(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6120118
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】パーマ用脱着式フィルムと、パーマ用脱着式フィルムを用いたパーマネント加工法
(51)【国際特許分類】
A45D 6/00 20060101AFI20170417BHJP
A45D 7/04 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
A45D6/00 Z
A45D7/04
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-171262(P2016-171262)
(22)【出願日】2016年8月16日
【審査請求日】2016年9月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516264831
【氏名又は名称】古久保 充哉
(72)【発明者】
【氏名】古久保 充哉
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−071804(JP,U)
【文献】
米国特許第03943946(US,A)
【文献】
特開2005−200348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00−31/00
A45D 42/00−97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーマ用のロット(2)に巻きつける、略四角形で非透水性のフィルム本体(11)と、その上辺(14)の左右につまみ部(12)を備え、上辺(14)の中央部に切り欠き(18)を有し、つまみ部(12)を持ち双方に外方向に引っ張ることで、フィルム本体(11)が、切り欠き(18)から裂けるようにしたことを特徴とするパーマ用脱着式フィルム。
【請求項2】
前記フィルム本体(11)の長さは、使用するロット(2)の外径の1周以上の長さであることを特徴とする請求項1記載のパーマ用脱着式フィルム。
【請求項3】
前記フィルム本体(11)の幅は、使用するロット(2)に毛髪(3)を巻きつけた際、毛髪(3)を覆うほどの幅をもたせたことを特徴とする請求項1又は2に記載のパーマ用脱着式フィルム。
【請求項4】
前記フィルム本体(11)に、切り欠き(18)から下辺(15)まで到達するフィルムの厚さを薄くした溝(13)を備えることで、裂け易いようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパーマ用脱着式フィルム。
【請求項5】
前記フィルム本体(11)は、フィルム本体の長さ方向に裂け易いようにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパーマ用脱着式フィルム。
【請求項6】
下記の工程からなる、請求項1から5のいずれかに記載のパーマ用脱着式フィルムを用いたパーマネント加工法。
(a)毛先部(34)から第1境界部(31)まで、第1の1剤(4)を付着させる。
(b)毛髪(3)を第1境界部(31)までロット(2)に巻き、フィルム本体(11)の上辺(14)が、第1境界部(31)に重なるようパーマ用脱着式フィルム(1)を装着する。
(c)第1境界部(31)まで巻き込んだ後、第1境界部(31)から第2境界部(32)まで第2の1剤(41)を塗布する。
(d)第2境界部(32)までパーマ用脱着式フィルム(1)を装着し、根元部(33)まで巻き込む。
(e)根元部(33)まで巻き込まれた毛束(3)に、第3の1剤(42)を塗布する。
