(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続部材は、平面視において、前記ソーラーパネルのうち、前記アンテナの中心と前記ソーラーパネルの中心とを結ぶ線と直交しつつ前記ソーラーパネルの中心を通る線を境界線として、前記アンテナが設けられる領域とは当該境界線を介して反対側の領域内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図6を参照しつつ、本発明に係る電子機器の実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
本実施形態では、電子機器が指針を運針させて時刻等の表示を行うアナログ式の時計(電子時計)である場合について説明する。
図1は、本実施形態における時計100の分解斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の時計100は、文字板1と、円偏波アンテナ4を含むモジュール3と、ソーラーパネル5とを備えている。
これらの文字板1、モジュール3、円偏波アンテナ4、ソーラーパネル5は、図示しないケースに収納されている。
【0014】
本実施形態において、文字板1は、時計100における視認側に配置されており、時針や分針等の指針2によって時刻を表示させるアナログ式の文字板である。
文字板1のほぼ中央部には、指針2が取り付けられる指針軸31を挿通させる貫通孔11が形成されている。
本実施形態の時計100は、後述するようにマイクロ波であるGPS電波を受信する円偏波アンテナ4を備えている。このため、文字板1は、マイクロ波を透過させる非金属材料で形成されていることが好ましく、例えば樹脂やガラス等により形成される。
また、時計100は、光を受光して発電するソーラーパネル5を備えている。このため、文字板1は、透明又は半透明の光透過性を有する材料で形成されている。
なお、文字板1は、例えば透明又は半透明の樹脂やガラス等で形成された基材の表面に、マイクロ波を減衰させず光の透過を妨げない程度の厚みの金属膜を蒸着したり、各種印刷を施したものであってもよい。
【0015】
モジュール3は、文字板1及びソーラーパネル5の下方(すなわち、時計100における裏面側)に配置され、例えば指針2を運針させるための輪列機構やモータ等で構成される時計ムーブメント、円偏波アンテナ4に接続された通信モジュール(いずれも図示せず)のほか、ソーラーパネル5で発生した電力を蓄える二次電池6や、指針2による時刻表示を行わせるための制御回路等の各種電子部品を搭載した回路基板7(いずれも
図2参照)等が、樹脂等で形成された図示しないハウジング内に収められたものである。
【0016】
本実施形態では、モジュール3のほぼ中央部に、ムーブメント側から上方に向けて突出する指針軸31が設けられている。
指針軸31は、時針用、分針用、秒針用等の複数の回転軸が同一軸上に重ねて配置されたものであり、後述するソーラーパネル5の貫通孔51及び文字板1の貫通孔11に挿通されて、各回転軸にこれと対応する指針2(例えば時針、分針、秒針)が接続されている。
ムーブメントの動作によって指針軸31が回転すると、指針軸31の各回転軸に取り付けられた各種指針2が、指針軸31の軸周りに文字板1の上面をそれぞれ個別に回転するようになっている。
【0017】
また、モジュール3内のうち、その外周に沿う一端部には、円偏波アンテナ4が配置されている。
この円偏波アンテナ4が配置される位置は、平面視において、円偏波アンテナ4の中心が文字板1における4時から6時を経て7時に至る領域の範囲内であることが好ましい。
【0018】
円偏波アンテナ4は、円偏波のマイクロ波であるGPS電波(すなわち、GPS衛星から送信される時刻情報等を含む電波)を受信可能なものであり、例えばパッチアンテナが好適に用いられる。
GPS電波には、各GPS衛星に搭載されている高精度原子時計による時刻情報と、約6日毎に更新される全衛星の概略精度の天体暦(すなわち、軌道情報)と、約90分毎に更新される衛星自身の天体暦とを含むデータが含まれており、各GPS衛星は、L1(1575.42MHz)又はL2(1227.60MHz)の周波数の電波(マイクロ波)によって、これらの情報を地上に送信している。
