(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6120232
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】青果物の成熟抑制材
(51)【国際特許分類】
A23B 7/14 20060101AFI20170417BHJP
A01F 25/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
A23B7/14
A01F25/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-254424(P2015-254424)
(22)【出願日】2015年12月25日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】511300053
【氏名又は名称】株式会社エコハイテクコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 修司
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 良司
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−217559(JP,A)
【文献】
特開平07−115898(JP,A)
【文献】
特許第5070636(JP,B2)
【文献】
特開2003−176233(JP,A)
【文献】
特開平01−027429(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/021330(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00243567(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0092634(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0040643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00
A01F 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CiNii
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマトの葉の乾燥物と、脱水汚泥を150〜200℃の温度で30分間乾燥し、24時間自然冷却し、水分量を5%以下とした後に粉砕した脱水汚泥乾燥物とを含むことを特徴とする青果物の成熟抑制材。
【請求項2】
請求項1記載の青果物の成熟抑制材において、トマトの茎の乾燥物を含むことを特徴とする青果物の成熟抑制材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の青果物の成熟抑制材において、トマトの葉又は茎は粉末であることを特徴とする青果物の成熟抑制材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物の成熟抑制材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トマト等の青果物は成熟前に収穫し、流通過程で成熟させ、店頭に陳列して販売することが行われている。ところが、このようにするときには成熟の時期を制御することが難しく、店頭に陳列している間に成熟の最盛期を過ぎると商品価値が低下し、販売価格を下げざるを得ないという問題がある。
【0003】
一方、青果物の成熟には、青果物自体が放出するエチレンが関与していることが知られており、成熟の時期を制御するために、ゼオライト等のエチレン吸着剤を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−43583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ゼオライトをエチレン吸着剤として使用する際には、SiO
2とAl
2O
3との比(SiO
2/Al
2O
3)を10以上100以下とし、さらに0.01重量%以上のパラジウムを担持させる必要があり、コスト増が避けられないという不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、安価な材料で青果物の成熟を抑制することができる青果物の成熟抑制材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の青果物の成熟抑制材は、
トマトの葉の乾燥物と、脱水汚泥を150〜200℃の温度で30分間乾燥し、24時間自然冷却し、水分量を5%以下とした後に粉砕した脱水汚泥乾燥物とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明者らの検討によれば、草本植物の茎に含まれるリグニンもしくはリグニンと結合した物質又は、葉に含まれるタンニンもしくはタンニンと結合した物質により、前記青果物が放出するエチレンを吸収し、或いは前記青果物のエチレンの放出自体を抑制することができる。従って、前記草本植物の茎又は葉を含む青果物の成熟抑制材を前記青果物の付近に配設することにより、該青果物の成熟を抑制することができる。また、前記草本植物の茎や葉は、前記青果物を収穫後の廃棄物を利用することができるので、安価である。
【0009】
本発明の青果物の成熟抑制材において、前記草本植物は、トマ
トを用いることができる。
【0011】
また、本発明の青果物の成熟抑制材は、前記草本植物の茎又は葉が乾燥物である場合には、粉末にして用いることもできる。粉末にすることにより、シート又は成形体等に容易に混合することができる。
【0012】
また、本発明の青果物の成熟抑制材は、脱水汚泥乾燥物を含
む。前記草本植物の茎又は葉は、硫化物又は窒化物からなる悪臭物質を含んでいるので前記青果物の付近に配設するとその商品価値を損なうことがあり、未乾燥物の場合に特にその傾向が大きくなる。
【0013】
