(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも不連続の強化繊維の束状集合体とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂成形材料であって、前記強化繊維の束状集合体が、連続強化繊維のストランドが該ストランドを複数の束に完全分割する割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体Aと、少なくとも前記割繊処理が不十分な未割繊部を含む強化繊維集合体Bとの両方を含み、前記強化繊維集合体Bの両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有し、さらに、材料中の強化繊維の総重量に対する前記強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲にあることを特徴とする繊維強化樹脂成形材料。
少なくとも不連続の強化繊維の束状集合体とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂成形材料の製造方法であって、前記強化繊維の束状集合体として、連続強化繊維のストランドを複数の束に完全分割する割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体Aと、少なくとも前記割繊処理が不十分な未割繊部を含み、両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有する強化繊維集合体Bとの両方を用い、強化繊維集合体Bの使用量を、材料中の強化繊維の総重量に対する前記強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲に入るように制御することを特徴とする繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、比較的単糸数の多い繊維束を用いた繊維強化樹脂成形材料では、生産効率もよく、成形の際に優れた流動性が得られる傾向にあるが、成形品の力学特性は劣る傾向があり、比較的単糸数の少ない繊維束を用いた繊維強化樹脂成形材料では、逆に、成形品の力学特性には優れるものの、成形の際の流動性は高くし難いという傾向がある。
【0007】
そこで本発明の課題は、上記のような従来技術における傾向に着目し、成形の際の良好な流動性と成形品の優れた力学特性とをバランス良く両立させることが可能な繊維強化樹脂成形材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る繊維強化樹脂成形材料は、少なくとも不連続の強化繊維の束状集合体とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂成形材料であって、前記強化繊維の束状集合体が、連続強化繊維のストランドが該ストランドを複数の束に完全分割する割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体Aと、少なくとも前記割繊処理が不十分な未割繊部を含む強化繊維集合体Bとの両方を含み、前記強化繊維集合体Bの両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有し、さらに、材料中の強化繊維の総重量に対する前記強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲にあることを特徴とするものからなる。
【0009】
このような本発明に係る繊維強化樹脂成形材料においては、成形材料中に、連続強化繊維のストランドが該ストランドを複数の束に完全分割する割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体A(すなわち、割繊処理により比較的少ない単糸数からなる強化繊維集合体A)と、少なくとも割繊処理が不十分な未割繊部を含み、かつ、両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有する強化繊維集合体B(すなわち、比較的多い単糸数からなる強化繊維集合体B)との両方が含まれる形態とされ、かつ、強化繊維の総重量に対する強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%と特定の範囲になる形態とされる。単糸数の少ない強化繊維集合体Aは、成形後の成形品の力学特性の向上に寄与でき、単糸数の多い強化繊維集合体Bは、成形の際の流動性の向上に寄与でき、強化繊維集合体Bの重量割合を特定の範囲内に制御することで、これら流動性と力学特性とが、目標とする範囲内の特性として、バランス良く両立されることになる。
【0010】
上記本発明に係る繊維強化樹脂成形材料においては、強化繊維集合体Aおよび強化繊維集合体Bの平均繊維長としては、5〜100mmの範囲にあることが好ましい。平均繊維長が5mm未満では、強化繊維による成形品の補強効果が不十分になるおそれがあり、平均繊維長が100mmを超えると、成形の際に良好な流動が困難になって流動性が低下したり、強化繊維が曲がりやすくなったりするおそれがある。