時計100は、円偏波アンテナ4により複数のGPS衛星のうちの少なくともいずれか1つからGPS電波を受信して、その中に含まれる時刻情報等を用いて時計100内部の時刻を正確な時刻に修正することができる。
また、GPS電波には、上記のように各GPS衛星の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。このため、時計100は、複数のGPS衛星からそれぞれ送信されたGPS電波を円偏波アンテナ4によって受信し、その中に含まれる時刻情報及び軌道情報等を用いて測位計算を行うことも可能である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の円偏波アンテナ4は、平面視において矩形に形成され、基台41と基台41の上に配置された放射電極42(放射素子)とを備えている。なお、円偏波アンテナ4の形状は図示例に限定されない。
基台41は、例えばセラミック等の誘電材料により形成されている。
放射電極42は、例えば所定厚さの銀箔、金属板又は金属膜等で構成されている。
放射電極42の大きさ(各辺の長さ等)は、円偏波アンテナ4によって受信すべき電波の周波数等に基づいて最適化されるものであり、本実施形態では、GPS電波の周波数帯において最も高いアンテナ特性を示すように調整されている。
また、円偏波アンテナ4において円偏波特性を有する位置、すなわち、インピーダンス整合が図れる位置には、放射電極42への給電を行う給電点43が設けられている。
なお、放射電極42に給電する方式は特に限定されない。
また、給電点43に対応する位置に、放射電極42に給電する図示しない給電部材(例えば、給電ピンや同軸ケーブル等)が挿通される図示しない貫通孔を円偏波アンテナ4の厚み方向に貫通して形成してもよい。
【0020】
本実施形態の円偏波アンテナ4は、モジュール3内のうち、指針軸31を避けた位置に配置される(
図5参照)。なお、円偏波アンテナ4を設ける位置や配置する向きは図示例に限定されない。
【0021】
円偏波アンテナ4は、放射電極42の周縁部(端部)から放射パターンが広がっていく。
本実施形態では、放射電極42はほぼ正方形に形成されており、各辺(周縁部)から広がる放射パターンが円偏波アンテナ4のアンテナ特性(アンテナの電波受信性能)に大きく影響する。
このため、円偏波アンテナ4のアンテナ特性を良好にするためには、放射電極42の周縁部からの放射パターンの広がりを阻害しないことが重要である。
【0022】
図2は、モジュール3の概略の内部構成を示す側面図である。
この図に示すように、モジュール3内には、前述した二次電池6及び回路基板7が収容されている。
二次電池6は、回路基板7の下方に配置されて、当該回路基板7と電気的に接続されている。
回路基板7は、二次電池6とソーラーパネル5とを電気的に接続させており、その上方のソーラーパネル5と電気的に接続されている。具体的には、回路基板7上の+電極71pが、コネクタ(接続部材)81pを介してソーラーパネル5(後述するソーラーセル50a)と電気的に接続されており、−電極71nが、コネクタ(接続部材)81nを介してソーラーパネル5(後述するソーラーセル50f)と電気的に接続されている。
【0023】
図3は、時計100の概略の制御構成を示すブロック図であり、主に時計100の蓄電(充電)機能を説明するためのものである。
この図に示すように、回路基板7上には、時計100の各部を統合制御するCPU(Central Processing Unit)72と、ソーラーパネル5から二次電池6への充電動作を制御する充電制御回路73とが実装されている。
CPU72は、充電制御回路73と電気的に接続されており、当該充電制御回路73の動作を制御する。また、CPU72は、図示は省略するが、円偏波アンテナ4に接続された通信モジュールや時計ムーブメント等とも電気的に接続されており、GPS電波中の時刻情報等に基づいて時刻修正したりするようになっている。
充電制御回路73は、ソーラーパネル5(後述する複数のソーラーセル50)及び二次電池6それぞれと電気的に直列接続されており、CPU72からの制御指令に基づいて、ソーラーパネル5から二次電池6への充電動作を制御する。
【0024】
また、回路基板7のうち、ソーラーパネル5と充電制御回路73(二次電池6)との配線経路上(本実施形態では、+電極71p側)には、インダクタ74が電気的に直列接続されている。