(f)それぞれの箇所に適正な還元がなされた後、2枚のパーマ用脱着式フィルム(1)を外し、酸化2剤(43)を毛束(3)に塗布し、毛髪(3)全体に付着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーマを施術する際、ロットに毛束に巻きつけたパーマ用脱着式フィルムを、ロットに髪を巻きつけたままを外すことのできるパーマ用脱着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーマとは、円柱状のロットに毛髪を巻きつけ、その毛髪にパーマ剤を付着させ、毛髪内部のたんぱく質の配列を変えることで永続的に波形を形成させるものである。
大きさの異なる波形を形成するために用いられる手法としてロットの太さによって形成する方法と、1剤の還元力を調整し、均一な波形を形成しようとする方法とがある。
毛髪自体の形状を波形にするためには1剤もしくは1液と呼ばれる還元剤を毛髪に付着させ、毛髪内部のたんぱく質の結合を切断し、その状態のままブロム酸や過酸化水素などが配合された酸化剤2剤もしくは2液を塗布し、先に切断したたんぱく質を再結合させロットに巻かれた形状に変化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2005−20348公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛髪は頭皮から伸びるもので根元付近は新しく、毛先に行くほど古くなり髪の表面(キューティクル)や髪内部のたんぱく質がシャンプーやヘアカラーなどで損傷している場合が多く、パーマをかける際、使用する1剤の還元反応が根元、中間、毛先とそれぞれの箇所で異なり、求める波形を得られないといった問題点があった。現在の技術では毛髪の損傷度に合わせて還元力に差をつけた1剤をそれぞれの箇所に分けて付着させることで、その異なる還元反応を補っていた。又、他の方法として、先に損傷部分に1剤の還元力を弱めるためのトリートメント剤を付着させ、過度な還元反応を抑えることで波形を調節していた。しかし、始めに塗り分けた1剤やトリートメント剤が、ロットに巻かれることによって干渉し合い、求める結果になりにくかった。
【0005】
ロットを使用してパーマをかける場合、毛先から根元に向かって巻いていくとロット上で雪だるま式に毛髪が重なり合い、根元付近の円周は毛先で巻かれた円周より太くなる。たとえば円周が30mmのロットに長さ30cm、厚さ1mmの毛束を巻き付けた場合、1周するごとに1mmずつ毛髪の層が出来、根元付近まで巻き込まれた場合の円周はおよそ20mm太くなり均等な波形を作ることが困難だった。つまり、毛髪を複数箇所に分けて、波形を調節することができなかった。
【0006】
特許文献1にはパーマ用シート及びそのパーマ用シートを用いたパーマ方法が記載されている。しかし、この技術は毛髪の根元付近にパーマをかける技術であってシートの内側に巻かれた根元以外の毛髪にはパーマをかけることが出来ないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
使用するロット(2)の外径を1周以上する長さで、幅はロット(2)に巻かれた毛髪(3)を覆うほどの幅をもたせたパーマ用脱着式フィルム(1)で、ロット(2)にパーマ用脱着式フィルム(1)を、毛髪(3)と共に巻きつけた際、フィルム本体(11)の内側と外側に境界を作ることで、還元力を変えた1剤を、数箇所に分けて塗布した際、混ざりあわないよう付着させる事が出来る。
略四角形で非透水性のフィルム本体(11)は、その上辺(14)の左右につまみ部(12)を備え、上辺(14)の中央部に切り欠き(18)を有する。そのつまみ部(12)を持ち、双方に外方向に向け引っ張ることで、フィルム本体(11)が、切り欠き(18)から裂け、毛髪(3)をロット(2)に巻きつけたまま外すことで、酸化2剤(43)を髪全体に付着させることが出来る。
溝を有せず、縦に裂け易く延伸したフィルム等、裂け易さの方向が異なる異方性の素材を使用し、切り欠き(18)から下辺(15)まで、フィルム本体の長さ方向に裂け易いようにする構造でもよい。
【0008】
毛髪(3)の根元部(33)から毛先部(34)までを3箇所に分け、第1の1剤(4)第2の1剤(41)第3の1剤(42)を使用する場合、その第1境界部(31)第2境界部(32)に、前記パーマ用脱着式フィルム(1)を毛髪(3)と共に巻き込むことで、パーマ用脱着式フィルム(1)が境界壁となり、第1の1剤(4)第2の1剤(41)第3の1剤(42)をそれぞれの箇所に分けて付着させる事ができる請求項1のパーマ用脱着式フィルム(1)を使用したパーマの施術方法。