そこで、本発明の青果物の成熟抑制材は、前記脱水汚泥乾燥物を含むことにより、エチレンを吸収又はその放出を抑制する効果と同時に、前記悪臭物質を吸収することができる。前記脱水汚泥乾燥物としては、株式会社エコハイテクコーポレーション製エコソイル(商品名)を用いることができる。また、前記脱水汚泥乾燥物は、特許第5070636号公報に詳細な記載がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の青果物の成熟抑制材を付近に配設したトマトの糖度の経時変化を示すグラフ。
【
図2】脱水汚泥乾燥物によるアンモニアの吸着効果を示すグラフ。
【
図3】脱水汚泥乾燥物による硫化水素の吸着効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本実施形態の青果物の成熟抑制材は、草本植物の茎又は葉を含む。前記草本植物の茎はリグニンを含むものであればどのような草本植物の茎でもよく、該草本植物の葉はタンニンを含むものであればどのような草本植物の葉でもよい。
【0017】
本実施形態の青果物の成熟抑制材において、前記草本植物としては、例えば、トマト、ナス、ジャガイモ、トウモロコシ、シソからなる群から選択される少なくとも1種の植物であることが好ましい。尚、本実施形態においては、前記草本植物の茎又は葉は、該草本植物の一部であってリグニン又はタンニンを含むものであればよく、例えば、トウモロコシの莢等も含むものとする。
【0018】
本実施形態の青果物の成熟抑制材は、前記草本植物の茎又は葉が未乾燥物であるときには、パルプ等の吸湿材を含むことが好ましい。この場合、本実施形態の青果物の成熟抑制材は、例えば、シート状として用いるようにしてもよく、流通段階においてはコンテナの底に敷き詰めるような使用形態が考えられる。
【0019】
また、前記草本植物の茎又は葉が乾燥物であるときには、粉末として用いてもよい。この場合、本実施形態の青果物の成熟抑制材は、例えば、パルプモールドの果物トレイ等に配合して用いることができる。
【0020】
本実施形態の青果物の成熟抑制材は、さらに、脱水汚泥乾燥物(株式会社エコハイテクコーポレーション製、商品名:エコソイル)を含んでいてもよい。前記脱水汚泥
乾燥物は、脱水汚泥を150〜200℃の温度で30分間乾燥後、24時間自然冷却し、水分量を5%以下とした後に粉砕したものであり、水溶性の悪臭物質を効果的に吸収することができる。
【0021】
次に、本実施形態の青果物の成熟抑制材をトマトの付近に配設したときのトマトの糖度の経時変化を測定した。
【0022】
前記測定では、まず、収穫後の未成熟のトマトを2個(約400g)ずつ、7枚の2重チャック付きポリエチレン袋(220mm×180mm)に入れて密封し、3日後に開封した。各ポリエチレン袋のうち、ポリエチレン袋Aにはトマト以外何も入れず、ポリエチレン袋Bにはゼオライト5gを入れ、ポリエチレン袋Cにはトマトの茎の乾燥物3gを入れ、ポリエチレン袋Dにはトマトの茎の乾燥物5gを入れ、ポリエチレン袋Eにはトマトの葉の乾燥物3gと前記脱水汚泥
乾燥物3gとを入れ、ポリエチレン袋Fにはトマトの茎の乾燥物5gとトマトの葉の乾燥物5gと前記脱水汚泥
乾燥物3gとを入れ、ポリエチレン袋Gにはトマトの茎の乾燥物4gとトマトの葉の乾燥物8gと前記脱水汚泥
乾燥物3gとを入れた。
【0023】
開封直後、1日後、3日後、6日後、7日後に、各ポリエチレン袋に入れたトマトの糖度を糖度計(株式会社アタゴ製、商品名:PAL−1)により測定し、成熟状況を確認した。結果を
図1に示す。
【0024】
図1から、トマト以外何も入れなかったポリエチレン袋Aでは密封中に糖度の最高値に達し、その後は急速に糖度が低下したことがわかる。また、ポリエチレン袋C〜Gでは、トマトの茎又は葉の量を変えることにより、糖度の上昇又は下降を緩やかにすることができ、特に茎の量の多いポリエチレン袋Dの場合には糖度のピークを迎える時期を遅らせ、その後成熟に向かわせることができることがわかる。
【0025】
従って、本実施形態の青果物の成熟抑制材によれば、エチレンの吸収又は青果物自体のエチレンの放出を抑制することにより、成熟のタイミングを制御することができることが明らかである。この結果、例えば、青果物の流通期間又は店頭陳列期間を延長したり、店頭に陳列される時期を遅らせることができる。
【0026】
次に、前記脱水汚泥乾燥物の作用効果について説明する。
【0027】
まず、内容積500ミリリットルの密閉容器に、100ppmの濃度のアンモニアガスと、脱水汚泥乾燥物1g(株式会社エコハイテクコーポレーション製、商品名:エコソイル)とを投入し、ガスクロマトグラフィーにより該密閉容器中のアンモニアガスの残留濃度を経時的に測定した。結果を
図2に示す。
【0028】
図2から、前記密閉容器中のアンモニアガスの残留濃度は測定開始後10分で急激に低下し、60分後にはほぼゼロになっており、前記脱水汚泥乾燥物は優れたアンモニア吸着能を備えていることが明らかである。
【0029】
次に、内容積140リットルの密閉容器に、2.0ppmの濃度の硫化水素ガスと、脱水汚泥乾燥物20g(株式会社エコハイテクコーポレーション製、商品名:エコソイル)とを投入し、ガス腐食試験機(スガ試験機株式会社製、型式:GS−UV)により該密閉容器中の硫化水素ガスの残留濃度を経時的に測定した。結果を
図3に示す。
【0030】
図3から、前記密閉容器中の硫化水素ガスの残留濃度は測定開始から240分後に0.07ppmとほぼ1/3になっており、前記脱水汚泥乾燥物は優れた硫化水素吸着能を備えていることが明らかである。
【0031】
図2、
図3から、前記脱水汚泥乾燥物は、アンモニアに代表される窒化物や、硫化水素に代表される硫化物について、優れた吸着能を備えることが明らかである。従って、本実施形態の青果物の成熟抑制材は、前記脱水汚泥乾燥物を含むことにより、前記青果物に含まれる窒化物や硫化物等の悪臭物質を吸収することができ、該青果物の商品価値を高めることができる。
【要約】
【課題】安価な材料で青果物の成熟を抑制することができる青果物の成熟抑制材を提供する。
【解決手段】青果物の成熟抑制材は、草本植物の茎又は葉を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1