(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(I)で表されるアルキニル化合物が、ビニルスルホン酸2−プロピニル、及びビニルスルホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニルから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水電解液。
一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物が、エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、プロパン−1,3−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、及び3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニルから選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の非水電解液。
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を有する電気化学素子において、非水溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含有し、請求項1に記載の一般式(I)で表されるアルキニル化合物の少なくとも1種が非水電解液中に0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする電気化学素子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるアルキニル化合物の少なくとも1種が非水電解液中に0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする。
【0022】
【化5】
(式中、X
1、R
1、R
2及びnは、前記と同義である。)
【0023】
本発明の非水電解液が低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性のような電池性能を向上できる理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明の一般式(I)で表されるアルキニル化合物は特定の電子吸引性基と炭素−炭素三重結合を含む基を有し、更にもう1つの官能基を有するため、耐熱性の高い低抵抗な被膜が形成され、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性を特異的に改善すると考えられる。
本発明の一般式(I)で表されるアルキニル化合物において、X
1が、−C(=O)−基、−C(=O)−C(=O)−基、−S(=O)
2−基、又は−P(=O)(−R
3)−基である場合、不飽和結合又はエーテル結合を含む基と炭素−炭素三重結合を含む基(アルキニル基又はアルキニルオキシ基)が前記特定の官能基を介して結合した構造を有しているため、両方の多重結合部位等の還元分解が進みやすくなると考えられる。そのため、前記特許文献1に記載の炭酸エステル化合物を用いた場合には予想し得なかった良質な混合被膜が形成されることによって、上記の電池性能を特異的に改善する効果が発現するものと考えられる。
これらの中でも、X
1が、−S(=O)
2−基である場合に、特に良質な混合被膜が形成され、低温及び高温でのサイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性向上効果が高まることが判明した。これは、−S(=O)
2−基の電子吸引性によって多重結合部位の還元分解が一層進みやすくなり、前記多重結合に由来する重合被膜が形成されやすくなるためと考えられる。
【0024】
また、一般式(I)で表されるアルキニル化合物が、下記一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物である場合も上記と同様に、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性を向上できる。
【0025】
【化6】
(式中、X
4、R
6及びR
7は、前記と同義である。)
【0026】
一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物を含む非水電解液が低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性を向上できる理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
つまり、一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物は、特定のエーテル基(−O−)、ホルミル基(−C(=O)H)、アシル基(−C(=O)R)、スルホニル基(−S(=O)
2R)及びホスホリル基(−P(=O)RR’)から選ばれる1種の置換基と、三重結合を有する特定のスルホネート基(−S(=O)
2OR
7)との2つの異なる置換基を末端及び/又は中間に酸素原子を含んでもよい炭化水素基で結合しているため、前記特許文献2に記載の2つの置換基を繋ぐ連結鎖に三重結合を有する2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートのような化合物とは全く異なる還元電位を有する。一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物は、三重結合を有する特定のスルホネート基(−S(=O)
2OR
7)を末端に有するので、前記の2つの置換基に由来する成分を含む被膜が電極上に過剰に形成されないため、特許文献2に記載の化合物を用いた場合には予想し得ない耐熱性の高い低抵抗な被膜が形成され、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性を特異的に改善する効果が発現するものと考えられる。
【0027】
(一般式(I)で表されるアルキニル化合物)
【0028】
【化7】
【0029】
一般式(I)において、X
1は、−C(=O)−基、−C(=O)−C(=O)−基、−S(=O)
2−基、−P(=O)(−R
3)−基、又は−X
3−S(=O)
2O−基(X
3は、炭素数1〜8のアルキレン基、又は少なくとも一つのエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基を示す。)を示す。
−X
3−S(=O)
2O−基において、X
3である炭素数1〜8のアルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3個、更に好ましくは炭素数2〜3、特に好ましくは炭素数2のアルキレン基が好ましい。また、少なくとも一つのエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基としては、−CH
2OCH
2−、−C
2H
4OC
2H
4−、−C
2H
4OC
2H
4OC
2H
4−が好ましく、−C
2H
4OC
2H
4−がより好ましい。
X
3である炭素数1〜8のアルキレン基、又は少なくとも一つのエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基については、後述する一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物の欄で詳述する。
【0030】
一般式(I)において、R
1で表される炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアルケニル基としては、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等の直鎖のアルケニル基、及び1−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基等の分枝のアルケニル基が好適に挙げられる。
これらの中でも、R
1で表されるアルケニル基としては、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、及び1,1−ジメチル−2−プロペニル基が好ましく、ビニル基、2−プロペニル基、及び3−ブテニル基がより好ましく、ビニル基及び2−プロペニル基が特に好ましい。
【0031】
一般式(I)において、R
1で表されるホルミル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアシル基、炭素数7〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜8のアルカンスルホニル基、炭素数3〜8のアルキニルオキシスルホニル基、炭素数6〜15のアリールスルホニル基、炭素数2〜16のジアルキルホスホリル基、炭素数2〜16のアルキル(アルコキシ)ホスホリル基、炭素数2〜16のジアルコキシホスホリル基については、後述する一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物の欄で詳述する。
【0032】
一般式(I)において、R
2で表される炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニル基としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基等の直鎖アルキニル基、及び1−メチル−2−プロピニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基等の分枝アルキニル基が好適に挙げられる。
これらの中でも、R
2で表されるアルキニル基としては、炭素数3〜5のアルキニル基が好ましく、2−プロピニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニル基がより好ましく、2−プロピニル基及び1,1−ジメチル−2−プロピニル基が特に好ましい。
【0033】
一般式(I)において、R
2で表される炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシ基としては、2−プロピニルオキシ基、2−ブチニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、4−ペンチニルオキシ基、及び5−ヘキシニルオキシ基等の直鎖のアルキニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ基、1−メチル−2−ブチニルオキシ基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ基等の分枝のアルキニルオキシ基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
2で表されるアルキニルオキシ基としては、炭素数3〜5のアルキニルオキシ基が好ましく、2−プロピニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−ブチニルオキシ基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ基がより好ましく、2−プロピニルオキシ基及び1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ基が特に好ましい。
【0034】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等の直鎖のアルキル基、又はイソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びtert−ペンチル基等の分枝のアルキル基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
3で表されるアルキル基としては、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0035】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアルケニル基としては、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、及び5−ヘキセニル基等の直鎖のアルケニル基、又は1−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基、及び1,1−ジメチル−2−プロペニル基等の分枝のアルケニル基が好適に挙げられる。
これらの中でも、R
3で表されるアルケニル基としては、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、及び1,1−ジメチル−2−プロペニル基が好ましく、ビニル基、2−プロペニル基、及び3−ブテニル基がより好ましく、ビニル基及び2−プロペニル基が最も好ましい。
【0036】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニル基としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、及び5−ヘキシニル基等の直鎖アルキニル基、及び1−メチル−2−プロピニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基等の分枝アルキニル基が好適に挙げられる。
これらの中でも、R
3で表されるアルキニル基としては、炭素数3〜5のアルキニル基が好ましく、2−プロピニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニル基がより好ましく、2−プロピニル基及び1,1−ジメチル−2−プロピニル基がより好ましい。
【0037】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
3で表されるアリール基としては、フェニル基又はトリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0038】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基等の直鎖のアルコキシ基、イソプロピルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、及びtert−ペンチルオキシ基等の分枝のアルコキシ基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
3で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。
【0039】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ基、2−プロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、及び4−ペンテニルオキシ基等の直鎖のアルケニルオキシ基、2−メチル−2−プロペニルオキシ基、2−メチル−2−ブテニルオキシ基、及び3−メチル−2−ブテニルオキシ基等の分枝のアルケニルオキシ基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
3で表されるアルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ基及び2−プロペニルオキシ基が好ましく、2−プロペニルオキシ基がより好ましい。
