特許第6119987号(P6119987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119987
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】導電材分散塗料用の静電塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20170417BHJP
   B05B 5/16 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B05B5/025 F
   B05B5/16
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-161500(P2013-161500)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-29961(P2015-29961A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敬二
(72)【発明者】
【氏名】矢野下 裕也
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−247254(JP,A)
【文献】 特開2007−007562(JP,A)
【文献】 特開平03−042064(JP,A)
【文献】 特開昭55−084569(JP,A)
【文献】 特開昭57−165055(JP,A)
【文献】 特開平07−060173(JP,A)
【文献】 特開2014−161745(JP,A)
【文献】 特開2007−144289(JP,A)
【文献】 特開平03−179254(JP,A)
【文献】 実開昭59−115454(JP,U)
【文献】 特開平09−192543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−9/08
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を貯留する塗料タンクを設け、
この塗料タンクから供給ポンプにより供給路を通じて給送される塗料を噴霧する噴霧部と、この噴霧部から噴霧する塗料を噴霧前の段階での高電圧印加により帯電させる電圧印加部とを備える塗装機を設け、
前記供給路における塗料を電気的に接地するアース部とそれよりも下流側に位置する前記電圧印加部との間に形成される電界により前記供給路における塗料に塗料中導電材の橋絡が形成されることを塗料撹拌により防止する撹拌手段を設けた導電材分散塗料用の静電塗装装置であって、
前記供給路を開閉する開閉バルブを、前記供給ポンプと前記塗装機との間において前記供給路に介装して、この開閉バルブを前記アース部とし、
前記撹拌手段を構成するのに、前記電圧印加部と前記アース部との間における前記供給路の塗料流れ方向における一部箇所を撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記撹拌部における塗料を発生駆動力により撹拌することで前記橋絡の形成を前記撹拌部において阻止する駆動撹拌手段を設け
この駆動撹拌手段を構成するのに、循環ポンプにより前記供給路における塗料の一部を分岐部から抽出して、その抽出塗料を前記分岐部よりも上流側の合流部で前記供給路に戻す局部循環路を、前記電圧印加部と前記アース部との間において前記供給路に設け、
前記供給路における前記分岐部と前記合流部との間を前記撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記供給路における前記分岐部と前記合流部との間の塗料を前記循環ポンプによる前記局部循環路を通じた塗料循環により撹拌する構成にしてある導電材分散塗料用の静電塗装装置。
【請求項2】
導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を貯留する塗料タンクを設け、
この塗料タンクから供給ポンプにより供給路を通じて給送される塗料を噴霧する噴霧部と、この噴霧部から噴霧する塗料を噴霧前の段階での高電圧印加により帯電させる電圧印加部とを備える塗装機を設け、
前記供給路における塗料を電気的に接地するアース部とそれよりも下流側に位置する前記電圧印加部との間に形成される電界により前記供給路における塗料に塗料中導電材の橋絡が形成されることを塗料撹拌により防止する撹拌手段を設けた導電材分散塗料用の静電塗装装置であって、
