【文献】
古正 大二 外1名,“皮膚ダーモスコピー画像における経時変化定量のための位置合わせ処理および色補正処理”,電子情報通信学会2013年総合大会講演論文集 情報・システム2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年 3月 5日,p.194
【文献】
藤本 道重,“PCの悩みをアプリで解決! ソフトにキックオフ!”,PCfan,日本,(株)毎日コミュニケーションズ,2011年 6月 1日,第18巻,第6号,p.136〜137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示制御部が前記第1の皮膚画像及び/又は前記第2の皮膚画像を前記ダーモスコピー構造物の病変進行に合わせ時系列的に表示するように制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の医療用皮膚検査装置。
前記第1の強調部は、入力された信号の振幅を線形に伸張するように構成され、前記第2の強調部は、入力された信号の振幅を非線形に伸張するように構成されていることを特徴とする請求項9記載の医療用皮膚検査装置。
前記画像変換部の前記第1の分離部は、前記入力した第1の皮膚画像を、RGB色空間からCIELab色空間に変換する第1の色空間変換部を備え、CIELab色空間のL軸を輝度成分として前記第2の分離部に入力することを特徴とする請求項7記載の医療用皮膚検査装置。
前記画像変換部の前記第2の合成部は、CIELab色空間からRGB色空間に変換する第2の色空間変換部から構成されることを特徴とする請求項8記載の医療用皮膚検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0013】
図1は、医師が接触型のダーモスコープを用いて患者の腕の皮膚患部を診断している様子を示す図である。
【0014】
ダーモスコープ11とは、ハロゲンランプや白色LED等の光源を持つ拡大鏡である。光源により患者Sの患部にジェル等を塗布し、直接接触させて照射し、得られる画像を、例えば、目視又はダーモスコープ11を装着したデジタルカメラで撮影したデータをデジタル変換し、ディスプレイ(後述する表示部7)等に表示して観察するものである。
【0015】
ダーモスコピーを利用した観察対象として、メラノ―マ(悪性黒色腫)、色素細胞母斑(ホクロ)、基底細胞癌、脂漏性角化症などの色素性皮膚疾患及び血管腫、血腫などである。
【0016】
一例として、メラノサイト病変であるメラノーマやホクロを診断するものとする。医師Dは、ダーモスコープ11を用いて、患者Sの腕の皮膚患部を診断し、メラニン色素の分布を観察する。医師Dは、メラニン色素の分布を観察する場合、色素ネットワークと呼ばれる網目状の色素沈着パターンを観察する。色素ネットワークは、ホクロでみられる規則的な網目である定型的色素ネットワークとメラノーマでみられる不規則的な網目の非定形色素ネットワークに分かれる。定型的色素ネットワークは色調が均一で、辺縁で淡くぼやける傾向があり、網目が細く規則的な形状をしている。一方、非定形色素ネットワークは網目が太く、不均等であり、色調も縁片まで濃いものが多い。
【0017】
図2(a)に示すように肉眼E又はルーペによる観察では、角質20における乱反射があり、したがって、表面の凹凸は観察されるが、内部の色素分布や色合いがぼんやりとしか観察できない。一方、
図2(b)に示すように、ダーモスコープ11を用い、患部に超音波検査用のジェルJを付けるか変更フィルター等により反射を抑制すると表面の凹凸が無くなり、乱反射が消えるため表皮21内から真皮22浅層までの色素分布が観察できるようになる。よって、ダーモスコープ11を利用することにより、肉眼Eでは、不鮮明であったメラニン色素23を鮮明に観察することが可能となる。
【0018】
これに対して、本発明を適用することにより、より鮮明な画像を提供することが可能となる。
【0019】
図3は、本実施形態に係る医療用皮膚検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、実施形態の医療用皮膚検査装置100は、撮像部1と、撮像制御部2と、画像データ生成部3と、記憶部4と、記録媒体制御部5と、画像変換部6と、表示部7と、操作入力部8と、中央制御部9とを備えている。また、撮像部1、撮像制御部2、画像データ生成部3、記憶部4、記録媒体制御部5、画像変換部6、表示部7及び中央制御部9は、バスライン10を介して共通に接続されている。
【0020】
撮像部1は、所定の被写体を撮像してフレーム画像を生成する。具体的には、撮像部1は、レンズ部1aと、電子撮像部1bと、レンズ駆動部1cとを備えている。なお、撮像部1にダーモスコープ11が装着される。
【0021】
レンズ部1aは、例えば、ズームレンズやフォーカスレンズ等の複数のレンズから構成されている。
【0022】
電子撮像部1bは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)等のイメージセンサ(撮像素子)から構成されている。そして、電子撮像部1bは、レンズ部1aの各種レンズを通過した光学像を二次元の画像信号に変換する。レンズ駆動部1cは、例えば、図示は省略するが、ズームレンズを光軸方向に移動させるズーム駆動部、フォーカスレンズを光軸方向に移動させる合焦駆動部等を備えている。なお、撮像部1は、レンズ部1a、電子撮像部1b及びレンズ駆動部1cに加えて、レンズ部1aを通過する光の量を調整する絞り(図示略)を備えてもよい。
【0023】
撮像制御部2は、撮像部1による被写体の撮像を制御する。即ち、撮像制御部2は、図示は省略するが、タイミング発生器、ドライバなどを備えている。そして、撮像制御部2は、タイミング発生器、ドライバにより電子撮像部1bを走査駆動して、レンズ部1aを通過した光学像を電子撮像部1bにより所定周期毎に二次元の画像信号に変換させ、当該電子撮像部1bの撮像領域から1画面分ずつフレーム画像を読み出して画像データ生成部3に出力させる。
【0024】
また、撮像制御部(撮像制御手段)2は、撮像部1に対して露出条件を変えながら略等しい構図で複数回撮像するよう制御する。即ち、撮像制御部2は、所謂、露出ブラケット撮像の実行を制御し、撮像部1による被写体の撮像の際の露出条件を逐次設定する。即ち、撮像制御部2は、所定のプログラム線図に基づいて、電子撮像部1bのシャッター速度(露光時間)や信号増幅率(ISO感度)、絞りの絞り値等を調整する。そして、撮像制御部2は、例えば、適正露出を基準値として、この基準値に対してアンダー露出及びオーバー露出となるように、シャッター速度や信号増幅率や絞り値等を制御して、焦点距離を固定した状態で略等しい構図の複数枚の画像を撮像部1に連続して撮像させる。つまり、撮像制御部2は、略等しい構図の画像について明るさを複数段階に変更させて、複数枚の画像を撮像部1に連続して撮像させる。
【0025】
