(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120139
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】鉛フリーはんだ用フラックス、鉛フリーソルダペーストおよび鉛フリー糸はんだ
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20170417BHJP
B23K 35/14 20060101ALI20170417BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20170417BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20170417BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20170417BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/14 B
!B23K35/26 310A
!C22C13/00
!C22C13/02
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-9493(P2013-9493)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2013-173184(P2013-173184A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-11858(P2012-11858)
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小田 剛
(72)【発明者】
【氏名】久保 夏希
(72)【発明者】
【氏名】石賀 史男
【審査官】
市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−230426(JP,A)
【文献】
特開2009−178752(JP,A)
【文献】
特開平04−200992(JP,A)
【文献】
特開平06−055258(JP,A)
【文献】
特開昭56−141997(JP,A)
【文献】
特開2003−275892(JP,A)
【文献】
特開2008−110392(JP,A)
【文献】
特開昭62−137192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8〜36の不飽和脂肪酸の二量化物と炭素数が1〜20のモノアルコールとのエステル化合物であるダイマー酸ジアルキルエステル(A)、ロジン類(B)、活性剤(C)、チキソトロピック剤(D)、フラックス用溶剤(E)、及び酸化防止剤(F)を含有する鉛フリーはんだ用フラックスであって、前記(A)成分〜(F)成分の含有量が下記の割合である鉛フリーはんだ用フラックス。
(A)成分:2〜30質量%、(B)成分:30〜70質量%、(C)成分:0.5〜10質量%、(D)成分:0〜20質量%、(E)成分:0〜50質量%、(F)成分:0〜5質量%。
【請求項2】
(B)成分がα,β−不飽和カルボン酸とロジン類とから得られるディールスアルダー反応物である、請求項1のフラックス。
【請求項3】
(C)成分が脂肪族二塩基酸類、ブロモアルコール類およびブロモジカルボン酸類なる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2のフラックス。
【請求項4】
(D)成分がポリアミド系チキソトロピック剤及び/又は動植物系チキソトロピック剤である請求項1〜3のいずれかのフラックス。
【請求項5】
(E)成分がエーテル系アルコール類である請求項1〜4のいずれかのフラックス。
【請求項6】
(F)成分がヒンダードフェノール系酸化防止剤である請求項1〜5のいずれかのフラックス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかのフラックスと鉛フリーはんだ粉末を含有する鉛フリーはんだペースト。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかのフラックスを用いて得られる鉛フリー糸はんだ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛フリーはんだ用フラックス、鉛フリーソルダペーストおよび鉛フリー糸はんだ
【背景技術】
【0002】
はんだ付用のフラックスは、例えばICやコンデンサ、抵抗器等の電子部品をプリント基板等に表面実装する際に用いる材料であり、ロジン類をベース材としたものが一般的に使用されている。これは、ロジン類が適度な活性を有しており、フラックスの粘度を調整し易いなどの理由による。
【0003】
フラックスは、電極に直接塗布する場合もあれば、糸はんだのコア材として、或いははんだ合金粉末と混合しソルダペーストとして使用される場合もある。例えばソルダペーストは通常、プリント基板の電極上にスクリーン印刷やディスペンサー等によって供給され、その上に電子部品を載置し、当該基板をはんだ金属の融点以上に加熱することによって、電子部品と電極が接合される。
【0004】
ところで、従前主流であった鉛共晶はんだ合金と比較して、現在主流の錫−銀系や錫−亜鉛系の鉛フリーはんだ合金は融点が高く酸化し易いため、フラックスを原料とする鉛フリーソルダペーストには、はんだ付時に電子部品と電極の鉛フリーはんだ合金が電極上で十分に濡れ広がらない問題がある。
【0005】
また、電子部品と電極の接合部は、はんだ付後に生ずるフラックス残渣で覆うことによりその後の酸化を防止できるが、ベース材であるロジン類や他の成分(硬化剤等)の種類によっては残渣に大小のクラックが生じることがある。しかし、こうしたクラックに水分が付着すると、例えば金属イオン等の電解質が移動する所謂マイグレーション現象が生じ、実装基板の信頼性が損なわれてしまう。そのため、クラックを有するフラックス残渣は通常、洗浄剤によって除去しなければならないが、製品の高コスト化を招く。
