(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119468
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】絶縁構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20170417BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20170417BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20170417BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20170417BHJP
H02B 1/04 20060101ALN20170417BHJP
【FI】
H05K7/12 D
F16B5/02 Y
H01R13/46 304L
F16B19/00 F
!H02B1/04 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-141222(P2013-141222)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-15367(P2015-15367A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】服部 史
【審査官】
石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−140053(JP,U)
【文献】
実開昭58−042984(JP,U)
【文献】
実開昭57−059495(JP,U)
【文献】
実開昭53−038648(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00−5/06
7/12−7/14
F16B 5/00−5/12
19/00
H01R 13/40−13/533
H02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器側の導電性素材からなる取り付け部と、収納枠側の導電性素材からなる取り付け部との間に、絶縁素材からなるカラーを挟み、該カラーとの間で前記取り付け部のうち一方を挟む絶縁素材からなるブッシュを配置し、該ブッシュのフランジ状の大径部に設けられた小径部を、前記一方の取り付け部に形成した取り付け孔に挿入し、且つ前記小径部の先端部を、前記カラー内に挿入するとともに、前記ブッシュの中心部を貫通するネジ挿入孔に導電性素材からなる取り付けネジを挿入して該ネジの先端を収納枠側の導電性素材に取り付ける絶縁構造において、
前記ブッシュの小径部の根元部分に、前記ブッシュの偏心時に前記取り付け孔の内周面と前記ブッシュの小径部の外周面との間に段差を発生させる段部を設けたことを特徴とする絶縁構造。
【請求項2】
前記ネジ挿入孔は、前記ブッシュの大径部に前記ネジの外径と略同径に形成された第1ネジ孔部と、前記ブッシュの小径部に前記第1ネジ孔部よりも大径に形成されて前記ネジの外周面との間に段差を発生させる第2ネジ孔部と、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁構造。
【請求項3】
前記段部は、末広がりの傾斜面を有する断面略三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁構造。
【請求項4】
前記段部は、断面矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁構造。
【請求項5】
前記段部は、断面台形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置を盤等の収納枠に実装するために、制御装置と収納枠との間に耐電圧に必要な絶縁距離を取るための絶縁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御装置を盤等の収納枠に実装する場合、制御装置と収納枠間で耐電圧を確保するためには、各導体間で絶縁距離をとる必要がある。すなわち、制御機器側の、例えば鋼板からなる取り付け部(導体)と、収納枠側の、例えば鋼板からなる取り付け部(導体)とを、耐電圧を確保するために各導体間で絶縁距離を取る必要がある。絶縁距離には、空間距離と沿面距離があり、それぞれの距離の考え方は、例えば「JISC1010−1(測定,制御及び研究室用電気機器の安全性−第1部:一般要求事項の付属書C(規定)空間距離及び沿面距離の測定」に示されている。また、耐電圧や装置が設置される汚染度のレベルによっても必要な空間距離、沿面距離は異なる。汚染度の区分としては、JISC1010−1規格内の3.6.6.1〜3に示されている。
