(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液保持性の吸収体並びに該吸収体の肌対向面側に配置された表面シート及び該吸収体の非肌対向面側に配置された裏面シートを具備し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部より着用者の腹側に配される前方部と、該排泄部対向部より着用者の背側に配される後方部とを有する吸収性本体を備え、着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、
前記裏面シートは、透湿性を有しており、
前記吸収体は、吸収性シートの積層体からなり、前記排泄部対向部に、前記表面シートに最も近い吸収性シートを貫通するスリットが、前記縦方向及び前記横方向の両方向に分散した状態に形成された排泄部スリット領域を有しており、
前記吸収体は、前記排泄部対向部に多層部を有し、該多層部は、その周囲に位置する部分よりも吸収性シートの積層枚数が多い部分であり、
前記スリットとして、前記多層部には、前記該吸収体を貫通する貫通スリットを有し、該多層部の周縁より外方に位置し、該多層部より吸収性シートの積層枚数が少ない部位に、前記表面シートに最も近い吸収性シートを貫通し該吸収体を貫通しない非貫通スリットを有している、吸収性物品。
前記貫通スリットは、吸収性物品の縦方向又は横方向に延びて形成されており、前記吸収性本体の非肌対向面に、吸収性物品を衣類に固定するためのズレ止め部が、該貫通スリットが延びる方向と交差する方向に延び且つ該貫通スリットが延びる方向に間欠配置となるように形成されており、該ズレ止め部と該貫通スリットとが交差している、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、
図1及び
図2に示すように、液保持性の吸収体4並びに該吸収体4の肌対向面側に配置された表面シート2及び該吸収体4の非肌対向面側に配置された裏面シート3を具備する吸収性本体5を備え、着用者の前後方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。
【0011】
尚、本明細書において、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性本体5)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、縦方向Xは、吸収性物品(吸収性本体)の長手方向に一致し、横方向Yは、吸収性物品(吸収性本体)の幅方向(長手方向に直交する方向)に一致する。
【0012】
吸収性本体5は、着用時に着用者の液排泄部(膣口等)に対向配置される排泄部対向部Bと、着用時に排泄部対向部Bよりも着用者の腹側(前側)に配される前方部Aと、着用時に排泄部対向部Bよりも着用者の背側(後側)に配される後方部Cとを縦方向Xに有している。
【0013】
ナプキン1は、吸収性本体5に加えて更に、吸収性本体5における排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部7,7を有している。
【0014】
尚、本発明の吸収性物品において、排泄部対向部は、本実施形態のナプキン1のようにウイング部を有する場合には、吸収性物品の縦方向(吸収性物品の長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域(ウイング部の縦方向一方側の付け根と他方側の付け根とに挟まれた領域)である。ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(吸収性物品の幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折曲線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域である。
【0015】
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、後述するサイドシート10と共にサイドフラップ部6を形成している。裏面シート3とサイドシート10とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていても良い。
【0016】
裏面シート3は、透湿性を有している。透湿性を有する裏面シート3としては、例えば、微細孔を多数有し、透湿性を有する樹脂製の透湿シート等が好ましく用いられる。透湿シートとしては、吸収性物品において、透湿性の裏面シートとして用いられている各種のものを用いることができ、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機粉体、ナイロン、ポリスチレン等の相溶性のない有機高分子等を混練したポリエチレンフィルム等を一軸又は二軸延伸して得られるシート等が好適に用いられる。透湿性シートとしては、撥水性不織布、または前記の透湿シートと該撥水性不織布との複合シート等を用いることもできる。また、透湿性を有するシートに、通気性の不織布等の、別のシートを積層した積層シートを用いることもできる。
【0017】
本実施形態における吸収体4は、
図2に示すように、吸収性シート401〜403の積層体からなり、
図1及び
図2に示すように、排泄部対向部Bに多層部42を有している。また、吸収体4における多層部42以外の部分も2層以上の積層構造となっている。本実施形態の吸収体4では、多層部42以外で吸収性シート401、402の2層構造である。多層部42は、
