特許第6119597号(P6119597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119597
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   E02F9/00 Z
   E02F9/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-264095(P2013-264095)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-121021(P2015-121021A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 正明
(72)【発明者】
【氏名】塚本 大徳
(72)【発明者】
【氏名】野田 剛
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047975(JP,A)
【文献】 特開2010−150835(JP,A)
【文献】 特開2000−144811(JP,A)
【文献】 特開2006−312847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/18,9/24−9/28
B60K 11/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の基台となるアッパーフレームの後部に、エンジンとその関連機器が収容されるエンジンルーム、左右一側の前部にキャビンがそれぞれ設けられる一方、上記エンジンルームの直前方であって上記アッパーフレーム幅方向の中央部にメンテナンス作業用の足場が設けられ、かつ、作動油を貯留する作動油タンクと、燃料を貯留する燃料タンクを具備する建設機械において、
上記作動油タンク及び燃料タンクのうち少なくとも一方のタンクを、柵兼用タンクとして、上記足場のアッパーフレーム幅方向端である足場端に近接して、かつ、タンク上部が足場上面よりも上方に突出する状態で設け、
上記棚兼用タンクのタンク上部は、上記足場に臨むように上記アッパーフレーム幅方向の内側を向いて上記足場端に位置する内側面を有し、当該内側面に足場用ハンドレールを、タンク上方に突出する状態で取付け、
上記アッパーフレームにおける上記キャビンと反対側の側部に、メンテナンス作業員を前方地上から上記足場に導く後上がりのメンテナンス通路を設け、上記柵兼用タンクを、上記メンテナンス通路側の側部において、メンテナンス通路の後端部の後方に隣接して設け、
上記メンテナンス通路の外縁部に通路用ハンドレールを備え、
上記足場ハンドレールは、一対の下端部と上辺部とを有する大略逆U字形に形成され、当該一対の下端部が上記柵兼用タンクの上記タンク上部の上記内側面に取付けられるとともに、上記上辺部が平面視で後方に向かって内寄りとなる傾斜線上に配置されるように、上記棚兼用タンクの上方の位置において、上記足場用ハンドレールの前部が上記棚兼用タンクの上記タンク上部の上記内側面及び当該内側面に取付けられる上記一対の下端部よりも上記アッパーフレームの外縁側に張出していることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
上記作動油、燃料両タンクを、上記エンジンルームの前方において上記アッパーフレームの左右両側部に、
(i) 互いの内側面が相対向し、
(ii) 上記メンテナンス通路側のタンクが上記柵兼用タンクとして一方の足場端に近接するとともに、反対側のタンクが他方の足場端に近接する
状態で振り分けて配置し、上記両タンク間に上記足場を設けたことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
上記作動油、燃料両タンクのうち柵兼用タンクと反対側のタンクを、タンク上部が足場上面よりも上方に突出する状態で設けたことを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【請求項4】
上記メンテナンス通路の後端部におけるアッパーフレーム幅方向の最も内側の端が、上記足場のメンテナンス通路側の足場端よりもアッパーフレーム幅方向の内側に位置する状態で上記メンテナンス通路及び足場を設けることにより、上記メンテナンス通路と足場の一部同士が前後方向の直線上に並ぶ乗り移り部分を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項5】