【0040】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシ基としては、2−プロピニルオキシ基、2−ブチニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、4−ペンチニルオキシ基、及び5−ヘキシニルオキシ基等の直鎖のアルキニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ基、1−メチル−2−ブチニルオキシ基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ基等の分枝のアルキニルオキシ基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
3で表されるアルキニルオキシ基としては、炭素数3〜5のアルキニルオキシ基が好ましく、2−プロピニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−ブチニルオキシ基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ基がより好ましく、2−プロピニルオキシ基及び1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ基が特に好ましい。
【0041】
一般式(I)において、R
3で表される炭素数6〜18のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、及びナフチルオキシ基が好適に挙げられる。
これらの中でもR
3で表されるアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基又はトリルオキシ基が好ましく、フェニルオキシ基がより好ましい。
【0042】
一般式(I)におけるX
1が−S(=O)
2−基の場合においては、R
1(O)n基とR
2基の組合せとしては、次の(a)〜(d)が挙げられる。
(a)アルケニル基(すなわちn=0の場合)とアルキニル基の組合せ
(b)アルケニル基(すなわちn=0の場合)とアルキニルオキシ基の組合せ
(c)アルケニルオキシ基(すなわちn=1の場合)とアルキニル基の組合せ
(d)アルケニルオキシ基(すなわちn=1の場合)とアルキニルオキシ基の組合せ
これらの中でも、組合せの置換基(R
1(O)n基、R
2基)に酸素原子を1個有する場合が好ましく、特にR
2がアルキニルオキシ基の場合に、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性がより向上するので好ましい。
また、X
1が−P(=O)(−R
3)−基の場合には、R
1(O)n、R
2及びR
3の組合せの置換基に酸素原子を1〜3個有する場合が好ましく、酸素原子が3個の場合に、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性がより向上するので好ましい。
【0043】
一般式(I)におけるX
1が−P(=O)(−R
3)−基の場合において、不飽和結合を有する置換基であるR
1(O)n、R
2及びR
3の組合せとして、次の(x)〜(z)が挙げられる。
(x)炭素−炭素二重結合を有する基(アルケニル基又はアルケニルオキシ基)を1つと炭素−炭素三重結合を有する基(アルキニル基又はアルキニルオキシ基)を1つの組合せ
(y)炭素−炭素二重結合を有する基(アルケニル基又はアルケニルオキシ基)を1つと炭素−炭素三重結合を有する基(アルキニル基又はアルキニルオキシ基)を2つの組合せ
(z)炭素−炭素二重結合を有する基(アルケニル基又はアルケニルオキシ基)を2つと炭素−炭素三重結合を有する基(アルキニル基又はアルキニルオキシ基)を1つの組合せ
これらの中でも、(x)又は(y)の組合せが好ましく、(x)の組合せが低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性がより向上するので好ましい。
【0044】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、以下のものが好適に挙げられる。
X
1が−C(=O)−基、R
2がアルキニル基、nが1の場合としては、3−ブチン酸ビニル、3−ブチン酸2−プロペニル、3−ブチン酸3−ブテニル、4−ペンチン酸ビニル、4−ペンチン酸2−プロペニル、及び4−ペンチン酸3−ブテニル等のアルキン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、3−ブチン酸ビニル及び3−ブチン酸2−プロペニルが好ましく、3−ブチン酸2−プロペニルがより好ましい。
【0045】
X
1が−C(=O)−C(=O)−基、R
2がアルキニルオキシ基、nが1の場合としては、シュウ酸2−プロピニル ビニル、シュウ酸3−ブチニル ビニル、シュウ酸2−プロペニル 2−プロピニル、シュウ酸3−ブチニル 2−プロピペニル、シュウ酸3−ブテニル 2−プロピニル、及びシュウ酸3−ブテニル 3−ブチニル酸等のシュウ酸ジエステル等が好適に挙げられる。
これらの中でも、シュウ酸2−プロピニル ビニル及びシュウ酸2−プロペニル 2−プロピニルが好ましく、シュウ酸2−プロペニル 2−プロピニルがより好ましい。
【0046】
X
1が−S(=O)
2−基、R
2がアルキニル基、nが0の場合としては、2−プロピニルビニルスルホン、2−プロペニル2−プロピニルスルホン、3−ブテニル2−プロピニルスルホン、3−ブテニル2−プロピニルスルホン、1,1−ジメチル−2−プロピニルビニルスルホン、及び1,1−ジメチル−2−プロピニル2−プロペニルスルホン等のスルホニル化合物等が好適に挙げられる。
これらの中でも、2−プロピニルビニルスルホン及び2−プロペニル2−プロピニルスルホンが好ましく、2−プロペニル2−プロピニルスルホンがより好ましい。
【0047】
X
1が−S(=O)
2−基、R
2がアルキニルオキシ基、nが0の場合としては、ビニルスルホン酸2−プロピニル、ビニルスルホン酸3−ブチニル、ビニルスルホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、2−プロペン−1−スルホン酸2−プロピニル、2−プロペン−1−スルホン酸3−ブチニル、2−プロペン−1−スルホン酸1−メチル−2−プロピニル、及び2−プロペン−1−スルホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル酸等のスルホン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、ビニルスルホン酸2−プロピニル及びビニルスルホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニルが好ましく、ビニルスルホン酸2−プロピニルがより好ましい。
【0048】
X
1が−S(=O)
2−基、R
2がアルキニル基、nが1の場合としては、2−プロピン−1−スルホン酸ビニル、1,1−ジメチル−2−プロピン−1−スルホン酸ビニル、2−プロピン−1−スルホン酸2−プロペニル、1,1−ジメチル−2−プロピン−1−スルホン酸2−プロペニル、2−プロピン−1−スルホン酸3−ブテニル、及び1,1−ジメチル−2−プロピン−1−スルホン酸3−ブテニル等のスルホン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、2−プロピン−1−スルホン酸ビニル及び2−プロピン−1−スルホン酸2−プロペニルが好ましく、2−プロピン−1−スルホン酸2−プロペニルがより好ましい。
【0049】
X
1が−S(=O)
2−基、R
2がアルキニルオキシ基、nが1の場合としては、2−プロペニル2−プロピニル硫酸、2−プロペニル1,1−ジメチル−2−プロピニル硫酸、3−ブテニル2−プロピニル硫酸及び3−ブテニル1,1−ジメチル−2−プロピニル硫酸等の硫酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、2−プロペニル2−プロピニル硫酸及び2−プロペニル1,1−ジメチル−2−プロピニル硫酸が好ましく、2−プロペニル2−プロピニル硫酸がより好ましい。
【0050】
X
1が−P(=O)(−R
3)−基、R
2がアルキニル基、nが0の場合としては、メチル(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジビニル(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロペニル)2(−プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロピニル)(2−プロペニル)ホスフィンオキシド、ジ(3−ブテニル)(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、及びジ(2−プロピニル)(3−ブテニル)ホスフィンオキシド等のホスフィンオキシドが好適に挙げられる。
これらの中でも、ジビニル(2−プロピニル)ホスフィンオキシド及びジ(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシドが好ましく、ジビニル2−プロピニルホスフィンオキシドがより好ましい。
【0051】
X
1が−P(=O)(−R
3)−基、R
2がアルキニルオキシ基、nが0の場合としては、
メチル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル、2−ブテニル(メチル)ホスフィン酸2−プロピニル、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル、ジ(3−ブテニル)ホスフィン酸2−プロピニル、メチル(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、2−ブテニル(メチル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、及びジ(3−ブテニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル等のホスフィン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル及びジ(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニルが好ましく、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニルがより好ましい。
また、2−プロペニルホスホン酸メチル 2−プロピニル、2−ブテニルホスホン酸メチル 2−プロピニル、2−プロペニルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニル、3−ブテニルホスホン酸3−ブテニル 2−プロピニル、2−プロペニルホスホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル メチル、2−ブテニルホスホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル メチル、2−プロペニルホスホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル 2−プロペニル、及び3−ブテニルホスホン酸3−ブテニル 1,1−ジメチル−2−プロピニル等のホスホン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、2−プロペニルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニル及び2−プロペニルホスホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル 2−プロペニルが好ましく、2−プロペニルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニルがより好ましい。
【0052】
X
1が−P(=O)(−R
3)−基、R
2がアルキニル基、nが1の場合としては、
メチル(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル、メチル(2−プロピニル)ホスフィン酸3−ブテニル、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸3−ブテニル、2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロペニル、及び2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸3−ブテニル等のホスフィン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル又は2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロペニルが好ましく、2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロペニルがより好ましい。
また、メチルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニル、メチルホスホン酸3−ブテニル 2−プロピニル、メチルホスホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル 2−プロペニル、メチルホスホン酸3−ブテニル 1,1−ジメチル−2−プロピニル、エチルホスホン酸2−プロピニル2−プロペニル、エチルホスホン酸3−ブテニル2−プロピニル、エチルホスホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル 2−プロペニル、及びエチルホスホン酸3−ブテニル 1,1−ジメチル−2−プロピニル等のホスホン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、メチルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニル及びエチルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニルがより好ましく、メチルホスホン酸2−プロピニル 2−プロペニルが特に好ましい。
【0053】
X
1が−P(=O)(−R
3)−基、R
2がアルキニルオキシ基、nが1の場合としては、
リン酸メチル 2−プロペニル 2−プロピニル、リン酸エチル 2−プロペニル 2−プロピニル、リン酸2−ブテニル メチル 2−プロピニル、リン酸2−ブテニル エチル 2−プロピニル、リン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル メチル 2−プロペニル、リン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル エチル 2−プロペニル、リン酸2−ブテニル 1,1−ジメチル−2−プロピニル メチル、及びリン酸2−ブテニル エチル 1,1−ジメチル−2−プロピニル等のリン酸エステルが好適に挙げられる。
これらの中でも、リン酸メチル 2−プロペニル 2−プロピニル及びリン酸エチル 2−プロペニル 2−プロピニルが好ましく、リン酸エチル 2−プロペニル 2−プロピニルがより好ましい。
【0054】
低温及び高温でのサイクル特性向上、及び高温充電保存後の負荷特性向上の観点から、前記一般式(I)で表される化合物の中でもX
1は、−C(=O)−基、−C(=O)−C(=O)−基、又は−S(=O)
2−基が好ましく、−C(=O)−C(=O)−基又は−S(=O)
2−基がより好ましく、−S(=O)
