(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120336
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】光センサー
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02 20060101AFI20170417BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20170417BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20170417BHJP
H04R 23/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
G01B9/02
G01B11/16 G
G01N21/45 A
H04R23/00 320
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-510796(P2014-510796)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-515114(P2014-515114A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】EP2012059122
(87)【国際公開番号】WO2012163681
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】11166253.2
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513284852
【氏名又は名称】クサリオン レーザー アコースティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】XARION Laser Acoustics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,バルタザール
(72)【発明者】
【氏名】ラインニング,フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィントナー,エルンスト
【審査官】
居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0146726(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0165238(US,A1)
【文献】
特開平11−063914(JP,A)
【文献】
特開2002−054910(JP,A)
【文献】
特開2009−231316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B9/00−9/10
H01S5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が同じ光源(1)から光を受け取り、それぞれの検出器(6)に光を出射するように構成され、かつそれぞれの動作点を有する測定干渉計(7)と基準干渉計(3)とを備える装置において、前記動作点は、光の周波数に対する前記測定干渉計(7)又は前記基準干渉計(3)の伝送値が線形変化を達成する点であり、前記測定干渉計(7)が、出射された光の強度を変えることによって前記測定干渉計(7)の環境の物理パラメータの変化に反応するように構成されているのに対し、前記基準干渉計(3)は、前記物理パラメータの変化に反応しないように構成されており、前記測定干渉計(7)及び前記基準干渉計(3)に対応する前記検出器(6)によって生成されたそれぞれの出力信号間の差分信号を生成するための信号プロセッサーを更に備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記信号プロセッサーが、差分増幅器(8)と、前記検出器(6)によって生成された前記それぞれの出力信号のDCレベルを動的に調整するための先行ゲイン段を備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、前記測定干渉計(7)及び/または基準干渉計(3)が、各々が機械的に剛性を有する及び/または不動の構成部品を使用するファブリペロー干渉計であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、前記測定干渉計(7)及び/または基準干渉計(3)が、各々が機械的に剛性を有する及び/または不動である、間隔を空けて配置された一対のミラーを備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の装置において、前記測定干渉計(7)または前記基準干渉計(3)の動作点を調整するため熱調整素子を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、前記測定干渉計(7)または前記基準干渉計(3)の前記動作点を調整するため調整電極(4)を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の装置において、前記測定干渉