(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120062
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】熱接着フィルム貼り合わせ方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/40 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
B29C65/40
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-54069(P2013-54069)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166742(P2014-166742A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】511023495
【氏名又は名称】有限会社磐井技研
(73)【特許権者】
【識別番号】506364709
【氏名又は名称】株式会社EFパッケージ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 徹
(72)【発明者】
【氏名】古屋 良介
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−061616(JP,A)
【文献】
特開2010−023473(JP,A)
【文献】
特開2008−246923(JP,A)
【文献】
特開2008−246848(JP,A)
【文献】
特開2005−305756(JP,A)
【文献】
特開平06−155579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C63/00−63/48
B29C65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱性接着材層を有するプラスチックフィルムからなるカバーフィルムを加熱ロールで加熱し、弾性ロールと加圧ロールからなる圧着部で感熱性接着剤層を介して基材に接着させることによりシート状の貼り合せ製品を製造する方法であって、圧着部はカバーフィルム側に弾性ロール、基材側に弾性ロール以上の硬度を有する材質からなる加圧ロールが配置され、加熱されたカバーフィルムを圧着部以前では基材と接触することなく圧着部に導き、カバーフィルム、基材及び貼り合せ製品を加圧ロールに巻き付けながら弾性ロールが凹状になる様に加圧して張り合わせることを特徴とする熱接着フィルム貼り合せ方法
【請求項2】
基材の張力検知ロールと基材にブレーキをかけ張力を制御するロールからなる張力調整機構により、基材を圧着部に導く前に張力を与えることを特徴とする請求項1に記載の熱接着フィルム貼り合せ方法。
【請求項3】
感熱性接着材層を有するプラスチックフィルムからなるカバーフィルムを加熱ロールで加熱し、弾性ロールと加圧ロールからなる圧着部で感熱性接着剤層を介して基材に接着させることによりシート状の貼り合せ製品を製造する方法であって、圧着部はカバーフィルム側に弾性ロール、基材側に弾性ロール以上の硬度を有する材質からなる加圧ロールが配置され、加熱されたカバーフィルムを圧着部以前では基材と接触することなく圧着部に導き、カバーフィルム、基材及び貼り合せ製品を加圧ロールに巻き付けながら弾性ロールが凹状になる様に加圧して張り合わせることを特徴とする熱接着フィルム貼り合せ装置
【請求項4】
基材を圧着部に導く前に張力を与えるため、基材の張力検知ロールと基材にブレーキをかけ張力を制御するロールからなる張力調整機構を備えたことを特徴とする請求項3に記載の熱接着フィルム貼り合せ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱性接着剤層を有するカバーフィルム(以下カバーフィルム)をシート状基材に貼り合わせ、基材表面の光沢や保護機能を付与するにあたり、貼り合わせ工程で発生するカールを防止する機能を有する熱接着フィルム貼り合わせ方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の応用を意図しているシール、ラベル、雑誌の表紙、ポスターなどの薄い基材への表面加工では、カバーフィルムとして透明プラスチックフィルムに常温で粘着性のある接着剤を塗布したフィルムを使用するのが一般的である。然しこの方法では貼り合わせされるまでは粘着性接着剤層を剥離紙で保護し、使用後に剥離紙は廃棄物として処理しなければならない。価格が高いこと及び産業廃棄物が発生する問題がある。
【0003】
これに対して剥離紙を使わない方法として、カバーフィルムの表面にシリコン等の剥離層を形成し、セロファンテープ様にして剥離紙に替えて粘着性接着剤層を保護する方法(例えば特許文献1)もあるが、この方法ではロール状に巻かれたカバーフィルムを解く際の剥離抵抗による作業性低下及び剥離層表面に印字が困難となる欠点がある。
