620Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.62の青色インキを得た。
(実施例7)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 20.90重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 2.03重量部
ソルスパース12000(前述) 0.70重量部
ソルスパース22000(前述) 0.30重量部
ソルスパース20000(前述) 3.20重量部
エスレックBH−3(前述) 2.35重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 48.79重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 15.00重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース22000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が8000000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が440mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が560Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.55の青色インキを得た。
(実施例8)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 20.90重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 2.03重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース24000(前述) 4.10重量部
エスレックBL−1(前述) 3.84重量部
エスレックBH−3(前述) 2.35重量部
トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル 51.21重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 7.30重量部
フォスファノールLB400(前述) 0.30重量部
ナイミーンL201(前述) 0.20重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース24000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が8500000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が500mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が570Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.48の青色インキを得た。
(実施例9)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 16.00重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 6.73重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 2.03重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース20000(前述) 2.50重量部
エスレックBL−1(前述) 1.80重量部
エスレックBH−3(前述) 2.35重量部
PVPK−90(前述) 2.00重量部
トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル 41.65重量部
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 23.40重量部
フォスファノールLB400(前述) 0.30重量部
ナイミーンL201(前述) 0.20重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が7500000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が450mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が660Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.38の青色インキを得た。
(比較例1)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 15.02重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 17.20重量部
ソルスパース12000(前述) 1.78重量部
ソルスパース20000(前述) 7.13重量部
SKレジン(前述) 10.56重量部
PVPK−90(前述) 0.40重量部
トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル 17.10重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 23.68重量部
3−メチル−1、5−ペンタンジオール 7.13重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8を添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が20500000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が3900mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が838Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.28の青色インキを得た。
(比較例2)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 19.00重量部
マイクロリスブルー 4G−A(前述) 17.20重量部
ソルスパース12000(前述) 1.00重量部
ソルスパース20000(前述) 3.00重量部
SKレジン(前述) 10.56重量部
PVPK−90(前述) 0.40重量部
トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル 17.10重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 23.68重量部
3−メチル−1、5−ペンタンジオール 8.06重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8を添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が16000000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が2800mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が770Pa、0.019rad/secにおけるtanδが0.88の青色インキを得た。
(比較例3)
Chromofine Blue 4920(Pigment Blue 15:3、大日精化工業(株)製) 12.00重量部
ソルスパース12000(前述) 1.20重量部
ソルスパース20000(前述) 3.00重量部
ハイラック110H(ケトンレジン、日立化成工業(株)製) 16.00重量部
PVPK−90(前述) 0.50重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 52.80重量部
ベンジルアルコール 12.00重量部
