(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電気/電子機器の小型化に伴い、半導体装置等の電子部品を実装基板上に実装する際の実装密度を高めることが、重要になっている。この実装密度を高める手段の一つとして、従来のピン型ICパッケージに代わって、BGA(ボール・グリッド・アレイ)型ICパッケージが開発されている。このBGA型ICパッケージ1は、
図5に示すように、半導体チップ2と、半導体チップ2を載せた樹脂基板4と、樹脂基板4の下面に設けられ、半導体チップ2とボンディングワイヤ6及び電極3を介して電気的に接続されたはんだボール7とを備えている。
【0003】
従来のはんだボール7は、はんだ金属のみで形成されており、半導体チップ2及びボンディングワイヤ6は、封止樹脂8で封止される。そして、BGA型ICパッケージ1を実装基板9上に実装する際には、実装基板9の配線パターンのはんだランド9aにBGA型ICパッケージ1のはんだボール7を位置させ、そのはんだボール7を溶融、固化することにより、BGA型ICパッケージ1を実装基板9に電気的及び機械的に接続している。
【0004】
しかし、従来のBGA型ICパッケージ1のはんだボール7は、BGA型ICパッケージ1を実装基板9にはんだ接合により実装したとき、或いはその後の熱履歴により、はんだボール7が溶融してつぶれてしまったり、そのはんだボール7がつぶれないにしても、そのはんだボール7にクラックが入ったり、破壊したりして、BGA型ICパッケージ1と実装基板9との電気的接続及び機械的接合の信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
このような不具合を解消するために、熱でつぶれない球体をはんだ金属により被覆したはんだボールが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的に、このはんだボールは、耐熱性有機物からなる直径が200〜800μmの球体と、その球体の表面を被覆したはんだ金属殻とを備えてなるとしている。
【0006】
このようなはんだボールを用いた接合であれば、熱でつぶれない球体を有するので、接合の際の加熱、及びその後の熱履歴によりはんだボールがつぶれることはなく、接合の際の加熱、及びその後の熱履歴による熱膨張差により変形応力が発生したとしても、球体を構成する耐熱性有機物の弾性により吸収され、はんだボールにクラックが入ったり破壊したりすることを防止して、はんだ接合の信頼性を高めることが期待された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係る導電性ボール10の構成を示す断面図である。この
図1に示すように、本発明の導電性ボール10は、弾性体で形成された球体11と、その球体11の表面を被覆した耐熱膨張性樹脂殻12と、その耐熱膨張性樹脂殻12の外表面を被覆した導電性金属殻13とを備える。
【0022】
球体11を構成する弾性体としては、弾性を有し、かつ球体11に形成し得るものであればよく、例えばゴムを用いることができる。ゴムとしては、ゴムノキの樹液(ラテックス)によって作られる天然ゴムや、人工的に合成される合成ゴムが挙げられる。合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムが挙げられるが、中でもシリコーンゴム(有機シリコーン)を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性ボール10を、電極同士を接合するコネクタとして使用することを考慮すると、球体11の直径Dは、0.04〜2mmであることが好ましい。また、
図2に示すように、球体11は、平板状の電極を2g〜5gの加重で載せた場合にその直径Dが1%〜30%減少するような弾性率を有するものであることが好ましい。また、その加重を除けば元に戻ることが好ましい。
【0024】
球体11の直径を0.04mm以上とすることで、取り扱う機器の性能に関わらず、コネクタとしての取り扱いが容易となる。球体11の直径を2.0mm以下とすることで、本発明の導電性ボール10をコネクタとして用いた場合に、電極が形成された電子部品を実装基板上に実装する際の実装密度を高めることができる。したがって、球体11の好ましい直径は0.04〜2mmであり、0.1〜1mmであることがより好ましく、0.2〜0.5mmであることが更に好ましい。
