【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る塗装方法は、次のような構成を有している。
(1)ノズルヘッドに所定のピッチで形成した複数の微小孔から塗液を吐出して被塗布物に所定の幅の塗膜を形成する塗装方法であって、
前記ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液を、液柱状態のままで前記被塗布物に塗着させることを特徴とする。ここで、ノズルヘッドに形成した微小孔の配列は、一つの直線上に配列する場合に限らず、二つ以上の直線上に千鳥状に配列する場合等も含まれる。
【0008】
本発明においては、ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液を、液柱状態のままで被塗布物に塗着させるので、塗液の表面張力による影響を受けにくく、所定の幅で略均一な膜厚の塗膜を形成することができる。すなわち、液柱状態の塗液には、周囲から均等な表面張力が液柱の中心部に向かって作用する。そのため、液柱の中心部に対して対向する各表面張力が互いに相殺して、表面張力の液柱への影響を大幅に軽減させることができる。したがって、液柱状態の塗液は、塗液の粘度が多少変動しても、所定の径を維持したまま被塗布物に到達することができる。そして、被塗布物に到達して塗着された塗液は、互いの隙間を埋める方向に流れ、所定の幅で略均一な膜厚の塗膜を形成することができる。
また、塗液を微粒化させずに、液柱状態のままで被塗布物に塗着させるので、塗液が周囲に飛散することがなく、マスキングレスで塗膜の見切り部を鮮明に形成することができる。
また、液柱状態の塗液は、被塗布物の表面でノズルヘッドの移動方向と略直角方向へ均一に流れながら塗膜の見切り部を形成する。そのため、塗膜の見切り部は、被塗布物に向けてなだらかに湾曲した傾斜面を形成し、被塗布物に対して極端な段差が生じにくい。したがって、塗膜の見切り部において、塗膜割れや欠け等が生じにくく、塗膜の見切り部のみが盛り上がり、意匠上の見栄えを低下させることもない。
よって、被塗布物に対して、マスキングレスで、所定の幅の塗膜を略均一な膜厚で簡単に形成できる塗装方法を提供することができる。
【0009】
なお、塗液が塗液供給装置からノズルヘッドに供給される液圧は、0.1〜1.0MPaであり、微小孔は、孔径が0.1〜0.5mmであって、ピッチが0.2〜2.0mm程度であることが好ましい。特に、液圧は、0.2〜0.4MPa程度が、より一層好ましい。大気圧に近い低圧で微小径に液柱化された1本1本の塗液は、少量かつ低速で被塗布物に衝突する。そのため、塗液が被塗布物に衝突したとき、塗液の運動量が小さく跳ね返ることができないので、塗液を被塗布物に全量塗着させることができる。その結果、塗着効率100%を実現しつつ、所定の幅の塗膜を略均一な膜厚で簡単に形成できる。
【0010】
(2)(1)に記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドの移動方向後方には、当該ノズルヘッドと所定の間隔を隔てた位置に、前記被塗布物に向けてエアを吐出するエア供給装置を備え、前記被塗布物に塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成した後に、前記エア供給装置から吐出されるエアによって前記塗膜を乾燥させることを特徴とする。ここで、エア供給装置は、ノズルヘッドに連結してノズルヘッドと同時に移動させても良いし、ノズルヘッドとは別に把持して移動させても良い。エア供給装置から吐出されるエアは、常温のエアでも良いし、常温より温度が高いホットエアでも良い。ホットエアの温度は、40〜60℃程度が好ましい。
【0011】
本発明においては、ノズルヘッドの移動方向後方には、当該ノズルヘッドと所定の間隔を隔てた位置に、被塗布物に向けてエアを吐出するエア供給装置を備え、被塗布物に塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成した後に、エア供給装置から吐出されるエアによって塗膜を乾燥させるので、被塗布物に対して、所定の幅の塗膜をより一層均一な膜厚で、より迅速に形成することができる。
すなわち、ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液は、所定のピッチと径を維持したまま被塗布物に到達して、複数列の蒲鉾状塗液として被塗布物に塗着される。その複数列の蒲鉾状塗液は、互いの隙間を埋める方向に流れ、波打ち状態を経て、全体として略均一な膜厚の塗膜を形成する。そのため、複数列の蒲鉾状塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成するまでに、所定の時間が必要となる。したがって、被塗布物に塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成するのを待って、エア供給装置から吐出されるエアによって塗膜を乾燥させることによって、被塗布物に対して、所定の幅の塗膜をより一層均一な膜厚で、より迅速に形成することができる。