なお、撮像制御部2は、レンズ部1aのフォーカスレンズに代えて、電子撮像部1bを光軸方向に移動させてレンズ部1aの合焦位置を調整するようにしてもよい。
【0026】
また、撮像制御部2は、AF(自動合焦処理)、AE(自動露出処理)、AWB(自動ホワイトバランス)等の被写体を撮像する際の条件の調整制御を行ってもよい。
【0027】
画像データ生成部3は、電子撮像部1bから転送されたフレーム画像のアナログ値の信号に対してRGBの色成分毎に適宜ゲイン調整した後に、サンプルホールド回路(図示略)でサンプルホールドしてA/D変換器(図示略)でデジタルデータに変換し、カラープロセス回路(図示略)で画素補間処理及びγ補正処理を含むカラープロセス処理を行った後、デジタル値の輝度信号Y及び色差信号Cb,Cr(YUVデータ)を生成する。
【0028】
カラープロセス回路から出力される輝度信号Y及び色差信号Cb,Crは、図示しないDMAコントローラを介して、バッファ記憶部として使用される記憶部4にDMA転送される。
【0029】
記憶部4は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等により構成され、画像変換部6や中央制御部9等によって処理されるデータ等を一時的に格納する。記憶部4には、第1の記憶部41と、第2の記憶部42とが割り付けられ、第1の記憶部41には、ダーモスコープ11を介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像が記憶され、第2の記憶部42には、画像変換部6により得られるハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、ダーモスコピー構造物が明瞭化かつ顕在化された第2の皮膚画像が記憶される。第2の記憶部42に記憶される第2の皮膚画像は、第1の皮膚画像と対応付けられて記憶される。画像変換部6は、第1の記憶部41に記憶された過去のカルテの画像を用いてハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行うことも可能である。
【0030】
ここで、第1の記憶部41に、ダーモスコープ11を介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像が記憶されており、この画像は後述する
図4フローチャートのステップS1〜S3の処理、すなわち上述した合成処理を経て得られた合成画像であるが、過去のカルテのダーモスコピー構造物に係る画像を使用する場合は、当該過去の画像を第1の記憶部41に記憶させ、
図4ステップS4の画像強調処理へ進めばよい。その場合、過去のダーモスコピー構造物に係る画像がオリジナルな第1の皮膚画像となる。その後、画像変換部6によりハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、第2の皮膚画像が得られる。ハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理という用語は、
図4ステップS3の合成処理とステップS4の強調処理の少なくとも一方または両方に適用するものとする。
【0031】
記録媒体制御部5は、記録媒体Mが着脱自在に構成され、装着された記録媒体Mからのデータの読み出しや記録媒体Mに対するデータの書き込みを制御する。即ち、記録媒体制御部5は、所定の符号化方式(例えば、JPEG形式、モーションJPEG形式、MPEG形式など)に従って符号化された静止画像の画像データや複数の画像フレームからなる動画像の画像データを記録媒体Mから読み出して画像変換部6に転送する。
【0032】
なお、記録媒体Mは、例えば、不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)等により構成されるが、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。
【0033】
画像変換部6は、合成画像生成部6aと、画像取得部6bと、成分分離部6cと、第1生成部(第1生成手段)6dと、強調量取得部6eと、画素値補正部(補正手段)6fと、補正量調整部6gと、高周波成分取得部6hと、データ構成制御部(制御手段)6iと、第2生成部6jと、データ合成部6kとを具備している。なお、画像変換部6の各部は、例えば、所定のロジック回路から構成されているが、当該構成は一例であってこれに限られるものではない。
【0034】
合成画像生成部6aは、ダイナミックレンジを拡大させてなる合成画像を生成する。即ち、合成画像生成部6aは、撮像制御部2によって制御されて得た複数の画像データを画素加算し、ダイナミックレンジを拡大させてなる画像データを生成するよう制御する。具体的には、合成画像生成部6aは、略等しい構図で露出条件(例えば、適正露出、アンダー露出、オーバー露出等)を異ならせて複数回撮像された画像データを記憶部4から取得し、これら画像データの対応する画素の輝度成分どうしを加算することでダイナミックレンジを拡大させた合成画像の画像データ(YUVデータ)を生成する。なお、合成画像の画像データを生成する処理は、公知の技術であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
画像取得部6bは、画像強調処理(後述)の処理対象となる画像を取得する。即ち、画像取得部(取得手段)6bは、処理対象となる画像の画像データを取得する。具体的には、画像取得部6bは、合成画像生成部6aによって生成された合成画像の画像データを取得する。例えば、画像取得部6bは、合成画像生成部6aによって生成された合成画像の画像データ(YUVデータ)の複製を記憶部4から取得したり、記録媒体Mに記録されている合成画像の画像データの複製を取得したりする。なお、後述する画像変換部6による各処理は、合成画像の画像データ自体に対して行われてもよいし、必要に応じて合成画像の画像データを所定の比率で縮小した所定サイズ(例えば、VGAサイズ等)の縮小画像データに対して行われてもよい。
【0036】
成分分離部6cは、処理対象となる画像の成分を分離する。即ち、成分分離部(分離手段)6cは、画像取得部6bにより取得された所定の色空間の画像データを成分毎に分離する。具体的には、成分分離部6cは、例えば、画像取得部6bにより取得された合成画像の画像データを、輝度成分(輝度値)Y_hdrと色差成分U_hdr、V_hdrとに分離して出力する。
【0037】
なお、輝度成分(輝度値)Y_hdrと色差成分U_hdr、V_hdrとに分離するようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能であり、例えば、RGB色空間で各色成分毎に分離するようにしてもよい。
【0038】