図2に示すように、吸収体4を構成する吸収性シートの積層枚数が、その周囲に位置する部分より多い部分である。本実施形態における多層部42は、その周囲に位置する部分よりも厚みも厚く、排泄部対向部Bに、表面シート2側(ナプキン1の肌対向面側)に突出した隆起部を形成している。また、吸収体4は、吸収体4の外形を形成する主吸収体40と、主吸収体40の一部に重ねて配された主吸収体40より小型の補助吸収体41とを有している。主吸収体40は、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で且つ前方部Aから排泄部対向部Bを経て後方部Cに亘って延びる2枚の同形同大の吸収性シート401,402からなり、補助吸収体41は、平面視において略矩形形状であり、排泄部対向部Bからその近傍の後方部Cに亘って配されている。補助吸収体41は、1枚の吸収性シート403を折り畳んで2層構造としたものであり、主吸収体40を構成する2枚の吸収性シート401,402間に配されている。主吸収体40の一部に補助吸収体41を配することで、吸収体4の一部の吸収容量を容易且つ効率的に増大させることができる。補助吸収体41は、主吸収体40を構成する2枚の吸収性シート401,402間に配置するのに代えて、主吸収体40を構成する上側の吸収性シート401の肌対向面側に積層しても良いし、主吸収体40を構成する下側の吸収性シート402の非肌対向面側に積層しても良い。また、吸収性シート間は、接合されていなくても良いし、まばらに散布した接着剤等によって接着されていても良い。
【0018】
吸収性本体5の肌対向面(表面シート2の肌対向面)における縦方向Xに沿う両側部には、
図1に示すように、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート10,10が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート10,10は、それぞれ、排泄部対向部Bに位置する線状の第1接合線11と、該第1接合線11の縦方向Xの前後(前方部A及び後方部C)に位置する線状の第2接合線12とで吸収性本体5(表面シート2)に接合されている。第1接合線11は、平面視において横方向Yの外方に向けて凸の曲線状であり、第2接合線12は、平面視において縦方向に交差するように延びる線状(ジグザグ線状)である。サイドシート10は、撥水性の不織布からなる。このように、サイドシート10が接合線11,12にて吸収性本体5の肌対向面(表面シート2)に接合されていると、
図2に示すように、接合線11,12よりも横方向Yの内方に、サイドシート10と表面シート2とで画成される空間部Pが形成される。この空間部Pは、吸収性本体5の横方向Yの中央に向けて開口しているので、横方向Yの中央から外方へ流れる経血等の排泄液は空間部Pに収容されるようになり、結果として排泄液の漏れが効果的に防止される。
【0019】
サイドフラップ部6は、
図1に示すように、排泄部対向部Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部7,7が延設されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、
図1に示すように、吸収体4の縦方向Xの前端及び後端それぞれから縦方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、互いに接合されてエンドシール部を形成している。
【0020】
ウイング部7は、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面側に折り返されて用いられるものである。ウイング部7は、
図1に示すように、平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有している。
図2に示すように、ウイング部7の非肌対向面には、該ウイング部7(ナプキン1)をショーツ等の着衣(図示せず)に固定するウイング部粘着部71が形成されており、このウイング部粘着部71によって、使用時に、着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されたウイング部7を、該クロッチ部に粘着固定できるようになされている。また、吸収性本体5の非肌対向面にも、吸収性本体5を、ショーツ等の着衣に固定するための本体粘着部55(ズレ止め部)が形成されている。
【0021】
ウイング部粘着部71や本体粘着部55(ズレ止め部)の形成方法としては、下着等の衣類に固定して用いる吸収性物品に従来用いられる方法を特に制限なく用いることができる。例えば、粘着剤を裏面シート3に直接塗工して形成することもできるし、粘着剤が塗工された粘着テープの他面側を裏面シートに接合して形成することもできる。粘着部の形成に用いる粘着剤としては、例えば、エマルジョン系、水系、溶剤系の粘着剤が挙げられる。また、ズレ止め部は、優れた位置ずれ防止性能及び安定な生産性を得る観点から、ホットメルト粘着剤等の粘着剤を塗布して形成することが好ましい。
そのような粘着剤としては、この種の物品に通常用いられるものを制限なく採用することができるが、主に天然ゴム類似の基本構造を有する合成ゴム系のブロック共重合体を用いることが好ましい。そのようなブロック共重合体としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。粘着剤は、これらのブロック共重合体から選択される一種又は二種以上のベースポリマーを10〜65重量%、特に30〜50重量%含むことが好ましい。なお、本発明におけるズレ止め部は、吸収性本体とそれを固定する衣類との間のズレを防止できる限り、粘着性がなくても良い。
【0022】
図1及び
図2に示すように、吸収性本体5の肌対向面(表面シート2の肌対向面)には、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥してなる線状溝が形成されており、該線状溝は、排泄部対向部Bを縦方向Xに延びる縦溝51と、前方部A及び後方部Cに、それぞれ横方向Yに延びるように形成された第1及び第2の横溝52,53が形成されている。線状溝は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工(いわゆるエンボス加工)、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。線状溝においては、表面シート2及び吸収体4が、図示しないが、接着剤を介して圧着される、あるいは熱融着等により一体化(結合)している。表面シート2と吸収体4との間が結合しているという表現には、表面シート2と吸収体4との間にセカンドシート等の他のシートが介在し、その表面シートと当該他のシートとが接合され、更に当該他のシートと吸収体4とが接合(結合)している場合も含まれる。
【0023】
