【文献】
廣瀬 泰弘 Yasuhiro HIROSE,モバイルサイトにおけるWebユーザビリティ評価システムの開発 Development of Mobile Web Usability Scoring System,情報処理学会研究報告 Vol.2009 No.28 IPSJ SIG Technical Reports,日本,社団法人情報処理学会 Information Processing Society of Japan,2009年 3月 6日,第2009巻第28号,pp.53-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主観評価推定値算出部における要素評価値・主観評価値対応関数の係数について、学習用コンテンツについて自動算出された要素評価値を用いて、主観評価実験によって得られた主観評価値からの推定誤差を最小化するように設定する要素評価値・主観評価値対応関数係数設定部を備えた請求項2に記載のユーザビリティに対する評価装置。
前記特徴パラメータは、フォントサイズ、画面内の文字・背景のカラーコントラスト、画面内のカラーパターン、画面間の配色の違い、画面間のボタン配置の違い、起動時間・画面遷移時間のいずれか1つを含む請求項1に記載のユーザビリティに対する評価装置。
前記評価対象コンテンツにおける複数の画面に関して、ユーザビリティへの影響度の高さを記録した画面単位影響度、及び、各画面の中の構成要素に関してユーザビリティへの影響度の高さを記録した画面・構成要素単位影響度を記録した影響度記録部と、
前記各影響度に基づき前記主観評価推定値算出部での線形結合の係数を設定する係数設定部と、
を備える請求項2に記載のユーザビリティに対する評価装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載された評価方法では、アプリケーションを構築・改良するたびに、複数の被験者を募り評価実験を実施する必要があるため、多大なコストと時間を必要とする。
また、非特許文献2に記載された評価方法では、一画面内の各部品の配置が整然と並んでいるかを評価するだけであり、複数画面で構成するアプリケーション全体に渡る画面遷移や階層関係まで考慮できていない。
【0009】
特許文献1に記載された評価方法では、非特許文献1の課題と同様、アプリケーションを構築・改良するたびに、被験者を募り評価実験を実施する必要があるのに加え、被験者が思考した箇所と、熟読した箇所との区別など、指先の動きのみでは評価できない現象を考慮していない。
また、特許文献2に記載された評価方法では、画面内の被験者の注視を予測する方法に留まり、アプリケーション全体を通じての評価までは考慮されていない。
【0010】
すなわち、上述した既存技術の各評価方法は、アプリケーションに対して被験者の主観的な観点による評価と、画面配置や操作行動から得た客観的な観点による評価とを、それぞれ単独で評価しているに留まっており、これらの関係性まで考慮していないという課題が存在した。
特に、開発中のアプリケーションについては、試作段階での改良毎に被験者の主観的評価をその都度得ることは困難であり、主観的評価を自動的に取得できる評価システムが期待されていた。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、被験者の主観的な観点による評価結果と、画面配置や画面構成などの物理特徴から得られる客観的な観点による評価結果との相関関係を捉えるモデルを構築することで、アプリケーションの自動的な評価を行うユーザビリティに対する評価装置、評価方法及び評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明の請求項1は、ディスプレイ搭載情報表示端末に表示されるコンテンツのユーザビリティ客観評価装置であって、次の構成を含むことを特徴としている。
評価対象コンテンツに対して特徴パラメータの値を算出する特徴パラメータ抽出部。
学習用コンテンツを用いた特徴パラメータごとの主観評価実験によって得られた主観評価値から、特徴パラメータの値を変化させたときの要素評価値の推移を示す特徴パラメータ・要素評価値対応関数が定義される特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部。
