特許第6120060号(P6120060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6120060合成樹脂成形品の表面加飾方法及び表面加飾成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120060
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】合成樹脂成形品の表面加飾方法及び表面加飾成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20170417BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170417BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B32B15/08 H
   B32B27/00 E
   C08J7/04 ZCER
   C08J7/04CEZ
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-39668(P2013-39668)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167064(P2014-167064A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−172998(JP,A)
【文献】 特開2009−286076(JP,A)
【文献】 特開2011−194799(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093385(WO,A1)
【文献】 特開2003−001781(JP,A)
【文献】 特開2007−152654(JP,A)
【文献】 特開2012−011614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
B44F 1/06
B44C 3/02
B29C 71/04
C08J 7/00− 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂成形品の表面の所定の領域にオンデマンド機能を有するインクジェット印刷機により印刷層(3)を形成し、該印刷層(3)により前記表面の所定の領域を粗面化し、さらに前記印刷層(3)の上から成形品の表面を金属薄膜層(4)で被覆し、前記粗面化した印刷層(3)により金属膜層(4)にシボ加工状の表面外観を付与することを特徴とする合成樹脂成形品の表面加飾方法。
【請求項2】
印刷インクの種類と、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件の調整により、印刷層(3)による粗面化の態様を調整する構成とした請求項1記載の表面加飾方法。
【請求項3】
金属膜層(4)を金属蒸着膜によるものとした請求項1または2記載の表面加飾方法。
【請求項4】
表面の所定の領域を、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層(3)で粗面化したものとし、前記印刷層(3)の上から成形品の表面を金属薄膜層(4)で被覆したものとし、前記印刷層(3)による粗面化により金属膜層(4)にシボ加工状の表面外観が付与されていることを特徴とする表面加飾成形品。
【請求項5】
印刷層(3)を形成した印刷部分(Ra)と印刷層(3)を形成しない非印刷部分(Rn)で模様を現出する構成とした請求項4記載の表面加飾成形品。
【請求項6】
印刷層(3)による粗面化の態様をグラデーション状に変化するものとし、金属薄膜層(4)によるメタリック調の表面外観がグラデーション状に変化する構成とした請求項4または5記載の表面加飾成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂成形品の表面の加飾方法及び、加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージにおける加飾性が商品力の大きな部分を占める化粧料用等の容器においては、塗装、印刷等によりさまざまな装飾性を発揮させて商品イメージを大きく向上させることが望まれている。
たとえば特許文献1には、ホットスタンプ法を用いてメタリック状の加飾が立体的に施された化粧料容器に係る発明が記載されており、金属調の光沢を表面に付与することにより高級なイメージを付与することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−286397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記した従来技術は成形品表面に凸模様を予め一体形成し、その凸模様の上面にホットスタンプにより金属膜を積層する等の方法であり、成形品の表面に凸模様を形成するために金型のキャビティ面に凸模様に対応する凹模様を刻設する金型加工が必要であり、製品によって凸模様を変更することは時間的にそして費用の面で困難である。
また、キャビティ面への凹模様の刻設工程や、成形時における模様の成形品表面への転写性という点から繊細な模様の形成が難しく、高級感という点でも不満が残る。
【0005】
