(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空間の熱伝導の違いによる温度変化をもとに対象ガスを検出するセンサであって、対象ガスによる温度変化を測定する第1の感熱素子と前記第1の感熱素子を加熱する第1のヒータと、環境による温度変化を測定する第2の感熱素子と前記第2の感熱素子を加熱する第2のヒータとを備え、前記第1、第2の感熱素子は直列に接続されており、前記第1、第2のヒータにより前記第1、第2の感熱素子を加熱し、前記第1の感熱素子の温度変化を測定する第1の測定、前記第2の感熱素子の温度変化を測定する第2の測定を行うことを特徴とするガスセンサ。
前記第1の測定は前記第1のヒータにより加熱された状態で行い、前記第2の測定は前記第1、第2のヒータにより加熱されていない状態で行い、前記第1、第2のヒータへの印加電力の積算量がおおよそ等しいことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
前記第1の測定は、前記第1のヒータ通電後の一定時間後に前記第1のヒータにより加熱された状態で行い、前記第2の測定は、前記第2のヒータ通電停止後の一定時間後に前記第2のヒータにより加熱されていない状態で行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
前記第1および第2のヒータによる加熱はパルス電圧の印加により行い、パルス電圧の印加時間は、印加していない時間より短いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
前記第1の感熱素子の前記第1のヒータにより加熱された時の抵抗値と、前記第2の感熱素子の前記第2のヒータにより加熱されていないときの抵抗値は、おおよそ等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
前記第1、第2の感熱素子が形成された基板と、前記基板の同一基板上に環境温度を検知するための第3の感熱素子を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術には以下の課題が残されている。特許文献1では、ガス検出素子の出力を外付けの可変抵抗または差動増幅器を付加し、可変抵抗による分圧比または差動増幅器の増幅率を調整する必要があり、回路構成および演算処理が複雑になる。
【0007】
特許文献2の構成では発熱抵抗体から得られた信号を複数の演算処理により行う必要があり、回路構成が複雑になることが問題となる。
【0008】
そこで本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、感熱素子とヒータを用いて、対象ガスを検知するガスセンサにおいて、ヒータによる加熱による感熱素子の抵抗値が経時変化によって変動することで生じるセンサ誤差を複雑な回路を用いることなく、簡易な構成で低減することが可能なガスセンサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係わるガスセンサは、空間の熱伝導の違いによる温度変化をもとに対象ガスを検出するセンサであって、対象ガスによる温度変化を測定する第1の感熱素子と前記第1の感熱素子を加熱する第1のヒータと、環境による温度変化を測定する第2の感熱素子と前記第2の感熱素子を加熱する第2のヒータとを備え、前記第1、第2の感熱素子は直列に接続されており、前記第1、第2のヒータにより前記第1、第2の感熱素子を加熱し、前記第1の感熱素子の温度変化を測定する第1の測定、前記第2の感熱素子の温度変化を測定する第2の測定を行うことを特徴とするガスセンサである。
【0010】
本発明の請求項2に係わる発明は、前記第1の感熱素子の測定は前記第1のヒータが加熱されている状態で行い、前記第2の感熱素子の測定は前記第1、第2のヒータが加熱されていない状態で行い、前記第1、第2のヒータへの印加電力の積算量がおおよそ等しいことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサである。
【0011】
本発明の請求項3に係わる発明は、前記第1の感熱素子の加熱が行われている状態では、前記第2の感熱素子の加熱が行われないことを特徴とする請求項1から2に記載のガスセンサである。
【0012】
