特許第6120140号(P6120140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120140
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   A61N1/32
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-16996(P2013-16996)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147460(P2014-147460A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (展示会名) ホスペックスジャパン2012 (開催日) 平成24年11月14日〜11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有
(72)【発明者】
【氏名】永山 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】下山 賢士
(72)【発明者】
【氏名】都築 常明
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−119310(JP,A)
【文献】 特開2004−229972(JP,A)
【文献】 特開2011−188926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数組の導子に電気刺激の出力を供給する出力回路と、
出力調節を行うチャンネルを選択するチャンネル選択手段と、
チャンネル選択解除手段と、
を備えると共に、
前記出力回路の出力を調節する出力調節器が1個設けられ、
前記出力調節器は、前記出力回路からの前記出力の開始前に前記チャンネル選択手段で選択されたチャンネルに接続された導子の出力を同時調節することが可能であって、
前記出力の開始または調節後、新たなチャンネルの選択が検出されると、当該チャンネルをチャンネル選択状態に移行すると共に、前記チャンネル選択解除手段は、前記出力の開始または調節が行われたチャンネルのチャンネル選択を解除する機能を有する、
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
複数組の導子に電気刺激の出力を供給する出力回路と、
出力調節を行うチャンネルを選択するチャンネル選択手段と、
チャンネル選択解除手段と、
を備えると共に、
前記出力回路の出力を調節する出力調節器が1個設けられ、
前記出力調節器は、前記出力回路からの前記出力の開始前に前記チャンネル選択手段で選択されたチャンネルに接続された導子の出力を同時調節することが可能であって、
前記チャンネル選択解除手段は、前記出力の開始または調節後、スイッチ操作を行うか一定時間経過すると、前記チャンネルの出力状態を保持したまま前記チャンネルの選択を解除する機能を有する、
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項3】
前記複数のチャンネルのうち、どのチャンネルを組み合わせるかを確定するグループ確定手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記グループ確定手段は、前記出力の開始または調節後、スイッチ操作を行うか一定時間経過すると、前記チャンネルの組み合わせを確定する、
ことを特徴とする請求項に記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記グループ確定手段によりチャンネルの組み合わせが確定された後、当該グループに含まれないチャンネルが新たに選択されて当該チャンネルの選択が解除されるまでの間、前記組み合わせが確定されたグループ内のチャンネルを前記チャンネル選択手段により選択することができないようにした、
ことを特徴とする請求項またはに記載の電気刺激装置。
【請求項6】
チャンネル選択表示手段および/またはグループ表示手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項7】
治療モード選択手段が設けられる、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項8】
前記治療モード選択手段により、低周波治療、中周波治療、および干渉波治療のいずれか2つ以上のモードを選択することが可能である、
