(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ乳酸系樹脂、分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂(以下、分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂を、樹脂(A)という)としてポリエーテル系樹脂、及びエステル交換触媒として金属の有機酸塩および/または金属のハロゲン化物塩を、二軸押出機(以下、該二軸押出機を、二軸押出機1という)内にて常圧にて溶融し(以下、常圧にて溶融することを、常圧・溶融工程という)、常圧でエステル交換反応をすることを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)とのブロック共重合体(以下、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)とのブロック共重合体を、ブロック共重合体という)の製造方法。
請求項1に記載の方法により製造したブロック共重合体を、二軸押出機1内から別の二軸押出機内に直接導入して、ポリ乳酸系樹脂と混合することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物の製造方法。
請求項1に記載の方法により製造したブロック共重合体に対して、該ブロック共重合体を製造したのと同一の二軸押出機のサイドフィーダーからポリ乳酸系樹脂を投入することで、該ブロック共重合体を製造したのと同一の二軸押出機内で該ブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂を混合することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂、分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂(以下、分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂を、樹脂(A)という)、及びエステル交換触媒を、常圧にて溶融すること(以下、常圧にて溶融することを、常圧・溶融工程という)を特徴とする、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)とのブロック共重合体(以下、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)とのブロック共重合体を、ブロック共重合体という)の製造方法である。
【0012】
以下、本発明のブロック共重合体の製造方法について説明する。
【0013】
(ポリ乳酸系樹脂)
本発明では、ブロック共重合体の製造原料としてポリ乳酸系樹脂を使用する。ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸ユニットおよび/またはD−乳酸ユニットを主たる構成成分とする重合体である。ここで、主たる構成成分とは、重合体中の単量体ユニット全体100mol%中において乳酸ユニットの割合が最大であることを意味し、好ましくは全単量体ユニット100mol%中、乳酸ユニットが70〜100mol%である。
【0014】
本発明におけるポリL−乳酸とは、重合体中の全乳酸ユニット100mol%中、L−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものを指す。一方、本発明におけるポリD−乳酸とは、重合体中の全乳酸ユニット100mol%中、D−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものを指す。
【0015】
ただし、本発明におけるポリ乳酸系樹脂には、樹脂(A)をブロック共重合したものは含まない。なお、樹脂(A)とポリ乳酸系樹脂と共重合した場合には、これはブロック共重合体という。
【0016】
ポリL−乳酸は、D−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリL−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は高くなっていく。同様に、ポリD−乳酸は、L−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリD−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は高くなっていく。
【0017】
本発明で用いられるポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、本発明で用いられるポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合は任意に調整可能である。本発明で得られるブロック共重合体を機械強度が必要な成形体とする場合には、全乳酸ユニット100mol%中、L−乳酸ユニットが90〜100mol%、あるいはD−乳酸ユニットが90〜100mol%であることが好ましく、L−乳酸ユニットが95〜100mol%、あるいはD−乳酸ユニットが95〜100mol%であることがさらに好ましい。また、本発明で得られるブロック共重合体を結晶性のポリ乳酸系樹脂の可塑剤として使用する場合には、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体のポリ乳酸セグメントとの共晶を形成させてブロック共重合体のブリードアウトを抑制する目的から、L−乳酸およびD−乳酸の含有割合は上記と同様であることが好ましい。逆に、本発明で得られるブロック共重合体、あるいは本発明で得られるブロック共重合体を可塑剤として含むポリ乳酸系樹脂を、フィルムのヒートシール層等に利用する場合には、樹脂が低結晶性または非晶性であることが好ましいため、全乳酸ユニット100mol%中、L−乳酸ユニットおよびD−乳酸ユニットが10〜90mol%であることが好ましい。
【0018】