計(7)または前記基準干渉計(3)のうちの少なくとも一方の中に配置された液晶調整素子(5)を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の装置において、前記光源(1)に光を第1及び第2の波長で交互に出射させるように適合させた光源コントローラを更に備え、前記測定干渉計(7)及び前記基準干渉計(3)の前記動作点が前記第1及び第2の波長でそれぞれ達成されることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の装置において、前記光源(1)と前記基準干渉計(3)との間に配置され、直線偏光子と1/4波長板とを備える光アイソレータ(2)を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の装置において、前記光源(1)がレーザーであることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記レーザーが両面発光レーザーであり、第1及び第2の出射ビームが前記測定干渉計(7)と前記基準干渉計(3)とにそれぞれ結合されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、前記両面発光レーザーが、第1及び第2の階層構造間の基板上に配置された両面発光レーザーダイオードであり、前記第1及び第2の階層構造が、前記両面発光レーザーダイオードを挟んで前記測定干渉計(7)と前記基準干渉計(3)とのうちの一方を形成し、各々の干渉計が、前記基板に積層された機械的に剛性を有する及び/または不動の第1のミラー層と、前記第1のミラー層に積層されたスペーサ層と、前記スペーサ層に積層された第2のミラー層と、前記第2のミラー層に積層された検出器層と、を備えており、
前記両面発光レーザーダイオードから出射されるレーザービームのうち、一方の面から出射されるレーザービームは前記測定干渉計(7)に入射し、他方の面から出射されるレーザービームは前記基準干渉計(3)に入射することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の装置において、前記信号プロセッサーが、等化期間を経て前記検出器(6)によって生成される前記それぞれの出力の平均振幅を等化するための適応等化器を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の装置を備える光マイクロフォンにおいて、前記測定干渉計(7)が前記環境と音響的に結合されており、前記基準干渉計(3)前記環境から音響的に隔離されており、前記物理パラメータが気圧であることを特徴とする光マイクロフォン。
【請求項15】
請求項14に記載の光マイクロフォンにおいて、前記測定干渉計(7)が、前記測定干渉計(7)のキャビティ内に設けられた開口によって自身の環境と音響的に結合されていることを特徴とする光マイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサーを形成する目的で使用可能な測定干渉計を備える装置に関するものであり、その装置を作成する元となる階層構造と、その装置を備える光マイクロフォンとに関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの光センサーが、干渉計を使用して物理パラメータの変化を検出する。このようなセンサーでは、レーザーからの光が干渉計に結合され、干渉計が物理パラメータの変化による影響を受けて、対応する干渉縞の変化を生み出す。この干渉縞の変化は、強度の変化として現れ、その変化は光検出器で検出することができる。
【0003】
種々の異なる物理パラメータを使用して干渉縞の変化を生み出すことができ、例えば、圧力(気圧を含む)、張力、位置ずれなどを、この種のセンサーによって感知することができる。
【0004】
このようなセンサーの信号対ノイズ比(SNR)は、レーザーから出力された光の強度や周波数の変動によって生まれるノイズによって制限されることが多い。レーザー周波数を安定させるための方法は種々ある。例えば、1つの方法が、ファブリペロー干渉計またはエタロンを使用してエラー信号を生成するというものである。エタロンは、周波数変動を、光検出器によって検出できる強度変動に変換する。生成された光電流は、レーザー供給電流に作用したり、キャビティミラーを動かして、例えば周波数変動を修正したりすることのできるフィードバック信号として使用される。
【0005】
しかし、この種の機器はかさばる上に高価であり、光センサーを使用するのが望ましい多くの用途と相容れない。例えば、移動通信装置には、安定性と衝撃耐性が高く、風騒音を感受しにくいマイクロフォンが必要とされる。移動通信装置には膜などの可動部品がないことから、これらの特徴は、レーザー光源と干渉計とを利用する光マイクロフォンによってすべて提供することができる。但し同時に、このようなマイクロフォンは、コンパクトでSNRが高いことが求められる。上記安定化技法は、レーザーの周波数ノイズをある程度補償できるものの、相対強度ノイズを補償することはできない。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、各々が同じ光源から光を受け取り、それぞれの検出器に光を出射するように構成され、かつそれぞれの作動点を有する測定干渉計と基準干渉計とを備え、測定干渉計が、出射された光の強度を変えることによって物理パラメータの変化に反応するように構成されているのに対し、基準干渉計は、物理パラメータの変化に反応しないように構成されており、検出器によって生成されるそれぞれの出力信号に応じて異なる出力信号を生成するための信号プロセッサーを更に備える装置が提供される。