【0011】
また、上記繊維強化樹脂成形材料中の強化繊維集合体Aにおいて、各々の強化繊維集合体Aの単糸数が、800〜10,000本の範囲にあることが好ましい。強化繊維集合体Aの単糸数が800本未満では、成形品の高い力学特性は得られやすいものの、成形の際の流動性の低下が大きくなる可能性があり、10,000本を超えると、流動性の向上は望めるものの、成形品中に応力集中が生じやすくなって十分に高い力学特性が期待できなくなるおそれがあるとともに、割繊処理を介して形成される強化繊維集合体Aと強化繊維集合体Bとの差が不明瞭になり、これら強化繊維集合体A、Bを混在させようとする本発明の基本概念が損なわれるおそれがある。
【0012】
また、本発明に係る繊維強化樹脂成形材料において、使用される強化繊維の種類はとくに限定されず、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維やこれらの組み合わせ等、任意の強化繊維の使用が可能であるが、強化繊維が炭素繊維からなる場合に、とくに本発明による効果が大きい。
【0013】
本発明に係る繊維強化樹脂成形材料におけるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。
【0014】
上記のような本発明に係る繊維強化樹脂成形材料は、例えば、次のような方法によって製造可能である。すなわち、本発明に係る繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、少なくとも不連続の強化繊維の束状集合体とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂成形材料の製造方法であって、前記強化繊維の束状集合体として、連続強化繊維のストランドが該ストランドを複数の束に完全分割する割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体Aと、少なくとも前記割繊処理が不十分な未割繊部を含み、両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有する強化繊維集合体Bとの両方を用い、強化繊維集合体Bの使用量を、材料中の強化繊維の総重量に対する前記強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲に入るように制御する方法である。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明に係る繊維強化樹脂成形材料およびその製造方法によれば、成形の際の良好な流動性と成形品の優れた力学特性とをバランス良く両立させることが可能になる。しかも、強化繊維集合体A、Bを作製するための連続強化繊維のストランドとして単糸数の多いラージトウを使用可能であるので、生産性の向上や製造コストの低減をはかることも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明は、少なくとも不連続の強化繊維の束状集合体とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂成形材料であって、上記強化繊維集合体が、連続強化繊維のストランドが該ストランドを複数の束に完全分割する割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体Aと、少なくとも上記割繊処理が不十分な未割繊部を含み、両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有する強化繊維集合体Bとの両方を含み、材料中の強化繊維の総重量に対する上記強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲にあることを特徴とする繊維強化樹脂成形材料に関する。このような本発明に係る繊維強化樹脂成形材料は、例えば、上記強化繊維集合体Aと上記強化繊維集合体Bとの両方を用い、強化繊維集合体Bの使用量を、材料中の強化繊維の総重量に対する上記強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲に入るように制御することによって製造できる。
【0018】
本発明においては、上記強化繊維集合体Aと強化繊維集合体Bは、例えば
図1に示すように形成される。
図1の紙面の上下方向がストランドの連続強化繊維の延びる方向を示している。図示例では、
図1(A)に示すように、連続強化繊維のストランド1の長手方向において、該ストランド1を該ストランド1の幅方向に見て複数の束に完全分割する割繊処理が施された割繊部2と、割繊処理が施されていない、または/および、割繊処理が不十分な未割繊部3とが形成される。この割繊処理が施された後、
図1(B)に示すように、切断線4の位置でストランド1が切断されると、