【0003】
制御機器側の取り付け部と収納枠側の取り付け部の間の絶縁構造として、
図13に示すように、制御機器側の導電性素材からなる取り付け部101と、収納枠側の導電性素材からなる取り付け部102を、絶縁素材からなるカラー103とブッシュ104及び導電性素材からなる取り付けネジ105で結合してなる絶縁構造が開発されている。
図14に示すように、制御機器側の取り付け部101に形成された取り付け孔101aには、ブッシュ104の小径部104aが挿入されていて、該小径部104aの外周面と、取り付け孔101aの内周面には、両者が接触するのを防止するための隙間Gが設定されている。
【0004】
また、特許文献1には、導電性の基板上に半導体モジュール素子を複数個直列接続し、これらの半導体モジュール素子のそれぞれの導電性の基板を共通の導電性の冷却体と対向させて、間(あいだ)に熱伝導性の絶縁シートを介して前記冷却体に結合してなる高電圧用半導体電力変換装置が開示されている。この高電圧用半導体電力変換装置においては、前記半導体モジュール素子の導電性基板を絶縁性の結合手段により前記冷却体に結合し、絶縁シートが結合手段により短絡されないようにする技術が開示されている。すなわち、特許文献1では、導電性の基板と導電性の冷却体との絶縁を、絶縁シートと、絶縁材からなる取り付けボルトとで絶縁するが、特に絶縁材製の円筒状の絶縁ブッシュを、絶縁材からなる取り付けボルトと導電性基板との間に設けることで、沿面絶縁距離を確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−252023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図13,
図14に示した従来の絶縁構造においては、
図15に示すように、前記取り付けネジ105が、前記ブッシュ104を介して制御機器側の取り付け部101の取り付け孔101aの内周面に接触し、且つカラー103に形成したブッシュ受け孔103aの内周面が同じ面になった場合に、空間距離と沿面距離が同じ距離Lとなり沿面距離が不足することがある。
【0007】
すなわち、
図14に示したように、制御機器側の取り付け孔101aの内周面と、該取り付け孔101aに挿入されるブッシュ104の小径部104aの外周面との間には隙間Gがあり、ブッシュ104と取り付けネジ105の中心軸に対して垂直な方向にブッシュ104が可動な配置となっているために、ブッシュ104が中心軸に対して垂直な方向の何れか一方の方向に移動し、
図15に示すような偏心した位置関係になると、制御機器側の取り付け孔101aの内周面と、取り付けネジ105の外周面との間の空間距離と沿面距離が同じ距離Lとなる。これは言い換えると、取り付けネジ105は収納枠側に導通しているので、制御機器と収納枠との間の絶縁のための空間距離と沿面距離が同じ距離となり、耐電圧の仕様にもよるが、耐電圧の仕様、沿面距離が不足し、絶縁不良となる場合があった。
【0008】
前述のように、ブッシュ104が中心軸に対して垂直な方向のどちらかに移動し、偏心するのを防止するためには、例えば、数ヶ所ある制御機器側の取り付け部101と収納枠側の取り付け部102のそれぞれのピッチ寸法を高精度に作り、制御機器を取り付ける際、数ヶ所ある各取り付け部でカラー103とブッシュ104が偏心しないように治具等を使用して取り付ければ可能であるが、部品加工の精度上限界があり、部品コストや加工コストの上昇の要因になる。
【0009】
本発明は、ブッシュの位置が偏心した場合でも、取り付け孔の内周面と、ブッシュの小径部の外周面との間に所望の間隙を保持し、沿面距離を確保することの可能な絶縁構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、制御機器側の導電性素材からなる取り付け部と、収納枠側の導電性素材からなる取り付け部との間に、絶縁素材からなるカラーを挟み、該カラーとの間で前
記取り付け部
のうち一方を挟む絶縁素材からなるブッシュを配置し、該ブッシュの鍔状の大径部に設けられた小径部を、前記一方の取り付け部に形成した取り付け孔に挿入し、且つ前記小径部の先端部を、前記カラー内に挿入するとともに、前記ブッシュの中心部を貫通するネジ挿入孔に導電性素材からなる取り付けネジを挿入し、該ネジの先端を収納枠側の導電性素材に取り付けた絶縁構造において、