前記供給路を開閉する開閉バルブを、前記供給ポンプと前記塗装機との間において前記供給路に介装して、この開閉バルブと前記電圧印加部との間に前記アース部を配置し、
前記撹拌手段を構成するのに、前記電圧印加部と前記アース部との間における前記供給路の塗料流れ方向における一部箇所を撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記撹拌部における塗料を発生駆動力により撹拌することで前記橋絡の形成を前記撹拌部において阻止する駆動撹拌手段を設け、
この駆動撹拌手段を構成するのに、循環ポンプにより前記供給路における塗料の一部を分岐部から抽出して、その抽出塗料を前記分岐部よりも上流側の合流部で前記供給路に戻す局部循環路を、前記電圧印加部と前記アース部との間に前記分岐部を配置するとともに前記アース部と前記開閉バルブとの間に前記合流部を配置した状態で、前記供給路に設け、
前記分岐部を前記撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記分岐部における塗料を前記循環ポンプによる前記局部循環路を通じた塗料循環により撹拌する構成にしてある導電材分散塗料用の静電塗装装置。
【請求項3】
前記塗装機において前記電圧印加部よりも塗料流れ方向で上流側に位置する塗装機後端部に前記アース部を配置してある請求項2に記載した導電材分散塗料用の静電塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を用いて静電塗装を行う導電材分散塗料用の静電塗装装置に関し、詳しくは、導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を貯留する塗料タンクを設け、この塗料タンクから供給ポンプにより供給路を通じて給送される塗料を噴霧する噴霧部と、この噴霧部から噴霧する塗料を噴霧前の段階での高電圧印加により帯電させる電圧印加部とを備える塗装機を設け、前記供給路における塗料を電気的に接地するアース部とそれよりも下流側に位置する前記電圧印加部との間に形成される電界により前記供給路における塗料に塗料中導電材の橋絡が形成されることを塗料撹拌により防止する撹拌手段を設けた導電材分散塗料用の静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を用いて静電塗装を行う場合、塗料に対して高電圧印加状態にある塗装機の電圧印加部と、それよりも上流側において供給路に装備されたアース部との間で電界が形成され、この電界により供給路における電圧印加部とアース部との間において塗料中の導電材どうしが互いに結合して供給路長手方向に連なる橋絡現象(いわゆるブリッジ)が生じる。
また、この橋絡は、塗料の流れがある塗料噴霧時よりも、塗料給送が停止されて塗料流動による塗料中導電材の撹拌が無くなる噴霧停止時において生じ易い。
【0003】
しかし、この塗料中導電材の橋絡が生じると、溶剤は非導電性であるにしても、橋絡した導電材を介して電圧印加部とアース部との間において過電流が流れ、この為、例えば漏電遮断機等の安全装置が作動するなどして塗装運転が行えなくなる。
【0004】
因みに、この橋絡を防止するのに、塗料の流れがある塗料噴霧時にのみ塗料に高電圧を印加し、塗料給送が停止される噴霧停止時には塗料に対する高電圧印加を停止するといった同期方式が考えられるが、この同期方式にしても、塗料噴霧の開始に伴い高電圧印加を開始した際に電圧の立ち上がり遅れで塗料の帯電が不十分になる、さらにまた、塗料噴霧の停止に伴い高電圧印加を停止した際に残留高電圧による塗料中導電材の橋絡が生じるなどの問題がある。
【0005】
これに対し、従来、供給ポンプにより供給路を通じて塗料タンクから塗装機近傍の三方バルブまで給送された塗料を再び塗料タンクに戻す戻し路を設け、塗料噴霧時には三方バルブまで給送された塗料の一部を塗装機の噴霧部に送って噴霧するのに並行して、三方バルブまで給送された塗料の残部を戻し路を通じて塗料タンクに戻し、また、噴霧停止時には三方バルブまで給送された塗料の全量を戻し路を通じて塗料タンクに戻すようにし、これにより、塗料中導電材の橋絡を防止する静電塗装装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