本発明における結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を100℃の加熱下で1時間放置した後に、昇温速度20℃/分の条件で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。
【0019】
一方、本発明でいう非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様に測定を行った場合、融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
【0020】
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、乳酸以外の他の単量体ユニットをランダム共重合してもよい。他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記のような他の単量体ユニットの共重合量は、ポリ乳酸系樹脂の重合体中の単量体ユニット全体100mol%に対し、0〜30mol%であることが好ましく、0〜10mol%であることがより好ましい。なお、上記した単量体ユニットの中でも、用途に応じて生分解性を有する成分を選択することが好ましい。
【0021】
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量は、反応後のブロック共重合体の分子量および溶融時の取扱い性の観点から、5,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがさらに好ましく、100,000〜300,000であることが最も好ましい。なお、本発明における質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でヘキサフルオロイソプロパノール等の良溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0022】
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂を製造する方法としては、乳酸と他の原料を直接脱水縮合する方法、またはラクチドとその他環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
【0023】
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクタン酸スズ等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
【0024】
(分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂(樹脂(A)))
本発明では、ブロック共重合体の製造原料として樹脂(A)を使用する。本発明では、ポリ乳酸系樹脂中の乳酸ユニット−乳酸ユニット間のエステル結合に対して、樹脂(A)の水酸基を起点にエステル交換反応を進行させるため、樹脂(A)は分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂であることが重要である。但し、樹脂(A)は、ポリ乳酸系樹脂以外の分子内に少なくとも一つの水酸基を有する樹脂である。なお、樹脂(A)は用途によっては生分解性を有する樹脂を選択することが好ましい。
【0025】
樹脂(A)としては、分子末端に水酸基を含有する樹脂として、ポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。また、側鎖に水酸基を含有する樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、多糖類、多糖類のエステル化物、多糖類のエーテル化物、多糖類のデオキシハロゲン化物、多糖類の酸化物、水酸基変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂への柔軟性付与のため、樹脂(A)のガラス転移温度は−70〜50℃であることが好ましく、−70〜40℃であることがさらに好ましい。
【0026】
これらの中で、ポリ乳酸系樹脂の柔軟性を高める効果が高く、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が高いことから、樹脂(A)としてはポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル系樹脂および/またはポリエーテル系樹脂であることが好ましく、ポリエーテル系樹脂であることがより好ましく、ポリアルキレングリコール樹脂であることがさらに好ましい。
【0027】
樹脂(A)であるポリアルキレングリコール樹脂として特に好ましいのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体であり、その中でもポリエチレングリコールが最も好ましい。ポリエチレングリコールは柔軟かつポリ乳酸系樹脂との親和性が高いため、ポリ乳酸系樹脂とポリエチレングリコールとのブロック共重合体は、その柔軟性やポリ乳酸系樹脂の可塑化効率に優れる。
【0028】
本発明で用いられる樹脂(A)の質量平均分子量は、反応後のブロック共重合体の分子量および柔軟性、および溶融時の取扱い性の観点から、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜500,000であることがさらに好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましく、5,000〜30,000であることが最も好ましい。
【0029】
(エステル交換触媒)
本発明は、ポリ乳酸系樹脂、樹脂(A)、及びエステル交換触媒を、常圧にて溶融することが重要である。つまり本発明では、ブロック共重合体の製造をエステル交換法にて行うが、その際にエステル交換触媒を使用することが重要となる。
【0030】