【0007】
同じ光源からの光が、感知すべき物理パラメータの変化を感知しないか、或いは反応しない基準干渉計と、このような変化に反応する測定干渉計との両方に結合される。そのため、両干渉計とも、その光源からの光の変動による影響を受けるものの、測定干渉計だけは物理パラメータの変化による影響を受け、基準干渉計はこの変化から隔離されている。そのため、基準干渉計の干渉縞は自身のそれぞれの検出器からの信号を表す場合と同じように光源からのノイズを表す。この信号を使用して、測定干渉計のそれぞれの検出器からの信号における光源のノイズを補償し、それによってこの信号が物理パラメータの変化だけを表すようにすることができる。そのため、SNRが増大する上に、必要な追加部品が基準干渉計だけなので、装置を非常にコンパクトにし得る。
【0008】
基準干渉計及び測定干渉計の各々の動作点は、周波数に対する干渉計の伝送値が線形変化を達成するように選択される。
図5は、パラメータ「q」に対する(最大値1に正規化された)伝送値のグラフを示しており、q=4πnd/λである(nは干渉計キャビティの屈折率、dは干渉計ミラー間の間隔、λは光の波長)。当然のことながら、パラメータqは光の周波数に比例する。伝送値とqとの関係は、いわゆる「エアリー関数」によって表される。
図5は、伝送値対qのグラフの第1及び第2の導関数を示すグラフでもある。伝送値対qの最良の線形は、第2の導関数がゼロになる点で見られる。そのため、伝送値とqとの関係の第2の導関数がゼロになる点が各々の干渉計の動作点として選択されるのが好ましい。
【0009】
干渉計サイズのわずかな変更も動作点の最適位置に影響することから、動作点は、干渉計ごとに異なる可能性が高い。
【0010】
使用可能な代替動作点は、動作点における伝送値が最大値の75%となるように干渉計を調整することである。代替動作点は、第2の導関数がゼロになる点とほぼ同じである。
【0011】
動作点は、qが依存する任意のパラメータを変えることによって調節し得る。そのため、基準干渉計または測定干渉計は、干渉計キャビティの屈折率、或いはキャビティのミラー間間隔を調節することによって動作点に調整し得る。また、光源から出射された光の波長は、基準干渉計または測定干渉計に固有の動作点か、或いは調節された動作点に合うように調節され得る。
【0012】
基準干渉計は、物理パラメータから隔離するか、干渉計内でキャビティを空にすることにより、或いは、干渉計内のキャビティにガラスなど光透過型の固形材料を充填することにより、物理パラメータの変化に反応しないように構成され得る。
【0013】
一般に、測定干渉計及び/または基準干渉計はファブリペロー干渉計である。
【0014】
測定干渉計及び/または基準干渉計は、間隔を空けて配置した一対のミラーを備え得る。このミラーは、両方が平面ミラーまたは曲面ミラーであり得るか、平面ミラー1枚と曲面ミラー1枚を備え得る。
【0015】
一方の干渉計は、レーザー波長を調節することによって(例えば、レーザーへの供給電流を調節することによって)動作点を調節することができる。他方の干渉計については、調整機構が設けられ得る。
【0016】
そのため、この装置は、測定干渉計または基準干渉計の動作点を調整するための熱調整素子を更に備え得る。これは、熱光学効果を利用して、測定干渉計または基準干渉計の光媒体の屈折率を熱的に調節する。
【0017】
この装置は、測定干渉計または基準干渉計の動作点を調整するための調整電極を更に備え得る。これは、電気光学効果(例えば、ポッケルス効果などの線形効果やカー効果などの非線形効果)を利用して、外部印加された電界によって測定干渉計または基準干渉計の光媒体の屈折率を調節する。
【0018】
この装置は、測定干渉計または基準干渉計と自身のそれぞれの検出器との間に配置された液晶調整素子を更に備え得る。
【0019】
一実施形態において、この装置は、光源に第1及び第2の波長の光を交互に出射させるように適合させた光源コントローラを更に備えており、測定干渉計及び基準干渉計の動作点は第1及び第2の波長でそれぞれ達成される。このようにして、基準干渉計及び測定干渉計は、光源の波長を調節することにより、毎回の交互作動サイクルで自身の動作点に調整される。これは、例えば光源への供給電流を調節することによって達成され得る。このようにして、この「パルスモード」動作使用時における追加調整素子を省略することができる。
【0020】
一般にこの装置は、光源と基準干渉計との間に配置された光アイソレータを更に備え、光アイソレータは、直線偏光子と1/4波長板とを備える。
【0022】
レーザーは、両面発光レーザーで、第1及び第2の出射ビームがそれぞれ測定干渉計と基準干渉計とに結合されるのが有利であり得る。
【0023】
両面発光レーザーを使用することにより、特にコンパクトな構造にすることができる。本実施形態において、両面発光レーザーは、第1及び第2の階層構造間の基板上に配置された両面発光レーザーダイオードであり、各々が測定干渉計と基準干渉計の一方を形成し、各々が、それぞれのスペーサ層と、ミラー層に対して基板から遠い方の検出器層とによって隔てられた2つのそれぞれのミラー層を備える。
