特許第6119483号(P6119483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119483
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】パーソナルビークル
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20170417BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20170417BHJP
   B62D 11/04 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   A61G5/04 707
   B62D11/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-155563(P2013-155563)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-27185(P2015-27185A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 努
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260531(JP,A)
【文献】 特開2006−288121(JP,A)
【文献】 再公表特許第2008/081815(JP,A1)
【文献】 特開2010−193939(JP,A)
【文献】 特開2008−126916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/00−15/42
A61G 5/04
B62D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体の左右に設けられた左駆動輪及び右駆動輪と、前記車体の走行に関する指令信号を入力する操作部と、前記左駆動輪及び前記右駆動輪を独立して回転駆動する駆動部と、前記左駆動輪及び前記右駆動輪の実回転数を検出する回転数検出部と、前記指令信号ならびに前記左駆動輪及び前記右駆動輪の実回転数に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、を備えたパーソナルビークルであって、
前記車体のヨー軸周りの角速度であるヨー角速度を検出する車体角速度検出部と、前記車体及び乗員を含んだ総荷重の重心位置を検出する重心位置検出部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記指令信号に基づいて、前記車体が前記ヨー軸周りに回転する目標車体角速度、及び前記車体が直進する目標直進速度を設定する指令値設定手段と、
前記目標車体角速度と前記ヨー角速度との差分を用いた所定の制御則に基づいて前記目標車体角速度を補正するフィードバック補正手段と、
前記左駆動輪及び前記右駆動輪と前記重心位置との位置関係に基づいて前記目標車体角速度を補正するフィードフォワード補正手段と、
前記フィードバック補正手段及び前記フィードフォワード補正手段によって補正された後の目標車体角速度ならびに前記目標直進速度に基づいて前記左駆動輪及び前記右駆動輪の目標回転数を演算する目標演算手段と、
前記左駆動輪及び前記右駆動輪の目標回転数ならびに前記左駆動輪及び前記右駆動輪の実回転数に基づいて前記駆動部の駆動力を制御する駆動制御手段と、を有するパーソナルビークル。
【請求項2】
前記重心位置検出部は、
少なくとも前記左駆動輪及び前記右駆動輪を含む複数の車輪が前記総荷重を分担する荷重値をそれぞれ検出する複数の荷重検出部と、
各前記荷重検出部が検出した荷重値に基づいて、前記車体の左右方向及び前後方向のうち少なくとも一方向の重心位置を演算する重心位置演算手段と、を有する請求項1に記載のパーソナルビークル。
【請求項3】
前記フィードフォワード補正手段は、前記重心位置に応じて前記左駆動輪と前記右駆動輪とに配分される前記総荷重の左右配分比、前記左駆動輪及び前記右駆動輪の車軸と前記重心位置との前後方向距離、ならびに前記左駆動輪及び前記右駆動輪の各荷重値から求められる前記左駆動輪及び前記右駆動輪の有効半径の少なくとも一つを用いて前記目標車体角速度を補正する請求項1または2に記載のパーソナルビークル。
【請求項4】
前記車体がロール軸周りに回転して傾斜したときのロール角を検出するロール角検出部をさらに備え、
前記フィードフォワード補正手段は、前記ロール角及び前記前後方向距離を用いて前記目標車体角速度を補正する請求項3に記載のパーソナルビークル。
【請求項5】
前記フィードフォワード補正手段は、前記目標車体角速度を補正する補正量を制限する値制限部を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のパーソナルビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車いすなどのパーソナルビークルに関し、より詳細には、カント走行時の片流れを軽減したパーソナルビークルに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車いすなどのパーソナルビークルが傾斜している路面を横切る方向に直進走行(カント走行)する際に、路面の傾斜がきつく車体のロール角(左右方向の傾斜角)が大きいと片流れの問題が生じやすい。すなわち、直進走行するように乗員が操作部を操作しているにもかかわらず、車体が谷側(傾斜下側)に向かって進む片流れが発生しがちであり、またパーソナルビークルの直進走行性が損なわれがちになる。片流れや直進走行性低下の要因として、左右の駆動輪が分担する荷重の不均衡と、旋回モーメントの発生の2点が考えられる。
【0003】
乗員の着座姿勢に依存して左右の駆動輪が分担する荷重が不均衡になると、大きな荷重を分担している側の駆動輪で走行トルクを大きくしておかないと、左右の車軸角速度に違いが生じて、パーソナルビークルは直進走行できない。さらに、大きな荷重を分担している側の駆動輪ではタイヤの圧縮変形が顕著になって、他側よりも有効半径が小さくなる。すると、左右の駆動輪の車軸角速度が等しくとも、左右で走行速度が等しくならず、パーソナルビークルは直進走行できない。さらに、パーソナルビークルが走行を開始するときに、左右の駆動輪の荷重の不均衡に対して発進トルクの比率が適正でないと、一方の駆動輪が先に回転し始めて、指令された方向とは違う方向にパーソナルビークルが発進する。
【0004】
上記した荷重の不均衡は、カント走行時に顕著に発生することが多い。つまり、谷側(傾斜下側)の駆動輪が大きな荷重を分担して、パーソナルビークルの発進方向が傾斜路面を横切る方向から谷側に向かう方向へ片流れしがちになる。さらに、発進後も直進走行できず、パーソナルビークルの進行方向が傾斜を下る方向に漸近してゆくおそれまで生じる。
【0005】