上記通路用ハンドレールの後端部を上記柵兼用タンクの前部に取付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンその他のメンテナンス作業を行うための足場をエンジンルーム前方に備えたショベル等の建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、図9,10に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が、地面に対して鉛直となる軸のまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2の前部にブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを作動させる油圧シリンダ(ブーム、アーム、バケット各シリンダ)6,7,8を備えた作業用のアタッチメント9が装着されて構成される。
【0004】
上部旋回体2は、基台としてのアッパーフレーム10に各種機器、設備が設けられて構成される。
【0005】
すなわち、アッパーフレーム後部に、ボンネット11によって上面が開閉されるエンジンルーム12が設けられ、このエンジンルーム12に、動力源としてのエンジン13と、その関連機器(ラジエータ14、冷却ファン15、油圧ポンプ16等)が設置される。
【0006】
一方、エンジンルーム12よりも前方において、左右一側(通常は左側。以下、この場合で説明する)にキャビン17が設置される。
【0007】
この明細書において、「前後」「左右」は、キャビン17内に着座したオペレータから見た方向性をいい、「左右方向」はアッパーフレーム幅方向を意味する。
【0008】
アッパーフレーム10におけるキャビン17と反対側(右側)において、エンジンルーム12の前方に、作動油を貯留する作動油タンク18と、燃料を貯留する燃料タンク19が図示のように前後に並設される(以下、この場合で説明するが、左右に並設される場合もある)。
【0009】
さらに、エンジン13をはじめとするエンジンルーム内機器その他のメンテナンスを行うための足場20が、エンジンルーム12の直前方においてアッパーフレーム幅方向の中間部に設けられるとともに、作動油タンク18の前方に、メンテナンス作業員を足場20に導くための、足場20に通じるメンテナンス通路P1が設けられている。
【0010】
図10中、21はアッパーフレーム左側においてエンジンルーム12とキャビン17の間に設置されたエアクリーナである。
【0011】
メンテナンス通路P1は、アッパーフレーム前端部に設けられた踏み板22と、一〜複数段(図では二段の場合を例示している。以下、この場合で説明する)の昇降ステップ23,24によって構成されている。
【0012】
両昇降ステップ23,24は、通常、搭載設備の上面を利用して形成される。たとえば第1段昇降ステップ23はツールボックス25の上面カバーによって、第2段昇降ステップ24は燃料タンク19の上面またはその上面カバーによってそれぞれ形成される。
【0013】
このような足場20及びメンテナンス通路P1を備えたショベルは特許文献1〜3に示されている。
【0014】
また、昇降を助けるためのハンドレールを、メンテナンス通路P1に沿って通路外縁に設けたものも特許文献1に示されているように公知である。
【0015】
この公知技術においては、最上段である第2段昇降ステップ24と足場20を面一に設定する一方、ハンドレールを第1段昇降ステップ用の下部ハンドレールと、第2段昇降ステップ用の上部ハンドレールとに分け、上部ハンドレールが、作業員の落下を防止するための安全柵機能を併備するように十分な高さをもって第2段昇降ステップの上面に取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−150835号公報
【特許文献2】特開2010−47975号公報
【特許文献3】特許第5106711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記公知技術によると、上部ハンドレールが単独で安全柵機能をも果たす構成であるため、同ハンドレールに安全柵機能を果たし得るのに十分な高さと強度を確保する必要がある。
