特許第6120142号(P6120142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120142
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20170417BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F01N3/24 N
   F01N3/08 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-35644(P2013-35644)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-163309(P2014-163309A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−115912(JP,U)
【文献】 特公昭63−021803(JP,B1)
【文献】 特開平07−158529(JP,A)
【文献】 特開2006−090149(JP,A)
【文献】 特開昭60−60251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/02
F01N 3/00− 3/38
B01D 53/86−53/94
B01F 1/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設され、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する還元触媒を備えた排ガス浄化装置と、
前記還元触媒の上流側で、前記排ガスに還元剤を混入させるための還元剤噴射弁を有した還元剤噴射装置と、
前記還元触媒と前記還元剤噴射弁との間に、前記排気通路を形成する壁面に開口した開口部を有し、前記開口部を介して前記排気通路と連通する容積部を有した還元剤拡散装置と、を備え
前記容積部の容積は、排ガスの脈動に共鳴して振動した内部の気体の振動が排ガス通路の排ガスの流れに乱流を生じさせるように設定されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
内燃機関の排気通路に配設され、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する還元触媒を備えた排ガス浄化装置と、
前記還元触媒の上流側で、前記排ガスに還元剤を混入させるための還元剤噴射弁を有した還元剤噴射装置と、
前記還元触媒と前記還元剤噴射弁との間に、前記排気通路を形成する壁面に開口した開口部を有し、前記開口部を介して前記排気通路と連通する容積部を有した還元剤拡散装置と、を備え、
前記容積部の前記開口部は、前記還元剤噴射弁から噴射された還元剤が前記壁面に当接する位置より前記還元剤噴射弁側に位置していることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に配設され、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する還元触媒を備えた排ガス浄化装置と、
前記還元触媒の上流側で、前記排ガスに還元剤を混入させるための還元剤噴射弁を有した還元剤噴射装置と、
前記還元触媒と前記還元剤噴射弁との間に、前記排気通路を形成する壁面に開口した開口部を有し、前記開口部を介して前記排気通路と連通する容積部を有した還元剤拡散装置と、を備え、
前記還元剤拡散装置は、前記容積部の容積を可変するための駆動手段を備えていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記開口部と対向する前記容積部の底面を、該底面の垂直方向に往復動させることで前記容積部の容積を可変することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記駆動手段はカムを回転駆動することによって、前記容積部の底面を往復動させることを特徴とする請求項3又は、4のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記開口部は、前記壁面の周方向に沿って、複数配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、排ガス中に還元剤を噴射して混合させ、触媒にて排ガス中の有害物質を除去する内燃機関の排気浄化装置に関する。