ことを特徴とする請求項に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に対し電気刺激電流を付与して治療を行なう電気刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電気刺激装置には各種ある。特許文献1には、連動/独立モード切換手段と、出力調整用駆動手段と、目標出力設定部と、連動モード時に複数の出力が目標出力に合うように出力調整駆動手段を駆動する駆動手段制御部と、連動モード終了条件が満足されると自動的に独立モードに復帰させる復帰手段を備えた電気刺激装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、治療開始時に、各出力部の出力を適切な強さに設定して各出力部の出力を検出し、刺激中の各出力部の出力の強さの比が、治療開始時に得た各出力部の出力の強さの比と同じになるように、制御部で前記各出力部を制御する電気刺激装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−325487号公報
【特許文献2】特開2005−168642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の電気刺激装置においては、以下の「操作性」「安全性」「省スペース/コスト削減」において課題があった。
【0006】
(操作性)
出力調節器が複数設けられているので、連動モードの際にどれが目標設定出力調節器かが判りづらい。また、治療を開始した後に連動モードから独立モードに切り替わると、出力調節方法が治療途中で変わるので、使い方自体が判りづらい。
【0007】
(安全性)
連動モードが解除され、独立モードに切り替わると、出力調節を行うために出力調節器に手を近付けた際に、他のチャンネルの出力調節器に誤って手が接触してしまうと、意図しない出力変動が患者に作用し極めて危険である。また、この対策として最大出力抑制機能を搭載しても、目標出力以上の出力が患者に作用する可能性は残り危険である。また、一定時間の経過後に目標出力以上に調節できないようにするロック機構を設けると、治療途中でどうしても出力調節したい場合に、ロック機構を解除する操作を行うか、最初からやり直しをするなどの対応が必要となり煩わしい。
【0008】
(省スペース/コスト削減)
出力連動を実現するためには、複数設けられた出力調節器それぞれに出力調節器を駆動する駆動部を設ける必要があり、装置が複雑且つ高額となる他、故障頻度増大のリスクが伴う。仮に駆動部が故障すると、出力連動機能が使用不能となり、複数の出力調節器を個々に調節する必要が生じ、連動モードで習慣化したユーザの場合、適切な治療感が得られるように出力調節を行うことが困難である。また、出力調節器が各チャンネルごとに設けられているので、装置が大型化し、手狭な施設ではスペースの確保が困難である。また、同一のインタフェースで低周波・中周波・干渉波治療を行える機器は存在せず、使用者は低周波・中周波・干渉波治療の治療器を個々に購入する必要があり、機器設置スペースや導入コストが増大する他、個々の機器の使用方法に熟練する必要もあり、機器導入の妨げとなっている。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、操作性、安全性および省スペース/コスト削減において優れた電気刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数組の導子に電気刺激の出力を供給する出力回路と、出力調節を行うチャンネルを選択するチャンネル選択手段と、チャンネル選択解除手段と、を備えると共に、前記出力回路の出力を調節する出力調節器が1個設けられ、前記出力調節器は、前記出力回路からの前記出力の開始前に前記チャンネル選択手段で選択されたチャンネルに接続された導子の出力を同時調節することが可能であって、前記出力の開始または調節後、新たなチャンネルの選択が検出されると、当該チャンネルをチャンネル選択状態に移行すると共に、前記チャンネル選択解除手段は、前記出力の開始または調節が行われたチャンネルのチャンネル選択を解除する機能を有する、ことを特徴とする。この場合、前記出力は、電圧でも電流でもよい。
【0011】
請求項1によれば、チャンネル選択手段により同時に出力調節すべき複数のチャンネルを確実かつ容易に選択して1個の出力調節器で同時に出力調節を行えるので、使用方法が判りやすく、機器の使用に熟練を要することなく誰でも簡単に使用できる。
【0012】
また、チャンネル選択後、1個の出力調節器を操作するのみで、通電作業が完了するので、手間がかからず、ヒューマンエラーによる事故発生のストレスが軽減され、操作者、患者共に安心して使用できる。
【0013】
さらに、出力調節器をチャンネル毎に設ける構成に比べて、装置が小型化でき、構造も簡素で故障も少なく、製造・管理コストが低減する。
【0014】
さらにまた、出力調節器をチャンネル毎に設ける構成に比べて、他のチャンネルの出力調節器に誤って手が接触し、意図しない出力変動が患者に作用する心配がない。
【0015】
また、チャンネル選択解除手段により、チャンネルを誤選択しても容易にチャンネル選択を解除でき安全である。また、例えば使用者が従来の治療器のように複数のチャンネルを一つずつ出力調節する使用方法に熟練しているのでその使用方法で使用したい場合や、一人の患者の複数の患部に同時に治療を行う際に患部によって出力の大きさを微調整したい場合等であっても、使用者や患者の要望に応じて従来と同様の使用方法で使用できる。