第1生成部6dは、複数段階の各解像度で平滑化された複数段階の画素値を生成する。即ち、第1生成部(第1生成手段)6dは、画像取得部6bによって取得された処理対象となる画像の画像データの画素値に対して平滑化処理及び解像度変換処理を繰り返し施し、複数段階の各解像度で平滑化された、複数段階の画素値を生成する。具体的には、第1生成部6dは、ガウシアンピラミッドを用いて、画像取得部6bによって取得され成分分離部6cにより分離された合成画像の輝度成分(輝度値)Y_hdrに対して平滑化処理及び解像度変換処理を繰り返し施し、複数段階の各解像度で平滑化された複数段階の画素値を生成する。
【0039】
例えば、第1生成部6dは、合成画像の輝度成分Y_hdrに対して、平滑化処理及び解像度縮小処理を逐次繰り返していき、輝度成分Y_hdrのn段のガウシアンピラミッドY_G_pyramid[n]を生成する。つまり、当該ガウシアンピラミッドは、上位の階層(より大きい値の段)に行くほどより小さく平滑化されていき、輝度成分Y_hdrの大局的なコントラストが表現される。続けて、第1生成部6dは、輝度成分Y_hdrのn段のガウシアンピラミッドY_G_pyramid[n]の各段階毎にエッジ保存型フィルタを用いて平滑化し、n段の平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf[n]を生成する。ここで、エッジ保存型フィルタを用いることで、より小さい振幅のみを平滑化するようにする。
【0040】
これにより、画素値補正部6fによる画素値の補正(後述)にて、平坦部については、周波数帯域がより低域のディテールが強調されることとなり、例えば、大きな雲の立体感の演出など、ダイナミックなコントラスト強調表現が可能となる。また、ガウシアンピラミッドの段数nが少なくても、周波数帯域が低域のディテールを強調させ易くすることができる。なお、ガウシアンピラミッドを生成する処理は、公知の技術であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】
強調量取得部6eは、複数段階の各解像度毎の画素値の強調量を取得する。即ち、強調量取得部(第2取得手段)6eは、画像取得部6bによって取得された処理対象の画像の画像データの画素値と第1生成部6dにより生成された各段階毎の画素値との差分に基づいて、各段階毎の画素値の強調量を取得する。具体的には、強調量取得部6eは、例えば、輝度成分Y_hdrのn段の平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf[n]の各々を元サイズに拡大して戻し、n段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]を生成する。そして、強調量取得部6eは、処理対象の合成画像の各画素毎の輝度成分Y_hdrと当該輝度成分Y_hdrのn段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の各画素毎の輝度成分を「0」〜「1」の範囲の値でそれぞれ正規化し、それらの差分に基づいて輝度成分Y_hdrの各段階毎の強調量を取得する。
【0042】
画素値補正部6fは、複数段階の各解像度毎の画素値を補正する。即ち、画素値補正部(補正手段)6fは、画像取得部6bによって取得された処理対象の画像の画像データの画素値と第1生成部6dにより生成された各段階毎の画素値との差分に基づいて、当該各段階毎に取得された画像データの画素値を補正する。
【0043】
具体的には、画素値補正部6fは、例えば、強調量取得部6eによって取得された輝度成分Y_hdrの複数段階の各段階毎の強調量で、当該各解像度毎に輝度成分Y_hdrの画素値を強調する補正を行い、輝度成分Yのディテールを強調したn段の強調輝度成分Y_detail_up[n]を生成する。これにより、画素値補正部6fは、例えば、n段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]のうち、高解像度で平滑化レベルの低い下位段を用いると、周波数帯域が高域のディテールを強調した結果となる一方で、低解像度で平滑化レベルの高い上位段を用いると、周波数帯域が低域から高域の広い帯域のディテールを強調した結果となる。
【0044】
補正量調整部6gと、複数段階の各解像度毎の画素値の補正量を調整する。即ち、補正量調整部(調整手段)6gは、画素値補正部6fによる複数段階の各解像度毎の画素値の補正量を調整する。具体的には、補正量調整部6gは、強調量取得部6eによって取得された輝度成分Y_hdrの複数段階の各段階毎の強調レベルを調整する(
図6参照)。ここで、画素値の補正量の調整は、例えば、予め規定された複数の補正レベルの中で、ユーザによる操作入力部8の所定操作に基づいて指定された補正レベルで行われるようにしてもよいし、ユーザにより任意に指定されたレベルで行われるようにしてもよい。
【0045】
例えば、
図6は、入力画像の輝度値Yinと強調後の出力画像の輝度値Youtとの対応関係を示す図である。
図6中、Detail設定幅Dの基準位置(例えば、中心)は、n段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の各画素毎の輝度成分の値によって決定される。そして、補正量調整部6gは、処理対象の合成画像の各画素毎の輝度成分Y_hdrと当該輝度成分Y_hdrのn段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の各画素毎の輝度成分との差分が小さいほど強調レベル(ゲインレベル)を大きくするようにすることにより、輝度成分Yのうち、振幅が小さいディテール(高域成分を多く含まない部分)ほど強調される結果となり、ディテールを豊かに表現することができる。その一方で、輝度成分Yのうち、もともと振幅が大きいディテール(高域成分を多く含む部分)は強調されず、不要な強調を抑制することができる。
【0046】
なお、Detail設定幅Dを広くすると、高域成分に対しても高い強調効果が得られるようになるが、明暗差が大きい部分でのオーバーシュートやアンダーシュート発生の原因となる。
【0047】
高周波成分取得部6hは、複数段階の各段階毎の画素値について高周波成分を取得する。即ち、高周波成分取得部(第3取得手段)6hは、画素値補正部6fによって補正された各段階毎の輝度成分Yについて、複数段階の解像度で高周波成分を取得する。具体的には、高周波成分取得部6hは、ラプラシアンピラミッドを用いて、複数段階の各段階毎の輝度成分Yについて高周波成分を取得する。
【0048】
例えば、高周波成分取得部6hは、画素値補正部6fによって生成されたn段の強調輝度成分Y_detail_up[n]の各々について、n段のラプラシアンピラミッドを生成する。つまり、高周波成分取得部6hは、n段の強調輝度成分Y_detail_up[n]の各々を各群とする、n段×n群のラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_detail_up[n][n]を生成する。なお、ラプラシアンピラミッドを生成する処理は、n段の強調輝度成分Y_detail_up[n]の各段についてガウシアンピラミッドを生成し、隣り合う段同士で差分をとる公知の技術であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