このような線状溝は、吸収体4の平面方向の液の拡散を抑制して、ナプキン1の周囲から液漏れを効果的に防止することができる。線状溝の幅(長さ方向と直交する方向の長さ)及び深さは、この種の吸収性物品における線状溝と同様に設定すれば良い。また、線状溝における「線状」とは、溝(凹陥部)の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。例えば、線状溝は、不連続な多数の点エンボスのなす列から構成されていても良い。なお、本実施形態のナプキン1は、
図1に示すように、吸収性本体5を横方向Yに二分する中心線(図示せず)に対して左右対称に形成されている。
【0024】
本実施形態のナプキン1における吸収体4は、
図1及び
図2に示すように、排泄部対向部Bに、縦方向Xに延びる縦スリット43が、縦方向X及び横方向Yの両方向に分散した状態に形成された排泄部スリット領域Sを有している。縦スリット43は、排泄部対向部Bにおける多層部42と多層部42以外の部位の双方に形成されている。また、排泄部スリット領域Sは、排泄部対向部Bのみならず、前方部Aの一部及び後方部Cの一部に亘っている。
【0025】
縦スリット43(スリット)は、吸収体4をその厚み方向に亘って切り込みを入れて形成されたものであり、実質的に幅を有していない切り込みから形成されているか、又は好ましくは1.0mm以下の細幅の空間となっている。スリットが幅を有している場合、当該幅とは、スリットの延びる方向と直交する方向における該スリットの長さのことをいう。また、ここでいう、スリットの幅は、吸収性物品を衣類のクロッチ部等に固定する前の、張力を加えない自然状態における幅であり、液を吸収させる前の幅である。
【0026】
排泄部スリット領域Sにおけるスリットの配置は、該スリットが、縦方向X及び幅方向Yの両方向に分散されている配置であれば、特に制限されないが、本実施形態におけるように、吸収性物品の縦方向Xに沿う縦スリット43を有する場合、
図1(b)に示すように、ナプキン1(吸収性物品)の縦方向Xに沿って直列した複数の縦スリット43からなる縦列Lが、横方向Yに複数列形成されているとともに、該横方向に互いに隣り合う縦列における縦スリット43の縦方向Xの位置が一致していない配置が好ましい。
【0027】
図4に、排泄部スリット領域Sにおける縦スリット43の好ましい配置の例を示した。これらの図に示す配置においては、ナプキン1の横方向Yに離間した複数本の縦スリット43からなるスリット列R1,R2が、ナプキン1の縦方向Xに複数列形成されている。
図4に示す配置例においては、横方向Yに離間した2本の縦スリット43からなるスリット列R1と、横方向Yに離間した3本の縦スリット43からなるスリット列R2とが、縦方向Xに交互に形成されている。
【0028】
本実施形態のナプキン1における縦スリット43は、いずれも、最も表面シート2に近い吸収性シート401を貫通している。また、本実施形態のナプキン1における吸収体4は、縦スリット43として、多層部42に、吸収体4を貫通する貫通スリット43aを有し、多層部42の周縁より外方に位置する部位に非貫通スリット43b,43cを有している。多層部42の周縁より外方に位置する部位は、多層部42より吸収性シートの積層枚数が少ないが、吸収性シートが2層以上積層している。
非貫通スリット43bは、
図1(b)及び
図2に示すように、排泄部対向部Bにおける、多層部42の縦方向Xに沿う両側縁それぞれの横方向Yの外方に形成されている。他方、非貫通スリット43cは、ナプキン1の縦方向Xにおいて、多層部42より後方に形成されている。
本実施形態における非貫通スリット43b,43cは、
図3に示すように、表面シート2に最も近い吸収性シート401を貫通し、更にその下に位置する吸収性シート402の厚み方向の途中まで達しているが、吸収性シート402の非肌対向面(裏面シート側の面)には達していない。なお、多層部42の周縁より外方に形成する非貫通スリット43b,43cは、表面シート2に最も近い吸収性シート401を貫通して次の吸収性シート402の途中まで達するものに代えて、
図6に示すように、表面シート2に最も近い吸収性シート401を貫通するが、次の吸収性シート402内には全く入り込んでいないもの等であっても良い。
【0029】
本実施形態における排泄部スリット領域Sは、多層部42を含むように形成されている。多層部42には、横方向Yに離間した2本以上の貫通スリット43aからなるスリット列が縦方向Xに2列以上形成されていることが好ましい。また、多層部42には、横方向Yに離間した2本以上の縦スリット43からなるスリット列が、縦方向Xに3列以上形成されていることが好ましく、4列以上がより好ましく、5列以上が更に好ましい。また、個々のスリット列に含まれる横方向Xに離間した縦スリットの本数は、好ましくは2本以上であり、より好ましくは3本以上である。本実施形態においては、多層部42に形成された縦スリット43は、その全数が、貫通スリット43aであるが、多層部42に形成されたスリットのうちの一定の割合のものが、貫通スリット43aであっても良い。多層部42に形成されたスリットであって、多層部42の周縁と重なっていないスリットのうち、50%超のスリットが、吸収体4を貫通する貫通スリット43aであることが好ましく、65%以上のスリットが貫通スリット43aであることがより好ましく、80%以上のスリットが貫通スリット43aであることが更に好ましい。
排泄部スリット領域Sの縦方向Xには、多層部42に含まれるスリット列に加えて、多層部42より縦方向Xの前方若しくは後方又は前方及び後方の両方に、1列又は2以上のスリット列を有することが好ましい。
【0030】
図4に示した縦スリットの好ましい配置の例においては、ナプキン1の縦方向Xに隣り合うスリット列間には、間隔Pを有しない。即ち、縦方向Xに隣り合う2つのスリット列R1,R2間には、
図5(a)に示すような間隔Pは設けない。隣り合うスリット列間に間隔Pを有しないという表現には、
図4(a)に示すように、隣り合うスリット列のスリット43の端部どうしの位置が一致している場合と、
図4(b)に示すように、隣り合うスリット列が、縦方向Xにおいて一部重複している場合とが含まれる。
