(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記消音ダクトの前記第2の流入口は、前記噴射ノズルが噴射する前記洗浄水あるいはすすぎ水が直接当たらない位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の食器洗浄機。
【背景技術】
【0002】
従来の洗浄機能、すすぎ機能あるいは乾燥機能を備えた食器洗浄機は、通常、食器洗浄機筐体の内部に洗浄槽が納められている。洗浄槽には、洗浄槽内部の気化した水分を通気させる排気口が設けられており、この排気口が排気ダクトを介して外部排気口と連通している。これにより、洗浄及びすすぎ後に、洗浄槽及び食器に付着し残留している水分は、乾燥空気を流すことで蒸発し、その排気口から排気ダクトを通って外部排気口へ排出されるようになっている。
【0003】
洗浄工程においては、食器洗浄機に設けられている洗浄槽の内部に貯えられている洗浄水(水に洗剤を溶解させたもの)は、湯沸かしヒーターによって加温されて(加温されないこともある)、更に、加圧ポンプにて圧力を加えられて、ノズルから洗浄槽内の食器類に向かって噴射される。噴射された洗浄水は、食器類の汚れを落とす。洗浄工程は上記サイクルを連続的に行うことで、食器類の汚れを落とすことが可能となっている。
【0004】
すすぎ工程においては、洗浄水のかわりに洗剤を含まない水を用いる点が洗浄工程と異なっている。つまり、食器洗浄機に設けられている洗浄槽の内部に送り込まれる水は、湯沸かしヒーターなどによって加温されて(加温されないこともある)、更に、加圧ポンプにて圧力を加えられて、ノズルから洗浄槽内の食器類に向かって噴射される。噴射された水は、食器類に付着したままになっている洗浄水等を落とす。すすぎ工程は上記サイクルを連続的に行うことで、食器類をすすぐことが可能となっている。
【0005】
乾燥工程においては、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽及び食器類に残留している水分を取り除く為に、例えばファンを用いて乾燥空気を洗浄槽内に取り込む。取り込まれた乾燥空気は、食器類及び洗浄槽の水分を吸収し、湿潤空気として排気口から放出される。これにより、食器類は乾燥される。
【0006】
従来の食器洗浄機では、乾燥工程時に湿潤空気を排出するために、上記洗浄槽に設けられた排気口と外部排気口は、排気ダクトを介して連通し、更に、運転時に常時開放された状態となっている。これにより、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時にノズルより噴射される洗浄水又は水が、液体状態のまま入口部から排気ダクトの内面に侵入してしまい、排気ダクトの内面に衝突して衝突音を発生させていた。
【0007】
また、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時にノズルより噴射される洗浄水又は水が、少なくとも食器類と洗浄槽の壁面に衝突してしまい、衝突音を発生させ、この衝突音は洗浄槽に設けられた排気口から排気ダクトを介して外部排気口から、漏出されてしまっていた。これにより、食器洗浄機から騒音を発生させていた。
【0008】
そこで、前述の衝突音を低減するための手段として、湿潤空気を本体外へ排出する本体排気口を有し、ドア内部を排気ダクトにして、排気ダクト下部に洗浄槽から湿潤空気を排気ダクトに送る排気口を備え、排気口は洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄水あるいはすすぎ水によって排気口が閉塞されるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に記載の食器洗浄機は、ドア前面に湿潤空気を本体外へ排出する本体排気口を有しており、ドア内部の空間を排気ダクトとして利用している。排気ダクト下部に洗浄槽から湿潤空気を排気ダクトに送る排気口を備えている。本体排気口と排気ダクトは排気ダクト下部の排気口で排気経路を構成している。
【0010】