また、カント走行時に、左右の駆動輪の回転中心を結ぶ車軸に対して車体及び乗員を含んだ総荷重の重心が前後方向に偏移していると、旋回モーメントが発生する。例えば、車軸に対して重心が前側に偏移していると、重心に作用する荷重(重力)を傾斜路面に垂直な成分と傾斜下側に向かう成分とに分解して考えた場合に、傾斜下側に向かう成分は車軸を谷側に旋回させる旋回モーメントを発生させる。この旋回モーメントは、重心と車軸との前後方向距離に概ね比例して変化する。したがって、旋回モーメントにより、パーソナルビークルの進行方向は、谷側(傾斜下側)に向かいがちになる。
【0006】
本願出願人は、上記したカント走行時の片流れの問題を軽減したパーソナルビークル制御装置を特許文献1に開示している。特許文献1のパーソナルビークル制御装置は、パーソナルビークルがカント走行するにあたり、パーソナルビークルのロール角が大きい場合であっても、操作部が直進するように操作されている限り車体のずり落ちが抑制され、パーソナルビークルの直進走行性が確保されるように制御する制御部を備えている。具体的に、特許文献1では、車体のロール角及びヨー角に関する物理量を検知するためのセンサを備える。そして、制御部は検知されたロール角をもとにしたフィードフォワード項で目標車体角速度指令値を補正して左右の駆動輪にトルク差を与える。これにより、カント走行開始時の車体の片流れを軽減することができる。つまり、上記した2点の要因に対して、ロール角をもとにしたフィードフォワード制御で対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−193939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の技術で、車体のロール角に応じて予め目標車体角速度をフィードフォワード補正している。しかしながら、乗員の体重の軽重の影響や総荷重の重心位置の変化の影響を考慮したソフトウェアや実機の微調整が必要となり、そのためのコストアップやロール角及びヨー角を検知するセンサとして複数のセンサ、例えば加速度センサ及びジャイロセンサを併用することによる部品構成の複雑化、及び部品コストのアップが課題となっている。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、カント走行時の片流れを軽減して直進走行性を向上したコスト低廉なパーソナルビークルを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明のパーソナルビークルは、車体と、前記車体の左右に設けられた左駆動輪及び右駆動輪と、前記車体の走行に関する指令信号を入力する操作部と、前記左駆動輪及び前記右駆動輪を独立して回転駆動する駆動部と、前記左駆動輪及び前記右駆動輪の実回転数を検出する回転数検出部と、前記指令信号ならびに前記左駆動輪及び前記右駆動輪の実回転数に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、を備えたパーソナルビークルであって、前記車体のヨー軸周りの角速度であるヨー角速度を検出する車体角速度検出部と、前記車体及び乗員を含んだ総荷重の重心位置を検出する重心位置検出部と、をさらに備え、前記制御部は、前記指令信号に基づいて、前記車体が前記ヨー軸周りに回転する目標車体角速度、及び前記車体が直進する目標直進速度を設定する指令値設定手段と、前記目標車体角速度と前記ヨー角速度との差分を用いた所定の制御則に基づいて前記目標車体角速度を補正するフィードバック補正手段と、前記左駆動輪及び前記右駆動輪と前記重心位置との位置関係に基づいて前記目標車体角速度を補正するフィードフォワード補正手段と、前記フィードバック補正手段及び前記フィードフォワード補正手段によって補正された後の目標車体角速度ならびに前記目標直進速度に基づいて前記左駆動輪及び前記右駆動輪の目標回転数を演算する目標演算手段と、前記左駆動輪及び前記右駆動輪の目標回転数ならびに前記左駆動輪及び前記右駆動輪の実回転数に基づいて前記駆動部の駆動力を制御する駆動制御手段と、を有する。
【0011】
上記したうちのヨー角速度と目標車体角速度とは、同じ次元を有する量である。本明細書では、検出されたヨー角速度と制御目標にする目標車体角速度とで用語を使い分けることにより明瞭化を図っている。ヨー角速度は、検出車体角速度と言い換えてもよい。
【0012】
さらに、前記重心位置検出部は、少なくとも前記左駆動輪及び前記右駆動輪を含む複数の車輪が前記総荷重を分担する荷重値をそれぞれ検出する複数の荷重検出部と、各前記荷重検出部が検出した荷重値に基づいて、前記車体の左右方向及び前後方向のうち少なくとも一方向の重心位置を演算する重心位置演算手段と、を有してもよい。
【0013】
さらに、前記フィードフォワード補正手段は、前記重心位置に応じて前記左駆動輪と前記右駆動輪とに配分される前記総荷重の左右配分比、前記左駆動輪及び前記右駆動輪の車軸と前記重心位置との前後方向距離、ならびに前記左駆動輪及び前記右駆動輪の各荷重値から求められる前記左駆動輪及び前記右駆動輪の有効半径の少なくとも一つを用いて前記目標車体角速度を補正することが好ましい。
【0014】
さらに、前記車体がロール軸周りに回転して傾斜したときのロール角を検出するロール角検出部をさらに備え、前記フィードフォワード補正手段は、前記ロール角及び前記前後方向距離を用いて前記目標車体角速度を補正することが好ましい。
【0015】
さらに、前記フィードフォワード補正手段は、前記目標車体角速度を補正する補正量を制限する値制限部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、総荷重の重心位置を検出し、左駆動輪及び右駆動輪と重心位置との位置関係に基づいて目標車体角速度をフィードフォワード補正し、最終的に左駆動輪及び右駆動輪を独立して回転駆動する駆動部の駆動力を制御する。ここで、重心位置を検出してフィードフォワード補正に用いるので、乗員の着座姿勢の変化によって引き起こされる重心移動を考慮した補正を行える。したがって、特許文献1のロール角のみを用いて乗員の着座姿勢の変化を考慮しないフィードフォワード補正と比較すると個別の実機による調整を減らした上で補正精度を向上させ、カント走行時の片流れを軽減して直進走行性を向上できる。
【0017】
さらに、重心位置検出部が荷重検出部及び重心位置演算手段をする態様では、各車輪の荷重値に基づいて重心位置を高精度に演算できる。したがって、片流れの軽減及び直進走行性の向上の効果が顕著になる。
【0018】
さらに、フィードフォワード補正手段が左右配分比、前後方向距離、ならびに左駆動輪及び右駆動輪の有効半径の少なくとも一つを用いて目標車体角速度を補正する態様では、用いる項目ごとに次のような作用が発生する。すなわち、左右配分比を用いることにより、乗員の着座姿勢の変化によって引き起こされる重心位置の左右方向の移動を補正制御に反映することができる。また、前後方向距離を用いることにより、重心位置の前後方向の移動を補正制御に反映することができる。さらに、左駆動輪及び右駆動輪の有効半径を用いることにより、乗員の体重の軽重や左右配分比の変化に起因する有効半径の変化を補正制御に反映することができる。これらの作用は相加的に発揮され、片流れの軽減及び直進走行性の向上の効果が顕著になる。