本発明の請求項4に係わる発明は、前記第1の測定は、前記第1のヒータ通電後の一定時間後に前記第1のヒータにより加熱された状態で行い、前記第2の測定は、前記第2のヒータ通電停止後の一定時間後に前記第2のヒータにより加熱されていない状態で行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスセンサである。
【0013】
本発明の請求項5に係わる発明は、前記第1および第2のヒータによる加熱はパルス電圧の印加により行い、パルス電圧の印加時間は、印加していない時間より短いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスセンサである。
【0014】
本発明の請求項6に係わる発明は、前記第1の感熱素子の前記第1のヒータにより加熱された時の抵抗値と、前記第2の感熱素子の前記第2のヒータにより加熱されていないときの抵抗値は、おおよそ等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガスセンサである。
【0015】
本発明の請求項7に係わる発明は、前記第1、第2の感熱素子はメンブレン構造の上に形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のガスセンサである。
【0016】
本発明の請求項8に係わる発明は、前記第1、第2の感熱素子が形成された基板と、前記基板の同一基板上に環境温度を検知するための第3の感熱素子を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のガスセンサである。
【発明の効果】
【0017】
第1の感熱素子と環境温度を測定する第2の感熱素子の双方に熱的負荷を加えることにしたので、感熱素子の経時変化による影響を低減することができる。
【0018】
第1の感熱素子と環境温度を測定する第2の感熱素子の双方におおよそ同量の熱的負荷を加えることにしたので、感熱素子の経時変化による影響をさらに低減することができる。
【0019】
第1の感熱素子と環境温度を測定する第2の感熱素子を加熱することにしたので、空間への熱的影響を低減することができる。
【0020】
感熱素子へのヒータの加熱が安定した状態になるので、安定して空間温度の測定を行うことができる。
【0021】
第1および第2のヒータによる加熱はパルス電圧の印加により行い、パルス電圧の印加時間は、印加していない時間より短くしたので、感熱素子への加熱による熱的負荷をより低減することができる。
【0022】
第1の感熱素子の前記第1のヒータにより加熱された時の抵抗値と、第2の感熱素子の前記第2のヒータにより加熱されていないときの抵抗値は、おおよそ等しくしたので、ブリッジ回路からの出力電圧がおおむね中点になることで信号処理を容易に行うことができる。
【0023】
メンブレン構造により感熱素子の熱容量を下げることにしたので、ヒータの加熱効果を効率的に得ることができる。
【0024】
更なる基準素子を用いることで第2の感熱素子の誤差を補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のガスセンサを説明するための断面構造図である。本実施形態によるガスセンサ1は、対象ガスによる温度変化を検出する第1の感熱素子2と、第1の感熱素子2の基準抵抗となる第2の感熱素子3を有し、測定環境に暴露された同じ空間に配置される。本実施例では、セラミックパッケージ4に第1の感熱素子2と第2の感熱素子3を配置し、測定環境に暴露させるために通気口6を備えたリッド5によりガスセンサ1を形成した。なお、図面は、模式的なものであり、説明の便宜上、厚みと平面寸法との関係、及びデバイス相互間の厚みの比率は、本実施形態の効果が得られる範囲内で現実のセンサ構造とは異なっていてもよい。
【0028】
第1の感熱素子2は、基板7、絶縁膜8、第1のヒータ9A、ヒータ保護膜10、薄膜サーミスタ電極11、薄膜サーミスタ12、薄膜サーミスタ保護膜13を備える。
【0029】
第2の感熱素子3は第1の感熱素子2と素子抵抗値を除き、同様に構成されている。このような構成にすることで、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3の抵抗値以外の素子特性を同じにすることができる。すなわち、熱容量の違いによる応答時間の差がなく、環境温度の変化に対して常に同じ挙動とすることができる。
