(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120308
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】水流増幅装置付風船式携帯型ピコ水力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 7/00 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
F03B7/00
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-253990(P2012-253990)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-101799(P2014-101799A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】508249686
【氏名又は名称】蘆田 拓也
(73)【特許権者】
【識別番号】512300137
【氏名又は名称】武智 昭雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武智 昭雄
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−076656(JP,U)
【文献】
特開平04−112970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の水流による水車の回転を発電機に伝えて発電を起こす携帯型ピコ水力発電装置において、該水車は、(a)羽根車と、(b)該羽根車の内側に嵌め込むことができる風船型筒と、(c)該風船型筒の中心を貫通する水車の回転軸とを備え、前記風船型筒は内部に空気の出し入れが可能な袋状でありそしてその中心に前記水車の回転軸を通す軸受孔が貫通しており、使用時には、該軸受孔に該回転軸が通されそして該風船型筒に空気が十分に注入されて、該風船型筒が該羽根車の内側に密接に嵌め込まれて一体化する、水車を有する前記水力発電装置。
【請求項2】
不使用時には、前記風船型筒は空気を抜き、前記回転軸を外して、前記装置を畳むことができる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記風船型筒は弾力性ある素材で作られている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
請求項1に記載の水力発電装置の水車の回転軸に設ける一対の支柱であって、該支柱は前記水車の回転軸の両側に設けられ、該支柱の下端は川底に固定され、その上部は前記回転軸の上下動を受けることができる縦長の空間を有する、水車の回転軸用支柱。
【請求項5】
請求項1に記載の水力発電装置用の支持装置であって、該支持装置は(d)U字アームと、(e)棒状の取り付けアームと、(f)水車の回転軸用の支柱とを有し、前記水車の回転軸は該水車の両側で該U字アームの両端と回転可能に結合し、該支柱は該水車の上流でその下端を川底に固定されており、該支柱の上端と該U字アームとが該棒状の取付アームの両端にそれぞれ上下に回動可能に連結した、支持装置。
【請求項6】
請求項1に記載の水力発電装置用の水流増幅装置であって、該水流増幅装置は水車の両側に設けた一対の対向する対向板を有し、該対向板は下流に向かって該対向板間の間隔が拡がるように設置された、水流増幅装置。
【請求項7】
前記対向板の各板は下流に向かって外側に円弧を描いて曲がっている、請求項6記載の水流増幅装置。
【請求項8】
前記対向板の各板の上流側の端は、前記水車の回転軸用の一対の支柱若しくは発電機収納ボックスにねじ止めで取り付けられており、上辺は水車の半分の高さまで延びている、請求項6記載の水流増幅装置。
【請求項9】
前記対向板はステンレス製である、請求項6〜8のいずれか1項記載の水流増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流増幅装置付風船式携帯型ピコ水力発電装置に関する。特に携帯型であり、現地に運んだ後に、数分程度で組立、設置が出来る、河川の水流を原動力とするピコ水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の水力発電装置は、一般的な分類によれば超小型水力発電に相当するが、その中でも最大出力1kw以下の超小型水力発電の場合、最近はピコ水力発電と呼ばれる。
