(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
例えば、有機エレクトロクミネセンス(OEL)や有機発光ダイオード(OLED)などのディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子は、しばしば
図2のフロー図で示される製造方法で製造される。すなわち、まず、ポリマー溶液(ワニス)がガラス支持材又はシリコンウエハー上に塗布又はキャストされる(工程A)。つぎに、塗布又はキャストされたポリマー溶液が乾燥又は硬化されることでフィルムが形成される(工程B)。そのフィルム上に例えばOLED等の素子が形成され(工程C)、その後、必要に応じて、OLED等の素子(製品)は支持材から剥離される(工程D)。
【0013】
図2に示されるディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造において、ポリマー溶液として芳香族ポリアミドのワニスを用いる場合、芳香族ポリアミドフィルムの機械特性が問題になる場合がある。すなわち、芳香族ポリアミドフィルムはヤング率が高いが伸び率が低いため、脆い材料となっている。したがって、ポリアミドフィルムの伸び率を向上させることで、成形したフィルムの取扱性が向上し、フィルム破損が抑制できる。
【0014】
本開示は、ポリマー溶液中のポリマーにオキサゾール前駆体構造又はベンゾオキサゾール構造が存在すれば、該ポリマー溶液をフィルムにしたときに、該フィルムに機械特性、とりわけ靭性を付与できるという知見に基づく。なお、本開示では、靭性を破断エネルギーとして定量的に表わすこととする。破断エネルギーは、引張り試験時にサンプルが破断するまでの応力(Pa=N/m
2)を変位(無次元)で積分した値であり、単位はJ/m
3である。破断エネルギーは、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0015】
よって、本開示は、一態様において、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位又はベンゾオキサゾール構造を有する構造単位を含むポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液(以下、「本開示に係るポリマー溶液」ともいう。)に関する。
【0016】
[ポリマー溶液におけるポリマー]
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、形成されるポリマーフィルムの靭性向上の観点から、前記ポリマーを構成する全構造単位に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位の合計が、0を超え、0.1モル%以上、1.0モル%以上、3.0モル%以上、5.0モル%以上、6.0モル%以上、7.0モル%以上、8.0モル%以上、9.0モル%以上、又は、10.0モル%以上である。
また、本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、形成されるポリマーフィルムの透明性向上の観点から、前記ポリマーを構成する全構造単位に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位の合計が、100モル%以下、50モル%以下、50モル%未満、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、又は、20モル%以下である。
そして、本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、形成されるポリマーフィルムの靭性向上の観点及び形成されるポリマーフィルムの透明性向上の観点から、前記ポリマーを構成する全構造単位に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位の合計が、0を超え100モル%以下、0を超え50モル%以下、0.1モル%以上50モル%未満、1.0〜45モル%、3.0〜40モル%、5.0〜40モル%、5.0〜35モル%、6.0〜30モル%、7.0〜30モル%、8.0〜25モル%、9.0〜25モル%、又は、10.0〜20モル%である。
【0017】
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、透明樹脂又は透明フィルムを形成できるものがあげられ、具体的には、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン等)、アモルファスポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン、セルロース系ポリマー(トリアセチルセルロース(TAC)等)、及びこれらの混合物が挙げられる。本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する上述のポリマーがベンゾオキサゾール構造を形成したポリマーを含む。
【0018】
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、ポリアミドである。一又は複数の実施形態において、該ポリマーは、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するポリアミドがベンゾオキサゾール構造を形成したポリマーを含んでもよい。
【0019】
[ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位]
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーにおいて、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位は、一又は複数の実施形態において、下記化学式:
【化1】
で示される基を有する構造単位が挙げられる。上記式において、R
2は、任意の置換基である。3つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーにおいて、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位は、一又は複数の実施形態において、下記化学式:
【化2】
で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。上記式において、R
1は、芳香環又は脂環式構造を有する基であり、R
2は、任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。
【0021】
上記式で示されるベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位において、R
1は、芳香環又は脂環式構造を有する二価の基である。芳香環を有する二価の基として、一又は複数の実施形態において、下記化学式:
【化3】
[ここで、YはSiを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、又は、Oを含む基等が挙げられ、限定されない一実施形態において、−S−、−SO
2−、−(CF
3)
2C−が挙げられる。]
で示される基、又は、これらの基が1若しくは2以上の置換基で置換された基が挙げられる。前記置換基として、一又は複数の実施形態において、水素原子、重水素、ハロゲン、炭素数1〜5の炭化水素基、ハロゲン置換された炭素数1〜5の炭化水素基、−CF
3、−CCl
3、−CI
3、−CBr
3、−I、−NO
2、−CN、−COCH
3、−CO
2C
2H
5、−OH、−COOH及び−OCH
3からなる群から選択される1又は2以上の置換基等が挙げられる。また、脂環式構造を有する二価の基としては、前記芳香環を有する二価の基のベンゼン環構造を水添化したもの等が挙げられる。
【0022】
本開示において、「置換された」又は「置換されてもよい」とは、特に説明がない場合、一又は複数の実施形態において、水素原子、重水素、ハロゲン、炭素数1〜5の炭化水素基、ハロゲン置換された炭素数1〜5の炭化水素基、−CF
3、−CCl
3、−CI
3、−CBr
3、−I、−NO
2、−CN、−COCH
3、−CO
2C
2H
5、−OH、−COOH及び−OCH
3からなる群から選択される1又は2以上の置換基で置換されることが挙げられる。本開示において、ハロゲン原子は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、及び臭素原子(Br)を含む。