【発明の効果】
【0009】
通常、毛先部(34)から根元部(33)に向かって巻き込む場合、
図4(b)のように根元付近の波形の大きさに比べ、毛先付近は波形が小さくなるが、パーマ用脱着式フィルム(1)を使用した場合、
図4(a)のように根元部(33)から毛先部(34)まで同じ波形を作ることが出来る。
大きさの異なる波形を形成するために用いられる手法として、ロットの太さによって形成する方法と、1剤の還元力に差をつけ、異なる波形を形成する方法とがあり、その両方の利点を生かし波形を自由に形成することが可能となった。
また、毛髪の損傷度に合わせ還元力に差をつけて配合した第1の1剤(4)、第2の1剤(41)、第3の1剤(42)を、各箇所に分けて付着させ、パーマ用脱着式フィルム(1)によって境界壁をつくることで、今までにない的確な施術を行うことが出来る
【0010】
前記の発明が解決しようとする課題の中で、特許文献1では解決されていなかった毛髪をロットに巻いた状態で、パーマ用シートの内側に2剤を付着させることも可能となり、又、複雑な構造や技術を要するものでなく、より簡易な技術で波形を調整することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】パーマ用脱着式フィルムの構成 (a)引っ張る前 (b)左右に引っ張った状態
【
図2】パーマ用脱着式フィルムの使用方 (a)パーマ用脱着フィルム(イ)(ロ)を装着 (b)パーマ用脱着フィルム(ロ)を外す (c)パーマ用脱着フィルム(イ)を外す
【
図3】パーマ用脱着フィルムの全体使用図 (a)第1の1剤(4)を第1境界部(31)まで塗布 (b)第1境界部(31)までロット(2)に毛髪(3)を巻き、バーマ用脱着式フィルム(1)を装着 (c)第2の1剤(41)を第2境界部(32)まで塗布 (d)パーマ用脱着式フィルム(1)を装着 (e)第3の1剤(42)を塗布 (f)2枚のパーマ用脱着式フィルム(1)を外し、酸化2剤(43)を塗布
【
図4】パーマ用脱着フィルムの効果を表した図 (a)均等な波形図 (b)異なった波形図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、パーマ用脱着式フィルムの構成を示す。(a)は引っ張る前、(b)は左右に引っ張った状態である。
フィルム本体(11)の上辺(14)の左右に設置されたつまみ部(12)からなるパーマ用脱着式フィルム(1)で、つまみ部(12)は毛髪(3)をロット(2)に巻いた際、両側から指で摘めるよう突出させる。フィルム本体(11)の左辺(16)、右辺(17)の長さは、使用するロットの径の1周以上の長さをもたせ、上辺(14)、下辺(15)の幅は、使用するロット(2)より少し短く巻かれた毛髪が完全に覆いかぶさるほどの幅で、略四角形で非透水性のフィルム本体(11)と、上辺(14)の上部に、フィルム本体(11)の中央部に切り欠き(18)を有し、つまみ部(12)を持ち双方に外方向に引っ張ることで、フィルム本体(11)が、溝(13)に沿って、切り欠き(18)から裂けるようにしたことを特徴とするパーマ用脱着式フィルム。
【0013】
次に、
図2で本発明のパーマ用脱着フィルムの使用方法について説明する。
(a)は、2枚のパーマ用脱着フィルムを装着した状態、(b)は1枚目のパーマ用脱着フィルムを外した状態、(c)2枚目のパーマ用脱着フィルムを外した状態を示す。
【0014】
図3(a)から(f)で、本発明のパーマ用脱着式フィルムを用いたパーマのかけ方をしめす。
(a)毛髪診断にて長さや状態を確認し、形成させる波形の形状を決め、それに適合したロット(2)のサイズと毛髪(3)の状態に合わせた第1の1剤(4)第2の1剤(41)第3の1剤(42)を選定する。ここでは毛髪(3)に3連の波形を形成する方法を挙げる。S字状の波形を1つとし、毛髪(3)に3つの波形を形成しようとするとき、毛髪(3)のうち、毛先部(35)から3分の1ほどの所までを第1境界部(31)とし、第1の1剤(4)を第1境界部(31)から毛先部(34)まで付着させる。