図4(b)に示すように、2本のスリット列を互いの一部を重複させた状態で縦方向Xに配置する場合、その重複させる長さL1は、スリット列を構成する縦スリットの同方向Xの長さL2の20%以下であることが好ましく、10%以下であることが好ましい。
【0031】
図4に示した縦スリットの好ましい配置の例においては、ナプキン1の縦方向Xに隣り合うスリット列のスリットの位置が、吸収性物品の横方向Yにずれている。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、縦方向Xに隣り合う2つのスリット列R1,R2における縦スリット43は、一方のスリット列R1のスリット43が、他方のスリット列R2のスリット43間の中央部に位置することが好ましいが、一方のスリット列R1のスリット43が、他方のスリット列R2のスリット43間における何れか一方の側に偏倚させて形成されていても良い。
図5(b)は、縦方向Xに隣り合うスリット列R1,R2のスリットの位置が、横方向Yにずれていない例を示す図である。
【0032】
なお、
図5(a)に示す例のように、ナプキン1の縦方向Xに隣り合うスリット列間に間隔Pを設ける場合、間隔Pは、スリット列を構成する縦スリット43の縦方向Xの長さL2の50%以下であることが好ましく、35%以下であることが更に好ましい。また、5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
【0033】
本実施形態の吸収体4においては、多層部42の両側縁それぞれの横方向Yの外方に、
図1(b)に示すように、縦方向Xに複数の縦スリット43が配置されており、その縦スリット43は、いずれも、非貫通スリット43bである。また、それらの非貫通スリット43bは、縦方向Xに隣り合う非貫通スリット43bどうしが、横方向Yに位置をずらして千鳥状に形成されているが、複数本の非貫通スリット43bが、縦方向Xに一列をなすように直列配置されていても良い。
【0034】
本実施形態のナプキン1によれば、吸収体4が、排泄部対向部Bに、縦方向に沿う縦スリット43が、縦方向X及び横方向Yの両方向に分散した状態に形成された排泄部スリット領域Sを有するとともに、多層部42に、吸収体4を貫通する貫通スリット43aを有するため、ナプキン1を、衣類のクロッチ部に横方向に張力を加えて固定する場合や、吸水性ポリマーが、スリット部分に多量の吸水性ポリマー404を有する場合等には、加えた張力や吸水性ポリマーが吸液して膨潤する力などにより、貫通スリット43aがその交差方向に開く。多層部42のように厚みのある部位はより水分を内部に閉じ込めやすく、スリットを最下層まで貫通させることで、吸収体4に吸収されて、吸収性シート内に保持されていた各層の内部の液体が、表面シート2側及び裏面シート3側から蒸散しやすくなり、着用中における肌の蒸れ等が防止される。
また、スリットを貫通させておくことで、多層部の表面側より、裏面側へ液体は移行しやすくなり、使用者の肌面側である表面側からの蒸散が抑えられ、使用中の蒸れ感を低減することができる。
また、貫通スリット43aは、その交差方向への液の拡散を阻害するため、吸収容量の高い多層部42からその周囲への液の移行が抑制され、多層部42の高い吸収容量が有効活用される。そのため、液が、吸収体4の周縁部に達して漏れだしやすくなることもない。
【0035】
他方、多層部42の周縁より外方に、非貫通スリット43b,43cが形成されており、これらの非貫通スリット43b,43cは、
図3や
図6に示すように、ナプキン1を、衣類のクロッチ部に横方向Yに張力を加えて固定する場合や、スリット部分に多量の吸水性ポリマー404を有する場合等には、加えた張力や吸水性ポリマーが吸液して膨潤する力などにより、非貫通スリット43bがその交差方向に開く。それにより、一層、体液が吸収体4の厚み方向へと導かれ易くなる。しかも、
図6に示すように、非貫通スリット43b,43cが入り込んでいない吸収性シート402や、
図3に示すように、厚み方向の途中まで非貫通スリット43b,43cが入り込んでいるが、吸収性シートの下側に非貫通スリット43b,43cが及んでいない部分がある吸収性シート402においては、それらの吸収性シート402におけるスリットが到達していない部分を、液が水平方向に拡散し、結果として表面側より液が拡散しやすくなる。そのため、表面シート側よりも裏面側の透湿シートからの蒸散が起こり易く、使用者のムレ感を低減できる。また、表面シート側で液が拡散すると体圧やヨレが加わったときの液戻りによって、表面シート側からの漏れが生じ易くなる恐れがあるが、表面シート側での体液の拡散が抑制され、裏面シートに近い側で体液が拡散することによって、表面シート側への液戻りが起こり難く、漏れ防止効果にもつながる。
【0036】
特に、本実施形態においては、排泄部対向部Bにおける、多層部42の縦方向Xに沿う両側縁それぞれの横方向の外方に、非貫通スリット43bが形成されている。多層部は、使用時に最も吸収量が多くなる部位であるため、表面側の蒸散が抑えられるといった効果が一層確実に奏される。
【0037】
上述した効果を一層確実に得る観点等から、吸収体4は、以下の一又は二以上の構成を有することが好ましい。
排泄部スリット領域Sにおける縦スリット43の長さL2(
図4参照)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上であり、また、好ましくは35mm以下、更に好ましくは25mm以下であり、また、好ましくは10〜35mm、更に好ましくは15〜25mmである。
排泄部スリット領域Sにおける同一スリット列内における縦スリット43の間隔L5(
図4参照)は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは7mm以上、また、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは3〜20mm、更に好ましくは7〜15mmである
【0038】
排泄部スリット領域Sの横方向Yの長さL4(
図1参照)は、排泄部対向部Bにおける吸収体4の同方向Yの長さの、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上であり、また好ましくは85%以下、更に好ましくは75%以下である。排泄部スリット領域Sの横方向Yの長さL4は、好ましくは30mm以上、更に好ましくは40mm以上であり、また、好ましくは55mm以下、更に好ましくは45mm以下である。