オレイン酸 2.50重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、Chromofine Blue 4920を添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が12600mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が5000mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が0.1Pa、0.019rad/secにおけるtanδが70の青色インキを得た。
(比較例4)
ファストゲンブルーAE−8(前述) 21.30重量部
ファストゲンスーパーバイオレットRZS(前述) 5.60重量部
ソルスパース12000(前述) 1.04重量部
ソルスパース20000(前述) 4.10重量部
エトセル20(前述) 5.13重量部
エスレックBL−1(前述) 3.84重量部
エスレックBH−3(前述) 2.35重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテルエーテル 31.10重量部
ベンジルアルコール 25.04重量部
フォスファノールLB400(前述 0.30重量部
ナイミーンL201(前述) 0.20重量部
上記成分中のソルスパース12000とソルスパース20000と全溶剤とを加熱攪拌し、ファストゲンブルーAE−8とファストゲンスーパーバイオレットRZSを添加し、ビーズミルで1時間分散した。得られた顔料分散体と残りの成分とをラボミキサーにて混合加熱撹拌し、25℃において剪断速度0.019s−1での粘度が65000mPa・s、剪断速度10000s−1での粘度が2000mPa・s、0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が9Pa、0.019rad/secにおけるtanδが50の青色インキを得た。
【0044】
以上、実施例1〜9、比較例1〜4で得られたインキ組成物を市販の油性ボールペン(BK70、ボール径0.7mm、ぺんてる(株)製、ペン先はステンレスチップと超硬合金のボールよりなっている)と同様の筆記具に0.3g充填し、試験サンプルとした。但し、インキが高粘度であるために、吐出が困難な場合には、上記サンプルにバネや圧縮空気等で加圧している状態で筆記できるように工夫改造して、同様の評価を実施した。
【0045】
試験項目としては、−20℃環境下での筆記抵抗値の測定および、25℃における筆跡の綺麗さ(中抜け、筆跡幅、筆跡滲み、カスレ)評価を行った。
【0046】
−20℃環境下における筆記抵抗値の測定:上記実施例1〜9および比較例1〜4のインキを充填した各ボールペンサンプルをn=3本ずつ用意し、恒温室にてサンプルを−20℃環境下に24時間静置し、その後−20℃恒温室内にて静・動摩擦測定機(Tribo−master Type TL201Sa、株式会社トリニティーラボ製)を用い、ペン作成後未筆記のボールペンサンプルを、筆記荷重を150g、筆記角度70度、筆記速度1cm/secおよび10cm/secで15cm筆記させたときの筆記抵抗値を測定した。
【0047】
筆記抵抗値の測定は、測定周波数200Hzにて10秒間測定を行った。測定開始0.5秒から2.0秒までの間で得られた筆記抵抗値のデータから、各ボールペンサンプルの筆記抵抗値の平均値を算出し、実施例、比較例の筆記抵抗値の代表値とした。
中抜けの評価:実施例と比較例のインキを充填した各ボールペンサンプルによって、25℃65%の恒温恒湿室内において一筆書きで「☆」の字を手書き筆記した。これを10回繰り返した。目視で筆跡上の中抜け箇所を確認して、「☆」の字10個分の中抜け個数を計測した。
【0048】
螺旋機筆記試験機によって筆記し、以下の評価を行った。螺旋筆記の試験機の筆記条件は、25℃65%の恒温恒湿室内で筆記速度7cm/sec、筆記角度70°、筆記荷重150gで行った。
筆跡滲みの評価
(1)筆跡幅:実施例と比較例のインキを充填した各ボールペンサンプルによって、螺旋筆記した。螺旋筆記で得られた筆跡を25℃65%の恒温恒湿室内にて1時間静置し、十分に筆跡を乾燥させたあと、100〜200mにおける筆跡幅をランダムに10点測定し、筆跡幅の平均値を算出した。
(2)凹凸やヒゲ状の滲み:実施例と比較例のインキを充填した各ボールペンサンプルによって、前記条件にて螺旋筆記した筆跡を筆跡乾燥後に顕微鏡にて200倍に拡大し、筆跡と紙面の境目を観察した。このとき、紙の繊維に沿って横に広がった凹凸やヒゲ状の滲みの、筆記線5cm当たりの滲みの数を目視で確認した。
筆跡カスレの評価:実施例と比較例のインキを充填した各ボールペンサンプルによって、前記条件にて螺旋筆記した筆跡を筆跡乾燥後、筆跡のカスレ箇所を目視で計測し、n=10本の平均値を算出した。
【0049】
【表1】
実施例1〜9のボールペン用インキは、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤量の重量比は顔料全量を1としたとき0.11以上0.19以下であるので、分散が良好でかつ分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤がインキ中に過剰に存在することを抑制することができ、エチルセルロースと分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤との間で分子間相互作用による弱いネットワークを形成するのを防ぎ、低温環境下(−20℃)でも高い剪断減粘性を保ち軽い書き味を維持できた。
【0050】
特に、実施例1〜7のボールペン用インキ組成物は、分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比が溶解性パラメーター(SP値)が8.0以上9.5以下で分子内に水酸基を含有しオキシプロピレン基を含有しない有機溶剤全量を1としたとき0.21以上0.49以下の範囲にあるのでエチルセルロースに対する適度に高い溶解力により、顔料表面に吸着しない過剰な分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤とエチルセルロースとのネットワークの構造の強化を阻害し、高い剪断減粘性を保持して軽い書き味を維持する効果が高くなり、より軽い書き味を維持することができた。
【0051】
これに対して、比較例1は分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤の重量比が顔料全量を1としたとき0.19より大きいため、低温環境下(−20℃)においては、エチルセルロースの分子運動が低下するのに加え、ネットワークの構造が強固になり筆記時の剪断力によって十分に流動することができなくなり、書き味が非常に重くなってしまった。
【0052】
比較例2は分子内にアミノ基を有する高分子活性剤の顔料分散剤量の重量比が顔料全量を1としたとき0.11未満であるので、顔料を安定に分散させることができず、顔料の凝集や沈降によるカスレを生じてしまった。
【0053】
比較例3〜4は、溶剤にベンジルアルコールを使用して0℃1週間定温保管後のカスレを防止することを防止できるが、―20℃環境での効果は不十分であり、またエチルセルロースを均一に溶解することができないので、滲み、中抜けが非常に多く発生してしまった。
【0054】
実施例1〜9および比較例1〜2のボールペン用インキ組成物は、剪断速度0.019s−1の時に200000mPa・s以上で、剪断速度10000s−1の時に5000mPa・s以下で、角周波数0.019rad/secにおける貯蔵弾性率が10Pa以上であり、角周波数0.019rad/secにおけるtanδが1.0未満あるので、筆記時にはボールが回転することによる剪断力でインキは低粘度化されて高いインキの流動性が得られ、中抜けも生じず、ボールが筆跡状から通り過ぎると同時に、インキは静置状態の高粘度の状態に戻りやすいので、インキは転写された瞬間の筆跡部分からそれ以上筆跡の無い紙面へ流されることはなく、紙面等に置かれたインキが、置かれた形態のまま移動しないので、筆跡幅が細く滲みのない綺麗な筆跡が得られた。
【0055】
これに対し、比較例3〜4のボールペン用インキ組成物は、剪断速度剪断速度0.019s−1の時に200000mPa・s未満で、インキは静置時に液体状態であるので、筆跡上の流動性もある状態であり、滲みを抑えられなかった。
【0056】
以上、詳細に説明したように本発明のボールペン用インキ組成物は、筆跡幅が細く、筆跡と紙面との境目には僅かな凹凸やヒゲ状の滲みもなく、中抜けもない綺麗な筆跡が得られる少なくとも銅フタロシアニン顔料を用いたボールペン用油性青色インキ組成物に関して、低温環境下においても軽い書き味が得られるボールペン用油性インキ組成物に関するものである。