このインダクタ74は、ソーラーパネル5からの発電電流が円偏波アンテナ4におけるGPS電波の受信に及ぼす影響(ノイズ)を低減するためのチョークコイルであり、本実施形態では、約1mHのインダクタンス値を有している。より詳しくは、インダクタ74は、ソーラーパネル5からの発電電流に対する電気抵抗(本実施形態では、直流抵抗)としては低く振る舞いつつ、円偏波アンテナ4が受信する所定周波数の電波に対するインピーダンス(電気抵抗)を高める回路素子である。
【0025】
なお、インダクタ74を設ける位置は、ソーラーパネル5と二次電池6との配線経路上であれば特に限定はされないが、ソーラーパネル5に近い位置であることが好ましく、また、回路上への高周波電流の重畳を抑制する点では、経路長(導体の長さ)がより長い配線経路上の中途位置であることがより好ましい。したがって、インダクタ74は、+電極71p側でなく−電極71n側の配線経路上に設けられていてもよいが、
図4に示すように、+電極71p側と−電極71n側との2つの配線経路上にそれぞれ設けられていることがより好ましい。
【0026】
図1に示すように、ソーラーパネル5は、光を受光して発電するものであり、ソーラーパネル5により発電された電力は二次電池6に蓄電される。
本実施形態のソーラーパネル5は、文字板1とモジュール3との間に配置され、文字板1の面方向の面積に対応した面積を有している。
本実施形態の文字板1は、前述のように光透過性を有する材料で形成されており、ソーラーパネル5の面積を文字板1の面方向の面積に対応させることで、ソーラーパネル5の受光面積を最大限広く確保することができる。
なお、ソーラーパネル5の形状等は特に限定されない。ソーラーパネル5は、文字板1の面方向の面積にほぼ対応した面積を有し、文字板1とほぼ重なり合うものであればよく、その面積や形状が文字板1の面積や形状と一致していなくてもよい。
【0027】
図5は、本実施形態におけるソーラーパネル5の平面図であり、
図6は、
図5におけるVI−VI線に沿うソーラーパネル5の断面図である。
図1及び
図5に示すように、ソーラーパネル5のほぼ中央部には、指針軸31を挿通させる貫通孔51が設けられている。
本実施形態において、ソーラーパネル5は、受光部である複数のソーラーセル50(本実施形態では、6つのソーラーセル50a〜50f)のほかに、円偏波アンテナ4の放射電極42に対応する位置に配置された非発電部57を有している。
【0028】
ここで「放射電極42に対応する位置」とは、放射電極42の上方位置である。
前述のように、円偏波アンテナ4は、放射電極42の周縁部から放射パターンが広がっていくため、放射電極42の周縁部が電波の透過を阻害する部材によって覆われると、円偏波アンテナ4のアンテナ特性(電波受信性能)が劣化する。
これを防止するため、本実施形態では、ソーラーパネル5のうち、放射電極42の上方に位置する部分が、導電性材料を含まずに非導電性材料のみで構成されて受光・発電を行わない非発電部57となっている。
なお、非発電部57の大きさは、放射電極42よりもやや大きいことが好ましく、本実施形態では、ほぼ全周に亘って放射電極42よりも片幅2mm程大きく形成されている。
【0029】
ソーラーパネル5は、
図6に示すように、樹脂基板53の上に、各ソーラーセル50を構成する金属電極54,半導体層55及び透明電極56がこの順に積層され、さらにその上に保護層(保護フィルム)58が積層された構造となっている。また、各ソーラーセル50を構成する金属電極54,半導体層55及び透明電極56からなる積層構造の側面には、絶縁層59が配置されている。
【0030】
樹脂基板53は、フレキシブルなフィルム状の基板である。樹脂基板53を形成する材料は特に限定されないが、例えばプラスチック等で形成される。
金属電極54は、例えばアルミニウム導体等の金属材料を含んで形成されている。なお、金属電極54を形成する材料はこれに限定されない。
半導体層55は、例えばアモルファスシリコン(a-Si:H)等で形成されている。半導体層55としては、例えばp型半導体とn型半導体とが接合されたpn接合型の半導体が用いられる。
金属電極54や半導体層55は、例えば、樹脂基板53の上に蒸着等の手法により積層形成される。なお、樹脂基板53上に金属電極54や半導体層55を設ける手法はこれに限定されない。