特に、排ガス中に噴射する還元剤と排ガスとの混合を促進する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関の排気浄化装置として、排ガス中に尿素水を添加して、排ガスの熱で尿素をアンモニアに変換させて、触媒にてNOxを還元する尿素還元式SCR(Selective Catalytic Reduction;選択的触媒還元)や、還元剤として燃料を添加して、排ガスをリッチ化することで、NTC(NOx Trap Catalyst)にトラップされたNOxを放出・還元して浄化するNOxトラップ触媒が使用されている。
このような還元浄化装置においては、排ガスと還元剤との混合が十分に行われて、触媒と均一に接触するようにすることが重要である。
【0003】
排ガスと還元剤との混合を十分に行うため、還元剤を噴射する還元剤噴射弁の下流側に、還元剤を排ガス中に撹拌させるための撹拌装置を備える技術が知られている。
一例として、特許文献1に開示されている。
特許文献1によると、還元触媒の上流側、且つ還元触媒噴射部による噴射位置よりも下流側に、還元剤及び排ガスを混合拡散させるためのミキサーユニットが配設され、該ミキサーユニットは、排ガスの流れ方向に複数枚配列されたワイヤーメッシュを含むミキサー本体部と、ミキサー本体部の還元触媒側に配置された拡散部材とを備えている。
ミキサー本体部を構成する複数のワイヤーメッシュは排ガスの流れ方向に対し、メッシュの開口部が、他のワイヤーメッシュの開口部と位置をずらして配置されている。
さらに、拡散部材は、複数のテーパ形状の拡散ガイド部材が同心円状に配置された形状を成している。
【0004】
このような形状にすることで、排ガスと還元剤は、メッシュの素線に衝突しながら乱流となり、排ガスと還元剤との撹拌を実施する。
撹拌された排ガスと還元剤は、拡散部材のテーパ面によってガイドされ、触媒の前面側に均等に流れていくようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−41371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1によると、排ガスと還元剤とを撹拌するために、排ガスの流れに対し直角方向に複数枚のメッシュを排ガス流通方向に重合させている。
しかも、ミキサー本体部は、ワイヤーメッシュの開口部を排ガス流通方向視において、開口部がずれて配置することで、撹拌効果を向上させる構造である。
そのため、排ガス及び還元剤の流通抵抗は大きくなる。
さらに、テーパ面を有した拡散部材は、排ガス及び還元剤の流通方向を変更させるものであり、ミキサー本体部と同様に流通抵抗を大きくする要素を有している。
従って、内燃機関が高回転高負荷運転時は、燃焼室からの排ガスの排圧が高くなり、出力低下をまねく要因を有している。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の課題に鑑みなされた発明であって、排ガスと還元剤との混合を促進させると共に、排気通路の圧損を抑制し、排気浄化性能と内燃機関の出力性能とを両立させる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明によれば、内燃機関の排気通路に配設され、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する還元触媒を備えた排ガス浄化装置と、
前記還元触媒の上流側で、前記排ガスに還元剤を混入させるための還元剤噴射弁を有した還元剤噴射装置と、
前記還元触媒と前記還元剤噴射弁との間に、前記排気通路を形成する壁面に開口した開口部を有し、前記開口部を介して前記排気通路と連通する容積部を有した還元剤拡散装置とを備え
前記容積部の容積は、排ガスの脈動に共鳴して振動した内部の気体の振動が排ガス通路の排ガスの流れに乱流を生じさせるように設定されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置の提供ができる。
【0009】
本発明によると、内燃機関から排出される排ガスは、排気通路内を脈動しながら流れる。
