【実施例】
【0016】
以下に本発明の一実施例を
図1から
図3に示す。
図1は本発明の一実施例による熱交換器を構成するプレートの平面図、
図2は
図1に示すX−X線断面図である。
本実施例によるプレート10は、ステンレス鋼やチタニウムなどの耐食性金属で構成され、例えば板厚0.5mmから1.0mmの薄板で成形されている。プレート10の表面は、凹凸の波形パターンやシール用ガスケットの溝がプレス成形される。
プレート10の少なくとも一方のプレート面11に、複数の発熱体20を設けている。
図2に示すように、本実施例では、プレート10の他方のプレート面12には、発熱体20を設けていない。
【0017】
発熱体20の両端には、電極端子20a、20bが形成され、一方の電極端子20aは電極21aに接続され、他方の電極端子20bは電極21bに接続されている。
それぞれの発熱体20は、全て電極端子20a、20b間の長さと幅が同じ(同一面積)で平板状に形成され、全ての発熱体20は、電極21a、21bによって電気的に並列に接続されている。
発熱体20及び電極端子20a、20bは、耐熱絶縁樹脂からなる保護フィルム22で覆われている。全ての発熱体20は、この保護フィルム22で覆われている。
【0018】
プレート10には、一端に液体を導入する導入口13を、他端に加熱後の液体又は蒸気を導出する導出口14を形成している。
また、プレート10には、2つの連結孔15、16を、プレート10の一端と他端にそれぞれ形成している。
一方の連結孔15には一方の電極コネクタ23aを、他方の連結孔16には他方の電極コネクタ23bを設けている。一方の電極21aは一方の電極コネクタ23aに接続され、他方の電極21bは他方の電極コネクタ23bに接続されている。
プレート10の一方のプレート面11には、他のプレート10を重ね合わせることで、一つの気体通路17が形成され、この気体通路17は、発熱体20周囲空間と2つの連結孔15、16とを連通している。
プレート10の他方のプレート面12には、他のプレート10を重ね合わせることで、一つの流路18が形成され、この流路18は、導入口13と導出口14とを連通している。
【0019】
図1では、1枚のプレート10だけを示しているが、複数のプレート10を積層して熱交換器を構成する。プレート10の周辺は、合成ゴムのガスケットでシールされ、熱交換器は、ガスケットでシールされたプレート10を、必要枚数ガイドバーに懸垂させ、鋼板製の固定フレームと移動フレームの間に重ね合わせてボルトで締め付けて構成される。
【0020】
発熱体20は、金属箔に半導体膜をコーティングしたものからなり、金属箔にはステンレス、半導体膜には、ニッケル、インジウム、及びチタンを配合したニッケル基合金を用いることができる。ニッケル、インジウム、及びチタンを配合したニッケル基合金では、インジウム/ニッケルの質量比を0.001〜0.2、チタン/ニッケルの質量比を0.03〜0.3とする。半導体膜のコーティングは、蒸着やスパッタリングで行うことができる。
【0021】
金属箔として、厚さ30μm、長さ1000mm、幅10mmのステンレス基板を用いた。このステンレス基板にニッケル基合金をコーティングした面状発熱体と、ステンレス基板のみの発熱体との、12vの入力電圧に対するそれぞれの表面温度を計測した。その結果、ステンレス基板のみの発熱体では51℃であるのに対して、ステンレス基板にニッケル基合金をコーティングした面状発熱体は128℃となった。
このように、基板であるステンレス基材の表面に半導体膜をコーティングした面状発熱体では、ステンレス基板の抵抗熱と半導体膜内の電子の移動による熱及び輻射熱との相乗効果で発熱する。すなわち、ステンレス基板自体の抵抗熱に加えて、ステンレス基板が発したエネルギーを半導体膜が受けることで発熱する。
【0022】
1mmの幅、300mmの長さ、30μmの厚さの面状発熱体について、1mmの径、300mmの長さの棒状ニクロム線を比較例として電力比較を行った。