即ち、この静電塗装装置では、塗装機近傍の三方バルブと塗料タンクとの間での供給ポンプによる戻し路を通じた塗料の常時循環により、三方バルブと塗料タンクとの間における供給路及び戻し路の塗料を常時撹拌し、この常時撹拌により、塗装機の電圧印加部とアース部としての供給ポンプとの間における供給路での塗料中導電材の橋絡を防止するようにしている。
【0007】
また、この戻し路を通じた三方バルブ−塗料タンク間における塗料の常時循環に加え、塗料流動に伴い流動塗料に対する案内により流動塗料を撹拌状態にする撹拌用案内具を供給路及び戻し路に介装し、これにより橋絡防止機能を高めるようにした静電塗装装置も提
案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭51−28302号公報
【特許文献2】特公昭61−40471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2の静電塗装装置では、塗装機近傍の三方バルブから塗料タンクにわたる長尺な循環経路(換言すれば、装置全体にわたる循環経路)を通じて塗料を常時循環させるため、この常時循環の為のポンプを兼ねる塗料給送用の供給ポンプに高揚程の大型なポンプを要し、また、そのことでポンプ消費動力も大きくなり、装置コスト及び運転コストが嵩むとともに、省エネルギー化に逆行する問題があった。
【0010】
また、上記特許文献1及び特許文献2の静電塗装装置では、供給路における戻し路の分岐点である三方バルブと塗装機における電圧印加部との間については塗料循環による橋絡防止が及ばず、三方バルブを電気的に接地した場合には電圧印加部と三方バルブとの間で塗料中導電材の橋絡が生じて過電流が流れることから、三方バルブやその下流側に配置する開閉バルブなどを電気的に絶縁する必要があり、このことも装置コスト増大の一因となっていた。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な撹拌形態をもって塗料中導電材の橋絡を防止することで上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は導電材分散塗料用の静電塗装装置に係り、その特徴は、
導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を貯留する塗料タンクを設け、
この塗料タンクから供給ポンプにより供給路を通じて給送される塗料を噴霧する噴霧部と、この噴霧部から噴霧する塗料を噴霧前の段階での高電圧印加により帯電させる電圧印加部とを備える塗装機を設け、
前記供給路における塗料を電気的に接地するアース部とそれよりも下流側に位置する前記電圧印加部との間に形成される電界により前記供給路における塗料に塗料中導電材の橋絡が形成されることを塗料撹拌により防止する撹拌手段を設けた導電材分散塗料用の静電塗装装置であって、
前記供給路を開閉する開閉バルブを、前記供給ポンプと前記塗装機との間において前記供給路に介装して、この開閉バルブを前記アース部とし、
前記撹拌手段を構成するのに、前記電圧印加部と前記アース部との間における前記供給路の塗料流れ方向における一部箇所を撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記撹拌部における塗料を発生駆動力により撹拌することで前記橋絡の形成を前記撹拌部において阻止する駆動撹拌手段を設け
この駆動撹拌手段を構成するのに、循環ポンプにより前記供給路における塗料の一部を分岐部から抽出して、その抽出塗料を前記分岐部よりも上流側の合流部で前記供給路に戻す局部循環路を、前記電圧印加部と前記アース部との間において前記供給路に設け、
前記供給路における前記分岐部と前記合流部との間を前記撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記供給路における前記分岐部と前記合流部との間の塗料を前記循環ポンプによる前記局部循環路を通じた塗料循環により撹拌する構成にしてある点にある。
【0013】
つまり、この構成では、供給路を開閉する開閉バルブを、供給ポンプと塗装機との間において供給路に介装し、この開閉バルブをアース部とする構成で、電圧印加部とアース部との間における供給路の塗料流れ方向における一部箇所を撹拌部として、その撹拌部における塗料を駆動撹拌手段の発生駆動力により撹拌することで、その撹拌部における塗料中導電材の電界による結合を阻止する。