データ構成制御部6iは、画素値が強調された画像データを構成する。即ち、データ構成制御部6iは、画素値補正部6fによって補正された画素値を有する各段階毎の画像データの、各段階の解像度に応じた高周波数成分を利用して、取得された画像データの画素値が強調されたものを構成するよう制御する。具体的には、データ構成制御部6iは、高周波成分取得部6hによって取得された複数段階の高周波成分のうち、画素値補正部6fにより補正された画素値の解像度に応じた高周波成分を特定し、画素値が強調された画像データを構成するよう制御する。
【0050】
例えば、データ構成制御部6iは、高周波成分取得部6hによって取得されたn段×n群のラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_detail_up[n][n]の各群から1段ずつ階層画像(輝度成分Y)を選択し、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]を生成する。ここで、選択方法としては、各群毎に群の値と同じ値の段の階層画像を選択する。例えば、データ構成制御部6iは、2群のY_L_pyramid_detail_up[n][2]からは、2段目の階層画像Y_L_pyramid_detail_up[2][2]を選択する。最後に、データ構成制御部6iは、n段のガウシアンピラミッドY_G_pyramid[n]のn段目の階層画像の複製を取得して、最上位段に組み込んで、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]を生成する。
【0051】
これにより、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]のうち、下位層には、画素値補正部6fによる画素値の補正にてn段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の下位層を用いて強調した周波数帯域が高域のディテール成分が格納される。また、中位層には、n段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の中位層を用いて強調した周波数帯域が中域〜高域のディテール成分の中から中域に対応する部分のみを抽出したディテール成分が格納される。また、上位層には、n段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の上位層を用いて強調した周波数帯域が低域〜高域のディテール成分の中から低域に対応する部分のみを抽出したディテール成分が格納される。つまり、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]には、画素値補正部6fによる画素値の補正にて強調した様々な周波数帯域のディテール成分が帯域を重複させることなく格納されることとなる。
【0052】
また、データ構成制御部6iは、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]を再構成して、輝度成分Y_final(輝度画像データ)を生成する。例えば、データ構成制御部6iは、上位段の階層画像から順に「拡大」及び「足し込み」の手順を繰り返す一般的な手法を用いて、ラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]を再構成して、輝度成分Y_finalを完成させる。
【0053】
第2生成部6jは、色差成分を強調した色差画像データを生成する。即ち、第2生成部(第2生成手段)6jは、データ構成制御部6iによって構成された画像データにおける輝度値の強調度合いに基づいて、成分分離部6cによって分離された色差成分U_hdr、V_hdrを強調した色差画像データを生成する。具体的には、第2生成部6jは、例えば、強調量取得部6eによって取得された輝度成分Y_hdrの強調量と略等しい度合いで色差成分U_hdr、V_hdrの値を増幅して、色差成分U_final、V_final(色差画像データ)を完成させる(図示略)。
【0054】
ここで、輝度成分Y_hdrの強調量は、当該輝度成分Y_hdrの複数段階の各段階毎の強調量のうち、何れか一の段階に対応する強調量であってもよいし、複数段階に対応する強調量に基づいて所定の演算を行うことで算出された強調量であってもよい。
【0055】
データ合成部6kは、輝度画像データと色差画像データとを合成する。即ち、データ合成部(合成手段)6kは、データ構成制御部6iによって構成された輝度成分Y_finalと第2生成部6jによって生成された色差成分U_final、V_finalとを合成して、画像処理済み画像HDR_finalの画像データを生成する。
【0056】
表示部7は、表示パネル7aと、表示制御部7bとを具備している。表示パネル7aは、表示画面内に画像を表示する。なお、表示パネル7aとしては、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネルなどが挙げられるが、一例であってこれらに限られるものではない。
【0057】
表示制御部7bは、記憶部4に一時的に格納されている表示用の画像データを読み出して、画像変換部6により復号された所定サイズの画像データに基づいて、所定の画像を表示パネル7aの表示画面に表示させる制御を行う。具体的には、表示制御部7bは、VRAM(Video Random Access Memory)、VRAMコントローラ、デジタルビデオエンコーダなど(何れも図示略)を備えている。そして、デジタルビデオエンコーダは、画像変換部6により復号されてVRAMに記憶されている輝度信号Y及び色差信号Cb,Crを、VRAMコントローラを介してVRAMから所定の再生フレームレート(例えば、30fps)で読み出して、これらのデータを元にビデオ信号を発生して表示パネル7aに出力する。
【0058】
例えば、表示制御部7bは、静止画撮像モードや動画撮像モードにて、撮像部1及び撮像制御部2による被写体の撮像により生成された複数のフレーム画像を所定のフレームレートで逐次更新しながらライブビュー画像Gを表示パネル7aに表示させる。また、表示制御部7bは、静止画として記録される画像(レックビュー画像)を表示パネル7aに表示させたり、動画として記録中の画像を表示パネル7aに表示させたりする。
【0059】
また、表示制御部7bは、例えば、
図8に画面構成の一例が示されるように、第1の皮膚画像及び第2の皮膚画像の少なくとも一方を表示し、双方を表示するときは並置して表示するように制御する。さらに、表示制御部7bは、例えば、