【0019】
さらに、フィードフォワード補正手段がロール角及び前後方向距離を用いて目標車体角速度を補正する態様では、旋回モーメントの変化を補正制御に反映することができる。したがって、荷重の左右配分比に対する補正と旋回モーメントの変化に対する補正とを併用でき、片流れの軽減及び直進走行性の向上の効果がさらに一層顕著になる。
【0020】
さらに、フィードフォワード補正手段が目標車体角速度を補正する補正量を制限する値制限部を有する態様では、路面の起伏や乗員の急激な姿勢変化などに起因して重心位置が急峻に変化しても、補正量が制限される。したがって、車体の挙動が急激に変化するおそれはなく、走行制御の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態のパーソナルビークルである電動車いすの全体構成を示す背面図である。
図2】電動車いすの駆動系及び制御系の構成を説明する構成ブロック図である。
図3】電動車いすの走行制御を行う制御部の制御ブロック図である。
図4】電動車いすの走行制御を行う制御部のうちの角速度補正部の詳細ブロック図である。
図5】制御部の走行制御の演算処理フローを示したフローチャートである。
図6】電動車いすで左右の駆動輪が分担する荷重の左右配分比を演算する方法を模式的に説明する平面図である。
図7】第2実施形態の電動車いすの駆動系及び制御系の構成を説明する構成ブロック図である。
図8】第2実施形態の電動車いすの走行制御を行う制御部のうちの角速度補正部の詳細ブロック図である。
図9】傾斜路面を横切る方向にカント走行する電動車いすの状況を例示した背面図である。
図10図9に示されるようにカント走行する電動車いすの総荷重の左右配分比、及び旋回モーメントを模式的に説明する平面図である。
図11】ウィリー走行しながらカント走行する電動車いすの総荷重の左右配分比、及び旋回モーメントを模式的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1実施形態のパーソナルビークルについて、図1図6を参考にして説明する。第1実施形態のパーソナルビークルは電動車いす1であり、まず、その全体構成について説明する。図1は、第1実施形態のパーソナルビークルである電動車いす1の全体構成を示す背面図である。電動車いす1は、車体2、左駆動輪3L及び右駆動輪3R、操作ユニット4、左駆動ユニット5L及び右駆動ユニット5R、ならびに左荷重センサ81L及び右荷重センサ81Rなどで構成されている。
【0023】
車体2は、左右対称形状をしている。車体2は、左側面部21L及び右側面部21R、着座部22A、背もたれ部22B、左アームレスト23L及び右アームレスト23R、左フットレスト24L及び右フットレスト24R、ならびに左転倒防止バー25L及び右転倒防止バー25Rなどからなる。左側面部21L及び右側面部21Rは、離隔平行して垂直に配置され、X字状に交差する2本の結合部材211、212によって結合されている。着座部22Aは、左側面部21L及び右側面部21Rの略中間高さ位置に配設されて、左側面部21Lから右側面部21Rまで概ね水平に架け渡されている。背もたれ部22Bは、着座部22Aの後縁から上方に延在して、左側面部21Lから右側面部21Rまで架け渡されている。背もたれ部22Bの後ろ側には、走行用電源及び制御用電源を兼ねるバッテリ29が2分割されて配設されている。
【0024】
左側面部21L及び右側面部21Rの上端後部から後方に延出するように、左ハンドル部27L及び右ハンドル部27Rが配設されている。左アームレスト23L及び右アームレスト23Rは、左側面部21L及び右側面部21Rの上方寄りの外側から左右両側に略水平に張り出すように配設されている。左フットレスト24L及び右フットレスト24Rは、左側面部21L及び右側面部21Rの下方寄りの内側から前方に延出するように配設されている。
【0025】
左転倒防止バー25L及び右転倒防止バー25Rは、左側面部21L及び右側面部21Rの下端から後方に延出するように配設されている。左転倒防止バー25Lの後端には左後輪26Lが設けられ、右転倒防止バー25Rの後端には右後輪26Rが設けられている。左側面部21L及び右側面部21Rの外側の下方の後方寄りに、左駆動輪3L及び右駆動輪3Rが設けられている。左駆動輪3Lの車軸は左側面部21Lによって回転可能に軸承され、右駆動輪3Rの車軸は右側面部21Rによって回転可能に軸承されている。左駆動輪3L及び右駆動輪3Rの着地点の間隔はトレッドTである。左側面部21L及び右側面部21Rの外側の下方の前方寄りに、図1には見えない左前輪28L(図6参照)及び右前輪28R(図6参照)が回転可能に設けられている。
【0026】
図1には見えない左荷重センサ81L(図2参照)は、左駆動輪3Lの車軸と左側面部21Lとの間に設けられている。左荷重センサ81Lは、左駆動輪3Lが分担する左荷重FLを検出するものであり、本発明の荷重検出部に相当する。同様に、右荷重センサ81R(図2参照)は、右駆動輪3Rの車軸と右側面部21Rとの間に設けられている。右荷重センサ81Rは、右駆動輪3Rが分担する右荷重FRを検出するものであり、本発明の荷重検出部に相当する。
【0027】
右アームレスト23Rの上面の前方寄りに、概ね直方体形状の操作ユニット4が配設されている。操作ユニット4は、その上面から突出したジョイスティック41を有している。左側面部21L及び右側面部21Rの後ろ側の着座部22Aよりも少し低い位置に、概ね直方体形状の左駆動ユニット5L及び右駆動ユニット5Rが配設されている。左駆動ユニット5Lは左駆動輪3Lの車軸に臨んでおり、右駆動ユニット5Lは右駆動輪3Rの車軸に臨んでいる。
【0028】
乗員は、着座部22Aに着座して背もたれ部22Bにもたれかかり、左アームレスト23L及び右アームレスト23Rに足を載せて電動車いす1に乗ることができる。さらに乗員は、右手を右アームレスト23Rに載せてジョイスティック41を操作することができる。また、介護者は、左ハンドル部27L及び右ハンドル部27Rを押動操作して、電動車いす1を移動させることができる。
【0029】
乗員が通常の姿勢で乗車したとき、車体2及び乗員を含んだ総荷重Ftotの重心位置Gは、左駆動輪3L、右駆動輪3R、左前輪28L、及び右前輪28Rの各着地点を結んだ矩形の内部に位置する。電動車いす1の通常の走行では、左駆動輪3L、右駆動輪3R、左前輪28L、及び右前輪28Rで総荷重Ftotが分担され、左後輪26L及び右後輪26Rは着地されない。左後輪26L及び右後輪26Rは、路面に凹凸があるときや、重心位置Gが後方に極端に偏移したときに着地して、車体2の後方への転倒を防止する。また、車輪径に関して、左駆動輪3L及び右駆動輪3Rの有効半径Reが最も大きく、左後輪26L及び右後輪26Rの有効半径が最も小さく、左前輪28L及び右前輪28Rの有効半径は中間的な大きさである。なお、対応する左右の車輪の有効半径は、互いに等しいものとして扱う。