【0030】
また、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3は同一基板上に形成されている。これにより、同じ基板上に形成した第2の感熱素子3を使って環境温度を測定するため、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3の温度差がなく、第1の感熱素子2の出力の基準抵抗とすることができる。
【0031】
更には、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3を隣接させて同時に形成することで、製造工程におけるばらつきを低減することが出来るので、素子間の特性がそろったものを作ることができる。これにより、素子間の特性がそろったものを組み合わせるといった選別工程をなくすことができる。
【0032】
基板7としては、適度な機械的強度を有し、且つエッチングなどの微細加工に適した材質であれば、特に限定されるものではない。例えば、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板などが好適である。基板の表面および裏面には、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜などの絶縁膜8が形成される。絶縁膜8として、例えばシリコン酸化膜を形成するには、熱酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)による成膜法を適用すればよい。膜厚は、絶縁膜8上に形成する膜と基板との絶縁がとれ、且つキャビティ14を形成する際のエッチング停止層として機能すればよい。通常0.1〜1.0μm程度が好適である。
【0033】
基板7には、第1のヒータ9Aを高温動作させた時に、熱が基板へ伝導するのを抑制するために第1のヒータ9Aの位置に対応して基板の一部を薄肉化したキャビティ14を有している。このキャビティ14により基板が取り除かれた部分はメンブレン15Aと呼ばれる。メンブレン15Aでは基板を薄肉化した分だけ熱容量が小さくなるため、非常に少ない消費電力で第1のヒータ9Aを高温にすることができる。また、基板7への伝導経路が数μmの薄膜部分のみで形成された断熱構造であるため、基板7への熱伝導が小さく、効率よく第1のヒータ9Aを高温にすることができる。
【0034】
第1のヒータ9Aの材質としては、薄膜サーミスタ12の成膜工程および熱処理工程などのプロセスに耐えうる導電性物質で比較的高融点の材料からなる金属層であって、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)又はこれら何れか2種以上を含む合金などが好適である。また、イオンミリングなどの高精度なドライエッチングが可能である導電材質であることが好ましく、さらに耐腐食性が高い、Ptなどがより好適である。また絶縁膜8との密着性を向上させるためにはPtの下部にはチタン(Ti)などの密着層を形成するのが好ましい。
【0035】
図1において、ガスによる第1のヒータ9Aの温度検出用の感熱体として、薄膜サーミスタ12が形成されている。薄膜サーミスタ12は薄膜サーミスタ電極11を備え、第1のヒータ9Aを覆うように形成される。これにより第1のヒータ9Aの温度を直接検出することができる。
【0036】
薄膜サーミスタ12を形成するサーミスタの材質としては、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウムなどの負の抵抗温度係数を持つ材料をスパッタ法、CVDなどの薄膜プロセスを用いて形成する。膜厚は目標とするサーミスタ抵抗値に応じて調整すればよく、例えばMnNiCo系酸化物を用いて室温での抵抗値(R25)を140kΩ程度に設定するのであれば、素子の電極間の距離にもよるが0.2〜1μm程度の膜厚に設定すればよい。
【0037】
なお、第1のヒータ9Aの温度検出としては薄膜サーミスタ12が好適である。まず、薄膜の積層構造であるために、ヒータ9Aの発熱を直上にて直接検出することができる。また、白金測温体などに比べて抵抗温度係数が大きいために、検出感度を大きくすることができるためである。
【0038】