前記ブッシュの小径部の根元部分に、前記ブッシュの偏心時に前記取り付け孔の内周面と前記ブッシュの小径部の外周面との間に段差を発生させる段部を設けた。
【0011】
また、前記ネジ挿入孔を、前記ブッシュの大径部に前記ネジの外径と略同径に形成された第1ネジ孔部と、前記ブッシュの小径部に前記第1ネジ孔部よりも大径に形成されて前記ネジの外周面との間に段差を発生させる第2ネジ孔部と、で構成し、前記ネジの外周面と前記小径部側の第2ネジ孔部の内周面との間に段差を発生させた。
【発明の効果】
【0012】
前記取り付け孔の中心位置に対して前記小径部及びネジの位置が偏心した場合には、前記段部によって、ブッシュの小径部の外周面と、取り付け孔の内周面との間に段差を発生させて間隙を確保する。
【0013】
また、前記ネジ挿入孔を、前記ブッシュの大径部に前記ネジの外径と略同径に形成された第1ネジ孔部と、前記ブッシュの小径部に前記第1ネジ孔部よりも大径に形成されて前記ネジの外周面との間に段差を発生させる第2ネジ孔部と、で構成したので、ネジの軸部をネジ挿入孔に挿入したときに、ネジの軸部の外周面と前記第2ネジ孔部の内面との間に前記段差で空隙を形成して、沿面距離を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施例の段部を設けた絶縁構造の分解斜視図。
【
図5】第1実施例の段部を使用した場合の絶縁構造の空間距離を示す断面図。
【
図6】第1実施例の段部を使用した場合の絶縁構造の沿面距離を示す断面図。
【
図8】第2実施例の段部を使用した場合の絶縁構造の空間距離を示す断面図。
【
図9】第2実施例の段部を使用した場合の絶縁構造の沿面距離を示す断面図。
【
図11】第3実施例の段部を使用した場合の絶縁構造の空間距離を示す断面図。
【
図12】第3実施例の段部を使用した場合の絶縁構造の沿面距離を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図6は、本発明の第1実施形態を示し、
図1は分解斜視図、
図2は断面図である。本発明の絶縁構造は、制御機器側の導電性素材からなる取り付け部(以下、第1取り付け部と称する)1と、収納枠側の導電性素材からなる取り付け部(以下、第2取り付け部と称する)2を、絶縁素材からなるカラー3とブッシュ4及び導電性素材からなる取り付けネジ5で結合することにより構成されている。
【0016】
第1取り付け部1は、鋼板(導体)で板状に形成されていて、ブッシュ4の小径部
4cを挿入する取り付け孔1aが設けられている。
【0017】
第2取り付け部2は、鋼板(導体)で板状に形成されていて、取り付けネジ5の軸部5aを螺合するネジ孔2aが形成されている。
【0018】
カラー3は、絶縁素材で有底円筒状に形成されていて、底面3aにブッシュ4の小径部4cを挿入する孔部3bを備えている。カラー3は、底面3aを第1取り付け部1に重ね合わせた状態で、第1取り付け部1と第2取り付け部2の間に挟着される。
【0019】
ブッシュ4は、取り付けネジ5の頭部5bを収容するネジ頭部収納部4aを設けたフランジ状の大径部4bと、大径部4bにこれと同心状に一体に形成された小径部4cとからなっている。ブッシュ4の中心部には大径部4bと小径部4cの中心部を貫通するネジ挿入孔4dが形成されている。
【0020】
小径部4cの先端には、外周面に抜け止め突起4eを設けた複数の弾性爪片4fが突出形成されている。前記複数の弾性爪片4fは、小径部4cの先端をカラー3の孔部3bに挿入する際に、該孔部3bの内周面で押されて内側に撓み、該孔部3bの内周面を通過してカラー3内に侵入すると、孔部3bによる押圧を解除され、元の位置に復帰して、ブッシュ4が孔部3bから抜け落ちるのを防止する。(
図2参照)
大径部4bは、取り付け孔1a内に侵入しないように、取り付け孔1aの直径よりも大径に形成されている。一方、小径部4cの直径は、前記取り付け孔1aの直径よりも小径に形成されていて、取り付け孔1aを介して、その先端が、前記カラー3の孔部3bに挿入される。
【0021】
小径部4cが取り付け孔1aの中心に挿入されると、
図2に示すように、小径部4cの外周面と、取り付け孔1aの内周面との間には間隙Gが発生する。この間隙Gの存在によりブッシュ4が中心軸に対して垂直な方向の何れか一方の方向に移動して、取り付け孔1aの内周面と、取り付けネジ5の軸部5aの外周面との間の空間距離と沿面距離が同じ距離になって、沿面距離不足の原因になっていたことは、前述した通りである。