【0030】
次に、電動車いす1の駆動系及び制御系の構成について説明する。図2は、電動車いす1の駆動系及び制御系の構成を説明する構成ブロック図である。図示されるように、駆動系及び制御系は、操作ユニット4、左駆動ユニット5L、及び右駆動ユニット5Rで構成されている。左駆動ユニット5Lは主に左駆動輪3Lの駆動及び制御に係わり、右駆動ユニット5Lは主に右駆動輪3Rの駆動及び制御に係わっている。操作ユニット4は、乗員からの指令信号S1を受け取り必要な情報を表示するマンマシンインターフェース機能を備え、指令信号S1に対する演算処理機能を備え、さらに、左駆動ユニット5L及び右駆動ユニット5Rを協調作動させるメインコントロール機能を備えている。
【0031】
操作ユニット4は、前述したジョイスティック41及びメインコントローラ42からなる。ジョイスティック41は、乗員の操作によって任意の方向に傾動する。ジョイスティック41は、乗員の操作を指令信号S1に変換してメインコントローラ42の操作制御部43に入力する。ジョイスティック41が傾動する方向は電動車いす1の進行方向を指令し、傾動角度は走行速度を指令する。つまり、傾動角度が大きいほど電動車いす1は高速で走行する。ジョイスティック41は、車体2の走行に関する指令信号S1を入力する本発明の操作部に相当する。
【0032】
メインコントローラ42は、操作制御部43、操作通信部44、スイッチ45、表示部46、及び操作電源部47で構成されている。スイッチ45は、乗員が操作して速度レンジを設定する部位である。速度レンジは、例えば第1〜第5速度レンジとして、各速度レンジで異なる上限速度に規制することができる。具体的に、例えば、第1速度レンジではジョイスティック41の傾動角度を最大にしたときに時速1kmで走行し、第5速度レンジではジョイスティック41の傾動角度を最大にしたときに時速6kmで走行するように設定できる。表示部46は、設定されている速度レンジや、バッテリ29の蓄電状況などを乗員に向けて表示する。表示する情報は、上記に限定されず、例えば、現在の走行速度をバーグラフで表示してもよい。
【0033】
操作制御部43は、ジョイスティック41からの指令信号S1を受け取り、スイッチ45から速度レンジの設定信号を受け取り、表示部46に表示内容を指令する。また、操作制御部43は、指令信号S1に対する演算処理を行う。操作通信部44は、操作制御部43と他装置とを双方向通信可能に接続して、情報を授受できるようにしている。操作電源部47は、バッテリ29から電源供給を受け、電源電圧を安定化してメインコントローラ42内の各部43〜46に電源供給する。メインコントローラ42には、例えば、CPU、メモリ、及び入出力部を有してソフトウェアで作動する電子制御装置を用いることができる。
【0034】
左駆動ユニット5Lは、左モータ51L、左回転数センサ52L、及び左コントローラ53Lからなる。左モータ51Lは、その出力軸が左駆動輪3Lの車軸に回転連結されており、左駆動輪3Lを回転駆動する。左モータ51Lの種類に特別な制約はないが、正転及び逆転の両方向に回転できることが好ましい。左回転数センサ52Lは、左駆動輪3Lの車軸の近傍に配設されており、左駆動輪3Lの実回転数NLを検出し、左回転数信号に変換して出力する。
【0035】
左コントローラ53Lは、左制御部54L、左通信部55L、左角速度センサ56L、左モータ駆動部57L、及び左電源部58Lで構成されている。左角速度センサ56Lは、車体2のヨー軸周りの角速度であるヨー角速度ωYを検出し、左角速度信号に変換して出力する。左角速度センサ56Lとして、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨー角速度ωYが正値のときに車体2は右旋回しており、ヨー角速度ωYが負値のときに車体2は左旋回している。左モータ駆動部57Lは、左制御部54Lからの左駆動信号に基づいて、左モータ51Lに印加する左駆動電圧VLを調整する。また、左モータ駆動部57Lは、左モータ51Lに流れる左駆動電流を左電流信号に変換して出力する。
【0036】
左制御部54Lは、左回転数センサ52Lから左回転数信号を受け取り、左角速度センサ56Lから左角速度信号を受け取り、左モータ駆動部57Lから左電流信号を受け取る。さらに、左制御部54Lは、左荷重センサ81Lから左荷重FLに対応する左荷重信号を受け取る。そして、左制御部54Lは、主に左駆動輪3Lの駆動及び制御に係わる演算処理を行い、左モータ駆動部57Lに左駆動信号を指令する。
【0037】
左通信部55Lは、左制御部54と他装置とを双方向通信可能に接続して、情報を授受できるようにしている。左電源部58Lは、バッテリ29から電源供給を受け、電源電圧を安定化して左コントローラ53L内の各部54L〜57Lに電源供給し、さらに前記の左駆動電圧VLを供給する。左コントローラ53Lには、例えば、CPU、メモリ、及び入出力部を有してソフトウェアで作動する電子制御装置を用いることができる。
【0038】
右駆動ユニット5Rの構成は、左駆動ユニット5Lと同様であり、名称に付された左を右に読み替え、符号に付されたLをRに読み替えて理解できる。略述すると、右駆動ユニット5Rは、右モータ51R、右回転数センサ52R、及び右コントローラ53Rからなる。右コントローラ53Rは、右制御部54R、右通信部55R、右角速度センサ56R、右モータ駆動部57R、及び右電源部58Rで構成されている。また、右駆動ユニット5Rの機能も左駆動ユニット5Lと同様であるので、説明は省略する。
【0039】
ここで、左モータ駆動部57L及び右モータ駆動部57Rは、独立して左及び右駆動電圧VL、VRを調整することができるので、左駆動輪3L及び右駆動輪3Rを独立して回転駆動する本発明の駆動部に相当する。また、左回転数センサ52L及び右回転数センサ52Rは、本発明の回転数検出部に相当する。
【0040】
さらに、操作制御部43、左制御部54L、及び右制御部54Rは、それぞれの通信部44、55L、55Rで双方向通信可能に接続されて、情報を授受できるようになっている。そして、3つの制御部43、54L、54Rは、協動して電動車いす1の走行を制御する。したがって、操作制御部43、左制御部54L、及び右制御部54Rは、指令信号S1ならびに左駆動輪3L及び右駆動輪3Rの実回転数NL、NRに基づいて駆動部を制御する本発明の制御部を構成する。制御部の構成は上述に限定されず、例えば1つのコントローラで集中制御する構成であってもよい。3つの制御部43、54L、54Rの機能分担に制約は無いので、以降では単に制御部の機能として説明する。
【0041】