【0023】
上記式で示されるベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位において、R
2は任意の置換基であって、一又は複数の実施形態において、水素原子、重水素、ハロゲン、炭素数1〜5の炭化水素基、ハロゲン置換された炭素数1〜5の炭化水素基、−CF
3、−CCl
3、−CI
3、−CBr
3、−I、−NO
2、−CN、−COCH
3、−CO
2C
2H
5、−OH、−COOH又は−OCH
3等が挙げられる。
【0024】
上記式で示されるベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位において、Xは、二価の原子又は二価の有機基である。二価の原子としては、一又は複数の実施形態において、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。二価の有機基は、一又は複数の実施形態において、アルキレン基、ハロゲン化炭化水素基、エーテル結合を含む基、二価の環状構造含有有機基が挙げられる。前記アルキレン基としては、一又は複数の実施形態において、炭素数1〜6のアルキレン基、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
5−等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素基、エーテル結合を含む基としては、一又は複数の実施形態において、−O−、−S−、−C(CF
3)
2−、−C(CCl
3)
2−、−C(CBr
3)
2−、−CF
2−、−CCl
2−、−CBr
2−等が挙げられ、二価の環状構造含有有機基としては
【化4】
又は、1若しくは2以上の置換基で置換されたこれらの基が挙げられる。
【0025】
[ベンゾオキサゾール構造を有する構造単位]
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーにおいて、ベンゾオキサゾール構造を有する構造単位は、一又は複数の実施形態において、下記化学式:
【化5】
で示される基を有する構造単位が挙げられる。上記式において、R
2は、任意の置換基である。3つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R
2については、上述した一又は複数の実施形態が挙げられる。
【0026】
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーにおいて、ベンゾオキサゾール構造を有する構造単位は、一又は複数の実施形態において、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するポリアミドがベンゾオキサゾール構造を形成した構成単位であって、下記化学式:
【化6】
で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。上記式において、R
1は、芳香環又は脂環式構造を有する基であり、R
2は、任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。R
1、R
2及びXについては、上述した一又は複数の実施形態が挙げられる。
【0027】
よって、本開示に係るポリマー溶液は、一又は複数の実施形態において、下記化学式:
【化7】
で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を複数有し、X及びR
1が、それぞれ、同一又は異なるポリマー溶液である。なお、R
1、R
2及びXについては、上述した一又は複数の実施形態が挙げられる。
【0028】
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、一又は複数の実施形態において、カルボン酸ジクロライド成分モノマーとジアミン成分モノマーと重合反応で得られた又は得られうるものである。本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーが、カルボン酸ジクロライド成分モノマーとジアミン成分モノマーと重合反応で得られた又は得られうるものである場合、一又は複数の実施形態において、形成されるポリマーフィルムの靭性向上の観点から、ポリアミドの合成に使用されるジアミン成分モノマー全量に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマー量は、0を超え、0.1モル%以上、1.0モル%以上、3.0モル%以上、5.0モル%以上、6.0モル%以上、7.0モル%以上、8.0モル%以上、9.0モル%以上、又は、10.0モル%以上である。
また、本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーが、カルボン酸ジクロライド成分モノマーとジアミン成分モノマーと重合反応で得られた又は得られうるものである場合、一又は複数の実施形態において、ポリアミドの合成に使用されるジアミン成分モノマー全量に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマー量は、100モル%以下、50モル%以下、50モル%未満、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、又は、20モル%以下である。
そして、本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーが、カルボン酸ジクロライド成分モノマーとジアミン成分モノマーと重合反応で得られた又は得られうるものである場合、一又は複数の実施形態において、形成されるポリマーフィルムの靭性向上の観点及び形成されるポリマーフィルムの透明性向上の観点から、ポリアミドの合成に使用されるジアミン成分モノマー全量に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマー量は、0を超え100モル%以下、0を超え50モル%以下、0.1モル%以上50モル%未満、1.0〜45モル%、3.0〜40モル%、5.0〜40モル%、5.0〜35モル%、6.0〜30モル%、7.0〜30モル%、8.0〜25モル%、9.0〜25モル%、10.0〜20モル%である。
【0029】
[ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマー]
ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマーとしては、一又は複数の実施形態において、
2,4−ジアミノ−レゾルシノール、2,5−ジアミノ−1,4−ジヒドロキシルベンゼン等のジヒドロキシルベンゼンを有する化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−ビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル等のジヒドロキシ−ビフェニルを有するビスアミノフェノール化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルエーテル等のジヒドロキシ−ジフェニルエーテルを有するビスアミノフェノール化合物:、
9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(4−アミノ−3−ヒドロキシ)−フェノキシ−フェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有する化合物:、
2,2’−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシ−フェノキシ)−1,1’−ビナフタレン等のビナフタレン骨格を有する化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、ビス(4−(4−アミノ−3−ヒドロキシ)−フェノキシ−フェニル)スルホン、ビス(4−(4−ヒドロキシ−3−アミノ)フェノキシ−フェニル)スルホン等のスルホン基を有する化合物:、
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のフッ素又はフッ素化アルキル基を有する化合物が挙げられる。
ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマーとして、これらを単独又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
