(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側羽根は、少なくとも非モータ側から空気を吸入し、前記モータ及び前記圧縮部に向かって気流を流出させる構成であり、前記カバーは、前記冷却ファンの非モータ側と対向する部分に風窓を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気圧縮機1の斜視図である。
図2は、空気圧縮機1の、カバー26を断面とした平面図である。なお、本図において把持部31a,31bの図示は省略している。
図3は、空気圧縮機1の平断面図である。
図4は、
図2のC−C断面図である。
図5は、空気圧縮機1の正断面図である。
図6は、空気圧縮機1のカバー26の第1の下方斜視図である。
図7は、カバー26の第2の下方斜視図である。
図8は、カバー26に関する、
図4のA−A断面図である。
図9は、同B−B断面図である。
図10は、空気圧縮機1の冷却ファン8bの斜視図である。
図11は、空気圧縮機1の冷却ファン8aの斜視図である。
図12は、空気圧縮機1の第7導風板306の斜視図である。
【0024】
空気圧縮機1は、一定の間隔を隔てて平行に配置され、圧縮空気を貯留する一対の空気タンク2a,2bと、外部より吸入した空気を圧縮して空気タンク2a,2bに供給する圧縮部3と、圧縮部3に連結され圧縮部3を駆動するモータ4とを有し、モータ4の軸方向が空気タンク2a,2bの長手方向と略直交するように、モータ4と圧縮部3が一対の空気タンク2a,2bの上方に配置されている。
【0025】
図3に示すように、モータ回転軸5は圧縮部3を貫通しており、モータ回転軸5のモータ側端部に冷却ファン8a(第1の冷却ファン)が設けられ、非モータ側端部に冷却ファン8b(第2の冷却ファン)が設けられる。冷却ファン8a,8bはモータ4と一体に回転する。
【0026】
図2に示すように、一対の空気タンク2a,2bの長手方向において圧縮部3と隣接して、減圧弁9a,9bと、減圧された圧縮空気の圧力を表示する圧力計10a,10bと、圧縮空気取り出し口となるカプラ11a,11bとが設けられる。作業者は、図示しない高圧用エアホースによりカプラ11a,11bと図示しない釘打機等の空気工具を接続することで、圧縮空気を利用して空気工具を動作させ、適宜作業を行うことが可能となる。
【0027】
図2に示すように、空気タンク2a,2bには、圧力が異常に高くなった時に圧縮空気の一部を外部に排出する安全弁12と、ドレン排出装置13が設けられる。ドレン排出装置13は操作部14を有し、操作部14を操作することで適宜空気タンク2a,2b内の圧縮空気及び水分を外部に排出できる。
【0028】
図3に示すように、圧縮部3においては内部にクランク機構が設けられ、モータ回転軸5の回転運動が第1コンロッド33a、第2コンロッド33bを介して第1ピストン34a、第2ピストン34bの往復運動にそれぞれ変換される。第1ピストン34aは、第1シリンダ15a及び第1シリンダヘッド16aに収容される。第2ピストン34bは、第2シリンダ15b及び第2シリンダヘッド16bに収容される。第1シリンダ15a及び第2シリンダ15bは、モータ回転軸5を介在させて水平対向し、空気タンク2a,2bと略平行に配置される。圧縮部3において外部の空気が吸入されると、まず第2シリンダ15b(低圧側シリンダ)で圧縮され、第2シリンダ15bで圧縮された空気は配管19a(
図2)を介して第1シリンダ15a(高圧側シリンダ)に供給され、第1シリンダ15aで更に圧縮された空気が配管19bを介して空気タンク2aに供給される。空気タンク2a,2bは互いに連結管20で接続されており、空気タンク2a,2bの圧力は均一となる。
【0029】