また、左角速度センサ56L及び右角速度センサ56Rは、ともに車体2のヨー角速度ωYを検出して左角速度信号及び右角速度信号を出力するので、本発明の車体角速度検出部に相当する。左角速度信号及び右角速度信号は、本来等しくなるが別々の量と考えて、左制御部54Lで左回転数信号を受け取り、右制御部54Rで右回転数信号を受け取るように構成できる。これに限定されず、左角速度センサ56L及び右角速度センサ56Rは、一方を常用とし、他方を予備とすることができる。また、左角速度センサ56Lの左角速度信号と右角速度センサ56Rの右角速度信号とを平均化してヨー角速度ωYを求めるようにしてもよい。さらには、左角速度センサ56L及び右角速度センサ56Rの一方を無くすことも可能である。
【0042】
次に、電動車いす1の走行制御の方法について説明する。図3は、電動車いす1の走行制御を行う制御部の制御ブロック図である。図示されるように、制御部は、目標速度及び角速度演算部61、ならびに目標出力演算部62を有している。また、目標速度及び角速度演算部61は、角速度補正部63を内包している。制御部は、ジョイスティック41からの指令信号S1を入力とし、検出された左荷重FL及び右荷重FRをフィードフォワード入力としている。さらに、制御部は、検出された車体2のヨー角速度ωY、及び検出された左及び右駆動輪3L、3Rの実回転数NL、NRをフィードバック入力としている。そして、制御部は、最終的に左駆動電圧VLを左駆動信号の形態で出力し、右駆動電圧VRを右駆動信号の形態で出力する。
【0043】
目標速度及び角速度演算部61は、指令信号S1に基づいて、車体2が直進する目標直進速度V1及び、車体2がヨー軸周りに回転する目標車体角速度ω1を設定する。ジョイスティック41の傾動方向が前側180°の範囲にあると目標直進速度V1は正値となり、傾動方向が後側180°の範囲にあると目標直進速度V1は負値となる。また、ジョイスティック41の傾動方向が左側180°の範囲にあると目標車体角速度ω1は正値となり、傾動方向が右側180°の範囲にあると目標車体角速度ω1は負値となる。目標直進速度V1及び目標車体角速度ω1を設定する機能は、本発明の指令値設定手段に相当する。
【0044】
角速度補正部63は、目標車体角速度ω1、ヨー角速度ωY、ならびに左荷重FL及び右荷重FRを入力としてフィードフォワード及びフィードバック補正演算を行い、補正後の目標車体角速度ω2を求める。角速度補正部63の詳細な内部構成については後述する。
【0045】
目標出力演算部62は、まず、補正後の目標車体角速度ω2と目標直進速度V1とに基づいて左及び右駆動輪3L、3Rの目標回転数を演算する。この演算機能は、本発明の目標演算手段に相当する。目標出力演算部62は、次に、左及び右駆動輪3L、3Rの目標回転数と実回転数NL、NRに基づいて、左及び右駆動電圧VL、VRを演算する。目標出力演算部62は、左駆動電圧VLを左駆動信号の形態で左モータ駆動部57Lに出力し、右駆動電圧VRを右駆動信号の形態で右モータ駆動部57Rに出力する。これにより、左及び右モータ51L、51Rに印加される実際の駆動電圧が制御される。この制御機能は、本発明の駆動制御手段に相当する。
【0046】
次に、角速度補正部63の詳細について説明する。図4は、電動車いす1の走行制御を行う制御部のうちの角速度補正部63の詳細ブロック図である。角速度補正部63は、フィードバック補正演算部71、荷重補正演算部72、及び出力演算部73からなる。
【0047】
フィードバック補正演算部71は、比例制御を行うものである。フィードバック補正演算部71は、減算器711、差分制限部712、及び比例項乗算器713で構成されている。減算器711は、目標車体角速度ω1とヨー角速度ωYとの差分Δωを演算する。このとき、目標直進速度V1が正値である前進時には目標車体角速度ω1からヨー角速度ωYを減算し、逆に、目標直進速度V1が負値である後進時にはヨー角速度ωYから目標車体角速度ω1を減算する。次に、差分制限部712は、差分Δωが所定の制限値(正負の2値あり)を超過している場合に限り、差分Δωを制限値に補正する。値制限部712を通った後の差分Δωは、比例項乗算器713に出力される。比例項乗算器713は、差分Δωに比例項定数Kpを乗算して比例項ωpとし、出力演算部73に出力する。フィードバック補正演算部71は、本発明のフィードバック補正手段に相当する。
【0048】
荷重補正演算部72は、荷重項演算器721、変化量制限部722、絶対値制限部723、及び荷重項乗算器724で構成されている。荷重項演算器721は、左右の駆動輪3L、3Rが分担する荷重の配分の比率、すなわち左右配分比RFを次式(1)により求め、変化量制限部722に出力する。
左右配分比RF=(右駆動輪3Rの荷重)/(左駆動輪3Lの荷重)
= FR/FL…………………………………………………(1)
【0049】
変化量制限部722は、左右配分比RFの前回値からの変化量が所定の制限変化量(正負の2値あり)を超過している場合に限り、変化量を制限変化量に制限して左右配分比RFの今回値を求める。絶対値制限部723は、左右配分比RFの今回値が所定の制限値(正負の2値あり)を超過している場合に限り、左右配分比RFを制限値に補正する。荷重項乗算器724は、変化量制限部722及び絶対値制限部723を通った後の左右配分比RFに荷重項定数KFを乗算して荷重項ωFとし、出力演算部73に出力する。荷重補正演算部72は、本発明のフィードフォワード補正手段に相当する。また、変化量制限部722及び絶対値制限部723は、本発明の値制限部に相当する。
【0050】
出力演算部73の加算器731は、比例項ωpと荷重項ωFとを加算して補正項ωaddとする。出力演算部73の演算器732は、加算器または減算器として作動する。すなわち、目標直進速度V1が正値である前進時に、演算器732は、元の目標車体角速度ω1に補正項ωaddを加算して補正後の目標車体角速度ω2とする。また、目標直進速度V1が負値である後進時に、演算器732は、元の目標車体角速度ω1から補正項ωaddを減算して補正後の目標車体角速度ω2とする。補正後の目標車体角速度ω2は、図3に示されるように、目標出力演算部62に出力される。
【0051】
次に、制御部の走行制御の演算処理フローについて説明する。図5は、制御部の走行制御の演算処理フローを示したフローチャートである。図5のステップS1で、制御部は、ジョイスティック41からの指令信号S1、ならびに、左荷重FL及び右荷重FR及びヨー角速度ωYの検出信号を読み込む。次に、制御部は、ステップS2でヨー角速度ωYを算出する。また、ステップS3で、直進速度演算部61により目標直進速度V1を設定し、角速度演算部62で目標車体角速度ω1を設定する。さらに、ステップS4で、フィードバック補正演算部71により角速度の差分Δωを演算する。
【0052】
そして、ステップS5で、差分Δωが一定値以上か否か判定する。差分Δωが一定値未満である場合には、直ちに演算処理フローを終了する。これは、電動車いす1が概ね定常走行していて、左右の駆動電圧VL、VRを変更する必要がないことを意味する。
【0053】
差分Δωが一定値以上の場合には、ステップS6に進み、荷重補正演算部72により荷重項ωFを演算する。次にステップS7で、出力演算部73により補正後の目標車体角速度ω2を演算する。さらに、ステップS8で、目標出力演算部62により左右の目標回転数N1L、N1Rを演算する。次にステップS9で、目標出力演算部62により左駆動電圧VL及び右駆動電圧VRを演算する。これにより、左右のモータ駆動部57L、57Rから左右のモータ51L、51Rに印加される実際の駆動電圧が制御され、電動車いす1が走行する。