従って、容積部内の空気(排ガス)も排ガスの脈動に共鳴して振動する。この振動は、排ガス通路の排ガスの流れに対し開口部から伝播する。
このため、排ガスは流れに対して直角方向の振動を受け、流れが乱流となる。
従って、還元剤噴射部から噴射された還元剤は排ガス中に拡散されて、混合が促進され、下流側の還元触媒に対し均等に接触するようになり、排ガス浄化効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、内燃機関の排気通路に配設され、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する還元触媒を備えた排ガス浄化装置と、
前記還元触媒の上流側で、前記排ガスに還元剤を混入させるための還元剤噴射弁を有した還元剤噴射装置と、
前記還元触媒と前記還元剤噴射弁との間に、前記排気通路を形成する壁面に開口した開口部を有し、前記開口部を介して前記排気通路と連通する容積部を有した還元剤拡散装置と、を備え、前記容積部の前記開口部は、前記還元剤噴射弁から噴射された還元剤が前記壁面に当接する位置より前記還元剤噴射弁側に位置していることを特徴とする。
【0011】
このような構成にすることにより、還元剤が排気通路内壁面に付着する前に、排ガスとの混合を促進することができる。
これによって、還元剤をより確実に還元触媒まで到達させて排ガス浄化効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明は、内燃機関の排気通路に配設され、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する還元触媒を備えた排ガス浄化装置と、
前記還元触媒の上流側で、前記排ガスに還元剤を混入させるための還元剤噴射弁を有した還元剤噴射装置と、
前記還元触媒と前記還元剤噴射弁との間に、前記排気通路を形成する壁面に開口した開口部を有し、前記開口部を介して前記排気通路と連通する容積部を有した還元剤拡散装置と、を備え、前記還元剤拡散装置は、前記容積部の容積を可変するための駆動手段を備えていることを特徴とする。

【0013】
このような構成にすることにより、開口部から排ガスの流れに伝播する容積部内の空気振動の振幅を大きくすることにより、排ガス流の乱れを大きくして、排ガスと還元剤との混合を促進させることが可能となる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記駆動手段は、前記開口部と対向する前記容積部の底面を、該底面の垂直方向に往復動させることで前記容積部の容積を可変するようにするとよい。
【0015】
このような構成にすることにより、開口部と対向する面を往復動させることにより、容積部内で生起する空気振動をより効果的に排気通路内に伝播して還元剤と排ガスとの混合をより促進することができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記駆動手段はカムを回転駆動することによって、前記容積部の底面を往復動させるようにするとよい。
【0017】
このような構成にすることにより、容積部内の空気振動を安定して生成することができる。また、カム形状(山形形状及び、山数)及びカムの回転数を変更することで容積部内の空気振動の特性(振幅及び振動数)を容易に変更することができ、排ガスと還元剤との混合をより効率的に促進することができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記開口部は、前記壁面の周方向に沿って、複数配設されているとよい。
【0019】
このような構成にすることにより、容積部の開口部を排気通路を形成する壁面の周方向に複数配設することにより、排気流通方向に対し複数の方向から振動を与えることが可能となり、排ガスの乱流が大きくなり、排ガスと還元剤との混合がさらに促進され、排ガス浄化装置での浄化効率が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排ガスと還元剤との混合を促進させると共に、排気通路の圧損を抑制し、排気浄化性能と内燃機関の出力性能とを両立させる内燃機関の排気浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における全体概略構成図を示す。