また、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマーは、一又は複数の実施形態において、下記化学式:
【化8】
で示されるモノマーからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。上記式において、R
2は、任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。R
2及びXについては、上述した一又は複数の実施形態が挙げられる。
【0031】
[その他の構成単位]
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーのベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位以外の構造単位としては、特に限定されず、一又は複数の実施形態において、WO2004/039863に開示されるものが挙げられる。
【0032】
よって、本開示に係るポリマー溶液は、一又は複数の実施形態において、下記化学式(I)、(II)若しくは(III)又は(IV)、(V)若しくは(VI)で示される構造単位及び下記化学式(VII)、(VIII)、(IX)又は(X)で示される構造単位を含み、化学式(I)〜(X)で示される構造単位の前記ポリアミドにおけるモル分率(モル%)を、それぞれ、l、m、n、o、p、q、r、s、t、uとしたとき、下記式(1)〜(2)を満たすポリマーを含むポリマー溶液である。
0<l+m+n+o+p+q≦50 ・・・(1)
50≦r+s+t+u<100 ・・・(2)
【化9】
[式(I)〜(VI)において、R
1は芳香環又は脂環式構造を有する基であり、R
2は任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。]
【化10】
[式(VII)において、R
3は芳香環又は脂環式構造を有する基、R
4は芳香環又は脂環式構造を有する基、R
5は任意の置換基、R
6は任意の置換基である。4つのR
5及びR
6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、式(VII)で示される構造単位は、式(I)及び(II)で示される構造単位を含まない。]
【化11】
[式(VIII)において、R
7は電子吸引基、R
8は電子吸引基、R
9は任意の置換基、R
10は任意の置換基、R
11は芳香環又は脂環式構造を有する基である。3つのR
9及びR
10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、式(VIII)で示される構造単位は、式(I)及び(II)で示される構造単位を含まない。]
【化12】
[式(IX)において、R
12はSiを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、又は、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)である。R
13は任意の置換基、R
14は任意の置換基である。R
15は直結されているか又はフェニル基を必須成分とする炭素数6〜12の任意の基、R
16は直結されているか又はフェニル基を必須成分とする炭素数6〜12の任意の基、R
17は芳香環又は脂環式構造を有する基である。4つのR
13及びR
14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、式(IX)で示される構造単位は、式(I)及び(II)で示される構造単位を含まない。]
【化13】
[式(X)において、R
18は芳香環又は脂環式構造を有する基、R
19は芳香環又は脂環式構造を有する基である。但し、式(X)で示される構造単位は、式(III)で示される構造単位を含まない。]
【0033】
前記式(1)につき、式(I)〜(VI)で示される構造単位が少なくとも1つ存在すればよく、それらのモル分率(モル%)であるl、m、n、o、p、qは、式(1)を満たす範囲で0を取り得る。l+m+n+o+p+qの値としては、一又は複数の実施形態において、0を超え100以下、0.1以上50以下、1.0〜45、3.0〜40、5.0〜40、5.0〜35、6.0〜30、7.0〜30、8.0〜25、9.0〜25、又は10.0〜20である。
【0034】
前記式(2)につき、式(VII)〜(X)で示される構造単位が少なくとも1つ存在すればよく、それらのモル分率(モル%)であるr、s、t、uは、式(2)を満たす範囲で0を取り得る。l+m+n+o+p+q+r+s+t+uの値としては、一又は複数の実施形態において、50を超え100以下、60〜100、70〜100、80〜100、又は90〜100が挙げられる。
【0035】
前記式(I)〜(VI)におけるR
1、R
2及びXについては、上述した一又は複数の実施形態が挙げられる。
【0036】
前記式(VII)において、R
3は芳香環又は脂環式構造を有する基であって、一又は複数の実施形態において、複素環を有する基である。環の形状は、一又は複数の実施形態において、単環、縮合環、スピロ環が挙げられる。R
3の芳香環又は脂環式構造を有する基は、一又は複数の実施形態において、下記式:
【化14】
が挙げられる。R
4は芳香環又は脂環式構造を有する基であって、前述の式(I)〜(VI)におけるR
1と同様の一又は複数の実施形態が挙げられる。また、R
5及びR
6は特に制限はなく、任意の基であって、一又は複数の実施形態において、−H、炭素数1〜5の脂肪族基、−CF
3、−CCl
3、−OH、−COOH、−F、−Cl、−Br、−OCH
3、シリル基、又は、芳香族基が挙げられる。前記式(VII)で示される構造単位は、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位を含まない。よって、一又は複数の実施形態において、前記式(VII)で示される構造単位は、前記式(I)〜(VI)で示される構造単位を含まず、又は、前記式(I)〜(II)で示される構造単位を含まない。
【0037】
前記式(VIII)において、R
7及びR
8は、それぞれ独立して電子吸引基であって、同じであってもよく、異なってもよい。電子吸引基は、一又は複数の実施形態において、Hammettの置換基常数において正の値を示す基であり、−CF
3、−CCl
3、−CI
3、−CBr
3、−F、−Cl、−Br、−I、−NO
2、−CN、−COCH
3、又は−CO
2C
2H
5が挙げられる。また、R
9及びR
10は特に制限はなく、任意の基であって、一又は複数の実施形態において、−H、炭素数1〜5の脂肪族基、−CF
3、−CCl
3、−OH、−COOH、−F、−Cl、−Br、−OCH
3、シリル基、又は、芳香族基が挙げられる。R
11は芳香環又は脂環式構造を有する基であって、前述の式(I)〜(VI)におけるR
1と同様の一又は複数の実施形態が挙げられる。前記式(VIII)で示される構造単位は、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位を含まない。よって、一又は複数の実施形態において、前記式(VIII)で示される構造単位は、前記式(I)〜(VI)で示される構造単位を含まず、又は、前記式(I)〜(II)で示される構造単位を含まない。
【0038】
前記式(IX)において、R
12はSiを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、又は、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)である。R
12は、一又は複数の実施形態において、−SO
2−、−O−、−C(CF
3)
2−、−(CCl
3)
2−、−(CBr
3)
2−、−CF
2−、−CCl
2−、−CBr
2−である。R
13及びR
14は特に制限はなく、それぞれ独立して任意の基であって、一又は複数の実施形態において、−H、炭素数1〜5の脂肪族基、−CF
3、−CCl
3、−OH、−COOH、−F、−Cl、−Br、−OCH
3、シリル基、又は、芳香族基が挙げられる。R
15及びR
16は、それぞれ独立して直結されているか又はフェニル基を必須成分とする炭素数6〜12の任意の基であって、一又は複数の実施形態において、−Ph−、−O−Ph−、−C(CF
3)
2−Ph−が挙げられる。R
17は芳香環又は脂環式構造を有する基であって、前述の式(I)〜(VI)におけるR