2−基が特に好ましい。これらの中でも3−ブチン酸2−プロペニル、シュウ酸2−プロペニル 2−プロピニル、ビニルスルホン酸2−プロピニル、ビニルスルホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、2−プロピン−1−スルホン酸ビニル、又は2−プロピン−1−スルホン酸2−プロペニルが好ましく、シュウ酸2−プロペニル 2−プロピニル、ビニルスルホン酸2−プロピニル、及び2−プロピン−1−スルホン酸2−プロペニルがより好ましく、ビニルスルホン酸2−プロピニルが特に好ましい。
【0055】
本発明の非水電解液において、非水電解液中に含有される一般式(I)で表されるアルキニル化合物の少なくとも1種の化合物の含有量は、非水電解液中に0.01〜10質量%である。該含有量が10質量%を超えると、電極上に過度に被膜が形成されるため低温サイクル特性が低下する場合があり、また0.01質量%に満たないと被膜の形成が十分でないために、高温サイクル特性の改善効果が得られない場合がある。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、その上限は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、単独で用いても、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性は向上するが、以下に述べる非水溶媒、電解質塩を組み合わせることにより、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が相乗的に向上するという特異な効果を発現する。その理由は明らかではないが、一般式(I)で表されるアルキニル化合物と、これらの非水溶媒、電解質塩の構成元素を含有するイオン伝導性の高い混合被膜が形成されるためと考えられる。
【0056】
(一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物)
【0057】
【化8】
【0058】
一般式(III)中、R
7は、炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニル基を示し、X
4は、炭素数1〜8のアルキレン基、又は少なくとも一つのエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基を示し、mは0又は1を示す。
mが0の場合、R
6は、ホルミル基、炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアシル基、炭素数7〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基、炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシスルホニル基、炭素数6〜15のアリールスルホニル基、炭素数2〜16の直鎖又は分枝のジアルキルホスホリル基、炭素数2〜16の直鎖又は分枝のアルキル(アルコキシ)ホスホリル基、又は炭素数2〜16の直鎖又は分枝のジアルコキシホスホリル基を示す。
mが1の場合、R
6は、ホルミル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアシル基、炭素数7〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基、炭素数6〜15のアリールスルホニル基、炭素数2〜16の直鎖又は分枝のジアルキルホスホリル基、炭素数2〜16の直鎖又は分枝のアルキル(アルコキシ)ホスホリル基、又は炭素数2〜16の直鎖又は分枝のジアルコキシホスホリル基を示す。ただし、前記R
7、X
4、R
6の炭素原子上の水素原子は、少なくとも1つがハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0059】
一般式(III)において、R
7で表されるアルキニル基としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基等の直鎖のアルキニル基、及び1−メチル−2−プロピニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基等の分枝のアルキニル基が好ましい。
これらの中でも、R
7で表されるアルキニル基としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、及び1,1−ジメチル−2−プロピニル基がより好ましく、2−プロピニル基、3−ブチニル基及び1,1−ジメチル−2−プロピニル基が更に好ましく、2−プロピニル基が最も好ましい。
【0060】
一般式(III)において、X
4である炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の無置換のアルキレン基、及びエチリデン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ブチリデン基等の置換アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が更に好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の無置換のアルキレン基、及びエチリデン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等の置換アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、エチリデン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロピリデン基、イソプロピリデン基がより好ましく、エチレン基、エチリデン、トリメチレン基が更に好ましく、エチレン基が特に好ましい。
少なくとも一つのエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基としては、−CH
2OCH
2−、−C
2H
4OC
2H
4−、−C
2H
4OC
2H
4OC
2H
4−が好ましく、−C
2H
4OC
2H
4−がより好ましい。エーテル結合の数は、1〜3個であり、1個の場合が好ましく、更に、エーテル酸素の両隣のアルキレン基の炭素数は、非対称、対称どちらでもよいが、対称である方が好ましい。また、エーテル酸素の両隣のアルキレン基は分枝していてもよい。
【0061】
一般式(III)において、mは0又は1であり、mが1である場合がより好ましい。
mが0の場合、R
6は、ホルミル基、炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアシル基、炭素数7〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基、炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシスルホニル基、炭素数6〜15のアリールスルホニル基がより好ましく、炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアシル基、炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシスルホニル基が更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシスルホニル基が特に好ましい。
mが1の場合、R
6は、ホルミル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアシル基、炭素数7〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基、炭素数6〜15のアリールスルホニル基がより好ましく、炭素数2〜8の直鎖又は分枝のアシル基、炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基が更に好ましい。
【0062】
R
6で表される炭素数2〜8の直鎖のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基がより好ましく、アセチル基が更に好ましい。
R
6で表される炭素数7〜15のアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基、トルイルカルボニル基、ナフトイル基が好ましく、ベンゾイル基がより好ましい。
【0063】
R
6で表される炭素数1〜8の直鎖又は分枝のアルカンスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基、ペンタンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基、ヘプタンスルホニル基、オクタンスルホニル基等の直鎖アルカンスルホニル基、2−プロパンスルホニル基、2−ブタンスルホニル基、t−ブタンスルホニル基等の分枝アルカンスルホニル基、フルオロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロエタンスルホニル基、ペンタフルオロプロパンスルホニル基等のハロアルカンスルホニル基等が好ましい。これらの中でも、直鎖アルカンスルホニル基やハロアルカンスルホニル基がより好ましく、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、及びトリフルオロメタンスルホニル基が更に好ましく、メタンスルホニル基が特に好ましい。
【0064】
R
6で表される炭素数3〜8の直鎖又は分枝のアルキニルオキシスルホニル基としては、2−プロピニルオキシスルホニル基、2−ブチニルオキシスルホニル基、3−ブチニルオキシスルホニル基、4−ペンチニルオキシスルホニル基、5−ヘキシニルオキシスルホニル基、1−メチル−2−プロピニルオキシスルホニル基、1−メチル−2−ブチニルオキシスルホニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシスルホニル基が好ましく、2−プロピニルオキシスルホニル基、1−メチル−2−プロピニルオキシスルホニル基がより好ましく、2−プロピニルオキシスルホニル基が更に好ましい。
R
6で表される炭素数6〜15のアリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、1−ナフタレンスルホニル基、2−ナフタレンスルホニル基が好ましく、ベンゼンスルホニル基及びトルエンスルホニル基がより好ましい。
R
6で表される炭素数2〜16の直鎖又は分枝のジアルキルホスホニル基としては、ジメチルホスホニル基、ジエチルホスホニル基、ジプロピルホスホニル基、ジブチルホスホニル基が好ましく、ジメチルホスホニル基及びジエチルホスホニル基がより好ましい。
【0065】
R
6で表される炭素数2〜16の直鎖又は分枝のアルキル(アルコキシ)ホスホリル基としては、メチル(メトキシ)ホスホリル基、エチル(エトキシ)ホスホリル基、プロピル(プロピルオキシ)ホスホリル基、ブチル(ジプトキシ)ホスホリル基が好ましく、メチル(メトキシ)ホスホリル基及びエチル(エトキシ)ホスホリル基がより好ましい。
R
6で表される炭素数2〜16の直鎖又は分枝のジアルコキシホスホリル基としては、ジメトキシホスホリル基、ジエトキシホスホリル基、ジプロポキシホスホリル基、ジブトキシホスホリル基が好ましく、ジメトキシホスホリル基及びジエトキシホスホリル基がより好ましい。
置換基R
7、R
6及びX
2が前記の好ましい置換基の場合には、一段と低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が向上するので好ましい。
【0066】
前記一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物の具体例としては、R
7が2−プロピニルの場合、以下のものが好適に挙げられる。
(A−1)mが0かつR
6がホルミル基の場合としては、2−オキソエタンスルホン酸2−プロピニル、3−オキソプロパンスルホン酸2−プロピニル、4−オキソブタンスルホン酸2−プロピニル、5−オキソペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−オキソヘキサンスルホン酸2−プロピニル、7−オキソヘプタンスルホン酸2−プロピニル、3−オキソプロポキシメタンスルホン酸2−プロピニル等が好適に挙げられる。
(A−2)mが0かつR
6がアシル基の場合としては、2−オキソプロパンスルホン酸2−プロピニル、3−オキソブタンスルホン酸2−プロピニル、4−オキソペンタンスルホン酸2−プロピニル、5−オキソヘキサンスルホン酸2−プロピニル、6−オキソヘプタンスルホン酸2−プロピニル、7−オキソオクタンスルホン酸2−プロピニル、2−オキソブタンスルホン酸2−プロピニル、3−オキソペンタンスルホン酸2−プロピニル、4−オキソヘキサンスルホン酸2−プロピニル、5−オキソヘプタンスルホン酸2−プロピニル、6−オキソオクタンスルホン酸2−プロピニル、7−オキソノナンスルホン酸2−プロピニル、2−(3−オキソブトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル等が好適に挙げられる。
【0067】
(A−3)mが0かつR
6がスルホニル基の場合としては、下記(A−3−1)、(A−3−2)、(A−3−3)、(A−3−4)、(A−3−5)等の化合物が好適に挙げられる。
(A−3−1):メタンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メタンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(メタンスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(メタンスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(メタンスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、エタンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エタンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エタンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(エタンスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(エタンスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(エタンスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、トリフルオロメタンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(トリフルオロメタンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(トリフルオロメタンスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(トリフルオロメタンスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(トリフルオロメタンスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(メタンスルホニル)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
【0068】