図3に示すように、モータ4を駆動するための制御回路21(制御回路基板)は、ケース22に収容され圧縮部3の非モータ側の冷却ファン8bに対向して配置され、空気タンク2bに固定される。モータ4はDCブラシレス方式であり、ステータコイル23と、ステータコイル23の内側に配置されるロータ24と、ロータ24の回転位置を検出するホール素子基板25(
図2)とを有し、制御回路21によってインバータ制御される。制御回路21はインバータ制御のための半導体スイッチング素子などの発熱部品204(
図3)を含んだ構成となっており、ケース22において発熱部品204が取り付けられた面を発熱面203として放熱ないし冷却される。
【0030】
図1に示すように、空気タンク2a,2b上方には圧縮部3、モータ4、制御回路21等の空気圧縮機の構成部品を覆うカバー26が配置され、空気タンク2a,2bに固定される。空気タンク2a,2bの長手方向の両端部には空気圧縮機1を運搬するための把持部31a,31bが設けられる。カバー26には空気圧縮機1を作動させる図示しない電源スイッチ等を有する操作パネル28が設けられる。カバー26には冷却ファン8a,8b対向する壁面に風窓29a,29b(
図6及び
図7)が設けられる。空気タンク2a,2bの間には異物の混入を防止するカバー30(
図4)が更に取り付けられる。空気タンク2a,2bには地面との直接接触を防止して保護するための脚部32が設けられる。
【0031】
このような空気圧縮機1の運転時において、モータ4には第1ピストン34aと第2ピストン34bの往復運動によって空気を圧縮する際の圧縮負荷が交互に作用する。そのため、ステータコイル23及び制御回路21には負荷電流が生じ、負荷電流に伴うジュール熱により温度上昇する。また、第1シリンダ15a及び第1シリンダヘッド16a、並びに第2シリンダ15b及び第2シリンダヘッド16bは、圧縮空気の圧縮熱により温度上昇する。配管19a,19b及び空気タンク2a,2bも、圧縮熱で温度上昇した圧縮空気が流動するため温度上昇する。そのため、第1シリンダ15a及び第1シリンダヘッド16a、第2シリンダ15b及び第2シリンダヘッド16b、ステータコイル23、制御回路21、並びにケース22等の発熱部を中心に各部の温度上昇を冷却により抑制する必要がある。以下、冷却に関する構成を説明する。
【0032】
(冷却ファン8aによる冷却)
通常の軸流ファンでは、発生する気流は遠心力が大きく外周方向に流れがちで、隣接するモータ内部の気流を促進することが難しいため、モータ内部に熱がこもりやすい。ここでは、モータ4の冷却性能を向上させる構成について説明する。
【0033】
図11に示すように、冷却ファン8aは、外側羽根104と、内側羽根105とを有する。外側羽根104と内側羽根105は、モータ4の回転軸の方向に延びる円筒形状を有する区画部(円筒部)102にて相互に接続される。内側羽根105の更に内側には取付部103が形成され、取付部103により冷却ファン8aをモータ回転軸5に取り付けることができる。内側羽根105は、区画部102及び取付部103と一体的に形成される。内側羽根105は、モータ回転軸5と略平行に延在する湾曲した板状で、いわゆる遠心式に形成される。隣り合う内側羽根105と、区画部102と、取付部103とにより形成される貫通穴は、非モータ側開口107が反対側のモータ側開口106(
図3)に対して開口面積が小さく設定されている。外側羽根104は、モータ回転軸5方向に対して傾斜して延在する湾曲形状で、いわゆる軸流式に形成される。
図3に示すように、外側羽根104の外径D2は、モータ4の外径D1より大きく設定されている。また、カバー26には、冷却ファン8aに対向して風窓29aが形成される。風窓29aの中央部には、内側羽根105と対向して遮蔽部としての遮蔽板101(
図7及び
図8)が形成されている。
【0034】
モータ4を運転すると、冷却ファン8aが回転することで気流が発生する。すなわち、外側羽根104によって風窓29aから外気が吸入され、第1シリンダ15a及び第1シリンダヘッド16a、並びに第2シリンダ15b及び第2シリンダヘッド16bに対して