薄膜サーミスタ12の電気信号を取り出す為に、薄膜サーミスタ電極11が形成される。薄膜サーミスタ電極11の材質としては、薄膜サーミスタ12の成膜工程および熱処理工程などのプロセスに耐えうる導電性物質で比較的高融点の材料、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)又はこれら何れか2種以上を含む合金などが好適である。
【0039】
ヒータ9A及び絶縁膜8を覆うようにヒータ保護膜10が形成される。ヒータ保護膜10としては、絶縁膜8と同じ材料であることが望ましい。ヒータ9Aは数百度にまで上昇し、次に常温へ下がるという熱ストレスを繰り返し受ける。この熱ストレスを継続的に受けると層間剥離やクラックといった破壊につながる。同じ材料同士は、異種材料を積層した場合に比べて材料特性が同じであり密着性が強固で機械的強度も強い。このため、ヒータ9Aの熱ストレスに対しても破壊を防止することができる。ヒータ保護膜10として、例えばシリコン酸化膜を形成するには、熱酸化法やCVDによる成膜法を適用すればよい。膜厚は、ヒータ9Aを確実に覆うことができ層間絶縁ができる厚みが良い。通常0.1〜3.0μm程度が好適である。
【0040】
また、薄膜サーミスタ12に、複合金属酸化物等を利用する場合においては、ヒータ保護膜10は、絶縁性を有する酸化膜であることが望ましく、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等が望ましい。ヒータ保護膜10の上には薄膜サーミスタ12および薄膜サーミスタ電極11が形成される。ヒータ保護膜10は、ヒータ9Aの保護膜であると同時に、薄膜サーミスタ12の下地層でもあり、薄膜サーミスタ12と直接接触する。
【0041】
一般的に、複合金属酸化物を利用したサーミスタは、高温で還元劣化があるためサーミスタ全体を耐還元材料でコーティングする方法が知られている。即ち、サーミスタを還元性を持つ材料と接触させて高温状態にすると、サーミスタから酸素を奪って還元を引き起こし、サーミスタ特性に影響を与えてしまう。よって薄膜サーミスタ保護膜13においてもシリコン酸化膜等の絶縁性を有する酸化膜であることが望ましい。
【0042】
また、同様な理由により、薄膜サーミスタ電極11は薄膜サーミスタ12の基板側に形成されていることが望ましい。すなわち、ヒータ9A上に、絶縁層であるヒータ保護膜10を介して、薄膜サーミスタ電極11、薄膜サーミスタ12の順に積層し形成されている。つまり、薄膜サーミスタ電極11の上に薄膜サーミスタ12が形成される。一般的に、薄膜電極は、電極材料と下地との密着力を上げるために密着層が形成される。例えばクロム(Cr)やチタン(Ti)等が数nm程度の膜厚で形成される。薄膜サーミスタ12上に薄膜サーミスタ電極11が形成された場合、この密着層が直接薄膜サーミスタと接触し、サーミスタからの酸素を奪う等により酸化することで、界面抵抗が上昇し薄膜サーミスタ7の検出特性が変動してしまい好ましくない。
【0043】
薄膜サーミスタ電極11、ヒータ9Aはメンブレン15Aの外で、電極パッド16と接続される。電極パッド16は、ワイヤーボンドなどでセラミックパッケージ電極18などを通して外部の回路と電気的接続され、例えばアルミニウム(Al)や金(Au)などの材料で形成され、必要に応じて積層してもよい。
【0044】
素子は、ウエハ状態から個片へと切断された後、ダイペースト(図示せず)を用いてパッケージ4に固定した後、電極パッド16と、パッケージ電極18を、ワイヤボンディング装置を用いて、ワイヤ17で接続する。ワイヤ17はAu、Al、Cuなど、抵抗の低い金属ワイヤが好適である。
【0045】
最後に、パッケージ4と外気との通気口6を設けたリッド5を、樹脂(図示せず)を用いて固定する。この際、樹脂(図示せず)の硬化の加熱時に、樹脂に含まれる物質がガスとなって発生するが、通気口6により容易にパッケージ外へ放出されるため、素子自体に悪影響を与えることはない。以上によりガスセンサ1を得ることができる。
【0046】