(A−3−2):ベンゼンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ベンゼンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ベンゼンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ベンゼンスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ベンゼンスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ベンゼンスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、4−メチルベンゼンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(4−メチルベンゼンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(4−メチルベンゼンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(4−メチルベンゼンスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(4−メチルベンゼンスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(4−メチルベンゼンスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、4−フルオロベンゼンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(4−フルオロベンゼンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(4−フルオロベンゼンスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(4−フルオロベンゼンスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(4−フルオロベンゼンスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−ベンゼンスルホニルエトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
【0069】
(A−3−3):メトキシスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メトキシスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メトキシスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(メトキシスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(メトキシスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(メトキシスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、エトキシスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エトキシスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エトキシスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(エトキシスルホニル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(エトキシスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(エトキシスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(メトキシスルホニル)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
【0070】
(A−3−4):2−プロペニルオキシスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−プロペニルオキシスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(2−プロペニルオキシスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(2−プロペニルオキシスルホニル)ブタンスルホン酸2’−プロピニル、5−(2−プロペニルオキシスルホニル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(2−プロペニルオキシスルホニル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(2−プロペニルオキシスルホニル)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
(A−3−5):メタン−1,1−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、プロパン−1,3−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、ブタン−1,4−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、ペンタン−1,5−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、ヘキサン−1,6−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、2,2’−オキシジエタンスルホン酸ジ(2−プロピニル)。
【0071】
(A−4)mが0かつR
6がホスホリル基の場合としては、下記(A−4−1)、(A−4−2)、(A−4−3)等の化合物が好適に挙げられる。
(A−4−1):ジメトキシホスホリルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジメトキシホスホリル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジメトキシホスホリルプロパン)スルホン酸2−プロピニル、4−(ジメトキシホスホリル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ジメトキシホスホリル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ジメトキシホスホリル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、ジエトキシホスホリルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジエトキシホスホリル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジエトキシホスホリル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ジエトキシホスホリル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ジエトキシホスホリル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ジエトキシホスホリル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(ジメトキシホスホリル)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
(A−4−2):メトキシ(メチル)ホスホリルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メトキシ(メチル)ホスホリル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メトキシ(メチル)ホスホリル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(メトキシ(メチル)ホスホリル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(メトキシ(メチル)ホスホリル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(メトキシ(メチル)ホスホリル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(メトキシ(メチル)ホスホリル)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、エトキシ(メチル)ホスホリルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エトキシ(メチル)ホスホリル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エトキシ(メチル)ホスホリル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、エチル(メトキシ)ホスホリルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エチル(メトキシ)ホスホリル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エチル(メトキシ)ホスホリル)プロパンスルホン酸2−プロピニル。
(A−4−3):ジメチルホスホリルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジメチルホスホリル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジメチルホスホリル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ジメチルホスホリル)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ジメチルホスホリル)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ジメチルホスホリル)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(ジメチルホスホリル)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
【0072】
(B−1)mが1かつR
6がアルキル基の場合としては、メトキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニル、3−メトキシプロパンスルホン酸2−プロピニル、4−メトキシブタンスルホン酸2−プロピニル、5−メトキシペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−メトキシヘキサンスルホン酸2−プロピニル、エトキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−エトキシエタンスルホン酸2−プロピニル、3−エトキシプロパンスルホン酸2−プロピニル、4−エトキシブタンスルホン酸2−プロピニル、5−エトキシペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−エトキシヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−メトキシエトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル等が好適に挙げられる。
【0073】
(B−2)mが1かつR
6がホルミル基の場合としては、ホルミルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ホルミルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ホルミルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ホルミルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ホルミルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ホルミルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(ホルミルオキシ)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル等が好適に挙げられる。
【0074】
(B−3)mが1かつR
6がアシル基の場合としては、アセチルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(アセチルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(アセチルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(アセチルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、プロピオニルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(プロピオニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(プロピオニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(プロピオニルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(プロピオニルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(プロピオニルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(アセチルオキシ)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル等が好適に挙げられる。
【0075】
(B−4)mが1かつR
6がスルホニル基の場合としては、メタンスルホニルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(メタンスルホニルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(メタンスルホニルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(メタンスルホニルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、エタンスルホニルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(エタンスルホニルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(エタンスルホニルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、5−(エタンスルホニルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、トリフルオロメタンスルホニルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(メタンスルホニルオキシ)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル等が好適に挙げられる。