【0014】
したがって、この駆動撹拌手段を常時運転することで、供給路を通じた電圧印加部の側への塗料給送の有無(即ち、噴霧部からの塗料噴霧の有無)にかかわらず、電圧印加部とアース部との間の形成電界によるそれら電圧印加部とアース部との間での塗料中導電材の橋絡を上記撹拌部において確実に防止することができる。
【0015】
そして、この構成によれば、供給路の塗料流れ方向における一部箇所(撹拌部)において塗料を撹拌するだけであるから、先述した特許文献1や特許文献2の静電塗装装置に比べ塗装機近傍の三方バルブから塗料タンクにわたる長尺な循環経路(即ち、塗装装置の全体にわたるような循環経路)を不要にすることができ、また、そのことで供給ポンプも塗装機に塗料を給送するだけの低揚程の小型なもので済ませることができるとともに、別途設ける駆動撹拌手段に要求される駆動力も小さくて駆動撹拌手段そのものも小型なもので済み、これにより、装置コスト及び運転コストを効果的に低減し得るとともに省エネルギー化も効果的に促進することができる。
【0016】
さらに、この構成によれば、駆動撹拌手段により塗料撹拌する撹拌部を電圧印加部とアース部との間において供給路の任意箇所に配置することができて、そのことでアース部も電圧印加部により近い下流側寄り箇所に配置することが可能になり、これにより、アース部より上流側に位置して電気的な絶縁が不要となる装置内領域を大きくすることができ、このことからも装置コストを一層効果的に低減することができる。
【0017】
また、上記の第1特徴構成では、
前記駆動撹拌手段を構成するのに、循環ポンプにより前記供給路における塗料の一部を分岐部から抽出して、その抽出塗料を前記分岐部よりも上流側の合流部で前記供給路に戻す局部循環路を、前記電圧印加部と前記アース部との間において前記供給路に設け、
前記供給路における前記分岐部と前記合流部との間を前記撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記供給路における前記分岐部と前記合流部との間の塗料を前記循環ポンプによる前記局部循環路を通じた塗料循環により撹拌するから、次の効果も得ることができる。
【0018】
つまり、この構成では、供給路の塗料流れ方向の一部箇所(前記撹拌部)における塗料の撹拌として、循環ポンプによる上記局部循環路を通じた塗料循環により供給路における上記分岐部と上記合流部との間の塗料を撹拌するが、この撹拌では、合流部での塗料合流に伴う塗料の乱流化及び分岐部での塗料抽出に伴う塗料の乱流化も相俟って合流部と分岐部との間における塗料を効果的に撹拌することができて、合流部と分岐部との間における塗料中導電材の電界による結合を効果的に防止することができる。
【0019】
したがって、この構成によれば、循環ポンプを常時運転することで、供給路を通じた電圧印加部の側への塗料給送の有無(即ち、噴霧部からの塗料噴霧の有無)にかかわらず、電圧印加部とアース部との間での塗料中導電材の橋絡を上記分岐部と上記合流部の間において一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0020】
また、この構成において、局部循環路は供給路における塗料流れ方向の一部箇所に対する短絡的な循環路でよいから、循環ポンプもごく小型なもので済む。
【0021】
本発明の第2特徴構成は、導電材分散塗料用の静電塗装装置に係り、その特徴は、
導電材を非導電性溶剤に分散させた塗料を貯留する塗料タンクを設け、
この塗料タンクから供給ポンプにより供給路を通じて給送される塗料を噴霧する噴霧部と、この噴霧部から噴霧する塗料を噴霧前の段階での高電圧印加により帯電させる電圧印加部とを備える塗装機を設け、
前記供給路における塗料を電気的に接地するアース部とそれよりも下流側に位置する前記電圧印加部との間に形成される電界により前記供給路における塗料に塗料中導電材の橋絡が形成されることを塗料撹拌により防止する撹拌手段を設けた導電材分散塗料用の静電塗装装置であって、
前記供給路を開閉する開閉バルブを、前記供給ポンプと前記塗装機との間において前記供給路に介装して、この開閉バルブと前記電圧印加部との間に前記アース部を配置し、
前記撹拌手段を構成するのに、前記電圧印加部と前記アース部との間における前記供給路の塗料流れ方向における一部箇所を撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記撹拌部における塗料を発生駆動力により撹拌することで前記橋絡の形成を前記撹拌部において阻止する駆動撹拌手段を設け、