【0025】
また、弾性率を測定するための電極から受ける加重を2g〜5gとするのは、電子部品を実装基板上に実装する際に導電性ボール10が受ける加重が一般的にその程度であると考えられるからである。そして、その電極を2g〜5gの加重で載せた場合の球体11の直径の減少が1%以上であれば、電極が導電性金属殻13と接触する十分な面積を得ることができ、電気抵抗が増す不具合を低減できる。また、電極を2g〜5gの加重で載せた場合の球体11の直径の減少が30%以下であれば、その変形に起因して球体11の外表面に形成される導電性金属殻13を損傷させにくくなる。したがって、球体11は、平板状の電極を2g〜5gの加重で載せた場合にその直径Dが1%〜30%減少するような弾性率を有するものが好ましく、3%〜20%減少するような弾性率を有するものがより好ましく、5%〜15%減少するような弾性率を有するものが更に好ましい。
【0026】
また、本発明の導電性ボール10を、電極同士を接合するコネクタとして使用することを考慮すると、球体11を200℃以上の耐熱性を有するゴムから構成することが好ましく、200℃以上の耐熱性を有するシリコーンゴムから構成することが更に好ましい。
【0027】
シリコーンゴムは、耐熱・耐水・耐薬品性に優れている事から、コネクタとしての使用環境に十分耐えうるものと成り、200℃以上の耐熱性を有するシリコーンゴムから球体11を形成すれば、本発明の導電性ボール10の使用温度範囲を著しく広げることができる。
【0028】
また、劣化が250℃を超えた場合に開始されるようなゴム(特にシリコーンゴム)から球体11を構成すれば、比較的高温による使用がなされても、球体11の劣化が防止され、その劣化に起因するガスが耐熱膨張性樹脂殻12の内部に溜まるようなことを回避し、ガス溜まりに起因する導電性金属殻13の破損を防止することができる。
【0029】
すなわち、球体11を構成する弾性体の耐熱性が200℃以上であれば、熱履歴に耐えうるコネクタとしての使用が可能になる。そして、球体11を構成する弾性体の耐熱性は250℃以上であることが好ましく、300℃を超えかつ400℃以下であることが更に好ましい。なお、本発明で言う「耐熱性」とは、JIS K7120に従った熱重量分析(TGA)にて重量減少率が1%に達する温度を意味する。
【0030】
導電性ボール10を形成するには、先ず、弾性体から成る球体11を形成する。この球体11の形成にあっては、弾性体を液状にて必要な量を抽出し、表面張力により球体を形成することが挙げられる。また、球体11の成形金型を製作し、弾性体を液状にして成形金型に注入し、球体11に形成する方法もある。更には、所定量の弾性体を上下の金型で押すように転がしながら擦り合わせて、球体11を形成する方法もある。
【0031】
弾性体で形成された球体11の表面は耐熱膨張性樹脂殻12により被覆される。この耐熱膨張性樹脂殻12は弾性体で形成された球体11の熱による膨張を防止して、その上に更に形成される導電性金属殻13の破損を回避するものである。このため、この耐熱膨張性樹脂殻12を構成し得る樹脂は、球体11の表面を被覆可能であり、被覆した状態で球体11の膨張を防止できる限りどのような樹脂であっても良い。けれども、本発明の導電性ボール10をコネクタとして使用する場合、−40〜400℃における引っ張り強度が1〜700MPaであって耐熱性が200℃以上の物性を持つ樹脂から成る耐熱膨張性樹脂殻12を球体11の表面に形成することが好ましい。なお、本発明で言う「引っ張り強度」は、JIS K7161に従った引っ張り試験を行うことで得られる強度を意味する。
【0032】
ここで、−40〜400℃における引っ張り強度が1〜700MPaであって耐熱性が200℃以上の物性を持つ樹脂としては、ポリイミドが好ましい。換言すれば、耐熱膨張性樹脂殻12は、ポリイミド又はポリイミドを含む材料で形成されていることが好ましい。ポリイミドを含む材料として、線膨張係数をより低く抑えるため、例えばポリイミドにCNF(セルロースナノファイバー)を混合した複合材料を用いることもできる。
【0033】
球体11の表面への耐熱膨張性樹脂殻12の形成は、例えば、
図3に示すように、耐熱膨張性樹脂殻12となる液状樹脂12a及びその耐熱膨張性樹脂殻12の内部に内包される液状の弾性体11aを、連続して流れる水性媒体14の流れに供給することが挙げられる(例えば、特開2004−290977。)。なお、使用する材料に関しては、例えば、弾性体11aはシリコーンゴムであり、液状樹脂12aはポリイミドのNMP(N−メチルピロリドン)溶液のNMPをトルエンに置換したもの、水性媒体は水である。