【0018】
このため、上部ハンドレールのための設備コストが高くつくとともに、同ハンドレールが重量化し、設置が面倒となる。
【0019】
なお、上部ハンドレールをハンドレール専用としてその高さと強度を落とせば、構造を簡易化し、軽量化が可能となるが、これでは安全柵機能が著しく低下してメンテナンス作業時の安全性が低下するとともに、作業員に与える安心感も低下して作業性も悪化する。
【0020】
そこで本発明は、十分な安全柵機能を低コストで簡単に構築することができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の基台となるアッパーフレームの後部に、エンジンとその関連機器が収容されるエンジンルーム、左右一側の前部にキャビンがそれぞれ設けられる一方、上記エンジンルームの直前方であって上記アッパーフレーム幅方向の中央部にメンテナンス作業用の足場が設けられ、かつ、作動油を貯留する作動油タンクと、燃料を貯留する燃料タンクを具備する建設機械において、上記作動油タンク及び燃料タンクのうち少なくとも一方のタンクを、柵兼用タンクとして、上記足場のアッパーフレーム幅方向端である足場端に近接して、かつ、タンク上部が足場上面よりも上方に突出する状態で設け、上記棚兼用タンクのタンク上部は、上記足場に臨むように上記アッパーフレーム幅方向の内側を向いて上記足場端に位置する内側面を有し、当該内側面に足場用ハンドレールを、タンク上方に突出する状態で取付け、上記アッパーフレームにおける上記キャビンと反対側の側部に、メンテナンス作業員を前方地上から上記足場に導く後上がりのメンテナンス通路を設け、上記柵兼用タンクを、上記メンテナンス通路側の側部において、メンテナンス通路の後端部の後方に隣接して設け、上記メンテナンス通路の外縁部に通路用ハンドレールを備え、上記足場ハンドレールは、一対の下端部と上辺部とを有する大略逆U字形に形成され、当該一対の下端部が上記柵兼用タンクの上記タンク上部の上記内側面に取付けられるとともに、上記上辺部が平面視で後方に向かって内寄りとなる傾斜線上に配置されるように、上記棚兼用タンクの上方の位置において、上記足場用ハンドレールの前部が上記棚兼用タンクの上記タンク上部の上記内側面及び当該内側面に取付けられる上記一対の下端部よりも上記アッパーフレームの外縁側に張出しているものである。
【0022】
この構成によれば、足場の側方において足場上面から上方に突出した柵兼用タンクの上部と、これに取付けた足場用ハンドレールとによって安全柵機能を発揮させることができる。
【0023】
いいかえれば、タンクの一部を柵の一部として利用することができる。このため、ハンドレールそのものは短尺、軽量ですむとともに、頑丈なタンクにより柵全体として十分な強度を確保することができる。
【0024】
これにより、安全柵機能を低コストで簡単に構築することができる。
【0025】
この場合、タンクとハンドレールによる柵が足場の側方に、足場端から立ち上がって構築されるため、安全柵機能が高く、メンテナンス作業時の安全性を高めることができるとともに、作業員に安心感を与えて作業性を改善することができる。
【0026】
また、ハンドレールが足場端の目印となり、足場端の位置がひと目で分かるため、メンテナンス作業時に作業員が位置取りし易くなり、この点でも安全性と作業性の向上に役立つ。
【0027】
以上の点により、十分な安全柵機能を、短くて軽いハンドレールによって低コストで簡単に得ることができる。
【0028】
本発明では、前記のように、上記アッパーフレームにおける上記キャビンと反対側の側部に、メンテナンス作業員を前方地上から上記足場に導く後上がりのメンテナンス通路を設け、上記柵兼用タンクを、上記メンテナンス通路側の側部において、メンテナンス通路の後端部の後方に隣接して設ける。
【0029】
この構成によれば、足場用ハンドレールがメンテナンス通路後端部の後方で足場端という位置、つまりメンテナンス通路から足場またはその逆の乗り移り時に最も手摺りを必要とする位置であって、しかも掴み易い位置にあるため、乗り移りの安全性を高めることができる。
【0030】
この場合、上記作動油、燃料両タンクを、上記エンジンルームの前方において上記アッパーフレームの左右両側部に、