比較例としてのニクロム線では、表面温度を340℃とするために、電圧10v、電流10.4A、104wの電力が必要であるのに対して、面状発熱体では、電圧28v、電流2.1A、58.8wの電力となった。
本実施例による発熱体20は、長さ330mm、幅10mm、厚さ20μmのものを用い、入力電圧20vとした。この発熱体20では、入力電圧20vにおいて、発熱温度は240℃である。
【0023】
発熱体20の特性を
図3及び
図4に示す。
図3は、発熱体の面積と入力電圧とを変えたときの発熱温度の測定結果であり、
図4は
図3の結果による特性を示すグラフである。
実験によれば、長さ300mm、幅5mmの場合、電圧15Vを印加すると、1.08Aの電流が流れ、発熱温度は170℃となり、長さ300mm、幅5mmの場合、電圧20Vを印加すると、1.46Aの電流が流れ、発熱温度は200℃となり、長さ1000mm、幅5mmの場合、電圧20Vを印加すると、1.63Aの電流が流れ、発熱温度は140℃となり、長さ1000mm、幅8mmの場合、電圧20Vを印加すると、2.29Aの電流が流れ、発熱温度は240℃となり、長さ1000mm、幅10mmの場合、電圧20Vを印加すると、3.01Aの電流が流れ、発熱温度は270℃となり、長さ1000mm、幅5mmの場合、電圧50Vを印加すると、3.93Aの電流が流れ、発熱温度は428℃となり、長さ1000mm、幅8mmの場合、電圧50Vを印加すると、5.68Aの電流が流れ、発熱温度は673℃となり、長さ1000mm、幅10mmの場合、電圧50Vを印加すると、7.18Aの電流が流れ、発熱温度は700℃となり、長さ1000mm、幅5mmの場合、電圧100Vを印加すると、7.8Aの電流が流れ、発熱温度は800℃となり、長さ1000mm、幅8mmの場合、電圧100Vを印加すると、11.2Aの電流が流れ、発熱温度は1200℃となり、長さ1000mm、幅10mmの場合、電圧100Vを印加すると、14.2Aの電流が流れ、発熱温度は1400℃となり、長さ2000mm、幅5mmの場合、電圧100Vを印加すると、4.17Aの電流が流れ、発熱温度は407℃となり、長さ2000mm、幅8mmの場合、電圧100Vを印加すると、6.05Aの電流が流れ、発熱温度は630℃となり、長さ2000mm、幅10mmの場合、電圧100Vを印加すると、7.3Aの電流が流れ、発熱温度は720℃となった。
【0024】
発熱体20は、長さ(電極端子20a、20b間の寸法)が同じであれば幅(長さ方向に垂直な方向の寸法)が広い方が高い発熱温度となり、幅が同じであれば長さが短い方が高い発熱温度となっている。また、長さと幅の比率が同じであれば、面積が小さいほど小さい入力電圧で同じ発熱温度を得ることができる。
【0025】
しかし、発熱体20の耐久性を考えると4mm以上の幅とすることが好ましく、更には8mm以上が更に好ましい。
また、小さい入力電圧で高い発熱温度を得るためには、発熱体20の長さを300mmから2000mm、幅を15mm以下の幅とすることが好ましい。
入力電圧は5vから100v、更には5vから50vが適している。商用電源を用いる場合には変圧器を用いて5v、20v、又は50vに変圧して用いる。
なお、発熱体20の長さを300mmから1000mm、幅を5mmから10mmとすることで、20vの電圧で発熱体20の発熱温度を140℃から270℃とすることができる。
また、発熱体20の長さを1000mm、幅を5mmから10mmとすることで、50vの電圧で発熱体20の発熱温度を428℃から700℃とすることができる。
また、発熱体20の長さを1000mmから2000mm、幅を5mmから10mmとすることで、100vの電圧で発熱体20の発熱温度を407℃から720℃とすることができる。
【0026】
以上のように、全ての発熱体20を、それぞれ、同一幅で同一長さとすることで、全ての発熱体20の発熱温度を同じとすることができ、流体を所定の温度に加熱し、又は蒸気を発生させることができる。