図2はガスセンサ1の等価回路図である。ガスセンサ1は第1の感熱素子2と前記第1の感熱素子2を加熱する第1のヒータ9Aと、第1の感熱素子2の基準抵抗となる第2の感熱素子3と第2のヒータ9Bで構成され、前記、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3は直列に接続される。すなわち第1の感熱素子2と第2の感熱素子3はハーフブリッジ回路に構成され、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3の中点電圧を測定することにより各々の感熱素子により温度変化を検出する。第1の感熱素子2への加熱は第1のヒータ9Aで行い、第2の感熱素子3への加熱は第2のヒータ9Bにより行い、ヒータ9A、9Bは各々独立に制御し駆動するよう構成されている。
【0047】
続いて、
図3を使ってガス検知動作を説明する。
図3は本実施形態におけるガスセンサのタイミングチャートである。ガスセンサ1は
図3に示すように第1のヒータ9Aおよび第2のヒータ9Bを間欠動作、いわゆるパルス駆動により動作させる。
【0048】
測定タイミングは、第1の感熱素子2を加熱する第1のヒータ9AがONのタイミングにおいてメンブレン15Aが加熱されており、一方で第2の感熱素子3は加熱する第2のヒータ9BがOFFに設定されている。その時の電圧出力Vd1は第1の感熱素子2によりガスによる空間温度変化に相当する。
【0049】
第1のヒータ9Aは、検出する対象ガスにもよるが例えば湿度(水蒸気)であれば一般的に150℃以上の温度に加熱される。これは、空気の温度が低いと空気の熱伝導率の変化が小さく感度が低下してしまうためである。
【0050】
メンブレン15A、15Bは非常に熱容量が小さいのでヒータ9A、9BがONになると直ちに所望の温度に到達し、OFFになると直ちに環境温度に戻る。
【0051】
感熱素子3を加熱する第2のヒータ9BをONにすることでメンブレン15Bを加熱する。この時、第1の感熱素子2は加熱されない状態とする。測定フローの1サイクルは第1、第2のヒータ9A、9BがOFFの状態でVd2を検出、第1のヒータ9AがOFFの状態で第2のヒータ9BがONされた後、第1のヒータ9AがONされVd1の検出、ヒータ9AがOFFされる。
【0052】
図4は本実施形態におけるセンサ素子および回路構成図概略、
図5は実施形態におけるガスセンサの測定フローチャートである。
図4に示すようにガスセンサ素子及び検知装置50は、第1の感熱素子2、第2の感熱素子3、第1のヒータ9A、第2のヒータ9B、MPU51、A/Dコンバータ52、D/Aコンバータ53、アンプ54、電源55で構成される。第1の感熱素子2と第2の感熱素子3は直列接続されており、
図3および
図5に示した動作タイミング、測定フローチャートによりVd1、Vd2信号を出力する。Vd2信号は環境温度の変化を示しており、周囲温度は第1の感熱素子2と第2の感熱素子3の変化として出力されるVd2をA/D変換しMPU51に於いて算出する。第1のヒータ9Aと、第2のヒータ9Bには、メンブレン15Aとメンブレン15Bとが周囲温度に影響されずに、予め定められた特定の温度に加熱されるようにMPU51で制御されたパルス電圧が印加される。Vd1信号はガスによる変化を示しており、Vd2信号より得た基準電圧をもとにアンプを通してMPUに出力され、ガス濃度に換算される。
【0053】
図5を基に、実施形態1に於けるガスセンサによるガス濃度の検出手順について説明する。
【0054】
ステップ101で、第1のヒータ9Aと第2のヒータ9Bへの通電を行わない状態で第1の感熱素子2と第2の感熱素子3から構成されるブリッジ回路からの出力信号Vd2を検出し、MPU51に取り込む。
【0055】
ステップ102にて、ステップ101で取り込んだ出力信号Vd2の値よりガスセンサが配置されている環境温度を算出する。
【0056】
ステップ103にて、ステップ101で取り込んだ出力信号Vd2の値とステップ102で求めた環境温度とを基に、出力信号Vd1に対する基準信号Vrefを演算で求める。
【0057】
ステップ104で、第1のヒータ9Aと第2のヒータ9Bへの通電・制御を行う。この通電により、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3が制御されたタイミングで交互に加熱される。
【0058】
ステップ105で、第1のヒータ9Aに通電が行われ、第1の感熱素子2が加熱されているタイミングで、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3から構成されるブリッジ回路からの出力信号Vd1を検出し、MPU51に取り込む。