本発明におけるエステル交換触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば金属、金属塩、硫黄酸、含窒素塩基性化合物が挙げられる。
【0031】
金属の例としては、マンガン、マグネシウム、チタン、亜鉛、鉄、アルミニウム、セリウム、カルシウム、バリウム、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、鉛、ストロンチウム、スズ、アンチモン、ゲルマニウム、イットリウム、ランタン、インジウム、ジルコニウム等が挙げられる。
【0032】
金属塩としては、金属の有機酸塩、金属の硝酸塩、金属のリン酸塩、金属のホウ酸塩、金属のハロゲン化物塩、金属の水酸化物塩等が挙げられる。なお、金属塩に使用される金属としては、上記の金属の例と同様のものが挙げられる。有機酸の例としては、カルボン酸、硫黄酸、炭酸、フェノール等が挙げられる。
【0033】
硫黄酸の例としては、硫酸、スルホン酸化合物、スルフィン酸化合物、スルフェン酸化合物が挙げられる。
【0034】
含窒素塩基性化合物としては、四級アミン塩類、三級アミン類、二級アミン類、一級アミン類、ピリジン類、イミダゾール類、アンモニア等を挙げることができる。
【0035】
中でも、樹脂への分散性、樹脂の分解および分子量低下の度合、触媒としての効果の観点から、本発明におけるエステル交換触媒は金属塩であることが好ましく、金属の有機酸塩および/または金属のハロゲン化物塩であることがさらに好ましい。特に、重合釜および押出機の腐食性が小さいもの、質量あたりのエステル交換触媒能が高いもの、および樹脂からのブリードアウトが発生し難いものを選ぶ観点から、金属の有機酸塩および/または金属のハロゲン化物塩としては、炭素数が0〜10個のアルキル基を有する有機酸と金属との塩(金属の有機酸塩)、および/または金属のハロゲン化物塩であることが好ましい。なお、本発明において、炭素数が0個のアルキル基とは、分子内にアルキル基を有さないことを意味する。
【0036】
さらに、本発明で得られるブロック共重合体について、農林業用の用途やゴミ袋、堆肥袋等の生分解性を必要とする用途に使用される可能性を考慮すると、本発明で用いられるエステル交換触媒は、生物への安全性が高いものであることが好ましい。その上でエステル交換触媒としての能力を併せて選択すると、エステル交換触媒は、金属の有機酸塩および/または金属のハロゲン化物塩であることが好ましく、特に好ましいエステル交換触媒として、下記に示す炭素数が0〜10個のアルキル基を有する有機酸と金属との塩(金属の有機酸塩)、もしくは、下記に示す金属のハロゲン化物塩が挙げられる。
【0037】
金属の有機酸塩として特に好ましい、炭素数が0〜10個のアルキル基を有する有機酸と金属との塩の具体例は、例えば、水酸基を有さない炭素数が1〜10個のカルボン酸と、マグネシウム、チタン、スズ、亜鉛、鉄、アルミニウム、カルシウム、カリウムから選ばれる金属からなる塩である。また、特に好ましい金属のハロゲン化物塩の具体例は、例えば、マグネシウム、チタン、スズ、亜鉛、鉄、アルミニウム、カルシウム、カリウムから選ばれる金属のハロゲン化物である。
【0038】
なお、本発明において、2種以上の異なるエステル交換触媒を併用することも可能である。
【0039】
(ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)とのブロック共重合体の製造方法)
本発明のブロック共重合体の製造方法は、原料であるポリ乳酸系樹脂、樹脂(A)、およびエステル交換触媒を反応器に供給し、常圧にて溶融する(常圧・溶融工程を経る)ことを特徴とする。
【0040】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)とがエステル交換反応を行うことで、ブロック共重合体を製造する。そしてここでいうエステル交換反応とは、あるエステル結合に水酸基、カルボン酸基、又は他のエステル結合を作用させて、エステル結合中の水酸基又はカルボン酸基との交換を起こさせ、当初のエステル結合とは別種のエステル結合を生成させる反応のことである。特に、本発明では、ポリ乳酸系樹脂のエステル結合に、樹脂(A)の水酸基を作用させることにより、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)との間にエステル結合を導入することを主目的とする。
【0041】
常圧・溶融工程における溶融温度は、反応器の種類、ポリ乳酸系樹脂の融点、樹脂(A)の融点、ポリ乳酸系樹脂の粘度、および樹脂(A)の粘度により異なるが、特にポリ乳酸系樹脂の融点および熱分解温度を考慮すると、常圧・溶融工程における温度は150〜250℃であることが好ましく、180〜240℃であることがより好ましい。また、使用するポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)は、溶融時の加水分解および着色を防ぐため、予め充分に乾燥して水分率を低下させることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂及び樹脂(A)の水分量は共に1,200ppm(質量基準)以下であることが好ましく、500ppm(質量基準)以下であることがより好ましく、200ppm(質量基準)以下であることがさらに好ましい。
【0042】
ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)との仕込み質量比は特に限定されないが、好ましい範囲は質量比で95:5〜5:95である。特に、生成物のブロック共重合体を柔軟性の樹脂として成形体の主成分に使用する場合には、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)との仕込み質量比は95:5〜50:50であることが好ましく、90:10〜60:40であることがさらに好ましい。また、ブロック共重合体をポリ乳酸系樹脂の可塑剤として用いる場合には、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)との仕込み質量比は80:20〜5:95であることが好ましく、75:25〜10:90であることがより好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましい。