図2】(A)は排気通路に本発明の還元剤拡散装置を取付けた概略斜視図、(B)は(A)の排気通路に対し直角方向の断面図を示す。
図3】本発明の還元剤拡散装置の取付け位置の説明図を示す。
図4】本発明の第2実施形態における全体概略構成図を示す。
図5】第2実施形態における還元剤拡散装置図を示す。
図6】(A)は第3実施形態における還元剤拡散装置図、(B)は第4実施形態における還元剤拡散装置図を示す。
図7】実施形態における容積部の可変構造図を示す。
図8】実施形態における他の容積部の可変構造図を示す。
図9】実施形態における他の容積部の可変構造図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態における全体概略構成図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関であるディーゼルエンジン(以後、エンジンと称す)システム100は、エンジン1と、エンジン1のエキゾーストマニホールド17を介して燃焼室13から排出される排ガスによって駆動されるターボチャージャ21と、ターボチャージャ21を駆動した排ガスを
浄化する排ガス浄化装置3と、外気を除塵するエアクリーナ19cからの空気を燃焼室13に導入する吸気装置19とを備えている。
【0024】
燃焼室13はエンジン1内のシリンダ12と、シリンダ12内をシリンダ12の軸線方向に摺動するピストン11と、シリンダ12の上部を閉塞するシリンダヘッド10とによって囲繞されて形成される空間部である。
15は燃料噴射弁である。シリンダ12内に吸気が導入され、ピストン11にて圧縮され、圧縮されて高温になった吸気に、燃料噴射弁15から燃料が噴射され燃焼させる。
14は、寒冷時に吸気を温めて、吸気の圧縮温度を高くするための吸気ヒータプラグである。
【0025】
排ガス浄化装置3は、エキゾーストマニホールド17の下流側に接続されたターボチャージャ21の排気タービン(図示省略)側に接続された排気管18に装着されている。
排ガス浄化装置3は、排気通路の壁面を形成する排気管18に介装され排ガスを浄化する排ガス浄化装置31と、同じく排気管18に介装され、前記第1排ガス浄化装置31の排気通路下流側に配置された第2排ガス浄化装置32と、第1排ガス浄化装置31と第2排ガス浄化装置32間を連結する排気管18を構成する第1排気管18aに配設され、排ガス浄化のため還元剤を排ガス中に噴射する還元剤噴射弁52を有する還元剤供給装置5と、還元剤噴射弁52と第2排ガス浄化装置32との間に配置され、排気通路を流れる排ガスに空気振動を伝播する還元剤拡散装置6と、還元剤供給装置5の作動を制御するエンジン制御装置(ECU)55と、を備えている。
【0026】
第1排ガス浄化装置31は、内部に排気通路上流側に前段酸化触媒(DOC)31a、その下流側にパティキュレートフィルタ(DPF)31bが収納されている。
前段酸化触媒(DOC)31aは、排ガス中の炭化水素(HC)を主とした未燃焼物質(可溶性有機成分;SOF)を酸化して水(HO)と二酸化炭素(CO)に分解する。
パティキュレートフィルタ(DPF)31bは、排ガス中の未燃焼微細物質(PM)を捕集する。
【0027】
第2排ガス浄化装置32は、内部に排気通路上流側にNOx還元触媒(SCR触媒)32a、該NOx還元触媒(SCR触媒)32aの排気通路下流側に後段酸化触媒(DOC)32bが収納されている。
NOx還元触媒(SCR触媒)32aは、排ガス中に混合された尿素水を排ガスの熱でアンモニア(NH3)に分解して、分解されたアンモニアがNOx還元触媒(SCR触媒)に接触することで、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を水(HO)と窒素(N)に還元する。
NOx還元触媒(SCR触媒)32aの下流側の後段酸化触媒(DOC)32bは、NOx還元触媒をスリップしたアンモニア及び炭化水素(HC)等を捕集する。浄化された排ガスは第2排気管18bから大気に放出される。
【0028】
吸気装置19は、吸気した外気を除塵するエアクリーナ19cと、該エアクリーナ19cの下流側に配置されたターボチャージャ21に吸気を導入する第1吸気管19aと、ターボチャージャ21の排気タービンに同軸的に連結されたコンプレッサ(図示省略)で過圧された吸気を冷却するインタークーラ19dと、冷却された吸気を、燃焼室13に連通したインレットマニホールド16に導入する第2吸気管19bと、を備えている。