図3に示すように気流CA1が発生する。また、外側羽根104の発生する気流の一部は気流CA2のごとくステータコイル23に向かって流れる。このとき、更に内側羽根105によって生ずる負圧P1により、気流CA3のごとくステータコイル23近傍の空気が内側羽根105に吸入される。内側羽根105に吸入された空気は、外側羽根104によって生ずる負圧P2によりモータ側開口106から非モータ側開口107に向かって通り抜けるよう流れ、気流CA4のごとく外側羽根104に吸入され、気流CA1と共に流出する。冷却を終えた冷却風は、
図4に示すように、空気タンク2a,2bの間からカバー30の外部へ排出される。
【0035】
このように、内側羽根105により気流CA3,CA4を生み出すことができる(内側羽根105による気流は区画部102の円筒形状の内面によって規制され確実に冷却ファン8aの回転軸方向に流動する)ため、外側羽根104の気流CA1,CA2と相乗効果を奏して従来は気流が停滞しがちであったステータコイル23の近傍に高い流速を発生させることができ、ステータコイル23の温度上昇を効果的に抑制することができる。すなわち、内側羽根105により、遠心力が大きく外周方向に流れやすい外側羽根104の気流に対する補助効果ないし相乗効果を奏し、冷却ファン8aによるモータ4の冷却性能を向上させることができる。
【0036】
また、モータ回転軸5においては第1シリンダ15a及び第2シリンダ15b内で空気を圧縮する際の圧縮負荷が交互に作用し回転変動が生じるため、冷却ファン8aには回転変動によるねじり振動が生じるが、複数の内側羽根105を利用して取付部103と区画部102を強固に接続しているので、ねじり振動による応力を分散・低減でき、冷却ファン8aの強度・信頼性を高めることができる。更に、内側羽根105が区画部102と取付部103とを接続する接続部(骨組み)としての役割も併せ持つため、気流に寄与しない接続部を別途に形成する必要がなく、構造的に効率が良い。なお、内側羽根105の枚数を増加することで、内側羽根105のファンとしての性能を向上させると共に、区画部102と取付部103との接続強度も向上できる。
【0037】
また、冷却ファン8aにおいて、非モータ側開口107とモータ側開口106とで開口面積を異ならせているため、内側羽根105による気流の流動方向を制御しやすい。すなわち、非モータ側開口107とモータ側開口106の開口面積比を適宜調整することで、内側羽根105による気流の流動方向を好適に制御することができる。
【0038】
また、外側羽根104は、非モータ側(カバー26の外部)から空気を吸入してモータ4及び圧縮部3に向かって気流を流出させるため、カバー26内の気温よりも温度が低い外気を大量にカバー26内に吸入すると共にモータ4及び圧縮部3などを広範囲に冷却することができる。
【0039】
また、遮蔽板101を設けたことで、外側羽根104の作用による冷却ファン8aと遮蔽板101との間の負圧P2が強められるため、気流CA3,CA4を更に促進し冷却効率を大幅に向上できる。すなわち、内側羽根105による負圧(吸引)で冷却ファン8aの中心部に引き寄せられたモータ4近傍の空気を内側羽根105の非モータ側にスムーズに流動させることができ、外側羽根104と内側羽根105による負圧の相乗効果でモータ近傍の冷却効果を一層高めることができる。
【0040】
また、外側羽根104の外径D2をモータ4の外径D1より大きくしたので、外側羽根104の発生する気流の一部はモータ4を経由しないで直接圧縮部3に供給されるため、圧縮部3の冷却効率が高められる。
【0041】
また、外側羽根104による風量を、内側羽根105によって区画部102の内側を流動する風量より大きくしているため、主にモータ4近傍に気流を生成する内側羽根105による気流の一部を外側羽根の気流に合流させ易くなるため、モータ冷却後の気流を確実に圧縮部3に供給し最終的にカバー外部へと排出することができる。従って、モータ4の近傍に熱がこもって冷却性能に悪影響を及ぼすことがなく、冷却性能を向上させることができる。
