(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120104
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】床下蓄熱を利用した凍結防止システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20170417BHJP
E03B 7/12 20060101ALI20170417BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20170417BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
F28D20/00 Z
E03B7/12 F
E03C1/12 Z
E03C1/042 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-100739(P2015-100739)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-217576(P2016-217576A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年11月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598096946
【氏名又は名称】株式会社 ノ−スウィング
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】白山 與志雄
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−018865(JP,A)
【文献】
特開2002−256596(JP,A)
【文献】
実開昭53−135948(JP,U)
【文献】
実開昭56−087564(JP,U)
【文献】
特開昭60−159232(JP,A)
【文献】
特開平07−224449(JP,A)
【文献】
実開昭57−108025(JP,U)
【文献】
米国特許第05878776(US,A)
【文献】
特開2003−214641(JP,A)
【文献】
特開2012−229597(JP,A)
【文献】
特開2003−342981(JP,A)
【文献】
実公昭48−003730(JP,Y1)
【文献】
特開2000−017735(JP,A)
【文献】
米国特許第04332681(US,A)
【文献】
特開2014−211256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
E03B 7/12
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から掘り下げられて地下の位置に設けられた基礎の底盤の上に、断熱材の層を介し、夜間電力を利用する発熱体が埋設された状態に蓄熱材の層が設けられ、該蓄熱材の層を底部とする空間である蓄熱床下ピットを備え、該蓄熱床下ピットの熱エネルギーを水回りの空間に空気流を介して供給することで、該水回りの設備に係る凍結を防止する床下蓄熱を利用した凍結防止システムであって、
前記蓄熱床下ピットから上方に離れた前記水回りの空間へ熱エネルギーを供給するように両空間を連通する熱輸送管が設けられ、該熱輸送管にあっては、前記蓄熱床下ピットから前記水回りの空間に横方向へも空気流を導く管路部について、前記水回りの空間の側へ向って高くなるように勾配が設けられた勾配管部となっており、
前記熱輸送管の前記勾配管部の勾配が1/5以上であることを特徴とする床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【請求項2】
地表から掘り下げられて地下の位置に設けられた基礎の底盤の上に、断熱材の層を介し、夜間電力を利用する発熱体が埋設された状態に蓄熱材の層が設けられ、該蓄熱材の層を底部とする空間である蓄熱床下ピットを備え、該蓄熱床下ピットの熱エネルギーを水回りの空間に空気流を介して供給することで、該水回りの設備に係る凍結を防止する床下蓄熱を利用した凍結防止システムであって、
前記蓄熱床下ピットから上方に離れた前記水回りの空間へ熱エネルギーを供給するように両空間を連通する熱輸送管が設けられ、該熱輸送管にあっては、前記蓄熱床下ピットから前記水回りの空間に横方向へも空気流を導く管路部について、前記水回りの空間の側へ向って高くなるように勾配が設けられた勾配管部となっており、
前記蓄熱床下ピット内にあって開口する前記勾配管部の端部が下方に向って開いているように円筒状管を斜めに切断した形状に設けられ、該円筒状管の切断された端部の先端部分が庇状となるように上側に位置されていることを特徴とする床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【請求項3】
地表から掘り下げられて地下の位置に設けられた基礎の底盤の上に、断熱材の層を介し、夜間電力を利用する発熱体が埋設された状態に蓄熱材の層が設けられ、該蓄熱材の層を底部とする空間である蓄熱床下ピットを備え、該蓄熱床下ピットの熱エネルギーを水回りの空間に空気流を介して供給することで、該水回りの設備に係る凍結を防止する床下蓄熱を利用した凍結防止システムであって、