1と同様の一又は複数の実施形態が挙げられる。前記式(IX)で示される構造単位は、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位を含まない。よって、一又は複数の実施形態において、前記式(IX)で示される構造単位は、前記式(I)〜(VI)で示される構造単位を含まず、又は、前記式(I)〜(II)で示される構造単位を含まない。
【0039】
前記式(X)において、R
18及びR
19は、それぞれ独立して芳香環又は脂環式構造を有する基であって、前述の式(I)〜(VI)におけるR
1と同様の一又は複数の実施形態が挙げられる。前記式(X)で示される構造単位は、ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位を含まない。よって、一又は複数の実施形態において、前記式(X)で示される構造単位は、前記式(I)〜(VI)で示される構造単位を含まず、又は、前記式(III)で示される構造単位を含まない。
【0040】
[溶媒]
本開示に係るポリマー溶液の溶媒は、特に制限されない。溶媒は、一又は複数の実施形態において、後述するポリマーの調製に用いる溶媒であってよい。ポリマーがポリアミドである場合、溶媒は、一又は複数の実施形態において、非プロトン性極性溶媒挙げられ、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ポリピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエステル系溶媒、或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルブタンアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、1−メチル−2−ピペリジノン、プロピレンカーボネート、及び、これらの混合物が挙げられる。さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにはポリマーの溶解を促進する目的で溶媒には50重量%以下のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩を添加することができる。
【0041】
[フィラー]
本開示に係るポリマー溶液は、該ポリマー溶液から形成されるポリマーフィルムの弾性率を向上させるためフィラーを添加してもよい。前記フィラーは、一又は複数の実施形態において、球状、繊維状、平板状、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
本開示に係るポリマー溶液中のポリマーは、一又は複数の実施形態において、ポリマーの熱耐性特性の観点から、ポリマーの少なくとも一端がエンドキャップされたものである。ポリマーがポリアミドである場合、末端の−COOH基及び−NH
2基の一端又は両端がキャップされる。ポリアミドのエンドキャップは、一又は複数の実施形態において、重合されたポリアミドの−NH
2末端と塩化ベンゾイルとの反応、又は、重合されたポリアミドの−COOH末端とアニリンとの反応で行うことができる。しかし、エンドキャップの方法はこの方法に限定されない。
【0043】
本開示に係るポリマー溶液で形成した換算厚み10μmでのフィルムの波長400nmの光透過率は、一又は複数の実施形態において、該フィルムがディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造に好適に用いられる観点から、一又は複数の実施形態において、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であることが挙げられる。光透過率は、実施例で記載の方法で測定できる。
【0044】
本開示に係るポリマー溶液で形成したフィルムの破断エネルギーは、ディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造における該フィルムの取扱性向上の点から、一又は複数の実施形態において、2.0MJ/m
3以上、2.5MJ/m
3以上、3.0MJ/m
3以上、3.5MJ/m
3以上、4.0MJ/m
3以上、4.5MJ/m
3以上、5.0MJ/m
3以上、5.5MJ/m
3以上、6.0MJ/m
3以上、6.5MJ/m
3以上、7.0MJ/m
3以上、7.5MJ/m
3以上、8.0MJ/m
3以上、8.5MJ/m
3以上又は9.0MJ/m
3以上であることが挙げられる。
【0045】
なお、光透過率及び破断エネルギーを測定するフィルムとしては、本開示に係るポリマー溶液をガラスプレート上にキャストして作製したフィルムを用いる。該フィルムは、本開示に係るポリマー溶液を平坦なガラス基材上に塗布して乾燥及び必要に応じて硬化させたフィルムであって、具体的には実施例で開示されるフィルム形成方法で作製されたフィルムである。
【0046】
[ポリマーの調製方法]
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーを得る方法は、種々の方法が利用可能であり、限定されない一又は複数の実施形態において、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。また、溶媒を用いない重合方法、例えば蒸着重合法でも構わない。一又は複数の実施形態において、ポリアミドを低温溶液重合法、すなわち、カルボン酸ジクロライドとジアミンとから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。以下に、本開示に係るポリマー溶液を調製する方法を説明する。
【0047】
カルボン酸ジクロライドとしては、上述した構造単位に適したモノマーを適宜選択できる。限定されない一又は複数の実施形態として、テレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライド、2フロロ−テレフタル酸ジクロライド、1,4−シクロヘキサンカルボン酸ジクロライド、2,2’−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパンジクロライド、2,2’−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジクロライドなどが挙げられるが、好ましくはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、イソフタル酸ジクロライドが用いられる。
【0048】
ジアミンは、上述した構造単位に適したモノマーを適宜選択できる。ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマーは、上述のとおりである。ベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分以外のジアミン成分モノマーとしては、限定されない一又は複数の実施形態として、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0049】
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、ジアミンは1種類ずつ添加し、該ジアミンに対し10〜99モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、及びすべてのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。また、2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましい。
【0050】
ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ポリピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエステル系溶媒、或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルブタンアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、1−メチル−2−ピペリジノン、プロピレンカーボネート、などを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにはポリマーの溶解を促進する目的で溶媒には50重量%以下のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩を添加することができる。
【0051】