この駆動撹拌手段を構成するのに、循環ポンプにより前記供給路における塗料の一部を分岐部から抽出して、その抽出塗料を前記分岐部よりも上流側の合流部で前記供給路に戻す局部循環路を、前記電圧印加部と前記アース部との間に前記分岐部を配置するとともに前記アース部と前記開閉バルブとの間に前記合流部を配置した状態で、前記供給路に設け、
前記分岐部を前記撹拌部として、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず、前記分岐部における塗料を前記循環ポンプによる前記局部循環路を通じた塗料循環により撹拌する構成にしてある点にある。
【0022】
つまり、この構成では、前記の第1特徴構成と同様、循環ポンプの常時運転による局部循環路での塗料循環により供給路における分岐部と合流部との間の塗料を常時撹拌して塗料中導電材の橋絡を防止するが、特にこの構成では、供給路を開閉する開閉バルブを、供給ポンプと塗装機との間において供給路に介装し、この開閉バルブと電圧印加部との間にアース部を配置する構成で、下流側の分岐部を電圧印加部とアース部との間に配置するのに対し、上流側の合流部をアース部と開閉バルブとの間に配置することで、電圧印加部とアース部との間での塗料中導電材の橋絡を上記分岐部とアース部との間(殊に塗料の乱流化による撹拌効果が大きい分岐部近傍)において確実に防止する。
【0023】
そして、この構成によれば、分岐部と合流部とのうち分岐部のみを電圧印加部とアース部との間に配置するから、塗装機における電圧印加部とアース部との離間寸法を小さくすることができて、アース部を電圧印加部に一層近い下流側寄り箇所に配置することができ、これにより、電気的な絶縁が不要となる装置内領域を一層大きくすることができて、装置コストを一層低減することができる。
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記塗装機において前記電圧印加部よりも塗料流れ方向で上流側に位置する塗装機後端部に前記アース部を配置してある点にある。
つまり、この構成によれば、塗装機の後端部よりも上流側に位置する装置内領域の全てについて電気的な絶縁を不要にすることができ、これにより、装置コストをさらに効果的
に低減することができる。
【0024】
なお、本発明は以上の通りであるが、本発明に対する参考構成としては、
前記供給路を開閉する開閉バルブを、前記供給ポンプと前記塗装機との間において前記供給路に介装して、この開閉バルブを前記アース部とし、
そして、前記電圧印加部と前記アース部との間における前記供給路の塗料流れ方向における一部箇所を撹拌部とすることにおいて、
前記駆動撹拌手段を構成するのに、前記供給路を通じた前記電圧印加部の側への塗料給送の有無にかかわらず前記撹拌部における塗料を発生振動により撹拌する振動装置を、前記供給路における前記撹拌部に設けることも考えられる。
【0025】
つまり、この構成では、供給路における塗料流れ方向の一部箇所に配置した振動装置の配置部を前記撹拌部として、その振動装置の配置部における塗料を振動装置の発生振動により撹拌することで、振動装置配置部における塗料中導電材の電界による結合を阻止する。
【0026】
したがって、この構成によれば、振動装置を常時運転することで、供給路を通じた電圧印加部の側への塗料給送の有無(即ち、噴霧部からの塗料噴霧の有無)にかかわらず、塗料中導電材の橋絡を振動装置の配置部において確実に防止することができる。
【0027】
そして、この構成によれば、振動装置の発生駆動力も小さなもので済み、また、前記第及び第特徴構成の如き局部循環路の形成さえも不要にし得ることで、装置コストを一層効果的に低減することができる。
【0028】
(削除)
【0029】
(削除)
【0030】
(削除)
【0031】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態の静電塗装装置の概略構成図
図2】第1実施形態の静電塗装装置の塗装機の縦断面図
図3】第1実施形態の静電塗装装置の回路図
図4】第2実施形態の静電塗装装置の回路図
図5参考構成を示す静電塗装装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