前記蓄熱床下ピットから上方に離れた前記水回りの空間へ熱エネルギーを供給するように両空間を連通する熱輸送管が設けられ、該熱輸送管にあっては、前記蓄熱床下ピットから前記水回りの空間に横方向へも空気流を導く管路部について、前記水回りの空間の側へ向って高くなるように勾配が設けられた勾配管部となっており、
前記水回りの空間が、流し台の内部に断熱材で囲まれて形成された流し台の保温空間であって、該流し台の保温空間から、該流し台の上面に設置されたカランを覆うエコホットマフラーの内部空間に前記空気流を介して熱エネルギーを供給するように、前記流し台の保温空間の上面であって前記カランの近傍に前記エコホットマフラーの内部空間へ連通する熱輸送用の温風吹出口が設けられていることを特徴とする床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【請求項4】
前記熱輸送管は、前記水回りの空間に開口する側の部分である縦方向に延びる立ち上がり管部と、前記蓄熱床下ピットに開口する側から前記立ち上がり管部へ接続される前記勾配管部とを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【請求項5】
前記熱輸送管には、給水管及び/又は給湯管が挿通されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【請求項6】
食洗機の回りに、夜間電力を利用する前記発熱体と蓄熱用器具とを配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【請求項7】
前記蓄熱床下ピット内の壁部において、内側壁面に断熱材の層を介し、蓄熱コンクリート壁が築造されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の床下蓄熱を利用した凍結防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表から掘り下げられて地下の位置に設けられた基礎の底盤の上に、断熱材の層を介し、夜間電力を利用する発熱体が埋設された状態に蓄熱材の層が設けられ、該蓄熱材の層を底部とする空間である蓄熱床下ピットを備え、該蓄熱床下ピットの熱エネルギーを水回りの空間に空気流を介して供給することで、該水回りの設備に係る凍結を防止する床下蓄熱を利用した凍結防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術として、本出願人が、外側壁面(2)が地熱層(9)に面した床下コンクリ−ト囲壁(1)と、その囲壁(1)の内側壁面(3)及び地熱層(9)に開口した底面(4)一帯に張設した断熱材(5)と、その断熱材(5)の内側に敷設した深夜畜電供給源と接続した発熱体(6)を埋設した畜熱材(7)と、前記囲壁(1)及び畜熱材(7)とで合成される畜熱床下ピット(8)内に設備した床下配管・機器系(10)、(11)とから成る床下畜熱利用の衛生設備器具・配管・機器系の凍結防止システム(
図7、特許文献1の請求項1参照)を、既に提案している。
【0003】
これによれば、コンクリ−ト自体の畜熱能力に着目して水廻りの床下コンクリ−ト空間を畜熱床下ピット8として利用して、自然の地熱と割安な深夜電力の併用により畜熱、放熱を行って配管系10、機器系11全体の凍結を防止するものであるから、水抜き作業を不要とし、常時給水給湯を可能とし、また電熱帯の局部的被覆によらないで、上記のように深夜畜電供給源と接続した発熱体6を埋設した畜熱材7(潜熱作用)により電力消費を最小限に留めることができる(
図7、特許文献1の[0017]参照)。なお、各衛生器具に付帯されている封水トラップについては、封水トラップも全て水抜きを実施すると、排水管より臭気が家中に充満すると共に害虫が発生することがあるため、例えば従来は、水抜き時に全ての封水トラップについて不凍液を注入して凍結を防いでいた。これに対して、上記の方法によれば、その封水トラップについても保温ができるため、水抜きや不凍液の注入を行う必要がない。
【0004】
また、他の先行技術として、住宅基礎構築部分の地表から掘り下げた位置にべた基礎を造成し、べた基礎周囲に造成される基礎立ち上がりを地表上に延ばして地下壁を形成させて上部構造を構築し、地下基礎内を外断熱構造にすると共に、地下室内に非燃焼形の蓄熱式電気暖房器を設置して暖気を上部建屋内に導いて各室を暖房することにより人が不在の厳冬期であっても水道の水抜きを不要としたことを特徴とする建築物(特許文献2の請求項1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3394912号公報(請求項1、
図1、[0017])
【特許文献2】実用新案登録第3132528号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床下蓄熱を利用した凍結防止システムに関して解決しようとする問題点は、より効率的に凍結防止ができると共、蓄熱床下ピットから上方の水平方向に離れた水回りについても適切に凍結防止ができる構造が提案されていない点にある。