【0003】
一般に、本発明の水力発電装置が属する型の装置は、河川等の水流を利用して回す水車を発電の原動力として備えている。この型の水力発電装置は、
図4に示すように、水車を一定位置に保持するため地上又は川底に固定して設置する支柱と、発電機とから構成され、水車の外周面上には、複数の羽根が一定の間隔をもって並列に取り付けられている。水車の中心を横切って回転軸が固定されており、水車の回転と同期して回転する。回転軸の一端は発電機に連結され、発電機は回転軸の回転を受けて発電する。
【0004】
従来の河川で使用する水車による水力発電装置では、水車が支柱に固定して取り付けられていたため、降雨の後などに河川の水位が上って水車が水を被り、水車の回転が阻害されるなどして、安定した発電が得られなくなるという欠点があった。また、装置を地上又は川底に固定して設置するとき、土中にコンクリートブロックを埋める等して固定する必要があり、これによって工期も長くなり、費用の負担増という問題も生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-205342公報。水位変化があっても安全に運転する水車にするため、水車が浮動できるよう浮力ある浮子等をつけ、水車は固定せずワイヤロープで繋ぐことが示されている。
【特許文献2】特開2011-43158公報。水車の回転を発電機に増速して伝動するため、水車の回転軸に歯数の多い歯車を取りつけ、歯数の少ない歯車を発電機につけて、両歯車をチェーンで連結することが示されている。
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】石田 正著「超小型(ピコ)水力発電装置ガイドブック」2007年1月25日株式会社パワー社発行。種々の超小型水力発電装置を解説。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のピコ水力発電装置は、携帯型装置としてできるだけ構造を簡易化し、各部分の分解、組立を容易なものとすると共に制作費を低額とすること、水流の増減による水面の変化に自由に対応し発電を安定化すること、水車が受ける水流の速度を増加させて発電の効率を向上されること、等を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ピコ水力発電装置は、水車1と、水車と固定して連結させる回転軸2と、回転軸が連結する発電機3を主たる部品として構成されるが、本発明の水車1は、外周に羽根5を取り付けた羽根車4と、その内側に嵌め込まれる風船型筒6とからなり、風船型筒6は一方の側面から他方の側面の中心を貫く軸受孔7が回転軸2を通すために設けられている。風船型筒6は、羽根車4の内側に密接に嵌め込まれるもので、弾性のある素材により、内部は空気の注入を可能とする袋状として形成される。なお、不使用時には空気を抜いて小さく畳むことができる。羽根車の環状枠も弾性のある素材で作られているので、不使用時に畳むことができる。
【0009】
使用時において羽根車4と、あらかじめ回転軸2を軸受孔7に通した風船型筒6は、後者を前者の内側に嵌め込むように並べて空気を注入することにより、水車1は一体となって使用可能状態にされる。この際、風船型筒6が十分膨らむことが必要で、これにより羽根車と風船型筒及び風船型筒と回転軸とはそれぞれしっかり密着し、回転軸は空回りすることがない。
【0010】
本発明のピコ水力発電装置では水流増幅装置を開発し、これは河川の水流速度を上げて発電量を増加することを目的とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発電装置の構造は簡易であり、各部分の分解、組立が容易で、とくに水車の風船型筒6は畳むことができるため、容易に運搬でき、短時間で分解、組立ができる。
【0012】
水車の風船型筒6は空気を注入して膨らませて使用するので、水車全体が水中で浮力を受け一定の深さに維持されるため、水車は水面の上下の変化に対応して上下でき、水没することが避けられるので発電の安定に寄与する。
【0013】
本発明の水流増幅装置により、水流速度が増加され、発電量の増加が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の水力発電装置の実施例1を示す斜視図。
【
図3】本発明の水力発電装置の別の支持機構の実施例を示す斜視図。
【
図4】従来の水車型水力発電装置の水車の一例を示す斜視図。
【実施例1】
【0015】