前記評価対象コンテンツの特徴パラメータに対して、前記特徴パラメータ・要素評価値対応関数に基づいて、前記特徴パラメータごとの要素評価値を得る特徴パラメータ・要素評価値対応関数適用部。
前記評価対象コンテンツの特徴パラメータごとの要素評価値から、要素評価値・主観評価値対応関数を用いて、評価対象コンテンツ全体の主観評価値を推定する主観評価推定値算出部。
【0013】
請求項2は、請求項1のユーザビリティに対する評価装置において、前記主観評価推定値算出部は、前記評価対象コンテンツにおける特徴パラメータごとの要素評価値と重み係数を元に、線形結合によって評価対象コンテンツ全体の主観評価値を算出することを特徴としている。
【0014】
請求項3は、請求項2のユーザビリティに対する評価装置において、前記主観評価推定値算出部における要素評価値・主観評価値対応関数の係数について、学習用コンテンツについて自動算出された要素評価値を用いて、主観評価実験によって得られた主観評価値からの推定誤差を最小化するように設定する要素評価値・主観評価値対応関数係数設定部を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項4は、請求項1のユーザビリティに対する評価装置において、
前記特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部における各特徴パラメータ・要素評価値対応関数は、
正規分布関数、一次関数、高次多項式関数、階段関数、ロジスティック関数のいずれか1つに近似したものとして定義することを特徴としている。
【0016】
請求項5は、請求項1のユーザビリティに対する評価装置において、
前記特徴パラメータは、フォントサイズ、画面内の文字・背景のカラーコントラスト、画面内のカラーパターン、画面間の配色の違い、画面間のボタン配置の違い、起動時間・画面遷移時間のいずれか1つを含むことを特徴としている。
【0017】
請求項6は、請求項2のユーザビリティに対する評価装置において、
前記評価対象コンテンツにおける複数の画面に関して、ユーザビリティへの影響度の高さを記録した画面単位影響度、及び、各画面の中の構成要素に関してユーザビリティへの影響度の高さを記録した画面・構成要素単位影響度を記録した影響度記録部と、
前記各影響度に基づき前記主観評価推定値算出部での線形結合の係数を設定する係数設定部と、を備えることを特徴としている。
【0018】
請求項7は、請求項6のユーザビリティに対する評価装置において、
前記影響度記録部の画面単位影響度算出は、
予め定義された主要タスク操作手順、及び、重要視聴内容を参照し、
評価対象コンテンツを構成する各画面が、主要タスク操作手順で経由するか、又は/及び、画面内の表示内容が重要視聴内容で定義された単語群に含まれるかを判断することで影響度の有無を判定することを特徴としている。
【0019】
請求項8は、請求項6のユーザビリティに対する評価装置において、
前記影響度記録部の画面単位影響度算出は、
予め定義された主要タスク操作手順、及び、重要視聴内容を参照し、
評価対象コンテンツを構成する各画面が、主要タスク操作手順で経由する一方、
前記主要タスク操作手順は、
評価対象コンテンツを利用する目的を達成するためのタスクに対して、それに伴い遷移する画面リストであり、
前記重要視聴内容は、
画面遷移のために割り当てられやすい単語群、利用者が画面内で注目・重要視する単語群であることを特徴としている。
【0020】
請求項9は、請求項6のユーザビリティに対する評価装置において、
影響度記録部の画面・構成要素単位影響度算出は、
画面の構成要素が、主要タスク操作手順で利用者が操作する対象かどうか、又は/及び、構成要素に対応する表示内容が、重要視聴内容で定義された単語群に含まれるかどうかを判断することで影響度の有無を判定することを特徴としている。
【0021】
請求項10は、請求項6〜9のいずれかに記載のユーザビリティに対する評価装置において、
前記係数設定部は、
評価対象コンテンツの画面ごとの画面単位影響度wi(画面数v、i=1…v)と、各画面の構成要素ごとの画面・構成要素単位影響度mj(構成要素数h、j=1…h)とから、w1+w2+…+wv=1、m1+m2+…+mh=1となるよう正規化して求める
ことを特徴としている。
【0022】