図9に画面構成の一例が示されるように、第1の皮膚画像及び/又は第2の皮膚画像をダーモスコピー構造物の病変進行に合わせ時系列的に表示するように制御してもよい。
【0060】
操作入力部8は、当該医療用皮膚検査装置100の所定操作を行うためのものである。具体的には、操作入力部8は、被写体の撮像指示に係るシャッタボタン、撮像モードや機能等の選択指示に係る選択決定ボタン、ズーム量の調整指示に係るズームボタン等(何れも図示略)の操作部を備え、当該操作部の各ボタンの操作に応じて所定の操作信号を中央制御部9に出力する。
【0061】
中央制御部9は、医療用皮膚検査装置100の各部を制御するものである。具体的には、中央制御部9は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)等を備え、医療用皮膚検査装置100用の各種処理プログラム(図示略)に従って各種の制御動作を行う。
【0062】
<撮像処理>
次に、医療用皮膚検査装置100の動作について、
図4〜
図9を参照して説明する。
図4は、撮像処理に係る動作の一例を示すフローチャートである。
【0063】
撮像処理は、ユーザによる操作入力部8の選択決定ボタンの所定操作に基づいて、メニュー画面に表示された複数の動作モードの中から強調画像撮像モードが選択指示された場合に、中央制御部9の制御下にて当該医療用皮膚検査装置100の各部により実行される処理である。
【0064】
図4に示すように、先ず、中央制御部9のCPUは、ユーザによる操作入力部8のシャッタボタンの所定操作に基づいて撮像指示が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1における撮像指示が入力されたか否かの判定は、当該撮像指示が入力されたと判定されるまで(ステップS1;YES)、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0065】
ステップS1にて、撮像指示が入力されたと判定されると(ステップS1;YES)、中央制御部9のCPUは、撮像制御指令を撮像制御部2に対して出力し、撮像制御部2は、撮像部1を制御して露出条件を変えながら連続して複数枚の画像を撮像させる(ステップS2)。具体的には、撮像制御部2は、例えば、適正露出を基準値として、この基準値に対してアンダー露出及びオーバー露出となるように、シャッター速度や信号増幅率や絞り値等を制御して、焦点距離を固定した状態で略等しい構図の複数枚(例えば、3枚等)の画像を撮像部1に連続して撮像させる。そして、画像データ生成部3は、連続して撮像された各画像の画像データを生成して、記憶部4に出力する。既に存在している過去の皮膚画像を使用する場合はこのステップS1〜S3は省略することができる。
【0066】
次に、画像変換部6の合成画像生成部6aは、記憶部4から連続して撮像された各画像の画像データを取得して、これら画像データの対応する画素の輝度成分どうしを加算することでダイナミックレンジを拡大させた合成画像の画像データ(YUVデータ)を生成する(ステップS3)。
【0067】
続けて、画像変換部6は、合成画像のディテール及びコントラストを強調する画像強調処理(
図5参照)を行う(ステップS4)。
【0068】
<画像強調処理>
以下に、画像強調処理について
図5を参照して説明する。
図5は、画像強調処理に係る動作の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、先ず、画像変換部6の画像取得部6bは、合成画像生成部6aによって生成された合成画像の画像データの複製を取得して、成分分離部6cは、合成画像の画像データを輝度成分(輝度値)Y_hdrと色差成分U_hdr、V_hdrとに分離する(ステップS11)。次に、第1生成部6dは、合成画像の輝度成分Y_hdrに対して、平滑化処理及び解像度縮小処理を逐次繰り返していき、輝度成分Y_hdrのn段のガウシアンピラミッドY_G_pyramid[n]を生成する(ステップS12)。続けて、第1生成部6dは、輝度成分Y_hdrのn段のガウシアンピラミッドY_G_pyramid[n]の各段階毎に平滑化して、n段の平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf[n]を生成する(ステップS13)。
【0069】
次に、強調量取得部6eは、第1生成部6dによって生成された輝度成分Y_hdrのn段の平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf[n]の各々を元サイズに戻し、n段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]を生成する(ステップS14)。続けて、強調量取得部6eは、合成画像の各画素毎の輝度成分Y_hdrと当該輝度成分Y_hdrのn段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の各画素毎の輝度成分を「0」〜「1」の範囲の値でそれぞれ正規化し、それらの差分に基づいて輝度成分Y_hdrの各段階毎の強調量を取得する(ステップS15)。
【0070】
次に、画素値補正部6fは、強調量取得部6eによって取得された輝度成分Y_hdrの複数段階の各段階毎の強調量に基づいて、輝度成分Y_hdrを各解像度毎に補正して、n段の強調輝度成分Y_detail_up[n]を生成する(ステップS16参照)。
【0071】
次に、高周波成分取得部6hは、画素値補正部6fによって生成されたn段の強調輝度成分Y_detail_up[n]の各々を各群とする、n段×n群のラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_detail_up[n][n]を生成する(ステップS17)。
【0072】
次に、データ構成制御部6iは、高周波成分取得部6hによって取得されたn段×n群のラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_detail_up[n][n]の各群から1段ずつ階層画像(輝度成分Y)を選択するとともに、n段のガウシアンピラミッドY_G_pyramid[n]のn段目の階層画像の複製を最上位段に組み込んで、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]を生成する(ステップS18)。続けて、データ構成制御部6iは、n段の最終的なラプラシアンピラミッドY_L_pyramid_final[n]の上位段の階層画像から順に「拡大」及び「足し込み」等を行って再構成し、輝度成分Y_finalを生成する(ステップS19)。
【0073】