また、透明電極56は、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等をガラス等の基板上に結晶化させることで形成されている。なお、透明電極56を形成する材料や形成手法はこれに限定されない。
【0031】
また、ソーラーパネル5のうちの非発電部57は、放射電極42の上方に位置する部分の金属電極54、半導体層55及び透明電極56を除去することによって形成されている。
金属電極54、半導体層55及び透明電極56を除去する手法は特に限定されず、例えばレーザーによる加工処理等が用いられる。また、積層後の金属電極54、半導体層55及び透明電極56を除去するのではなく、非発電部57を設ける部分(すなわち、放射電極42の上方に位置する部分)を避けて金属電極54、半導体層55及び透明電極56を積層することとしてもよい。
【0032】
本実施形態において、6つのソーラーセル50a〜50fは、
図1及び
図5に示すように、それぞれの出力電流がほぼ等しくなるようにほぼ等面積に形成されている。
ソーラーセル50a〜50fは直列接続されており、1つのソーラーパネルとして機能するようになっている。
具体的には、ソーラーセル50aは接続部52aにおいて隣接するソーラーセル50bと電気的に接続され、ソーラーセル50bは接続部52bにおいて隣接するソーラーセル50cと電気的に接続されている。同様にして、ソーラーセル50c〜50eは、接続部52c〜52eにおいて隣接するソーラーセル50d〜50fと電気的に接続されている。
また、ソーラーセル50aがコネクタ81pを介して回路基板7上の+電極71pと電気的に接続されており、ソーラーセル50fがコネクタ81nを介して回路基板7上の−電極71nと電気的に接続されている(
図2参照)。
これにより、6つのソーラーセル50a〜50fは、直列接続された状態で回路基板7と電気的に接続されている。
【0033】
なお、ソーラーパネル5と回路基板7とを電気的に接続する接続位置、すなわち、回路基板7の2つの電極71p,71nや2つのコネクタ81p,81nの位置は、6つのソーラーセル50a〜50fが直列接続されつつ回路基板7とも電気的に接続される位置であれば特に限定はされず、例えばソーラーセル50cやソーラーセル50d上であってもよい。
但し、この接続位置は、本実施形態のように、円偏波アンテナ4から離れた位置であることが好ましい。具体的には、当該接続位置は、平面視において、ソーラーパネル5のうち、円偏波アンテナ4の中心とソーラーパネル5の中心とを結ぶ線と直交しつつソーラーパネル5の中心を通る線を境界線として、円偏波アンテナ4が設けられた領域(
図5の下半部の領域)とは当該境界線を介して反対側の領域(
図5の上半部の領域)内に設けられることが好ましい。円偏波アンテナ4の位置が、前述のように、平面視での中心を文字板1における4時から6時を経て7時に至る領域の範囲内である場合には、当該接続位置は、文字板1における8時から12時を経て2時に至る領域の範囲内であることがより好ましい(
図1参照)。なお、円偏波アンテナ4がソーラーパネル5の中心を避けた位置に設けられていることは勿論である。
このように、ソーラーパネル5と回路基板7との接続位置を円偏波アンテナ4から離間させることにより、この接続位置に設けられる導電性材料(2つの電極71p,71nや2つのコネクタ81p,81n等)が円偏波アンテナ4から離れた位置に配置されることとなる。このため、円偏波アンテナ4の上方位置付近におけるソーラーパネル5のインピーダンスが、円偏波アンテナ4から離れた接続位置付近におけるソーラーパネル5のインピーダンスよりも高くなり、ひいては、ソーラーパネル5の導電性材料(ソーラーセル50の金属電極54、半導体層55及び透明電極56等)が円偏波アンテナ4におけるGPS電波の受信に及ぼす悪影響(電磁シールド効果)を低減することができる。
【0034】
また、本実施形態では、モジュール3に図示しない日車が配置されており、文字板1には日付を表示させる日付表示窓12が設けられている。
そして、ソーラーパネル5には、文字板1の日付表示窓12に対応する位置に、日付表示用の開口部511が形成されている。
本実施形態では、この日付表示用の開口部511を、ソーラーパネル5のうち受光・発電を行わない非発電部57に設けている。