ポリアミド溶液は、単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。
【0052】
[ポリマーの平均分子量]
本開示に係るポリマー溶液におけるポリマーは、フィルムをディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子に用いる観点から、一又は複数の実施形態において、重量平均分子量(Mn)は、6.0×10
4以上、6.5×10
4以上、7.0×10
4以上、7.5×10
4以上、又は、8.0×10
4以上が好ましい。また、同様の観点から、一又は複数の実施形態において、重量平均分子量は、5.0×10
6以下、3.0×10
6以下、1.0×10
6以下である。また、好ましい分子量分布(重量平均分子量(Mw) / 数平均分子量(Mn))は、5.0以下、4.0以下、3.0以下である。
【0053】
[ポリマーの含有量]
本開示に係るポリマー溶液における芳香族ポリアミドは、フィルムをディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子に用いる観点から、一又は複数の実施形態において、2重量%以上、3重量%以上、又は、5重量%以上が挙げられ、同様の観点から、30重量%以下、20重量%以下が挙げられる。
【0054】
[ポリマー溶液の用途]
本開示にかかるポリマー溶液は、一又は複数の実施形態において、下記工程a)〜c)を含むディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子の製造方法に使用するためのポリアミド溶液である。
a)ポリマー溶液を支持材上に塗布する。
b)工程a)の後、支持体上でポリマーフィルムを形成する。
c)前記ポリマーフィルム上にディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子を形成する。
ここで、前記支持材の表面は、ガラス又はシリコンウエハーである。
【0055】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0056】
<A1> ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位又はベンゾオキサゾール構造を有する構造単位を含むポリマーと溶媒とを含む、ポリマー溶液。
<A2> 前記ポリマーを構成する全構造単位に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位及びベンゾオキサゾール構造を有する構造単位の合計が、0を超え50モル%以下である、<A1>記載のポリマー溶液。
<A3> 前記ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する構造単位又はベンゾオキサゾール構造を有する構造単位が、下記化学式:
【化15】
[R
1は、芳香環又は脂環式構造を有する基であり、R
2は、任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。]
で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つである、<A1>又は<A2>に記載のポリマー溶液。
<A4> 前記ポリマーの合成に使用されるジアミン成分モノマー全量に対するベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマーが、0を超え50モル%以下である、<A1>から<A3>のいずれかに記載のポリマー溶液。
<A5> 前記ポリマーの合成に使用されるベンゾオキサゾール前駆体構造を有するジアミン成分モノマーが、下記化学式:
【化16】
[R
2は、任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。]
で示されるモノマーからなる群から選択される少なくとも1つである、<A1>から<A4>のいずれかに記載のポリマー溶液。
<A6> 前記ポリマー溶液で形成した換算厚み10μmでのフィルムの波長400nmの光透過率が、60%以上となりうる、<A1>から<A5>のいずれかに記載のポリマー溶液。
<A7> 前記ポリマー溶液で形成したフィルムの破断エネルギーが2.0MJ/m
3以上となりうる、<A1>から<A6>のいずれかに記載のポリマー溶液。
<A8> 化学式(I)、(II)若しくは(III)又は(IV)、(V)若しくは(VI)で示される構造単位及び化学式(VII)、(VIII)、(IX)又は(X)で示される構造単位を含み、化学式(I)〜(X)で示される構造単位の前記ポリアミドにおけるモル分率を、それぞれ、l、m、n、o、p、q、r、s、t、uとしたとき、下記式(1)〜(2)を満たすポリマーを含む、<A1>から<A7>のいずれかに記載のポリマー溶液。
0<l+m+n+o+p+q≦50 ・・・(1)
50≦r+s+t+u<100 ・・・(2)
【化17】
[式(I)〜(VI)において、R
1は芳香環又は脂環式構造を有する基であり、R
2は任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。]
【化18】
[式(VII)において、R
3は芳香環又は脂環式構造を有する基、R
4は芳香環又は脂環式構造を有する基、R
5は任意の置換基、R
6は任意の置換基である。4つのR
5及びR
6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、式(VII)で示される構造単位は、式(I)及び(II)で示される構造単位を含まない。]
【化19】
[式(VIII)において、R
7は電子吸引基、R
8は電子吸引基、R
9は任意の置換基、R
10は任意の置換基、R
11は芳香環又は脂環式構造を有する基である。3つのR
9及びR
10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、式(VIII)で示される構造単位は、式(I)及び(II)で示される構造単位を含まない。]
【化20】
[式(IX)において、R
12はSiを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、又は、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)である。R
13は任意の置換基、R
14は任意の置換基である。R
15は直結されているか又はフェニル基を必須成分とする炭素数6〜12の任意の基、R
16は直結されているか又はフェニル基を必須成分とする炭素数6〜12の任意の基、R
17は芳香環又は脂環式構造を有する基である。4つのR
13及びR
14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、式(IX)で示される構造単位は、式(I)及び(II)で示される構造単位を含まない。]
【化21】
[式(X)において、R
18は芳香環又は脂環式構造を有する基、R
19は芳香環又は脂環式構造を有する基である。但し、式(X)で示される構造単位は、式(III)で示される構造単位を含まない。]
<A9> 前記ポリマーの少なくとも一端がエンドキャップされたものである、<A1>から<A8>のいずれかに記載のポリマー溶液。
<A10> 前記ポリマーが、下記化学式:
【化22】
[R
1は芳香環又は脂環式構造を有する基であり、R
2は任意の置換基である。3つ又は4つのR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、二価の原子又は二価の有機基である。]
で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を複数有し、X及びR
1が、それぞれ、同一又は異なる、<A1>から<A10>のいずれかに記載のポリマー溶液。
【0057】
[ポリマーフィルム]
本開示は、その他の態様において、本開示に係るポリマー溶液から形成されるポリマーフィルム(以下、「本開示に係るポリマーフィルム」ともいう。)に関する。
【0058】
本開示に係るポリマーフィルムの換算厚み10μmでの波長400nmの光透過率は、一又は複数の実施形態において、該フィルムがディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造に好適に用いられる観点から、一又は複数の実施形態において、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であることが挙げられる。また、本開示に係るポリマーフィルムの破断エネルギーは、ディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造における該フィルムの取扱性向上の点から、一又は複数の実施形態において、2.0MJ/m