請求項11は、請求項1〜10のいずれかに記載のユーザビリティに対する評価装置において、
前記主観評価推定値算出部は、
構成要素xkに対する要素評価値がFk(xk)(k=1…h)として求められる時、画面ごとの評価値を、(評価値)=[ma mb mc md me mf mg mh]*[Fa(xa) Fb(xb) Fc(xc) Fd(xc) Fe(xe) Ff(xf) Fg(xg) Fh(xh)]
Tとして求め、評価対象コンテンツに対する評価値を、(全体評価値)=[w1 w2 … wv]*[(画面1の評価値)(画面2の評価値)…(画面vの評価値)]
Tとして求めることを特徴としている。
【0023】
請求項12は、請求項1〜11のいずれかに記載のユーザビリティに対する評価装置において、
前記主観評価推定値算出部は、
評価対象コンテンツの画面ごとの評価値G、評価対象コンテンツの全体評価値Hに対して、さらに他の関数を適用して変換することを特徴としている。
【0024】
請求項13は、ディスプレイ搭載情報表示端末に表示されるコンテンツのユーザビリティに対する評価方法であって、次の各手順を含むことを特徴としている。
コンテンツの構成要素の特徴パラメータに対して、学習用コンテンツを用いた特徴パラメータごとの主観評価実験によって得られた主観評価値から、特徴パラメータと要素評価値の関係性を定義する特徴パラメータ・要素評価値対応関数を設定する手順。
評価対象コンテンツに対して、コンテンツの構成要素ごとに特徴パラメータを抽出する手順。
前記抽出された特徴パラメータと前記特徴パラメータ・要素評価値対応関数に基づいて、前記評価対象コンテンツの構成要素の特徴パラメータごとの要素評価値についての重み係数を考慮した線形結合によって評価対象コンテンツ全体の主観評価値を算出する手順。
【0025】
請求項14は、ユーザビリティの評価プログラムであって、請求項13のユーザビリティに対する評価方法における各手順をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ユーザビリティの評価を行うに際して、予めコンテンツの構成要素ごとの特徴パラメータに対して要素評価値が求められる(特徴パラメータと要素評価値の関係性を定義する)特徴パラメータ・要素評価値対応関数を設定し、関係性に基づいた主観的評価を自動的に取得することで、ユーザビリティに対する客観的な評価を行うことができる。
また、ユーザビリティの評価を行う場合に、アプリケーションの構成要素に対する利用者の重要性を考慮することで、信頼性の高いユーザビリティの評価を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のユーザビリティ評価装置の実施形態の一例について、
図1を参照しながら説明する。
図1はユーザビリティ評価装置のシステム構成図である。
【0029】
本発明のユーザビリティに対する評価装置は、事前に様々なアプリケーションを用いてモデルを構築し、そのモデルに基づいて評価対象のアプリケーションの評価を行う。アプリケーションは、フォントサイズやボタンの数、状態遷移数、画面階層の深さなど、画面構成・状態遷移、階層構造に関する様々な構成要素を有している。
【0030】
ユーザビリティに対する評価装置は、一般的なオペレーティングシステム(OS)を含む基本プログラムや各種の基本デバイスが記憶されたROMと、各種のプログラムやデータが記憶されるハードディスクドライブ装置(HDD)と、CR−ROMやDVD等の記憶媒体からプログラムやデータを読み出すメディアドライブ装置と、プログラムを実行するCPUと、このCPUにワークエリアを提供するRAMと、外部装置と通信するパラレル/シリアルIFと、コンテンツ情報を入力するデータ入力部や画像入力部を主要な構成としたコンピュータ内に構築され、記録媒体等を介して評価プログラムがHDDに格納されることで、評価対象のアプリケーションのユーザビリティに対する評価を行うように構成されている。
例えば、スマートフォン等の携帯端末のアプリケーションのユーザビリティに対する評価する場合、評価プログラムや画像編集アプリが格納されたPC上に構築された評価装置のデータ入力部や画像入力部にスマートフォンを接続することで、スマートフォン側の評価対象コンテンツの画像情報がPC側へ入力される。
【0031】
