(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記距離測定手段は、前記回転体の前記磁石と前記被加熱物との間の静電容量の変化、またはレーザー光の変化に基づいて、前記距離を測定するものである請求項2または3に記載の電磁誘導加熱装置。
前記第1の温度と前記第2の温度との差が50〜150℃になるように、前記回転体の回転数および前記磁石と前記被加熱物との距離の少なくとも一方を変化させる請求項5に記載の電磁誘導加熱装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工によりアルミホイールのリム部の一部を形成する製造方法では、半製品状のアルミホイールを加工する前にあらかじめ加熱して加工に適した温度にしておく必要がある。特許文献1には加熱炉を用いて加熱することが記載されているが、加熱炉で半製品状のアルミホイールをあらかじめ加熱する工程には時間がかかり、アルミホイール製造設備の大規模化につながるという問題がある。
そこで、本発明
の課題は、半製品状の軽合金ホイールなどの被加熱物を効率的に加熱して短時間で所定温度とすることができる電磁誘導加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の発明者らは、電磁誘導加熱を用いることにより、従来の加熱炉による製造方法よりも短時間で被加熱物を効率よく加熱できることを見出し、本発明に至った。
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]被加熱物側に同じ極が位置するように複数の磁石が配置された回転体と、前記回転体を回転させる回転駆動手段と、
前記被加熱物の温度を測定する温度測定手段と、
前記回転体および前記被加熱物の少なくとも一方を移動させることにより、前記回転体と前記被加熱物との距離を変化させる移動手段と、を備えており、前記回転体を回転させて生じる誘導電流により前記被加熱物を加熱することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【0010】
[2]複数の前記磁石と前記被加熱物との距離を測定する距離測定手段をさらに備えており、前記移動手段は、前記距離測定手段が測定した距離に基づいて、前記回転体および前記被加熱物の少なくとも一方を移動させる
[1]に記載の電磁誘導加熱装置。
【0011】
[3]前記距離測定手段を複数備えており、前記移動手段は、前記複数の距離測定手段によって検出された複数の距離のうちの最大値または最小値に基づいて、前記被加熱物および前記回転体の少なくとも一方を移動させる
[2]に記載の電磁誘導加熱装置。
【0012】
[4]前記距離測定手段は、前記回転体の前記磁石と前記被加熱物との間の静電容量の変化、またはレーザー光の変化に基づいて、前記距離を測定するものである
[2]または[3]に記載の電磁誘導加熱装置。
【0013】
[5]被加熱物側に同じ極が位置するように複数の磁石が配置された回転体と、前記回転体を回転させる回転駆動手段と、前記被加熱物の温度を測定する温度測定手段と、前記回転体および前記被加熱物の少なくとも一方を移動させることにより、前記回転体と前記被加熱物との距離を変化させる移動手段とを備えており、前記回転体には複数の前記磁石が配置されており、前記被加熱物は、半製品状の軽合金ホイールであり、前記温度測定手段は、前記半製品状の軽合金ホイールにおける、前記回転体側の第1の温度と、前記回転体と反対側の第2の温度とを測定し、前記移動手段は、前記第1の温度および前記第2の温度に基づいて、前記距離を変化させ、前記回転駆動手段は、前記第1の温度および前記第2の温度に基づいて、前記回転体の回転数を変化させ、前記回転体を回転させて生じる誘導電流により前記被加熱物を加熱することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
[6]前記第1の温度と前記第2の温度との差が50〜150℃になるように、前記回転体の回転数および前記磁石と前記被加熱物との距離の少なくとも一方を変化させる[5]に記載の電磁誘導加熱装置。
【0014】
[7]電磁誘導によって半製品状の軽合金ホイールを加熱する加熱工程を備えている、軽合金ホイールの製造方法において、前記加熱工程は、前記半製品状の軽合金ホイールの下方において、請求項1の電磁誘導加熱装置の前記回転体を回転させることによって生じる誘導電流により前記半製品状の軽合金ホイールを加熱する
ことを特徴とする軽合金ホイールの製造方法。
【0015】
[8]前記半製品状の軽合金ホイールを形成する鋳造工程と、前記加熱工程により加熱された軽合金ホイールを加工する加工工程と、を備えている