本発明は、合成樹脂成形品の表面に金属薄膜を積層することによりメタリック調の表面外観が付与され加飾成形品において、メタリック調の外観に繊細な模様を付与することができ、金属をエッチング加工して凹凸状に模様を形成したような立体的な視覚効果付与することができ、そして加飾目的に応じて模様の変更が容易に実施可能な加飾方法を創出することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は合成樹脂成形品の表面加飾方法と表面加飾成形品からなるが、
ここではまず表面加飾方法について説明し、次に当該加飾方法により実現が可能な表面加飾成形品について説明する。
上記課題を解決するための本発明の主たる加飾方法は、
合成樹脂成形品の表面の所定の領域にオンデマンド機能を有するインクジェット印刷機により印刷層を形成し、
この印刷層により表面の所定の領域を粗面化し、
さらに成形品の表面を印刷層の上から金属薄膜層で被覆し、
前記粗面化した印刷層により金属膜層にシボ加工状の表面外観を付与する、
と云うものである。
【0007】
本発明の他の加飾方法は上記主たる加飾方法において、印刷インクの種類と、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件の調整により、印刷層による成形品の表面の粗面化の態様を調整する、と云うものである。
【0008】
本願の発明者らは合成樹脂成形品の表面に印刷層を積層して成形品の表面に加飾性を付与する検討の中で、インクジェット印刷機による印刷層により成形品の表面を粗面化できること、さらに印刷インクの種類、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件により、印刷層による粗面化の態様を容易に、また多様に制御できることを見出し、本発明を想起するに至った。
なお上記構成において、オンデマンド印刷機能を有するインクジェット印刷機とは、予めコンピューターに設定して記憶させたパターンに沿って、印刷インクの種類、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件を変化そして調整させながら被印刷物に印刷層を形成することが可能なインクジェット印刷機を指す。
なお、上記構成で「粗面化の態様」とは、凹凸の大きさに係る所謂、表面粗度の他にも、ドット状や、縦スジ状や、織物状等の凹凸の形成パターン含む概念である。
また、成形品の表面を金属薄膜層で被覆する範囲は、加飾目的に応じて選択することができ、成形品の表面全体を被覆することも、たとえば外側から見える範囲だけと云うように限定された範囲だけを被覆することもできる。
【0009】
そして、上記加飾方法によれば、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で成形品の表面の粗面化を実現するため、粗面化する領域を繊細な模様状に形成することが可能となる。
また、加飾目的に応じて前述したように印刷条件により粗面化の態様を変更することができ、さらに粗面化する個々の領域の中においても粗面化の態様を繊細に変化させることが可能となる。
そして、成形品の表面を印刷層の上から金属薄膜層で被覆することにより、金属膜層にシボ加工状の表面外観を付与することができ、メタリック調の外観の変化による繊細な模様を現出させることが可能となる。
また、オンデマンド印刷機によれば繊細な形状も、高い精度で位置合わせをしながら重ね印刷することができ、印刷層を層厚に、所謂、厚盛状に形成すこともでき、金属膜層によるメタリック調の加飾効果が相俟って、より立体的な視覚効果を高品位に現出させることができる。
【0010】
また、上記加飾方法は金型面を粗面化することなく、成形品の表面を粗面化することができ、加飾目的に応じて、すなわちオンデマンドで加飾の態様を容易に修正、変更することが可能となる。
【0011】
本発明のさらに他の加飾方法は上記主たる加飾方法において、金属膜層を金属蒸着膜によるものとする、と云うものである。
【0012】
上記のように金属膜層を金属蒸着膜によるものとすることにより、金属膜層を印刷層の表面の粗面化した形状沿って極く薄く積層することができ、印刷層による粗面化の態様を、金属薄膜層の表面に再現よく現出させることが可能である。
また、金属膜層の印刷層への密着性も十分に発揮される。
【0013】
次に、本発明の表面加飾成形品に係る主たる構成は、
表面の所定の領域を、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で粗面化したものとし、
印刷層の上から成形品の表面を金属薄膜層で被覆したものとし、
印刷層による粗面化により金属膜層にシボ加工状の表面外観が付与されている、と云うものである。
【0014】
上記構成の加飾成形品は、前述したようにオンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で成形品の表面の粗面化を実現したものであり、粗面化する領域を繊細な模様状にすることが可能であり、また、加飾目的に応じて前述したような印刷条件により粗面化の態様を変更することができ、さらに粗面化する個々の領域の中においても粗面化の態様を繊細に変化させることも可能で、金属膜層にシボ加工状の表面外観が付与され、メタリック調の外観の変化による繊細な模様を現出させることが可能となる。
【0015】
本発明の表面加飾成形品に係る他の構成は、上記主たる構成において、印刷層を形成した印刷部分と印刷層を形成しない非印刷部分で模様を現出する構成とする、と云うものである。
【0016】