図1(C)に示すように、割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体A(5)と、割繊処理が施されていない、または/および、割繊処理が不十分な未割繊部を含む強化繊維集合体B(6)とが形成される。
【0019】
上記のように形成された多数の強化繊維集合体Aと強化繊維集合体Bとの両方が用いられ、強化繊維集合体Bの使用量が、材料中の強化繊維の総重量に対する強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲に入るように制御されて、マトリックス樹脂
とともに繊維強化樹脂成形材料の成形に供される。
【0020】
上記成形に供される繊維強化樹脂成形材料中の強化繊維集合体の分布の一例を示すと、例えば
図2に示すようになる。
図2は、横軸を強化繊維集合体中の単糸数、縦軸を同じ単糸数の強化繊維集合体の総重量としたグラフであり、
図2に示す例は、比較的少ない単糸数からなる強化繊維集合体Aと、比較的多い単糸数からなる強化繊維集合体Bとが、それぞれ、横軸上に重量に関するピークを有している例として示されている。このグラフで示された曲線の曲線下の面積の積分値が、材料中の強化繊維の総重量に相当すると考えられ、ある単糸数以上の領域における曲線下の面積の積分値が、強化繊維集合体Bの重量に相当すると考えられる。強化繊維集合体Bの使用量は、この材料中の強化繊維の総重量に対する上記強化繊維集合体Bの重量の割合として5〜50%の範囲に入るように制御される。
【0021】
本発明に係る繊維強化樹脂成形材料において、使用される強化繊維の種類はとくに限定されず、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維やこれらの組み合わせ等、任意の強化繊維の使用が可能であるが、強化繊維が炭素繊維からなる場合に、とくに本発明による効果が大きい。また炭素繊維の場合、平均繊維径は3〜12μmが好ましく、より好ましくは5〜9μmである。
【0022】
強化繊維のサイジング処理の方法としては、樹脂を水又は溶媒中に分散させた溶液中に炭素繊維を浸漬させた後、乾燥させる方法が好ましい。サイジング剤として用いる樹脂の種類はとくに限定されないが、マトリックス樹脂と相溶性を有することが好ましく、マトリックス樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る繊維強化樹脂成形材料におけるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能であり、炭素繊維複合材料に用いる熱硬化性樹脂の材料としては特に制限は無く、成形品としての機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノシキ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などを用いることができる。中でも、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のいずれか、もしくはこれらの混合物からなることが好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂の材料としても特に制限は無く、成形品としての機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン6,6樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の樹脂を用いることができる。中でも、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂のいずれかからなることが好ましい。
【0025】
本発明に係る割繊処理を施された連続繊維とは連続強化繊維が複数の繊維束に引き裂かれた部分を有することである。例えば、連続強化繊維の繊維長手方向に垂直な方向から周期的かつ局部的にエアを吹き付けることにより割繊処理を施された連続繊維を得ることができるが、割繊処理方法は特にこれに限定されない。
【0026】
割繊処理を施された連続強化繊維のストランドは、前述の
図1(B)に示したように、所定長に切断する切断工程に供されるが、この切断工程における切断方法としてもとくに限定されず、例えば、機械的なカッターを用いてストランドを長手方向に所定のピッチで断続的に切断する方法を採用できる。
【0027】
前述の
図1(C)に示したように、割繊処理を施された後切断されて形成された強化繊維集合体Aと、少なくとも割繊処理が不十分な未割繊部を含み、両端部の少なくとも一方には、実質的に割繊処理に起因する切込みを有する強化繊維集合体Bは、例えば強化繊維集合体の不織布を形成するように散布される。この散布工程で形成される不織布においては、前述の如く、強化繊維の総重量に対する強化繊維集合体Bの重量の割合が5〜50%の範囲に入るように制御されるが、この範囲への制御は、強化繊維集合体Aと強化繊維集合体Bとを別に採取し、それらを所定の割合で混合することも可能であるが、上記割繊処理の条件とその後に行う切断処理の条件において、例えば、連続強化繊維のストランドの総平面積に対する割繊処理部の面積の割合と、切断長とを考慮して、略正確に強化繊維集合体Bの強化繊維総重量に対する重量割合を推測することが可能である。この重量割合が上記所定の範囲に入るように割繊処理の条件と切断処理の条件を設定すれば、切断処理後に得られた全強化繊維集合体を単にそのまま散布するだけで所望の不織布を得ることが可能である。