【0016】
また、例えば、通電を開始した後に異なる患者や対象部位を新たに通電したい場合でも、既に通電を開始している導子の出力を維持したまま新たにチャンネルを選択するだけで当該チャンネルに接続されている導子のみ出力調節が可能となり、簡便に安心して使用できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、複数組の導子に電気刺激の出力を供給する出力回路と、出力調節を行うチャンネルを選択するチャンネル選択手段と、チャンネル選択解除手段と、を備えると共に、前記出力回路の出力を調節する出力調節器が1個設けられ、前記出力調節器は、前記出力回路からの前記出力の開始前に前記チャンネル選択手段で選択されたチャンネルに接続された導子の出力を同時調節することが可能であって、前記チャンネル選択解除手段は、前記出力の開始または調節後、スイッチ操作を行うか一定時間経過すると、前記チャンネルの出力状態を保持したまま前記チャンネルの選択を解除する機能を有する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項2によれば、チャンネル選択手段により同時に出力調節すべき複数のチャンネルを確実かつ容易に選択して1個の出力調節器で同時に出力調節を行えるので、使用方法が判りやすく、機器の使用に熟練を要することなく誰でも簡単に使用できる。
【0019】
また、チャンネル選択後、1個の出力調節器を操作するのみで、通電作業が完了するので、手間がかからず、ヒューマンエラーによる事故発生のストレスが軽減され、操作者、患者共に安心して使用できる。
【0020】
さらに、出力調節器をチャンネル毎に設ける構成に比べて、装置が小型化でき、構造も簡素で故障も少なく、製造・管理コストが低減する。
【0021】
さらにまた、出力調節器をチャンネル毎に設ける構成に比べて、他のチャンネルの出力調節器に誤って手が接触し、意図しない出力変動が患者に作用する心配がない。
【0022】
また、チャンネル選択解除手段により、チャンネルを誤選択しても容易にチャンネル選択を解除でき安全である。また、例えば使用者が従来の治療器のように複数のチャンネルを一つずつ出力調節する使用方法に熟練しているのでその使用方法で使用したい場合や、一人の患者の複数の患部に同時に治療を行う際に患部によって出力の大きさを微調整したい場合等であっても、使用者や患者の要望に応じて従来と同様の使用方法で使用できる。
【0023】
また、前記出力の開始または調節後にそのチャンネルの通電状態を簡易な操作で保持でき、誤って出力調節器に手が触れて出力が変動する心配がなく安心して治療を継続することができる。
【0024】
請求項に記載の発明は、前記複数のチャンネルのうち、どのチャンネルを組み合わせるかを確定するグループ確定手段が設けられていることを特徴とする。また、請求項に記載の発明は、前記グループ確定手段が、前記出力の開始または調節後、スイッチ操作を行うか一定時間経過すると、前記チャンネルの組み合わせを確定することを特徴とする。
【0025】
請求項およびによれば、複数の導子の組み合わせを確定することにより、例えば二人同時、あるいは異なる治療部位を同時に通電準備を行う際にも、治療対象患者や対象部位毎に確実にチャンネルの組み合わせを確定することができるので、途中で一旦、装着した導子が脱落したりしても、チャンネルの組み合わせの誤認識の心配がなくなり更に安全性が向上する。
【0026】
請求項に記載の発明は、前記グループ確定手段によりチャンネルの組み合わせが確定された後、当該グループに含まれないチャンネルが新たに選択されて当該チャンネルの選択が解除されるまでの間、前記組み合わせが確定されたグループ内のチャンネルを前記チャンネル選択手段により選択することができないようにしたことを特徴とする。
【0027】
請求項によれば、例えば、通電を開始した後に異なる患者や対象部位を新たに通電したい場合、既に通電を開始しているチャンネルを誤って選択して意図しない出力調節が行われる危険がなく、安心して使用できる。
【0028】
請求項に記載の発明は、導子選択表示手段および/またはグループ表示手段が設けられていることを特徴とする。
【0029】
請求項によれば、導子選択表示手段および/または導子セット表示手段により、治療対象患者や対象部位に対する複数のチャンネルの組み合わせが一目で確認できるので、安全確認が容易に行え、更に安心して使用することができる。
【0030】
請求項に記載の発明は、治療モード選択手段が設けられていることを特徴とする。請求項によれば、多種多様な治療条件の電気刺激治療を同一のインタフェースで使用できるので、使用方法が判りやすく、機器の使用に熟練することなく、誰でも簡単に使用できる。
【0031】
