(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原核生物の細胞培養物から再び折り畳まれた組み換えタンパク質を回収するための方法であって、 ここで、組み換えタンパク質が血管内皮細胞増殖因子(VEGF)であり、
(a) 組み換えタンパク質を原核生物の細胞培養物から単離する工程、
(b)9より大きいpHであり、 (i)終濃度で1M 尿素、300mM アルギニン、10mM CHES、5mM EDTAを含むか、又は(ii)終濃度で1M 尿素、300mM アルギニン、10mM TRIS、5mM EDTAを含む第一緩衝溶液に該タンパク質を可溶化する工程、
(c) pHが9より大きく11以下であり、(i)終濃度で1M 尿素、15mM システイン、2mM DTT、100mM アルギニン、10mM CHES、5mM EDTAを含むか、又は(ii)終濃度で1M 尿素、15mM システイン、0.5〜2mM DTT、100mM アルギニン、10mM TRIS、5mM EDTAを含む第二緩衝溶液中で、kLa=0.001〜0.1分−1で、空気又は酸素を添加して、該可溶化タンパク質を再折り畳みさせる工程、そして、
(d) 該再び折り畳まれた組み換えタンパク質を回収する工程
を含む方法。
前記回収工程(d)が、組み換えタンパク質を有する第二緩衝溶液を浄化し、前記再び折り畳まれた組み換えタンパク質を混合様式のクロマトグラフィ支持体、陽イオンクロマトグラフィ支持体、および第一疎水性クロマトグラフィ支持体に順次接触させ、そして選択的に各支持体から再び折り畳まれた組み換えタンパク質を溶出させることを含む、請求項1に記載の方法。
浄化工程が、1%の終濃度の界面活性剤を添加し、pHをおよそ8.5〜9.5に調整し、25〜30℃で1〜10時間溶液をインキュベートし、溶液を遠心分離し、そして、遠心分離工程から回収した液体を濾過することを含む、請求項10に記載の方法。
さらに、前記の再び折り畳まれた組み換えタンパク質を第二疎水性クロマトグラフィー支持体又はイオン交換支持体に接触させ、そして選択的に支持体から再び折り畳まれた組み換えタンパク質を溶出させることを含む、請求項10に記載の方法。
前記第一の疎水性相互作用クロマトグラフィー支持体が、ブチル−、プロピル−、オクチル−、フェニル−、およびアリール−アガロース樹脂からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
第二の疎水性相互作用クロマトグラフィー支持体が、ブチル−、プロピル−、オクチル−、フェニル−、およびアリール−アガロース樹脂からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
浄化工程が、1%の終濃度の界面活性剤を添加し、pHをおよそ8.5〜9.5に調整し、25〜30℃で1〜10時間溶液をインキュベートし、溶液を遠心分離し、そして、遠心分離工程から回収した液体を濾過することを含む、請求項16に記載の方法。
さらに、前記の再び折り畳まれた組み換えタンパク質を第二疎水性クロマトグラフィー支持体又はイオン交換支持体に接触させ、そして選択的に支持体から再び折り畳まれた組み換えタンパク質を溶出させることを含む、請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
定義
本明細書中で用いる「ポリペプチド」は、一般におよそ10以上のアミノ酸を有する、任意の細胞供与源由来のペプチドおよびタンパク質を指す。「異種性の」ポリペプチドは、利用した宿主細胞と関係のないポリペプチド、例えば大腸菌によって生産されるヒトのタンパク質である。異種性のポリペプチドは原核生物性でも真核生物性でもよいが、好ましくは真核生物、より好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトである。本発明の特定の実施態様では、組み換えて産生される(例えば組み換えポリペプチド又は組み換えタンパク質)。
哺乳動物ポリペプチドの例には、例えば増殖因子などの分子;ヘパリン-結合増殖因子;血管内皮増殖因子(VEGF)、例えばVEGF-A(アイソフォーム)、VEGF-B、VEGF-CおよびVEGF-D;VEGFに対するレセプターおよび抗体、例えばrhuFab V2およびベバシズマブ、ラニビズマブ;VEGFレセプターに対する抗体;レンニン;ヒト成長ホルモン(hGH)を含む成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;パラトルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;トロンボポイエチン;FSH;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;成長ホルモンレセプター;成長ホルモン放出タンパク質(GHRP);LIV-1(EP1263780);TRAIL;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子およびフォンウィルブランズ因子;第VIII因子;第VIII因子Bドメイン;抗組織因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナチュリティク因子(atrial naturietic