以下、ディスプレイ搭載情報表示端末に表示されるコンテンツのユーザビリティに対する評価装置の構成及びコンテンツの評価手順の詳細について、図面を参照しながら説明する。
ユーザビリティに対する評価装置は、
図1に示すように、コンテンツの構成要素の特徴パラメータを抽出する特徴パラメータ抽出部1aと、コンテンツの構成要素の特徴パラメータを変数として学習用コンテンツにより予め評価値が設定される評価値対応関数が記録された特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部2と、評価対象コンテンツの特徴パラメータに対して特徴パラメータごとの要素評価値を得る特徴パラメータ・要素評価値対応関数適用部3aと、要素評価値・主観評価値対応関数から評価対象コンテンツの主観評価値を推定する主観評価推定値算出部4を備えて構成されている。
【0032】
また、主観評価推定値算出部4で評価推定値を算出するに際して必要となる係数を設定するための要素評価値・主観評価値対応関数係数設定部6を備えている。
要素評価値・主観評価値対応関数係数設定部6は、多数の学習用コンテンツに対して、特徴パラメータ抽出部1bで構成要素の特徴パラメータを抽出し、特徴パラメータ・要素評価値対応関数適用部3bで前記特徴パラメータに対して特徴パラメータごとに得られた要素評価値と、多数の学習用コンテンツに対する多数の被験者への主観評価実験結果を元に、学習用コンテンツに対する主観評価値取得部7で得られた主観評価値と、から要素評価値・主観評価値対応関数の係数が設定される。具体的な設定の仕方については後述する。
なお、特徴パラメータ抽出部1b及び評価値対応関数適用部3bは、特徴パラメータ抽出部1a及び評価値対応関数適用部3aと同じ処理を行うものである。
【0033】
特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部2は、多数の被験者への主観評価実験結果を元に特徴パラメータごとの主観評価値を取得する特徴パラメータ主観評価値取得部5で得られた主観評価値から特徴パラメータ・要素評価値対応関数が設定される。
すなわち、特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部2は、コンテンツの構成要素ごとに構成要素の特徴パラメータに対して要素評価値(ユーザビリティ評価値)が求められる特徴パラメータ・要素評価値対応関数が記録されている。特徴パラメータ・要素評価値対応関数(関係性情報)は、予めコンテンツの構成要素(解析対象とする構成要素)と評価値とを対応させる学習ステップによるモデルで設定される。
したがって、特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部2では、特徴パラメータそれぞれにおいて、値を変化させたときの要素評価値の推移を示す関数が定義され、この関数は、多数の被験者から特徴パラメータごとにユーザビリティに関する主観評価値を得る実験を通じて求められる。
具体的な手順としては、
図3に示すように、多数の被験者から特徴パラメータごとに主観評価値を得る実験結果を参照し(ステップ31)、特徴パラメータごとに特徴パラメータ・要素評価値対応関数を定義する(ステップ32)。
同じ構成要素でも、異なる特徴パラメータを持つアプリケーションを多数、被験者に提示することで、構成要素ごとに特徴パラメータの変化に対するユーザビリティの良し悪しを示す関係性情報を得ることができる。これらの特徴パラメータ・要素評価値対応関数は、特徴パラメータの値を変化させたアプリを提示した上で、採点してもらった結果(主観評価値)を元に定義される。
【0034】
実験方法の一例としては、同じ特徴パラメータでも、さまざまな値を持つアプリを多数、被験者に試用させた上で、ユーザビリティに関する良し悪しを5段階で判定する。そして、特徴パラメータ・要素評価値対応関数は、特徴パラメータの値を変化させたアプリを提示した上で、採点してもらった結果(主観評価値)を元に定義する。特徴パラメータ・要素評価値対応関数を定義するに際しては、正規分布関数、一次関数、高次多項式関数、階段関数、ロジスティック関数などの関数形に近似しておく。この近似は、最小二乗法によるモデルパラメータ推定方法を用いて行う。その結果を統計的に分析し、特徴パラメータを変数xとしたとき、対象の構成要素に対する評価値「要素評価値」を得るための関数F(x)を得る。