成形品の成形に使用する金型面をたとえば鏡面仕上げしたものとしておけば、金属膜層が、印刷層の非印刷部分では鏡面状の光沢を有し、印刷部分ではマット状(艶消し状)の光沢を有す部分とすることができ、非印刷部分で文字や図案を描くと、鏡面状の光沢を有する文字や図案が、マット状となった印刷部分により縁取りされ、実際には印刷層の厚さ分、凹状に形成されている非印刷部分による文字や図案が、凸状に浮き上がったように見える視覚効果が発揮される。
一方、マット状の印刷部分では鏡面状の金属をエッチング加工した部分であるかのような視覚効果が付与される。
勿論、金型面を鏡面仕上げしなくても、非印刷部分と印刷部分で金属膜層の光沢性を変化させて模様を現出させることも可能である。
【0017】
本発明の表面加飾成形品に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、
印刷層による粗面化の態様をグラデーション状に変化させ、金属薄膜層によるメタリック調の外観がグラデーション状に変化する構成とする、と云うものである。
【0018】
前述した本発明の加飾方法によれば、印刷層の粗面化の態様を容易グラデーション状に変化させることができ、上記構成の加飾態様も容易に実現することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の合成樹脂成形品の表面加飾方法及び表面加飾成形品は上記のような構成であり、本発明の表面加飾方法によれば、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で成形品の表面の粗面化を実現するため、粗面化する領域を繊細な模様状に形成することができ、さらに、成形品の表面を印刷層の上から金属薄膜層で被覆することにより、金属膜層にシボ加工状の表面外観を付与することができ、メタリック調の外観の変化による繊細な模様を現出させることができる。
【0020】
また、本発明の表面加飾方法は金型キャビティ面を粗面化することなく、成形品の表面を粗面化することができ、加飾目的に応じて印刷条件により粗面化の態様を容易に変更することができ、謂わば、オンデマンドでメタリック調の加飾態様を容易に修正、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の表面加飾成形品の第1実施例である表面を加飾した蓋体の平面図である。
図2図1の蓋体の概略的な層構成を示す断面図である。
図3】インクジェット印刷機のヘッドの構成を示す概略説明図である。
図4】本発明の表面加飾成形品の第2実施例である表面を加飾した蓋体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1、2は本発明の表面加飾成形品の一実施例を示し図1は平面図、図2は層構成を示す縦断面図である。
本実施例の加飾成形品において成形品はコンパクト容器の蓋体1で、矩形状の頂壁の表面側の所定の領域に印刷層3を形成し、この印刷層3の上から、頂壁と側壁を含む表面側と裏面側の全領域を金属蒸着膜による金属膜層4で被覆し、さらにこの金属膜層4を被覆するようにアクリル樹脂系の塗料をUV硬化させて形成した無色透明な保護層5を積層している。
【0023】
蓋体1はABS樹脂製の射出成形品であり、射出成形においてキャビティ面の蓋体1の表面側に相当する範囲を鏡面仕上げした金型を使用することにより、表面側は鏡面状の光沢を有する。
【0024】
印刷層3は、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機により形成したものであり、本実施例では印刷層3を蓋体1の頂壁の表面側の所定の領域に形成、積層しており、インクジェット印刷機による印刷層3を形成することにより、当該印刷部分Raの表面を粗面化することができ、この印刷部分Raでは金属膜層4にシボ加工状、表面光沢と云う観点で見るとマット状(艶消し状)の表面外観が付与されている。
そして、印刷層3の印刷条件により粗面化の態様を変えることにより、金属膜層4におけるシボ加工状、あるいはマット状の表面外観を容易に変更することができる。
【0025】
本実施例では印刷条件を変えて印刷層3を形成し、図1に示すように粗面化の程度が異なる印刷部分Ra1、Ra2を形成している。
さらに詳述すると、印刷部分Ra1は頂壁の表面側の、周縁を除く大半の領域を占めており、この印刷部分Ra1の中で、印刷部分Ra2により雪の結晶を現出し、印刷層3が形成されていない鏡面状の非印刷部Rnにより星形を現出するようにしている。
ここで、印刷部分Ra2では、印刷部分Ra1に比較してインクジェット印刷機による成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を多くして印刷層3を形成することにより粗面化の程度を緩和して、印刷部分Ra1に比較して高い光沢を有する部分になるようにしている。
なお、図1また後述する図4では粗面化による光沢の変化を黒色の塗潰し濃度で表している。
【0026】
そして、鏡面状の非印刷部Rnによる星形はシボ加工による表面形態の一つである梨地状となった印刷部分Ra1により縁取られた状態となり、実際には印刷層3の厚さ分凹状に形成されている非印刷部Rnによる星形が浮き上がったように凸状に見えるような視覚効果が発揮される。
また、マット状の印刷部分Ra1では鏡面状の金属をエッチング加工した部分であるかのような視覚効果が発揮される。
【0027】
ここで、図3はインクジェット印刷機に使用されるヘッド部31の代表的な例の概略説明図で、印刷インクのノズル32の配設態様をみたものである。