そこで、本発明の目的は、より効率的に凍結防止ができると共、蓄熱床下ピットから上方の水平方向に離れた水回りについても適切に凍結防止ができる床下蓄熱を利用した凍結防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、地表から掘り下げられて地下の位置に設けられた基礎の底盤の上に、断熱材の層を介し、夜間電力を利用する発熱体が埋設された状態に蓄熱材の層が設けられ、該蓄熱材の層を底部とする空間である蓄熱床下ピットを備え、該蓄熱床下ピットの熱エネルギーを水回りの空間に空気流を介して供給することで、該水回りの設備に係る凍結を防止する床下蓄熱を利用した凍結防止システムであって、前記蓄熱床下ピットから上方に離れた前記水回りの空間へ熱エネルギーを供給するように両空間を連通する熱輸送管が設けられ、該熱輸送管にあっては、前記蓄熱床下ピットから前記水回りの空間に横方向へも空気流を導く管路部について、前記水回りの空間の側へ向って高くなるように勾配が設けられた勾配管部となっている。
【0008】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記熱輸送管は、前記水回りの空間に開口する側の部分である縦方向に延びる立ち上がり管部と、前記蓄熱床下ピットに開口する側から前記立ち上がり管部へ接続される前記勾配管部とを備えていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記熱輸送管の前記勾配管部の勾配が1/5以上であることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記熱輸送管には、給水管及び/又は給湯管が挿通されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記蓄熱床下ピット内にあって開口する前記勾配管部の端部が下方に向って開いているように円筒状管を斜めに切断した形状に設けられ、該円筒状管の切断された端部の先端部分が庇状となるように上側に位置されていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記水回りの空間が、流し台の内部に断熱材で囲まれて形成された流し台の保温空間であることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記流し台の保温空間から、流し台の上面に設置されたカランを覆うエコホットマフラーの内部空間に前記空気流を介して熱エネルギーを供給するように、前記流し台の保温空間の上面であって前記カランの近傍に前記エコホットマフラーの内部空間へ連通する熱輸送用の温風吹出口が設けられていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、食洗機の回りに、夜間電力を利用する前記発熱体と蓄熱用器具とを配置したことを特徴とすることができる。
また、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの一形態によれば、前記蓄熱床下ピット内の壁部において、内側壁面に断熱材の層を介し、蓄熱コンクリート壁が築造されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムによれば、より効率的に凍結防止ができると共、蓄熱床下ピットから上方の水平方向に離れた水回りについても適切に凍結防止ができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの形態例を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る熱輸送管の形態例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る流し台のカランを保温状態にするためエコホットマフラーを配した状況の形態例を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る流し台のカランを保温状態にしていない通常時の形態例を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るシステムキッチンの流し台の形態例を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係るシステムキッチンの流し台の形態例を示す平面図である。
【
図7】先行技術のシステムの全容を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムの形態例を図面(
図1〜6)に基づいて説明する。この床下蓄熱を利用した凍結防止システムは、地表から掘り下げられて地下の位置に設けられた基礎の底盤4Aの上に、断熱材5の層を介し、夜間電力を利用する発熱体6が埋設された状態に蓄熱材7の層が設けられ、その蓄熱材7の層を底部8aとする空間である蓄熱床下ピット8を備え、その蓄熱床下ピット8の熱エネルギーを水回りの空間に空気流を介して供給することで、その水回りの設備に係る凍結を防止するものである。