【0034】
図3では、液状樹脂12aと液状の弾性体11aを平行に流してその後に液滴とし、2つの材料11a,12aの界面張力差により、球体11となった液状の弾性体11aの表面に、液状の樹脂12aが均一の厚さで被覆された液滴16を生成する場合を示す。
【0035】
なお、球体11となった液状弾性体11aの表面が液状樹脂12aにより被覆された液滴16は、その後に水性媒体14から取出されて熱重合により固化される。これにより、
図1に示すように、弾性体で形成された球体11の表面に均一な厚さt2の耐熱膨張性樹脂殻12を容易に形成することが可能となる。
【0036】
そして、耐熱膨張性樹脂殻12が、ポリイミドなど、−40〜400℃における引っ張り強度が1〜700MPaであって耐熱性が200℃以上の物性を有する樹脂から成る場合、耐熱膨張性樹脂殻12の線膨張係数は、金属のものと略同一であり、この耐熱膨張性樹脂殻12が熱膨張することに起因して、その更に上に形成される導電性金属殻13が破損するようなことを防止することができる。そして、耐熱膨張性樹脂殻12の引っ張り強度は比較的高いために、耐熱膨張性樹脂殻12の厚さt2が球体11の直径Dの1%〜20%であれば、耐熱膨張性樹脂殻12における十分な引っ張り強度を得ることもできる。よって、導電性金属殻13を破裂させるような球体11の膨張を確実に防止することが可能となる。
【0037】
ここで耐熱膨張性樹脂殻12の厚さt2を球体11の直径Dの1%以上とすることで、導電性金属殻13を破裂させるような球体11の膨張を防止することができる。また、耐熱膨張性樹脂殻12の厚さt2を球体11の直径Dの20%以下とすることで、その成膜自体が容易となり、均一な厚さの耐熱膨張性樹脂殻12の形成が容易となるとともに弾性の柔軟さを確保することができる。したがって、耐熱膨張性樹脂殻12の好ましい厚さの範囲は球体11の直径Dの1%〜20%であり、より好ましい厚さの範囲は球体11の直径Dの2%〜10%であり、更に好ましい厚さの範囲は球体11の直径Dの3%〜6%である。
【0038】
このような耐熱膨張性樹脂殻12の外表面は導電性金属殻13により被覆される。この導電性金属殻13の形成は、従来のはんだボールの製造におけるものと同様であって、耐熱膨張性樹脂殻12の外表面に金属を蒸着することや、無電解メッキにより耐熱膨張性樹脂殻12の外表面に導電性金属殻13を形成することにより、行うことができる。
【0039】
導電性金属殻13は導電性を有する限り、どのような金属であっても良い。けれども、本発明の導電性ボール10をコネクタとして使用することを考慮すると、導電性金属殻13は、電気抵抗値が低く、塑性変形が容易な銅、金、銀若しくはパラジウム又はそれらを主成分として含む金属で形成されていることが好ましい。なお、「主成分」とは、50重量%以上含む成分を意味する。このような導電性金属殻13を有する導電性ボール10であれば、その導電抵抗を十分に低減させ、電極間に介在して、それらの電極間を比較的高い導電率で通電させるコネクタとして十分に使用可能なものとなる。
【0040】
この場合、導電性金属殻13の厚さt1を球体11の直径Dの0.1%以上とすることで、十分な導電性を得ることが可能となる。導電性金属殻13の厚さt1を球体11の直径Dの10%以下とすることで、導電性金属殻13の形成が容易となり変形による破損が生じにくくなり、その弾性の柔軟性を確保することができる。したがって、導電性金属殻13の好ましい厚さの範囲は球体11の直径Dの0.1%〜10%であり、より好ましい厚さの範囲は球体11の直径Dの0.5%〜5%であり、更に好ましい厚さの範囲は球体11の直径Dの1%〜3%である。
【0041】
次に、本発明の導電性ボールがコネクタとして使用される場合の作用及び効果について説明する。
【0042】
図4に、本発明の導電性ボール10がICパッケージ20の電極25と実装基板29における電極30とを接合するコネクタとして使用される場合を示す。
【0043】
この
図4に示すICパッケージ20は、上面電極23を有する樹脂基板24上に半導体チップ22が搭載され、その半導体チップ22上に設けられたパッド22aから上面電極23まではボンディングワイヤ26により接続されている。樹脂基板24上の半導体チップ22は、ボンディングワイヤ26及び上面電極23とともに封入樹脂28で封止されている。そして、樹脂基板24下面には上面電極23に通電する下面電極25が形成される。