【0029】
還元剤供給装置5は、還元剤である尿素水を貯溜する貯溜タンク51と、尿素水を排気通路の排ガス中に噴霧する還元剤噴射弁52と、貯溜タンク51の尿素水を還元剤噴射弁52に圧送するポンプ53とを備えている。
ポンプ53にて圧送された尿素水は、還元剤噴射弁52に配設されている開閉弁52aの開制御によって排ガス中に尿素水を噴霧する。ポンプ53及び開閉弁52aはエンジン制御装置(ECU)55によって作動が制御される。
【0030】
図2(A)は排気通路に本発明の還元剤拡散装置を取付けた概略斜視図、(B)は(A)の排気通路に対し直角方向の断面図を示す。
本実施形態の還元剤拡散装置6は、排気通路を形成する第1排気管18aの外周部に周方向へ等間隔に4個の容積部61が配設されている。
還元剤拡散装置6は、容積部61の外周壁61aが排気通路の軸線に沿って円柱状に延在し、円柱状の両端縁が閉塞されている。
円柱状の内部は周方向に4等分された仕切り壁62bが配設され、夫々の容積部61は、隣接された容積部61に対し独立した形状に形成されている。
夫々の容積部61は、第1排気管18aの排気通路と開口部6aを介して連通している。
【0031】
開口部6aの開口面積は、1個の容積部61が占める第1排気管18aの外周部の面積の1/2〜1/3位とした。
また、1個の容積部61の容積は、本実施形態では20〜50ccの大きさで実施した。
容積が大きすぎると、排気通路の脈動を容積部内で吸収し、空気振動が小さくなる。
一方、容積が小さいと、空気振動の振動エネルギーが小さくなり、排ガスに伝播するエネルギーが小さくなり、排ガスに乱流を生起しがたくなる。
尚、本実施形態では、第1排気管18aの外周部に4個の容積部61を配設したが、適宜増減させても同様の効果を得ることができる。
【0032】
図3は、本発明の還元剤拡散装置6の取付け位置の説明図を示す。
排気通路を形成する壁面である第1排気管18aの屈曲部に還元剤噴射弁52が、排気通路内に配設されている。
還元剤噴射弁52の先端部から還元剤である尿素水が噴射される。
尿素水は、排気通路内に円錐状に拡散して、還元剤噴射弁52の先端部からの距離Lの位置P点にて、排気通路の壁面(第1排気管18aの内周壁面)に当接している。
従って、還元剤拡散装置6の開口部6aは、還元剤噴射弁52より排気通路下流側で且つ、P点より還元剤噴射弁52側に配置することにより、還元剤を排ガス中への混合を促進させて、排気通路の壁面に還元剤が付着するのを抑制するようになっている。
尚、距離Lは、還元剤噴射弁52の噴射孔の径、噴射圧力、排ガスの圧力及び流速(エンジンの負荷状態)等に影響するので、エンジン1によって調整する必要がある。
【0033】
このような構造にすることにより、エンジン1から排出される排ガスは、ピストン11の往復運動即ち、吸入、圧縮、爆発、排気の4工程あるが、そのうちの排気工程においてのみ排ガスが排気管18に排出される。
排気通路を流れる排ガスは粗密部が交互になる、いわゆる脈動状態で流れる。
従って、開口部6aに対し排ガスの粗密部が交互に作用すると、容積部61内の空気(排ガス)は繰返しの圧力を受けることになり、空気振動を発生させる。
容積部61内で発生した空気振動は、容積に対して絞った断面積の開口部6aから排気通路内に噴出して、排ガスの流れに対し直角方向から衝突するので、排ガスは乱流となり、排ガス中の還元剤は排ガス中に拡散される。
還元剤噴射弁52から噴射された還元剤は、下流側の還元触媒に対し均等に接触するようになり、排ガス浄化効率を向上させることができる。
【0034】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対し、還元剤拡散装置の構造が異なる以外は同じなので、還元剤拡散装置以外の説明は省略する。
また、同一部品は、同一符号を付して、説明は省略する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態に係る内燃機関であるディーゼルエンジン(以後、エンジンと称す)システム110は、エンジン1と、エンジン1のエキゾーストマニホールド17を介して燃焼室13から排出される排ガスによって駆動されるターボチャージャ21と、ターボチャージャ21を駆動した排ガスを浄化する排ガス浄化装置35と、外気を除塵するエアクリーナ19cからの空気を燃焼室13に導入する吸気装置19とを備えている。