図1(b)には、排泄部スリット領域Sを、縦方向X及び横方向Yにいずれについても、見易さの観点から便宜的に、縦スリット43が分布する範囲よりやや広い範囲として示してある。しかし、本発明における排泄部スリット領域Sは、縦スリット43が分布する範囲であり、その横方向Yの長さL4は、
図1(b)に示す通り、横方向Yの両端に位置する縦スリット44の外縁間の距離である。
【0039】
非貫通スリット43bは、多層部42の両側縁の外方に、1本ずつ形成されていても良いが、複数本づつ形成されていることが好ましく、3本以上ずつ形成されていることが更に好ましい。また、縦方向Xにおける多層部42より後方にも、非貫通スリット43cが1本又は2本以上形成されていることが好ましい。また、図示しないが、縦方向Xにおける多層部42よりも前方にも、非貫通スリットが1本又は2本以上形成されていることが好ましい。更に、多層部42の後方と前方、あるいは後方のみ、あるいは前方のみにおいて、非貫通スリット43は、貫通スリットと交差する方向に延びるスリットでもよい。たとえば、V字やU字のような頂部を有するスリットでもよい。
【0040】
本実施形態のナプキン1の吸収体4は、
図1(b)に示すように、排泄部スリット領域Sの周囲を、スリットが存在しない環状の非スリット領域Nに囲まれている。
例えば縦スリットの」場合、初期の液吸収時には厚み方向へと体液を導くが、体液吸収後には横方向へ開口部分が拡がっていく。したがって、縦スリットが横方向に拡がった状態では、体液も吸収体の横方向へと拡散し易くなる。また、縦スリットの長さ方向に沿って体液は拡散し易い。したがって、排泄部スリット領域Sの周囲を非スリット領域Nで囲むことで、体液の縦方向又は横方向の拡散を抑制しやすくなり、液漏れを防止する効果が高まる。特に前後漏れを防止に対して効果的である。また、非スリット領域Nは排泄部スリット領域Sに比べると剛性が高いため、吸収体4のヨレや折れを防止でき、より安定的に排泄対向部で吸収させることができる。ヨレや折れが生じると表面での液流れが起こり、拡散が大きくなることがあるが、非スリット領域Nで囲むことで、表面拡散とその蒸散を抑えることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態のナプキン1においては、前述したように、排泄部スリット領域Sには、縦方向Xに沿う縦スリットが形成されており、それらのうちの一部が、貫通スリット43a、他の一部が非貫通スリット43b、43cとなっている。
本発明において排泄部スリット領域に形成するスリットは、ナプキン1の横方向に沿う横スリットであっても良いし、縦方向X及び横方向Yの両者に対して角度を有する斜め方向に延びるスリットであっても良いし、縦スリットと横スリットとを混在しても良い。しかし、本実施形態におけるように、排泄部スリット領域Sに設けるスリットを、縦方向Xに沿う縦スリットとすることにより、ナプキン1の着用時に、着用者の大腿部により、吸収体4を横方向Xに圧縮する力が加えられても、吸収体4が、排泄部スリット領域の多様な部位で細かく変形して、吸収体4やナプキン1に、深さの深い折れ皺が生じにくくなる。深い折れ皺は、着用者に違和感を与えたり、折れ皺に沿って液が流れ、漏れやすくなるなどの観点から好ましくない。また、体液がスリットの長さ方向である縦方向へと拡散され易くなるので、横漏れが防止し易くなる。
【0042】
本実施形態のナプキン1においては、
図7に示すように、吸収性本体5の非肌当接面に、吸収性本体5を衣類のクロッチ部に固定するためのズレ止め部55が、多層部42に形成された貫通スリット43aが延びる方向(縦方向X)と交差する方向(横方向Y)に延び、且つ該貫通スリット43aが延びる方向(縦方向X)に間欠配置となるように形成されている。具体的には、ナプキン1の横方向Yに延びる帯状のズレ止め部55が、ナプキン1の縦方向Xに間隔を開けて複数本形成されている。ズレ止め部55の幅(縦方向Xに沿う長さ)W55は、縦スリット43の前記長さL2に対して、好ましくは5%以上、更に好ましくは7%以上であり、また好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下であり、また、好ましくは5〜30%、更に好ましくは7〜25%である。また、隣り合うズレ止め部55の間の縦方向Xに沿う長さL11は、ズレ止め部の幅W55に対して、好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上であり、また好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下であり、また、好ましくは3〜25%、更に好ましくは5〜20%である。
ズレ止め部55を、貫通スリット43aが延びる方向Xと交差する方向、より好ましくは直交する方向に延在させ、そのズレ止め部55と貫通スリット43aとを交差させることで、装着の際に加わる張力や吸水性ポリマーの膨潤により開いた貫通スリット43aの開口が、着用中のヨレなどにより閉鎖されないように維持することができる。また、ズレ止め部55を間欠配置することで、ズレ止め部55によって非肌対向面の透湿性が大きく損なわれることも防止することができる。これらにより、一層高い蒸れ防止効果が得られる。
【0043】
本実施形態のナプキン1においては、吸収性本体5の非肌当接面に設けられた前記のズレ止め部55が、多層部42の周縁よりも外方に形成された非貫通スリット43b,43cとも交差するように形成されている。これにより、側部のヨレが防止でき、43b、43cの表層側のスリット部が閉じてしまったり、ヨレや折れ皺のくぼみの中に入り込んでしまうことを防止できる。また、スリット部から非スリット部への液の移行が妨げられにくくなる。
【0044】