このヘッド部31の例は6つのヘッドh1、h2、h3、h4、h5、h6を並列状配設したもので各ヘッドには多数のノズル32が配設されており、
この6つのヘッドにシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)、ホワイト(W)、クリア(透明)(Cl)のインクが割り振られている。
そして、ヘッド部31を図中、白抜き矢印で示した方向にスキャンしながら、予めコンピューターに記憶させた吐出パターンに沿って、各ヘッドの各ノズル32から被印刷物の表面に、数pl(ピコリットル)から数10pl(ピコリットル)の印刷インクからなる液滴を吹き付けて印刷する。
【0028】
上記したインクジェット印刷機の印刷機構からみると、表面の粗面化の基本的な構成要素はそれぞれのノズルから成形品表面に吹き付けられる個々の小さな印刷インクの液滴から形成されるドットであり、インクの種類や成形品の表面の単位面積当たりに吐出する液滴数により、成形品の表面でこの液滴から形成されるドットの積重状態を調整し、成形品の表面の粗面化の態様、さらには金属膜層のシボ加工の態様、光沢の程度、艶消しの程度を調整することができる。
そして、単位面積当たりに吐出する印刷インクの液滴数は、たとえば、図3中の各ヘッドh1、h2、h3、h4、h5、h6のうちいくつのヘッドを使用するか、さらには個々のヘッドに配設されている多数のノズル32のうちいくつのノズル32から液滴を吐出させるか等の印刷条件により調整することができる。
また、たとえば異なる種類のインクを前述した6つのヘッドから吐出させることにより、成形体の表面でこれら6種のインクの液滴を重ねることにより、さらに粗面化の程度を微調整することが可能となる。
【0029】
また、上記したように表面の粗面化の基本的な構成単位はインクからなる液滴によるもので、その凹凸パターンは基本的にはドット状であるが、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機の機能により液滴を、たとえば縦スジ状、織物状のパターンに並べて凹凸の深さ(粗度)だけでなく、さまざまな態様のパターンで粗面化し、シボ加工状の外観を現出させることができる。
【0030】
次に、図4は本発明の表面加飾成形品の第2実施例の平面図で、本実施例の加飾成形品は図1、2に示した第1実施例の加飾成形品と比較すると、成形品は第1実施例と同じコンパクト容器の蓋体1であり、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層3の形成態様が異なる。
図4に示されるように、図中、6角形状の非印刷部Rn2と、この非印刷部Rnを縁取る濃度の低い黒色に塗り潰した印刷部分Ra4と、この印刷部分Ra4を縁取る黒色に塗り潰した印刷部分Ra3と、さらにこの印刷部分Ra3を縁取る非印刷部Rn1により亀の甲羅状の図案を現出させたものである。
ここで、印刷部分Ra4では印刷部分Ra3に比較して成形品の表面の単位面積当たりに吐出する液滴数を多くして印刷層3を形成することにより、粗面化の程度を緩和して印刷部分Ra3に比較して高い光沢を有する部分になるようにしており、鏡面状のメタリック調の光沢を有する6角形状の非印刷部Rn2が浮き上がったような3次元的な視覚効果が現出される。
また、非印刷部分Rn1による細い線もくっきりと現出させることができ高品位な加飾性を実現することができる。
【0031】
ここで、本実施例では非印刷部分Rn2、印刷部分Ra4、印刷部分Ra3というように、段階的に鏡面状態から艶消し状態に変化させる構成としているが、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機によれば、非印刷部分Rn2の鏡面状態から印刷部分Ra3の艶消し状態に至るまで連続的にグラデーション状にその光沢を変化させることも可能である。
【0032】
以上、本発明の表面加飾方法及び表面加飾成形品について、その実施の形態を実施例に沿って説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例では成形品をコンパクト容器の蓋体としたが、インクジェット印刷機は成形品の表面に非接触で印刷することができ、湾曲面を有するたとえばボトル等の成形品についても十分適用することができる。
また、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機の機能を生かしてシボ加工のパターンをドット状だけでなくスジ状、織物状等さまざまなパターンで現出させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように本発明による成形品の表面加飾方法はインクジェット印刷機による印刷層の特徴を利用して、金属薄膜層によるメタリック調の外観に繊細な模様を付与し、金属をエッチング加工して凹凸状に模様を形成したような立体的な視覚効果を付与して高級感を呈することができるものであり、さらには加飾目的に応じて模様の変更が容易に実施できるものであり、化粧品容器等の分野での幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0034】
1 ;蓋体(成形品)
3 ;印刷層
4 ;金属膜層
5 ;保護層
31;(インクジェット印刷機の)ヘッド部
32;ノズル
h1、h2、h3、h4、h5、h6;ヘッド
Ra(Ra1、Ra2、Ra3、Ra4);印刷部
Rn(Rn1、Rn2);非印刷部
図1
図2
図3
図4