[7]に記載の軽合金ホイールの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被加熱物側に同じ極が位置するように複数の磁石が配置されていることによって、磁力線が平行となって遠くにまで到達するから、回転体の回転により生じる誘導電流により効率よく被加熱物を加熱することができる。したがって、半製品状の軽合金ホイールのような被加熱物を効率よく加熱して短時間で所定温度とすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ以下に説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る電磁誘導加熱装置1の概略構成を模式的に示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態の電磁誘導加熱装置1は、回転体2、回転駆動モータ(回転駆動手段)3、距離測定手段4、温度測定手段5、移動用モータ(移動手段)6、および制御手段7を備えている。
【0019】
図2は、
図1におけるAA矢視図であり、回転体2に磁石21が設けられた面(以下、「磁石面」ともいう)側から見た正面図である。
図1および
図2に示すように、回転体2は円盤の一方の面に複数の磁石21が、同心円状(円環状)に配置されて構成されている。回転体2は、磁石面とは反対の面において、磁石21の同心円の中心の位置で回転軸22を介して回転駆動モータ3と接続されている。回転駆動モータ3で回転体2を回転し、被加熱物8に誘導電流を生じさせて加熱する。回転体2と回転駆動モータ3とを繋げる手段としては回転軸22の他、チェーン、ベルトなど他の公知の手段を用いてもよい。
【0020】
磁石21としては、フェライト磁石、サマコバ磁石(Sm−Co系マグネット)、ネオジウム磁石(Nd−Fe−B系マグネット)などの希土類磁石、アルニコ磁石(Al・Ni・Co磁石)等を用いることができる。被加熱物8を効率よく加熱する観点から、希土類磁石等の磁力が強い磁石が好ましい。
【0021】
図3は回転体2および被加熱物8の側面図である。同図中の磁石21に付した矢印は、始点側がS極側を示しており、終点側がN極側を示している。
図3には、全ての磁石21のN極が被加熱物8側に位置する例を示したが、全ての磁石21のS極が被加熱物8側に位置する構成としてもよい。全ての磁石21を被加熱物8側に同じ極が位置するように配置することにより
図3に点線矢印で示すように磁束が平行になり、回転体2から遠くの位置にまで磁力線が到達する。したがって、回転体2を回転させることにより、被加熱物8の広い範囲において大きな渦状の誘導電流(以下、「渦電流」ともいう。)を発生させることができるから、被加熱物8を効率良く加熱することができる。
【0022】
図3では、被加熱物8に誘導電流を生じさせるために、回転体2を回転させる構成を示した。しかし、被加熱物8を回転させて、回転体2を固定することにより、誘導電流を生じさせる構成としてもよい。ただし、回転体2を回転させることによって磁石21の冷却効果が得られることから、キュリー点が比較的低い希土類磁石を磁石21として用いる場合、回転体2を回転させる構成が好ましい。電磁誘導加熱装置1は、冷却ファンなどの冷却手段を用いて磁石21を冷却することとしてもよい。
【0023】
回転駆動モータ3(
図1に参照)は、回転軸22を介して回転体2を回転駆動するものであり、後述する制御手段7により、回転トルク、回転数等を変更可能に構成されている。
【0024】
距離測定手段4は、回転体2の磁石21の被加熱物8側端と被加熱物8との距離Dを測定するものである。距離測定手段4としては、例えば、回転体2の磁石21と被加熱物8との間の静電容量の変化や、両者の間隙を通過するレーザー光の変化を検知する手段が挙げられる。
【0025】
図1には距離測定手段4を2つ備えた例を示したが、距離測定手段4は、1個または3個以上であってもよい。測定精度の観点から、複数の距離測定手段4を用いて距離Dを測定することが好ましい。
【0026】
温度測定手段5は、被加熱物8の温度を測定して結果を制御手段7に出力する。温度測定手段5として、熱電対等の公知の温度センサを用いることができる。
図1に示すように被加熱物8の温度を1箇所で測定する構成としてもよいが、被加熱物8の部位ごとに温度を測定する必要がある場合には、複数の温度測定手段5を用いて被加熱物8の温度を測定することが好ましい。
【0027】
移動用モータ6は、回転駆動モータ3を回転軸22と平行な方向に移動させて、回転体2と被加熱物8との距離Dを変化させるものである。例えば、距離測定手段4によって被加熱物8が熱膨張して距離Dが小さくなった
と測定された場合、被加熱物8から離れる方向に回転駆動モータ3を移動させて距離Dを加熱効率の良好な大きさに維持することができる。