次に、第2生成部6jは、強調量取得部6eによって取得された輝度成分Y_hdrの強調量と略等しい度合いで色差成分U_hdr、V_hdrの値を増幅して、色差成分U_final、V_finalを生成する(ステップS20)。続けて、データ合成部6kは、輝度成分Y_finalと色差成分U_final、V_finalとを合成して、画像処理済み画像HDR_finalの画像データを生成する(ステップS21)。そして、画像変換部6は、画像処理済み画像HDR_finalの画像データを所定の圧縮形式で符号化して、記憶部4に出力する。
【0074】
図4に戻り、記録媒体制御部5は、記憶部4から符号化処理後の画像処理済み画像HDR_finalの画像データを取得して、記録媒体Mの所定の格納領域に記録させる(ステップS5)。これにより、撮像処理を終了する。
【0075】
以上のように、実施形態の医療用皮膚検査装置100によれば、取得画像の画像データの画素値(例えば、輝度値)と取得画像の画像データが複数段階の各解像度で平滑化された複数段階の画素値との差分に基づいて、当該各段階毎に取得された画像データの画素値を補正して、補正された画素値を有する各段階毎の画像データの、各段階の解像度に応じた高周波数成分を利用して、取得された画像データの画素値が強調されたものを構成することができる。
【0076】
具体的には、ガウシアンピラミッドを用いて、取得画像の画像データの画素値に対して平滑化処理及び解像度変換処理を繰り返し施し、複数段階の各解像度で平滑化された複数段階の画素値を生成することができる。このとき、複数段階の各解像度でエッジ保存型フィルタを用いて平滑化することで、より少ない段数で低周波数域のコントラストを強調し易くすることができる。
【0077】
また、取得画像の画像データの画素値と取得画像の画像データが複数段階の各解像度で平滑化された複数段階の画素値との差分に基づいて、各段階毎の画素値の強調量を取得し、取得された強調量で、当該各段階毎に取得された画像データの画素値を強調する補正を行うことができる。また、ラプラシアンピラミッドを用いて、補正された各段階毎の画素値について、複数段階の解像度で高周波成分を取得することができ、取得された複数段階の高周波成分のうち、補正された画素値の解像度に応じた高周波成分を特定し、画素値が強調された画像データを構成することができる。
【0078】
従って、取得画像に対する画像処理に係る周波数の分解レベルを高くして、取得画像の細部に対応する画像領域だけでなく、コントラストの違いが目立ち難い平坦部(に対応する画像領域に対しても従来よりも適正な強調処理を施すことができ、これにより、取得画像のコントラストの差の大小に拘わらず適正な画像処理を行うことができる。
【0079】
また、平滑化された複数段階の画素値の補正量を調整することができるので、ユーザ所望の補正度合いで複数段階の画素値を補正することができ、画像処理済み画像のディテール及びコントラストの強調の度合いを変更させることができる。
【0080】
また、輝度値の強調度合いに基づいて、色差成分を強調した色差画像データを生成して、輝度値が強調された輝度画像データと色差画像データとを合成するので、取得画像の輝度だけでなく彩度も強調させることができ、画像処理済み画像のディテール及びコントラストの表現力を向上させることができる。
【0081】
また、取得画像の画像データとして、略等しい構図の画像について明るさを複数段階に変更したものを画素加算してダイナミックレンジを拡大させてなる画像データを用いることで、画像処理済み画像のダイナミックレンジの拡大に伴う表現をより適正に行うことができる。具体的には、撮像部1に対して露出条件を変えながら略等しい構図で複数回撮像するよう制御されて得た複数の画像データを画素加算し、ダイナミックレンジを拡大させてなる画像データを生成することができる。
【0082】
次に、画像データのダイナミックレンジを拡大させる他の例について
図10を参照しながら説明する。画像データとして、新たに撮影して画像を取得するのではなく、すでに保存されている患者の過去の画像データを使用する。従ってその場で患者を撮影しなくても、カルテとともに保存されている過去の画像データを基に診断に使用することができる。画像データはJPEGデータでもよいが、RAWデータの方がより高画質なHDR変換された画像データが得られる。
【0083】
まず、過去の画像データである入力画像G1を色空間変換器21によりRGB色空間からCIELab色空間に変換する。L軸が輝度成分を、a軸とb軸で色情報成分を表している。
入力画像データG1の輝度成分を、成分分解フィルタ(例えばbilateral filter, total variation filter等のエッジ保存型平滑フィルタ22)により骨格成分(Base Layer)と詳細成分(Detail Layer)に分解する。詳しくは、輝度成分を、成分分解平滑フィルタ22に通したものが骨格成分となり、加減算器23により輝度成分から骨格成分を引いたものが詳細成分となる。
【0084】
続いて圧縮器(attenuator)24により骨格成分の振幅を小さくし、強調器(enhancer)25により詳細成分の振幅を大きくする。圧縮器24は、振幅を線形に伸張するものである。
そして、圧縮器24の出力信号をエッジ強調フィルタ26を通してエッジを強調した信号と、前記強調器25の出力信号とを加算器27で加算して変換された輝度成分とする。
【0085】
色情報成分に対して、つまり、a軸とb軸に対して、符号10aに示すような強調特性を持つ強調器28により振幅を大きくすることによって、色強調ができる。(ルートR1)。強調器28は、符号10aに特性を示すように波形を非線形に伸張することによって強調を行うものである。
ここで、色情報成分に対して何もしなければ、つまり、強調器28を通さなければ、色味が変わらないHDR変換された画像データG22が得られる。(ルートR2)。
【0086】
最後に、加算器27の出力である変換された輝度成分の信号と、ルートR1またはルートR2を経由して出力される色情報成分の信号を、色空間変換器29でCIELab色空間からRGB色空間に変換し、HDR変換された画像データG21を得る。CIELab色空間の輝度成分であるL軸と、色情報成分であるab軸は独立しているので、変換された輝度成分の信号(変換されたL)と変換された又はそのままの色情報成分の信号(変換されたab又はab)をRGB色空間に変換すれば、輝度成分と色情報成分が合成されHDR変換された画像データG21又はG22が得られる。
【0087】
<表示処理>
本実施形態の医療用皮膚検査装置100によれば、皮膚疾患のダーモスコピー構造物に関する所見を得ようと診断を試みる医師Dの要求に基づき、生成した画像の表示形態を変更することができる。すなわち、ダーモスコープ11を介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像と、それをハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理した第2の皮膚画像をそれぞれ独立に表示し、あるいは並置して表示し、さらには、第1の皮膚画像及び/又は第2の皮膚画像をダーモスコピー構造物の病変進行に合わせ時系列的に表示することができる。
