【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は合成樹脂成形品の表面加飾方法と表面加飾成形品からなるが、
ここではまず表面加飾方法について説明し、次に当該加飾方法により実現が可能な表面加飾成形品について説明する。
上記課題を解決するための本発明の主たる加飾方法は、
合成樹脂成形品の表面の所定の領域にオンデマンド機能を有するインクジェット印刷機により印刷層を形成し、
この印刷層により表面の所定の領域を粗面化し、
さらに成形品の表面を印刷層の上から金属薄膜層で被覆し、
前記粗面化した印刷層により金属
薄膜層にシボ加工状の表面外観を付与する、
と云うものである。
【0007】
本発明の他の加飾方法は上記主たる加飾方法において、印刷インクの種類と、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件の調整により、印刷層による成形品の表面の粗面化の態様を調整する、と云うものである。
【0008】
本願の発明者らは合成樹脂成形品の表面に印刷層を積層して成形品の表面に加飾性を付与する検討の中で、インクジェット印刷機による印刷層により成形品の表面を粗面化できること、さらに印刷インクの種類、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件により、印刷層による粗面化の態様を容易に、また多様に制御できることを見出し、本発明を想起するに至った。
なお上記構成において、オンデマンド印刷機能を有するインクジェット印刷機とは、予めコンピューターに設定して記憶させたパターンに沿って、印刷インクの種類、成形品の表面の単位面積当たりに吐出する前記印刷インクの液滴数を含む印刷条件を変化そして調整させながら被印刷物に印刷層を形成することが可能なインクジェット印刷機を指す。
なお、上記構成で「粗面化の態様」とは、凹凸の大きさに係る所謂、表面粗度の他にも、ドット状や、縦スジ状や、織物状等の凹凸の形成パターン含む概念である。
また、成形品の表面を金属薄膜層で被覆する範囲は、加飾目的に応じて選択することができ、成形品の表面全体を被覆することも、たとえば外側から見える範囲だけと云うように限定された範囲だけを被覆することもできる。
【0009】
そして、上記加飾方法によれば、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で成形品の表面の粗面化を実現するため、粗面化する領域を繊細な模様状に形成することが可能となる。
また、加飾目的に応じて前述したように印刷条件により粗面化の態様を変更することができ、さらに粗面化する個々の領域の中においても粗面化の態様を繊細に変化させることが可能となる。
そして、成形品の表面を印刷層の上から金属薄膜層で被覆することにより、金属
薄膜層にシボ加工状の表面外観を付与することができ、メタリック調の外観の変化による繊細な模様を現出させることが可能となる。
また、オンデマンド印刷機によれば繊細な形状も、高い精度で位置合わせをしながら重ね印刷することができ、印刷層を層厚に、所謂、厚盛状に形成すこともでき、金属
薄膜層によるメタリック調の加飾効果が相俟って、より立体的な視覚効果を高品位に現出させることができる。
【0010】
また、上記加飾方法は金型面を粗面化することなく、成形品の表面を粗面化することができ、加飾目的に応じて、すなわちオンデマンドで加飾の態様を容易に修正、変更することが可能となる。
【0011】
本発明のさらに他の加飾方法は上記主たる加飾方法において、金属
薄膜層を金属蒸着膜によるものとする、と云うものである。
【0012】
上記のように金属
薄膜層を金属蒸着膜によるものとすることにより、金属
薄膜層を印刷層の表面の粗面化した形状沿って極く薄く積層することができ、印刷層による粗面化の態様を、金属薄膜層の表面に再現よく現出させることが可能である。
また、金属
薄膜層の印刷層への密着性も十分に発揮される。
【0013】
次に、本発明の表面加飾成形品に係る主たる構成は、
表面の所定の領域を、オンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で粗面化したものとし、
印刷層の上から成形品の表面を金属薄膜層で被覆したものとし、
印刷層による粗面化により金属
薄膜層にシボ加工状の表面外観が付与されている、と云うものである。
【0014】
上記構成の加飾成形品は、前述したようにオンデマンド機能を有するインクジェット印刷機による印刷層で成形品の表面の粗面化を実現したものであり、粗面化する領域を繊細な模様状にすることが可能であり、また、加飾目的に応じて前述したような印刷条件により粗面化の態様を変更することができ、さらに粗面化する個々の領域の中においても粗面化の態様を繊細に変化させることも可能で、金属
薄膜層にシボ加工状の表面外観が付与され、メタリック調の外観の変化による繊細な模様を現出させることが可能となる。
【0015】
本発明の表面加飾成形品に係る他の構成は、上記主たる構成において、印刷層を形成した印刷部分と印刷層を形成しない非印刷部分で模様を現出する構成とする、と云うものである。
【0016】
成形品の成形に使用する金型面をたとえば鏡面仕上げしたものとしておけば、金属
薄膜層が、印刷層の非印刷部分では鏡面状の光沢を有し、印刷部分ではマット状(艶消し状)の光沢を有す部分とすることができ、非印刷部分で文字や図案を描くと、鏡面状の光沢を有する文字や図案が、マット状となった印刷部分により縁取りされ、実際には印刷層の厚さ分、凹状に形成されている非印刷部分による文字や図案が、凸状に浮き上がったように見える視覚効果が発揮される。
一方、マット状の印刷部分では鏡面状の金属をエッチング加工した部分であるかのような視覚効果が付与される。
勿論、金型面を鏡面仕上げしなくても、非印刷部分と印刷部分で金属
薄膜層の光沢性を変化させて模様を現出させることも可能である。
【0017】
本発明の表面加飾成形品に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、
印刷層による粗面化の態様をグラデーション状に変化させ、金属薄膜層によるメタリック調の外観がグラデーション状に変化する構成とする、と云うものである。
【0018】
前述した本発明の加飾方法によれば、印刷層の粗面化の態様を容易
にグラデーション状に変化させることができ、上記構成の加飾態様も容易に実現することが可能である。