【0006】
フラックス残渣の耐クラック性を向上させたフラックスとしては、アビエチン酸型樹脂酸の含有量が所定の範囲に調整したロジン類(水添ロジン、不均化ロジン等)をベース材として用いたものが知られているが(特許文献1参照)、クラックの低減効果は十分でなく、濡れ性にも劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−62239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、鉛フリーはんだ合金の濡れ性を良くし、かつフラックス残渣にクラックを生じ難いフラックス組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、所定の添加剤を配合したフラックスにより前記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、ダイマー酸ジアルキルエステル(A)を含有する鉛フリーはんだ用フラックス(以下、単にフラックスという)、当該フラックスと鉛フリーはんだ粉末を含有する鉛フリーはんだペースト、および当該フラックスを用いて得られる鉛フリー糸はんだに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフラックスによれば、はんだ付時における鉛フリーはんだ金属の十分な濡れ性を確保できる。また、フラックス残渣にクラックが生じ難いため、実装基板の信頼性を確保できる。このクラック低減効果は、フラックス原料として残渣にクラックを生じさせ易い材料(ベース材、硬化剤等)を使用した際に特に顕著である。また、このフラックス残渣は適度に柔かいため、はんだ接合部にピンを接触させ導電性を確認するための試験(ピンコタクト試験)の実施が容易になる。また、このフラックスは残渣を洗浄除去する必要が特に無いため、特に無洗浄タイプの実装基板に適している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフラックスに添加するダイマー酸ジアルキルエステル(A)(以下、(A)成分という)は、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。(A)成分は、具体的には、ダイマー酸(a1)(以下、(a1)成分という)とモノアルコール(a2)(以下、(a2)成分という)とから得られるエステル化合物である。(A)成分の製造法は特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。
【0013】
(a1)成分は、不飽和脂肪酸の二量化物であり、該不飽和脂肪酸としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、炭素数8〜36程度の不飽和脂肪酸として、例えばリノレン酸やトール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等が好適である。また、(a2)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができ、アルキル基の炭素数が通常1〜20程度、好ましくは2〜10の直鎖状、分岐状または環状のモノアルコールが好適である。
【0014】
(A)成分の物性は特に限定されないが、通常は常温で液状であり、また酸価が通常1以下である。また、(A)成分の市販品としては、例えばKAK DAPIP−R(高級アルコール工業(株)製)や、EMERY2900(ヘンケル(株)製)、EMERY2905(ヘンケル(株)社製)、ハリダイマー200(ハリマ化成(株)製)、ハリダイマー500(ハリマ化成(株)製)などを例示できる。
【0015】
本発明のフラックスには更にロジン類(B)(以下、(B)成分という)、活性剤(C)(以下、(C)成分という)、チキソトロピック剤(D)(以下、(D)成分という)、フラックス用溶剤(E)(以下、(E)成分という)、及び酸化防止剤(F)(以下、(F)成分という)を含めることができる。
【0016】
(B)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えばガムロジンやウッドロジン等のロジン類;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等)とロジン類とから得られるディールスアルダー反応物やその水素化物、重合ロジンやその水素化物、ロジン類の水素化物(水添ロジン)、ロジン類の不均化物(不均化ロジン)等の変性ロジン類;該ロジン類や変性ロジン類と、グリセリンやペンタエリスリトール等のポリオールとから得られるロジンエステル等を例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも前記ディールスアルダー反応物やその水素化物は、分子内に複数のカルボキシル基を有しており、濡れ性等のフラックス性能に優れるため好ましい。なお、該ディールスアルダー反応物やその水素化物はフラックス残渣にクラックを生じさせ易いが、本発明のフラックスには前記(A)成分が含まれているため、クラックが生じ難い。
【0017】