これにより、ソーラーパネル5における発電量への影響を抑えつつ、つまり複数のソーラーセル50の総面積を殆ど減少させることなく、日付表示用の開口部511を設けることができる。
【0035】
次に、本実施形態における時計100の作用について説明する。
本実施形態の時計100では、視認側から文字板1を透過した光がソーラーセル50a〜50fを有するソーラーパネル5に入射すると、光が透明電極56を通過して半導体層55に入射する。半導体層55に光が入射すると、p型半導体とn型半導体との接合部付近で電子と正孔が発生する。発生した電子と正孔は、n型半導体、p型半導体の方にそれぞれ移動して起電力(光起電力)が発生する。その結果、透明電極56及び金属電極54に接続された回路に電流が流れる。このようにしてソーラーパネル5により発電された電力は、回路基板7を介して二次電池6に蓄電される。
このとき、回路基板7上におけるソーラーパネル5から二次電池6までの配線経路上に設けられたインダクタ74は、ソーラーパネル5からの発電電流(直流電流)に対する電気抵抗としてはほぼ0Ωであるため、当該発電電流を阻害することはない。これにより、ソーラーパネル5での発電電力は、好適に二次電池6に蓄電される。
【0036】
また、時計100では、文字板1を透過したGPS電波が円偏波アンテナ4に入射する。すると、回路基板7上のCPU72は、円偏波アンテナ4で受信されたGPS電波に含まれる時刻情報等に基づいて、時計100内部の時刻を正確な時刻に修正する。
【0037】
このとき、回路基板7上におけるソーラーパネル5から二次電池6までの配線経路上に設けられたインダクタ74により、ソーラーパネル5と二次電池6とを接続する充電回路のGPS電波の周波数におけるインピーダンスは極めて高くなる。
具体的に説明すると、回路のインピーダンスZは、理想的には、Z=2πfLで表される。ここで、fは信号の周波数であり、Lは回路のインダクタンス値である。GPS電波の周波数は前述の通り約1.5GHzであり、インダクタ74のインダクタンス値は前述の通り約1mHであることから、上式により、GPS電波の周波数における当該充電回路のインピーダンスZは約10kΩとなる。
このように、GPS電波の周波数における充電回路のインピーダンスが高くなることにより、充電回路には当該周波数においては電流が殆ど流れないこととなる。したがって、GPS電波の周波数帯においてはソーラーパネル5と回路基板7との電気的な接続状態をほぼオープンな状態とすることができるため、ソーラーパネル5の導電性材料(ソーラーセル50の金属電極54、半導体層55及び透明電極56等)が、円偏波アンテナ4におけるGPS電波の受信に及ぼす悪影響(電磁シールド効果)を低減することができる。
【0038】
またこのとき、円偏波アンテナ4における放射電極42の周縁部は、導電性材料(ソーラーセル50の金属電極54、半導体層55及び透明電極56等)によっては覆われていない状態となっているため、放射パターンの広がりは阻害されず、円偏波アンテナ4は良好にGPS電波を受信することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、回路基板7のうち、ソーラーパネル5と二次電池6とを電気的に接続する配線経路上に、ソーラーパネル5からの発電電流に対する直流抵抗としては低くなりつつ、円偏波アンテナ4が受信する電波に対するインピーダンスを高めるインダクタ74が設けられている。
このため、ソーラーパネル5から二次電池6への発電電流を阻害することなく、GPS電波の周波数における充電回路のインピーダンスを高くして、ソーラーパネル5の導電性材料が円偏波アンテナ4におけるGPS電波の受信に及ぼす悪影響を低減することができる。したがって、円偏波アンテナ4の上方にソーラーパネル5が配置された場合であっても、ソーラーパネル5と二次電池6とを接続する配線経路上にインダクタ74を設けるだけの簡便な構成で、円偏波アンテナ4でのGPS電波の受信及び二次電池6での蓄電を好適に行うことができる。
【0040】
また、回路基板7の+電極71p側と−電極71n側との2つの配線経路上にインダクタ74をそれぞれ設けることにより、ソーラーパネル5の導電性材料が円偏波アンテナ4におけるGPS電波の受信に及ぼす悪影響をさらに低減することができる。