排気ダクト下部の排気口は、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に、洗浄槽内に給水された水の水位よりも低い位置に設けられている。これにより最も騒音の値が高い洗浄工程時あるいはすすぎ工程時には排気ダクトに連通する排気ダクト下部の排気口が水によって閉塞され、洗浄槽内で発生した騒音が本体外へ漏出され難くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
(全体の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る食器洗浄機の概略構成を示す右側方から見た断面図、
図2は、本発明の実施の形態1に係る食器洗浄機の正面図である。
図1と
図2により、本発明の実施の形態1の食器洗浄機の概略構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態1に係る食器洗浄機1は、少なくとも、食器洗浄機1の外郭となる筐体2と、食器かご6に載置された食器類91を収納する洗浄槽3(上面が開放している箱体)と、洗浄槽3の上面に設けられており洗浄槽3の開口部を開閉するふた体4と、洗浄槽3の前方に取り付けられ筐体2内部に納められている洗浄槽3を取り出す際に開閉するドア部5と、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に発生する騒音を低減し乾燥工程時に発生する湿潤空気を排出する消音ダクト15と、で構成されている。
【0021】
筐体2は、略直方体形状をした食器洗浄機1の外郭となる部材で、少なくとも、内部に洗浄する食器類91を収納する洗浄槽3と、洗浄槽3内の湿潤空気を排出する排気ユニット41と、食器洗浄機1の制御を司る制御装置9と、を内部に備えている。
【0022】
なお、
図1においてドア部5は、閉塞された状態で筐体2の構成要素と見えるように描かれている。本実施の形態1では、ドア部5は筐体2の構成要素であるとして説明する。
【0023】
洗浄槽3は、
図1に示されるように、底面部の少なくとも一部が鉛直下方向に突き出した凹部3aをもつ略箱形状をしている。洗浄部3の一部が鉛直下方向に突き出した凹部3aのいずれかの側面には、洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水の水位を検知する水位検知装置11aと、洗浄水あるいはすすぎ水の温度を検知する水温検知装置11bと、洗浄水あるいはすすぎ水を加温する湯沸しヒーター12と、洗浄水あるいはすすぎ水を加圧可能な加圧ポンプ13につながっている加圧ポンプ配管13aと、が取り付けられている。
【0024】
加圧ポンプ13は、洗浄槽3の外部に設けられており、鉛直上方向に設けられている加圧ポンプ配管13bと連結している。加圧ポンプ配管13bは、加圧ポンプ13から流通してきた洗浄水あるいはすすぎ水を洗浄槽3内に噴射する噴射口14aを備えた噴射ノズル14と連結している。
【0025】
つまり加圧ポンプ配管13bの一端は、加圧ポンプ13と連結しているため洗浄槽3の外部にあり、もう一方の端は洗浄槽3の底面を貫通し洗浄槽3内の噴射ノズル14と連結している。また、排水ポンプ16は、加圧ポンプ13と同様に洗浄槽3の外部に設けられており、洗浄槽3内に貯留されている洗浄水あるいはすすぎ水を排水する排水配管13cとつながっている。排水配管13cは少なくとも洗浄槽3の凹部3aのいずれかの側面につながっており、洗浄槽3の凹部3aと排水配管13cと排水ポンプ16は連通している。
【0026】
また、洗浄槽3の後方には、温風を発生させるための乾燥ユニット21が取り付けられている。この、乾燥ユニット21は、空気を洗浄槽3に供給するための乾燥用送風機22、その空気を加熱するための乾燥用ヒーター23及びそれらを内蔵するケーシング24で構成されている。
【0027】
そして、このケーシング24には、乾燥用送風機22が空気をケーシング24内に取り込むための送風開口部24aが形成されている。そして、食器洗浄機1の洗浄槽3のいずれかの側面には、食器類91の乾燥に必要な温風が通気する洗浄槽送風口3bが形成されており、洗浄槽3と乾燥ユニット21は連通している。こうして乾燥ユニット21は温風を洗浄槽3内部に送り込むことができるようになっている。