請求項に記載の発明は、治療モード選択手段により低周波治療、中周波治療、および干渉波治療のいずれか2つ以上のモードを選択可能であることを特徴とする。
【0032】
請求項によれば、多種多様な治療条件の電気刺激治療を同一のインタフェースで使用できるので、使用方法が判りやすく、機器の使用に熟練することなく、誰でも簡単に使用できる。
【0033】
また、請求項によれば、低周波治療、中周波治療、干渉波治療の治療器を個々に複数台購入するケースに比べて、場所をとらず、導入費用を格段に軽減できる。さらに、一般的に電気治療器を導入している医療施設では、患者を待たせることなく、より多くの患者を治療できるようにすることが課題であるが、特に請求項に記載の治療器を導入すれば、複数の患者や患部に対して、低周波治療、中周波治療、干渉波治療等の多種多様な治療を同時に行えるので、本装置を複数台導入すれば、例えば低周波治療目的の患者が集中するようなことがあっても患者の待ち時間が大幅に削減され、医療施設の評判が改善されて当該医療施設を利用する患者が増えると共に、より多くの患者を効率良く治療することで医療施設の収益が改善される効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電気刺激装置の外観図である。
図2図2は、図1の電気刺激装置の操作・表示部、主制御部、および回路等の構成図である。
図3図3は、人体への導子装着を示す図である。
図4図4(a)〜(c)は、低周波治療モードにおける各出力波形図である。
図5図5(a)(b)は、中周波治療モードにおける各出力波形図である。
図6図6(a)〜(c)は、干渉波治療モードにおける各出力波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電気刺激装置を説明する。図1を参照して、実施形態の電気刺激装置1は、図2以降を参照して説明する各種操作および各種表示を行うことができる操作・表示部2と、電気刺激治療に関する出力調節を行うときに操作される1個の出力調節器3と、図1では図示を略する導子のコードが接続される導子コード接続部4と、を備える。電気刺激装置1は、操作・表示部2からの操作に応じて電気刺激治療を行うことができる。なお、操作・表示部2は、タッチパネル式が好ましいが、これに限定されない。出力調節器3はマニュアル式で使用者により出力調節時に操作されるものであり、操作形式としては、把持して回転させる摘み式でもよいが、これに限定されない。導子コード接続部4にはチャンネル数に応じた導子コードが接続されるが、この接続可能数はチャンネル数以上であれば、任意である。
【0036】
図2を参照して、電気刺激装置1を詳細に説明すると、この電気刺激装置1は、操作・表示部2、出力調節器3、主制御部5、出力部6、および、複数組の導子71a,71b;〜;7na,7nb、を備える。この組数は、2組以上であればよく、任意であり、特に限定されない。
【0037】
操作・表示部2は、チャンネル選択手段8、治療モード選択手段9、チャンネル選択解除手段11、グループ確定手段12、チャンネル選択表示手段13、グループ表示手段14、治療終了手段16、および出力調節確定手段17、を備える。
【0038】
これら各手段のうち、チャンネル選択、治療モード選択、チャンネル選択解除、グループ確定、治療開始、治療終了、および出力調節確定の各手段8〜9、11〜12,16〜17は、使用者等が操作・表示部2のパネル画面上に手指でタッチして操作できるように表示され、また、表示の手段13〜14は、パネル画面上に表示される。
【0039】
主制御部5は、出力調節器3からは出力調節信号が、また、操作・表示部2からは各種の操作信号が入力される一方、操作・表示部2に表示信号を出力する。主制御部5は、メモリに記憶する電気刺激装置に関する各種プログラムをCPUが操作・表示部2からの操作信号や出力調節信号に応答して実行すると共に、操作・表示部2に表示信号を出力して、操作・表示部2で所要の表示を行わせる。
【0040】
出力部6は、チャンネル(ch1〜chn)毎に波形作成回路6a1〜6an、出力回路6b1〜6bnを備える。
【0041】
複数組の導子71a,71b;〜;7na,7nbはそれぞれ2つ1組で人体に装着される導子である。なお、これら導子71a,71b;〜;7na,7nbは、例えば、図3に示すように、人体16の電気刺激治療部位に2つ1組で装着される。
【0042】
出力部6において、各チャンネルの波形作成回路6a1〜6anは、主制御部5により制御されて人体に付与する電気刺激電流の波形を治療モードに応じて作成し、各チャンネルの出力回路6b1〜6bnにその電気刺激波形出力を出力する。各チャンネルの出力回路6b1〜6bnは、波形作成回路6a1〜6anからの電気刺激波形に対応した電流を電気刺激電流として出力すると共に、その電気刺激電流の出力の強さ等を主制御部5によって制御される。各チャンネルの出力回路6b1〜6bnからの電気刺激電流が、導子71a,71b;〜;7na,7nb間を介して人体16に付与されることで電気刺激治療が行われる。