【0028】
図1には、回転体2の位置を変化させるために、回転駆動モータ3を移動させる移動用モータ6を備えた構成を示したが、被加熱物8の位置を移動させる構成、または、回転体2および被加熱物8の位置をそれぞれ移動させる構成としてもよい。
【0029】
制御手段7は、上述した回転駆動モータ3、距離測定手段4、温度測定手段5および移動用モータ6と有線または無線で電気的に接続され、それぞれを制御するものであり、例えばコンピュータなどを用いて構成することができる。制御手段7による制御について、以下に説明する。
【0030】
制御手段7は、距離測定手段4により測定された距離Dを用いて回転駆動モータ3や移動用モータ6を制御する。被加熱物8の加熱により膨張変形していること検知した場合、回転駆動モータ3を停止したり、移動用モータ6により回転体2を移動させたりする。これにより、回転体2と被加熱物8とが接触することを防止できる。例えば、回転体2と被加熱物8との距離Dが接触の危険があるほど小さくなった場合、被加熱物8から離れる方向に回転体2を移動させる。この際、距離Dを加熱効率が良好な距離に維持すれば、加熱効率を良好にすることができる。
【0031】
制御手段7は、温度測定手段5により測定された被加熱物8の温度を用いて回転駆動モータ3や移動用モータ6を制御することができる。例えば、被加熱物8が所定温度に到達するまでは、加熱効率が高い距離Dおよび回転数に維持し、目的の温度に近づくにつれて距離Dおよび回転数を変化させることにより、被加熱物8の温度を精緻に制御できる。被加熱物8が所定温度に到達した時点で、回転駆動モータ3を停止させて、回転体2を被加熱物8から離れる方向に移動させてもよい。
【0032】
電磁誘導加熱装置1が距離測定手段4を複数備えている場合、制御手段7は、検出された複数の距離Dのうちの最大値または最小値を用いて各部を制御してもよい。
【0033】
被加熱物8は、磁界を変化させることにより渦電流が生じる素材からなるものである。被加熱物8は、例えば、アルミニウムを含有するアルミニウム合金などからなる物、具体的には、アルミサッシ、アルミホイールなどが挙げられる。また、アルミニウム、マグネシウム、チタンなど軽金属を主体とする合金である軽合金からなる物も被加熱物8として加熱することができる。
【0034】
図4は本実施形態の電磁誘導加熱装置1の変形例を模式的に示すブロック図である。同図に示すように、被加熱物8の両側にそれぞれ電磁誘導加熱装置1を配置する構成としてもよい。電磁誘導加熱装置1を複数用いることにより、被加熱物8が所定の温度に達するまでの時間を短縮したり、被加熱物8をより高温にしたりすることができる。
【0035】
(第二の実施形態)
第一の実施形態において説明した電磁誘導加熱装置1を用いて、軽合金ホイールの一例であるアルミニウム合金製の半製品状のアルミホイールを加熱するアルミホイールの製造方法について説明する。
【0036】
図5は本発明の第2の実施形態に係るアルミホイールの製造方法のフローチャートである。同図に示すように、本実施形態のアルミホイールの製造方法は、所定のアルミニウム合金材を鋳造して半製品状のアルミホイールを形成する鋳造工程S1と、鋳造工程S1にて形成された半製品状のアルミホイールを加熱する加熱工程S2と、加熱工程S2において加熱された半製品状のアルミホイールを加工して所定の形態からなるリム部を形成する加工工程S3とを備えている。
【0037】
(鋳造工程S1)
鋳造工程S1は、鋳型により形成されるキャビティ内に溶湯を注入し、冷却した後、型開きしアルミニウム合金製鋳物である半製品状のアルミホイールを形成する工程である。一体型(ワンピースタイプ)のアルミホイールを製造する場合、リム部とディスク部とを一体的に形成する。分離型(ツーピースタイプ)のアルミホイールを製造する場合、リム部とディスク部とを別々に形成する。いずれの場合にも、後の加工工程S3によってリム部の一部を変形させてリム部を所定の形状とする。
本発明においては、鋳造工程S1により形成されたアルミニウム合金製鋳物を半製品状のアルミホイール(ニアネットシェープ)という。
【0038】
(加熱工程S2)
加熱工程S2は、後の加工工程S3において加工に適した温度に半製品状のアルミホイールを予め加熱しておく工程である。
従来、加工工程の前に半製品状のアルミホイールを例えば150〜400℃程度の加工に適した温度に加熱するために加熱炉が用いられていた。しかし、加熱炉を用いた加熱は、半製品状のアルミホイールを所定温度に加熱するまでに長時間を要すること、および加熱炉が広い設置場所を必要とすることから、アルミホイール製造の経済性を低下させる一因となっていた。
【0039】