【0042】
なお、冷却ファン8aにおけるモータ側開口106と非モータ側開口107との面積比は適宜変更しても良いし、内側羽根105の形状及び外側羽根104の形状も適宜変更して良い。
【0043】
(冷却ファン8bによる冷却)
一般に、空気圧縮機においては、モータ、圧縮部(特にシリンダ)、及び制御回路等、使用に伴って高温になる発熱部が複数あり、それらを互いに離れた位置に配置せざるを得ないことが多い。そのため、モータの回転軸に取り付けた冷却ファンの発生する冷却風を各発熱部に確実に導く必要があるが、レイアウト上、通常の冷却ファンでは冷却しにくい場所に発熱部が位置することもあり、冷却効率の面で課題があった。こうした課題に対して冷却効率の向上させるための構成について説明する。
【0044】
図3及び
図4に示すように、モータ回転軸5の非モータ側端部に取り付けられる冷却ファン8bと対向してケース22及び制御回路21が配置される。ケース22においては、収容される制御回路21の、発熱部品204が取り付けられる発熱面203を、冷却ファン8bに対向させている。発熱部品204は、発熱面203を挟んで冷却ファン8bの外周部(後述のリング部201)と対向する。発熱部品204は、IGBT、ダイオードブリッジ、IPM(インテリジェントパワーモジュール)等である。
【0045】
図10に示すように、冷却ファン8bは、モータ回転軸5方向を法線とし平板上に形成される板状部としての背板202を有し、背板202上に内側から外周に向かってモータ回転軸5と略平行に延在する羽根200が、いわゆる遠心式に形成される。羽根200の内側には取付部205が形成され、取付部205により冷却ファン8bをモータ回転軸5に取り付けることができる。冷却ファン8bの外周端部にはリング部201が形成される。リング部201はモータ回転軸5に略平行な円筒形状であり、背板202から発熱面203に向かって延在している。リング部201と取付部205は、背板202によって全周に渡って連結一体化される。背板202はリング部201と取付部205の間のモータ側を全面的に塞ぐ。
【0046】
また、冷却ファン8bの近傍には、
図2に示すように、第5導風板304、第6導風板305、及び第7導風板306が設けられる。第5導風板304及び第6導風板305はカバー26から垂下するリブとして形成される。
図12に単体で示した第7導風板306は、
図2に示すようにケース22にネジ材で取り付けられ、ケース22から第2シリンダ15bの非モータ側に向かって形成される。第5導風板304はカバー26からケース22に向かって垂下しており、冷却ファン8bの外径D3(
図4)より小さな径の開口部207(切欠部)が形成される(
図4及び
図6等)。第6導風板305は第5導風板304と一体的に形成され、第5導風板304から滑らかに第1シリンダ15aの非モータ側に向かって形成される。冷却ファン8bと対向するカバー26の壁面には風窓29bが形成されている。
【0047】
モータ4を運転すると、
図3に示すように、冷却ファン8bにより気流CA10のごとく風窓29bから外気が吸入され、開口部207によって冷却ファン8bの中心部に案内される。気流CA10は気流CA11のごとく背板202に沿って冷却ファン8bの外周側に流れた後、リング部201によって偏向され(向きを変えられ)、発熱面203(第1の発熱部)に向かって流れて衝突し発熱面203上に沿って更に冷却ファン8bから放射状に流れる。気流CA11の一部は第5導風板304、第6導風板305、及び第7導風版306によって気流CA12,CA13のごとく第1シリンダ15a及び第2シリンダ15bの非モータ側(第2の発熱部)に向かって案内される。冷却を終えた冷却風は、
図4に示すように、空気タンク2a,2bの間からカバー30の外部へ排出される。
【0048】