【0012】
なお、被塗布物の塗布面が傾斜したり湾曲している場合、所定の幅の塗膜を略均一な膜厚で形成した後、そのまま放置しておくと、塗膜のたれが生じやすいが、エア供給口から吐出されるエアによって塗膜を迅速に乾燥させることによって、塗膜のたれを防止して、見切り線を明瞭に形成することができる。したがって、被塗布物の塗布面が傾斜したり湾曲していても、意匠性の優れた所定の幅の塗膜を形成することができる。
【0013】
(3)(2)に記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドと前記エア供給装置との間には、遮蔽板を設け、当該遮蔽板によって、前記エア供給装置から吐出されるエアと前記ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、ノズルヘッドとエア供給装置との間には、遮蔽板を設け、当該遮蔽板によって、エア供給装置から吐出されるエアとノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させるので、ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液を、途中で変形や微粒化させることなく、被塗布物にそのままの状態で塗着させることができる。
すなわち、ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液は、微小径の液柱であるので、液柱状態の塗液が被塗布物に塗着されるまでの間に、エア供給装置から吐出されるエアに当接すると、途中で変形したり微粒化しやすくなる。液柱状態の塗液が、途中で変形したり微粒化すると、被塗布物に形成される塗膜の幅や膜厚の均一性、塗膜の見切り線の明瞭性が低下する。これを防止するため、ノズルヘッドとエア供給装置との間に、遮蔽板を設けることよって、エア供給装置から吐出されるエアとノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させる。その結果、ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液を、被塗布物にそのままの状態で塗着させ、所定の幅の塗膜をより一層均一な膜厚で、より一層迅速に形成することができる。
なお、ノズルヘッドの移動に基づいて、気流が移動するが、遮蔽板の移動方向前方には、気流が動かないエア滞留層が形成される。そのため、遮蔽板の移動方向前方に形成されるエア滞留層の範囲内にノズルヘッドを設けることによって、ノズルヘッドを高速で移動させた場合でも、液柱状態の塗液の変形や微粒化を防止する効果を奏することができる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドの移動方向前方には、前方遮蔽板を設け、当該前方遮蔽板によって、前記ノズルヘッドの移動方向前方から流れる気流と前記ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、ノズルヘッドの移動方向前方には、前方遮蔽板を設け、当該前方遮蔽板によって、ノズルヘッドの移動方向前方から流れる気流とノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させるので、空気抵抗による液柱状態の塗液の変形や微粒化を防止して、液柱化された1本1本の塗液を被塗布物上に所定のピッチで確実に塗着させることができる。そのため、液柱化された1本1本の塗料は、跳ね返ることなく均一に全量塗着されるので、塗液が拡張した時、全体としてより一層均一な厚さの塗膜を形成することができる。
なお、前方遮蔽板は、ノズルヘッドの幅と略同一の幅で中央部を移動方向前方へ突出させた湾曲形状に形成することが好ましい。上記形状の前方遮蔽板を設けることによって、ノズルヘッドから液柱状態の塗液が流下する範囲に、気流が動かないエア滞留層を確実に形成することができる。
【0017】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドの幅方向端部に形成した微小孔の孔径は、前記ノズルヘッドの幅方向中央部に形成した微小孔の孔径より小さいことを特徴とする。
【0018】
本発明においては、ノズルヘッドの幅方向端部に形成した微小孔の孔径は、ノズルヘッドの幅方向中央部に形成した微小孔の孔径より小さいので、ノズルヘッドの幅方向端部に形成した微小孔から吐出された液柱状塗液に対応して被塗布物へ形成した塗膜は、ノズルヘッドの幅方向中央部に形成した微小孔から吐出された液柱状塗液に対応して被塗布物へ形成した塗膜に比べて、膜厚を薄く形成することができる。そのため、塗膜の幅方向端部をラップさせながら塗布することによって、ノズルヘッドより広い幅の塗膜を、略均一な膜厚で形成することができる。