【0028】
本発明に係る繊維強化樹脂成形材料においては、繊維強化樹
脂成形材料の総重量に対する強化繊維の重量含有率が30〜60%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがより好ましい。
【0029】
本発明に係る強化繊維集合体の繊維長はマイクロスコープまたはノギス等を使用して1mm単位以下の精度で測定されることが望ましい。また、強化繊維集合体中の単糸において各々の繊維長が均一でない場合は、繊維長は幾何学的に算出される。例えば、切断工程において、繊維方向に対し斜めに切断されたある強化繊維集合体が存在する場合、強化繊維集合体中の最長繊維長と最短繊維長の平均値を強化繊維集合体の繊維長とみなすことができる。また、強化繊維集合体の平均繊維長としては、5〜100mmの範囲にあることが好ましく、10〜80mmの範囲にあることがより好ましい。また、繊維長の分布としては、単一の繊維長の分布であっても構わないし、2種類以上の混合であっても構わない。
【0030】
本発明における強化繊維集合体の重量は、採取したサンプルから各強化繊維集合体の重量を測定し、それらを集計することで測定でき、1/100mg以下の精度で測定されることが好ましい。
【0031】
本発明における強化繊維集合体中の単糸数は下記式(1)により算出する。
強化繊維集合体中の単糸数(本)=集合体の重量(g)×繊維長(m)/繊度(g/m)
・・・(1)
【0032】
本発明に係る繊維強化樹脂成形材料中の強化繊維集合体Aは、割繊処理後における切断工程および散布工程および樹脂含浸工程において前記集合体がさらに分割された集合体を少量含む場合があるが、各々の強化繊維集合体Aは単糸数が800〜10,000本の範囲にあることが好ましい。さらには、前記範囲において任意に設定される上下限本数の差が1,000本以内となる範囲αを設定した際に、該範囲α内にある前記集合体Aの集合体数と集合体総重量が、単糸数が800〜10,000本の範囲において最も多くなることが好ましい。
【0033】
本発明に係る繊維強化樹脂成形材料中の強化繊維集合体Bは、割繊処理後における切断工程および散布工程および樹脂含浸工程において前記集合体がさらに分割された集合体を少量含む場合があるが、繊維強化樹脂成形材料中の所定範囲の単糸数を有する強化繊維集合体Aより単糸数が多い強化繊維集合体は全て強化繊維集合体Bとみなすことが好ましい。
【0034】
本発明による繊維強化樹脂成形材料の強化繊維総重量に対する強化繊維集合体Bの重量の割合(%)は下記式(2)により算出する。
重量割合=強化繊維集合体Bの重量/繊維強化樹脂成形材料中の全強化繊維重量×100
・・・(2)
【実施例】
【0035】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
特に、注記が無い限り、繊維強化樹脂成形材料やその試料について、繊維束(繊維長)の長さの単位はmm、重量の単位はgである。なお、実施例、比較例で用いた炭素繊維や熱硬化性樹脂は以下のとおりである。
炭素繊維:Zoltek社製の炭素繊維“Panex(登録商標) R 35 Tow”(繊維径7.2μm、ストランド50K(Kは1,000本)、引張強度4,137MPa)
マトリックス樹脂:ビニルエステル樹脂(ダウ・ケミカル(株)製、“デラケン”(登録商標))
硬化剤: tert−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、“パーブチル(登録商標)Z”)
増粘剤:酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、MgO#40)
【0036】
[繊維強化樹脂成形材料の重量割合の求め方]
まず、繊維強化樹脂成形材料から100mm×100mmの試料を切り出し、前記試料を600℃×1時間、炉内にて加熱し樹脂を除去した。続いて、樹脂を除去した試料の重量を測定することにより、繊維強化樹脂成形材料中の全炭素繊維の重量を測定した。さらに、前記試料より強化繊維集合体をピンセットを用いて全て取り出し、各々の強化繊維集合体において重量を測定した。重量の測定には1/100mgまで測定可能な天秤を用いた。続いて、ピンセットを用いて取り出した各々の強化繊維集合体において繊維長をノギスを使用して1mm単位まで測定した。各強化繊維集合体中の単糸数を下記式(1a)により算出した。
各強化繊維集合体中の単糸数(本)=集合体の重量(g)×繊維長(m)/繊度(g/m)・・・(1a)
【0037】