【0035】
特徴パラメータ・要素評価値対応関数適用部3aでは、評価対象コンテンツの特徴パラメータごとの値と、その特徴パラメータに対する特徴パラメータ・要素評価値対応関数に基づき、特徴パラメータごとの要素評価値が算出される。
【0036】
学習用コンテンツ及び評価対象コンテンツの構成要素(解析対象とする構成要素)とは、コンテンツの画面構成や操作に関係する種々の要因であり、一例として以下(a)〜(h)に列挙する。ただし、それ以外の要因であっても良い。
(a)フォントサイズ
文字の大きさに関する特徴パラメータであり、複数の値を有する。
(b)画面内の文字・背景カラーコントラスト
文字と背景とのカラーコントラストの差にする段階的な特徴パラメータであり、複数の値を有する。
(c)画面内のカラーパターン
一般的に好まれるカラーが使用されているかどうかを判断する特徴パラメータであり、一般的に好まれるカラーが使用されている場合は「1」、そうでない場合は「0」で判断される。
(d)配色の他画面との違い
画面間におけるカラーの相違についての特徴パラメータであり、画面間の配色が合っている場合は「1」、そうでない場合は「0」で判断される。
(e)重要性の高いボタン配置の他画面との違い
画面間におけるボタン配置に関する特徴パラメータであり、画面間の位置が合っている場合は「1」、そうでない場合は「0」で判断される。
(f)操作ステップ数
操作ステップの数に関する段階的な特徴パラメータであり、複数の値を有する。
(g)ハードウェアキーの機能有無
操作するキーに関する特徴パラメータであり、操作する上で必要な場合は「1」、そうでない場合は「0」で判断される。
(h)起動時間・画面遷移時間
起動時間等に関する段階的な特徴パラメータであり、複数の値を有する。
【0037】
特徴パラメータ抽出部1aは、入力された評価対象コンテンツに対して、どの構成要素が使われているかを解析し、その構成要素に対応する特徴パラメータの値を抽出するものである。
各構成要素に対応する特徴パラメータの抽出は、例えば下記に示すような手段で行われる。
(ア)評価者が、すべての構成要素に対して手動で特徴パラメータを計測(手動入力)する。
(イ)コンテンツが表示されたスクリーンショット画像を取得し、コンテンツを操作しているときの様子を映像に撮影した上で、既存の画像解析技術や映像解析技術を用い、自動的に特徴パラメータを計測する。
(イ)の手段によりデータ入力部や画像入力部から特徴パラメータ抽出が行われる場合、特徴パラメータ抽出部1aは、評価対象コンテンツのアプリケーションに使用されている構成要素ごとの特徴パラメータを判定し、特徴パラメータに関するデータを計測する機能を備え、特徴パラメータの存在の有無と、特徴パラメータの種類の判定を自動で行う画像解析処理部を備えて構成されている。
特徴パラメータは、例えば表1のように求められる。
【0039】
特徴パラメータの評価は、例えば数種類の段階的な評価が考えられるが、「有」「無」の2種類の評価であってもよい。例えば、構成要素が「キーの有無」のような場合は、「0」「1」の評価になる。
【0040】
主観評価推定値算出部4は、特徴パラメータ抽出部1aにて抽出された特徴パラメータと、特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部2に記録された関係性情報に基づき算出された評価対象コンテンツの構成要素ごとの要素評価値と、重み係数を元に、線形結合によって評価対象コンテンツ全体の主観評価値を算出するものである。
すなわち、アプリケーションの評価ステップでは、評価対象アプリケーションの構成要素に対する特徴パラメータと、前記関係性情報に基づき、ユーザビリティに対する評価値を推定する。
【0041】
特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部2に記録された関係性情報は、上述したように、構成要素の特徴パラメータを変数xとしたとき、構成要素の要素評価値を得る関数F(x)で求められる。したがって、評価対象コンテンツにおいて構成要素kの特徴パラメータがx
kであったとき、そのユーザビリティ評価値は、F
k(x
k)として求めることができる。