【0028】
図2に示すように、食器洗浄機1の正面にはドア部5が設けられている。ドア部5には、食器洗浄機1を動作させるスイッチ類からなる操作部7が設けられている。この操作部7には運転スイッチ8が設けられている。
【0029】
洗浄槽3の正面側上部は、洗浄槽排気口3cが形成されており、一方で、ドア部5の上部には外部排気口5aが形成されている。洗浄槽排気口3cと外部排気口5aの間は、排気ユニット41が取り付けられている。つまり、洗浄槽排気口3cと、排気ユニット41と、外部排気口5aは連通した構成となっている。
【0030】
図3は、
図1に示す断面図の正面に位置するドア部を正面方向に引いた状態を示す図である。ドア部5は、使用者から見て手前方向に引き出すことができるようになっており、引き出した際には少なくともドア部5と、排気ユニット41と、洗浄槽3(洗浄槽3に取り付けられている部材も含む)と、乾燥ユニット21も同時に引き出される構造になっている。
【0031】
排気ユニット41は、乾燥工程時に洗浄槽3から排出される湿潤空気によって開くシャッター43、及びこれを内蔵する排気ダクト44から構成されている。また、排気ダクト44の各面は、結露して生じた水を洗浄槽3に戻しやすくするために、全ての面が鉛直下方向に傾斜するように構成されている。
【0032】
最終的に、結露した水は、排気ダクト44の各面を伝っていき、洗浄槽排気口3cにまで至り、洗浄槽3に戻されるようになっている。
【0033】
なお、排気ユニット41の両端は、外部排気口5aの内壁側と洗浄槽3の外壁とにそれぞれ取り付けられている。そして、その取り付けに関して、洗浄槽3と排気ユニット41間と、排気ユニットと外部排気口5a間の気密性を確保するために、パッキン50が設けられている。
【0034】
ふた体4には、図示しないリンク機構の一端が取り付けられている。このリンク機構のもう一方の端は筐体2の内面上部に取り付けられている。このリンク機構により、洗浄槽3が引き出されるときにふた体4は持ち上がり、洗浄槽3を開放することが可能となっている。
【0035】
これにより、洗浄槽3が引き出されるときに、洗浄槽3と一緒に引き出されないようになっている。一方で、洗浄槽3が押し込まれたときには、このリンク機構によってふた体4が下がり洗浄槽3を閉塞することが可能となっている。
【0036】
図4は、本発明の実施の形態1に係る食器洗浄機の消音ダクトを洗浄槽側から見た斜視図である。消音ダクト15は、前述した洗浄槽排気口3cを覆うように洗浄槽内に消音ダクト15が取り付けられている。
【0037】
消音ダクト15の下端には洗浄槽3の内部に生じた湿潤空気を洗浄槽排気口3cに導くための第1の流入口15aを備えている。この第1の流入口15aを通じて、乾燥工程時に洗浄槽3と消音ダクト15は通気する構成になっている。
【0038】
第1の流入口15aは乾燥工程時に洗浄槽3と消音ダクト15と通気するようになっているが、第1の流入口15aは洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水の水位よりも低い位置に設けられている。
【0039】
よって、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時には、第1の流入口15aは洗浄水あるいはすすぎ水によって閉塞され、第1の流入口15aによる洗浄槽3と消音ダクト15の通気はしない状態となる。
【0040】
また、消音ダクト15の側壁には、第2の流入口15bを備えている。第2の流入口15bは、下端に形成された第1の流入口15aよりも上方の位置、言い換えると洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水の水位よりも高い位置に形成されている。
【0041】