【0043】
エステル交換触媒の添加量は、反応器の種類、反応温度、反応時間、反応雰囲気等により異なるが、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)との合計100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.005〜1質量部の範囲であることがさらに好ましい。エステル交換触媒の添加量が、ポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)との合計100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲であれば、得られるブロック共重合体の着色、分子量低下およびラクチドの発生を最小限に留めることができる。
【0044】
本発明では、エステル交換反応時にラクチドの発生を抑制するため、常圧・溶融工程を常圧で行うことが重要である。本発明における常圧とは、常圧・溶融工程における気圧が5×10
4〜1.5×10
5Paの範囲内を意味し、7×10
4〜1.3×10
5Paであることが好ましく、9×10
4〜1.1×10
5Paであることがさらに好ましい。また、この常圧・溶融工程において、樹脂の加水分解および酸化分解を抑制するため、反応器を不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。
【0045】
常圧・溶融工程に使用する反応器は特に限定されないが、例えばバッチ式反応器として攪拌装置付きの試験管、縦型又は横型タンク式リアクター又はニーダー等が挙げられる。連続式反応器としては単軸押出機、二軸押出機、その他の多軸押出機が挙げられる。二軸以上の多軸押出機は、そのスクリュー回転方向が同方向であっても異方向であっても構わない。
【0046】
その中でも、反応時間の短縮および操作性の観点から、常圧・溶融工程の反応器は連続式反応器であることが好ましく、二軸押出機であることがさらに好ましい。つまり常圧・溶融工程は、連続式反応器内、特に二軸押出機内で行われることが好ましい。二軸押出機内ではポリ乳酸系樹脂と樹脂(A)の溶融が迅速に進むのみならず、樹脂同士の分配混合および分散混合が効率よく進むため、ポリ乳酸系樹脂のエステル結合と樹脂(A)の水酸基との衝突確率が増加し、結果としてそれらのエステル交換反応が短時間に進行する。
【0047】
前述の通り、常圧・溶融工程は二軸押出機内にて行われることが好ましいが、このような二軸押出機のスクリュー構成としては、反応に必要な樹脂滞留時間および混練力を確保するため、逆向きのニーディングディスクを使用することが好ましく、スクリュー径は10〜400mmであることが好ましく、L/Dは20〜200であることが好ましい。
【0048】
反応器が二軸押出機である場合、気圧はベント孔にて測定する。
【0049】
常圧・溶融工程に要する時間は、混練性の低いバッチ式反応器を使用する場合、30分〜5時間であることが好ましい。これに対して、二軸押出機に代表される連続式反応器の場合、常圧・溶融工程の時間は反応器内における樹脂の滞留時間に相当し、それは5〜30分であることが好ましく、5〜15分であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の製造方法により得られるブロック共重合体は、残存するエステル交換触媒を失活させることにより、その保存安定性をさらに向上させることが可能である。このような目的で使用される失活剤としては、例えばアミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子として窒素含有のフェノール類やカルボン酸、リン酸、リン酸エステル、リン酸金属塩、亜リン酸、亜リン酸エステル、亜リン酸金属塩等のリン化合物が挙げられる。また、これらの失活剤は単独のみならず混合して使用することも可能である。ポリ乳酸系樹脂の耐加水分解性の点から、これらの失活剤のうちリン化合物がより好ましく、純度98質量%以上のリン酸結晶または亜リン酸結晶がさらに好ましい。
【0051】
失活剤を添加する方法として、バッチ式反応器の場合、エステル交換反応の終了後に一度反応器を停止させ、失活剤を添加した後に再度反応器を運転させる方法がある。二軸押出機に代表される連続式反応器の場合、押出機のサイドフィーダーから失活剤を添加する方法がある。
【0052】
失活剤の添加量は、製造工程で添加したエステル交換触媒1質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明で得られるブロック共重合体の質量平均分子量について、本ブロック共重合体を成形体の主成分とすることが目的の場合には、実用的な機械特性を満足させるため、その質量平均分子量は10,000〜1,000,000であることが好ましく、50,000〜500,000であることがより好ましい。また、本ブロック共重合体を可塑剤等の添加剤として利用する場合には、柔軟化および耐ブリードアウト性を発現させるため、その質量平均分子量は1,000〜500,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましく、5,000〜50,000であることがさらに好ましい。
【0054】
(ブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂との混合物)
本発明で得られるブロック共重合体は、ポリ乳酸系樹脂と併用することができる。この場合のブロック共重合体は、ポリ乳酸系樹脂の可塑剤として機能することも可能となる。このように本発明で得られるブロック共重合体をポリ乳酸系樹脂の可塑剤として使用する場合、ポリ乳酸系樹脂中にブロック共重合体を分散させるためには、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体とを溶融混練してもよいし、クロロホルム等の良溶媒中にポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体とを溶解させ、溶媒を揮発または貧溶媒中に樹脂を析出させてもよい。