また、従来の加熱炉を用いた加熱では、半製品のアルミホイールの全体が所定温度にまで加熱される。しかし、加工工程S3において加工されるのは半製品のアルミホイールの一方の側面のリム部のみである。例えば、一体型のアルミホイールを加工する場合、鋳造工程S1で形成されたディスク部が加工工程S3によって変形しないように、他方の側面は低い温度に維持することが好ましい。したがって、半製品のアルミホイールの側面うち、塑性変形される一方の側面が他方よりも高い温度になるように加熱することができれば、アルミホイール製造における効率をさらに向上させることができる。
【0040】
そこで、本実施形態のアルミホイールの製造方法の加熱工程S2は、電磁誘導加熱装置1を用いた電磁誘導によって半製品状のアルミホイールを加熱する。電磁誘導加熱装置1は、半製品状のアルミホイールを効率よく加熱でき、また、狭い場所にも設置できる。したがって、アルミホイールの製造に要する時間、エネルギー、空間等を抑制することが可能である。
【0041】
また、電磁誘導加熱装置1を用いることにより、半製品状のアルミホイールの一方の側面を選択的に加熱して高い温度とすること、すなわち半製品状のアルミホイールに温度勾配が生じるように加熱することができる。したがって、加工工程S3において、一方の側面を加工に適した温度とし、他方の側面を意図しない変形などが生じない温度とすることができる。
【0042】
電磁誘導加熱装置1を用いた加熱工程S2によれば、半製品状のアルミホイールを例えば150〜500℃程度に加熱することが可能である。
【0043】
(加工工程S3)
加工工程S3は、鋳造工程S1において形成された半製品状のアルミホイールを所定形状に変形する工程である。加工工程S3としては、例えば、塑性加工工程や、鍛造(プレス)工程等が挙げられる。
塑性加工工程は、半製品状のアルミホイールを耐圧性の型枠に入れて型枠ごと回転させながら、後にリム部を形成することとなる部分にローラを所定圧力にて押しつけて移動させることにより、所定形状とする工程である。塑性加工工程において、半製品状のアルミホイールにおいて、完成品よりも肉厚に形成されているリム部を引き伸ばす加工を行う。
鍛造工程は、半製品状のアルミホイールを耐圧性の金型に入れ、高圧プレスにより所定形状のアルミホイールを形成する工程である。鍛造工程は、バスやトラックのような大型車のアルミホイールの製造に好適に用いられる。
【0044】
完成品のアルミホイールに変形を生じさせない観点から、加工工程S3が終了した時点においてアルミホイール全体の温度が均一であることが好ましい。塑性加工によって所定形状とされる場合、加工工程S3で引き伸ばされる一方の側のリム部のほうが他方の側よりも温度低下の程度が大きい。このため、加工工程S3が開始する時点において、加工される一方の側のリム部の温度を高くしておくことにより、ひずみが抑えられたアルミホイールとすることができる。この観点から、引き伸ばされる一方の側のリム部と他方の側のリム部との温度差は、加工工程S3が終了した時点おいて、100℃以内であることが好ましく、50℃以内であることがより好ましく、30℃以内であることがさらに好ましい。なお、ここでいう「温度差」は、引き伸ばされる一方の側と、他方の側のそれぞれのリム部の温度の平均値をいう。
【0045】
図6は、本実施形態における電磁誘導加熱装置1を用いた加熱工程S2を模式的に示すブロック図である。同図に示す電磁誘導加熱装置1は、温度測定手段5として、半製品状のアルミホイール81の回転体側の第1の温度を測定する温度測定手段5Aと、回転体2とは反対側の第2の温度を測定する温度測定手段5Bとを備えている。以下では、「半製品状のアルミホイール81」を、適宜、「アルミホイール81」ともいう。
【0046】
図6に示すように、加熱工程S2では、被加熱物8である半製品状のアルミホイール81の下方側のみにおいて回転体2を回転させる。これにより、半製品状のアルミホイール81の一方側のみを加熱することができるから、アルミホイール81に温度勾配を生じさせて、加工工程において加工される側面を選択的に高温にすることが可能である。また、回転体2をアルミホイール81の下方で回転させることにより、加熱されたアルミホイール81の熱が磁石21に対して影響を及ぼすことを抑制できる。
【0047】
加熱工程S2(
図5参照)では、制御手段7は、温度測定手段5Aおよび5Bにより測定される第1の温度および第2の温度を用いて、回転駆動モータ3および移動用モータ6を制御する。これにより、半製品状のアルミホイール81の両側面のうち、回転体2側の側面を加工に適した所定温度とし、回転体2の反対側の側面を意図しない変形が生じない温度とすることができる。
【0048】