【0076】
(B−5)mが1かつR
6がホスホリル基の場合としては、下記(B−5−1)、(B−5−2)、(B−5−3)等の化合物が好適に挙げられる。
(B−5−1):ジメトキシホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジメトキシホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジメトキシホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ジメトキシホスホリルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ジメトキシホスホリルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ジメトキシホスホリルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、ジエトキシホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジエトキシホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ジエトキシホスホリルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ジエトキシホスホリルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ジエトキシホスホリルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(ジメトキシホスホリルオキシ)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
【0077】
(B−5−2):メトキシ(メチル)ホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(メトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(メトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(メトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(メトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、エトキシ(メチル)ホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エトキシ(メチル)ホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、エチル(メトキシ)ホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(エチル(メトキシ)ホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(エチル(メトキシ)ホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル。
(B−5−3):ジメチルホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジメチルホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジメチルホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、4−(ジメチルホスホリルオキシ)ブタンスルホン酸2−プロピニル、5−(ジメチルホスホリルオキシ)ペンタンスルホン酸2−プロピニル、6−(ジメチルホスホリルオキシ)ヘキサンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−(ジメチルホスホリルオキシ)エトキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル。
【0078】
高温充電保存後の負荷特性向上の観点から、一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物の中でも、(A−1):2−オキソエタンスルホン酸2−プロピニル、3−オキソプロパンスルホン酸2−プロピニル、4−オキソブタンスルホン酸2−プロピニル、(A−2):2−オキソプロパンスルホン酸2−プロピニル、3−オキソブタンスルホン酸2−プロピニル、4−オキソペンタンスルホン酸2−プロピニル、5−オキソヘキサンスルホン酸2−プロピニル、(A−3−1):メタンスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メタンスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(A−3−3):メトキシスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メトキシスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メトキシスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(A−3−4):2−プロペニルオキシスルホニルメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(2−プロペニルオキシスルホニル)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(2−プロペニルオキシスルホニル)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(A−3−5):メタン−1,1−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、プロパン−1,3−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、2,2’−オキシジエタンスルホン酸ジ(2−プロピニル)、(B−1):メトキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニル、3−メトキシプロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−2):ホルミルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ホルミルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ホルミルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−3):アセチルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−4):メタンスルホニルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−5):ジメトキシホスホリルオキシメタンスルホン酸2−プロピニル、2−(ジメトキシホスホリルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ジメトキシホスホリルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニルが好ましい。
【0079】
また、一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物の中でも、(A−3−5):エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、プロパン−1,3−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、2,2’−オキシジエタンスルホン酸ジ(2−プロピニル)、(B−1):2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニル、3−メトキシプロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−2):2−(ホルミルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(ホルミルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−3):2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−4):2−(メタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニルがより好ましく、(A−3−5):エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、プロパン−1,3−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)、(B−1):2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニル、(B−3):2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル、(B−4):2−(メタンスルホニルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル、3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニルが更に好ましい。
【0080】
本発明の非水電解液において、非水電解液中に含有される一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物の少なくとも1種の化合物の含有量は、非水電解液中に0.01〜10質量%である。該含有量が10質量%を超えると、電極上に過度に被膜が形成されるため、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が低下する場合があり、また0.01質量%に満たないと被膜の形成が十分でないために、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性の改善効果が得られない場合がある。該含有量は、非水電解液中に0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、その上限は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物は、単独で用いても、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性は向上するが、以下に述べる非水溶媒、電解質塩、更にその他の添加剤を組み合わせることにより、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が相乗的に向上するという特異な効果を発現する。その理由は明らかではないが、一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物と、これらの非水溶媒、電解質塩、さらにその他の添加剤の構成元素を含有するイオン伝導性の高い混合被膜が形成されるためと考えられる。
【0081】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、ニトリル、S=O結合含有化合物(一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物を除く)等が挙げられる。
(環状カーボネート)
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。これらの中でも、二重結合又はフッ素原子を含有する環状カーボネートを少なくとも1種使用すると高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が一段と向上するので好ましく、二重結合を含む環状カーボネートとフッ素原子を含有する環状カーボネートを両方含むことが特に好ましい。二重結合を含有する環状カーボネートとしては、VC、VECがより好ましく、フッ素原子を含有する環状カーボネートとしては、FEC、DFECがより好ましい。
フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量は、低温及び高温サイクル特性向上、及び高温充電保存後の負荷特性向上の観点から、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは4体積%以上、更に好ましくは7体積%以上であり、その上限は、好ましくは35体積%以下、より好ましくは25体積%以下、更に好ましくは15体積%以下である。また、上記と同様の観点から、PCを含むことが好ましい。PCの含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは0.03体積%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは3体積%以上であり、その上限は、好ましくは25体積%以下、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。
【0082】
これらの溶媒は1種単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用すると、上記の電池性能が更に向上するので好ましく、3種以上を使用するのが特に好ましい。
これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとVC、PCとVC、FECとVC、FECとEC、FECとPC、DFECとEC、DFECとPC、DFECとVC、DFECとVEC、ECとPCとVC、ECとFECとVC、ECとVCとVEC、FECとPCとVC、DFECとPCとVC、DFECとECとVC、FECとECとPCとVC、DFECとECとPCとVC等が挙げられる。前記の組合せのうち、より好適な組合せは、ECとVC、FECとEC、DFECとPC、FECとECとPC、ECとFECとVC、ECとVCとVEC、FECとPCとVC、FECとECとPCとVCの組合せである。
環状カーボネートの含有量は、特に制限はされないが、非水溶媒の総体積に対して、10〜40体積%の範囲で用いるのが好ましい。含有量が10体積%未満であると非水電解液の伝導度が低下し、低温及び高温サイクル特性が低下する傾向があり、40体積%を超えると非水電解液の粘性が高くなるため低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
【0083】
鎖状カーボネートとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネートが挙げられ、低温サイクル特性向上、及び高温充電保存後の負荷特性向上の観点から、メチル基を有する鎖状カーボネートを含むことが好ましく、DMCを含むことが特に好ましい。また、高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性を向上する観点から、非対称カーボネートを含むことが好ましく、MECを含むことが特に好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は特に制限はされないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%未満であると非水電解液の粘度が上昇し、低温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が低下する傾向がある。また、90体積%を超えると非水電解液の電気伝導度が低下し、上記の電池性能が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