【0036】
排ガス浄化装置35は、排気通路を形成する排気管18に介装され排ガスを浄化する第1排ガス浄化装置31と、同じく排気管18に介装され前記第1排ガス浄化装置3の排気下流側に配置された第2排ガス浄化装置32と、第1排ガス浄化装置31と第2排ガス浄化装置32間を連結する排気管18を構成する第1排気管18aに配設され、排ガス浄化のため還元剤を排ガス中に噴射する還元剤噴射弁52を有する還元剤供給装置5と、該還元剤供給装置5の還元剤噴射弁52と第2排ガス浄化装置32間に配置され、排気通路を流れる排ガスに空気振動を伝播する還元剤拡散装置7と、還元剤供給装置5の作動を制御するエンジン制御装置(ECU)55と、を備えている。
【0037】
図4に示すように、還元剤拡散装置7は、容積部71と、該容積部71を変形させて、容積部71内に空気振動を生起させる駆動手段とを備えている。
駆動手段は、容積部71を変形させるカム72と、カム72の軸に連結して、カム72を回転駆動させる駆動部材であるモータ73と、モータ73の駆動を制御するエンジン制御装置(ECU)55とを備えている。
【0038】
図5は第2実施形態における還元剤拡散装置を示す。
還元剤拡散装置7は、第1排気管18aの外周壁に周方向に均等に開口した4か所の開口部6aと、夫々の開口部6aと連通する4個の容積部71と、該容積部71の空気入出部71bと開口部6aとを連通させる連通管74a、74b、74c、74dと、4個の容積部71の夫々の底部71aが正方形の一辺を成す空間部を形成するように配置して、その空間部に底部71aを変形させるカム72を配置している。
カム72を矢印の方向に回転させると、カム72の頂部が順次底部71aを変形させ、容積部71内の空気(排ガス)の粗密振動を生起させる。
【0039】
図7は第2実施形態における容積部の可変構造図の一例を示す。
容積部71は、頂部に空気入出部71bを有したシリンダ71cと、該シリンダ71cの内部を軸線方向に摺動するピストン71hと、該ピストン71hのピストンロッド71fを介してピストン71hを駆動するカム72と、ピストンロッド71fとカム72との間に介装され、ピストンロッド71fとカム72との滑りを安定させるタペット71dと、シリンダ71cに設けられたスプリング受71gとタペット71d間に介装され、ピストン71hを常時カム72側に押圧しているリターンスプリング71eとを備えている。
【0040】
図7(A)は、容積部71内の容積Sは通常状態を示している。 図7(B)は、カム72が矢印方向に回転すると、カム72の頂部がピストン71hを上方へ押上げる。容積部71内の容積Sは減少すると共に、ピストン71hの上昇による容積S内の圧力上昇によって、空気(排ガス)の一部は、空気入出部71bから排気通路に噴出していく。
図7(C)は、カム72の頂部がさらに矢印方向に回転すると、ピストン71hは、リターンスプリング71eによって戻される。
容積部71内の容積Sは拡大するため、排気通路の排ガスは空気入出部71bから容積部71内に侵入してくる。
この繰り返しにより、容積部71内に空気振動が生起される。
【0041】
容積部71の可変構造は、容積Sをピストン71hとカム72とによって強制的に変化させる構造であり、排気通路の排ガスに強力な空気振動を伝播すると共に、エンジン1の回転数、負荷によってカム72の回転数を変えることが可能となり、効果的な還元剤の排ガス中への拡散を行うことができる。
尚、本実施形態では、カム72の頂部は1個になっているが、状況に合わせて複数に形状変更することは容易である。
【0042】
図8は実施形態における他の容積部の可変構造図を示す。
容積部75は、頂部に空気入出部75bが形成され、該空気入出部75b以外は閉塞された容積体を成している。
空気入出部75bと対向した底部75aは、弾性変形可能な部材(例えば、板状のゴム、又は断面がジャバラ状で同心円状に形成された金属または樹脂材等)で形成されている。
【0043】
図8(A)は、容積部75内の容積Sは通常状態を示している。 図8(B)は、カム72が矢印方向に回転すると、底部75aは、カム72の頂部によって弾性変形させられて上方へ押上げられる。容積部75内の容積Sは減少すると共に、底部75aの上昇による容積S内の圧力上昇によって、空気(排ガス)の一部は、空気入出部75bから排気通路に噴出していく。