【0055】
ブロック共重合体をポリ乳酸系樹脂の可塑剤として使用する場合、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体との含有割合は、ブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂の合計100質量%において、ブロック共重合体を3〜70質量%含有することが好ましく、5〜60質量%含有することがより好ましく、5〜50質量%含有することがさらに好ましい。ブロック共重合体の含有割合が上記の範囲内であれば、ポリ乳酸系樹脂の柔軟性および耐衝撃性が向上し、ブロック共重合体のブリードアウトを抑制することができる。
【0056】
ブロック共重合体をポリ乳酸系樹脂用の可塑剤として使用する場合、ポリ乳酸系樹脂およびブロック共重合体以外に、樹脂組成物中には他の熱可塑性樹脂、一般的な粒子や添加剤を混合してもよい。
【0057】
ブロック共重合体を製造する常圧・溶融工程は、前述のように二軸押出機(以下、該二軸押出機を、二軸押出機1という)内にて行われることが好ましい。さらに、ブロック共重合体をポリ乳酸系樹脂の可塑剤として使用するなど、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物を製造する場合には、二軸押出機1内で製造されたブロック共重合体を、二軸押出機1内から別の二軸押出機(以下、該別の二軸押出機を、二軸押出機2という)内に直接導入して、該二軸押出機2内にてポリ乳酸系樹脂と混合することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物の製造方法が好ましい。つまりポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物を製造する際には、二軸押出機1にて製造されたブロック共重合体を、溶融状態のままポリマー管等を用いて二軸押出機2の途中へサイドフィード等の方法で直接導入して、二軸押出機2内でポリ乳酸系樹脂と混合することが好ましい。ここで直接とは、二軸押出機1内から二軸押出機2内へブロック共重合体を導入するに際して、該ブロック重合体をガラス転移温度以上に保ちながら二軸押出機1内から二軸押出機2内へ導入することを意味する。例えば、ブロック共重合体を二軸押出機1内から取りだして、該ブロック共重合体をガラス転移温度以下とした状態で、二軸押出機2内へ導入するような場合は、ここでいう直接とは解されない。なお、ブロック共重合体が複数のガラス転移温度を有する場合、ブロック共重合体を最も高いガラス転移温度以上に保ちながら二軸押出機1内から二軸押出機2内へ導入することを、直接という。
【0058】
ブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂の混合物を製造する場合、ブロック共重合体の質量平均分子量が小さく、またガラス転移温度が低い場合があり、そのようなブロック共重合体はチップ化が困難となる可能性がある。そのような場合には、得られたブロック共重合体を一度冷却して固化させ、その後に粉砕処理を行う必要が生じる。これに対して、二軸押出機1を使用して得られたブロック共重合体を二軸押出機2に直接導入し、二軸押出機2においてポリ乳酸系樹脂と混合するプロセスを用いれば、上記の冷却・粉砕の時間および手間が省略されるため、好ましい。
【0059】
二軸押出機1および二軸押出機2のスクリュー構成、スクリュー径、L/Dおよび滞留時間は、前述した二軸押出機の好ましいスクリュー構成、スクリュー径、L/Dおよび滞留時間と同様であることが好ましい。また、二軸押出機1と二軸押出機2は、同種の構成であっても構わない。
【0060】
なお、ブロック共重合体の製造が行われる二軸押出機1は、前述の理由により常圧とする必要がある。常圧の範囲は前述のものと同じである。一方、本方法において二軸押出機2はブロック共重合体の生成には寄与しないため、二軸押出機2において気圧は必ずしも常圧である必要はなく、減圧下とすることも可能である。
【0061】
また、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物を製造する方法としては、二軸押出機により製造したブロック共重合体に対して、該ブロック共重合体を製造したのと同一の二軸押出機のサイドフィーダーからポリ乳酸系樹脂を投入することで、該ブロック共重合体を製造したのと同一の二軸押出機内で該ブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂を混合することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物の製造方法も存在する。本方法では、上記同様にブロック共重合体の冷却・粉砕の時間および手間が省略できることのほか、必要な二軸押出機が1台のみであり、装置構成を単純化できることから、好ましい。
【0062】
本方法に用いられる二軸押出機の好ましいスクリュー構成として、ポリ乳酸系樹脂を投入するサイドフィーダーより前側にニーディングディスクを入れることが挙げられる。また、スクリュー径、L/Dおよび滞留時間は、前述した二軸押出機の好ましいスクリュー径、L/Dおよび滞留時間と同様であることが好ましい。また、押出温度は、該ニーディングディスク付近の温度を200〜280℃とすることが好ましく、触媒量は0.05〜5質量部であることが好ましい。これは、本方法においてブロック共重合体の製造が主に行われるのは、二軸押出機のメインフィーダーの地点から、ポリ乳酸系樹脂を入れるサイドフィーダーの地点まで、すなわち二軸押出機の一部分のみであり、該部分において反応を効率的に進行させる必要があるためである。また、サイドフィーダーからポリ乳酸系樹脂を入れる際に、同時に失活剤を添加することが好ましい。
【0063】