【0022】
本発明は、ブッシュ4の偏心による沿面距離不足を防止するために、
図5,
図6に示すように、ブッシュ4の小径部4cの根元部分に段部11を設け、該段部11により、ブッシュ4の偏心時に、ブッシュ4の小径部4cの外周面と前記取り付け孔1aの内周面との間に段差aを発生させて沿面距離を確保する。
【0023】
段部11は、小径部4cの根元部分の小径部4cと大径部4bのコーナー部分に、該コーナー部分を埋めるように形成されている。
【0024】
また、
図2,
図5に示すように、ブッシュ4のネジ挿入孔4dは、ブッシュ4の大径部4bに取り付けネジ5の軸部5aの外径と略同径に形成された第1ネジ孔部4gと、ブッシュ4の小径部4cに前記第1ネジ孔部4gよりも大径に形成された第2ネジ孔部4hと、で構成されていて、ネジ挿入孔4dに取り付けネジ5の軸部5aを挿入すると、該軸部5aの外周面と、小径部側の第2ネジ孔部4hの内周面との間に段差bが発生し、ブッシュ4の内周側(ネジ挿入孔4d側)においても沿面距離を確保する。
【0025】
図1〜
図6においては、第1実施例の段部11が使用されている。第1実施例の段部11は、
図3,
図4に示すように、断面略直角三角形状に形成されていて、直角をなす一方の辺が、ブッシュ4の小径部4cの根元部分の外周面に連続し、直角をなす他方の辺が、ブッシュ4の大径部4bの表面に連続している。残りの一辺である傾斜辺の傾斜角度αは、何度であってもよいが、好ましくは、45°以下であることが望ましい。第1実施例の段部11は、取り付け時に、断面略直角三角形状に形成された段部11が、ブッシュの中心軸がブッシュの取り付け孔1aの中心軸からずれることを軽減する効果がある。さらに、傾斜角度αを45°以下にすると取り付け時にブッシュの中心軸が取り付け孔1aの中心軸からずれても、断面略三角形状の段部11が前記ずれを、取り付けネジ5の締め付け時に速やかに軽減する効果がある。
【0026】
次に、第1実施例の段部11の作用、効果を、
図5,
図6を参照して説明する。
図5,
図6は、第1実施例の段部11を使用した場合の最短絶縁距離時の断面図であり、
図5は最短の空間距離を、
図6は最短の沿面距離を示す。
【0027】
図5は、ブッシュ4が中心軸に対して垂直のどちらかに移動し、導電性素材からなる第1取り付け部1の取り付け孔1aの端面と、導電性素材からなる取り付けネジ5の端面との間の絶縁距離が最短となった場合の空間距離を太い実線で示し、
図6はその時の沿面距離を太い点線で示している。
【0028】
すなわち、取り付け孔1aの端面と取り付けネジ5の端面との間の最短距離が空間距離となるのに対して、沿面距離は、前記段差a及びbを設けたことにより、
沿面距離=c+(h−d)+t+h+b ・・・式(1−1)
空間距離=a+(h−A)+t+b ・・・式(1−2)
となる。
【0029】
なお、上記式(1−1)、(1−2)において、aはブッシュ4の小径部4cの外周面と取り付け孔1aの内周面の間の段差、bは取り付けネジ5の軸部5aの外周面と第2ネジ孔部4hの内周面の間の段差、cは傾斜辺の長さ、dは段部11の高さ、hは小径部4cの長さ、tはブッシュ4の小径部4cの肉厚、Aは第1取り付け部1の肉厚を示す。(
図5、
図6参照)
図7は、第2実施例の段部11を示す。第2実施例において、段部11は、断面矩形状に形成されている。第2実施例は、段部11を断面矩形状に形成し、段部11の垂直状の外周面を取り付け孔1aの内周面に面接触させることにより、沿面距離を確実に保持できるようにした。その他の構成は第1実施例の場合と同様である。
【0030】
図8,
図9は、第2実施例の断面矩形状の段部11を使用した場合の最短絶縁距離時の断面図であり、
図8は最短の空間距離を、
図9は最短の沿面距離を示す。
【0031】
図8は、ブッシュ4が中心軸に対して垂直のどちらかに移動し、導電性素材からなる制御機器側の取り付け部1の取り付け孔1aの端面と、導電性素材からなる取り付けネジ5の端面との間の絶縁距離が最短となった場合の空間距離を太い実線で示し、
図9はその時の沿面距離を太い点線で示している。
【0032】
すなわち、取り付け孔1aの端面と取り付けネジ5の端面との間の最短距離が空間距離となるのに対して、沿面距離は、矩形状の段部11を設けたことにより、
沿面距離=a+(h−e)+t+h+b ・・・式(2−1)
空間距離=a+(h−A)+t+b ・・・式(2−2)