例えば、表1で記載した特徴パラメータごとの関数が表2のように定義されているとする。すなわち、特徴パラメータxkに対する要素評価値がFk(xk)(k=1…h)として算出される場合、評価対象アプリケーションの評価値について、(評価値)=[ma mb mc md me mf mg mh]*[Fa(xa) Fb(xb) Fc(xc) Fd(xc) Fe(xe) Ff(xf) Fg(xg) Fh(xh)]
Tとして求める。
【0043】
要素評価値・主観評価値対応関数係数設定部6における係数設定では、多数の学習用コンテンツにおいて特徴パラメータから自動算出される要素評価値と多数の被験者から取得した主観評価値を用いて、推定誤差を最小化するように、同関数の係数を設定する。
多数の学習用コンテンツから、特徴パラメータ抽出部1bを通じて、特徴パラメータの値を抽出する。次に、特徴パラメータ・要素評価値対応関数にて、抽出した特徴パラメータから、要素評価値を算出する。さらに、定義された要素評価値・主観評価値対応関数に基づいて、評価値Gを求める。
一方、学習用コンテンツに対する主観評価値取得部7では、多数の学習用コンテンツに対して、多数の被験者によって行われた主観評価実験結果から、学習用コンテンツに対する主観評価値Hを得る。
上記に基づいて得られた多数の(G, H)の組に対して、統計的に誤差を最小化するように係数(ma, …, mh)を設定する。例えば、最小二乗誤差法を用いる。
【0044】
また、主観評価推定値算出部4は、画面ごとの評価値である評価値Gと、評価対象コンテンツに対する全体評価値Hに対して、さらに他の関数を適用して変換するように構成しても良い。
【0045】
次に、
図2のフローチャート図を参照しながら、評価対象コンテンツの評価を行う場合(評価ステップ)の手順について説明する。
(1)構成要素ごとの特徴パラメータ抽出
入力された評価対象コンテンツに対して(ステップ21)、どの構成要素が使われているかを解析し、その構成要素に対応する特徴パラメータを抽出する(ステップ22)。
【0046】
(2)構成要素ごとの関係性参照
各構成要素それぞれの特徴パラメータに対して要素評価値が求まる関数(関係性情報)が特徴パラメータ・要素評価値対応関数設定部1aに予め用意されているので、この関数を利用して(ステップ23)、抽出された構成要素ごとの特徴パラメータを関数に代入することで、評価対象コンテンツの構成要素ごとの要素評価値を算出する(ステップ24)。
【0047】
要素評価値・主観評価値対応関数の係数を参照する(ステップ25)。
学習ステップにおける係数設定は、
図4のフローチャートに手順で設定される。
先ず、評価装置において既に係数が設定されている場合は、係数の初期化が行われる(ステップ41)。
次に、特徴パラメータ・要素評価値対応関数適用部3aにおいて、評価対象コンテンツで使用している特徴パラメータを抽出する(ステップ42)。
要素評価値と主観評価値の対応関数の関数形を定義する(ステップ43)。
定義した要素評価値・主観評価値対応関数の係数を、多数の学習用GUIから自動算出された要素評価値からの推定値と同GUIについて多数の被験者から取得した主観評価値との推定誤差を最小化するように設定する(ステップ44)。
そして、ステップ44に基づいて係数を設定する(ステップ45)。
【0048】
(3)主観評価推定値の算出
図2のフローチャートに戻り、評価対象コンテンツの構成要素ごとの特徴パラメータと、構成要素ごとの関係性(関数)に基づき、評価対象コンテンツの主観評価推定値を算出する(ステップ26)。
ユーザビリティ評価値は、例えば、下記式によって算出する。
(評価値)=[ma mb mc md me mf mg mh]*[Fa(xa) Fb(xb) Fc(xc) Fd(xc) Fe(xe) Ff(xf) Fg(xg) Fh(xh)]
T
ma…mhは、各構成要素に対応する係数である。
ただし、ma+mb+mc+md+mf+me+mg+mh=1とする。
【0049】
評価値の算出方法は、上記の式に限らず、
(評価値)=(F(xa)+ma)*(F(xb)+mb)*…*(F(xh)+mh)
【0050】
上述の式で算出された評価値は、主観評価推定値算出部4により主観評価推定値(ユーザビリティ評価値)として出力される(ステップ27)。
【0051】