よって、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時には、第2の流入口15bは洗浄水あるいはすすぎ水によって閉塞されることがなく、第2の流入口15bにより洗浄槽3と消音ダクト15の通気が可能な状態となっている。
【0042】
それから、消音ダクト15は、洗浄槽3の排気ダクト44内に設けられたネジ固定ボス18に、洗浄槽3の内側より挿入されるネジ19で固定されている。つまりネジ19は、洗浄槽3の側面を貫通し排気ダクト44内に設けられているネジ固定ボス18に至るようになっている。
【0043】
また、ネジ固定ボス18をネジ19は貫通することはない。ネジ19がネジ固定ボス18を貫通していると、その貫通部面から水漏れを起こすおそれがあるが、貫通していないので水漏れを起こすことが避けられる。上記の例では洗浄槽3にネジ固定ボス18を設け、洗浄槽3の内側よりネジ19で固定した方式を示したが、消音ダクト15を洗浄槽3に直接熱溶着するなど他の方式でも同様な固定ができるため、ネジによる固定に限定されるものではない。
【0044】
本実施の形態1において、消音ダクト15は、
図4に示すとおり洗浄槽3に取り付けられた状態では、上部が鉛直下方向に向かって直線的な形状をしており、上部から下部に向かういずれかの位置から下端部に向かうにしたがって横幅(食器洗浄機1が水平な床面に載置されたときに床面と水平な方向を横幅と定義する)が広がっていくような略箱状の形状をしていて、それにより、食器かごに設置する食器類と干渉しにくくなるという利点がある。
【0045】
例えば、消音ダクト15の横幅が上部から下部までの全てが広い場合には、洗浄槽3の内部容積が狭くなり、一度に洗浄できる食器類91の点数が減少してしまうおそれがあるが、前述のような構成であるので食器類91の点数が減少することがない。
【0046】
消音ダクト15は、洗浄槽3に取り付けられる面及び底面(洗浄槽3の底面と接する面)が開放された構造をしている。つまり、消音ダクト15は、天面と側壁からなる構成で、前記洗浄槽の内側で取り付けられる面に近接又は密着状態に設置された状態で、開放された取り付けられる面が洗浄槽3の内面で閉塞され、下端が開口した箱状となるもので、下端の開口は第1の流入口15aである。
【0047】
消音ダクト15の洗浄槽3に取り付けられる面は、洗浄槽3に取付けることでその面が洗浄槽3の内面で閉塞できるので、消音ダクト15に側壁を形成する必要が無く、その分の材料コストを抑えることができる。
【0048】
また、
図4に示すように消音ダクト15の天面を構成している部材は、洗浄槽3に取り付けられている面から洗浄槽3底面に向かう方向に傾斜を設けることにより、消音ダクトに付着した洗浄水あるいはすすぎ水が、洗浄槽3の底面に流れやすくなり、乾燥工程時に乾燥残りを軽減できる。
【0049】
なお、ここでは材料コストを抑えることを考慮し消音ダクト15の構造を洗浄槽3に取り付けられる面が開放したものとしたが、材料コストを抑えることを考慮しなければ、洗浄槽3に取り付けられる面に側壁を設け、消音ダクト15単体で箱状となるように形成してもよい。
【0050】
(動作)
次に、この実施の形態1に係る食器洗浄機1により食器類を洗浄及び乾燥する場合の動作について説明する。まず、
図3に示されるようにドア部5を手前側に引いて洗浄槽3を引き出し、食器かご6に洗浄、乾燥したい食器類91を食器かご6に収納し、洗浄槽3内に適量の洗剤(図示せず)を入れ、ドア部5を閉じる。
【0051】
次に、操作部7に設けられた運転スイッチ8を押し、機器の動作を開始させる。なお、動作については制御装置9が司り、その命令により各機能部品を動作させ、洗浄工程、すすぎ工程、加熱すすぎ工程、乾燥工程の順に進行させていくものである。
【0052】
洗浄工程が開始されるとまず、給水弁10が開かれて、洗浄槽3内への給水が行われる。このとき、洗浄槽3内の水位は、水位検知装置11aにて検知されており、所定の水位17aに達したことが検知されると、制御装置9は給水弁10を閉じるように信号を送信する。
【0053】
次に、湯沸かしヒーター12に通電し、貯留された水に図示しない洗剤を混入させた洗浄水を加熱すると共に、加圧ポンプ13に通電し、その洗浄水に圧力を与え、噴射ノズル14を利用し食器類91に洗浄水を噴射する。