図8(C)は、カム72の頂部がさらに矢印方向に回転すると、底部75aは、弾性力によって戻される。
容積部75内の容積Sは拡大するため、排気通路の排ガスは空気入出部75bから容積部75内に侵入してくる。
この繰り返しにより、容積部75内に空気振動が生起される。
【0044】
図9は実施形態における他の容積部の可変構造図を示す。
容積部91は、頂部に空気入出部91bを有したシリンダ91cと、該シリンダ91cの内部を軸線方向に摺動するピストン91aと、該ピストン91aのピストンロッド91eを介してピストン91aをシリンダ91cの軸線方向に駆動する駆動手段92とを備えている。
【0045】
駆動手段92は、ピストン91aに固着され、外周部に螺旋状のネジ部を備えたピストンロッド91eと、ピストンロッド91eの螺旋状のネジ部に螺合すると共に、シリンダ91cの底部91dに装着された軸受部材91fを介して、ピストンロッド91eの軸線に沿って回動可能に支持された従動歯車91jと、該従動歯車91jに噛合して従動歯車91jを正転、又は逆転駆動する駆動歯車91hと、駆動歯車91hの駆動源であるステップモータ91kと、ステップモータ91kの駆動を制御するエンジン制御装置(ECU)55とを備えている。
【0046】
エンジン制御装置(ECU)55は、エンジン1の回転数及び負荷に対応して、ステップモータ91kを正転、又は逆転させて、駆動歯車91h、従動歯車91jを介してピストンロッド91eを軸線方向に移動させて、容積部91の容積Sを変化させる。
この場合、容積Sは運転状況によって変化する。
従って、排気通路を流れる排ガスは粗密部が交互になる、いわゆる脈流状態で流れる。
通過する排ガスの脈流に排ガスの粗密が交互に空気入出部91bを介して容積部91に作用する。容積部91内の空気(排ガス)は繰返しの圧力を受けることになり、空気振動を発生させる。
容積部91内で発生した空気振動は、容積に対して絞った断面積の空気入出部91bから排気通路内に噴出して、排ガスの流れに対し直角方向から衝突するので、排ガスは乱流となり、排ガス中の還元剤は排ガス中に拡散される。
【0047】
本実施形態においては、容積部71(75又は91)に連通した開口部6aを第1排気管18aの外周に等間隔で4個配設したので、カム72の回転により、空気振動は、周方向(第1排気管18a)に順次噴射タイミングをずらして噴射され、開口部6aからの空気振動が排気通路を流れる排ガスに伝播され、排ガスの流れは乱流となる。
しかも、1個前の開口部6aから噴射された空気振動で、排気通路の排ガスは乱流となり、排ガスの主流部分は排気流路の中心からずれる。
中心からずれた排ガスは次の開口部6aから噴射された空気振動によって振動が付与されるので、排ガスは排気通路内で排気通路軸芯を中心とした旋回流が生起され、排ガスと還元剤との混合が促進される。
また、空気振動は、駆動部材による強制的で且つ、振幅(強さ)を容易に調整できるので、還元剤は排ガス中に効率よく拡散される。
また、カム72の駆動は、エンジン制御装置(ECU)55によって制御される電動モータによって駆動されるため、エンジン1の回転数、負荷に合わせた回転数にすることができ、より効率的な排ガスと還元剤との混合が可能となり、排ガス浄化装置3の効果を向上させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
本実施形態は、第2実施形態に対し、還元剤拡散装置の容積部に連通した開口部の配置構造が異なる以外は同じなので、還元剤拡散装置以外の説明は省略する。
また、同一部品は、同一符号を付して、説明は省略する。
【0049】
図2に基づいて還元剤拡散装置8を説明する。
還元剤拡散装置8は、容積部71と、該容積部71を変形させて、容積部71内に空気振動を生起させる駆動手段とを備えている。
駆動手段は、容積部71を変形させるカム72と、カム72の軸に連結して、カム72を回転させる駆動部材であるモータ73と、モータ73の駆動を制御するエンジン制御装置(ECU)55とを備えている。
【0050】
還元剤拡散装置8の容積部71の配置詳細を図6(A)に基づいて説明する。