図1は、導電材を非導電性溶剤に分散させた導電材分散塗料の一例として、導電プライマーTを搬送装置2により搬送される樹脂製被塗物3(本例では自動車のバンパー)に対して静電塗装する静電塗装装置1を示し、この静電塗装装置1は可動アーム4aを有する塗装ロボット4を備え、この可動アーム4aの先端部には回転霧化式の静電塗装機5を装備してある。
【0034】
本例において導電プライマーTは、導電材としての粉末カーボンを非導電性溶剤としてのシンナーに分散させたプライマーであり、この導電プライマーTの静電塗装により樹脂製被塗物3の塗装対象面3aに導電プライマー層を形成して、上塗り用の静電塗装機と樹脂製被塗物3との間での電界形成を可能にすることで、樹脂製被塗物3の塗装対象面3a(具体的には導電プライマー層の表面)に対する水性塗料等を用いた通常の静電塗装による上塗り塗装を可能にする。
【0035】
また、この導電プライマーTそのものの静電塗装にあたっては、樹脂製被塗物3の裏面3bに導電材(図示省略)を付設するなどの適当な仮導電処理を施すことで、樹脂製被塗物3と上記塗装機5との間での電界形成を可能にし、これにより、樹脂製被塗物3の塗装対象面3aに対して導電プライマーTを静電塗装する。
【0036】
6は導電プライマーTを貯留する塗料タンク、7は供給路8を通じて塗料タンク6における導電プライマーTを塗装機5に給送する供給ポンプであり、供給路8は塗装ロボット4の可動アーム4aを経由して塗装機5にわたらせてある。
【0037】
9は供給路8を開閉する開閉バルブであり、この開閉バルブ9による供給路8の開閉により塗装機5に対する導電プライマーTの給送を断続する。
【0038】
図2に示すように、塗装機5の先端部には、供給路8を通じて給送される導電プライマーTを樹脂製被塗物3に噴霧する噴霧部として、供給路8の先端からカップ内面の中央部に吐出される導電プライマーTをカップの高速回転による遠心力によりカップ外周縁から細分化して飛散させる霧化形態で噴霧するベルカップ5aを設けてある。
【0039】
また、塗装機5の内部には、ベルカップ5aを高速回転させるタービン5b、高電圧(本例では負の高電圧)を発生する高電圧発生器5cを設けてあり、この高電圧発生器5cの発生高電圧を供給路8の一部に印加するとともに、タービン5bを介してベルカップ5aに印加することで、これら供給路8の一部及びタービン5bからベルカップ5aの部分を導電プライマーTに対する電圧印加部5dとして、塗装機5に給送された導電プライマーTに対し塗装機内部の通過過程からベルカップ5aでの噴霧過程にかけて高電圧発生器5cによる発生高電圧を印加することでベルカップ5aから噴霧する導電プライマーTを帯電状態にする。
【0040】
つまり、ベルカップ5aから帯電状態の導電プライマーTを噴霧することで、その帯電状態の噴霧導電プライマーTを適当な仮導電処理を施した樹脂製被塗物3と高電圧印加状態にあるベルカップ5aとの間の形成電界による電気力により飛行させて樹脂製被塗物3の塗装対象面3aに塗着させ、これにより、樹脂製被塗物3の塗装対象面3aに前述の導電プライマー層を形成する。
【0041】
また、開閉バルブ9に加え、塗装機5の内部に供給路8を開閉するトリガーバルブ5eを設け、樹脂製被塗物3の不存時には開閉バルブ9により供給路8を閉じることでベルカップ5aへの導電プライマーTの給送を停止し、また、樹脂製被塗物3に対して塗装ロボット4を塗装動作させるときには、塗装ロボット4の塗装動作と連係したトリガーバルブ5eの開閉によりベルカップ5aからの導電プライマーTの噴霧を断続する。
【0042】
供給路8を開閉する開閉バルブ9は、塗装機5に極力近い配置として塗装ロボット4の可動アーム4aに塗装機5とともに搭載してあり、これにより、この開閉バルブ9を塗装ロボット4に搭載せず供給路8の上流側に配置するのに比べ、塗装機5におけるベルカップ5aの洗浄時などにおいて廃棄が必要となる導電プライマーTの量(即ち、供給路8における開閉バルブ9よりも下流側の部分に残留する導電プライマーTの量)を極力少量化するようにしてある。
【0043】
噴霧前の塗料に対して直接に高電圧印加する静電塗装装置では、不測な箇所への漏電事故を確実に回避するため、供給路8における塗料を電気的に接地するアース部Eを塗装機5における電圧印加部5dよりも塗料流れ方向の上流側において供給路8に装備するが、上記導電プライマーを初めとする導電材分散塗料(以下、単に塗料T略称することがある)を用いる静電塗装では、このアース部Eと塗装機5における電圧印加部5dとの間に形成される電界により供給路8における塗料Tに塗料中導電材が互いに結合して供給路8の長手方向に連なる橋絡(ブリッジ)が生じる。