本方法においてブロック共重合体の製造が主に行われるのは、二軸押出機のメインフィーダーの地点から、ポリ乳酸系樹脂を入れるサイドフィーダーの地点までであるため、その地点までは、上記の理由により、反応を常圧にて行う必要がある。常圧の範囲は前述のものと同じである。一方、サイドフィーダーの地点より以降については、ブロック共重合体の生成にはほとんど寄与しない。したがって、該区間において気圧は必ずしも常圧である必要はなく、減圧下とすることも可能である。
【0064】
なお、ポリ乳酸系樹脂とブロック共重合体の混合物において用いられるポリ乳酸系樹脂は、ブロック共重合体の原料として上記で説明したポリ乳酸系樹脂と同じ樹脂を用いることができる。
【0065】
本発明で得られるブロック共重合体を含む組成物には、公知の酸化防止剤、結晶核剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、イオン交換剤、粘着性付与剤、消泡剤、着色顔料、染料、滑剤、発泡剤、その他樹脂等の添加剤を必要に応じて使用することもできる。これら添加剤の添加量は、本発明にて達成される効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、ブロック共重合体を含む組成物100質量%に対して、添加剤は0.01〜30質量%であることが好ましく、0.01〜20質量%であることがより好ましく、0.01〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明で得られるブロック共重合体は、臭気および耐加水分解性の観点から、その残留ラクチド量は1.00質量%以下であることが好ましく、0.70質量%以下であることがより好ましく、0.50%質量以下であることがさらに好ましい。
【0067】
また、本発明で得られるブロック共重合体は、原料であるポリ乳酸系樹脂および樹脂(A)が残存していないことが好ましいことから、そのGPC溶出曲線中に高分子由来のピークが1つのみ存在すること(単峰性)が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂および樹脂(A)が残存している場合、そのGPC溶出曲線中に高分子由来のピークが2つ(二峰性)またはそれ以上存在する。
【0068】
また、本発明で得られるブロック共重合体は、原料である樹脂(A)が残存していないことが好ましい。そのため、以下で定義されるTmA0およびTmAについて、TmA0−TmAが7.0℃以上であることが好ましく、9.0℃以上であることがより好ましい。
【0069】
TmA0:樹脂(A)単体のDSC昇温過程のチャートから読み取られる、樹脂(A)由来の融解ピーク温度。
【0070】
TmA:ブロック共重合体のDSC昇温過程のチャートから読み取られる、樹脂(A)セグメントに由来する融解ピーク温度。
【0071】
また、本発明で得られるブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂の混合物をシート化する場合、得られるシートは十分な柔軟性を発現するために、その引張弾性率が100〜1,000MPaであることが好ましい。引張弾性率は、100〜950MPaであることがより好ましく、100〜900MPaであることがさらに好ましい。
【0072】
また、上記のブロック共重合体とポリ乳酸系樹脂を含有するシートは、ブロック共重合体がポリ乳酸系樹脂から抜け出ないこと、すなわちその耐ブリードアウト性が必要となる。耐ブリードアウト性の指標として、シートの熱水抽出率が下記の範囲であることが好ましい。すなわち、1気圧下で沸騰した蒸留水中においてシートを1時間処理した際の質量減少率が5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すとおりの条件で行った。
【0074】
(1)弾性率(MPa)
(株)オリエンテック製TENSILON UCT−100を用いて応力−歪み測定を行い、応力−歪み曲線の最初の直線部分を用いて、直線上の2点間の応力差を同じ2点間の歪み差で除し、引張弾性率を計算した。具体的には、ブレスシートから長さ150mm、幅10mmの短冊状サンプルを切り出し、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K 7127(1999)に規定された方法に従って測定を行った。また、測定は5回行い、その平均値を算出した。
【0075】
(2)ラクチド量
生成したサンプルを塩化メチレンに溶解し、1g/20mlに濃度調整した後にアセトン60mlを追加し、さらに超音波攪拌しながらシクロヘキサン320mlを滴下することによりポリマー成分を析出させた。析出物を遠心分離および孔径0.45μmのPTFEフィルターにより除去し、試料液を作製した。この試料液を、ガスクロマトグラフGC−17A(島津製作所社製)を用いて、カラム:DB−17MS型(J&W社製)、カラム温度:80〜250℃、10℃/分、キャリアーガス:Heの条件にて分析を行った。また、あらかじめ濃度を変更したラクチド単体の試料液を用いて検量線を作成し、この検量線を利用して試料のラクチド量(質量%)を求めた。
【0076】
(3)熱水抽出率
耐ブリードアウト性の指標として熱水抽出率を測定した。あらかじめ、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1日以上調湿したプレスシートについて、処理前の質量を測定した。次に、1気圧下で沸騰した蒸留水中にシートを1時間浸漬処理し、再度処理前と同様の条件で調湿した後に、処理後の質量を測定した。そして、下記の式により熱水抽出率を算出した。
熱水抽出率(質量%)=(処理前の質量−処理後の質量)×100/処理前の質量
(4)GPC