【0088】
図7に表示制御処理の一例が示されている。
図7によれば、診断を試みようとする医師Dは、操作入力部8を操作することにより、表示形態の一つを選択する(ステップS31)。中央制御部9は、これを解読して表示制御部7bを制御する。表示制御部7bは、第1の記憶部41、又は第2の記憶部42、又はその両方を参照し、例えば、「1」のボタンが押下された場合(ステップS31;“1”)は、ダーモスコープ11を介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像、又は、それをハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理した第2の皮膚画像を表示パネル7aに表示する(ステップS32)。
【0089】
一方、「2」のボタンが押下された場合(ステップS31;“2”)、表示制御部7bは、上記した第1皮膚画像と第2皮膚画像とを表示パネル7aに並置して表示する(ステップS33)。ここで、記憶部4に第2の皮膚画像が第1の皮膚画像と対応付けられて記憶されている。
図8に、色素細胞母斑を例として、ダーモスコープ11を介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像と、それをハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理した第2の皮膚画像を並置して表示する例が示されている。
図8に示す表示形態によれば、表示制御部7bは、第1の皮膚画像及び第2の皮膚画像の少なくとも一方を表示し、双方を表示するときは並置して表示パネル7aに表示するように制御する。したがって、後者の場合、診断を試みようとする医師Dは、ダーモスコープ11を介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像と、それをハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理した第2の皮膚画像とを比較して所見を得ることができ、スキルの有無にかかわらず把握可能な所見の数が増えることから正確な診断を行うことができる。
【0090】
また、「3」のボタンが押下された場合(ステップS31;“3”)、表示制御部7bは、第1の皮膚画像及び/又は第2の皮膚画像をダーモスコピー構造物の病変進行に合わせ時系列的に表示する(ステップS34)。
図9に、色素細胞母斑を例として、ハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理した第2の皮膚画像を用いて病変の進行を時系列的に表示する形態が示されている。したがって、診断を試みようとする医師Dは、スキルの有無にかかわらず把握可能な所見の数が増えることから正確な診断を行うことができることは勿論のこと、病変進行の度合いを逐一チェックすることができ、したがって、ダーモスコピーのより多くの構造を病変進行とともに正確に把握して診療行為に役立てることができる。表示形態の選択を変更する場合(ステップS35;“YES”)、再度ステップS31に戻り、表示形態の選択をする。
【0091】
また、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。例えば、上記実施形態では、合成画像の各画素毎の輝度成分Y_hdrとn段のリサイズ平滑化ガウシアンピラミッドY_G_pyramid_lpf_rsz[n]の各画素毎の輝度成分との差分が小さいほど強調レベルを大きくするようにするようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、差分が大きいほど強調レベルを大きくするようにしても良い。この場合、例えば、輝度成分Yのうち、振幅が大きいディテールほど強調され、その一方で、振幅が小さいディテールは強調されないようにすることができる。
【0092】
さらに、医療用皮膚検査装置100の構成は、上記実施形態に例示したものは一例であり、これに限られるものではない。例えば、外部の撮像手段により撮像された画像を取得して、画像強調処理を行うようにしてもよいし、表示制御手段は表示すべき画像を表示モニタに送る場合の他、プリンタに印刷のために送る場合や、メモリカード等の記憶媒体に出力して外部の表示装置で再生して表示させる場合も適用される。
【0093】
加えて、上記実施形態にあっては、第1の記憶手段、画像変換手段、第2の記憶手段、表示制御手段としての機能を、中央制御部9の制御下にて、第1の記憶部41、画像変換部6、第2の記憶部42、表示制御部7bが駆動することにより実現される構成としたが、これに限られるものではなく、中央制御部9によって所定のプログラム等が実行されることにより実現される構成としてもよい。即ち、プログラムを記憶するプログラムメモリ(図示略)に、第1の記憶ルーチン、画像変換ルーチン、第2の記憶ルーチン、表示制御ルーチンを含むプログラムを記憶しておく。そして、第1の記憶ルーチンにより中央制御部9のCPUを、ダーモスコープを介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像を記憶する手段として機能させるようにしてもよい。また、画像変換ルーチンにより中央制御部9のCPUを、第1の皮膚画像の1枚の画像に対してハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、ダーモスコピー構造物が明瞭化かつ顕在化された第2の皮膚画像を得る手段として機能させるようにしてもよい。また、第2の記憶ルーチンにより中央制御部9のCPUを、第2の皮膚画像を記憶する手段として機能させるようにしてもよい。また、表示制御ルーチンにより中央制御部9のCPUを、第1の皮膚画像及び第2の皮膚画像の少なくとも一方を表示するように制御する手段として機能させるようにしてもよい。
【0094】
同様に、第1の生成手段、補正手段、制御手段についても、中央制御部9のCPUによって所定のプログラム等が実行さることにより実現される構成としてもよい。
【0095】
さらに、上記の各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体として、ROMやハードディスク等の他、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを所定の通信回線を介して提供する媒体としては、キャリアウェーブ(搬送波)も適用される。
【0096】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲のとおりである。
〔付記〕
<請求項1>
皮膚病変を診断する医療用皮膚検査装置であって、
ダーモスコープを介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像を記憶する第1の記憶部と、