【0059】
ステップ106、107にて、出力信号Vd1と出力信号Vd2との差分ΔVを演算することにより、環境下に於けるガス濃度が求められる。
【0060】
第1のヒータ9Aへの通電と第2のヒータ9Bへの通電による積算電力は等しくすることがより好ましい。例えばヒータ9A,9Bの設定抵抗値を同じとし、印可電圧、ON時間を等しく設定することで積算電力を等しくすることが出来る。これにより第1の感熱素子2と第2の感熱素子3の検知材料への熱的負荷を揃えることが出来、感熱素子の経時変化による影響をさらに低減することが出来る。
【0061】
第1のヒータ9Aへの通電と第2のヒータ9Bへの通電を同時に行わない状態で信号を検出することにより第2の感熱素子3を第1の感熱素子2の基準抵抗として用いることが出来る。また2つのヒータを同時に通電することによる空間への熱影響を低減することが出来る。
【0062】
第1の感熱素子2の測定は第1のヒータ9A通電後の一定時間後にヒータ9Aが加熱されている状態で行われ、第2の感熱素子3の測定は第2のヒータ9B停止後の一定時間後に加熱されていない状態で行うことが望ましい。これにより検知素子が熱的に安定な状態で信号を測定することが出来る。
【0063】
第1および第2のヒータへのパルス電圧の印加時間は印加していない時間より短くすることが望ましい。これにより感熱素子への熱的負荷をより低減することが出来る。
【0064】
第1の感熱素子2の第1のヒータ9Aで加熱された時の抵抗値と、第2の感熱素子3の第2のマイクロヒータ9Bで加熱されていないときの抵抗値はおおよそ等しいことが望ましい。これにより検出した電圧が測定電圧の中点近傍となることで測定レンジを広くとることが出来る。
【0065】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態のガスセンサを説明するための等価回路図である。本実施形態によるガスセンサ1は、対象ガス濃度を検出する第1の感熱素子2と、第1の感熱素子2の基準抵抗および周囲環境温度を検出する第2の感熱素子3を有する部分は同じであり、同一基板上に環境温度を検知するための第3の感熱素子20を備えたことが異なる。別の感熱素子を用いることで第2の感熱素子3の出力信号と比較することが出来、検出誤差を補正することができる。
【0066】
図7は第2の実施形態におけるガスセンサの回路構成図概略である。
図7に示すようにガスセンサ素子及び検知装置50は、第3の感熱素子20および基準抵抗21の中点から出力される信号Vd3がA/Dコンバータ52からMPU51で換算され、Vd1を比較することで環境温度を補正することが出来るので、ヒータ9A、9Bへの電源への制御信号をより精度よく制御することが可能になる。
【0067】
図8は第2の実施形態におけるガスセンサの測定フローチャートである。環境温度による出力Vd2を取り込んだのち、環境温度を算出する。それとは別に第3の感熱素子20および基準抵抗21から得られる信号Vd3を取り込み、Vd2から得られた信号と比較することで補正基準値Vrefを設定する。この信号によるヒータ9A、9Bが制御される。その後ガス検知信号Vd1を取り込むことで演算によりガス濃度を算出する。
別の感熱素子を用いることで第2の感熱素子3の出力信号と比較することが出来、検出誤差を補正することができる。
【0068】
図8を基に、実施形態2に於けるガスセンサによるガス濃度の検出手順について説明する。
【0069】
ステップ201で、第1のヒータ9Aと第2のヒータ9Bへの通電を行わない状態で第1の感熱素子2と第2の感熱素子3から構成されるブリッジ回路からの出力信号Vd2を検出し、MPU51に取り込む。
【0070】
ステップ202で、同一基板上に環境温度を検知するために用意された第3の感熱素子20の出力信号Vd3を検出し、MPU51に取り込む。
【0071】
ステップ203にて、ステップ201及び202で取り込んだ出力信号Vd2、Vd3の値よりガスセンサが配置されている環境温度を算出する。
【0072】
ステップ204にて、ステップ201で取り込んだ出力信号Vd2の値とステップ203で求めた環境温度とを基に、出力信号Vd1に対する基準信号Vrefを演算で求める。
【0073】