【0084】
また、鎖状エステルとしては、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸ブチル、ピバリン酸ヘキシル、ピバリン酸オクチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸エチルメチル、シュウ酸ジエチル等が挙げられ、ラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びα−アンゲリカラクトン等が挙げられ、エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、及び1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル等が挙げられる。
アミドとしては、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、及びリン酸トリオクチル等が挙げられ、スルホンとしては、スルホラン等が挙げられ、ニトリルとしてはアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、及びピメロニトリル等が挙げられる。
【0085】
S=O結合含有化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、及び1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオール−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、5−ビニル−ヘキサヒドロ−1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト化合物、1,2−エタンジオール ジメタンスルホネート、1,2−プロパンジオール ジメタンスルホネート、1,3−プロパンジオールジメタンスルホネート、1,4−ブタンジオール ジメタンスルホネート、1,5−ペンタンジオール ジメタンスルホネート、メタンスルホン酸2−プロピニル、及びメチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル化合物、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、及びビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物等が挙げられる。
【0086】
その他の非水溶媒としては、無水酢酸、及び無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、及び3−スルホ−プロピオン酸無水物等の環状酸無水物、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、及びエトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、及び1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、アニソール、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等の芳香族化合物が好適に挙げられる。
【0087】
上記の非水溶媒は通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せとしては、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとラクトンとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとエーテルの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状エステルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとニトリルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとS=O結合含有化合物との組合せ等が挙げられる。
これらの中でも、少なくとも環状カーボネートと鎖状カーボネートを組合せた非水溶媒を用いると、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が向上するため好ましい。このときの環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は、特に制限されないが、環状カーボネート:鎖状カーボネート(体積比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が更に好ましい。
【0088】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質塩としては、LiPF
6、LiPO
2F
2、LiBF
4、及びLiClO
4等のリチウム塩、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiCF
3SO
3、LiC(SO
2CF
3)
3、LiPF
4(CF
3)
2、LiPF
3(C
2F
5)
3、LiPF
3(CF
3)
3、LiPF
3(iso−C
3F
7)
3、及びLiPF
5(iso−C
3F
7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF
2)
2(SO
2)
2NLi、(CF
2)
3(SO
2)
2NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を含有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF
6、LiBF
4、LiN(SO
2CF
3)
2、及びLiN(SO
2C
2F
5)
2である。これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
これらの電解質塩の好適な組合せとしては、LiPF
6を含み、更にLiBF
4、LiN(SO
2CF
3)
2及びLiN(SO
2C
2F
5)
2から選ばれる少なくとも1種を含む組合せが挙げられる。好ましくは、LiPF
6とLiBF
4との組合せ、LiPF
6とLiN(SO
2CF
3)
2との組合せ、LiPF
6とLiN(SO
2C
2F
5)
2との組合せ等が挙げられる。
LiPF
6:[LiBF
4又はLiN(SO
2CF
3)
2又はLiN(SO
2C
2F
5)
2](モル比)が70:30よりもLiPF
6の割合が低い場合、及び99:1よりもLiPF
6の割合が高い場合には、低温及び高温サイクル特性、及び高温充電保存後の負荷特性が低下する場合がある。したがって、LiPF
6:[LiBF
4 又はLiN(SO
2CF
3)
2又はLiN(SO
2C
2F
5)
2](モル比)は、70:30〜99:1の範囲が好ましく、80:20〜98:2の範囲がより好ましい。上記範囲の組合せで使用することにより、低温及び高温サイクル特性及び高温充電保存後の負荷特性等の電池特性を更に向上させることができる。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.0M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましい。
【0090】
電気二重層キャパシタ(コンデンサ)用電解質塩としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、及びテトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート等の公知の4級アンモニウム塩を用いることができる。
【0091】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液の質量に対して前記一般式(I)で表されるアルキニル化合物の少なくとも1種を0.01〜10質量%の溶解することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒、及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0092】
〔電気化学素子〕
本発明の電気化学素子は、正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液からなる電気化学素子において、該非水電解液が、前記本発明の非水電解液であることを特徴とする。電気化学素子としては、下記の第1〜第4の電気化学素子が挙げられる。
非水電解質としては、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の電気化学素子用(即ち、リチウム電池用)又は第4の電気化学素子用(即ち、リチウムイオンキャパシター用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることが更に好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【0093】
〔第1の電気化学素子(リチウム電池)〕
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
(リチウム二次電池)
リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルから選ばれる1種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiCo
1−xNi
xO
2(0.01<x<1)、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
1/2Mn
3/2O
4、又はLiCo
0.98Mg
0.02O
2等が挙げられる。また、LiCoO
2とLiMn
2O
4、LiCoO
2とLiNiO
2、LiMn
2O
4とLiNiO
2のように併用してもよい。
【0094】
また、過充電時の安全性やサイクル特性を向上したり、4.3V以上の充電電位での使用を可能にするために、リチウム複合金属酸化物の一部は他元素で置換してもよい。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物を被覆することもできる。
これらの中では、LiCoO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2のような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo
1−xM
xO
2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuで表される少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
1/2Mn
3/2O
4、Li
2MnO
3とLiMO
2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましい。高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により低温及び高温サイクル特性及び/又は高温充電保存後の負荷特性を改善する効果が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電池特性の低下を抑制することができる。
【0095】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種以上含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO
4、LiCoPO
4、LiNiPO
4、LiMnPO
4等が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO
4又はLiMnPO
4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
【0096】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、Cu
2O、Ag
2O、Ag
2CrO
4、CuS、CuSO
4、TiO
2、TiS
2、SiO
2、SnO、V
2O
5、V
6O
12、VO
x、Nb
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2Pb
2O
5,Sb
2O
3、CrO
3、Cr
2O
3、MoO
3、WO
3、SeO
2、MnO
2、Mn
2O
3、Fe
2O
3、FeO、Fe
3O
4、Ni
2O
3、NiO、CoO
3、CoO等の、一種又は二種以上の金属元素の酸化物又はカルコゲン化合物、SO
2、SOCl
2等の硫黄化合物、一般式(CF
x)
nで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)等が挙げられる。中でも、MnO
2、V
2O
5、フッ化黒鉛等が好ましい。
【0097】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、及びサーマルブラック等のカーボンブラック類等が挙げられる。また、グラファイト類とカーボンブラック類を適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10質量%が好ましく、特に2〜5質量%が好ましい。
【0098】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm
3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm
3以上であり、さらに好ましくは、3g/cm
3以上であり、特に好ましくは、3.6g/cm
3以上である。なお、上限としては、4g/cm
3以下が好ましい。
【0099】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛等〕、スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力を向上させる観点から、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d
002)が0.340nm以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm
3以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と低温及び高温サイクル特性が向上するので好ましく、0.05以上となることが更に好ましく、0.1以上となることが特に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下が更に好ましい。
また、高結晶性の炭素材料は低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、低温及び高温サイクル特性が良好となるので好ましい。高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温及び高温サイクル特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では低温及び高温サイクル特性が良好となる。