このように、リング部201によって冷却風を偏向して発熱面203に確実に当てることができるので、発熱面203の冷却効率を大幅に向上させることができる。更に、背板202を設けたことで、多くの冷却風を非モータ側(発熱面203側)に確実に流すことができ、発熱面203の冷却効率がより高められる。また、冷却ファン8bの正面に配置された発熱面203に対して吹き付けるように気流を流出させることができるので、冷却効率を一層向上できる。すなわち、冷却ファン8bは、羽根200と背板202を利用して空気を中心側から吸入して外周方向に流出させ、リング部201によって気流の流出方向に軸方向成分(非モータ側に向かう成分)を与えることができるので、冷却ファン8bと異なる平面上に存在する発熱面203に対しても確実に冷却風を供給することが可能となる。そして、発熱面203に供給される冷却風は、風窓29bから取り込まれた他の冷却にまだ利用されていない外気が主であり、発熱面203の冷却効率が良好である。
【0049】
また、第5導風板304、第6導風板305、及び第7導風板306により、発熱面203を冷却した後の冷却風及び発熱面203に当たらなかった冷却風を第1シリンダ15a及び第2シリンダ15bの冷却に活用することができる。第1シリンダ15a及び第2シリンダ15bの非モータ側は冷却ファン8aによる気流CA1での冷却が難しく温度上昇し易い部分であるため、この効果は極めて高い。
【0050】
また、モータ回転軸5においては第1シリンダ15a及び第2シリンダ15b内で空気を圧縮する際の圧縮負荷が交互に作用し回転変動が生じるため、冷却ファン8bには回転変動によるねじり振動が生じるが、背板202によってリング部201を接続しているため、モータ回転軸5方向を法線とする断面における断面係数が大幅に向上し、遠心荷重やねじり振動荷重に対して十分な強度を得ることができる。また、背板202に羽根200を設けているため、羽根200の強度も向上させることかできる。なお、背板202はリング部201と取付部205の間をモータ側を全面的に塞ぐようにリング部201と取付部205を連結することが第1の発熱部の冷却効率を高める点で好ましいが、一部のみを塞ぐような連結構造であってもよい。
【0051】
また、リング部201は、冷却風の向きを変える機能に加え、冷却ファン8bの慣性力を増大させることで回転変動を緩和させるフライホイールリングとしても機能して回転変動によるモータ4への負荷を軽減することができ、構造的に効率が良い。別の見方をすれば、フライホイールリングとして機能するリング部201に冷却風の向きを変える機能を持たせることでリング部201を冷却効率の向上に活用でき、構造的に効率が良い。
【0052】
なお、羽根200は遠心式以外に適宜変更しても良い。リング部201は必ずしも完全な円筒状である必要はなく、制御回路21、ケース22、発熱面203以外の発熱部分に向けて冷却風を偏向するよう形成しても良い。また、リング部201は必ずしもモータ回転軸5に対して平行でなく、背板202に対して傾斜した形状で有して第1の発熱部に向かって冷却風を導くように形成しても良い。冷却ファン8bは背板202をカバー26の風窓29bに向けるよう取り付けても良い。
【0053】
(シリンダヘッドの冷却)
圧縮部3において、ピストンによる圧縮工程では、圧縮熱によって高温となった圧縮空気は高い流速でシリンダヘッド内に供給された後、配管を介して空気タンクに貯留される。従って、シリンダヘッド内部においては高温空気が高い流速で流動するため、高温空気からシリンダヘッドへの熱伝達が著しく、圧縮部3の中でもシリンダヘッドは特に高温となる。従って、効率良く冷却を行うためには、最も高温となるシリンダヘッドを集中的に冷却する必要がある。以下、シリンダヘッドを効率的に冷却するための構成を説明する。
【0054】