図5は、本発明のユーザビリティ評価装置の実施形態の他の例について示したシステム構成図であり、
図1と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
図5の例では、
図1の要素評価値・主観評価値対応関数係数設定部6が予め行われる学習ステップにより係数が設定されるものであるのに対して、評価対象コンテンツの入力から得られた影響度を考慮して主観評価推定値算出部4における重みを算出するものである。以下、
図1のシステムと相違する構成について説明する。
【0052】
ユーザビリティに対する評価装置においては、評価対象コンテンツが複数の画面で構成され、また、各画面は複数の構成要素で構成されるため、画面ごとのユーザビリティに関する影響度(画面単位影響度)及び構成要素ごとの影響度(画面・構成要素単位影響度)を求めることで、主観評価推定値算出部3で算出する評価値をこれらの影響度に基づいて補正される。
すなわち、評価対象コンテンツが入力され影響度の有無の判定を行う影響度判定部10と、評価対象コンテンツが入力され予め定義されたタスクや操作手順等の情報を記録する情報記録部13を有している。
【0053】
影響度判定部10は、画面単位影響度及び画面・構成要素単位影響度を記録する影響度記録部11と、各影響度の有無の判定に基づき主観評価推定値算出部4での線形結合の係数を設定する係数設定部12を備えている。
情報記録部13は、評価対象コンテンツを利用者が利用する上で行う主要なタスクを定義する主要タスク定義記録部14と、その操作手順を記録する主要タスク操作手順記録部15と、利用者にとって重要性の高い内容や単語を記録した重要視聴内容記録部16を備えている。影響度判定部10において、評価対象コンテンツ内容とこれらの情報が比較されることで影響度の有無の判定が行われる。
【0054】
影響度記録部11は、評価対象コンテンツにおける複数の画面に関して、ユーザビリティへの影響度の高さを記録した画面単位影響度、及び、各画面の中の構成要素に関してユーザビリティへの影響度の高さを記録した画面・構成要素単位影響度を記録している。
【0055】
影響度記録部11の画面単位影響度の算出に際しては、予め定義された主要タスク操作手順、及び、重要視聴内容を参照し、評価対象コンテンツを構成する各画面が、主要タスク操作手順で経由するか、又は、画面内の表示内容が重要視聴内容で定義された単語群に含まれるかを判断することで影響度の有無の判定が行われる。
【0056】
主要タスク操作手順とは、評価対象コンテンツを利用する目的を達成するためのタスクに対して、それに伴い遷移する画面リストである。
また、重要視聴内容とは、画面遷移のために割り当てられやすい単語群、利用者が画面内で注目・重要視する単語群である。
【0057】
影響度記録部11の画面・構成要素単位影響度の算出に際しては、画面の構成要素が、主要タスク操作手順で利用者が操作する対象かどうか、又は、構成要素に対応する表示内容が、重要視聴内容で定義された単語群に含まれるかを判断することで影響度の有無の判定が行われる。
【0058】
係数設定部12は、各影響度に基づき主観評価推定値算出部3での線形結合の係数を設定するものである。
例えば、係数設定部5は、評価対象コンテンツの画面ごとの画面単位影響度wi(画面数v、i=1…v)と、各画面の構成要素ごとの画面・構成要素単位影響度mj(構成要素数h、j=1…h)とから、w1+w2+…+wv=1、m1+m2+…+mh=1となるよう正規化して求める。
【0059】
次に、ユーザビリティ評価装置による評価対象アプリケーションの評価において、評価の補正(構成要素に対する係数の設定)を行う機能(影響度判定部10及び情報記録部13を備えた構成)を有する場合(評価ステップ)の評価手順について、
図6のフローチャート図を参照して説明する。
図6におけるステップ31〜ステップ37は、
図2のステップ21〜ステップ27と同じ手順であり、ステップ41〜ステップ45の手順により、ステップ34におけるユーザビリティ評価値の算出に際して使用される構成要素に対する係数(ma…mh)が設定される。
【0060】
(4)画面単位影響度の算出
影響度記録部11に記録される画面単位影響度の算出について説明する。
評価対象コンテンツは複数の画面で構成されるので、入力された評価対象コンテンツの画面ごとのユーザビリティに関する影響度(画面単位影響度)を求める。