図示していないが、ナプキン1は、吸収体4と表面シート2との間にセカンドシートを更に具備していることも好ましい。セカンドシートは、その構成繊維が合成繊維である液透過性の繊維シートであることが好ましい。セカンドシートが疎水性の合成繊維を親水化処理した繊維で構成されていると、液の拡散性を低く抑えることができる。また、セカンドシートを構成する合成繊維は、拡散性を低く抑えるとともに、機械適合性の観点から、弱親水性である繊維であることが好ましい。セカンドシートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミド等の樹脂からなる繊維を単独で、又は2種以上を混合して形成することができる。尚、ここで言う混合とは、融点の異なる2種以上の樹脂を、芯鞘型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維にして用いることを含む。
【0045】
セカンドシートは、高い透過性と適度な拡散性を有するシートであるため、その厚みが0.15mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることが更に好ましい。また0.4mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましい。厚みは、装着状態を考慮した観点から、0.5kPa荷重下において測定する。
【0046】
セカンドシートとしては、交差した合成繊維同士の互いの交点がエアスルー方式の熱融着によって接合されているエアスルー不織布を好ましく用いることができる。尚、エアスルー不織布以外にも、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等であってもよい。セカンドシートがエアスルー不織布である場合には、その坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。
【0047】
表面シート2とセカンドシートとの間、及びセカンドシートと吸収体4との間は、それぞれ、部分的に固着されていても良いし、固着されていなくても良い。またセカンドシートがない場合も同様に、表面シート2と吸収体4との間は、部分的に固着されていても良いし、固着されていなくても良い。また、吸収体4と裏面シート3との間も、部分的に固着されていても良いし、固着されていなくても良い。
部分的に固着とは、点や線からなる固着部を有し、該固着部がシート面全体に分布しており、均一に分布する必要はないが、固着するシート間を全面固着するのではないことを意味する。該固着部の面積は被固着シート全面積の10%以上60%以下が好ましい。具体的には、接着剤を間欠的に塗布したり、間欠的にヒートシールを施したりして、表面シート2とセカンドシートとを部分的に固着している。接着剤を間欠的に塗布する場合には、接着剤を、公知の手段、例えば、スロットコートガンを用いて間欠的に塗布したり、スパイラルスプレーガンを用いて螺旋状に塗布したり、スプレーガンを用いて間欠的に霧状に塗布したり、ドットガンを用いてドット状に塗布したりして、表面シート2とセカンドシートとの間に体液の透過性を維持した状態で、表面シート2とセカンドシートとを部分的に接着する。塗布する接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が好ましく用いられる。
【0048】
ホットメルト接着剤としては、スチレン系、オレフィン系等が挙げられる。スチレン系ホットメルト接着剤としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、及びこれらの2種以上をブレンドしたブレンド系ホットメルト接着剤を使用することができる。これらの中でも、タック力と凝集力のバランスが取り易い観点から、特にSISとSBSとのブレンド系ホットメルト接着剤、又はSISとSEBSのブレンド系ホットメルト接着剤が、本発明で好ましく用いられる。ホットメルト接着剤の塗布量は、3g/m
2以上10g/m
2以下であることが好ましい。
【0049】
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。
【0050】
吸収体4を構成する吸収性シート401〜403としては、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとしては、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸水性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸水性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることができる。これらの吸収性シートは、一枚を所定形状に裁断してシート状吸収体として用いることができる。
【0051】
本発明における吸収性シートの積層体は、枚葉の吸収性シートを複数枚貼り合わせて積層したものでも良いし、一枚の吸収性シートを折り畳むと共にそれらの層間を接着して積層体としたものでも良い。また、そのような積層体を、2枚の吸収性シート間や折り畳んで2層以上とした積層体の層間に挟んだり、他の吸収性シートの肌対向面側又は非肌対向面側に積層したものであっても良い。また、吸収性シートの折り畳み方も多様な折り畳み方を採用でき、例えば、上記実施形態における補助吸収体は、吸収性シート403を、
図8(a)〜
図8(d)に示すような折り畳み方で折り畳んだものであっても良い。
【0052】
吸収体4は、多層部42における厚みが、好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下であり、より具体的には、好ましくは0.7mm以上5mm以下、更に好ましくは1mm以上4mm以下である。多層部42の厚みをこのような範囲とすることで、多層部42が形成されている排泄部対向部Bにおける良好な装着感と高い吸収性能を両立することが容易となる。また、本実施形態のナプキン1のように吸収性物品がウイング部を備えている場合には、装着時に排泄部対向部での吸収体のヨレを抑制しやすくなる。また、吸収体は、多層部42以外の部分における厚みが、好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.5mm以下であり、より具体的には、好ましくは0.3mm以上3mm以下、更に好ましくは0.5mm以上2.5mm以下である。この範囲であることが、高い吸収性能と着用者の動きへの追従性を高める観点から好ましい。