【0043】
以下、図2以降を参照して、出力調節器3および操作・表示部2の回路構成およびその動作を説明する。
【0044】
出力調節器3は、各チャンネルの出力回路6b1〜6bnの出力調節を使用者あるいは患者がマニュアル操作で行うためのものであり、電気刺激装置1において、1個だけ設けられる。主制御部5は、出力調節器3からの調節信号を入力すると共に、出力の開始前にチャンネル選択手段8で選択されたチャンネルに対応した出力回路からのみ前記調節信号に対応した電気刺激電流が出力されるよう制御する。
【0045】
主制御部5は、出力調節器3から入力した出力調節信号に基づいて、出力開始前にチャンネル選択手段8で選択されたチャンネルに対応した出力回路の出力調節を同時に行い、同時に出力調節した電気刺激電流出力をチャンネル選択手段8で選択されたチャンネルに対応した複数組の導子に出力する。これにより、出力調節器3により、出力の開始前にチャンネル選択手段8により選択されたチャンネルに対応した複数組の導子の出力を同時調節することが可能である
【0046】
この場合、本実施形態の電気刺激装置1によれば、1個の出力調節器3により、チャンネル選択手段8により選択されたチャンネルに対応した複数組の導子の出力を同時に調節することが可能であるので、装置の使用方法が判り易く、したがって装置の使用に熟練を要しない。
【0047】
また、主制御部5によりチャンネル選択が認識されてから、電気刺激電流が人体に付与されるようにしたので、ヒューマンエラーによる事故発生が軽減され、操作者、患者共に安心して使用できる。
【0048】
特に、出力調節器3が1個だけであるので、出力調節器をチャンネル毎に設けていた従来構成と比較して、電気刺激装置1の小型化が可能となり、その構造も簡素となり、これに伴い故障が少なくなり、その製造や管理コストを低減することができる。
【0049】
加えて、出力調節器をチャンネル毎に設けていた従来構成では、他のチャンネルの出力調節器に誤って手が接触し、意図しない出力変動が患者に作用する心配があったが、本実施形態では出力調節器3が1個であり、かかる心配はない。
【0050】
次に、主制御部5では、各チャンネルの出力回路6b1〜6bnから導子71a,71b;〜;7na,7nbへの電気刺激電流の出力を、1個の出力調節器3でもって、前記した同時調節と共に、個々に調節することも可能としている。
【0051】
そのため、チャンネル選択手段8で調節対象のチャンネルを選択し、出力調節器3を操作すると、選択したチャンネル毎に出力調節器3で出力を調節することができる。その後、出力調節が終了すると、出力調節確定手段17で出力調節を確定させ治療を開始する。
【0052】
治療モード選択手段9は、低周波治療モード、中周波治療モード、および干渉波治療モードの3つの治療モードを選択するためのものである。なお、実施形態では、治療モードは3種類であるが、これに限定されることなく、3種類の内いずれか2種類を備えて選択できるようにしてもよい。
【0053】
低周波治療モードは、図4(a)〜(c)のいずれかの波形を有する低周波(1Hz〜数百Hz)の電気刺激電流で電気刺激治療を行うモードであり、この波形には図4(a)に示すようにパルス状の単相波形、図4(b)に示すようにパルス状の二相波形、図4(c)に示すように正弦波形状の二相波形があり、これらいずれかの波形を有する低周波の電気刺激電流により電気刺激治療を行うモードである。
【0054】
中周波治療モードは、図5(a)(b)に示すように、中周波(1kHz〜10kHz程度)の電気刺激電流で電気刺激治療を行うモードであり、この波形には図5(a)に示すように連続波形、図5(b)に示すように断続波形があり、これらいずれかの波形を有する中周波の電気刺激電流により電気刺激治療を行うモードである。
【0055】
干渉波治療モードは、図6(a)〜(c)に示すように、比較的高い中周波を使用し、周波数が2種類以上異なる、例えば図6(a)の任意チャンネルと図6(b)の別の任意チャンネルそれぞれの波形を有する電気刺激電流で電気刺激治療を行うモードであり、これら図6(a)と図6(b)それぞれの中周波の周波数差に相当した干渉電流(うなり)を発生させ、この中周波うなり干渉電流により電気刺激治療を行うモードである。
【0056】
治療モード選択手段9により治療モードが選択された信号が主制御部5に入力されると、主制御部5は、この治療モード選択信号に対応して、出力部6内の各波形作成回路6a1〜6anから前記選択した波形に対応する波形を作成させ、作成させた波形に対応した電気刺激出力が出力回路6b1〜6bnから導子71a,71b;〜;7na,7nbに付与されるよう制御する。
【0057】