3以上、2.5MJ/m
3以上、3.0MJ/m
3以上、3.5MJ/m
3以上、又は、4.0MJ/m
3以上であることが挙げられる。
【0059】
本開示に係るポリマーフィルムは、一又は複数の実施形態において、ベンゾオキサゾール構造を有する。ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する本開示に係るポリマー溶液を用いてフィルムを形成する時又はフィルムを形成した後、熱処理(硬化処理)を施すことで前記フィルムにベンゾオキサゾール構造を導入できる。前記熱処理の処理温度は、一又は複数の実施形態において、200℃以上、220℃以上、240℃以上、260℃以上、280℃以上、300℃以上、又は、320℃以上である。また、前記熱処理の処理温度は、一又は複数の実施形態において、420℃以下、又は400℃以下である。前記熱処理の処理温度は、一又は複数の実施形態において、5〜300分、又は、30〜240分である。
【0060】
[ポリマーフィルムの製造方法]
したがって、本開示は、その他の態様において、a)本開示に係るポリマー溶液を支持材上に塗布すること、及び、b)工程a)の後、支持体上の塗布物を熱処理すること、を含み、前記熱処理が上述の温度及び/又は時間条件である、ポリマーフィルムの製造方法に関する。
【0061】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0062】
<B1> <A1>から<A10>のいずれかに記載のポリマー溶液から形成されるポリマーフィルム。
<B2> 換算厚み10μmでの波長400nmの光透過率が60%以上である、<B1>記載のポリマーフィルム。
<B3> フィルム形成時又は形成後に200℃以上の熱処理が施された、<B1>又は<B2>に記載のポリマーフィルム。
<B4> ベンゾオキサゾール構造を有する、<B1>から<B3>のいずれかに記載のポリマーフィルム。
<B5> フィルムの破断エネルギーが2.0MJ/m
3以上である、<B1>から<B4>のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【0063】
[積層複合材]
本開示において、「積層複合材」は、ガラスプレートとポリマーフィルム層とが積層されたものをいう。ガラスプレートとポリマーフィルム層とが積層されているとは、限定されない一又は複数の実施形態において、ガラスプレートとポリマーフィルム層とが直接積層されていることをいい、また、限定されない一又は複数の実施形態において、ガラスプレートとポリマーフィルム層とが1若しくは複数の層を介して積層されたものをいう。本開示において、前記ポリマーフィルム層のポリマーフィルムは、本開示に係るポリマーフィルムである。したがって、本開示は、一態様において、ガラスプレート及びポリマーフィルム層を含み、前記ガラスプレートの一方の面上に本開示に係るポリマーフィルムが積層されている積層複合材に関し、その他の態様において、ガラスプレート及びポリマーフィルム層を含み、前記ガラスプレートの一方の面上に本開示に係るポリマーフィルムが積層されており、ガラスプレート上に本開示に係るポリマー溶液を塗布することで得られた又は得られうる積層複合材(以下、いずれも「本開示に係る積層複合材」ともいう。)に関する。
【0064】
本開示に係る積層複合材は、限定されない一又は複数の実施形態において、
図2に代表されるディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造方法に使用でき、また、限定されない一又は複数の実施形態において、
図2の製造方法の工程Bで得られる積層複合材として使用できる。したがって、本開示に係る積層複合材は、限定されない一又は複数の実施形態において、ポリアミド樹脂層のガラスプレートと対向する面と反対の面上にディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子を形成することを含むディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子の製造方法に使用するための積層複合材である。
【0065】
本開示に係る積層複合材は、ポリマーフィルム層以外にさらなる有機樹脂層及び/又は無機層を含んでもよい。さらなる有機樹脂層としては、限定されない一又は複数の実施形態において、平坦化コート層等が挙げられる。また、無機層としては、限定されない一又は複数の実施形態において、水、酸素の透過を抑制するガスバリア層、TFT素子へのイオンマイグレーションを抑制するバッファーコート層等が挙げられる。
【0066】
[ポリマーフィルム層]
本開示に係る積層複合材におけるポリマーフィルム層のポリマーフィルムは、本開示に係るポリマー溶液を用いて形成され得る。本開示に係る積層複合材におけるポリマーフィルム層の厚みは、フィルムをディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子に用いる観点、及び、ポリマーフィルム層のクラック発生抑制の観点から、一又は複数の実施形態において、500μm以下、200μm以下、又は、100μm以下であることが挙げられる。また、ポリマーフィルム層の厚みは、限定されない一又は複数の実施形態において、例えば、1μm以上、2μm以上、又は、3μm以上であることが挙げられる。
【0067】
本開示に係る積層複合材におけるポリマーフィルム層の換算厚み10μmでの波長400nmの光透過率は、一又は複数の実施形態において、該フィルムがディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造に好適に用いられる観点から、一又は複数の実施形態において、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であることが挙げられる。また、本本開示に係る積層複合材におけるポリマーフィルム層の破断エネルギーは、ディスプレイ用素子、光学用素子又は照明用素子の製造における該フィルムの取扱性向上の点から、一又は複数の実施形態において、2.0MJ/m
3以上、2.5MJ/m
3以上、3.0MJ/m
3以上、3.5MJ/m
3以上、又は4.0MJ/m
3以上であることが挙げられる。
【0068】
本開示に係る積層複合材におけるポリマーフィルム層は、一又は複数の実施形態において、ベンゾオキサゾール構造を有する。ベンゾオキサゾール前駆体構造を有する本開示に係るポリマー溶液を用いてポリマーフィルム層を形成する時又はフィルムを形成した後、熱処理(硬化処理)を施すことで前記フィルムにベンゾオキサゾール構造を導入できる。
【0069】
[ガラスプレート]
本開示に係る積層複合材におけるガラスプレートの材質は、フィルムをディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子に用いる観点から、一又は複数の実施形態において、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。本開示に係る積層複合材におけるガラスプレートの厚みは、フィルムをディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子に用いる観点から、一又は複数の実施形態において、0.3mm以上、0.4mm以上、又は、0.5mm以上であることが挙げられる。また、ガラスプレートの厚みは、一又は複数の実施形態において、例えば、3mm以下、又は、1mm以下であることが挙げられる。
【0070】
[積層複合材の製造方法]
本開示に係る積層複合材は、本開示に係るポリマー溶液をガラスプレートに塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化処理(熱処理)することにより製造することができる。硬化処理(熱処理)を施すことで前記フィルムにベンゾオキサゾール構造を導入できる。前記熱処理の処理温度は、一又は複数の実施形態において、200℃以上、220℃以上、240℃以上、260℃以上、280℃以上、300℃以上、又は、320℃以上である。また、前記熱処理の処理温度は、一又は複数の実施形態において、420℃以下、又は400℃以下である。前記熱処理の処理温度は、一又は複数の実施形態において、5〜300分、又は、30〜240分である。
【0071】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0072】