【0018】
20は熱輸送管であり、蓄熱床下ピット8から上方に離れた水回りの空間30へ熱エネルギーを供給するように両空間を連通するように設けられている。
本形態例の熱輸送管20では、
図2に示すように、塩化ビニールパイプなどの円筒状管21に、スチロール保温筒22、グラスウール23及びアルミガラスクロス24を巻いて断熱を行い、保温効果の高い形態になっている。これによれば、蓄熱床下ピット8の熱エネルギーを、水回りの空間30へ空気の対流現象を利用して効果的に供給することができる。
【0019】
そして、本発明に係る熱輸送管20にあっては、蓄熱床下ピット8から水回りの空間30に横方向へも空気流を導く管路部について、水回りの空間30の側へ向って高くなるように勾配が設けられた勾配管部25となっている。
このように熱輸送管20に勾配が設けられることで、暖かく軽い空気は、上方へ抵抗が小さく上昇できる。反対に、冷却された空気は、重くなるため、下方へ抵抗が小さく下降でき、空気の対流がスムースになされる。すなわち、この熱輸送管20が傾斜した状態に配されて勾配が付けられたことによれば、空気流の淀む部分がなくなり、蓄熱床下ピット8の熱エネルギーを水回りの空間へ空気の対流現象を利用して効果的に供給することができる。
【0020】
本形態例に係る熱輸送管20は、水回りの空間30に開口する側が縦方向に延びる立ち上がり管部27と、蓄熱床下ピット8に開口する側から立ち上がり管部27へ接続されて縦方向と共に横方向へも空気流を導く管路部であって水回りの空間30の側へ向って高くなるように勾配が設けられている勾配管部25とを備える。
このように立ち上がり管部27と勾配管部25とによって熱輸送管20を構成することで、その熱輸送管20を水回りの空間30の床下から容易に配管でき、その施工性を向上させることができる。なお、立ち上がり管部27と勾配管部25との継手に関しては、
図1に示すようなエルボ管26を適宜に用いればよいのは勿論である。
【0021】
また、その熱輸送管20の勾配管部25の勾配が1/5以上であるとよい。
このように勾配管部25の勾配(傾き)が所定の角度以上になっていることで、前述したように空気の対流がスムースになされる。従って、これによれば、蓄熱床下ピット8の熱を、水回りの空間へ空気の対流現象を利用してより効果的に供給することができる。
【0022】
また、熱輸送管20には、給水管31及び/又は給湯管32が挿通されている。
このように熱輸送管20内に給水管31や給湯管32の配管がなされていることで、それらの配管自体の凍結を適切に防止できると共に、それらの配管を適切且つ効果的に配することができる。
【0023】
そして、蓄熱床下ピット8内にあって開口する熱輸送管20の勾配管部25の端部が下方に向って開いているように円筒状管21を斜めに切断した形状に設けられ、その円筒状管21の切断がされて楕円状に尖った端部に形成されている先端部分25bが庇状となるように上側に位置されている。
図1に示した形態例では、その先端部分25bが、基礎の立ち上がり部1の面から蓄熱床下ピット8内へ突き出るように配されているが、本発明はこれに限らず、適宜に配することができるのは勿論である。
【0024】
このように熱輸送管20の円筒状管21の先端部分25bが、蓄熱床下ピット8内に突出して庇状の鍔となっていることで、その開口25aが、蓄熱床下ピット8内で暖められて上昇する空気流を受ける受け口になる。すなわち、先端部分25bによれば、蓄熱床下ピット8内から暖かい空気流を上方の水回りの空間30に向って好適に案内することができる。また、その先端部分25bが、給水管31や給湯管32の配管を保護する笠となり、それらの配管を好適に守る効果もある。
【0025】
なお、本形態例の蓄熱床下ピット8は、基礎の底盤4Aの全面と基礎の立ち上がり部1の一部が地熱層9(
図7参照)に面して接しているが、本発明はこれに限らず、適宜に接することで、地熱を利用できればよい。
また、本形態例においては、基礎の底盤4Aと基礎の立ち上がり部1の内面に張設される断熱材5として、発泡ウレタンの板状材が用いられている。
【0026】
図3〜5の形態例では、水回りの空間30が、流し台34の内部に断熱材5で囲まれて形成された流し台の保温空間30aである。本形態例では、この流し台の保温空間30aには、流し台34の上面に設置された水栓金具(カラン)に接続される給水管31や給湯管32の配管の上部と、シンク40の下の排水管43や生ごみを粉砕するディスポーザー42が収納されている。さらに、そのシンク40の隣のスペースには食洗機50が収納されており、コンロ(図示せず)などと合わせてシステムキッチンが構成されている。なお、41は排水口である。
【0027】
これによれば、流し台の保温空間30aに、蓄熱床下ピット8から空気流を介して熱エネルギーが供給されるため、その流し台の保温空間30aの内部に収納された給水管31や給湯管32及びディスポーザー42や封水トラップ(図示せず)などの凍結を防止でき、水抜きが不要であるため、常に給水給湯及び排水を適切にすることができる。また、蓄熱床下ピット8の熱エネルギーは、夜間電力によって蓄熱されるものであり、日中は蓄熱材に蓄熱された熱エネルギーの放散によって凍結を防止し、地熱を利用することと合わせて電力消費を最小限に留めることができる。