【0100】
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0101】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm
3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm
3以上であり、特に好ましくは1.7g/cm
3以上である。なお、上限としては、2g/cm
3以下が好ましい。
【0102】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0103】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータのとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも低温及び高温サイクル特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜3Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0104】
(リチウム一次電池)
リチウム一次電池の構成には特に限定はなく、リチウム一次電池に特有な構成以外は、上記のリチウム二次電池の構成と同様にして行うことができる。
リチウム一次電池用正極としては、CuO、Cu
2O、Ag
2O、Ag
2CrO
4、CuS、CuSO
4、TiO
2、TiS
2、SiO
2、SnO、V
2O
5、V
6O
12、VO
x、Nb
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2Pb
2O
5,Sb
2O
3、CrO
3、Cr
2O
3、MoO
3、WO
3、SeO
2、MnO
2、Mn
2O
3、Fe
2O
3、FeO、Fe
3O
4、Ni
2O
3、NiO、CoO
3、CoO等の一種又は二種以上の金属元素の酸化物あるいはカルコゲン化合物、SO
2、SOCl
2等の硫黄化合物、一般式(CF
x)
nで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)等が挙げられる。中でも、MnO
2、V
2O
5、フッ化黒鉛等が好ましい。
リチウム一次電池用負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金等が使用される。
【0105】
〔第2の電気化学素子(電気二重層キャパシタ)〕
電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この電気化学素子に用いられる最も典型的な電極活物質は活性炭である。
【0106】
〔第3の電気化学素子〕
電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。この電気化学素子に用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。
【0107】
〔第4の電気化学素子(リチウムイオンキャパシタ)〕
負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気ニ重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF
6等のリチウム塩が含まれる。
【0108】
〔アルキニル化合物〕
本発明のアルキニル化合物は、下記一般式(II)で表される。
【0109】
【化9】
【0110】
(式中、X
2は、−S(=O)
2−基、又は−X
3−S(=O)
2O−基(X
3は、炭素数1〜8のアルキレン基、又は少なくとも一つのエーテル結合を含む炭素数2〜8の2価の連結基を示す。)を示す。R
4は、炭素数2〜8のアルケニル基又は炭素数2〜8のアルケニルオキシ基を示し、R
5は、炭素数3〜8のアルキニル基、又は炭素数3〜8のアルキニルオキシ基を示す。)
一般式(II)において、X
2、R
4及びR
5の具体例及び好適例は、一般式(I)において前述したものと同じである。
【0111】
一般式(II)で表されるアルキニル化合物は、下記の方法により合成することができるが、本製法に限定されるものではない。なお、原料となる1,2−エタンジスルホン酸ジクロリドは既存の汎用的手法により合成することができ、例えばJournal of Fluorine Chemistry,1995,vol.75(1),p.61−66に記載されている方法が適用できる。
前記アルキニル化合物の合成法としては、1,2−エタンジスルホン酸ジクロリドを溶媒中又は無溶媒で、塩基存在下、アルコール類と反応させる方法が挙げられる。
前記アルキニル化合物の合成について、1,2−エタンジスルホン酸ジクロリドと反応させるアルコール類の使用量は、1,2−エタンジスルホン酸ジクロリド1モルに対し、1.8〜20モルが好ましく、より好ましくは2〜6モルであり、最も好ましくは2〜3モルである。
使用されるアルコール類としては、2−プロピン−1−オール、1−メチル−2−プロピン−1−オール、1,1−ジメチル−2−プロピン−1−オール、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−1−オール等が挙げられる。中でも、工業的に安価な2−プロピン−1−オール、1−メチル−2−プロピン−1−オール、1,1−ジメチル−2−プロピン−1−オールが好ましい。
【0112】
前記合成に使用される溶媒としては、反応に不活性であれば特に限定はされないが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロアルカン、酢酸エチル、ジメチルカーボネート等のエステル、及びこれらの混合物が挙げられる。特にトルエン、キシレン、酢酸エチルが好適に使用できる。前記溶媒の使用量は1,2−エタンジスルホン酸ジクロリド1質量部に対して、0〜30質量部が好ましく、より好ましくは1〜15質量部である。
【0113】
前記合成に使用される塩基としては、無機塩基及び有機塩基のいずれも使用することができる。またこれらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。使用される無機塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムが挙げられる。使用される有機塩基としては、直鎖又は分枝した脂肪族3級アミン、無置換又は置換されたイミダゾール、ピリジン、ピリミジンが挙げられ、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、及びエチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン類、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類がより好ましい。前記塩基の使用量は1,2−エタンジスルホン酸ジクロリド1モルに対して1.6〜20モルであり、より好ましくは2〜10モルであり、特に2〜6モルが副生物の生成が抑さえられ好ましい。
アルコール類と1,2−エタンジスルホン酸ジクロリドとの反応において、反応温度の下限は−20℃以上が好ましく、反応性を低下させないために−10℃以上がより好ましい。また、反応温度の上限は80℃以下が好ましく、これを超えると副反応や生成物の分解が進行しやすくなるため、60℃以下がより好ましい。また、反応時間は前記反応温度やスケールによるが、反応時間が短すぎると未反応物が残り、逆に反応時間が長すぎると生成物の分解や副反応の恐れが生じるため、好ましくは0.1〜12時間であり、より好ましくは0.2〜6時間である。
【0114】
〔アルキニルスルホネート化合物〕
本発明のアルキニルスルホネート化合物は、下記一般式(III)で表される。
【0115】
【化10】
(式中、X
4、R
6及びR
7は、前記と同義である。)
【0116】
一般式(III)において、X
4、R
6及びR
7の具体例及び好適例は、一般式(III)において前述したものと同じである。
一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物は、下記(i)〜(vi)等の方法により合成することができるが、これらの方法に限定されるものではない。
(i)ヒドロキシスルホン酸エステルを、溶媒の存在下又は不存在下、酸触媒の存在下又は不存在下で、また必要に応じて脱水剤の存在下で、ギ酸と縮合させる方法。
(ii)ヒドロキシスルホン酸エステルを、溶媒の存在下又は不存在下、酸触媒の存在下で、ギ酸エステルとエステル交換させる方法。
(iii)ヒドロキシスルホン酸エステルを、溶媒の存在下又は不存在下、酸無水物もしくは混合酸無水物とエステル化反応させる方法。
(iv)アシルオキシスルホン酸ハライドを、溶媒の存在下又は不存在下、塩基存在下で、プロパルギルアルコールとエステル化させる方法。
(v)スルホン酸塩を、溶媒の存在下又は不存在下で、プロパルギルハライドとエステル化させる方法。
(vi)アシルオキシスルホン酸エステルを、溶媒の存在下又は不存在下、塩基存在下で、アルコールと反応させる方法。
【実施例】
【0117】
以下、本発明の化合物の合成例、及び本発明の非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池の実施例を示すが、本発明はこれらの合成例、実施例に限定されるものではない。
【0118】
合成例I−1〔ビニルスルホン酸2−プロピニルの合成〕
1,2−エタンジスルホン酸ジナトリウム塩8.14g(34.8mmol)、五塩化リン17.38g(83.5mmol)を90℃で3時間攪拌した。反応終了後、5℃まで冷却、反応物に水30mlを注意深く加えてろ過、ろ液を減圧濃縮し、1,2−エタンジスルホン酸ジクロリド8.31gを得た。
プロパルギルアルコール3.08g(54.9mmol)とトリエチルアミン4.95g(48.9mmol)を酢酸エチル30mlに溶解し、6℃に冷却した。この溶液に1,2−エタンジスルホン酸ジクロリド5.00g(22.0mmol)を0〜6℃で30分かけて滴下し、室温で1時間30分攪拌した。反応終了後、水30mlを加えて分液、有機層を飽和食塩水60mlで洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1溶出)で精製し、ビニルスルホン酸2−プロピニルを1.47g(収率:29%)得た。
得られたビニルスルホン酸2−プロピニルについて、
1H−NMR、及び質量分析の測定結果を以下に示す。
(1)
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ= 6.67-6.59(m, 1 H), 6.48-6.43(m, 1 H), 6.21-6.17(m, 1 H), 4.78(s, 2 H), 2.68(s, 1 H)
(2)質量分析:MS(CI)m/z[M+1]=147
【0119】
実施例I−1〜I−10、及び比較例I−1〜I−2
(1)リチウムイオン二次電池の作製
LiCoO
2(正極活物質)93質量%、アセチレンブラック(導電剤)3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)4質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm
3であった。
一方、低結晶性炭素を被膜した人造黒鉛(d
002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.7g/cm
3であった。
そして、上記で得られた正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、上記で得られた負極シート、及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。
次に、表1に記載の化合物を所定量添加して調製した非水電解液を電池缶内に注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお、正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
表1に記載の化合物の構造は下記のとおりである。
【0120】
【化11】
【0121】
(2)低温サイクル特性の評価
上記の方法で作製した電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流で4.2V(充電終止電圧)まで充電した後、4.2Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1Cの定電流で、放電電圧3.0V(放電終止電圧)まで放電した。次に0℃の恒温槽中、1Cの定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1Cの定電流で、放電電圧3.0Vまで放電した。これを50サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式により0℃における50サイクル後の放電容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
0℃50サイクル後の放電容量維持率(%)=(0℃における50サイクル目の放電容量/0℃における1サイクル目の放電容量)×100
【0122】
(3)高温サイクル特性の評価
上記の方法で作製した電池を用いて、60℃の恒温槽中、1Cの定電流で4.2V(充電終止電圧)まで充電した後、4.2Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1Cの定電流で、放電電圧3.0V(放電終止電圧)まで放電した。これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式により60℃における100サイクル後の放電容量維持率(%)を求めた。
60℃100サイクル後の放電容量維持率(%)=(60℃における100サイクル目の放電容量/60℃における1サイクル目の放電容量)×100
【0123】
(4)保存特性の評価
上記方法で作製した円筒型電池を用いて25℃の恒温槽中1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下終止電圧3.0Vまで放電した。この放電時の平均の放電電圧を保存前の平均放電電圧とした。再び1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、60℃の恒温槽に入れ、4.3Vに保持した状態で3日間保存を行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧3.0Vまで放電し、再び1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下終止電圧3.0Vまで放電した。この放電時の平均の放電電圧を保存後の平均放電電圧とした。そして、非水電解液に一般式(I)で表されるアルキニル化合物を加えなかったこと以外は実施例I−1と同様に円筒型電池を作製し電池特性を評価した比較例I−1を基準とする以下の式により、保存後の平均放電電圧低下率を求めた。
平均放電電圧低下率(相対値)(%)=(保存前の平均放電電圧−保存後の平均放電電圧)/(比較例I−1の保存前の平均放電電圧−比較例I−1の保存後の平均放電電圧)×100
円筒型電池の作製条件及び電池特性を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例I−11、比較例I−3
実施例I−1で用いた正極活物質に変えて、非晶質炭素で被覆されたLiFePO