(i) 互いの内側面が相対向し、
(ii) 上記メンテナンス通路側のタンクが上記柵兼用タンクとして一方の足場端に近接するとともに、反対側のタンクが他方の足場端に近接する
状態で振り分けて配置し、上記両タンク間に上記足場を設けるのが望ましい。
【0031】
こうすれば、大型設備である二つのタンクをアッパーフレームの左右両側に振り分けて設置することで中央スペース、つまり足場の幅寸法を広くとることが可能となる。このため、メンテナンス作業の安全性と作業性を一層高めることができる。
【0032】
また、両タンクを足場取付部材として兼用できるため、足場取付構造が簡単となる。
【0033】
記作動油、燃料両タンクのうち柵兼用タンクと反対側のタンクを、タンク上部が足場上面よりも上方に突出する状態で設けるのが望ましい。
【0034】
こうすれば、両タンクがともに足場上方に突出して足場の左右両側壁となり、足場が凹部として形成されるため、作業員に安心感を与え、作業性の向上に寄与する。
【0035】
記メンテナンス通路の後端部におけるアッパーフレーム幅方向の最も内側の端が、上記足場のメンテナンス通路側の足場端よりもアッパーフレーム幅方向の内側に位置する状態で上記メンテナンス通路及び足場を設けることにより、上記メンテナンス通路と足場の一部同士が前後方向の直線上に並ぶ乗り移り部分を形成するのが望ましい。
【0036】
こうすれば、メンテナンス通路の後端部と足場に前後方向のつながりができるため、このつながりがない場合のような、乗り移り部分で斜めまたは横に移動するというイレギュラーな動きをとる必要がなくなる。
【0037】
また、乗り移り部分で作業員が足場用ハンドレールをより掴み易い状態となる。
【0038】
これらの点により、乗り移りの安全性がさらに高くなる。
【0039】
上記通路用ハンドレールの後端部上記柵兼用タンクの前部に取付けるのが望ましい。
【0040】
このように、両ハンドレールを柵兼用タンクという共通の部材に取付けることにより、両ハンドレール間の隙間(継ぎ目)が小さくなり、両ハンドレールの連続性が保たれるため、昇降安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によると、十分な安全柵機能を低コストで簡単に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1実施形態にかかるショベルの上部旋回体の斜視図である。
図2】同、平面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図3の足場部分の拡大図である。
図6図4の足場部分の拡大図である。
図7】本発明の第2実施形態にかかるショベルの上部旋回体の斜視図である。
図8】同、平面図である。
図9】本発明の適用対象であるショベル及び従来技術を示す概略側面図である。
図10】同、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施形態を図1図8によって説明する。
【0044】
実施形態はショベルを適用対象としている。
【0045】
図1図6に示す第1実施形態、及び図7,8に示す第2実施形態において、次の点は図9,10に示す従来技術と同じである。
【0046】
(A) 下部走行体上に上部旋回体2が地面に対して鉛直となる軸のまわりに旋回自在に搭載される点。
【0047】
(B) 上部旋回体2は、基台としてのアッパーフレーム10上に各種機器、設備が設けられて構成される点。
【0048】
(C) アッパーフレーム10の後部に、ボンネット11によって開閉されるエンジンルーム12が設けられ、このエンジンルーム12に動力源としてのエンジン13と、その関連機器(ラジエータ14、冷却ファン15、油圧ポンプ16等)が設置される点。
【0049】
(D) エンジンルーム12よりも前方の左側にキャビン17が設置される点。
【0050】
(E) アッパーフレーム10におけるキャビン17と反対側(右側)において、エンジンルーム12の前方に、作動油を貯留する作動油タンク18が設置される点。
【0051】
なお、図1,7において、便宜上、キャビン17を仮想線で示している。
【0052】
第1実施形態(図1図6参照)
燃料を貯留する燃料タンク19が、アッパーフレーム10におけるキャビン17の後方(キャビン17とエンジンルーム12の間)に設置され、この燃料タンク19上に、エンジン吸気を濾過するエアクリーナ21が配置されている。