【0024】
基準干渉計のそれぞれのスペーサ層は、2つのそれぞれのミラー層間でキャビティを備えるのが一般的であり、このキャビティは、スペーサ層内の孔によってその環境に音響的に結合されている。
【0025】
第1及び第2の階層構造は、各々が、基板とそれぞれのミラー層の最内側層との間に配置された光分離層を更に備え得る。光アイソレータは一般に、直線偏光子と1/4波長板とを備える。
【0026】
第1及び第2の階層構造は、各々が、基板とそれぞれのミラー層の最内側層との間に配列されるレンズを更に備え得る。レンズは、光分離層とそれぞれのミラー層の最内側層との間に配列されても良い。
【0027】
検出器層は各々、それぞれの光検出器を備え得る。
【0028】
一般に信号プロセッサーは、等化期間を経て検出器によって生成されるそれぞれの出力の平均振幅を等化するための適応等化器を更に備える。これにより、例え2台の検出器によって受け取られた光パワーが何かの理由で異なっていても、ノイズが適切に打ち消される。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様にかかる装置を備える光マイクロフォンが提供され、測定干渉計は環境と音響的に結合され、基準干渉計は環境から音響的に隔離され、物理パラメータは気圧である。
【0030】
基準干渉計の「音響的隔離」は、(基準干渉計のキャビティと環境との間で流体連通させないことによって)気圧の変化から干渉計を分離することによって、或いはソリッド干渉計を利用して気圧の変化から自然に分離させることによって成し遂げられ得る。
【0031】
このマイクロフォンは、SNRが高く非常にコンパクトな移動通信用途に特に適している。
【0032】
一般に測定干渉計は、測定干渉計のキャビティに設けられた孔によって自身の環境と音響的に結合される。
【0033】
本発明の実施例について、以降、添付の図面を参照しながら詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明にかかる装置の概略図を表す。
【
図3a】
図3aは、測定干渉計による
図2の光マイクロフォン断面図を表す。
【
図3b】
図3bは、測定干渉計による
図2の光マイクロフォン断面図を表す。
【
図4】
図4は、かかる光マイクロフォンを作成できる階層構造による断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、レーザーダイオードなどのレーザー光源1を表す。このレーザー光源が、光アイソレータ2を通過して基準ファブリペロー干渉計またはエタロン3に達する光を出射する。基準ファブリペローエタロン3は、周波数識別器としての働きをする。このエタロンは、ソリッドエタロンであっても、周囲環境から隔離された真空エタロン或いはエアスペースエタロンであっても良い。
【0036】
調整電極4は基準ファブリペローエタロン3に隣接して配置され、その伝送特性に影響を及ぼすために、好適な動作点が確立される方法で使用される。この動作点は通常、基準ファブリペローエタロン3の伝送関数の変曲点である。これらの電極4は、電気光学効果または熱光学効果によって伝送特性に影響を及ぼす。或いは、薄膜レジスタまたはペルティエ素子を調整電極4の代わりに使うこともできる。ペルティエ素子は、熱効果または熱光学効果を利用して、基準ファブリペローエタロン3の伝送特性を熱的に変える。
【0037】
基準ファブリペローエタロン3の伝送特性を変える別の方法は、液晶5を利用するというものである。この素子は、基準ファブリペローエタロン3の内部または外部のどちらにも配置され得る。
【0038】
調整電極4はまた、電流によって変形可能な圧電素子で代用しても良く、この圧電素子が基準ファブリペローエタロン3を変形させる。同様に、液晶5も、使用される場合には、電気的に変形可能なレンズで代用しても良い。但し、用途(光マイクロフォンなど)によっては、機械的に変形可能な素子を使用するのは控えるのが最善である。
【0039】
レーザー光源1が光フィードバックの影響を受けるのを防ぐために、レーザー光源1と基準ファブリペローエタロン3との間で光アイソレータ2が使用される。この隔離装置2は、リニア偏光フィルターと1/4波長板との組み合わせである。
【0040】
基準ファブリペローエタロン3からの出現光は、PINダイオードなどの光検出器6によって検出される。
【0041】
レーザー光源1からの光は、測定ファブリペローエタロン7にも入射する。測定ファブリペローエタロン7は、気圧など物理パラメータの変化による影響を受ける。測定ファブリペローエタロン7を環境と相互作用させて物理パラメータの影響を受けるようにする厳密な方法は、物理パラメータの性質に依存する。気圧の場合、測定ファブリペローエタロン7は、単に孔を通じて空気と結合されるキャビティを有するに過ぎない。このことは、以下の記述によって一層明白になるであろう。測定ファブリペローエタロン7からの出現光も、PINダイオードの光検出器(図示せず)によって検出される。この光検出器からの出力信号は、測定される物理パラメータの変動とレーザー光源1からのノイズとに依存する。
【0042】