<C1> ガラスプレート及びポリマーフィルム層を含み、ガラスプレートの一方の面上にポリマーフィルムが積層されており、ガラスプレート上に<A1>から<A10>のいずれかに記載のポリマー溶液を塗布することで得られた積層複合材。
<C2> ガラスプレートの厚みが、0.3mm以上である、<C1>記載の積層複合材。
<C3> ポリマーフィルムの厚みが、500μm以下である、<C1>又は<C2>に記載の積層複合材。
<C4> ポリマーフィルムの換算厚み10μmでの波長400nmの光透過率が、60%以上である、<C1>から<C3>のいずれかに記載の積層複合材。
<C5> ポリマーフィルムがベンゾオキサゾール構造を有する、<C1>から<C4>のいずれかに記載の積層複合材。
<C6> ポリマーフィルムの破断エネルギーが2.0MJ/m
3以上である、<C1>から<C5>のいずれかに記載の積層複合材。
【0073】
[ディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子]
本開示において、「ディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子」とは、表示体(表示装置)、光学装置、または照明装置を構成する素子をいい、例えば有機EL素子、液晶素子、有機EL照明等をいう。また、それらの一部を構成する薄膜トランジスタ(TFT)素子、カラーフィルタ素子等も含む。本開示にかかるディスプレイ用素子、光学用素子、または、照明用素子は、一又は複数の実施形態において、本開示に係るポリマー溶液を用いて製造されるもの、ディスプレイ用素子、光学用素子、または、照明用素子の基板として本開示に係るポリマーフィルムを用いているものを含みうる。
【0074】
<有機EL素子の限定されない一実施形態>
以下に図を用いて本開示にかかるディスプレイ用素子の一実施形態である有機EL素子の一実施形態を説明する。
【0075】
図1は、一実施形態に係る有機EL素子1を示す概略断面図である。有機EL素子1は、基板A上に形成される薄膜トランジスタB及び有機EL層Cを備える。なお、有機EL素子1全体は封止層400で覆われている。有機EL素子1は、支持材500から剥離されたものをであってもよく、支持材500を含むものであってもよい。以下、各構成につき詳細に説明する。
【0076】
1.基板A
基板Aは、透明樹脂基板100及び透明樹脂基板100の上面に形成されるガスバリア層101を備える。ここで、透明樹脂基板100は、本開示に係るポリマーフィルムである。
【0077】
なお、透明樹脂基板100に対して、熱によるアニール処理を行っても良い。これにより、歪みを取り除くことができたり、環境変化に対する寸法の安定化を強化したりできる等の効果がある。
【0078】
ガスバリア層101は、SiOx、SiNxなどからなる薄膜であり、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法等の真空成膜法により形成される。ガスバリア層101の厚みとしては、通常10nm〜100nm程度であるが、この厚みに限定されるものではない。ここで、ガスバリア層101は
図1のガスバリア層101と対向する面に形成しても良く、両面に形成しても良い。
【0079】
2.薄膜トランジスタ
薄膜トランジスタBは、ゲート電極200、ゲート絶縁膜201、ソース電極202、活性層203、及びドレイン電極204を備える。薄膜トランジスタBは、ガスバリア層101上に形成される。
【0080】
ゲート電極200、ソース電極202、及びドレイン電極204は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)等からなる透明薄膜である。透明薄膜を形成する方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。これらの電極の膜厚は、通常50nm〜200nm程度であるが、この厚さに限定されるものではない。
【0081】
ゲート絶縁膜201は、SiO
2、Al
2O
3等からなる透明な絶縁薄膜であり、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等により形成される。ゲート酸化膜の膜厚は、通常10nm〜1μm程度であるが、この厚さに限定されるものではない。
【0082】
活性層203は、例単結晶シリコン、低温ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化物半導体等であり、適時最適なものが使用される。活性層はスパッタ法等により形成される。
【0083】
3.有機EL層
有機EL層Cは、導電性の接続部300、絶縁性の平坦化層301、有機EL素子1の陽極である下部電極302、正孔輸送層303、発光層304、電子輸送層305、及び有機EL素子1の陰極である上部電極306を備える。有機EL層Cは、少なくともガスバリア層101上又は薄膜トランジスタB上に形成され、下部電極302と薄膜トランジスタBのドレイン電極204は接続部300により電気的に接続されている。なお、これに替えて、薄膜トランジスタBの下部電極302とソース電極202が接続部300により接続されるようにしてもよい。
【0084】
下部電極302は、有機EL素子1の陽極であり、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明薄膜である。なお、高透明性、高電導性等が得られるので、ITOが好ましい。
【0085】
正孔輸送層303、発光層304及び電子輸送層305としては、従来公知の有機EL素子用材料をそのまま用いることができる。
【0086】
上部電極306は、例えばフッ化リチウム(LiF)とアルミニウム(Al)をそれぞれ5nm〜20nm、50nm〜200nmの膜厚に成膜した膜よりなる。膜を形成する方法としては、例えば真空蒸着法が挙げられる。
【0087】
また、ボトムエミッション型の有機EL素子を作製する場合、有機EL素子1の上部電極306は光反射性の電極にしても良い。これにより、有機EL素子1で発生して表示側と逆方向の上部側に進んだ光が上部電極306により表示側方向に反射される。したがって、反射光も表示に利用されるので、有機EL素子の発光の利用効率を高めることができる。
【0088】
[ディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子の製造方法]
本開示は、その他の態様において、ディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子の製造方法に関する。本開示にかかる製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示にかかるディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子を製造する方法である。また、本開示にかかる製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示に係るポリマー溶液を支持材へ塗布する工程と、前記塗布工程後に、ポリマーフィルムを形成する工程と、前記ポリマーフィルムの前記支持材と接していない面にディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子を形成する工程とを含む製造方法である。本開示にかかる製造方法は、さらに、前記支持材上に形成されたディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子を前記支持材から剥離する工程を含んでもよい。
【0089】
<有機EL素子の作製方法の限定されない一実施形態>
次に、以下に図を用いて本開示にかかるディスプレイ用素子の製造方法の一実施形態である有機EL素子の製造方法の一実施形態を説明する。
【0090】
図1の有機EL素子1の作製方法は、固定工程、ガスバリア層作製工程、薄膜トランジスタ作製工程、有機EL層作製工程、封止工程及び剥離工程を備える。以下、各工程につき詳細に説明する。
【0091】
1.固定工程
固定工程では、支持材500上に透明樹脂基板100が固定される。固定する方法は特に限定されるものではないが、支持材500と透明樹脂基板100の間に粘着剤を塗布する方法や、透明樹脂基板100の一部を支持材500に融着させる方法等が挙げられる。また、支持材500の材料としては、例えば、ガラス、金属、シリコン、又は樹脂等が用いられる。これらは単独で用いられてもよいし、2以上の材料を適時組み合わせて使用してもよい。さらに、支持材500に離型剤等を塗布し、その上に透明樹脂基板100を張り付けて固定してもよい。一又は複数の実施形態において、支持材500上に本開示に係るポリマー溶液を塗布し、乾燥等によりポリマーフィルム(透明樹脂基板)100を形成する。