質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した。なお、質量平均分子量の計算は、得られたサンプルの溶出曲線中に高分子由来のピークが一つのみ存在する(単峰性)場合のみ行い、ポリ乳酸系樹脂および樹脂(A)に由来する二つの高分子由来のピークを有する(二峰性)場合、またはそれ以上の高分子由来のピークを有する場合には行わなかった。GPCの測定はWaters社製2695型を用いて行い、検出器にWATERS社示差屈折計2414 型を用い、ポンプにWATERS社MODEL510を用い、カラムにShodex HFIP−806Mを2本直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/min、カラム温度40℃とし、溶媒に5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム添加のヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度0.1質量%の溶液を0.2mL注入した。
【0077】
(5)DSC
セイコーインスツル(株)製示差走査熱量計RDC220を用い、生成したサンプル5mgをアルミニウム製受皿にセットし、25℃から昇温速度20℃/分で220℃まで昇温、220℃のまま5分間溶融保持したのち、25℃まで急冷した。そして、その昇温過程についてのチャートから、樹脂(A)セグメントに由来する融解ピーク温度TmA(℃)を読み取った。また、未反応の樹脂(A)をサンプルとして、上記と同様の方法により樹脂(A)の融解ピーク温度TmA0(℃)を求め、TmA0−TmAを算出した。
【0078】
[ポリ乳酸系樹脂]
(4032D)
ポリL−乳酸、Natureworks製“4032D”、質量平均分子量200,000、D体含有量1.4mol%、融点166℃。予め真空オーブン中で減圧しながら100℃、5時間の条件にて乾燥したものを使用した。
【0079】
(4060D)
ポリL−乳酸、Natureworks製“4060D”、質量平均分子量200,000、D体含有量12.0mol%、融点なし。予め真空オーブン中で減圧しながら50℃、7時間の条件にて乾燥したものを使用した。
【0080】
なお、質量平均分子量は、日本ウォーターズ(株)製Waters2695を用い、ポリメチルメタクリレートを標準とし、カラム温度40℃、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いて測定した。
【0081】
[樹脂(A)]
(PEG6000S)
ポリエチレングリコール、三洋化成工業製“PEG6000S”、質量平均分子量8,000、TmA0は64.0℃。予め真空オーブン中で減圧しながら30℃、7時間の条件にて乾燥したものを使用した。
【0082】
(Ecoflex)
ポリブチレンアジペート・テレフタレート、BASF製“Ecoflex F Blend C1200” 、質量平均分子量60,000、TmA0は120.2℃。予め真空オーブン中で減圧しながら80℃、7時間の条件にて乾燥したものを使用した。
【0083】
[エステル交換触媒]
(酢酸Mg)
金属塩(金属の有機酸塩)として、酢酸マグネシウム四水和物(和光純薬工業製)を用いた。
【0084】
(塩化Mg)
金属塩(金属のハロゲン化物塩)として、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業製)を用いた。
【0085】
(オクタン酸Sn)
金属塩(金属の有機酸塩)として、2−エチルヘキサン酸スズ(II)(和光純薬工業製)を用いた。
【0086】
(p−TSA)
硫黄酸として、p−トルエンスルホン酸(和光純薬工業製)を用いた。
【0087】
(
参考例1)
4032Dを40質量部、PEG6000Sを60質量部、塩化Mgを0.5質量部秤量して攪拌装置付きの試験管に加え、気圧1.0×10
5Paの窒素雰囲気中において攪拌しながら200℃で4時間溶融し、冷却・固化してサンプルAを得た。得られたサンプルAのラクチド量、質量平均分子量、およびDSC測定を行った。
【0088】
さらに、サンプルAを30質量部、4032Dを20質量部、4060Dを50質量部秤量して攪拌装置付きの試験管に加え、気圧1.0×10
5Paの窒素雰囲気中において攪拌しながら240℃で1時間溶融し、冷却・固化してサンプルBを得た。得られたサンプルBを粉砕後に真空オーブン中で減圧しながら50℃、7時間の条件にて乾燥し、220℃にて加圧することにより厚さ200μmの等方性プレスシートを得た。得られたプレスシートの弾性率および熱水抽出率を測定した。
【0089】
また、
参考例2および比較例1は、試験管に投入する原料の組成および溶融温度を表1および表2のとおりに変更した以外は、
参考例1と同様にしてサンプルを得た。
【0090】
さらに、比較例2〜3は、試験管に投入する原料の組成および溶融温度を表2のとおりに変更し、サンプルAを得る際に真空ポンプを使用して試験管内の気圧を1.0×10
3Paとした他は、
参考例1と同様にしてサンプルを得た。
【0091】
(
実施例1)
4032Dを40質量部、PEG6000Sを60質量部、塩化Mgを0.5質量部秤量してブレンドし、日本製鋼所製二軸押出機TEX30α(L/D=35、スクリュー径=30mm)に投入してスクリュー回転数200rpm、フィード量10kg/hにて溶融・混練を行い、口金から吐出させて冷却・固化してサンプルAを得た。なお、TEX30αの温度設定はホッパー下部から第一混練部の手前(スクリュー先端から計測してL/D=25の地点)までを80℃、第一混練部以降を200℃とした。また、スクリュー先端から計測してL/D=20の地点に存在するベント孔は開放状態とした。該地点における気圧は1.0×10
5Paであった。得られたサンプルAのラクチド量、質量平均分子量、およびDSC測定を行った。
【0092】
さらに、サンプルAを30質量部、4032Dを20質量部、4060Dを50質量部秤量して攪拌装置付きの試験管に加え、気圧1.0×10
5Paの窒素雰囲気中において攪拌しながら240℃で1時間溶融し、冷却・固化してサンプルBを得た。得られたサンプルBを粉砕後に真空オーブン中で減圧しながら50℃、7時間の条件にて乾燥し、220℃にて加圧することにより厚さ200μmの等方性プレスシートを得た。得られたプレスシートの弾性率および熱水抽出率を測定した。