繊維強化樹脂成形材料中に強化繊維集合体において、割繊処理によりある範囲の任意の単糸数とされた強化繊維集合体を強化繊維集合体Aとし、前記集合体Aの総重量を計量した。また、強化繊維集合体Aより単糸数が多い強化繊維集合体を強化繊維集合体Bとし、前記集合体Bの総重量を計量した。繊維強化樹脂成形材料の総重量に対する前記強化繊維集合体Bの重量の割合(%)を下記式(2a)により算出した。
重量割合=強化繊維集合体Bの重量/繊維強化樹脂成形材料中の全炭素繊維重量×100・・・(2a)
【0038】
[力学特性の評価方法]
平板を制作することが可能である金型No.1を用いた。繊維強化樹脂成形材料を金型No.1の中央部に配置(チャージ率にして50%程度)した後、加圧型プレス機により10MPaの加圧のもと、約130℃×6分間の条件により硬化させ、300×400mmの平板を得た。平板より0度(平板長手方向を0度)と90度方向から、それぞれ100×25×1.6mmの試験片を5片(合計10片)を切り出し、JIS K7074(1988年)に準拠し測定を実施した。
【0039】
[流動特性の評価方法]
凹凸部およびリブ形成用の溝を有する金型No.2を使用した。繊維強化樹脂成形材料を金型No.2の中央部に配置(チャージ率にして50%程度)した後、加圧型プレス機により10MPaの加圧のもと、約130℃×6分間の条件により硬化させ、成形品を得た。成形品に対し下記表1に示す評価項目について目視観察をすることで、各々の成形品に対し総合的に流動特性の評価を行った。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例1]
炭素繊維として、前述した“ Panex(登録商標) R 35 Tow”を使用した。連続炭素繊維の繊維長手方向に垂直な方向から所定の条件で周期的かつ局部的にエアを吹き付けることにより割繊処理を施された連続炭素繊維ストランドを切断して均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続炭素繊維不織布を得た。切断装置にはロータリー式カッターを用いた。刃の間隔は30mmとした。また、不連続炭素繊維不織布の目付は1kg/m
2であった。
【0042】
不連続炭素繊維不織布にマトリックス樹脂100重量部と硬化剤1重量部と増粘剤7重量部を配合された樹脂を、ローラーで含浸させることによりシート状の繊維強化樹脂成形材料を得た。繊維強化樹脂成形材料の炭素繊維重量含有率は40%、密度は1.46g/cm
3であった。また、強化繊維集合体Bの重量割合の測定結果は25%であった。繊維強化樹脂成形材料を金型No.1により成形して得られた平板から試験片を切り出しJIS K7074(1988年)に準拠し測定を行った結果、曲げ強度は374MPaであった。また、繊維強化樹脂成形材料を金型No.2により成形して得られた成形品において、欠肉および膨れは観察されなかったが表面に一部微小なシワが発生した(判定B)。
【0043】
[実施例2]
割繊処理条件を調整し、強化繊維集合体Bの重量割合を5%とした以外は実施例1と同様にした。
【0044】
[実施例3]
割繊処理条件を調整し、強化繊維集合体Bの重量割合を50%とした以外は実施例1と同様にした。
【0045】
[実施例4]
ロータリー式カッターの刃の間隔を調整し、強化繊維集合体A、および強化繊維集合体Bの平均繊維長を5mmとした以外は実施例1と同様にした。
【0046】
[実施例5]
ロータリー式カッターの刃の間隔を調整し、強化繊維集合体A、および強化繊維集合体Bの平均繊維長を100mmとした以外は実施例1と同様にした。
【0047】
[実施例6]
割繊処理条件を調整し、強化繊維集合体Aの範囲αにおける単糸数を1,000本とした以外は実施例1と同様にした。
【0048】
[実施例7]
割繊処理条件を調整し、強化繊維集合体Aの範囲αにおける単糸数を10,000本とした以外は実施例1と同様にした。実施例1〜7における結果を表2に示す。
【0049】
[比較例1]
強化繊維集合体Bの重量割合を100%とし、それ以外は実施例1と同様とした。
【0050】
[比較例2]
強化繊維集合体Bの重量割合を0%とし、それ以外は実施例1と同様とした。比較例1、2における結果を表3に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表2、3に示すように、本発明による実施例1〜7においては、とくに、強化繊維集合体Bの重量割合が本発明で規定した5〜50%の範囲にあり、成形の際の良好な流動性と成形品の優れた力学特性(とくに、曲げ強度)とをバランス良く両立させることができた。一方、比較例1においては、強化繊維集合体Bの重量割合が100%であるため、成形の際の流動性は良好であったものの、成形品の力学特性は低く、比較例2においては、強化繊維集合体Bの重量割合が0%であるため、成形品の優れた力学特性は達成できたものの、成形の際の流動性は不良であり、成形品に欠肉箇所が存在しており(判定E)、比較例1、2ともに、成形の際の良好な流動性と成形品の優れた力学特性とをバランス良く両立させることができなかった。