4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆されたLiFePO
490質量%、アセチレンブラック(導電剤)5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。
この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製したこと、充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたことの他は、表2に記載の組成の非水電解液を用いて、実施例I−1と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
実施例I−12、比較例I−4
実施例I−1で用いた負極活物質に変えて、Si(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。Si80質量%、アセチレンブラック(導電剤)15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。
この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製したことの他は、表3に記載の組成の非水電解液を用いて、実施例I−1と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
上記実施例I−1〜I−10のリチウム二次電池はいずれも、比較例I−1(本発明の化合物を添加しなかった例)、比較例2(炭酸エステル化合物を用いた例)のリチウム二次電池に比べ、低温及び高温サイクル特性が大幅に向上している。この結果から、アルケニル基とアルキニル基を−C(=O)−基、−C(=O)−C(=O)−基、−S(=O)
2−基、及び−P(=O)(−R
3)−基から選ばれる特定の基を介して結合した構造を有することにより、予想し得ない特異的な効果がもたらされることが分かる。
また、実施例I−11と比較例I−3の対比、実施例I−12と比較例I−4の対比から、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩を用いた場合や、負極にSiを用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことが分かる。
【0130】
合成例II−1〔2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル〕
純度97%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム45.65g(299mmol)を無水酢酸70mLに懸濁し5時間加熱還留した。反応終了後、室温まで冷却し減圧濃縮した後、析出した結晶をジエチルエーテル100mLで洗浄し、2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム52.0gを得た(収率91%)。
得られた2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム52.00g(273mmol)を塩化チオニル51.23g(409mmol)に懸濁し、60〜64℃で5時間過熱攪拌した。反応終了後、析出した塩化ナトリウムをろ過し、ろ液を減圧濃縮して2−(アセチルオキシ)エタンスルホニルクロリド32.63g(収率64%)を得た。
得られた2−(アセチルオキシ)エタンスルホニルクロリド24.89g(133mmol)とプロパルギルアルコール7.45g(133mmol)を炭酸ジメチル100mLに溶解し、0℃に冷却した。この溶液にトリエチルアミン13.45g(133mmol)を0〜5℃で30分かけて滴下し、室温で一時間攪拌した。反応終了後、水50mLを加え、炭酸ジメチル100mLで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、酢酸エチル/ヘキサン=1/2(v/v)溶出)により精製し、2−アセチルオキシエタンスルホン酸2−プロピニル13.16g(収率48%)を得た。
得られた2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニルの
1H−NMR(測定機器:日本電子株式会社製、「AL300」)データを下記に示す。
1H−NMR(300 MHz, CDCl
3):δ= 4.88(d, J = 2.69 Hz, 2 H), 4.52(t, J = 6.10 Hz, 2 H), 3.57(t, J = 6.10 Hz, 2 H), 2.75(m, 1 H), 2.11(s, 3 H)
【0131】
合成例II−2〔2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニル〕
合成例II−1と同様の製法で得られた2−(アセチルオキシ)エタンスルホン酸2−プロピニル3.30g(16mmol)をメタノール10mLに溶解し、炭酸カリウム2.20g(16mmol)加え室温で1時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧留去し、水10mLを加え、酢酸エチル20mLで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、酢酸エチル/ヘキサン=1/2(v/v)溶出)により精製し、2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニル2.59g(収率91%)を得た。
得られた2−メトキシエタンスルホン酸2−プロピニルの
1H−NMRデータを下記に示す。
1H−NMR(300 MHz, CDCl
3):δ= 4.86(d, J = 2.68 Hz, 2 H), 3.84(t, J = 6.22 Hz, 2 H), 3.49(t, J = 6.22 Hz, 2 H), 3.40(s, 3 H), 2.69(t, J = 2.40 Hz, 1 H)
【0132】
合成例II−3〔3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニルの合成〕
合成例II−1と同様の製法で得られた3−(アセチルオキシ)プロパンスルホニルクロリド5.61g(28mmol)とプロパルギルアルコール1.57g(28mmol)を炭酸ジメチル50mLに溶解し、0℃に冷却した。この溶液にトリエチルアミン2.83g(28mmol)を0〜5℃で30分かけて滴下した後、室温で1.5時間攪拌した。反応終了後、水20gを加え、酢酸エチルで抽出、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧下留去して3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル5.37gを得た(収率87%)。
得られた3−(アセチルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル8.59g(39mmol)をメタノールに溶解し、炭酸カリウム5.36g(39mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、水20mLを加え、酢酸エチル40mLで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧下留去して3−ヒドロキシプロパンスルホン酸2−プロピニル2.43gを得た(収率35%)。
得られた3−ヒドロキシプロパンスルホン酸2−プロピニル1.80g(110mmol)とピリジン0.98g(12mmol)を酢酸エチル15mLに溶解し、0℃に冷却した。この溶液にメタンスルホニルクロリド1.39g(12mmol)を0〜5℃で10分かけて滴下し、0℃で15分攪拌した。反応終了後、水10mLを加え、酢酸エチルで抽出、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、酢酸エチル/ヘキサン=3/4(v/v)溶出)で精製し、目的の3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニル0.64gを得た(収率25%)。
得られた3−(メタンスルホニルオキシ)プロパンスルホン酸2−プロピニルの
1H−NMRデータを下記に示す。
1H−NMR(300 MHz, CDCl
3):δ= 4.88(d, J = 2.44 Hz, 2 H),4.39(t, J = 6.10 Hz, 2 H) , 3.41(t, J = 7.07, 2 H), 3.05(s, 3 H), 2.74(t, J = 2.44 Hz, 1 H),2.41-2.32(m, 2H)
【0133】
合成例II−4〔エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)の合成〕
エタン−1,2−ジスルホン酸7.54g(40mmol)を、ジオキサン90mlとアセトニトリル60mlの混合溶媒に溶解し、この溶液に酸化銀(II)20.20g(87mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応液をろ過、ろ物を水50mlで洗浄し、ろ液を減圧濃縮した。残渣を水60mlに溶解、アセトン120ml加え析出した沈殿をろ取し、エタン−1,2−ジスルホン酸二銀塩を9.88g(25mmol、収率62%)を得た。
得られたエタン−1,2−ジスルホン酸二銀塩9.88g(25mmol)をアセトニトリル100mlに懸濁させ、プロパルギルブロミド7.00g(59mmol)を加え、82℃で6時間還流した。反応終了後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣を炭酸ジメチルとヘキサンから再結晶し、エタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)を3.88g(55%収率)得た。
得られたエタン−1,2−ジスルホン酸ジ(2−プロピニル)の
1H−NMRデータを下記に示す。
1H−NMR(300 MHz, CDCl
3):δ=4.91(d, J = 2.4 Hz, 4 H), 3.76(s, 4 H), 2.81(t, J = 2.4 Hz, 2H)
【0134】
実施例II−1〜II−9、及び比較例II−1〜II−2
(1)リチウムイオン二次電池の作製
LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(正極活物質)94質量%、アセチレンブラック(導電剤)3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm
3であった。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.7g/cm
3であった。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表4に記載の組成の非水電解液に、同じく表4に記載のアルキニルスルホネート化合物を所定量添加して調整した非水電解液を加えて、それぞれ実施例II−1〜II−9及び比較例II−1〜II−2の2032型コイン電池を作製した。
【0135】
(2)低温サイクル特性の評価、(3)高温サイクル特性の評価は、実施例I−1に記載の方法と同様にして行った。
(4)保存特性の評価
上記方法で作製したコイン電池を用いて25℃の恒温槽中1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下終止電圧3.0Vまで放電した。この放電時の平均の放電電圧を保存前の平均放電電圧とした。再び1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、60℃の恒温槽に入れ、4.3Vに保持した状態で3日間保存を行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧3.0Vまで放電し、再び1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下終止電圧3.0Vまで放電した。この放電時の平均の放電電圧を保存後の平均放電電圧とした。そして、非水電解液に一般式(III)で表されるアルキニルスルホネート化合物を加えなかったこと以外は実施例II−1と同様にコイン電池を作製し電池特性を評価した比較例II−1を基準とする以下の式により、保存後の平均放電電圧低下率を求めた。
平均放電電圧低下率(相対値)(%)=(保存前の平均放電電圧−保存後の平均放電電圧)/(比較例II−1の保存前の平均放電電圧−比較例II−1の保存後の平均放電電圧)×100
電池の作製条件及び電池特性を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
実施例II−10、比較例II−3
実施例II−1で用いた正極活物質に変えて、非晶質炭素で被覆したLiFePO
4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆したLiFePO
490質量%、アセチレンブラック(導電剤)5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。
この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き正極シートを作製したこと、充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたこと、また、表5に記載の組成の非水電解液を用いたことの他は、実施例II−1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
実施例II−17、比較例II−5
実施例II−1で用いた負極活物質に変えて、Si(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。Si 80質量%、アセチレンブラック(導電剤)15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。
この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製したこと、また、表6に記載の組成の非水電解液を用いたことの他は、実施例II−1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表6に示す。
【0140】
【表6】
【0141】
上記実施例II−1〜II−9のリチウム二次電池はいずれも、比較例II−1(本発明の化合物を添加しなかった例)、比較例II−2(2つの置換基を繋ぐ連結鎖に三重結合を有する化合物例)のリチウム二次電池に比べ、高温保存後の平均放電電圧の低下が小さいことから、高温充電保存後の負荷特性が大幅に向上している。この結果から、特定のエーテル基(−O−)、ホルミル基(−C(=O)H)、アシル基(−(C=O)R)、スルホニル基(−S(=O)
2R)及びホスホリル基(−P(=O)RR’)から選ばれる1種の置換基と、三重結合を有する特定のスルホネート基(−S(=O)
2OR)との2つの異なる置換基を末端及び/又は中間に酸素を含んでもよい炭化水素基で結合した構造を有することにより、予想し得ない特異的な効果がもたらされることが分かる。
また、実施例II−10と比較例II−3の対比、実施例II−11と比較例II−4の対比から、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩を用いた場合や、負極にSiを用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことが分かる。
【0142】
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の高温保存後の負荷特性を改善する効果も有する。