チャンネル選択解除手段11は、操作されると、各チャンネルの選択が解除され、当該チャンネルの治療条件の設定や出力の調節が行えないようにすることができる。なお、チャンネル選択解除手段11は、チャンネル選択手段8でチャンネルを選択した後、当該チャンネルのチャンネル選択手段8を再度操作するか、出力の開始または調節後、出力調節確定手段17を操作するとチャンネル選択が解除されるように構成してもよい。更に、マニュアルのスイッチ操作に限定されることなく、出力の開始または調節後一定時間経過するとチャンネル選択を解除するように構成してもよい。さらに解除するまでの時間も不図示のスイッチ操作等により所望の時間に変更できるように構成してもよい。
【0058】
出力の開始または調節後、新たなチャンネルの選択が検出されると、当該チャンネルに選択状態が移行すると共に、チャンネル選択解除手段11は前記出力の開始または調節が行われたチャンネルの選択を解除する機能も有する。こうすれば、例えば、通電を開始した後に異なる患者や対象部位に対して新たに通電したい場合でも、当該導子のみ出力調節が可能となり、既に通電を開始している他の導子に意図しない出力変動が生じることなく簡便に安心して使用できる。
【0059】
グループ確定手段12は、使用者や患者により各チャンネルの組み合わせ(導子71a,71b;〜;7na,7nbの組み合わせ)が確定すると、それを確定させるために操作されるものである。すなわち、グループ確定手段12により、複数のチャンネル(複数組の導子)のうち、何組のチャンネル(導子)を組み合わせるかを確定することができる。実施形態の電気刺激装置1がグループ確定手段12を備えることにより、例えば、患者が二人同時、あるいは患者一人でも異なる治療部位を同時に通電準備を行う際にも、治療対象の患者や対象部位毎に確実に複数のチャンネル(複数組の導子)の組み合わせを確定することができ、途中で一旦、装着した導子が脱落したりしても、導子の組み合わせを誤認識する心配がなくなり、安全性が向上する。なお、グループ確定手段12は、出力調節が開始されてから一定時間を経過すると、これを検知して、複数のチャンネル(導子)の組み合わせを確定するようにしてもよい。
【0060】
なお、主制御部5は、グループ確定手段12によりチャンネルの組み合わせが確定された後、当該グループに含まれないチャンネルが新たに選択されて当該チャンネルの選択が解除されるまでの間、前記組み合わせが確定されたグループ内のチャンネルを前記チャンネル選択手段8により選択することができないようにする機能を有する。こうすることにより、例えば、異なる患者や対象部位を新たに通電したい場合等において、グループとして確定され既に治療を開始しているチャンネルを誤って選択して意図しない出力調節が行われる危険がなく、安心して使用できる。
【0061】
チャンネル選択表示手段13は、主制御部5からの表示信号に応答してどのチャンネルが選択されているかを表示する。主制御部5は、チャンネルが選択されると、チャンネル選択表示手段13にその選択に対応した表示信号を出力して、チャンネル選択表示手段13にどのチャンネルが選択されているかを表示させる。
【0062】
グループ表示手段14は、主制御部5からの表示信号に応答してどのチャンネルを組み合わせているかを表示する。主制御部5は、どのチャンネルを組み合わせるかが確定されると、グループ表示手段14にその組み合わせに対応した表示信号を出力して、グループ表示手段14にどのチャンネルを組み合わせているかを表示させる。この表示により、治療対象患者や対象部位に対する複数のチャンネルの組み合わせが一目で確認できるので、安全確認が容易に行え、更に安心して使用することができる。
【0063】
治療終了手段16は、電気刺激治療を終了するときに操作されるものであり、主制御部5は、治療終了手段16からの治療終了信号に応答して電気刺激治療終了の制御を行う。
【0064】
出力調節確定手段17は、前記したように、出力調節器3による出力調節が確定したときに操作されるものであり、主制御部5はこの出力調節確定手段17からの信号の入力に応答して、各チャンネルの出力回路6b1〜6bnからの電気刺激電流出力を出力調節器3で調節された出力に確定する。
【0065】
上述したように本実施形態の電気刺激装置1は、操作性、安全性および省スペース/コスト削減において優れた電気刺激装置である。なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々適宜に変更可能である。
【0066】
例えば、出力調節器は1個としているが、複数のチャンネルに対し出力調節器を1個設けたユニットを、1台の治療器に複数ユニット組み込んで構成してもよく、さらにこの場合においては、他のユニットの導子の装着を検出して別のユニットの出力調節器で調整することも可能なように構成することで、1台の治療器で様々な症例の患者や治療部位に対し多種多様な電気治療を同時に行えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 電気刺激装置
2 操作・表示部
3 出力調節器
5 主制御部
6 出力部
6b1〜6bn 出力回路
71a,71b;〜;7na,7nb 導子
図1
図2
図3
図4
図5
図6