(C)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、セバシン酸、ドデカン2酸、ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の飽和又は不飽和の脂肪族二塩基酸類;trans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオールやcis−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール等のブロモアルコール類;3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモ吉草酸、5−ブロモ−n−吉草酸、2−ブロモイソ吉草酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモコハク酸、2,2−ジブロモアジピン酸等のブロモジカルボン酸類;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和又は不飽和の脂肪族一塩基酸類;ベンゾイル安息香酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ピコリン酸、フランカルボン酸等の芳香環又は複素環を有する一塩基酸類;ジブロモサリチル酸等のブロモヒドロキシカルボン酸類;エチルアミン臭素酸塩やジエチルアミン臭素酸塩、ジエチルアミン塩化水素酸塩、メチルアミン臭素酸塩等のアミン系ブロモ化合物;1−ブロモ−3−メチル−1−ブテンや1,4−ジブロモブテン、1−ブロモ−1−プロペン、2,3−ジブロモプロペン、1,2−ジブロモ−1−フェニルエタン、1,2−ジブロモスチレン、4−ステアロイルオキシベンジルブロマイド、4−ステアリルオキシベンジルブロマイド、4−ステアリルベンジルブロマイド、4−ブロモメチルベンジルステアレート、4−ステアロイルアミノベンジルブロマイド、2,4−ビスブロモメチルべンジルステアレート、4−パルミトイルオキシベンジルブロマイド、4−ミリストイルオキシベンジルブロマイド、4−ラウロイルオキシべンジルブロマイド、4−ウンデカノイルオキシベンジルブロマイド等の活性水素非含有ブロモ化合物;ステアリルアミンやジステアリルアミン、ジブチルアミン等のハロゲン原子非含有アミン類などを例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。(C)成分としては、主に濡れ性の観点より前記脂肪族二塩基酸類、ブロモアルコール類およびブロモジカルボン酸類なる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0018】
(D)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、主に鉛フリーソルダペーストの印刷適性の点より、特にポリアミド系チキソトロピック剤及び/又は動植物系チキソトロピック剤が好ましい。ポリアミド系チキソトロピック剤としてはステアリン酸アミドや12−ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が、また、動植物系チキソトロピック剤成分としては硬化ひまし油や蜜ロウ、カルナバワックス等を例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
(E)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、ブチルカルビトールやヘキシルジグリコール、ヘキシルカルビトール等のエーテル系アルコール類;エタノールやn−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等の低級アルコール類;酢酸イソプロピルやプロピオン酸エチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル等のエステル類;n−ヘキサンやドデカン、テトラデセン等の炭化水素類などを例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、鉛フリーソルダペーストの粘度安定性や印刷性等の点より、高沸点溶剤であるエーテル系アルコール類が好ましい。
【0020】
(F)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えばペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンアミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンのヒンダードフェノール系酸化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチル−フェノール、スチレネートフェノール、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等の他のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファエト、トリス(トリデシル)フォスファイト等のリン系酸化防止剤;系酸化防止剤としてジラウリルチオジプロピオネート、ジラウリルサルファイド、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ラウリルステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤などを例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、濡れ性やフラックス残渣の色調等の点よりヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。フラックス残渣の色調がよいとはんだ接合部の目視検品(濡れ広がりの確認等)が容易になる。
【0021】
本発明のフラックスにおける(A)成分〜(F)成分の含有量は特に限定されないが、通常は以下の通りである。
(A)成分:通常2〜30
質量%程度、好ましくは5〜20
質量%
(B)成分:通常30〜70
質量%程度、好ましくは35〜60
質量%
(C)成分:通常0.5〜10
質量%程度、好ましくは3〜7
質量%
(D)成分:通常0〜20
質量%程度、好ましくは5〜10
質量%
(E)成分:通常0〜50