図2に示すように、カバー26内において、冷却ファン8aから回転方向の下流側に位置する第1シリンダ15aに向かって、モータ回転軸5に対して傾斜して上方から見て仮想延長線が第1シリンダヘッド16a上を通過するよう、略直線状に第1導風板300(導風壁部)が配置されている。ここでは第1導風板300の仮想延長線は第1導風板300の線形近似直線と一致する。第1導風板300の冷却ファン8a側に臨む壁面に沿う風路又は当該風路の仮想延長線は、上方から見て第1シリンダヘッド16aと交差する。
【0055】
第1シリンダヘッド16aの上方には、カバー26から第1シリンダヘッド16aに向かって第2導風板301(導風壁部)が垂下して配置される(
図5)。第2導風板301は、第1導風板300に沿う風路もしくは当該風路の仮想延長線又は第1導風板300の線径近似直線と交差し、第1導風板300に導かれた気流を第1シリンダヘッド16a又はその近傍に向けるように設けられる。
【0056】
第2シリンダヘッド16b側においては、モータ回転軸5に対して傾斜し上方から見て仮想延長線が第2シリンダヘッド16b上を通過するよう、略直線状に第3導風板302(導風壁部)が配置されている。ここでは第3導風板302の仮想延長線は第3導風板302の線形近似直線と一致する。第3導風板302の冷却ファン8a側に臨む壁面に沿う風路又は当該風路の仮想延長線は、上方から見て第2シリンダヘッド16bと交差する。
【0057】
第4導風板303(導風壁部)は、第2シリンダヘッド16bと対向して配置されている(
図5)。第4導風板303は、第3導風板302に沿う風路もしくは当該風路の仮想延長線又は第3導風板302の線径近似直線と交差し、第3導風板302に導かれた気流を第2シリンダヘッド16b又はその近傍に向けるように設けられる。
【0058】
第1導風板300と第3導風板302は、モータ回転軸5の上方で接続されて略V字を成す。また、
図6及び
図7に示すように、第1導風板300、第2導風板301、及び第3導風板302はカバー26から一体的に延在する(下方に突出する)リブとして形成され、第4導風板303はカバー26の壁面の一部により形成される。
図2に示されるように、第1導風板300と第3導風板302はそれぞれ第1シリンダヘッド16aと第2シリンダヘッド16bを好適に冷却するため、モータ回転軸5に対して異なる角度を成すように設けられている。
【0059】
第8導風板307と第9導風板308(
図7)は、冷却ファン8aのモータ側から非モータ側に空気が回り込まないようにするため、及びカバー26内で気流が第1シリンダヘッド16aと第2シリンダヘッド16bより更に外側に流れることを防止するために設けられる。第8導風板307と第9導風板308はカバー26から一体的に延在する(垂下する)リブとして形成される。
【0060】
空気圧縮機1が運転状態にある時、
図2のごとくモータ回転軸5が回転し圧縮空気を生成すると共に、冷却ファン8aが回転することによって風窓29aからカバー26内に空気が吸入される。冷却風は気流CA20(
図2)のごとく冷却ファン8aの回転方向に沿って旋回しながらモータ回転軸5方向に沿って圧縮部3に向かって流れ、第1導風板300(及びカバー26の上面)によってCA21のごとく第1シリンダヘッド16aに導かれ、更に
図5に示すように第2導風板301によって気流CA22のごとく第1シリンダヘッド16aに吹き付けるように流れる。従って、第1導風板300と第2導風板301により冷却風が確実に第1シリンダヘッド16aに到達するように流れを形成できるので、第1シリンダヘッド16aを極めて効果的に冷却できる。ここで、気流は壁面に沿って高い流速で流れるため、上方から見て第1導風板300の線形近似直線ないし仮想延長線を第1シリンダヘッド16aに向けることで、高い流速の気流を確実に温度上昇し易い第1シリンダヘッド16aに導くことができ、高い冷却効果を奏することができる。
【0061】
また、気流CA20の一部は第3導風板302(及びカバー26の上面)により気流CA23のごとく第2シリンダヘッド16bに導かれた後、