【0053】
また、吸収体4において、中高部42とその周辺部との境界又はその近傍における両者の厚み差(段差)は2mm以下であることが好ましく、更に1.5mm以下であることが好ましい。この目的は、排泄部対向部Bにおいて、中高部42とその周辺部分の主吸収体40のみが存在する領域との境界付近におけるヨレの発生を抑制することである。この段差が大きいと、着用中にナプキン1が着用者の動きに追従した際、段差による隙間を埋めようとするため、結果として段差の影響でヨレが生じ易くなることがあるが、該段差を前記範囲内に設定とすることで、排泄部対向部Bにおけるヨレの発生を抑える効果が高まる。前述した吸収体4の各部の厚みは下記方法により測定される。
【0054】
<吸収体の厚みの測定方法>
測定対象物である吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm
2の荷重下での厚みを測定する。本発明における厚みの測定には、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いた。このとき、厚み計の先端部と測定対象物における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm
2となるようにプレートの大きさを調整する
【0055】
また、吸収体4にスリットを形成するには、吸収性シートの積層体を、公知の切断手段により部分的に切断すれば良く、例えば、ロールの周面に、周方向に延びる切断刃が、ロールの周方向及び軸長方向に分散させて多数形成されたカッターロールと、該カッターロールの刃を受けるアンビルロールとを備えた切断装置を用いることができる。貫通スリットと非貫通スリットとは別工程で形成しても良いし、周面からの高さが異なる2種類の切断刃を備えたカッターロールを用いて同時に形成しても良い。また、周面からの高さが同じである複数の切断刃を備えたカッターロールを用い、カッターロールとアンビルロールとのクリアランスを、貫通スリットと非貫通スリットとの両者が生じるような値に設定して、スリットを形成しても良い。
なお、吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。また、吸収体4を構成する吸収性シートは、そのいずれもが吸水性ポリマーを含有する吸水性シートであることが好ましいが、吸水性ポリマーを含有する吸水性シートと、吸水性ポリマーを含有しない吸水性シートを組み合わせて、吸収体を構成する吸水性シートの積層体としても良い。
【0056】
サイドシート10としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。その他の材料としては、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布(S)とメルトブロー不織布(M)とが複合化されたシート(例えばSM、SMS、SMMS等)、ヒートロール不織布、エアスルー不織布等の撥水性(疎水性)不織布が挙げられる。特に撥水性のエアスルー不織布を用いることが、肌触りのよさと横モレ防止の点から好ましい。
【0057】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、排泄部スリット領域Sは、排泄部対向部Bのみに形成されていても良いし、排泄部対向部Bから後方部Cの一部に延在していても良いし、排泄部対向部Bから、前方部Aの一部及び後方部Cの一部に延在していても良い。また、多層部42における吸収性シートの積層数は、4枚に代えて、2枚又は3枚でも良く、5枚以上であっても良い。また、多層部42とそれ以外の部分との吸収性シートの積層枚数の差も1枚又は3枚以上であっても良い。また、ナプキン1の縦方向Xにおける多層部42より後方の縦スリット43や非貫通スリット43cは無くても良い。
【0058】
また、排泄部スリット領域に形成するスリットとして、ナプキン1の横方向Yに延びる横スリットを形成する場合、吸収性本体5を衣類のクロッチ部に固定するズレ止め部55として、ナプキン1の縦方向Xに延びる帯状のズレ止め部を、横方向Yに間隔を開けて複数本形成し、貫通スリット、好ましくは貫通スリット及び非貫通スリットを、そのズレ止め部と交差させることが好ましい。
【0059】
また、本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティライナ(おりものシート)、失禁パッド等であっても良い。
【0060】
前述した本発明の実施態様に関し、更に以下の付記(吸収性物品等)を開示する。
<1> 液保持性の吸収体並びに該吸収体の肌対向面側に配置された表面シート及び該吸収体の非肌対向面側に配置された裏面シートを具備し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部より着用者の腹側に配される前方部と、該排泄部対向部より着用者の背側に配される後方部とを有する吸収性本体を備え、着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、前記裏面シートは、透湿性を有しており、前記吸収体は、吸収性シートの積層体からなり、前記排泄部対向部に、前記表面シートに最も近い吸収性シートを貫通するスリットが、前記縦方向及び前記横方向の両方向に分散した状態に形成された排泄部スリット領域を有しており、前記吸収体は、前記排泄部対向部に多層部を有し、該多層部は、その周囲に位置する部分よりも吸収性シートの積層枚数が多い部分であり、前記スリットとして、前記多層部には、前記吸収体を貫通する貫通スリットを有し、該多層部の周縁より外方に位置し、該多層部より吸収性シートの積層枚数が少ない部位に、前記表面シートに最も近い吸収性シートを貫通し該吸収体を貫通しない非貫通スリットを有している、吸収性物品。
【0061】
<2> 前記排泄部対向部における、前記多層部の前記縦方向に沿う両側縁それぞれの横方向の外方に、前記非貫通スリットが形成されている、前記<1>記載の吸収性物品。
<3> 前記吸収体は、前記排泄部スリット領域の周囲を、スリットが存在しない環状の非スリット領域に囲まれている、前記<1>又は<2>記載の吸収性物品。