【0044】
他方、実装基板29には、その表面に金属電極30が形成され、この実装基板29に形成された金属電極30とICパッケージ20に設けられた下面電極25は対向するように設けられる。本発明の導電性ボール20は、この金属電極30と下面電極25の間に挿入されて、この金属電極30と下面電極25を電気的に接続するコネクタとして使用される。
【0045】
この実施の形態では、ICパッケージ20が金具31により実装基板29に押しつけられる場合を示す。具体的に、金属電極30と下面電極25の間に導電性ボール10を介在させた状態でICパッケージ20は実装基板29上に載置され、その実装基板29上に載置されたICパッケージ20が、金具31により実装基板29に押しつけられる。
【0046】
ICパッケージ20が実装基板29に押しつけられると、
図2に示すように、それぞれの電極25,30間に介在する導電性ボール10はそれらの電極25,30により両側から圧縮されることになる。圧縮された導電性ボール10の最外周に形成された導電性金属殻13は、ICパッケージ20における下面電極25と実装基板29における金属電極30に接触して、それらを通電させて電気的に接続する。これにより、この導電性ボール10は、電極25,30間を通電させるコネクタとしての役割を果たすことになる。
【0047】
ここで、本発明の導電性ボール10は、弾性体で形成された球体11と、その球体11の表面を被覆した耐熱膨張性樹脂殻12と、その耐熱膨張性樹脂殻12の外表面を被覆した導電性金属殻13とを備える。このため、本発明の導電性ボール10では、この球体11の存在により、電極25,30間に介在してもつぶれてしまうようなことはない。
【0048】
また、球体11が弾性体で形成されているので、この導電性ボール10の弾性率は低い。このため、平面を成す電極25,30に挟まれてこの導電性ボール10が圧縮されると、導電性ボール10の電極25,30に接触する導電性金属殻13が容易に弾性変形して、それらの電極25,30と面接触し、導電性金属殻13と電極25,30との接触面積は拡大する。
【0049】
この場合、導電性金属殻13が銅、金、銀若しくはパラジウム又はそれらを主成分として含む金属で形成されている合金で形成されていれば、導電性金属殻13の導電性は向上する。また、導電性金属殻13の厚さt1が球体11の直径Dの0.1%〜10%であれば、その導電抵抗を十分に低減させ、電極25,30間に介在して、それらの電極25,30間を比較的高い導電率で通電させるコネクタとして十分に使用可能となる。
【0050】
一方、このようなICパッケージ20を用いた製品の製造にあっては、時として加熱されることもあり、製品において所定の温度サイクルにより使用される場合もある。すると、ICパッケージ20における下面電極25と実装基板29における金属電極30の間隔T(
図2)が変動したり、その間隔Tが変化しなくても、互いの位置がずれるようなこともある。
【0051】
下面電極25と金属電極30の間隔Tの変動にあっては、弾性体で形成された球体11が弾性変形して、その間隔Tの変動を許容する。ここで、弾性体で形成された球体11は、その弾性により表面の導電性金属殻13を電極25,30に常に押しつける役割を果たす。これにより、この導電性ボール20は、下面電極25と金属電極30の間隔Tの変動があっても、導電性金属殻13と電極25,30が離間するようなことは無い。よって、ICパッケージ20における下面電極25と基板24における金属電極30を、抵抗値を少なくした状態で安定して電気的に接続することができる。
【0052】
また、導電性ボール10は電極25,30に挟まれて最外周の導電性金属殻13がそれらに面接触するけれども、この導電性金属殻13がそれらの電極25,30に機械的に接合されてしまうようなことはない。このため、ICパッケージ20における下面電極25と基板24における金属電極30の互いの位置がずれるような場合、本発明の導電性ボールは両電極25,30に挟まれて接触した状態で転動することになる。そして、転動後の導電性ボールは、転動前と同様に、その導電性ボール10の電極25,30に接触する導電性金属殻13がそれらの電極25,30と面接触する。よって、ICパッケージ20における下面電極25と実装基板29における金属電極30は、それらがずれるようなことがあっても、それらを連結する導電性ボール10の導電率が変動することはなく、安定して電気的に接続することができる。