先ず、評価対象コンテンツを利用者が利用する上で行う主要なタスクを想定し、主要タスク定義記録部14に記憶する。その主要操作タスクを行うための操作手順を主要タスク操作手順と定義し、主要タスク操作手順記録部15に記憶する。
【0061】
また、評価対象コンテンツにおいて、主要タスク操作手順の通りに操作したときに、利用者にとって重要性の高い内容や単語をまとめた情報を重要視聴内容と定義する。
重要視聴内容は、例えば「ホームに戻る」「戻る」「前へ」「次へ」「OK」「キャンセル」「終了」などの画面/情報遷移のためにボタンなどに割り当てられやすい単語、又は、「個人情報の取り扱い」「プライバシーポリシー」「問い合わせ」「利用規約」「購入」「カート」「価格」「検索」など、コンテンツのカテゴリに依存しつつ利用者が注目又は重要視する情報に関する内容や単語であり、重要視聴内容記録部16に記録する。
【0062】
主要タスク操作手順記録部15の記録を参照することで(ステップ41)、評価対象コンテンツを構成する各画面が主要タスク操作手順で経由するか、又は、重要視聴内容記録部16の記録を参照することで(ステップ42)、画面内の表示内容が重要視聴内容で定義された単語群に含まれるかを判定する。
画面が主要タスク操作手順を経由又は定義された単語を含む場合、該当する画面の画面単位影響度を「1」とし、該当しない画面の画面単位影響度を「0」として影響度を算出して記録する(ステップ43及びステップ44)。画面が主要タスク操作手順を経由及び定義された単語を含む場合は、該当する画面の画面単位影響度を「1」とする。
【0063】
(5)画面・構成要素単位影響度の算出
影響度記録部11に記録される画面・構成要素単位影響度の算出について説明する。
評価対象コンテンツの各画面は、複数の構成要素で構成される。構成要素ごとに、ユーザビリティに大きく影響する要素と、そうでない要素に分かれるので、構成要素ごとの影響度(画面・構成要素単位影響度)を求める。
【0064】
画面単位影響度の場合と同様に、主要タスク操作手順記録部15の記録を参照することで(ステップ41)、各構成要素が主要タスク操作手順でユーザが操作する対象かどうか、又は、重要視聴内容記録部16の記録を参照することで(ステップ42)、構成要素に対応する表示内容が重要視聴内容で定義された単語群に含まれるかを判定する。
例えば、重要視聴内容記録部16に「次へ」の単語が記録されている場合に、構成要素がボタンであり、ボタンのラベルが「次へ」と表記されている時、「ユーザが操作」の対象となる。
【0065】
構成要素が主要タスク操作手順の操作対象である又は定義された単語を含む場合、該当する画面の画面・構成要素単位影響度を「1」とし、該当しない画面の画面単位影響度を「0」として影響度を算出して記録する(ステップ43及びステップ44)。構成要素が主要タスク操作手順の操作対象である、及び、定義された単語を含む場合は、該当する画面の画面・構成要素単位影響度を「1」とする。
【0066】
(6)影響度に基づく係数の算出
ステップ43及びステップ44で算出された各影響度に基づく重み係数が設定される(ステップ45)。係数の初期値をma…mhとする。ただし、ma+mb+mc+md+mf+me+mg+mh=1である。
先ず、画面単位影響度に基づき、上述の(3)で定義したwi(i=1…v)値を補正する。
例えば、評価対象コンテンツを構成する画面数がv 存在する。このとき、上述の(4)から、画面単位影響度は、表3のように求められる。なお、Ei(i=1…v)は、「1」又は「0」をとる。
【0068】
更に、E1+E2+…+Ev=1となるように、正規化した上で、Ei値を上述の(3)で定義したwi値に置き換える。
次に、画面・構成要素単位影響度に基づき、上述の(3)で定義したmj(j=a…h)値を画面ごとに補正する。
例えば、ある画面iにおいて、画面・構成要素単位影響度は、表4のように求められる。なお、Dj(j=a…h)は、「1」又は「0」をとる。
【0070】
更に、Da+Db+…+Dh=1となるように、正規化した上で、Dj値を上述の(3)で定義したmj値に置き換える。
【0071】
この係数を使用することで、補正された主観評価推定値が算出され(ステップ35)、ユーザビリティ評価値として出力される(ステップ36)。