factor);肺界面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼ又はヒト尿素又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)及びこれらの変異体;ボンベシン;トロンビン;造血性増殖因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;ErbB2ドメイン(一又は複数)に対する抗体、エンケファリナーゼ;ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管-阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB-鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えばβ‐ラクタマーゼ;DNA分解酵素;インヒビン;アクチビン;ホルモン類又は増殖因子のためのレセプター;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)、又はNGFなどの神経成長因子;カージオトロフィン-1(CT-1)などのカージオトロフィン(心肥大因子);血小板由来増殖因子(PDGF)(A、B、C又はD);aFGFおよびbFGFなどの線維芽細胞成長因子;上皮細胞増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例としてTGF-1、TGF-2、TGF-3、TGF-4又はTGF-5を含む、TGF-αおよびTGF-β;インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-IおよびIGF-II)及びIGFBP-1−IGFBP-6などのそれらのレセプター;デス(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えばCD-3、CD-4、CD-8およびCD-19;エリスロポイエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロンα、-β、及び-γなどのインターフェロン;血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)又はウシ血清アルブミン(BSA);コロニー刺激因子(CSF)、例えばM-CSF、GM-CSFおよびG-CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL-10からIL-1;抗HER-2抗体;Apo2リガンド;スーパーオキシドデスムターゼ;抗CD20;ヘレグリン、抗IgE、抗CD11a、抗CD18;腫瘍壊死因子(TNF)及びそれに対する抗体、TNFレセプター及び関連の抗体、TNF-レセプター-IgG、TNFレセプター関連因子(TRAF)およびそのインヒビター、T細胞レセプター;表面膜タンパク質;腐食促進因子;抗TGF-βなどの抗TGF;抗アクチビン;抗インヒビン;抗Fas抗体;Apo-2リガンドインヒビター;Apo-2レセプター;Apo-3;アポトーシス因子;Ced-4;DcR3;デスレセプターおよびアゴニスト抗体(DR4、DR5);リンホトキシン(LT);プロラクチン;プロラクチンレセプタ;SOBタンパク質;WISP(wntが誘導する分泌タンパク質);抗NGF;DNA分解酵素;肝炎抗原;単純ヘルペス抗原;レプチン;Tollタンパク質、TIEリガンド、CD40および抗CD40、イムノアドヘシン、スブチリシン、肝細胞増殖因子(HGF)、トロンボポイエチン(TPO);前立腺(prostrate)特異的癌抗原(PSCA);例えば一部のエイズエンベロープなどのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;抗体;及び、上に列挙したポリペプチドの何れかの断片が含まれる。本明細書中の「抗体」なる用語は広義の意味で用いられ、具体的にはそれらが所望の生物活性を表す限り、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および抗体断片を。本発明の特定の実施態様では、組み換えポリペプチドは増殖因子である。一実施態様では、組み換えポリペプチドは哺乳動物のポリペプチドVEGFである。他の実施態様では、組み換えポリペプチドはヒトのVEGF(例えばVEGF
165)である。一実施態様では、組み換えポリペプチドはアンジオスタチンではない。一実施態様では、組み換えポリペプチドはIGF-1ではない。
【0012】
本明細書中で用いられるように「血管内皮細胞増殖因子」又は「VEGF」は、Castor, C.W.,等, (1991) Methods in Enzymol. 198:391-405において開示されるアミノ酸配列を有するウシ下垂体濾胞性細胞から本来得られる哺乳類の増殖因子、並びに限定するものではないがHouck等, (1991) Mol. Endocrin. 5:1806-1814において報告されるヒトVEGFアミノ酸配列を含む、対応する天然のVEGFの定性的生物学的活性を有するこの機能的誘導体を指す。また、Leung等 (1989) Science, 246:1306、及び、Robinson & Stringer, (2001) Journal of Cell Science, 144(5): 853-865、米国特許第5332671号を参照。これはVEGF-Aとも称される。ファミリーの他のメンバーは、例えばVEGF-B、VEGF-C又はVEGF-Dのように、VEGFの後に一文字を付けて表す。VEGF又はVEGF-Aの主な形態は、7つの分子内ジスルフィド結合と2つの分子間ジスルフィド結合を形成する16のシステイン残基を有する165アミノ酸ホモ二量体である。オルタナティブスプライシングは、121、145、165、189および206のアミノ酸からなる複数のヒトVEGFポリペプチドの形成に関係しているが、VEGF