【0053】
いいかえれば、図9,10に示す従来技術においてアッパーフレーム右側部に並設されていた作動油、燃料両タンク18,19が、実施形態ではアッパーフレーム10上で左右両側部に、互いの内側面が相対向する状態で振り分けて配置されるとともに、燃料タンク19とエアクリーナ21が立体配置されている。
【0054】
これにより、作動油タンク18の前方、すなわち、後述するメンテナンス通路P2の下方に燃料タンク分の空きスペースが創出され、ここに、追加される他の設備、たとえば液体還元剤タンク、もしくはハイブリッド機用のバッテリ、またはその双方を設置できるように構成されている。
【0055】
また、アッパーフレーム右側部に前後方向のスペースの余裕が生まれることにより、作動油タンク18の平面形状を、図示のように左右方向寸法が前後方向寸法よりも小さい長方形とする、あるいはそのような向きに設置することが可能となる。
【0056】
これにより、両タンク18,19間のスペースを広くとることが可能となる。
【0057】
この両タンク18,19間のスペースに、メンテナンスを必要とする機器、たとえばコントロールバルブ26(図3,4参照)が設置されるとともに、エンジン13をはじめとするエンジンルーム内機器及びコントロールバルブ26のメンテナンスを行うための足場27が、エンジンルーム12の直前方においてコントロールバルブ26を上から覆う状態で作動油、燃料両タンク18,19間に設けられている。
【0058】
ここで、両タンク18,19は、図1,3,4に示すように、タンク上部が足場27の上面よりもよりも上方に突出状態で設けられている。いいかえれば、この状態となるように足場27の高さ位置と両タンク18,19の高さ寸法が設定されている。
【0059】
一方、作動油タンク18の前方に、メンテナンス作業員を足場27に導くための、足場27に通じるメンテナンス通路P2が設けられている。
【0060】
メンテナンス通路P2は、アッパーフレーム前端部に設けられた踏み板28と、一〜複数段(図では二段の場合を例示している。以下、この場合で説明する)の昇降ステップ29,30によって構成されている。
【0061】
第1段昇降ステップ29は、ツールボックス31の上面蓋を前下がりに傾斜させ、その中間部を凹ませることによって形成されている。
【0062】
一方、第2段昇降ステップ30は、ツールボックス31の後方に設置された機器(図示しない。たとえば液体還元剤タンク)の上面を覆う上面カバー32によって形成されている。
【0063】
ハンドレール及び足場構造について詳述する。
【0064】
メンテナンス通路P2の外縁に通路用ハンドレール33がメンテナンス通路P2に沿って設けられている。
【0065】
この通路用ハンドレール33は、作業員が掴み易い高さをもって配置され、前端がアッパーフレーム前端部に、後端が作動油タンク18の上面前端部に(前面でもよい)にそれぞれ取付けられている。
【0066】
また、通路用ハンドレール33の後方において、柵兼用タンクとしての作動油タンク18の、足場上面から突出したタンク上部に足場用ハンドレール34がタンク上面よりも上方に突出する状態で設けられている。
【0067】
足場用ハンドレール34は、大略逆U字形に形成され、上辺部が通路用ハンドレール33とほぼ同じ高さとなる状態で下端部がタンク上部の内側面に取付けられている。
【0068】
また、図2に示すように、通路用ハンドレール33の後部及び足場用ハンドレール34が、平面視で後方に向かって内寄りとなる傾斜線上に配置されている。
【0069】
これにより、メンテナンス通路P2から足場27、及びその逆の乗り移り経路に沿って両ハンドレール33,34を位置させ、かつ、これらの連続性を確保することとしている。
【0070】
足場27は、下方に設置されたコントロールバルブ26のメンテナンスを行い易くするために一部脱着式に構成されている。
【0071】
すなわち、足場27は、前側の第1足場体35と、コントロールバルブ26の上方空間(メンテナンス空間)を覆う後側の第2足場体36が並設されて構成され、コントロールバルブ26のメンテナンス時に第2足場体36が取外されて上方空間が開放されるように構成されている。
【0072】