【0053】
ここで、球体11を構成する弾性体の熱膨張係数は、導電性金属殻13を構成する金属の熱膨張係数に比較して高い場合が考えられる。このため、導電性金属殻13の熱膨張を超えて球体11が膨張すると、電極間を電気的に接合する導電性金属殻13にクラックが生じ、その電気的抵抗を上昇させることが生じる。
【0054】
けれども、本発明の導電性ボール10では、弾性体で形成された球体11の表面を耐熱膨張性樹脂殻12により被覆した。このため、それぞれの電極25,30間に介在する導電性ボール10が加熱されても、球体11の著しい熱膨張を耐熱膨張性樹脂殻12により防止することができる。特に、耐熱膨張性樹脂殻12が、ポリイミドなど、−40〜400℃における引っ張り強度が1〜700MPaであって耐熱性が200℃以上の物性を持つ樹脂から成る場合、そのポリイミドの線膨張係数は、金属のものと略同一であり、その耐熱膨張性樹脂殻12の厚さt2が球体11の直径Dの1%〜20%であれば、耐熱膨張性樹脂殻12における十分な引っ張り強度を得ることもできる。
【0055】
従って、本発明の導電性ボール10は、製造途中又はその後の熱履歴により加熱されるようなことがあっても、耐熱膨張性樹脂殻12の存在により、弾性体からなる球体11が、導電性金属殻13の熱膨張を超えて膨張するような事態を防止するので、その耐熱膨張性樹脂殻12の外表面に形成された導電性金属殻13が破裂するような球体11の膨張を確実に防止することができる。
【0056】
また、ポリイミドは、分子構造中に窒素化合物を有し、この窒素化合物は金属と比較的強硬に結びつくものとして知られている。従って、耐熱膨張性樹脂殻12がポリイミドから成る場合、そのポリイミドから成る耐熱膨張性樹脂殻12と、その耐熱膨張性樹脂殻12の外表面に形成される導電性金属殻13との機械的な結びつきも強固と成り、導電性金属殻13が耐熱膨張性樹脂殻12から剥離するような事態を防止することもできる。
【0057】
よって、本発明の導電性ボール10は、電極25,30間に介在して、それらの電極25,30間を比較的高い導電率で通電させるコネクタとして使用した場合、その導電率をその後の熱履歴により低下させないものとなる。
【0058】
そして、球体11の直径D(
図1)が0.4〜2mmの範囲内のものであれば、比較的均一な直径の複数の球体11を得ることが可能となり、本発明の導電性ボール10の製造が容易となる。また、球体11がシリコーンゴムから成り、そのシリコーンゴムが200℃以上、好ましくは250℃以上の耐熱性を有するようであれば、本発明の導電性ボール10の使用温度範囲を著しく広げることができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態では、
図2及び4に本発明の導電性ボール10が電極25,30間に挟まれてそれらを通電させるコネクタとして使用される場合を説明した。けれども、本発明の導電性ボール10を電極25,30に接合する従来のはんだボールとして使用しても良い。
【0060】
また、上述した実施の形態では、
図4に本発明の導電性ボール10を電極25,30間に挟んだICパッケージ20を金具31により固定する場合を説明した。けれども、本発明の導電性ボール10を電極25,30間に挟んでそれらを通電させるコネクタとして使用する場合のICパッケージ20や導電性ボール10自体の固定構造は金具31によるものに限定されるものではなく、電極25,30間に挟んだ導電性ボール10の電極25,30間からの逸脱を禁止しうる限り、どのような構造であっても良い。例えば、接着や粘着であっても良い。
【0061】
また、上述した実施の形態では、
図3に耐熱膨張性樹脂殻12となる液状樹脂12a及びその耐熱膨張性樹脂殻12の内部に内包される液状の弾性体11aを連続して流れる水性媒体14の流れに供給して、球体11及び耐熱膨張性樹脂殻12を生成する場合を説明した。けれども、この製法は一例であって、球体11の表面に耐熱膨張性樹脂殻12を形成しうる限り、これに限られるものではない。例えば、二段重合やコーティングであっても良い。
【0062】
また、この耐熱膨張性樹脂殻12の形成にあって、上述した実施の形態では、
図3に示すように、液状樹脂と液状の弾性体を平行に流した。このように、液状樹脂12a及び液状の弾性体11aを水性媒体14の流れに供給する場合であっても、球体11の表面に耐熱膨張性樹脂殻12を形成しうる限り、必ずしも平行に流す必要は無く、液状樹脂と液状の弾性体を別の位置から別々に流すようにしても良い。