この光検出器からの出力信号と光検出器6からの出力信号との間の差分信号は、差分増幅器8によって生成される。これにより、レーザー光源1からの一般的なモードレーザーノイズが打ち消される。基準経路(即ち、基準ファブリペローエタロン3及び光検出器6)と測定経路(即ち、測定ファブリペローエタロン7及びその光検出器)との両方からのDCレベルを動的に調節するために、差分増幅器8は、両出力信号が長い時定数で動的に調節される先行ゲイン段を有する。
【0043】
レーザー光源1からの光は、ビームスプリッタを経由してエタロン3、7の両方に入射し得る。或いは、両面出射レーザー光源が使用され得る。
【0044】
代替切換モードでは、調整電極4及び液晶5が省略される。レーザー光源1は、パルスで動作し、測定経路と基準経路とを交互に通って、連続的なパルスが、基準ファブリペローエタロン3と測定ファブリペローエタロン7とのどちらか一方(両方ではない)に入射する。この切換モードでは、レーザー光源1の電源供給の流れを調節することによって動作点を設定することができる。例え測定ファブリペローエタロン7の伝送ピークが基準ファブリペローエタロン3の伝送ピークと一致しなくても、この連続動作モードにより、両エタロン3、7にとって理想的な動作点を得ることができる。1回のサイクルの間に、エタロン3、7の一方についてレーザー光源1の電流が調節され、次のサイクルの間に、エタロン3、7の他方についてレーザー光源1の電流が調節される。
【0045】
ノイズの打ち消しは、光検出器による検出後も差分増幅器8によって実行される。切換モードは、調整電極4または液晶5を使用した連続モードよりも、レーザーノイズの打ち消しに効果的でない。但し、コンピュータシミュレーションにより、1/fノイズの打ち消しは上手く行くことが証明されている。切換モードには、(調整電極4及び液晶5が省略されるため、)よりコンパクトな装置を構成することができ、全体的な消費電力量がより少ないという利点がある。
【0046】
以上からわかるとおり、本実施形態は、基準ファブリペローエタロン3を使用して(レーザー光源1からのノイズを表す)ノイズ信号を生成し、測定ファブリペローエタロン7を使用して生成された信号からこのノイズ信号を引いて測定ファブリペローエタロンの7つのSNRを改善することによって機能する。両エタロン3、7は、自身のそれぞれの伝送関数の変曲点で動作するのが好ましい。この時点で、測定中の物理パラメータと出力された光との間の線形関係、及び周波数ノイズと出力された光との間の線形関係が達成される。エタロン3、7の傾きの大きさは、測定中の物理パラメータ及び周波数ノイズが理想的な動作点(即ち周期的な伝送関数の変曲点)から非常に遠くへと離れる振幅を生成しないようなミラーの反射率とミラーの距離とを選択することによって調節することができる。本実施形態を用いて、レーザー光源1における周波数及び位相の変動による装置の性能低下を防ぎ、レーザー光源1が不安定なレーザーダイオードであっても、量子ノイズ制限やショットノイズ制限に達することができる。
【0047】
図2は、
図1の実施形態と同じ原理に基づく光マイクロフォンを示す。
図2の光マイクロフォンは、従来の小型マイクロフォンで一般に必要とされる膜などの可動部分を一切伴わずに製造できるという大きな利点を有する。そのため、サイズがコンパクトで非常に堅牢である。
【0048】
更には、調整素子(8)間の距離が短いため、調整素子(8)の影響が集約される。例えば、調整機構は電界に比例し得ることから、電極(8)間の距離とも比例し得る。
【0049】
レーザー光源10(例えばPINダイオード)から出射されたレーザー光は、リニア偏光フィルター11と1/4波長板12からなる光アイソレータに入射する。その後、この光は波路構造13に結合され、波路構造13は、この光を分割して、測定経路と基準経路とに沿って伝送されるようにする。測定経路の主要素子は測定ファブリペローエタロン14であり、基準経路の主要素子は、2つのミラー15a、15bによって形成された基準ファブリペローエタロンである。
【0050】
波路構造13を測定ファブリペローエタロン14に結合するために、先細の波路構造16a、16bが設けられている。これらの構造により、効率よく測定ファブリペローエタロン14に結合される。この先細形状により、波路構造13から現れる光の発散が小さくなる。光マイクロフォンが作成される基板23(ニオブ酸リチウムが一般的)の平面に対して平行な次元で発散が小さくなる。
【0051】
基準キャビティは、調整電極17または薄膜レジスタにより、
図1の実施形態のところで記載した方法と同じように調整することができる。
【0052】
基準ファブリペローエタロン及び測定ファブリペローエタロン14から出射された光は、それぞれの光検出器18、19に入射し、差分信号は差分増幅器20によって取得される。
【0053】
測定ファブリペローエタロン14は、
図3a及び
図3bに示す2つの異なる方法で実現することができる。
図3aでは、同心のミラー構造21(例えば、チューブまたは中空コアファイバー)が使用されている。
図3bでは、平行平面エタロンが、対向する平行平面ミラー22によって作られる。
【0054】
レーザー光源10は、
図1の実施形態と同様のパルス式切換モードで動作させることができる。長さの異なる2つのデューティサイクルに基づき、2つの異なる切換モードが想定されており、高SNR動作と低SNR動作とを見込んでいる。低SNR動作モードでは、デューティサイクルが低いため、電流消費量が大きく低減される。