【0044】
そして、この橋絡の発生により電圧印加部5dとアース部Eとの間において過電流が生じ、それが原因で静電塗装運転が不能となる事態を招く問題があるが、この問題に対し、本例の静電塗装装置1では、塗料Tの撹拌により上記橋絡の形成を防止する撹拌手段として、塗料流れ方向で最も下流側に配備されたアース部Eとそれよりさらに下流側に位置する電圧印加部5dとの間における供給路8の塗料流れ方向での一部箇所を撹拌部Cとし、電圧印加部5dの側への塗料給送の有無(即ち、塗料噴霧の有無)にかかわらず、撹拌部Cにおける塗料Tを発生駆動力により撹拌することで、上記橋絡の形成を撹拌部Cにおいて阻止する駆動撹拌手段Dを設けてある。
【0045】
また、開閉バルブ9は、供給路8における塗料を電気的に接地する上記アース部Eとしてそれ自体を電気的に接地してあり、これにより、塗料流れ方向において開閉バルブ9よりも上流側に位置する大半の供給路8周りについては漏電防止のための電気絶縁処理を不要にしてある。
【0046】
上記駆動撹拌手段Dの具体的構成については、図3に示すように、アース部Eを兼ねる開閉バルブ9と塗装機5の電圧印加部5dとの間で、且つ、トリガーバルブ5eよりも上流側の供給路8の一部箇所に、下流側の分岐部8aと上流側の合流部8bとの2箇所で供給路8に接続した小路長の局部循環路10を設けるとともに、この小路長の局部循環路10に塗料通過させるのに足りるだけの低揚程の小型循環ポンプ11を局部循環路10に介装し、この循環ポンプ11を常時運転することで、供給路8を通じた供給ポンプ7による電圧印加部5dの側への塗料給送の有無(換言すれば、塗料噴霧の有無)にかかわらず、供給路8における分岐部8aと合流部8bとの間の部分を前記撹拌部Cとして、その撹拌部Cにおける塗料Tを局部循環路10を通じて常時循環させるようにしてある。
【0047】
即ち、この局部循環路10を通じた塗料Tの常時循環により、また、その塗料循環に伴う分岐部8aでの塗料抽出による乱流化及び合流部8bでの塗料合流による乱流化とも協働して、電界中での塗料中導電材どうしの結合による塗料中導電材の橋絡の形成を、塗料噴霧時及び塗料噴霧停止時を通じ、供給路8の一部箇所である上記撹拌部C(分岐部8aと合流部8bとの間の部分)において確実に阻止する。
【0048】
〔第2実施形態〕
図4は、第1実施形態と同様、導電材を非導電性溶剤に分散させた導電プライマーなどの導電材分散塗料を用いて静電塗装を行う静電塗装装置1の回路図を示し、この静電塗装装置1では、供給路8の一部箇所である撹拌部Cの塗料Tを発生駆動力により撹拌することで塗料中導電材の橋絡の形成を撹拌部Cにおいて阻止する駆動発生手段Dを構成するのに、第1実施形態と同じく、供給路8の一部箇所に、下流側の分岐部8aと上流側の合流部8bとの2箇所で供給路8に接続した小路長の局部循環路10を設け、この局部循環路10に小型循環ポンプ11を介装してある。
【0049】
一方、供給路8における塗料を電気的に接地するアース部E(塗料流れ方向で最も下流側に配置されたアース部)は、開閉バルブ9よりもさらに下流側に位置する塗装機5の後端部に設けてあり、具体的には、塗装機5の後端部にアースプレート5fを設け、このアースプレート5fを電気的に接地する。
そして、これに対し、上記局部循環路10は、下流側の分岐部8aを塗装機5の内部においてアース部Eとしてのアースプレート5fとそれよりも下流側の電圧印加部5dとの間で、且つ、トリガーバルブ5eよりも上流側に配置し、かつ、上流側の合流部8bをアース部Eとしてのアースプレート5fと開閉バルブ9との間に配置した状態で供給路8に接続してある。
【0050】
つまり、この静電塗装装置1では、供給路8における局部循環路10の分岐部8aとアース部Eとしてのアースプレート5fとの間の部分(特に、局部循環路10への塗料抽出に伴う乱流化による塗料撹拌効果が高い分岐部8aの近傍部分)を、アース部Eとそれよりも下流側の電圧印加部5dとの間に配置する前記撹拌部Cとしてあり、これにより、循環ポンプ11の常時運転による局部循環路10を通じた塗料Tの常時循環により、供給路8を通じた供給ポンプ7による電圧印加部5dの側への塗料給送の有無(即ち、塗料噴霧の有無)にかかわらず、電界中での塗料中導電材どうしの結合による塗料中導電材の橋絡の形成をその撹拌部C(分岐部8aの近傍部分)において確実に阻止するようにしてある。