【0004】
また、本発明と同様に感熱性接着層を有するカバーフィルムを使用する方法も一部では実用化されているが、貼り合わせに先立って行うカバーフィルムの予熱により貼り合わされたシート状製品はカバーフィルム側に上そりカールが発生する問題がまだ残っており、使用上の制限を完全に除去するには至っていないのが現状である。(例えば、特許文献2、3)
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平05−39462号 公報
【特許文献2】 特開平06−155579号 公報
【特許文献3】 特開2010−23473号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は特許文献2及び3に示したヒートラミネーション方法におけるカール防止を別の手段により更に効果的に改善することを意図している。
特許文献2及び3に示したヒートラミネーション方法はカバーフィルムを加熱し感熱性接着層を粘着状態にした後、基材と重ね合わせて加圧ロールを押し付け接着させる。この方法では熱膨張係数の大きいプラスチックからなるカバーフィルムが予熱により膨張し伸びた状態で基材と接着固定されるため、得られた貼り合わせ製品は使用時の常温環境ではカバーフィルムが収縮し上反りカールが発生する現象を十分に抑え込むまでには至っていない。それ故粘着性接着剤を使用する方法に替わって広範囲に使用されるまでには至っていない。
【0007】
本発明は上記段落(0006)で述べたシート状貼り合わせ製品のカールの発生を別の手段で一層効果的に抑制できるようにした熱接着フィルム貼り合わせ方法及び装置を実現することを目的としたものである。
【0008】
本発明ではカバーフィルムの予熱伸びによるシート状貼り合わせ製品のカールへの影響を解消する方法として、請求項1で示した圧着部を加熱ロールの後に設置することにより、加熱ロールで発生したカバーフィルムの伸びがカールに及ぼす影響を抑え込むことが可能であることを発見した。
圧着部の構造はカバーフィルムとの接触側に弾性ロール、基材に接触する側には弾性ロールより硬度の高い材質の加圧ロールを配置し、貼り合わせるために加圧したときに弾性ロールと加圧ロールの圧着点で加圧ロールがカバーフィルムと基材を伴って弾性ロールに食い込み加圧ロールに沿って変形させる。この際加圧ロールにカバーフィルム等を巻き付け、且つ加圧ロールの径を小さくすることがカールを防止するために有効である。この圧着部の特徴は弾性ロールと加圧ロールの材質とロール径の組み合わせを変えることにより貼り合わせ製品のカールを上反り又は下反りを自在にコントロールすることが可能であり、剛性の小さい薄い基材でも上反りを防ぐことが出来た。また基材の材質もシール印刷基材、薄い紙単体、プラスチック等を使用して行った実験でもカール防止効果が確認出来た。その結果が請求項1、請求項3の発明に至った。
【0009】
更に本発明では上記目的を達成する補助手段としてさらに種々の実験の結果、請求項1、請求項3に加えて、基材を圧着部に導く前に基材に張力を与えることもカール防止に有効であり、請求項2、請求項4の発明に至った。
【0010】
課題解決手段(0008)、(0009)は単独又は組み合わせで採用することが出来る。基材が薄く剛性の少ない基材では解決手段(0008)及び(0009)を採用し、剛性大の基材では解決手段としていずれか一つを採用する事も可能である。
【0011】
上述したように本発明の熱接着フィルム貼り付け方法及び装置によれば、貼り合わせ製品のカールを実用可能な範囲に抑制することが出来、離型紙を使用しない貼り合わせ製品の製造が可能である。離型紙不要によりコストダウン、産業廃棄物削減が可能となる。
また、従来の特許文献2及び3を含む従来の熱ラミネート方式ではカール発生により実用に供されていない薄い基材への適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態を示す概略的側面図である。
【符号の説明】
1 :加熱ロール
2 :弾性ロール
3 :加圧ロール
4 :張力調整ロール
5 :張力検知ロール
6 :ガイドロール
7 :カバーフィルム(延伸ポリプロピレンフィルムと感熱性接着剤層からなる)
7‐1:カバーフィルムの感熱性接着剤層
7‐2:カバーフィルムの延伸ポリプロピレンフィルム
7‐3:カバーフィルムの移動方向
8 :基材
8‐1:基材の印刷なし部分
8‐2:基材の印刷部
8−3:基材の移動方向
9 :貼り合わせ製品(基材、感熱性接着剤層、延伸ポリプロピレンを貼り合わせ)
9‐1:貼り合わせ製品移動方向
10 :張力調整機構
【0013】
[
図2](
図1)に示した本発明の実施形態の主要部分を拡大して示す概略的側面図である。符号の説明は
図1に同じ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に基づき本発明を実施する好適例を説明する。カバーフィルム7は巻出し部から繰り出され感熱性接着剤層が溶融するのに十分な熱量を持った加熱ロール1によって加熱された後、矢印の方向に走行し圧着部に導かれる。