【0055】
シリコン・オン・インシュレータ(SOI)技法を用いて、
図2の光マイクロフォンを製造することができる。波路構造13の大きな利点は、基準経路を集積することができ、それによって物理的な寸法が小さくなるということである。基準ファブリペローエタロンの寸法は一般に、長さが1μm〜1mm、幅が1μmであり得る。
【0056】
マイクロフォンとしての働きをするために、測定ファブリペローエタロン14は、環境(空気など)に音響的に結合される。これは、測定ファブリペローエタロン14に穴を空けることによって行われ、これにより、空気で満たされた測定ファブリペローエタロン14内のキャビティと周囲の空気との間での流体が連通される。このようにして、(音響波などによる)気圧の変化が空気で満たされたキャビティに結合され、キャビティ内の屈折率に影響する。その影響は、光検出器19で光強度の変化として検出される。
【0057】
図2の光マイクロフォンと同様の光マイクロフォン(但し波路構造を持たない)を作成でき得る1つの方法が
図4に図示されている。これは、積層または階層構造設計であり、いくつかの薄い光学層と光学素子とが互いに接触して積み重なっている。そのため、コンパクトで堅牢なセンサーが得られる。
図2で使用されている導波管ビームスプリッタを省略するために、基板31に封埋された両面発光のレーザーダイオード30が使用されている。このレーザーダイオード30は、垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)であっても良い。VCSELは、基板を部分的に除去して前後両側から光を出射できるように修正したり、基板の一部を省略して両面発光を特別に製造できるようにしたりすることができる。(繰り返しになるが、修正または特別製造のどちらでも)両面発光用に使用可能なもう1つの装置が、分布帰還型(DFB)レーザーダイオードである。
【0058】
スタックの層は、レーザーダイオード30によって出射された光の波長と、所望の機械処理特性とに応じて、ガラス、ポリマー、シリコン、または他の誘電層から成り得る。また、スタック内で材料を組み合わせることも可能である。これらの層は、結束、接着、或いは他の技術を用いて組み合わされ得る。
【0059】
出現レーザービームのうち、一方は基準経路に入射し、反対側から出射される他方のレーザービームは、測定経路に入射する。基準経路は、光分離層32と、反射防止コーティング53を有するコリメートレンズ33と、基準ファブリペローエタロンの第1のミラー34と、スペーサ素子35と、基準ファブリペローエタロンの第2のミラー36と、基板38に埋封された光検出器37とから成る(移行順)。そのため、基準ファブリペローエタロンは、第1及び第2のミラー34、36と、2つのミラー34、36に間隔を設けるスペーサ素子35とから作られる。ミラー34、36の各々には、反射防止コーティング39a、39b、40a、40bが設けられている。
【0060】
測定経路の構造も同様で、光分離層41と、反射防止コーティング43を有するコリメートレンズ42と、測定ファブリペローエタロンの第1のミラー44と、スペーサ素子45と、測定ファブリペローエタロンの第2のミラー46と、基板48に埋封された光検出器47とから成る(移行順)。そのため、測定ファブリペローエタロンは、第1及び第2のミラー44、46と、2つのミラー44、46に間隔を設けるスペーサ素子45とから作られる。ミラー44、46の各々には、反射防止コーティング49a、49b、50a、50bが設けられている。
【0061】
スペーサ素子45は、キャビティ52内の空気が環境に結合される開口または孔51を有する。そのため、キャビティ52内の気圧は、その環境における気圧の変化による影響を受ける。この影響が、測定ファブリペローエタロンの光伝送特性をもたらし、気圧の変化は光検出器47からの出力信号の変化として検出される。このようにして、装置は音響波に反応し、マイクロフォンとしての働きをする。
【0062】
基準キャビティに特有の伝送に影響を及ぼすために、調整電極53a、53bが使用される。これらの動作のしかたは、
図1の実施形態のところで説明した調整電極4と同じである。
【0063】
でき上がった階層構造は非常にコンパクトな光マイクロフォンとなり、2つの光線は同じ空間軸に存在することとなる。両態様とも、費用対効果が高く大量生産が可能な小型装置に好都合である。そのため、移動通信用途に非常に適している。
【0064】
特許請求された発明を実践するに当たっては、図面、開示内容、及び添付の請求項を吟味することにより、当業者は、開示された実施形態に対する他の変更態様を理解及び実現することができる。請求項において、「備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一プロセッサーまたは他のユニットは、請求項で引用されている複数の品目の機能を成し遂げ得る。ある手段が異なる従属請求項で相互引用されているという事実は、それらの手段の組み合わせを用いて利益をもたらすことができないということを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を制限するものと解釈されるべきでない。