【実施例】
【0063】
<実施例>
図1に示す構成の導電性ボール10を作製した。なお、球体11はシリコーンゴム(耐熱性:400℃)で、耐熱膨張性樹脂殻12はポリイミド(耐熱性:350℃)で形成し、導電性金属殻13は、銅/ニッケル/金の順でメッキを施すことで形成した。なお、球体11の直径Dは0.29mm、耐熱膨張性樹脂殻12の厚さt2は15μm(球体11の直径Dの5%)、導電性金属殻13の厚さt1は5μm(球体11の直径Dの2%)であった。また、球体11は、平板状の電極を2g〜5gの加重で載せた場合にその直径Dが10%減少するような弾性率を有していた。
【0064】
<比較例>
耐熱膨張性樹脂殻を形成しないこと以外は実施例と同様にして、導電性ボールを作製した。なお、シリコーンゴムで形成された球体に直接メッキをすることができないため。導電性金属殻は銅/ニッケル/金の順にスパッタで成膜することで形成した。
【0065】
<評価>
実施例及び比較例で得られた導電性ボールを5分間加熱し、室温まで戻した後の皮膜の状態をマイクロスコープで観察した。加熱温度は、50℃、100℃、150℃、200℃、及び250℃とした。結果を表1に示す。なお、実施例と比較例で導電性ボールの見え方が異なるのは、最外層となる導電性金属殻の形成方法が異なるためである。
【0066】
【表1】
【0067】
以上のように、実施例で得られた導電性ボールは、250℃まで加熱しても皮膜に歪みや割れは一切生じなかった。それに対し、比較例で得られた導電性ボールは、100℃で膨張が見られ、150℃に加熱した時点で皮膜に歪みや割れが生じた。したがって、本発明によれば、熱履歴による導電率の低下が抑制されることが分かる。
【0068】
本発明の導電性ボールでは、弾性体で形成された球体の外表面を導電性金属殻により被覆するので、この導電性ボールの弾性率は低く、平面を成す電極にこの導電性ボールを押し当てると、この導電性ボールの電極に接触する部分が容易に弾性変形して、その電極と面接触する。これにより、導電性ボールの外表面に形成された導電性金属殻と電極との接触面積は拡大するので、押しつけられた電極と比較的高い導電率で通電させることが可能となる。
【0069】
この場合、導電性金属殻が銅、金、銀若しくはパラジウム又はそれらを主成分とする合金から成れば、導電性金属殻の導電性は向上し、その導電性金属殻の厚さが球体の直径の1%〜20%であれば、その導電抵抗をより低減することができ、電極間に介在して、それらの電極間を比較的高い導電率で通電させるコネクタとして十分に使用可能となる。
【0070】
一方、球体を構成する弾性体の熱膨張係数は、導電性金属殻を構成する金属の熱膨張係数に比較して一般的に高い。けれども、本発明の導電性ボールでは、弾性体で形成された球体の表面を耐熱膨張性樹脂殻により被覆しているため、球体の著しい熱膨張は耐熱膨張性樹脂殻により防止される。
【0071】
特に、耐熱膨張性樹脂殻が、ポリイミドなど、−40〜400℃における引っ張り強度が1〜700MPaであって耐熱性が200℃以上の物性を持つ樹脂から成る場合、その線膨張係数は、金属のものと略同一である。また、その耐熱膨張性樹脂殻の厚さが球体の直径の1%〜20%であれば、耐熱膨張性樹脂殻における十分な引っ張り強度を得ることもできる。よって、製造途中又はその後の熱履歴により、導電性ボールの温度が上昇するようなことがあっても、耐熱膨張性樹脂殻の存在により、弾性体からなる球体が、導電性金属殻の熱膨張を著しく超えて膨張するような事態を防止することができ、その耐熱膨張性樹脂殻の外表面に形成された導電性金属殻が破裂するような球体の膨張を確実に防止することができる。
【0072】
そして、球体の直径が0.04〜2mmの範囲内のものであれば、比較的均一な直径の複数の球体を得ることが可能となり、本発明の導電性ボールの製造が容易となる。また、球体がシリコーンゴムから成り、それが200℃以上の耐熱性を有するようであれば、本発明の導電性ボールの使用温度範囲を著しく広げることができる。
【0073】
よって、本発明は、電極間に介在して、それらの電極間を比較的高い導電率で通電させるコネクタとして使用し得るものであって、電極間を通電する導電性金属殻がその後の熱履歴により破裂するようなこともないので、その導電率をその後の熱履歴により低下させない導電性ボールとなる。