蒸気発生には、発熱体20の発熱温度を100℃から1400℃とすることが好ましい。
【0027】
熱交換器の全体構成を
図5に示す。
図5は、熱交換器の主要部材を示す分解斜視図である。なお、
図5に示すプレート10では、発熱体20を傾斜させて配置している。
図5に示すように、複数のプレート10を積層し、一方の端部には前端板30を、他方の端部には後端板40を配置する。
前端板30には、プレート10の導入口13に対応する位置に導入口33を、プレート10の導出口14に対応する位置に導入口34を、プレート10の連結孔15、16に対応する位置に連結孔35、36を形成している。
後端板40には、このような孔は形成しておらず、後端板40は、最後端に位置するプレート10の他方のプレート面12を閉塞する。
【0028】
前端板30と後端板40との間には、発熱体20を一方のプレート面11に設ける第1プレート10Aと、発熱体20を設けない第2プレート10Bとを交互に積層している。
流路18は、第1プレート10Aの他方のプレート面12と第2プレート10Bの一方のプレート面11との間に形成される。
流路18は、第2プレート10Bの他方のプレート面12と第1プレート10Aの一方のプレート面11との間には形成しない。第2プレート10Bの他方のプレート面12と第1プレート10Aの一方のプレート面11との間には、気体通路17が形成される。
【0029】
例えば水などの液体は、前端板30の導入口33から導入され、第1プレート10Aの導入口13、第2プレート10Bの導入口13に導かれる。
そして、導入口13に導かれた液体は、第1プレート10Aの他方のプレート面12と第2プレート10Bの一方のプレート面11との間に形成される流路18に導入される(図中矢印A)。
流路18に導入された液体は、発熱体20によって加熱されたプレート10から加熱されて高温水、又は蒸気となる。
流路18に導入された液体は、高温水、又は蒸気となった後に、導出口14に導かれ、前端板30の導出口34から導出される。
【0030】
一方、前端板30の連結孔35は、プレート10の連結孔15と連通し、前端板30の連結孔36は、プレート10の連結孔16と連通し、連結孔15と連結孔16とは気体通路17と連通している。
従って、発熱体20の発熱により熱交換器の温度が上昇すると、気体通路17には上昇気流が発生し、前端板30の連結孔36からプレート10の連結孔16に空気が導入され、プレート10の連結孔15を経由して前端板30の連結孔35から空気が導出される。
このように、気体通路17に空気が流れることで、プレート10が熱を受けるため、熱効率が高まる。
【0031】
このように、流路18を、発熱体20を設けたプレート面11には形成せず、発熱体20を設けていないプレート面12に形成し、流体への加熱はプレート10を介して行うことで、流体が発熱体20に直接接触せず、高い発熱温度であっても蒸気爆発を生じることなく、蒸気を発生できる。
また、本実施例による熱交換器は、蒸気発生装置以外に、発熱体20での発熱温度を所定値に維持することで、殺菌装置、保温装置、又は加熱装置として用いることができる。
【0032】
以上のように本実施例によれば、発熱体20を並列に接続することで、発熱体20の長さを調整して所定の発熱温度を得ることができ、また熱交換量を増やすためには発熱体20の数を増やすか、プレート10の枚数を増やすことで対応できる。
また、発熱体20を発電しない状態で、第2プレート10Bの他方のプレート面12と第1プレート10Aの一方のプレート面11との間に低温気体を流すことで、熱交換器に冷却機能を持たせることもできる。
ここで低温気体は、フロン、代替フロン、自然冷媒(二酸化炭素)などの冷媒を用いることができ、圧縮機、放熱器、減圧器、及び蒸発器からなる冷凍サイクルを用い、本実施例における熱交換器を、冷凍サイクルの蒸発器として用いることで、低温気体を得ることができる。また、冷凍サイクルにおける蒸発器で冷媒と熱交換した二次熱媒体を本実施例における熱交換器の低温気体として用いることができる。