【0041】
また、本実施形態では、ソーラーパネル5と回路基板7とが電気的に接続される接続位置が、円偏波アンテナ4から離れた位置となっている。すなわち、この接続位置は、平面視において、ソーラーパネル5のうち、円偏波アンテナ4の中心とソーラーパネル5の中心とを結ぶ線と直交しつつソーラーパネル5の中心を通る線を境界線として、円偏波アンテナ4が設けられる領域とは当該境界線を介して反対側の領域内に設けられている。
このため、当該接続位置に設けられる導電性材料(2つの電極71p,71nや2つのコネクタ81p,81n等)が円偏波アンテナ4から離れた位置に配置され、円偏波アンテナ4の上方位置付近におけるソーラーパネル5のインピーダンスが、円偏波アンテナ4から離れた接続位置付近におけるソーラーパネル5のインピーダンスよりも高くなる。したがって、ソーラーパネル5の導電性材料が円偏波アンテナ4におけるGPS電波の受信に及ぼす悪影響をさらに低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、円偏波アンテナ4がソーラーパネル5の下方に配置されており、ソーラーパネル5が、円偏波アンテナ4の放射電極42に対応する位置に、非導電性材料からなる非発電部57を有している。
このため、放射電極42の周縁部が導電性材料で覆われることがない。したがって、円偏波アンテナ4のアンテナ特性の劣化を抑制し、GPS電波を良好に受信することができる。
【0043】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0044】
例えば、上記実施形態では、円偏波アンテナ4が受信する所定周波数の電波に対するインピーダンスを高める回路素子として、約1mHのインダクタンス値を有するチョークコイルであるインダクタ74を設けることとしたが、当該回路素子はこれに限定されず、上記以外のインダクタンス値を有するチョークコイルであってもよいし、フィルタ等、その他のEMC対策部品であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ソーラーパネル5のうち、放射電極42に対応する位置に設けられる非発電部57が、導電性材料(金属電極54及び透明電極56)等を除去して残る非導電性材料からなるものであることとしたが、このような非発電部57を設けずに、放射電極42に対応する位置を開口部(樹脂基板53及び保護層58も無い部分)としてもよい。
【0046】
また、ソーラーパネル5の非発電部57は、
図7及び
図8に示すように、金属電極54のみが除去されたものであってもよい。
ここで、
図7は、ソーラーパネル5の変形例を示す平面図であり、
図8は、
図7におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。
これらの図に示すように、非発電部57は、金属電極54のみが除去されて、半導体層55及び透明電極56がソーラーセル50と同様に設けられていてもよい。透明電極56は、導電性材料で構成されてはいるものの、アルミニウム導体等で構成される金属電極54に比べれば電気伝導率が小さいため、円偏波アンテナ4のアンテナ特性に及ぼす悪影響も比較的に小さい。
また、非発電部57のうち表面側の透明電極56及び半導体層55がソーラーセル50と同様に設けられることにより、文字板1側から時計100を視認した際に、ソーラーセル50と非発電部57とが同様の見栄えとなる。
したがって、非発電部57を金属電極54のみが除去されたものとすることにより、円偏波アンテナ4のアンテナ特性の劣化を抑制しつつ、デザイン性を向上させることができる。
【0047】
また、ソーラーパネル5の非発電部57は、
図9に示すように、放射電極42の周縁部に対応する位置に設けられたものであってもよい。
ここで、
図9は、ソーラーパネル5の他の変形例を示す平面図である。
この図に示すように、非発電部57は、円偏波アンテナ4の放射電極42の全体ではなく、そのうちの周縁部に対応する位置のみに設けられた環状のものであってもよい。前述のように、円偏波アンテナ4のアンテナ特性を良好に保つためには、放射電極42の周縁部からの放射パターンの広がりを阻害しないことが重要である。このため、非発電部57を放射電極42の周縁部に対応する位置、すなわち当該周縁部の上方位置のみに設けることにより、円偏波アンテナ4のアンテナ特性の劣化抑制効果は十分に期待できる。この場合、非発電部57は、上述の変形例のように、金属電極54のみが除去されたものであってもよい。