<4> 前記スリットは、前記縦方向に沿って延びている前記<1>〜<3>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<5> 前記横方向に間隔を置いて複数本の縦スリットが配置されたスリット列が、前記縦方向に複数列形成されている、前記<4>記載の吸収性物品。
<6> 縦方向に隣合う前記スリット列の間には間隔を有していない、前記<5>記載の吸収性物品。
<7> 前記縦方向に沿って直列した複数の縦スリットからなる縦列が、横方向に複数列形成されているとともに、該横方向に互いに隣り合う縦列における縦スリットの縦方向の位置が一致していない配置である前記<5>又は<6>記載の吸収性物品。
<8> 前記貫通スリットは、吸収性物品の縦方向又は横方向に延びて形成されており、前記吸収性本体の非肌対向面に、吸収性物品を衣類に固定するためのズレ止め部が、該貫通スリットが延びる方向と交差する方向に延び且つ該貫通スリットが延びる方向に間欠配置となるように形成されており、該ズレ止め部と該貫通スリットとが交差している、前記<1>〜<7>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<9> 前記非貫通スリットも、前記ズレ止め部と交差している、前記<8>記載の吸収性物品。
<10> 前記吸収体は、前記非貫通スリット部の周辺に吸水性ポリマーを含んでいる前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0062】
<11> 前記吸収体は、該吸収体の外形を形成する主吸収体と、主吸収体の一部に重ねて配された主吸収体より小型の補助吸収体とを有している前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<12> 前記吸収体は、前記補助吸収体を構成する1枚の吸収性シートを折り畳んだ構造のものを、主吸収体を構成する2枚の吸収性シート間に配したものである前記<11>記載の吸収性物品。
<13> 前記主吸収体を構成する1枚の吸収性シートを折り畳んで前記2枚の吸収性シートとした前記<12>記載の吸収性物品。
<14> 前記吸収体の前記多層部の周囲に位置する部分は、全て2層以上の吸収性シートを含んでなる前記<1>〜<13>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<15> 前記多層部の厚みは0.7mm以上5mm以下である前記<1>〜<14>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<16> 前記多層部は排泄部対向部のみに存在する前記<1>〜<15>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<17> 前記吸収性シートは、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状としたものである前記<1>〜<16>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<18> 吸収性シート1枚あたりの厚みは、0.1mm以上2mm以下である、前記<12>〜<17>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<19> 前記吸収体において、前記多層部とその周辺部の境界部における厚みの差が2mm以下である前記<1>〜<18>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<20> 排泄部スリット領域における縦スリットの長さは、好ましくは10mm以上35mm以下である前記<4>〜<19>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0063】
<21> 排泄部スリット領域における同一の前記スリット列内における縦スリットの間隔は、3mm以上20mm以下である前記<4>〜<20>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<22> 排泄部スリット領域の横方向の長さは、排泄部対向部における吸収体の同方向の長さの、30%以上85%以下である前記<1>〜<21>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<23> 排泄部スリット領域の横方向の長さは、30mm以上55mm以下である前記<1>〜<22>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<24> 平面視において前記吸収体の縦方向に沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシートが吸収性本体の縦方向の略全長に亘って配されており、該一対のサイドシートは、それぞれ、排泄部対向部に位置する線状の第1接合線と、該第1接合線の縦方向の前後に位置する線状の第2接合線とで吸収性本体に接合されており、前記第1接合線及び前記第2接合線よりも横方向の内方に、サイドシートと表面シートとで画成される空間部が形成されている前記<1>〜<23>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<25> 前記第1接合線は横方向外側へ凸の形状である前記<24>に記載の吸収性物品。
<26> 前記第2接合部は平面視において縦方向に交差するように延びる線状である前記<24>又は<25>記載の吸収性物品。
<27> 前記吸収性物品がウイング部を備えており、前記縦方向においてウイング部が存在する領域内に前記多層部を備えている前記<1>〜<26>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<28> 前記吸収性物品は、ウイング部を備えておらず、横方向に延びる2つの折り線によって長手方向に3つに折り畳まれており、該2つの折り線に挟まれた領域を排泄部対向部とする前記<1>〜<26>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<29> 前記吸収性物品が生理用ナプキンである、前記<1>〜<28>のいずれか1つに記載の吸収性物品。