(b)毛髪(3)を第1境界部(31)まで、ロット(2)に巻き込み、フィルム本体(11)の上辺(14)が、第1境界部(31)に重なるようパーマ用脱着式フィルム(1)を装着する。
(c)第1境界部(31)まで巻き込んだのち、毛髪(3)の毛先部(33)から3分の2ほどの所までを第2境界部(32)とし、第2の1剤(41)を塗布する。
(d)第2境界部(32)までパーマ用脱着式フィルム(1)を装着し、根元部(33)まで巻き込む。
(e)根元部(33)まで巻き込まれた毛束(3)に第3の1剤(42)を塗布する。
(f)それぞれの箇所に適正な還元がなされた後、パーマ用脱着式フィルム(1)を外し、ロット(2)に巻きつけた状態で、毛束(3)全体に酸化2剤(43)を塗布し付着させる。
【0015】
以上のように、パーマ用脱着式フィルム(1)を使用することで前記の問題点を解決できる。本発明は毛髪(3)に均一な波形を形成できるよう毛髪(3)に第1,2境界部(31)(32)を設け、各境界部にロット(2)を1周以上、パーマ用脱着式フィルム(1)を巻き込むことで境界壁ができ、第1から第3までの1剤(4)(41)(42)が干渉し合うことなく、それぞれの箇所で適正な還元がなされ、さらに2浴式パーマ剤で必要な酸化2剤(43)を付着させる時、ロット(2)に毛髪(3)を巻き付けたままパーマ用脱着式フィルム(1)のみを外し、毛髪(3)全体に酸化2剤(43)を付着させることが出来る。それによって、いままで困難であった、均一な波形を形成することが可能となる。
【0016】
本発明のパーマ用脱着式フィルム(1)を使用することにより、毛髪(3)の損傷に応じて還元力を調整した第1から、第3までの1剤(4)(41)(42)を毛髪(3)に付着させ、フィルム本体(11)で境界壁を作ることにより、薬剤の干渉を防ぐと共に、酸化2剤(43)を毛束(3)全体に付着させる際、パーマ用脱着式フィルム(1)をロット(2)から外し、毛束(3)全体に酸化2剤(43)を付着させることが出来る。それにより毛先部(34)から根元部(33)まで均一な波形を形成することが出来る。
【0017】
第1の1剤(4)、第2の1剤(41)、第3の1剤(42)の配合の違いは一つに還元力の差である。そうする事によって毛髪(3)の各箇所に起きた損傷の度合いに応じた波形を形成することが出来る。また、すでに波形が形成されている箇所には還元力を持たない薬剤を付着させ、不要な還元を起こさないようにする事も出来る。
溝(13)を有せず、縦に裂け易く延伸したフィルム等、
裂け易さの方向が異なる異方性の素材を使用し、切り欠き(18)から下辺(15)まで、フィルム本体の長さ方向に裂け易いようにする構造でもよい。
パーマ用脱着式フィルム(1)は2種類以上の1剤を使用する場合に、有効で境界部の箇所に合わせて、複数使用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 パーマ用脱着フィルム
11 フィルム本体
12 つまみ部
13 溝
14 上辺
15 下辺
16 左辺
17 右辺
18 切り欠き
イ パーマ用脱着式フィルム
ロ パーマ用脱着式フィルム
2 ロット
3 毛髪
31 第1境界部
32 第2境界部
33 根元部
34 毛先部
35 頭皮
4 第1の1剤
41 第2の1剤
42 第3の1剤
43 酸化2剤
【要約】
【課題】 毛髪にパーマをかける際、従来の技術では、困難であった均一な波形を形成することができるパーマ用脱着式フィルムとパーマ用脱着式フィルムの使用法を提供する。
【解決手段】パーマ用のロット(2)に巻きつける、略四角形で非透水性のフィルム本体(11)と、その上辺(14)の左右につまみ部(12)を備え、上辺(14)の中央部に切り欠き(18)を有し、つまみ部(12)を持ち双方に外方向に引っ張ることで、フィルム本体(11)が、切り欠き(18)から裂けるようにしたことを特徴とするパーマ用脱着式フィルム。
【選択図】
図1