【0054】
次に上述のように構成された第1実施形態の電動車いす1の作用及び効果について説明する。図6は、電動車いす1で左右の駆動輪3L、3Rが分担する荷重の左右配分比RFを演算する方法を模式的に説明する平面図である。図6で、○印に×印を重ねた符号は、荷重を示している(図10及び図11でも同様)。また、図6は、電動車いす1に乗員が乗り、左駆動輪3L、右駆動輪3R、左前輪28L、及び右前輪28Rが着地した状態を示している。そして、左駆動輪3Lが分担している荷重FLと、右駆動輪3Rが分担している荷重FRとが検出されている、この2量に基づいて、車体2及び乗員を含んだ総荷重Ftotの重心位置Gの左右方向の配置を演算により求めることができる。すなわち、重心位置Gと左駆動輪3Lとの左側距離T1、ならびに重心位置Gと右駆動輪3Rとの右側距離T2を次式(2)(3)により求めることができる。
左側距離T1=FR・T/(FL+FR)……………………………………(2)
右側距離T2=FL・T/(FL+FR)……………………………………(3)
【0055】
さらに、荷重の左右配分比RFは、左側距離T1及び右側距離T2の逆比で求められることから、次式(4)で表される。
左右配分比RF=左側距離T1/右側距離T2………………………………(4)
式(4)に式(2)及び式(3)を代入すると、当然ながら式(1)に一致する。
【0056】
つまり、本第1実施形態では、重心位置Gの左右方向の配置を実際には求めることなく、式(1)で直接的に左右配分比RFを演算できる。しかしながら、左及び右荷重センサ81L、81R以外の手段で重心位置Gを検出する態様では、式(4)を用いて左右配分比RFを演算する必要がある。したがって、制御部は、たとえ左側距離T1及び右側距離T2を明示的に演算せずとも、間接的に左側距離T1及び右側距離T2を用いており、本発明の重心位置演算手段を含んでいる。さらに、制御部と左及び右荷重センサ81L、81Rとの組み合わせは、本発明の重心位置検出部に相当する。
【0057】
第1実施形態の電動車いす1では、総荷重Ftotの重心位置Gを検出して左駆動輪3L及び右駆動輪3Rと重心位置Gとの位置関係に基づくことと同等の機能を用いて目標車体角速度ω1をフィードフォワード補正し、最終的に左駆動輪3L及び右駆動輪3Rを独立して回転駆動する駆動部の駆動力(左及び右駆動電圧VL、VR)を制御する。ここで、重心位置Gを検出することと同等の機能でフィードフォワード補正を行うので、乗員の着座姿勢の変化によって引き起こされる重心移動を考慮した補正を行える。したがって、特許文献1のロール角のみを用いて乗員の着座姿勢の変化を考慮しないフィードフォワード補正と比較すると補正精度が向上し、カント走行時の片流れを軽減して直進走行性を向上できる。
【0058】
さらに、重心位置検出部が左及び右荷重センサ81L、81Rならびに制御部の演算機能で実現されており、各駆動輪3L、3Rの荷重値FL、FRに基づいて重心位置G及び左右配分比RFを高精度に演算できる。そして、フィードフォワード補正手段を具体化した荷重補正演算部72では、左右配分比RFを用いて目標車体角速度ω1を補正する。したがって、乗員の着座姿勢の変化によって引き起こされる重心位置Gの左右方向の移動を補正制御に反映することができる。これにより、片流れの軽減及び直進走行性の向上の効果が顕著になる。
【0059】
さらに、荷重補正演算部72は、目標車体角速度ω1を補正する補正量を制限する変化量制限部722及び絶対値制限部723を有している。このため、路面の起伏や乗員の急激な姿勢変化などに起因して重心位置Gが急峻に変化しても、荷重項ωFの補正量が制限される。したがって、車体2の挙動が急激に変化するおそれはなく、走行制御の安定性が向上する。
【0060】
次に、第2実施形態の電動車いす1について、第1実施形態と異なる点を主に説明し、同じ点については同じ符号を用いて説明を省略する。図7は、第2実施形態の電動車いす1の駆動系及び制御系の構成を説明する構成ブロック図である。第2実施形態の電動車いす1の全体構成(図1参照)は、第1実施形態と同じである。図7図2を比較すれば分かるように、第2実施形態では、4個の荷重センサ82L、82R、83L、83R、及び2個のロール角センサ59L、59Rが追加されている。
【0061】
詳述すると、左前輪28Lと車体2の間に左前荷重センサ82Lが設けられ、右前輪28Rと車体2の間に右前荷重センサ82Rが設けられている。さらに、左後輪26Lと車体2の間に左後荷重センサ83Lが設けられ、右後輪26と車体2の間に右後荷重センサ83Rが設けられている。各荷重センサ82L、82R、83L、83Rは、各車輪28L、28R、26L、26Rが分担する左前荷重FLf、右前荷重FRf、左後荷重FLr、及び右後荷重FRrを検出するものであり、本発明の荷重検出部に相当する。左前荷重センサ82L及び左後荷重センサ83Lの検出信号は左制御部54Lに出力され、右前荷重センサ82R及び右後荷重センサ83Rの検出信号は右制御部54Rに出力されている。
【0062】
また、左駆動ユニット5Lの左コントローラ53Lの内部に、左ロール角センサ59Lが設けられている。左ロール角センサ59Lは、車体2がロール軸周りに回転して傾斜し
たときのロール角θを検出し、左ロール角信号に変換して出力する。同様に、右駆動ユニット5Rの右コントローラ53Rの内部に、右ロール角センサ59Rが設けられている。右ロール角センサ59Rも、車体2がロール軸周りに回転して傾斜したときのロール角θを検出し、右ロール角信号に変換して出力する。左ロール角センサ59L及び右ロール角センサ59Rは、本発明のロール角検出部に相当する。
【0063】
左ロール角信号及び右ロール角信号は、本来等しくなるが別々の量と考えて、左制御部54Lで左ロール角信号を受け取り、右制御部54Rで右ロール角信号を受け取るように構成できる。これに限定されず、左ロール角センサ59L及び右ロール角センサ59Rは、一方を常用とし、他方を予備とすることができる。また、左ロール角センサ59の左ロール角信号と右ロール角センサ59Rの右ロール角信号とを平均化してロール角θを求めるようにしてもよい。さらには、左ロール角センサ59L及び右ロール角センサ59Rの一方を無くすことも可能である。
【0064】
左及び右ロール角センサ59L、59Rとして、例えば、特許文献1に開示した加速度センサを用いることができる。この加速度センサは、作用する力を検出して加速度に換算する方式を採用している。したがって、加速度センサは、重力の方向を検出して、ロール角θを求めることができる。
【0065】