両足場体35,36は、図4,6に示すようにほぼ台形状の凸部と凹部が前後方向に交互に並ぶ波板状に形成され、図3,5に示すように作動油、燃料両タンク18,19の相対向する内側面に取付けられた足場ブラケット37,37にそれぞれの両端部がたとえばボルト、ナットで取付けられる。
【0073】
なお、第2足場体36を脱着し易くするとともに両足場体35,36の連続性を確保するために、第1足場体35の後端部と第2足場体36の前端部が、後者を上にして重ね合わされ、この重ね合わせ部分が左右複数個所でたとえばボルト、ナットによって脱着可能に連結されている。
【0074】
この足場取付状態で、足場27(両足場体35,36)の両端が両タンク18,19の内側面に近接し、足場27が両タンク18,19で挟まれた凹部として形成される。
【0075】
図5中、37aは足場ブラケット37をタンク内側面に取付けるためのボス、図6中、38はエンジンルーム12の前面側を仕切る仕切り壁である。
【0076】
ここで、メンテナンス通路P2は、
(I) 図2に示すように、通路後端部におけるアッパーフレーム幅方向の最も内側の端(第2段昇降ステップ30の左側端。通路端)が、足場27のメンテナンス通路側の端(足場27の右側端。足場端)よりもアッパーフレーム幅方向の内側に位置し、
(II) 通路後端部が足場27の前方において足場27に対してほぼ面一状態で隣接する
状態で設けられている。
【0077】
いいかえれば、前記のように作動油、燃料両タンク18,19の左右振り分け配置に基づいて両タンク18,19間のスペースを広くとり得たことを受けて、上記(I)の通路端と足場端の位置設定が実際上可能となったものである。
【0078】
なお、「ほぼ面一状態」とは、完全に面一の状態だけでなく、移動に支障の無い程度の僅かな段差を持った状態を含む。
【0079】
また、「隣接する」とは、隙間なく接する状態と、移動に影響を与えない程度の少しの継ぎ目が出る状態の双方を意味する。
【0080】
これにより、メンテナンス通路P2の後端部と足場27の一部同士が前後方向の直線上に連続して並ぶ乗り移り部分(図2において斜線を付した部分)Sが形成されている。
【0081】
なお、図の複雑化を避けるために、乗り移り部分の符号「S」は図2のみに付している。
【0082】
上記構成によると次の効果を得ることができる。
【0083】
1) 足場27の側方において足場上面から上方に突出した作動油タンク18の上部と、作動油タンク18に取付けた足場用ハンドレール34とによって安全柵機能を発揮させることができる。
【0084】
いいかえれば、作動油タンク18の一部を柵の一部として利用することができる。このため、ハンドレール34そのものは短尺、軽量ですむとともに、頑丈な作動油タンク18により柵全体として十分な強度を確保することができる。
【0085】
これにより、安全柵機能を低コストで簡単に構築することができる。
【0086】
2) 作動油タンク18と足場用ハンドレール34による柵が足場27の側方に、足場端から立ち上がって構築されるため、メンテナンス作業時の安全性を高めることができるとともに、作業員に安心感を与えて作業性を改善することができる。
【0087】
3) 足場用ハンドレール34が右側の足場端の目印となり、足場端の位置がひと目で分かるため、メンテナンス作業時に作業員が位置取りし易くなり、この点でも安全性と作業性の向上に役立つ。
【0088】
4) 柵兼用タンクである作動油タンク18を、メンテナンス通路P2が設けられた右側部において、メンテナンス通路P2の後端部の後方に隣接して設けているため、足場用ハンドレール34がメンテナンス通路後端部の後方で足場端という位置、つまりメンテナンス通路P2から足場27またはその逆の乗り移り時に最も手摺りを必要とする位置であって、しかも掴み易い位置にあるため、乗り移りの安全性を高めることができる。
【0089】
5) 大型設備である作動油、燃料両タンク18,19をアッパーフレーム左右両側に振り分けて設置したことにより、中央スペース、つまり足場27の幅寸法を広くとることが可能となる。このため、メンテナンス作業の安全性と作業性を一層高めることができる。
【0090】
また、両タンクを足場取付部材として兼用できるため、足場取付構造が簡単となる。
【0091】
6) 作動油タンク18だけでなく燃料タンク19も足場上方に突出して足場27の左右両側壁となり、足場27が凹部として形成されるため、作業員に安心感を与え、作業性の向上に寄与する。