【0054】
なお、洗浄は貯留された洗浄水を循環しながら行うもので、洗浄槽3底部へ落下した洗浄水を集め、再び加圧ポンプ13にて圧力を与え、噴射ノズル14を利用し食器類91に
洗浄水を噴射することを繰り返すものである。噴射ノズル14には洗浄水を噴射する噴射口14aが設けられている。
【0055】
それから、洗浄中の洗浄槽3内の水位17bは、所定の水位17aより低い位置になる。これは、洗浄中は洗浄水がノズル14の噴射口14aより噴射され、洗浄槽3内に飛び散っている分や、食器類に付着している分だけ少なくなるためである。
【0056】
また、洗浄中の洗浄槽3内の水位17bはノズル14の噴射口14aより低い位置になるように設定されている。これは、洗浄槽3内の水位17bがノズル14の噴射口14aより高いと、洗浄水を噴射することを妨げてしまうからである。
【0057】
洗浄は前述のように湯沸かしヒーター12により洗浄水を加熱しながら行うものであり、その洗浄水の温度は、洗剤に含まれる酵素の能力を最大限に発揮できる温度にするのが通常で、概ね60℃程度に設定される。洗浄水温は、水温検知装置11bにて監視されており、所定の温度に達したことを検知すると、湯沸かしヒーター12の通電を停止する。
【0058】
洗浄工程が開始され、所定の時間が経過すると、湯沸かしヒーター12、加圧ポンプ13の通電を停止すると共に、排水ポンプ16に通電し、洗浄槽3内に貯えられた洗浄水を外部に排水する。これにより、洗浄工程が終了する。
【0059】
洗浄工程が終了すると、続いてすすぎ工程が開始されるが、基本的な動作はほぼ洗浄工程と同様で、まず、給水弁10を開き、洗浄槽3内への給水を行い、水位検知装置11aにて所定の水位17aに達したことを検知し、給水弁10を閉じる。
【0060】
次に、加圧ポンプ13を稼働させて、すすぎ水は、圧力を与えられて、噴射ノズル14に設けられている噴射口14aから噴射される。その噴射されたすすぎ水は食器類91に噴きかけられ、食器類91に残った洗浄水や微細な汚れをすすぐ。
【0061】
そして、所定の時間が経過すると、加圧ポンプ13の通電を停止すると共に、排水ポンプ16を稼働して、洗浄槽3内に貯留されているすすぎ水を外部に排水する。このようなすすぎ工程は、数回繰り返される。なお、このすすぎ工程では湯沸かしヒーター12によるすすぎ水の加温はされない。
【0062】
次に、加熱すすぎ工程が開始されるが、基本的な動作は洗浄工程あるいはすすぎ工程と同様であり、上述したすすぎ工程に、湯沸かしヒーター12によるすすぎ水が加温されている点だけが異なる。
【0063】
なお、そのすすぎ水の温度は、洗浄の最後を仕上げる意味と、食器類91の温度を上げて乾燥性能を高めるために、洗浄水の温度よりも高い温度にするのが通常であり、概ね70℃以上(O−157対策では75℃以上)に設定される。
【0064】
洗浄及びすすぎ工程が完了すると、最後の工程である乾燥工程が開始される。まず、乾燥用送風機22に通電し、空気に圧力を与えると共に、乾燥用ヒーター23に通電する。乾燥用送風機の吸込み口は、排気ダクト44の上流側のドア部5又はドア部5と洗浄槽3との間の隙間に形成される。
【0065】
吸込み口より進入した外気は、制御装置9、排気ダクト44及び洗浄槽3の外壁を空冷し、乾燥用送風機22の入口に進入し、乾燥用ヒーター23によりその空気を加熱し温風に変え、洗浄槽送風口3bから食器類91に噴きかけられる。
【0066】
続いて、槽送風口3bから送り込まれた温風は、洗浄槽3の内部を通過し、消音ダクト15に形成された第1の流入口15a及び第2の流入口15bから消音ダクト内を通過し、洗浄槽排気口3cから排気ダクト44に入り、温風の力によりシャッター43が開き、外部排気口5aから食器洗浄機1の外へ排出されることになる。
【0067】
次に、消音ダクトの効果について詳しく説明する。前述のように、洗浄槽3の洗浄槽排気口3cを覆うように消音ダクト15が設けられている。消音ダクト15は箱状の形状をしており、下端には洗浄槽3の内部に生じた湿潤空気を排出するための第1の流入口15aを備えている。