第2実施形態において、電動車いす1の走行制御を行う制御部の制御ブロックの構成は図3と同様であり、第1実施形態と比較して角速度補正部63Aの入力項目が追加されている。すなわち、第2実施形態の角速度補正部63Aには、第1実施形態のヨー角速度ωYならびに左荷重FL及び右荷重FRに加えて、上述した左前荷重FLf、右前荷重FRf、左後荷重FLr、及び右後荷重FRr、ならびに上述したロール角θが入力されている。
【0066】
図8は、第2実施形態の電動車いす1の走行制御を行う制御部のうちの角速度補正部63Aの詳細ブロック図である。角速度補正部63Aは、フィードバック補正演算部71、荷重補正演算部75、重心補正演算部76、及び出力演算部77からなる。フィードバック補正演算部71は、第1実施形態と同じ構成であり、詳細な説明は省略する。フィードバック補正演算部71の比例項乗算器713は、比例項ωpを出力演算部77に出力する。
【0067】
荷重補正演算部75には、各車輪の荷重、すなわち、左荷重FL、右荷重FR、左前荷重FLf、右前荷重FRf、左後荷重FLr、及び右後荷重FRrが入力される。荷重補正演算部75は、荷重&重心演算器751、変化量制限部752、絶対値制限部753、及び荷重項乗算器754で構成されている。
【0068】
荷重&重心演算器751は、左右配分比RFを次式(5)により求め、変化量制限部752に出力する。
左右配分比RF=(右側の車輪の荷重)/(左側の車輪の荷重)
=(FR+FRf+FRr)/(FL+FLf+FLr)……(5)
【0069】
変化量制限部752は、左右配分比RFの前回値からの変化量が所定の制限変化量(正負の2値あり)を超過している場合に限り、変化量を制限変化量に制限して左右配分比RFの今回値を求める。絶対値制限部753は、左右配分比RFの今回値が所定の制限値(正負の2値あり)を超過している場合に限り、左右配分比RFを制限値に補正する。荷重項乗算器754は、変化量制限部752及び絶対値制限部753を通った後の左右配分比RFに荷重項定数KFを乗算して荷重項ωFとし、出力演算部77に出力する。
【0070】
また、荷重&重心演算器751は、総荷重Ftotを次式(6)により求め、前後方向距離LG(LG3)を後述の式(8)または式(12)により求めて、重心補正演算部76に出力する。
総荷重Ftot=FL+FR+FLf+FRf+FLr+FRr…………(6)
なお、前後方向距離LG(LG3)は、左駆動輪3L及び右駆動輪3Rの車軸に対して重心位置G2、G3が前後方向に偏移した距離の意味である(図10のLG及び図11のLG3参照)。
【0071】
重心補正演算部76は、旋回モーメント演算部761、変化量制限部762、絶対値制限部763、及び重心項乗算器764で構成されている。旋回モーメント演算部761には、ロール角θ、総荷重Ftot、及び前後方向距離LG(LG3)が入力される。旋回モーメント演算部761は、旋回モーメントMを次式(7)により求め、変化量制限部762に出力する。ただし、総荷重Ftotは、総質量に万有引力定数を乗じた力の次元を有するものとしている。
旋回モーメントM=LG・Ftot・sinθ………………………………(7)
【0072】
変化量制限部762は、旋回モーメントMの前回値からの変化量が所定の制限変化量(正負の2値あり)を超過している場合に限り、変化量を制限変化量に制限して旋回モーメントMの今回値を求める。絶対値制限部763は、旋回モーメントMの今回値が所定の制限値(正負の2値あり)を超過している場合に限り、旋回モーメントMを制限値に補正する。重心項乗算器764は、変化量制限部762及び絶対値制限部763を通った後の旋回モーメントMに重心項定数KGを乗算して重心項ωGとし、出力演算部77に出力する。
【0073】
出力演算部77は、2個の加算器771、772、及び演算器773で構成されている。2個の加算器771、772では、比例項ωpに対して順番に、重心項ωG及び荷重項ωFが加算されて補正項ωaddが演算される。演算器773は、加算器または減算器として作動する。すなわち、目標直進速度V1が正値である前進時に、演算器773は、元の目標車体角速度ω1に補正項ωaddを加算して補正後の目標車体角速度ω2とする。また、目標直進速度V1が負値である後進時に、演算器773は、元の目標車体角速度ω1から補正項ωaddを減算して補正後の目標車体角速度ω2とする。補正後の目標車体角速度ω2は、目標出力演算部62に出力される。
【0074】
第2実施形態の荷重補正演算部75、及び重心補正演算部76は、本発明のフィードフォワード補正手段に相当する。また、変化量制限部752、絶対値制限部753、変化量制限部762、及び絶対値制限部763は、本発明の値制限部に相当する。
【0075】
次に上述のように構成された第2実施形態の電動車いす1の作用について説明する。図9は、傾斜路面を横切る方向にカント走行する電動車いす1の状況を例示した背面図である。また、図10は、図9に示されるようにカント走行する電動車いす1の総荷重Ftotの左右配分比RF2、及び旋回モーメントMを模式的に説明する平面図である。図9で、ロール角θの傾斜路面は、紙面の右側が傾斜上側すなわち山側で、紙面の左側が傾斜下側すなわち谷側になっている。電動車いす1の重心位置G2に作用する総荷重Ftotは、傾斜路面に垂直な垂直成分FVと傾斜下側に向かう傾斜面成分FHとに分解して考えることができる。傾斜面成分FHは、(Ftot・sinθ)で求められる。
【0076】
ここで、図10に示されるように、車軸に対して重心位置G2が前後方向距離LGだけ前側に偏移していると、傾斜面成分FHは旋回モーメントMを発生させる。旋回モーメントMは、前後方向距離LGに概ね比例して変化し、前述の式(7)で求められる。さらに、図10に例示される4量の荷重値、すなわち、左荷重FL、右荷重FR、左前荷重FLf、及び右前荷重FRfを用いた次式(8)で、前後方向距離LGを求めることができる。ただし、左及び右駆動輪3L、3Rと左及び右前輪28L、28Rとの間のホイールベース(軸間距離)Bの値は、予め制御部に記憶されている。
前後方向距離LG=
(FLf+FRf)・B/(FL+FR+FLf+FRf)………(8)
したがって、旋回モーメントMの発生により、電動車いす1が前進する進行方向は、図10の白抜き矢印Q1に示されるように、谷側(傾斜下側)に向かいがちになる。
【0077】
また、図10に例示される4量の荷重値から、左側距離T21ならびに右側距離T22を次の式(9)及び式(10)により求めることができる。
左側距離T21=
(FR+FRf)・T/(FL+FR+FLf+FRf)…………(9)
右側距離T22=
(FL+FLf)・T/(FL+FR+FLf+FRf)………(10)
【0078】
さらに、荷重の左右配分比RF2は、左側距離T21及び右側距離T22の逆比で求められることから、次式(11)により求めることができる。
左右配分比RF2=左側距離T21/右側距離T22
=(FR+FRf)/(FL+FLf)………………(11)
なお、式(11)は、式(5)に包含されている。
【0079】