前記第1の皮膚画像に対してハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、前記ダーモスコピー構造物が明瞭化かつ顕在化された第2の皮膚画像を得る画像変換部と、
前記第2の皮膚画像を記憶する第2の記憶部と、
前記第1の皮膚画像及び前記第2の皮膚画像の少なくとも一方を表示するように制御する表示制御部と、
を備えることを特徴とする医療用皮膚検査装置。
<請求項2>
前記画像変換部が、
前記第1の皮膚画像の1枚の画像に対してハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、前記ダーモスコピー構造物が明瞭化かつ顕在化された第2の皮膚画像を得ることを特徴とする請求項1に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項3>
前記画像変換部が、
前記第1の皮膚画像の1枚の画像の画素値に対して平滑化処理及び解像度変換処理を繰り返し施し、複数段階の画素値を生成する第1の生成手段と、
前記第1の皮膚画像の画素値と前記第1の生成手段により生成された段階ごとの画素値との差分に基づいて、段階ごとに前記第1の皮膚画像の画素値を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された画素値を有する段階ごとの解像度に応じた高周波数成分を利用して、前記第1の皮膚画像の画素値が強調された前記第2の皮膚画像を構成するよう制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項4>
前記第1の記憶部が前記第1の皮膚画像として既に撮像されカルテとして保存されていた過去の画像を記憶し、
前記画像変換部が当該過去の画像を用いてハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行う
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項5>
さらに、前記ダーモスコープに接続された撮像部を備え、
前記第1の記憶部が前記第1の皮膚画像として前記撮像部により撮像された現在の画像を記憶し、
前記画像変換部が当該現在の画像を用いてハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行う
ことを特徴とする請求項ないし4のいずれか1項に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項6>
前記表示制御部が前記第1の皮膚画像及び前記第2の皮膚画像の双方を並置して表示するように制御することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項7>
前記表示制御部が前記第1の皮膚画像及び/又は前記第2の皮膚画像を前記ダーモスコピー構造物の病変進行に合わせ時系列的に表示するように制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項8>
前記第2の皮膚画像が前記第1の皮膚画像と対応付けられて記憶されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項9>
皮膚病変を検査する方法であって、
ダーモスコープを介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像を記憶する第1の記憶工程と、
前記第1の皮膚画像に対してハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、前記ダーモスコピー構造物が明瞭化かつ顕在化された第2の皮膚画像を得る画像変換工程と、
前記第2の皮膚画像を記憶する第2の記憶工程と、
前記第1の皮膚画像及び前記第2の皮膚画像の少なくとも一方を表示するように制御する表示制御工程とを含むことを特徴とする方法。
<請求項10>
皮膚病変を検査するプログラムであって、
コンピュータを、
ダーモスコープを介して撮像されたダーモスコピー構造物に係るオリジナルな第1の皮膚画像を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の皮膚画像に対してハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行って、前記ダーモスコピー構造物が明瞭化かつ顕在化された第2の皮膚画像を得る画像変換手段と、
前記第2の皮膚画像を記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の皮膚画像及び前記第2の皮膚画像の少なくとも一方を表示するように制御する表示制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。
<請求項11>
請求項2記載の医療用皮膚検査装置であって、
前記画像変換部は、
前記前記第1の皮膚画像を入力し、輝度成分と色成分に分離する第1の分離部と、
前記分離された輝度成分を骨格部分と詳細部分に分離する第2の分離部と、
前記骨格成分を圧縮する圧縮部と、
前記詳細成分を強調する第1の強調部と、
前記骨格成分が圧縮部された輝度成分と前記詳細成分が強調された輝度成分を合成する第1の合成部と、
を具備することを特徴とする医療用皮膚検査装置。
<請求項12>
前記画像変換部は、
前記分離された色情報成分を、前記第1の合成部で合成された輝度成分と合成して前記第2の皮膚画像を得る第2の合成部を更に備えることを特徴とする請求項11記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項13>
前記画像変換部は、
前記分離された色情報成分を、振幅を強調する第2の強調部に入力し、この強調された色情報成分を前記合成部で合成された輝度成分と合成して前記第2の皮膚画像を得る第2の合成部を更に備えることを特徴とする請求項11記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項14>
前記第1の強調部は、入力された信号の振幅を線形に伸張するように構成され、前記第2の強調部は、入力された信号の振幅を非線形に伸張するように構成されていることを特徴とする請求項13記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項15>
前記画像変換部の前記第1の分離部は、前記入力した第1の皮膚画像を、RGB色空間からCIELab色空間に変換する第1の色空間変換部を備え、CIELab色空間のL軸を輝度成分として前記第2の分離部に入力することを特徴とする請求項11記載の医療用皮膚検査装置。
<請求項16>
前記画像変換部の前記第2の合成部は、CIELab色空間からRGB色空間に変換する第2の色空間変換部から構成されることを特徴とする請求項11記載の医療用皮膚検査装置。