【0068】
この第1の流入口15aは、前述したように洗浄工程時あるいはすすぎ工程時の洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水の水面よりも低い位置に設けられており、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄水あるいはすすぎ水によって閉塞されている。
【0069】
第1の流入口15aは、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄水あるいはすすぎ水によって完全に閉塞されるため、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽3内で発生した騒音は、第1の流入口15aから消音ダクトを通って外部排気口5aより漏出され難くなる。
【0070】
なお、第1の流入口15aは、洗浄水あるいはすすぎ水によって塞がれるサイズであれば比較的大きくしても問題なく、大きいほど洗浄工程時に食器類91から取り除かれた汚れが詰まり難くなる。つまり、第1の流入口15aを大きくすることで、乾燥時に汚れが詰まって洗浄槽3を正常に乾燥できなくなるといった不具合を防止することができる。
【0071】
前述した洗浄槽3と消音ダクト15だけでなく、水面によっても騒音の漏出が抑制される理由を説明する。音は物理学的にはエネルギーとして捉えられ、音は媒体物質を振動させることにより伝播し、媒体物質の振動に消費されたエネルギー分だけ減衰するということによるものである。
【0072】
特に、空気と水は密度が異なるため、音を伝える抵抗、すなわち固有音響インピーダンスが異なっている。固有音響インピーダンスは次式によって求められる。
p(密度:kg/m
3)×v(音速:m/s)=ρc(固有音響インピーダンス)
固有音響インピーダンスは物質によって変化し、特に気体(本実施の形態1では湿潤空気)に比べ液体(本実施の形態1では洗浄水又はすすぎ水)は大きいことが知られている。
【0073】
例えば、50℃の空気と水の固有音響インピーダンスの数値を以下に示す。
(例)50℃の空気:1.093(kg/m
3)
50℃の水:0.988x1000(kg/m
3)→空気の約1000倍である。
これは、気体と液体の境界面で固有音響インピーダンスが約1000倍異なることにより空気中の音エネルギーが水中へ入ることが少なくなることを示している。
【0074】
よって、洗浄室内において生じた洗浄水の衝突音のほとんどは排気ダクト44内へ伝わるまでに消音ダクト15にてエネルギーを減じられるため、これらの衝突音からなる騒音が外部へ漏出することが大幅に抑制されることを示している。
【0075】
なお、第1の流入口15aは、前述のように洗浄水で塞がれる大きさであれば比較的大きくしても問題なく、大きいほど水滴や、汚れ等で閉塞され難くなり、乾燥動作時の乾燥能力が低下することがない。
【0076】
ところで、消音ダクト15に第1の流入口15aだけを設けた場合、第1の流入口15aを閉塞してしまうと、逃げ場を失った湿潤空気は、洗浄槽3に残された唯一の開口である、送風開口部24aがある、洗浄槽3後方の乾燥ユニット21に殺到し、その経路中にある乾燥用ヒーター23や乾燥用送風機22が、結露に至るような湿潤環境下に直接曝されてしまうことになる。
【0077】
この乾燥用ヒーター23や乾燥用送風機22は、電気通電部が短絡する恐れのある、結露に至るような湿潤環境には耐えられるものは少なく、電気通電部が結露しないようにする環境配慮が必要である。
【0078】
このため、洗浄槽3内部の湿潤環境を、乾燥用ヒーター23や乾燥用送風機22が結露しない程度の環境にするよう、洗浄槽排気口3cを通じて、ある程度の湿潤空気を排出する必要があり、消音ダクト15には洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水に閉塞されない位置に、第2の流入口15bを設けている。
【0079】