【0093】
また、
実施例2〜7、比較例4〜7は、TEX30αに投入する原料の組成および押出温度を表1および表2のとおりに変更した以外は、
実施例1と同様にしてサンプルを得た。
【0094】
さらに、比較例8は、TEX30αに投入する原料の組成および押出温度を表2のとおりに変更した上で、TEX30αのスクリュー先端から計測してL/D=20の地点に存在するベント孔を真空ポンプに接続し、該地点の気圧を3.0×10
3Paとした他は、
実施例1と同様にしてサンプルを得た。
【0095】
得られたサンプルの物性を表1および表2に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
(
実施例8)
二軸押出機1として日本製鋼所製TEX30α(L/D=35、スクリュー径=30mm)、二軸押出機2として日本製鋼所製TEX44α(L/D=38、スクリュー径=44mm)を使用し、二軸押出機1から吐出された樹脂が二軸押出機2の途中(スクリュー先端から計測してL/D=18の地点)にサイドフィードされるように装置を構成した。
【0099】
4032Dを40質量部、PEG6000Sを60質量部、塩化Mgを0.5質量部秤量してブレンドし、二軸押出機1に投入してスクリュー回転数200rpm、フィード量10kg/hにて溶融・混練した。なお、二軸押出機1の温度設定はホッパー下部から第一混練部の手前(スクリュー先端から計測してL/D=25の地点)までを80℃、第一混練部以降を200℃とした。また、二軸押出機1のスクリュー先端から計測してL/D=20の地点に存在するベント孔は開放状態とした。該地点における気圧は1.0×10
5Paであった。
【0100】
さらに、4032Dを67質量部、4060Dを167質量部秤量してブレンドし、二軸押出機2に投入してスクリュー回転数200rpm、フィード量23.3kg/hにて溶融・混練した。なお、二軸押出機2の温度設定はホッパー下部から第一混練部の手前(スクリュー先端から計測してL/D=28の地点)までを150℃、第一混練部以降を220℃とした。また、二軸押出機2のスクリュー先端から計測してL/D=20の地点に存在するベント孔は開放状態とした。該地点における気圧は1.0×10
5Paであった。二軸押出機2の口金から吐出させた樹脂を冷却・固化してサンプルCを得た。得られたサンプルCを粉砕後に真空オーブン中で減圧しながら50℃、7時間の条件にて乾燥し、220℃にて加圧することにより厚さ200μmの等方性プレスシートを得た。得られたプレスシートの弾性率および熱水抽出率を測定した。
【0101】
また、
実施例9および比較例9は、二軸押出機1および2に投入する原料の組成を表3のとおりに変更した以外は、
実施例8と同様にしてサンプルを得た。
得られたサンプルの物性を表3に示した。
【0102】
【表3】
【0103】
(
実施例10)
二軸押出機として日本製鋼所製TEX30α(L/D=35、スクリュー径=30mm)を使用し、二軸押出機の途中(スクリュー先端から計測してL/D=18の地点)にサイドフィーダーを設置した。
【0104】
4032Dを40質量部、PEG6000Sを60質量部、塩化Mgを0.5質量部秤量してブレンドし、二軸押出機のメインホッパーに投入してスクリュー回転数200rpm、フィード量10kg/hにて溶融・混練した。なお、二軸押出機1の温度設定はホッパー下部から第一混練部の手前(スクリュー先端から計測してL/D=25の地点)までを80℃、第一混練部からサイドフィーダーまでを240℃とした。また、二軸押出機1のスクリュー先端から計測してL/D=20の地点に存在するベント孔は開放状態とした。該地点における気圧は1.0×10
5Paであった。
【0105】
さらに、4032Dを67質量部、4060Dを167質量部秤量してブレンドしてサイドフィーダーへ投入し、溶融・混練した。サイドフィーダー以降の温度設定は200℃とした。また、二軸押出機の口金から吐出させた樹脂は冷却・固化してサンプルDを得た。得られたサンプルDを粉砕後に真空オーブン中で減圧しながら50℃、7時間の条件にて乾燥し、220℃にて加圧することにより厚さ200μmの等方性プレスシートを得た。得られたプレスシートの弾性率および熱水抽出率を測定した。
【0106】
また、
実施例11〜12および比較例10〜11は、二軸押出機に投入する原料の組成を表4のとおりに変更した以外は、
実施例10と同様にしてサンプルを得た。
得られたサンプルの物性を表4に示した。
【0107】
【表4】
【0108】
(
実施例13)
4032Dを40質量部、PEG6000Sを60質量部、塩化Mgを0.5質量部秤量してブレンドし、プラスチック工学研究所製単軸押出機GT−40(L/D=28、スクリュー径=40mm)に投入してスクリュー回転数50rpm、フィード量10kg/hにて溶融・混練を行い、口金から吐出させて冷却・固化してサンプルAを得た。なお、GT−40の温度設定はホッパー下部を80℃、以降を200℃とした。また、途中のベント孔は開放状態とした。該地点における気圧は1.0×10
5Paであった。得られたサンプルAのラクチド量、質量平均分子量、およびDSC測定を行った。
【0109】
さらに、サンプルAを30質量部、4032Dを20質量部、4060Dを50質量部秤量して攪拌装置付きの試験管に加え、気圧1.0×10
5Paの窒素雰囲気中において攪拌しながら240℃で1時間溶融し、冷却・固化してサンプルBを得た。得られたサンプルBを粉砕後に真空オーブン中で減圧しながら50℃、7時間の条件にて乾燥し、220℃にて加圧することにより厚さ200μmの等方性プレスシートを得た。得られたプレスシートの弾性率および熱水抽出率を測定した。
【0110】
また、比較例12は、GT−40に投入する原料の組成を表5のとおりに変更した以外は、
実施例13と同様にしてサンプルを得た。
【0111】
さらに、比較例13は、GT−40のベント孔を真空ポンプに接続し、該地点の気圧を3.0×10
3Paとした他は、
実施例13と同様にしてサンプルを得た。
【0112】
得られたサンプルの物性を表5に示した。
【0113】
【表5】