となる。
【0033】
上記式(2−1)、(2−2)において、a,b,e,h,t,Aは、式(1−1)、(1−2)と同じであり、eは段部11の高さを示す。
【0034】
以上のことから第2実施例の段部11は、取り付け時に、矩形状の段部11が、ブッシュの中心軸が取り付け孔1aの中心軸からずれることを確実に軽減する効果がある。
【0035】
図10は、第3実施例の段部11を示す。第3実施例において、段部11は、矩形状部分11aと傾斜状部分11bを組み合わせた台形状に形成されていて、矩形状部分11aの外側面を取り付け孔1aの端面に面接触させることにより、沿面距離を確実に保持できるようにした。その他の構成は第1,第2実施例の場合と同様である。第3実施例の段部11は、第1実施例の傾斜状の段部の長所と、第2実施例の矩形状の段部の長所を合わせ持っている。
【0036】
図11,
図12は、第3実施例のテーパー状の段部11を使用した場合の最短絶縁距離時の断面図であり、
図11は最短の空間距離を、
図12は最短の沿面距離を示す。
【0037】
図11は、ブッシュ4が中心軸に対して垂直のどちらかに移動し、導電性素材からなる前記第1取り付け部1の取り付け孔1aの端面と、導電性素材からなる取り付けネジ5の端面との間の絶縁距離が最短となった場合の空間距離を太い実線で示し、
図12はその時の沿面距離を太い点線で示している。
【0038】
すなわち、取り付け孔1aの端面と取り付けネジ5の端面との間の最短距離が空間距離となるのに対して、沿面距離は、台形状の段部11を設けたことにより、
沿面距離=g+(h−f)+t+h+b ・・・式(3−1)
空間距離=a+(h−A)+t+b ・・・式(3−2)
となる。
【0039】
上記式(3−1)、(3−2)において、a,b,t,h,Aは、式(1−1)、(1−2)の場合と同じであり、fは段部11の高さ,gは傾斜辺の長さ、βは傾斜角度を示す。
【0040】
傾斜角度βは、何度であってもよいが、好ましくは、45°以下であることが望ましい。
【0041】
第3実施例の台形状の段部11は、取り付け時に、断面略台形状の形状に形成された段部11が、ブッシュの中心軸がブッシュの取り付け孔1aの中心軸からずれることを確実に軽減する効果がある。さらに、傾斜角度βを45°以下にすると取り付け時にブッシュの中心軸が取り付け孔1aの中心軸からずれても、断面略台形状の段部11が前記ずれを取り付けネジ5の締め付け時に速やかに、且つ確実に軽減する効果がある。
【0042】
なお、上記a,bの寸法は、耐電圧のレベル及び環境の汚染度により異なるが、実施例1〜3では、耐電圧のレベル及び環境の汚染度に合わせて0.25〜2.5mmになる。
【0043】
a,bは、JISC1010−1から汚染度1:0.25mm以上、汚染度2:1.0mm以上、汚染度4:2.5mm以上である。耐電圧のレベルに対しての絶縁距離は、一般的に空間距離で1mm/1000V、沿面距離1mm/500Vとなる。
【0044】
よって、汚染度に合わせて上記a,bを上記のような寸法にすれば、沿面距離を空間距離より大きく取れる。
【0045】
耐電圧が2000Vの時、汚染度を1とすると、a,bの寸法は、0.25mm以上あれば良いので、必要な沿面距離は、[c+(h−d)+t+h+b]で4mm以上、空間距離は少なくとも[a+(h−A)+t+b]で2mm以上になるように、c,d,t,h,Aの各寸法を決めればよいことになる。
【0046】
上記実施例においては、段部11により取り付け孔1aの内周面とブッシュ4の小径部4cの外周面との間に段差aを発生させ、且つ、ネジ挿入孔
4dを、取り付けネジ5の外径と略同径に形成された第1ネジ孔部4gと、第1ネジ孔部4gよりも大径に形成された第2ネジ孔部4hとで構成し、第2ネジ孔部4hの内周面と取り付けネジ5の軸部5aの外周面との間に段差bを発生させる構成にしたが、段差a,bのうちの何れか一方の段差を発生させる構成としてもよい。
【0047】
また、上記実施例においては、段部11を、ブッシュ4の大径部4bと小径部4cの成すコーナー部分に両者に跨るように形成した場合を示したが、大径部4b又は小径部4cの何れか一方に形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1……制御機器側の取り付け部(第1取り付け部)
2……収納枠側の取り付け部(第2取り付け部)
3……カラー
4……ブッシュ
4b…ブッシュの大径部
4c…ブッシュの小径部
4d…ネジ挿入孔
4g…第1ネジ孔部
4h…第2ネジ孔部
5……取り付けネジ
11…段部