図5に示すように気流CA24のごとく第4導風板303により第2シリンダヘッド16b近傍に吹き付けるように流れる。従って、第3導風板302と第4導風板303により冷却風が確実に第2シリンダヘッド16bに到達するよう流れを形成できるので、第2シリンダヘッド16bを極めて効果的に冷却できる。ここで、気流は壁面に沿って高い流速で流れるため、上方から見て第3導風板302の線形近似直線ないし仮想延長線を第2シリンダヘッド16bに向けることで、高い流速の気流を確実に温度上昇し易い第2シリンダヘッド16bに導くことができ、高い冷却効果を奏することができる。
【0062】
また、第1導風板300と第3導風板302をモータ回転軸5の上方で接続して冷却風量を第1シリンダヘッド16aと第2シリンダヘッド16bに振り分けることで冷却ファン8aの回転方向に沿う第1導風板300の風量を大きく設定したので、冷却ファン8aの回転方向に抗して配置される第3導風板302による風路抵抗が過大となることを防止でき、第1シリンダヘッド16a及び第2シリンダヘッド16bを好適に冷却することができる。すなわち、気流の旋回方向に沿う第1導風板300によって導かれる風量を、気流の旋回方向に抗して配置される第3導風板302によって導かれる風量に対して多くしたので、第3導風板302による風路抵抗の増大を抑制しながら第1シリンダヘッド16a及び第2シリンダヘッド16bの双方を冷却できる。冷却を終えた冷却風は、
図4に示すように、主に空気タンク2a,2bの間からカバー30の外部へ排出される。
【0063】
なお、第1導風板300と第3導風板302は風路抵抗が最小となるよう理想的に直線形状とした(冷却ファン8a側に臨む壁面を平面とした)が、他部品を回避するなどの目的で一部を湾曲・屈曲させても、線形近似直線が第1シリンダヘッド16aないし第2シリンダヘッド16b上を通過するように形成されていれば、第1シリンダヘッド16aないし第2シリンダヘッド16bに冷却風を導くことができる。
【0064】
実施の形態2
図13は、本発明の実施の形態2に係る空気圧縮機の、カバー26を断面とした平面図である。この空気圧縮機は、実施の形態1のものと比較して、第1導風板300と第3導風板302が冷却ファン8a側が凸となるように湾曲している点で相違し、その他の点で一致する。第1導風板300と第3導風板302の線径近似直線及び仮想延長線は、共に上方から見て第1シリンダヘッド16a及び第2シリンダヘッド16bと交差する。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0065】
実施の形態3
図14は、本発明の実施の形態3に係る空気圧縮機の、カバー26を断面とした平面図である。この空気圧縮機は、実施の形態1のものと比較して、第1導風板300と第3導風板302の接続部がモータ回転軸5の上方から第2シリンダヘッド16b側にシフトしている点で相違し、その他の点で一致する。本実施の形態では、実施の形態1と比較して、第1シリンダヘッド16aへの風量が多くなる一方で第2シリンダヘッド16bへの風量は少なくなるが、気流の旋回方向に抗して配置される第3導風板302による風路抵抗を小さくすることができる。
【0066】
実施の形態4
図15は、本発明の実施の形態4に係る空気圧縮機の、カバー26を断面とした平面図である。この空気圧縮機は、実施の形態1のものと比較して、第3導風板302が省略されて第1導風板300が第2シリンダヘッド16b側にまで延在している点で相違し、その他の点で一致する。本実施の形態では、実施の形態1と比較して、第1シリンダヘッド16aへの風量が多くなる一方で第2シリンダヘッド16bへの風量は少なくなるが、気流の旋回方向に抗して配置される第3導風板302が無いので風路抵抗が小さくなる。
【0067】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。