また、この場合、非発電部57よりも内側(非発電部57に囲まれた領域)に、追加のソーラーセル50(ソーラーセル50g)を設けることで、ソーラーパネル5の受光部をより広く確保して発電能力を向上させることができる。なお、この場合に、追加したソーラーセル50gが他のソーラーセル50a〜50fと電気的に直列接続される(例えば図中の接続部52c,52gによって)ことや、当該他のソーラーセル50a〜50fとほぼ等面積に形成されることは勿論である。
したがって、非発電部57を放射電極42の周縁部に対応する位置に設けられたものとすることにより、円偏波アンテナ4のアンテナ特性の劣化を抑制しつつ、ソーラーパネル5の発電能力を向上させることができる。
【0048】
また、ソーラーパネルの分割の仕方(分割数や分割された各ソーラーセルの形状等)は、上記実施形態において例示したものに限定されない。
【0049】
また、上記実施形態では、円偏波アンテナ4を1つ設ける場合を例示したが、時計に設けられる円偏波アンテナ4の数はこれに限定されない。
【0050】
また、本発明に係るアンテナは、GPS電波を受信する円偏波アンテナに限定されず、Bluetooth(登録商標)やその他の高周波無線通信に対応したものなど、所定周波数の電波を受信可能なものであればよい。
【0051】
また、上記実施形態では、電子機器である時計が、文字板1上において指針2を回転させて時刻等を表示させるアナログ式の時計100である場合を例示したが、時計は、アナログ式のものに限定されない。
例えば、時刻やカレンダ情報等の各種情報を文字等により表示させる文字板(例えば、液晶表示部等)を備えるデジタル式の時計でもよい。また、アナログ式の表示部及びデジタル式の表示部の両方を備える文字板を電子機器に備えてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、本発明に係る電子機器が時計(電子時計)である場合を例示したが、当該電子機器はこれに限定されない。
本発明に係る電子機器は、ソーラーパネルにより光発電を行って、その発電電力を二次電池に蓄えるとともに、ソーラーパネルの近傍に配置されたアンテナにより所定周波数の電波を受信するものであればよく、例えば、歩数計、心拍計や脈拍計等の生体情報表示装置、移動距離や移動ペース情報、高度情報や気圧情報等の各種の情報を表示させる表示装置等であってもよい。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
光発電を行うソーラーパネルと、
前記ソーラーパネルで発生した電力を蓄える二次電池と、
前記ソーラーパネルの近傍に配置され、所定周波数の電波を受信するアンテナと、
前記ソーラーパネルと前記二次電池とを電気的に接続する回路基板と、
を備え、
前記回路基板のうち、前記ソーラーパネルと前記二次電池とを電気的に接続する配線経路上には、前記ソーラーパネルからの発電電流に対する電気抵抗としては低くなりつつ、前記アンテナが受信する電波に対する電気抵抗を高める回路素子が設けられていることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記回路基板は、
前記ソーラーパネルが電気的に直列接続される正電極及び負電極を有し、
前記回路素子が、正電極側と負電極側との前記配線経路上にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記ソーラーパネルと前記回路基板とが電気的に接続される接続位置は、平面視において、前記ソーラーパネルのうち、前記アンテナの中心と前記ソーラーパネルの中心とを結ぶ線と直交しつつ前記ソーラーパネルの中心を通る線を境界線として、前記アンテナが設けられる領域とは当該境界線を介して反対側の領域内に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
<請求項4>
当該電子機器が時刻の表示を行う電子時計であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電子機器。