本発明のピコ水力発電装置の一実施例において、水車1は、
図1に示すように外周に複数の羽根5を並列に取り付けた組立式の羽根車4と、中央に水車1の回転軸2を通す軸受孔7を設けた風船型筒6とから構成される。風船型筒6は、弾性と柔軟性のある素材により、内部に空気の注入した袋状空間が形成される。上記の部品により水車1を組み立てるにあたり、あらかじめ回転軸2を軸受孔7に通した風船型筒6を羽根車4の内側に合わせた上で、風船型筒6内に空気を十分注入して膨らませると、空気圧による摩擦力が作用して、羽根車と風船型筒及び風船型筒と回転軸との接触は互いにきつく密着して固定し、互いに空回りすることなく、水車1は一体化する。
【0016】
水車1の回転軸2は、
図2のとおり水車の両側面で、相応する川底の位置で下部を地中に埋め込んだ左右2本の直立する支柱9,9´に支持される。
【0017】
発電量が最も効率が良いと判断される場合の水車1の羽根5と河川の水面との位置関係は、水流増幅装置による測定によって示される。また、その位置関係は、水車の重量と、空気を注入して得た浮力との対比で調整することができる。この水車の水面との位置関係は、川底との固定された位置関係ではなく、水面上の浮体として維持されることにより、効率よい発電に寄与している。
【0018】
次表は本発明の水力発電装置の実験データを示す。
【表1】
【0019】
回転軸2は回転自在に、かつ上下動自由に水車の両側方の支柱9,9´の上部15とそれぞれ係合する。すなわち、支柱9,9´の上部に上下方向に延びる空間が設けられ、その中に回転軸2が回転と上下動を可能としながら収まる。なお、回転軸2の上下動が左右の支柱でのバランスがとれるように、左右の支柱9,9´の係合個所における回転軸を上下からスプリングで挟むように支えることも可能である。又、上下動可能な軸受ベアリングで保持することも可能である。
【0020】
前記の回転軸2は適度の長さの軸をねじ等により追加するなどして伸縮性を持たせることも可能であり、河川の発電に適した地形に応じて回転軸2のより適切なサイズが求められる場合に便利である。
【0021】
本発明では、水車の附近でさらに河川の水流の速度を上げて発電量を増大させるため水流増幅装置50を開発した(
図2、3)。この装置は、川の流れの上流からみて水車1の右、左側方で対向する対向板8,8´を、対向板の間の間隔が下流に向って拡がるように支柱9,9´にねじ止めして設置することで得られた。対向板の下辺は川底に近接するもので、上辺は水車の半分の高さまで延びる。
【0022】
本実施例では、板の腐食を防ぐためにステンレス製で、高さは水車の半分で巾は水車の直径の長さで、外方に円弧をえがく対向板8,8´を用いた。実験の結果、対向板間の水流は、下流に向って水圧が開放されて水位が低くなることから、その位置で水流速度が約3倍に増加した結果、発電量も3倍に増加した。
【0023】
回転軸2の一端は、公知の発電機に接続され、回転軸2の回転が電気に変えられる。発電機3は回転軸2に接続しているので、回転軸2が上下動するときは発電機3も同じように上下動する。したがって、発電機は、発電機側の回転軸の端部と共通の部材で支持されることが好ましい。
【実施例2】
【0024】
水車1は実施例1と同じであるが、上下する水車全てを支える別の支持機構の実施例を以下に示す。
【0025】
U字状に曲げた金属製パイプの両端を、それぞれ水車1の両側で回転軸2に、回転軸の回転自由に結合したU字アーム10を設け、別の直線状金属製パイプ、打ち込み用パイプ11、を用意して水車1の上流でその上端をさらに上流の方に傾けて下端部分を川底に打ち込み固定して設置した。さらに別の直線状金属製パイプ、取付アーム12、を用意して、その一端13はU字アーム10と、そして他端14は打ち込み用パイプ11の上端と、それぞれ水車1の上流側で回動自由に結合されて、水車を支える支持装置とし、本発明の携帯用水力発電装置は水面の上下動に従って水面との一定の距離を維持する。
【0026】
水流増幅装置の相対向する対向板8,8´は、それぞれその上流側の端を左右の支柱9,9´若しくは発電機収納ボックスにねじ止めされる。
【0027】
前記の部品の結合によって、本発明の水車は、川の水位の変化に合わせ、効率の良い水面との位置関係を維持して上下し、発電効率を高めることに貢献する。
【符号の説明】
【0028】
1 水車
2 回転軸
3 発電機
4 羽根車
5 羽根
6 風船型筒
7 軸受孔
8,8´ 対向板
9,9´ 支柱
10 U字アーム
11 打ち込み用パイプ
12 取付アーム
15 支柱9,9´の上部
50 水流増幅装置