【0092】
7) メンテナンス通路P2と足場27のつなぎ目に前後方向の直線上に並ぶ乗り移り部分Sを形成しているため、前後方向のつながりが無い場合のような、乗り移り部分で斜めまたは横に移動するというイレギュラーな動きをとる必要がなくなる。
【0093】
また、乗り移り部分Sで作業員が足場用ハンドレール34をより掴み易い状態となる。
【0094】
これらの点により、乗り移りの安全性がさらに高くなる。
【0095】
8) 通路用ハンドレール33の後端部を作動油タンク18の前部に取付けているため、いいかえれば、通路用及び足場用両ハンドレール33,34を作動油タンク18という共通の部材に取付けることにより、両ハンドレール33,34間の隙間(継ぎ目)が小さくなり、両ハンドレールの連続性が保たれる。このため、昇降安全性を高めることができる。
【0096】
第2実施形態(図7,8参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0097】
第2実施形態においては、第1実施形態の液体還元剤タンクのような追加設備が無い場合の通路構成として、メンテナンス通路P2が、第1実施形態の第2段昇降ステップ30が無い状態、つまり、踏み板28と一段のみの昇降ステップ(第1実施形態の第1段昇降ステップ)29によって構成されている。
【0098】
この第2実施形態においても、足場端が通路端(昇降ステップ29の左側端)よりも右側に位置する状態で設けられ、メンテナンス通路P2の上端部、つまり昇降ステップ29と足場27の一部同士が前後方向の直線上に並ぶ乗り移り部分(図8において斜線を付した部分)Sが形成されている。
【0099】
但し、この構成によると、第1実施形態と異なり、昇降ステップ29そのものと足場27とは直接には連続せず、ツールボックス上端部を介して乗り移り部分Sの連続性が保たれることになる。
【0100】
また、この実施形態では、乗り移り部分Sの幅員が第1実施形態よりは狭くなることに鑑み、足場27の右側前方に補助ステップ39が、通路上端部、つまりツールボックス31の後端部左側及び足場27に近接して庇状に設けられている。
【0101】
これにより、補助ステップ39で乗り移り部分Sを実質的に拡幅して乗り移りの安全性を高めることができる。
【0102】
加えて、第2実施形態においては、足場左側にも足場用ハンドレール40が設けられて安全柵機能が構築されている。
【0103】
この足場用ハンドレール40は、右側の足場用ハンドレール34と同様に、大略逆U字形に形成され、燃料タンク19の上面よりも上方に突出する状態で下端部が同タンク内側面に取付けられている。
【0104】
こうすれば、足場27の左右両側で安全柵機能が得られるため、メンテナンス作業の安全性と作業性をさらに向上させることができる。
【0105】
この構成は、第1実施形態においても同様に適用することができる。
【0106】
他の実施形態
(1) 上記両実施形態では、メンテナンス通路P2を階段として構成したが、スロープまたはスロープと階段の組み合わせで構成してもよい。
【0107】
(2) 上記両実施形態では、作動油タンク18をメンテナンス通路P2側の側部に設置したが、逆に、燃料タンク19を同通路側、作動油タンク18をキャビン側の各側部に設置してもよい。
【0108】
この場合、少なくとも燃料タンク19を柵兼用タンクとして、同タンク19の上部内側面に足場用ハンドレールを取付けて安全柵機能を構築すればよい。
【0109】
(3) 本発明はショベルに限らず、足場と、メンテナンス作業員を足場に導くメンテナンス通路が設けられる他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 下部走行体
2 上部旋回体
12 エンジンルーム
13 エンジン
17 キャビン
18 柵兼用タンクとしての作動油タンク
19 燃料タンク
27 足場
P2 メンテナンス通路
28 メンテナンス通路を構成する踏み板
29 同、第1段昇降ステップ
30 同、第2段昇降ステップ
S 乗り移り部分
33 通路用ハンドレール
34 足場用ハンドレール
35,36 足場を構成する第1、第2両足場体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10