【0051】
〔参考構成〕
図5は同じく導電材分散塗料用の静電塗装装置1の参考構成を示し、この静電塗装装置1では、第1実施形態と同じく開閉バルブ9を供給路8における塗料を電気的に接地するアース部E(塗料流れ方向で最も下流側に配置されたアース部)にしてある。
【0052】
これに対し、供給路8の一部箇所である撹拌部Cの塗料Tを発生駆動力により撹拌することで塗料中導電材の橋絡の形成を撹拌部Cにおいて阻止する駆動撹拌手段Dを構成するのに、アース部Eを兼ねる開閉バルブ9と塗装機5の電圧印加部5dとの間における供給路8の塗料流れ方向での一部箇所に振動装置12を装備し、この振動装置12の配置箇所における供給路8の塗料Tを振動装置12の発生振動力により撹拌するようにしてある。
【0053】
つまり、この静電塗装装置1では、供給路8における振動装置12配置箇所をアース部Eとしての開閉バルブ9とそれよりも下流側の電圧印加部5dとの間に配置する前記撹拌部Cとして、その撹拌部Cにおける塗料Tを振動装置12の発生振動力により撹拌するようにしてあり、これにより、振動装置を常時運転することで、供給路8を通じた供給ポンプ7による電圧印加部5dの側への塗料給送の有無(即ち、塗料噴霧の有無)にかかわらず、電界中での塗料中導電材どうしの結合による塗料中導電材の橋絡の形成をその撹拌部C(振動装置12の配置箇所)において確実に阻止する。
【0054】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0055】
(削除)
【0056】
第2実施形態ではアース部Eを塗装機5の後端部に設けたアースプレート5fとしたが、これに限らず、本発明の第2特徴構成を実施するのに、供給路8における塗料Tを電気的に接地するアース部E(最下流側のアース部)は、開閉バルブ9と電圧印加部5dとの間であれば、供給路8におけるいずれの箇所に配置してもよい。
【0057】
(削除)
【0058】
即ち、分岐部8aのみをアース部Eと電圧印加部5dとの間に配置する局部循環路10及びそれに介装の循環ポンプ11により駆動撹拌手段Dを構成する場合では、アース部Eを開閉バルブ9と塗装機後端部との間で供給路8に装備して、局部循環路10の分岐部8aをアース部Eと電圧印加部5dとの間に配置するのに対し、局部循環路10の合流部8bを開閉バルブ9とアース部Eとの間に配置するようにしてもよい。
【0059】
塗装機5は、ベルカップ5aを噴霧部とする回転霧化式の静電塗装機に限らず、噴霧前の段階で塗料Tに電圧印加する型式の静電塗装機であれば、塗料Tを圧縮空気により噴霧部から噴霧する型式の静電塗装機など、どのような形式の静電塗装機であってもよい。
【0060】
また、塗装機5の電圧印加部5dに発生高電圧を供給する高電圧発生器5cは、電圧印加部5dとともに塗装機5に内装するものに限らず、塗装機5の外部に配置するものであってもよい。
【0061】
第1及び第2実施形態並びに参考構成では、供給路8を開閉する開閉バルブ9を供給路8に介装する例を示したが、これに代え、塗装機5に対する給送塗料Tを選択的に切り換える塗料切換バルブの機能も備える開閉バルブを供給路8に介装したり、塗料切換バルブと開閉バルブとをその順に上流側から並べて供給路8に介装するようにしてもよい。
【0062】
塗装機5から噴霧する導電材分散塗料Tは、粉末カーボンなどの導電材をシンナーなどの非導電性溶剤に分散させた導電プライマーに限らず、塗料中導電材の橋絡が生じる虞のある塗料であれば、導電性の顔料や光輝材などを非導電性溶剤に分散させた塗料など、どのような塗料であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明による導電材分散塗料用の静電塗装装置は、各種分野において種々の用途の静電塗装に用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
T 塗料
6 塗料タンク
7 供給ポンプ
8 供給路
5a 噴霧部
5d 電圧印加部
5 塗装機
E アース部
1 静電塗装装置
C 撹拌部
D 駆動撹拌手段
11 循環ポンプ
8a 分岐部
8b 合流部
10 局部循環路
9 開閉バルブ
5f 塗装機後端部(アースプレート)
図1
図2
図3
図4
図5