質量%程度、好ましくは20〜40
質量%
(F)成分:通常0〜5
質量%程度、好ましくは0.5〜2
質量%
【0022】
本発明のフラックスは、そのままでもポストフラックス、ディップはんだ付用のフラックス等として利用できる。また、各種の鉛フリーはんだ合金粉末と混合し、鉛フリーソルダペーストとしても利用できる他、各種糸はんだ用途にも供することができる。
【0023】
本発明の鉛フリーソルダペーストは、本発明のフラックスと鉛フリーはんだ合金粉末との使用量は特に限定されないが、通常、前者が5〜30
質量%程度、後者が70〜95
質量%程度である。鉛フリーはんだ合金粉末としては、鉛を含有しないものであれば各種公知のものを特に制限なく使用できるが、Snをベースとする鉛フリーはんだ粉末、例えばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Zn系の鉛フリーはんだ粉末が好ましい。また、鉛フリーはんだ粉末は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、In、Ni、P、Pt、Sb、Znの1種又は2種以上の元素がドープされたものであってよい。鉛フリーはんだ粉末の具体例としては、Sn95Sb5、Sn99.3Cu0.7、Sn97Cu3、Sn92Cu6Ag2、Sn99Cu0.7Ag0.3、Sn95Cu4Ag1、Sn97Ag3、Sn96.3Ag3.7等を例示できる。また、鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は特に限定されないが、通常は1〜50μm程度、好ましくは15〜40μmである。また、粉末の形状も特に限定されず、球形や不定形であってもよい。なお、球形とは、好ましくは、粉末の縦横のアスペクト比が1.2以内であることを意味する。
【0024】
本発明の鉛フリー糸はんだは、本発明のフラックスを用いて得られるものである。具体的には、前記した鉛フリーはんだ合金粉末と同様の組成からなる糸はんだ母材に本発明のフラックスを組み合わせたものである。組み合わせの態様は特に限定されず、糸はんだ母材に本発明のフラックス塗布したり、その長さ方向に沿って当該フラックスを配置したりすることができる。また、配置の態様としては、例えば、筒状の糸はんだ母材の中心(コア)に組み込んだり、糸はんだ母材の表面に長さ方向に沿って設けた凹部に組み込んだりするパターンが挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「%」及び「部」は特に断りのない限り「
質量%」、「重量部」を意味する。
【0026】
<フラックスの調製>
実施例1
市販のダイマー酸ジアルキルエステル(商品名「KAK DAPIP−R」、高級アルコール工業(株)製、ジリノール酸のジイソプロピルエステル)を5部、アクリル化ロジン水素化物(商品名「KE−604」、荒川化学工業(株)製)を40部、グルタル酸(GA)を3部、trans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール(DBBD)を1.5部、ポリアミド系チキソトロピック剤(商品名「MA−WAX−O」、川研ファインケミカル(株)社製)を5部、ヘキシルジグリコール(HeDG)を45部、及び酸化防止剤(商品名「Irganox1010」、チバ・ジャパン(株)製)を5部、加熱下に良く混合し、フラックスを調製した。
【0027】
実施例2〜6、比較例1〜4
実施例1の原料を表1、表2に示す部数で加熱下に良く混合し、フラックスを調製した。
【0028】
<フラックス残渣のクラック有無の確認:糸はんだ態様>
市販の鉛フリー糸はんだ合金(96.5Sn/3Ag/0.5Cu、商品名「FLF 01−1.6−W」、松尾はんだ(株)製、直径1.6mm、フラックスは組み込まれていない。)を0.2g計りとり、円状に丸めて銅板上に載置し、その内側に実施例1のフラックスを0.05g塗布し、該銅板を270℃で30秒間加熱した。その後該銅板を室温まで急冷し、濡れ広がったはんだ合金を覆っているフラックス残渣膜のクラックの程度を以下の基準で目視判断した。また、実施例2〜4及び比較例1のフラックスについても同様にクラックの程度を目視判断した。なお、実施例2〜6、比較例1〜4のフラックスはいずれも、はんだ合金の濡れ性が良好であった(表1および2中、○で示す)。
【0029】
(クラックの程度)
◎:フラックス残渣膜にはクラックが全く生じていない
○:フラックス残渣膜にはクラックがほぼ生じていない
×:フラックス残渣膜に無数のクラックが生じている
【0030】
<フラックス残渣のクラック有無の確認:ソルダペースト態様>
市販の鉛フリーはんだ合金粉末(96.5Sn/3Ag/0.5Cu、三井金属(株)製、粒径20〜38μm、通常品)を89g、実施例1のフラックスを順に89
質量%および11
質量%となるようソフナーにて混練し、ソルダペーストを調製した。次いでこのソルダペーストを銅板上に0.4g、直径5mm程度のドーム状となるように載せ、270℃で30秒加熱溶融させた。次いで、濡れ広がったはんだ合金を覆っているフラックス残渣膜のクラックの程度を前記した基準において目視判断した。また、実施例2〜4及び比較例1のフラックスについても同様にクラックの程度を目視判断した。なお、実施例2〜6、比較例1〜4のフラックスはいずれも、はんだ合金の濡れ性が良好であった(表1および2中、○で示す)。
【0031】
【表1】
【0032】
*1・・・市販のダイマー酸ジアルキルエステル(ヘンケル社製):不飽和脂肪酸(炭素数18)の二量体の2−エチルヘキシルジエステル
*2・・・市販のダイマー酸ジアルキルエステル(ヘンケル社製):不飽和脂肪酸(炭素数36)の二量体の2−エチルヘキシルジエステル
【0033】
【表2】
【0034】
*3・・・セバシン酸モノメチル(豊国製油(株)社製)
*4・・・グルタル酸モノエチル(東京化成工業(株)社製)