還元剤拡散装置8は、第1排気管18aの外周壁に、第1排気管18aの軸芯CLを中心にして、第1排気管18aの外周壁側に間隔2L[図6(A)においては上下方向]を有した位置に開口した2か所の開口部6aと、夫々の開口部6aと連通する2個の容積部71と、該容積部71の空気入出部71bと開口部6aとを連通させる連通管74e、74fと、2個の容積部71の底部71aが間隔を有して対向し、該間隔を有して対向した空間部に底部71aを変形させるカム72を配置している。
2個の開口部6aの一方は、軸芯CLに対し上側[図6(A)において]に位置し、他方は、軸芯CLに対し下側[図6(A)において]に位置するようになっている。
一方(上側)の開口部6aから噴射される空気振動の方向と、他方(下側)の開口部6aから噴射される空気振動の噴出方向を同一方向に設置してある。
カム72を矢印の方向に回転させると、カム72の頂部が底部71aを順次変形させ、容積部71内の空気(排ガス)容積を変動させて空気疎密波を形成して振動させる。
【0051】
本実施形態では、第1排気管18aの外周壁2か所の開口部6aが、第1排気管18aの軸芯CLに対して上下に夫々がオフセットした状態で配設されている。
従って、排気通路の排ガスは、一方の開口部6aから噴出した空気振動によって第1排気管18aの内壁面に沿った旋回流を生起する。
ところが、カム72が180度回転して、他方の開口部6aから噴出した空気振動は、第1排気管18aの内壁面に沿った旋回流を逆方向に旋回させるように作用する。
排ガスは、乱流となって排気通路下流側に流れるので、排ガスと還元剤の混合は促進され、排ガス浄化装置3の浄化効率を向上させることができる。
【0052】
(第4実施形態)
本実施形態は、第3実施形態に対し、連通管の配置を変え開口部6aからの空気振動の噴出方向を変えた以外は同じなので、連通管の配置以外の説明は省略する。
また、同一部品は、同一符号を付して、説明は省略する。
【0053】
還元剤拡散装置9の容積部71の配置詳細を図6(B)に基づいて説明する。
還元剤拡散装置9は、第1排気管18aの外周壁に、第1排気管18aの軸芯CLに対して夫々対向した位置で且つ、噴射方向が夫々反対方向に噴出させると共に、夫々の噴射方向が軸芯CLに対しオフセットmするように配置された2か所の開口部6aと、夫々の開口部6aと連通する2個の容積部71と、該容積部71の空気入出部71bと開口部6aとを連通させる連通管74e、74gと、2個の容積部71の底部71aが間隔を有して対向し、該間隔を有して対向した空間部に底部71aを変形させるカム72を配置している。
2個の開口部6aの一方は、軸芯CLに対し上側[図6(B)において]に位置し、他方は、軸芯CLに対し下側[図6(B)において]に位置するようになっている。
一方(上側)の開口部6aから噴射される空気振動の方向と、他方(下側)の開口部6aから噴射される空気振動の噴出方向を逆方向に設置してある。
カム72を矢印の方向に回転させると、カム72の頂部が底部71aを順次変形させ、容積部71内の空気(排ガス)を振動させる。
【0054】
このようにすることで、排気通路の排ガスは、一方の開口部6aから噴出した空気振動によって第1排気管18aの内壁面に沿った旋回流を生起する。
更に、カム72が180度回転して、他方の開口部6aから噴出した空気振動は、第1排気管18aの内壁面に沿った旋回流を更に旋回させるように作用する。
従って、排ガスと還元剤は、排気通路内を強い旋回流を発生しながら流れるので、排ガスと還元剤との混合は促進される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
内燃機関から排出される排ガス中に還元剤を噴射して混合させ、触媒にて排ガス中の有害物質を除去する内燃機関の排気浄化装置に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン(内燃機関)
3、35 排ガス浄化装置
5 還元剤供給装置
6、7、8、9 還元剤拡散装置
6a 開口部
13 燃焼室
18 排気管
18a 第1排気管(壁面)
19 吸気装置
21 ターボチャージャ
31 第1排ガス浄化装置
32 第2排ガス浄化装置
51 還元剤貯溜タンク
52 還元剤噴射弁
61、71、75、91 容積部
71b、75b、91b 空気入出部
S 容積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9