第2の流入口15bは、洗浄水あるいはすすぎ水が貯留されている状態でも常に開口しているので騒音が全く漏出しない訳ではないが、洗浄槽排気口3cから漏出する殆どの騒音は、洗浄槽排気口3c周辺を直接叩く、噴射ノズル14に設けられた噴射口14aから噴射される洗浄水あるいはすすぎ水の衝突音であるので、洗浄槽3の洗浄槽排気口3cを覆うように設けられている消音ダクト15により抑制される。
【0080】
また、第2の流入口15bは
図5、
図6に示すように、噴射ノズル14に設けられた噴射口14aから噴射される洗浄水あるいはすすぎ水が直接当たらない側の側壁に設けられているので、第2の流入口15b周辺を直接叩く衝突音は発生しない。
【0081】
詳述すると、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に、噴射ノズル14は
図5に示す矢印Aの方向に、洗浄水あるいはすすぎ水の噴射の力で、ほぼ一定した回転数で回転する。噴射ノズル14は噴射口14aから洗浄水あるいはすすぎ水を食器類91と洗浄槽3内に噴射しながら回転しているので、消音ダクト15の第2の流入口15bが設けられていない側の側壁及び洗浄槽3の正面側(洗浄槽排気口3cが設けられている側)と対向する面には、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄水あるいはすすぎ水が定期的に噴射されることになる。
【0082】
しかし、
図5に示すように噴射ノズル14は矢印Aの方向に回転し、第2の流入口15bは、噴射ノズル14に設けられた噴射口14aから噴射される洗浄水あるいはすすぎ水が直接当たらない側の側壁に設けられており、洗浄水あるいはすすぎ水が第2の流入口15b周辺を直接叩くことはない。
【0083】
よって、第2の流入口15b周辺を直接叩く衝突音は発生しないので、第2の流入口15bを設けたことで洗浄槽開口部3cから漏出する衝突音が大きくなるという不具合は生じない。
【0084】
また、
図5に示すように、第2の流入口15bが設けられている側の消音ダクト15の側壁は、洗浄槽3の側壁との空間が広くないので、洗浄槽3の側壁を叩く洗浄水あるいはすすぎ水の衝突音があまり反響しないようになっている。
【0085】
それから、第2の流入口15bの大きさは、乾燥用ヒーター23や乾燥用送風機22が結露しない程度に通気できる大きさであればよく、洗浄槽開口部3cよりも小さくすることが可能であり、大部分の衝突音からなる騒音は、第1の流入口15aが洗浄水あるいはすすぎ水に閉塞されていることにより抑制が可能である。
【0086】
以上のように本発明の実施の形態1の食器洗浄機によれば、食器洗浄機1に、消音ダクト15が設けられることで、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時において、洗浄槽3内で発生した音のエネルギーは、洗浄槽3と消音ダクト15と洗浄水あるいはすすぎ水面とで囲われた空間で減衰する。つまり消音ダクト15内には、音の伝搬が抑制されるので、洗浄槽開口部3cから漏出する騒音を低減でき、使用者のキッチン環境を改善することができる。
【0087】
また、この消音ダクト15の下端に設けられている第1の流入口15aの大きさは洗浄槽3に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水の水面より下にあればよく、汚れの大きさより大きい第1の流入口15aとすることは容易であり、第1の流入口15aが詰まってしまうことを避けることができる。それにより乾燥工程時に通気する湿潤空気の流れは阻害されにくくなっていて、乾燥工程時の洗浄槽3内の乾燥能力が低下することが抑制できる。
【0088】
更には、消音ダクト15に第2の流入口15bを設けたので乾燥用ヒーターや乾燥用送風機を結露に至るような湿潤環境下に曝さないようにでき、信頼性を向上させることができる。
【0089】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る食器洗浄機1の消音ダクト15の斜視図、