ステップ205で、第1のヒータ9Aと第2のヒータ9Bへの通電・制御を行う。この通電により、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3が制御されたタイミングで交互に加熱される。
【0074】
ステップ206で、第1のヒータ9Aに通電が行われ、第1の感熱素子2が加熱されているタイミングで、第1の感熱素子2と第2の感熱素子3から構成されるブリッジ回路からの出力信号Vd1を検出し、MPU51に取り込む。
【0075】
ステップ207にて、出力信号Vd1と出力信号Vd2との差分ΔVを演算することにより、環境下に於けるガス濃度が求められる。
【実施例1】
【0076】
本発明におけるガスセンサ素子1は第1の感熱素子2、第2の感熱素子3で構成されており、感熱素子2,3はNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタであり、温度が上昇すると抵抗値が下がる特徴を持っている。NTCサーミスタの温度に対する抵抗値は近似的に以下の式(数式1)で表すことが出来る。
(数式1)
R_TH=R_0 exp{B(1/T-1/T_0 )}
式中のRTHは温度Tに於けるサーミスタの抵抗値、R0は温度T0に於けるサーミスタ抵抗値で、Bは温度TとT0に於けるサーミスタ抵抗値RTH、R0の関係を表す定数である。第1の感熱素子2は、25℃で2000kΩを示し、150℃で65kΩを示し、B定数は3400である。第2の感熱素子3は、25℃で65kΩを示し、150℃で2.2kΩを示し、B定数は3400である。第1の感熱素子2の加熱時の抵抗値と第2の感熱素子の非加熱時の抵抗値はおおよそ等しくなっている。
【0077】
第1の感熱素子2の第1のヒータ9A、第2の感熱素子3の第2のヒータ9Bは白金抵抗であり、パルス電圧が印加されることでジュール熱により発熱する。第1のヒータ9A、第2のヒータ9Bの抵抗値134Ωであり、パルス電圧の立ち上り部の電圧の1.5Vが印加されることで、第1の感熱素子2、第3の感熱素子3をそれぞれ150℃に加熱する。以上の関係をまとめた表を
図9に示す。
【0078】
第1の感熱素子2の第1のヒータ9A、第2の感熱素子3の第2のヒータ9Bへの通電サイクルは
図3に示すように、おのおののヒータに300msec.ONしたのち、600msec.OFFする状態を300msec.ずらすことにより行った。これにより第1の感熱素子2と第2の感熱素子3へのヒータ9A、9Bによる印加電力を等しくした。
【0079】
Vd1の信号検出は第1の感熱素子2のヒータ9AをON後200msec.、Vd2の信号検出は第1の感熱素子2のヒータ9AをOFF後200msec.後に行った。測定サイクルはヒータONごとに行った。以上の関係をまとめた表を
図9に示す。
【0080】
感熱素子が150℃に加熱されることで、感熱素子に経時変化が起こる。その出力電圧変化への影響を
図11に示した。
【0081】
比較1として第2の感熱素子3の代わりに基準抵抗として抵抗値65kΩの固定抵抗を用いて、中点電圧の初期値からの変化量を比較した。感熱素子を使用した測定が行われると、第1の感熱素子2が第1のヒータ9Aに印加されるパルス電圧により150℃に加熱され、測定が長時間行われることで、加熱される時間が積算されて行く。それにより、固定抵抗を用いた比較例では第1の感熱素子2に経時変化が起こり、検知出力(Vd)に出力電圧変化が生じることになる。0hでの誤差を0.0%とすると、96hで0.86%、500hで2.27%、1000hで2.81%の誤差が生じることになる。
【0082】
実施例1では第1のヒータ9A、第2のヒータ9Bにより第1の感熱素子2、第2の感熱素子3に同じく経時変化が起こるため、検知出力(Vd)への影響は低減されることになる。同様に0hでの誤差を0.0%とすると、96hで0.07%、500hで0.09%、1000hで0.09%と経過時間による感熱素子への影響が低減されていることがわかる。以上によりセンサの誤差を低減したガスセンサ素子を提供することを示した。
【実施例2】
【0083】
実施例2においても第1の感熱素子2、第2の感熱素子3による経時変化の影響による出力変化による影響は同様に0.09%であった(図示せず)。第3の感熱素子20は固定抵抗と接続されておりブリッジ回路の中点電圧Vd3から環境温度を測定しているのでこの信号と比較補正することでより正確な温度換算、ガス濃度換算を行うことが出来る。