弾性ロール2は径が加圧ロールより大であって、材質は非粘着性でショア硬度70以下のシリコンゴム製が好ましいが、それに近い非粘着性と硬度であればシリコンゴムにこだわらない。
加圧ロール3は弾性ロール径以下が好ましい。材質は金属製が好ましいが、弾性ロール以上の硬度であれば、ゴム製、プラスチック製でも構わない。
基材8は巻出し部から張力調整ロール4に導かれ、張力検知ロール5を経て圧着部に向かって走行し、圧着部でカバーフィルムと貼りあわされる。基材には張力調整機構により100〜300N/200mm程度の張力をかけた状態で貼り合わせるのが適当である。圧着部には0.1〜0.15Mpa/200mm程度の圧力をかけ、カバーフィルムと基材を重ねて加圧ロールがより硬度の小さい弾性ロールに食い込み弾性ロールは凹状に変形する。この際基材は圧着点前から加圧ロールに巻きつけるように沿わせ貼り合わせた後にも巻きつけるように沿わせる。巻き付け角度は圧着点を中心に90〜180度程度巻きつける。その後ガイドロール6を経て貼り合わせ工程を完了する。
なお、この好適例はシール、ラベルへの応用を意図して説明したが、装置の巾サイズを1m程度まで大型にすれば、雑誌の表紙、ポスター等の貼り合わせ装置に、又、巾サイズを小さくして、卓上型事務機への応用も可能である。
現在の大型機、卓上型事務機では剛性が低い紙基材では、カール発生が避けられないため、坪量130g/m
2以上の紙を使用するのが一般的であるが、本発明を応用した装置では坪量84.9g/m
2の紙単体にて実用可能レベルであることが確認出来た。更に理論的にはそれ以下の紙への適用も可能である。
【実施例1】
【0015】
請求項3、4を取り入れた
図1に示した熱接着フィルム貼り合わせ装置を使用して下記条件にて実験した結果、貼り合わせ直後上反りカール5mm以内の結果が得られ、巻取状態で24時間巻取上にして放置後は上反りカール3mm以内であった。
なお、本実施例で使用した基材である紙単体は、通常のシール、ラベルや雑誌の表紙等で使用される基材としては薄い部類に属し、上反りカールが起きやすいものを使用した。
条件
加熱ロール径:120mmの金属製ヒートロール
加熱ロール温度:100℃
弾性ロール:表面をシリコンゴムで被覆したロール径200mm、ショア硬度70度
加圧ロール:材質アルミ合金、径40mm
圧力0.1Mpa
基材張力 :200N/200mm巾
カバーフィルム:延伸ポリプロピレンフィルム15μ/低融点PE15μ
基材 :コート紙(坪量84.9g/m
2)単体
貼り合わせスピード:50m/min
【実施例2】
【0016】
紙シールとして一般的に多く使用される基材(離型紙と粘着加工紙からなる紙タック)に対して、
図1に示した装置を使用して下記条件にて実験した結果、貼り合わせ直後から剥離した紙シールのカールはほぼ0mmであった。
加熱ロール径:120mmの金属製ヒートロール
温度100℃
弾性ロール:表面をシリコンゴムで被覆したロール径200mm、硬度70度
加圧ロール:材質アルミ合金、径30mm
圧力0.1Mpa
カバーフィルム:延伸ポリプロピレンフィルム15μ/低融点PE15μ
基材 :紙シール(紙の坪量104.8g/m
2)
貼り合わせスピード:70m/min
【実施例3】
【0017】
基材の材質として合成紙(製品名ユポ)タックを使用し、その他条件を実施例1に同じとして実験した結果、貼り合わせ直後にシールを剥離紙から剥離し上反りカール5mm以下の結果が得られた。
また、同条件下で加圧ロール径のみを30mmと小さくすることにより、カールは僅かな下反りとなり、カール方向のコントロールが可能であることを確認した。
基材 :ユポ(合成紙)シール(ユポ厚さ60μ)
【実施例4】
【0018】
基材シート材質としてPETタックを使用し、その他条件を実施例1に同じとして実験した結果、貼り合わせ直後にシールを基材から剥離しカール5mm以下の結果が得られた。
基材シート:PETタック(PET厚さ50μ)
【0019】
カール大きさの合否判定について
従来の方法、段落(0002)に記載した粘着性接着剤を使用する方法ではカールの大きさは5mm以下が一般的である。
測定方法はシートを平面に置き、シールの場合は剥離紙を剥がし、端末での上反り、または下反り長さを測定した。
【0020】
この方法及び装置は基材が連続したウエブ状の場合であっても、所望のサイズにカットされた枚葉の場合にも採用可能である。
【0021】
本発明で使用できるカバーフィルムの素材は、延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ポリエステルフィルム、延伸ナイロンフィルム、セロファン等であり、これにポリエチレン系樹脂など感熱性接着剤を積層したものである。
【0022】
本発明で使用される基材は印刷された又は無地の延伸ポリエステルシート、延伸ポリプロピレンフィルム、紙等の単体又はこれらの裏面に粘着加工し、離型紙を積層したタックシート等である。