次に、第2実施形態の電動車いす1でウィリー走行する場合の作用について説明する。図11は、ウィリー走行しながらカント走行する電動車いす1の総荷重Ftotの左右配分比RF3、及び旋回モーメントMを模式的に説明する平面図である。ウィリー走行は、左前輪28L及び右前輪28Rを着地させず、代わりに左後輪26L及び右後輪26Rを着地した4輪走行形態である。図11で、電動車いす1は図9と同じロール角θの傾斜路面をウィリー走行しており、重心位置G3に対して同じ傾斜面成分FHが発生する。しかしながら、車軸に対して重心位置G3が前後方向距離LG3だけ後側に偏移している。
前後方向距離LG3は、図11に例示される4量の荷重値、すなわち、左荷重FL、右荷重FR、左後荷重FLr、及び右後荷重FRrを用いた次式(12)で求めることができる。ただし、左及び右駆動輪3L、3Rと左及び右後輪26L、26Rとの間の軸間距離Aの値は、予め制御部に記憶されている。
前後方向距離LG3=
(FLr+FRr)・A/(FL+FR+FLr+FRr)……(12)
ウィリー走行では重心位置G3の偏移する方向が通常時と逆の後側になり、旋回モーメントMの回転方向も逆になる。これにより、電動車いす1が前進する進行方向は、図11の白抜き矢印Q2に示されるように、山側(傾斜上側)に向かいがちになる。
【0080】
また、図10の場合に類似して、左側距離T31ならびに右側距離T32を次の式(13)及び式(14)により求めることができる。
左側距離T31=
(FR+FRr)・T/(FL+FR+FLr+FRr)………(13)
右側距離T32=
(FL+FLr)・T/(FL+FR+FLr+FRr)………(14)
【0081】
さらに、荷重の左右配分比RF3は、左側距離T31及び右側距離T32の逆比で求められることから、次式(15)により求めることができる。
左右配分比RF3=左側距離T31/右側距離T32
=(FR+FRr)/(FL+FLr)………………(15)
式(15)は、式(5)に包含されている。
【0082】
荷重補正演算部75では、式(5)ならびに包含される式(11)及び式(15)を用いて左右配分比RF(RF2、RF3)を求めて、フィードフォワード補正している。つまり、制御部は、前後方向距離LG(LG3)を実際に演算するとともに左側距離T21、T31及び右側距離T22、T32を間接的に用いており、本発明の重心位置演算手段を含んでいる。さらに、制御部と6個の荷重センサ81L、81R、82L、82R、83L、83Rとの組み合わせは、本発明の重心位置検出部に相当する。
【0083】
さらに、本第2実施形態で、前後方向距離LG(LG3)を求める作用は、本発明の重心位置演算手段に相当する。また、重心補正演算部76では、前後方向距離LG(LG3)を含む式(7)を用いて旋回モーメントMを実際に求め、フィードフォワード補正している。ここで、旋回モーメントMの回転方向は、傾斜路面の傾きの方向及び重心位置G(G2、G3)の偏移方向に依存して変化する。これに対して、ロール角θの正負及び前後方向距離LG(LG3)の正負を考慮すれば制御部の演算処理を共通化できる。つまり、右上がりの傾斜路面と左上がりの傾斜路面とでロール角θの正負の符号を逆にして、かつ図10で前後方向距離LGを正値とし、図11で前後方向距離LG3を負値としてやれば、演算処理を場合分けする必要が無くなる。
【0084】
第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて次の効果が生じる。すなわち、第2実施形態の電動車いす1は、フィードフォワード補正手段がロール角θ及び前後方向距離LG(LG3)を用いて目標車体角速度ω1を補正するので、旋回モーメントMの変化を補正制御に反映することができる。したがって、荷重の左右配分比FR(FR2、FR3)に対する補正と旋回モーメントMの変化に対する補正とを併用でき、片流れの軽減及び直進走行性の向上の効果がさらに一層顕著になる。
【0085】
なお、本発明のパーソナルビークルは、上述した第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施できることは言うまでもない。例えば、車体角速度検出部として、左及び右角速度センサ56L、56Rを省略し、左及び右回転数センサ52L、52Rで検出した実回転数NL、NRからヨー角速度を演算するようにしてもよい。また例えば、各実施形態の左回転数演算部64、右回転数演算部65、左駆動力演算部66、及び右駆動力演算部67で、回転数に代えて同じ次元を有する車軸角速度を用いた演算処理を行うようにしても、同じ走行制御機能を具備できる。この場合、左及び右駆動輪3L、3Rの目標回転数N1L、N1Rに代えて目標車軸角速度を用いるとともに、実回転数NL、NRを車軸角速度に換算する。
【0086】
さらに、第1及び第2実施形態で検出している左荷重FL及び右荷重FRを用いて、左右の駆動輪3L、3Rの有効半径Reの変化を演算し、フィードフォワード補正に用いることもできる。また、角速度補正部63、63Aのフィードバック補正演算部71で、比例制御以外の制御則を用いることもできる。さらには、第2実施形態でウィリー走行を考慮せず、左後荷重センサ83Lおよび右後荷重センサ83Rを不付きとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、実施形態で説明した電動車いす1以外にも、個人用乗物などに代表されるパーソナルビークルに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1:電動車いす(パーソナルビークル)
2:車体 26L:左後輪 26R:右後輪 29:バッテリ
28L:左前輪 28R:右前輪 3L:左駆動輪 3R:右駆動輪
4:操作ユニット 41:ジョイスティック(操作部)
42:メインコントローラ 43:操作制御部 44:操作通信部
5L:左駆動ユニット 51L:左モータ 52L:左回転数センサ
53L:左コントローラ 54L:左制御部 55L:左通信部
56L:左角速度センサ 57L:左モータ駆動部 59L:左ロール角センサ
5R:右駆動ユニット 51R:右モータ 52R:右回転数センサ
53R:右コントローラ 54R:右制御部 55R:右通信部
56R:右角速度センサ 57R:右モータ駆動部 59R:右ロール角センサ
61:目標速度及び角速度演算部 62:目標出力演算部
63、63A:角速度補正部
71:フィードバック補正演算部 72:荷重補正演算部 73:出力演算部
75:荷重補正演算部 76:重心補正演算部 77:出力演算部
81L:左荷重センサ 81R:右荷重センサ 82L:左前荷重センサ
82R:右前荷重センサ 83L:左後荷重センサ 83R:右後荷重センサ
S1:指令信号 V1:目標直進速度 ω1:目標車体角速度
ωY:ヨー角速度 θ:ロール角 ω2:補正後の目標車体角速度
NL、NR:実回転数 VL、VR:左及び右駆動電圧(駆動力)
FL、FR、FLf、FRf、FLr、FRr:車輪の荷重 Ftot:総荷重
RF、RF2、RF3:左右配分比
LG、LG3:前後方向距離 M:旋回モーメント
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10
図11