【0092】
2.ガスバリア層作製工程
ガスバリア層作製工程では、透明樹脂基板100上にガスバリア層101が作製される。作製する方法は特に限定することなく、公知の方法を用いることができる。
【0093】
3.薄膜トランジスタ作製工程
薄膜トランジスタ作製工程では、ガスバリア層101上に薄膜トランジスタBが作製される。作製する方法は特に限定することなく、公知の方法を用いることができる。
【0094】
4.有機EL層作製工程
有機EL層作製工程は、第1工程と第2工程を備える。第1工程では、平坦化層301が形成される。平坦化層301を形成する方法としては、感光性透明樹脂をスピンコート法、スリットコート法、インクジェット法等により塗布する方法などが挙げられる。この際、第2工程で接続部300を形成できるよう、平坦化層301には開口部を設けておく必要がある。平坦化層の膜厚は、通常100nm〜2μm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0095】
第2工程では、まず接続部300及び下部電極302が同時に形成される。これらを形成する方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。電極の膜厚は、通常50nm〜200nm程度であるが、これに限定されるものではない。その後、正孔輸送層303、発光層304、電子輸送層305、及び有機EL素子1の陰極である上部電極306が形成される。これらを形成する方法としては真空蒸着法や塗布法など、用いる材料及び積層構成に適切な方法を用いることができる。また、有機EL素子1の有機層の構成は、本実施例の記載に関わらず、その他正孔注入層や電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層など、公知の有機層を取捨選択して構成してもよい。
【0096】
5.封止工程
封止工程では、有機EL層Aが封止層400によって上部電極306の上から封止される。封止層400としては、ガラス、樹脂、セラミック、金属、金属化合物、又はこれらの複合体等で形成することができ、適時最適な材料を選択可能である。
【0097】
6.剥離工程
剥離工程では作製された有機EL素子1が支持材500から剥離される。剥離工程を実現する方法としては、例えば、物理的に支持材500から剥離する方法が挙げられる。この際、支持材500に剥離層を設けても良いし、支持材500と表示素子の間にワイヤを挿入して剥離しても良い。また、その他の方法としては支持材500の端部のみ剥離層を設けず、素子作製後端部より内側を切断して素子を取り出す方法、支持材500と素子の間にシリコン層等からなる層を設け、レーザー照射により剥離する方法、支持材500に対して熱を加え、支持材500と透明基板を分離する方法、支持材500を溶剤により除去する方法等が挙げられる。これらの方法は単独で用いてもよく、任意の複数の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
本実施形態にかかるディスプレイ用、光学用、又は照明用の素子の製造方法によって得られた有機EL素子は、一又は複数の実施形態において、透明性、耐熱性、低線膨張性、低光学異方性等に優れている。
【0099】
[表示装置、光学装置、照明装置]
本開示は、その態様において、本開示にかかるディスプレイ用素子、光学用素子、又は照明用素子を用いた表示装置、光学装置、又は照明装置に関し、また、それらの製造方法に関する。これらに限定されないが、前記表示装置としては、撮像素子などが挙げられ、光学装置としては、光/電気複合回路などが挙げられ、照明装置としては、TFT−LCD、OEL照明などが挙げられる。
【0100】
本発明はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0101】
<D1> <C1>から<C6>のいずれかに記載の積層複合材のポリマー層のガラスプレートと対向する面と反対の面上にディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子を形成する工程を含む、ディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子の製造方法。
<D2> さらに、形成されたディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子をガラスプレートから剥離する工程を含む、<D1>記載のディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子の製造方法。
<D3> <A1>から<A10>のいずれかに記載のポリマー溶液、又は、<B1>から<B5>のいずれかに記載のポリマーフィルムを使用して製造され、前記ポリマーフィルムを含む、ディスプレイ用素子、光学用素子、又は、照明用素子。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0103】
まず、本実施例中のフィルム特性の測定方法を記述する。
[破断エネルギー]
万能型引張り試験機 (オートグラフ AG-5kNX、株式会社島津製)を用いて、引張試験を実施し、測定結果から破断エネルギーを算出した。
測定条件は下記の通りである。
サンプルサイズ:幅5mm、長さ55mm、厚み0.01mm(短冊形状)
引張速度5mm/min
つかみ具間距離:25mm
[透過率]
分光光度計(V-670, 日本分光株式会社製)を用いて各波長の光透過率測定を実施した。なお、本実施例の数値は全光線透過率モードによって得られた数値を採用した。下記表1には、フィルムの厚みを10μm換算したときの波長400nmの光透過率を示した。
【0104】
[実施例1]
温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた500mL4つ口セパラブルフラスコで、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(PFMB:セイカ株式会社製、20.00g)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ヒドロキシビフェニル(DADHBP:1.50g)をジメチルアセトアミド(関東化学株式会社製、257.60g)に溶解した。この溶液に酸化プロピレン(和光純薬工業株式会社製、12.09g)を加えた後、窒素雰囲気下、0℃に冷却し、イソフタロイルクロリド(東京化成工業株式会社製、12.67g)、テレフタロイルクロリド(TPC:東京化成工業株式会社製、1.41g)を加えて4時間撹拌した後、ベンゾイルクロリド(東京化成工業株式会社製、0.02g)を加えてさらに1時間撹拌した。得られた反応溶液を大過剰のメタノールに投入し、析出した沈殿物をろ過により回収した。沈点物をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させることでポリマーを得た。得られたポリマーを、ブチルセロソルブとN,N−ジメチルアセトアミドの重量割合15:85の混合溶媒300gに溶解し、スピンコーターを用いて塗布し、オーブン中で330℃60分加熱処理を行うことでフィルムを作製した。得られたフィルムの特性(破断エネルギー、光透過率)について評価を実施した。
得られたフィルムの波長400nmにおける光透過率は84.1%、破断エネルギーは13.8MJ/m
3であった。
【0105】
[比較例1]
ジアミンとして2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルのみを使用した他は実施例1と同様にポリマー溶液及びポリマーフィルムを作成し、得られたフィルム特性について評価を実施した。
得られたフィルムの波長400nmにおける光透過率は82.2%、破断エネルギーは7.48MJ/m
3であった。
【0106】
実施例1及び比較例1の結果を下記表にまとめる。
【表1】
【0107】
上記表1に示すとおり、DADHBPを使用したポリマーのポリマー溶液(実施例1)は、比較例1と比較して、光透過性が向上し透明性が向上したポリマーフィルムを製造可能であることが分かる。さらに、DADHBPを使用したポリマーのポリマー溶液(実施例1)は、比較例1と比較して、破断エネルギーが向上しフィルムの靭性が向上したポリマーフィルムを製造可能であることが分かる。