加熱工程S2における加熱効率および半製品状のアルミホイール81の両側面を加工工程S3に適した温度にする観点から、加熱工程S2における温度測定手段5Aおよび5Bにより測定される第1の温度と前記第2の温度との差を、50〜150℃とすることが好ましく、70〜130℃とすることがより好ましく、80〜130℃とすることがさらに好ましい。
【0049】
なお、第二の実施形態では、本発明の電磁誘導加熱装置1をアルミホイールの製造方法に用いる場合について説明した。アルミサッシを製造する場合、ダイスを通過させて柱状のアルミニウム合金原料を所定形状とする前に所定温度に加熱しておく必要がある。この場合、本発明の電磁誘導加熱装置1を用いれば、温度勾配が生じるように柱状のアルミニウム合金原料を加熱することができる。柱状のアルミニウム合金原料の最初にダイスを通過する側を後にダイスを通過する側よりも高温に加熱することで、加工工程の終了時におけるアルミサッシの温度を均一として、温度の不均一によるひずみの少ないアルミサッシを効率よく製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の構成を備えた電磁誘導加熱装置1(
図5参照)を用いて、被加熱物8の回転体2側端面に穴をあけて側端面から44mmのところに埋め込んだ熱電対よりなる温度測定手段5Aを用いて測定した。
・被加熱物
・材質:アルミニウム合金製
・外形:直径425mm×118mm
・重量:11.8kg
・比熱:900(J/Kg K)(20℃)
・熱伝導率:204(W/m K)
【0051】
(実施例1)
直径390mmの円周上に28個のネオジウム磁石が均等配置された回転体2、および出力11KWの回転駆動モータ3を備えた電磁誘導加熱装置1を用いた。被加熱物8から回転体2の磁石21までの距離Dを2.0mm、2.5mm、3.0mmに設定した。それぞれの距離について回転体2の回転数を変化させて、室温と被加熱物8の温度差が100℃になるまで、すなわち被加熱物8の温度が室温から100℃上昇するまでに要する時間(秒)を測定した。表1および
図7に結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)
実施例1と同じ電磁誘導加熱装置1を用いて、被加熱物8の端から回転体2の磁石21までの距離Dを2.6mm、2.8mm、3.0mmに設定した。それぞれの距離について回転体2の回転数を変化させて、室温と被加熱物8の温度差が200℃になるまで、すなわち被加熱物8の温度が室温から200℃上昇するまでに要する時間(秒)を測定した。表2および
図8に結果を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
(実施例3)
実施例1と同じ電磁誘導加熱装置1を用いて、実施例1において最も短い時間で加熱できたD=2.0mmで、回転数1750rpmで、846秒間加熱することにより、被加熱物を350℃とすることができた。
【0056】
(実施例4)
ネオジウム磁石の代わりにフェライト磁石を備えた回転体2を用いた点、および回転駆動モータ3の出力が3.5KWである点において、実施例1とは異なる電磁誘導加熱装置1を用いた。被加熱物8の端から回転体2の磁石21までの距離Dを1.8mm、2.0mm、2.2mm、2.4mm、2.6mm、2.8mmに設定した。それぞれについて、回転体2の回転数を変化させて、室温の被加熱物8が40℃になるまでに要する時間(秒)を測定した。表3および
図9〜
図11に結果を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例1〜4の結果から以下のことが分かった。
(1)ネオジウム磁石を用いた実施例1〜3および異方性フェライト磁石を用いた実施例4のいずれも、磁気誘導によってアルミニウム合金製の被加熱物を加熱することができた。
(2)ネオジウム磁石を用いることによりアルミニウム合金製の被加熱物を加工に十分な350℃にまで加熱することができた。
(3)ネオジウム磁石と異方性フェライト磁石とでは、加熱効率の良好な回転数が異なる。本実施例においては、ネオジウム磁石では約1750(rpm)、異方性フェライト磁石では約3100(rpm)がそれぞれ最適であった。
(4)被加熱物と磁石との距離Dを小さくすることが、加熱効率の向上に有効であった。
(5)被加熱物の回転体側の第1の温度とその反対側の第2の温度との差が100℃程度となる条件で加熱した場合に、200℃程度となる条件で加熱した場合よりも、加熱効率が良好であった。
【解決手段】電磁誘導加熱装置1は、被加熱物8側に同じ極が位置するように複数の磁石21が配置された回転体2と、回転体2を回転させる回転駆動モータ3と、を備えており、回転体2を回転させて生じる誘導電流により被加熱物8を加熱する。移動用モータ6で回転体2の磁石21と被加熱物8との距離Dを制御することにより、熱膨張係数の大きな軽合金ホイールなどを効率的によく加熱できる。