【0028】
すなわち、本発明によれば、在来工法よりもランニングコストを1/3程度に抑えることができる。
さらに本発明によれば、水回りの空間30内の相対湿度は15%前後となり、シロアリ、カマドウマ等の害虫が生息できなくなるため、建物寿命も長くなるという利点もある。
【0029】
また、
図3に示すように、流し台の保温空間30aから、流し台34の上面に設置された水栓金具であるカラン33を覆うエコホットマフラー37の内部空間37aに空気流を介して熱エネルギーを供給するように、流し台の保温空間30aの上面であってカラン33の近傍にエコホットマフラー37の内部空間37aへ連通する熱輸送用の温風吹出口35が設けられている。なお、
図4に示すように、36は温風吹出口メクラキャップであり、凍結の心配がない場合の常時には、温風吹出口35を塞ぐように設けられている。
【0030】
本形態例のエコホットマフラー37は、袋状に設けられている。さらに詳細には、エコホットマフラー37が、断熱性を向上できるように布材やシート材によって複数層からなる袋状に形成され、袋の縁にあたる部分であって逆さになって流し台34の上面に接して置かれる部分は、折返しの中に錘が入っているように構成することができる。例えば、外側シートナイロンとポリエステルの起毛仕上げの生地とによる二層からなる袋状に構成され、錘としては球状の形態のものを用いることができる。これによれば、エコホットマフラー37を、カラン33を包み込むように安定的に覆うことができ、カラン33をより好適に保温することができる。
なお、このエコホットマフラー37については、本形態例のような柔軟性のある素材によって構成されるものに限らず、箱状のハードカバー状に形成されたものであってもよい。すなわち、カラン33を覆って保温性の内部空間37aを構成できるものであればよい。
【0031】
図5に示した形態例では、食洗機50の回りに、夜間電力を利用する発熱体6と蓄熱用器具7aとを配置した構成になっている。
これによれば、食洗機50についてより確実に凍結を防止できると共に、前述した流し台の保温空間30aについても暖めることになり、水回りの機器についてより確実に凍結を防止できる。
【0032】
なお、本形態例の蓄熱材7の層は、断熱材5の上にシート状の発熱体6を敷き、その上に、蓄熱量の大きな蓄熱剤が封入されたパイプを複数並べて一体化した形態の蓄熱用器具7a(
図1参照)を置き、ワイヤーメッシュを敷いてモルタルを流し込んでコンクリートが打設されることでコンクリートの層として設けられている。
また、本形態例では、流し台34に関する凍結防止システムを中心に説明してきたが、トイレや風呂場の水回りの空間30にも同様に適用できるのは勿論であり、例えば、トイレや風呂場の部屋自体が狭い空間であれば、その空間自体が以上に説明してきた凍結防止すべき水回りの空間30とすることができる。
【0033】
また、
図7に示すように、蓄熱床下ピット内8の壁部(床下コンクリート囲壁1)において、内側壁面3に断熱材5の層を介し、蓄熱コンクリート壁7Aを築造してもよい。なお、この蓄熱コンクリート壁7Aは、
図7に示すように内側壁面3の一部であってもよいし、内側壁面3の全面であってもよい。これによれば、床下コンクリート囲壁1と蓄熱コンクリート壁7Aとの間に断熱材5を挟んだサンドウィッチ構造となり、蓄熱容量をさらに増大させることができ、より安定的に熱エネルギーを解放させることができる。
【0034】
次に、本発明の意義について、簡単に説明しておく。
過去1世紀の長きにわたり、寒冷地域では住宅内の凍害被害に悩んで来た歴史があり、建築技術が大きく発展したにもかかわらず凍害対策技術は今もって未発達状況であると共に、省エネルギーの観点からも不十分な状態であった。特に、寒冷地域のリゾート地帯の別荘群は、水抜き水出しという非生産的作業が付きまとう、粗末な設備技術であった。
これに対して、以上に説明した本発明に係る床下蓄熱を利用した凍結防止システムによれば、省エネルギーで運用できる通年利用型の凍結防止技術が完成されることになり、住宅の付加価値を格段に高め、地域活性化をもたらすことができる革新的な凍結防止技術なっている。
【0035】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0036】
1 床下コンクリート囲壁、基礎の立ち上がり部
2 外側壁面
3 内側壁面
4 底面
4A 基礎の底盤
5 断熱材
6 発熱体
7 蓄熱材
7A 蓄熱コンクリート壁
7a 蓄熱用器具
8 蓄熱床下ピット
8a 底部
9 地熱層
10 配管系
11 機器系
20 熱輸送管
21 円筒状管
22 スチロール保温筒
23 グラスウール
24 アルミガラスクロス
25 勾配管部
25a 開口
25b 先端部分
26 エルボ管
27 立ち上がり管部
30 水回りの空間
30a 流し台の保温空間
31 給水管
32 給湯管
33 カラン
34 流し台
35 温風吹出口
36 温風吹出口メクラキャップ
37 エコホットマフラー
37a 内部空間
40 シンク
41 排水口
42 ディスポーザー
43 排水管
50 食洗機