図8は本発明の実施の形態2に係る食器洗浄機の消音ダクトを、第2の流入口とリブを通る箇所で切断して上方側から見た断面図である。この実施の形態2は、消音ダクト以外は本発明の実施の形態1と同様であり、ここでは実施の形態1と同様の箇所は説明を省略し、実施の形態1と異なる箇所について説明する。
【0090】
図7に示すように、消音ダクト15の側壁には、第2の流入口15bを設けている。この第2の流入口15bは、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水に閉塞されない位置に設けられている。
【0091】
消音ダクト15の内側には、第2の流入口15b寄りの位置に、平板状のリブ60が設けられている。リブ60は第2の流入口15bの長手方向の長さL1よりも長いL2の長さで設けられており、第2の流入口15bの長手方向の開口よりも上下に長くなっている。
【0092】
そのため、第2の流入口15bの外側から内側を見ると、リブ60により第2の流入口15bが遮られているようになっている。これにより、洗浄槽3内の騒音を遮ったり反射したりすることができ、直接消音ダクト15内に侵入することを抑制できるので洗浄槽開口部3cから漏出する騒音を低減できる。
【0093】
なお、
図8に示すようにリブ60の高さL3は、消音ダクト15の側壁の高さL4より1〜2mm程低くなっている。これは少しでも通気性の改善を図るためと、消音ダクト15を洗浄槽3に取付けるときに、リブ60が先に洗浄槽3に突き当たって消音ダクト15の側壁が浮いて隙間が生じないようにするためである。
【0094】
以上のように本発明の実施の形態2の食器洗浄機によれば、本発明の実施の形態1の食器洗浄機と同様の効果に加え、消音ダクト15の内側に洗浄槽3内の騒音を遮ったり反射したりする平板状のリブ60を設けたので、洗浄槽3内の騒音が直接消音ダクト15内に侵入しないようになり、洗浄槽3内の騒音が洗浄槽排気口3cから漏出する騒音をさらに低減でき、使用者のキッチン環境をより改善することができる。
【0095】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る食器洗浄機1の消音ダクト15の斜視図である。この実施の形態3は、消音ダクトのリブ形状以外は本発明の実施の形態1、2と同様であり、ここでは実施の形態1、2と同様の箇所は説明を省略し、実施の形態1、2と異なる箇所について説明する。
【0096】
図9に示すように、消音ダクト15の側壁には第2の流入口15bを設けている。この第2の流入口15bは、洗浄工程時あるいはすすぎ工程時に洗浄槽3内に貯留される洗浄水あるいはすすぎ水に閉塞されないように、第1の流入口から離れた上方位置に形成されている。
【0097】
消音ダクト15の内側には、第2の流入口15b寄りの位置に、波板状のリブ61が設けられている。リブ61は第2の流入口15bの長手方向の長さL1よりも長いL2の長さで設けられており、第2の流入口15bの長手方向の開口よりも上下に長くなっている。
【0098】
また、本発明の実施の形態2のリブ60と同様、リブ61の高さは、消音ダクト15の側壁の高さより1〜2mm程低くなっていて、通気性の改善を図り、消音ダクト15を洗浄槽3に取付けるときに、リブ60が先に洗浄槽3に突き当たって消音ダクト15の側壁が浮いて隙間が生じないようにしている。
【0099】
前述のようになっているので、第2の流入口15bの外側から内側を見ると、リブ60により第2の流入口15bが遮られているようになっている。これにより、洗浄槽3内の騒音を反射したり遮ったりすることができ、リブ61が波板状をしているので騒音の反射が直線的ではなく、さまざまな方向へ反射するようになる。よって、直接消音ダクト15内に侵入することを抑制できるので洗浄槽開口部3cから漏出する騒音を低減できる。
【0100】
以上のように本発明の実施の形態3の食器洗浄機によれば、本発明の実施の形態1の食器洗浄機と同様の効果に加え、消音ダクト15の内側に洗浄槽3内の騒音を遮ったり反射したりする波板状のリブ61を設けたので、洗浄槽3内の騒音が直接消音ダクト15内に侵入しないようになり、洗浄槽3内の騒音が洗浄槽排気口3cから漏出する騒音をさらに低減でき、使用者のキッチン環境をより改善することができる。