121変異体は、他の変異体のヘパリン結合ドメインを欠いている。VEGFのすべてのアイソフォームは共通のアミノ末端ドメインを共有するが、分子のカルボキシル末端部分の長さが異なる。好ましいVEGFの活性型であるVEGF
165は、各単量体のアミノ酸残基Cys26-Cys68;Cys57-Cys104;Cys61-Cys102;Cys117-Cys135;Cys120-Cys137;Cys139-Cys;158;Cys146-Cys160の間にジスルフィド結合を有する。
図10を参照。また、例えば、Keck等, (1997) Archives of Biochemistry and Biophysics 344(1): 103-113を参照。VEGF
165分子は、アミノ末端レセプター-結合ドメイン(アミノ酸1−110ジスルフィド結合ホモ二量体)とカルボキシル末端ヘパリン-結合ドメイン(残基111−165)の2つのドメインから成る。例えば、Keyt等, (1996) J. Biol. Chem., 271(13): 7788-7795を参照。本発明のある実施態様では、単離して、精製されるVEGF
165は、残基75(Asn)でグリコシル化されていない。例えば、Yang等, (1998) Journal of Pharm. & Experimental Therapeutics, 284:103-110を参照。本発明のある実施態様では、単離して、精製されるVEGF165は、残基Asn10で実質的に脱アミド化されていない。本発明のある実施態様では、単離して、精製されるVEGF
165は、脱アミド化された(残基Asn10で)タンパク質と脱アミド化されていないタンパク質の混合であり、典型的にはほとんどのタンパク質は脱アミド化されていない。VEGF
165はホモ二量体であるので、脱アミド化は一方又は両方のポリペプチド鎖で起こりうる。
【0013】
本明細書中で用いる「ヘパリン結合タンパク質」なる用語は、ヘパリンを結合することができるポリペプチドを指す(本明細書において定められるように)。定義には、天然及び組み換えて生産したヘパリン結合タンパク質び成熟、プレ、プレ-プロ、及びプロ型が含まれる。ヘパリン結合タンパク質の典型的な例は、限定するものではないが、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)(別名scatter factor、SF)、及び神経成長因子(NGF)、IL-8などを含む「ヘパリン結合増殖因子」である。
「ヘパリン」(ヘパリンの酸とも称される)は非常に硫酸化した、直鎖の陰イオン性ムコ多糖の不均一な基であり、グリコサミノグリカンと称される。他も存在しうるが、ヘパリンの主要な糖質は、α-L-イズロン酸2-硫酸塩、2-デオキシ-2-スルファミノ-α-グルコース6-硫酸塩、β-D-グルクロン酸、2-アセタミド-2-デオキシ-α-D-グルコースおよびL-イズロン酸である。これら及び場合によって他の糖質は様々な大きさのポリマーを形成するグリコシド結合によって連結される。その共有結合した硫酸塩とカルボン酸基の存在のために、ヘパリンは非常に酸性である。起源及び測定法によって、ヘパリンの分子量はおよそ3000からおよそ20000ダルトンに変化する。天然のヘパリンは、いくつかの哺乳類種の様々な組織、特に肝臓および肺や肥満細胞の構成要素である。ヘパリンおよびヘパリン塩類(ヘパリンナトリウム)は市販されており、主に様々な臨床状態において抗凝血物質として用いられる。
【0014】
本明細書中で用いる「適切に折り畳まれた」又は「生物学的に活性な」VEGF又は他の組み換えタンパク質などは、生物学的に活性な立体構造を有する分子を指す。当業者は、誤って折り畳まれた中間生成物及びジスルフィドスクランブル中間生成物は生物学的活性を有しうると理解するであろう。この場合、適切に折り畳まれた又は生物学的に活性なVEGF又は組み換えタンパク質は、VEGF(上記した)又は他の組み換えタンパク質の天然の折り畳みパターンに対応する。例えば、適切に折り畳まれたVEGFは、二量体分子の2つの分子間ジスルフィド結合に加え、上記のジスルフィド対を有するが、他の中間生成物は細菌細胞培養物によって産生されうる。適切に折り畳まれたVEGFでは、各単量体の同じ残基(Cys51とCys60)の間で2つの分子間ジスルフィド結合が生じる。例えば国際公開第98/16551号を参照。VEGFの生物学的活性には、限定するものではないが、例えば、血管透過性の促進、血管内皮細胞の増殖促進、VEGFレセプターへの結合、VEGFレセプターによる結合とシグナル伝達(例えば、Keyt等, (1996) Journal of Biological Chemistry, 271(10): 5638-5646を参照)、血管新生の誘導などが含まれる。
【0015】
「精製された」又は「純粋な組み換えタンパク質」なる用語は、組み換え産生及び特に原核生物又は細菌の細胞培養物に見られるような、通常付随する物資を欠く物質を指す。したがって、この用語は、DNA、宿主細胞タンパク質又は元の環境に付随する他の分子の混入がない組み換えタンパク質を指す。この用語は、少なくともおよそ75%、少なくともおよそ80%、少なくともおよそ85%、少なくともおよそ90%、少なくともおよそ95%又は少なくともおよそ98%又はそれ以上の程度の純度を指す。
「封入体」又は「屈折小体」なる用語は、対象の凝集されたポリペプチドの密度の高い細胞内質量を指し、それはすべての細胞構成成分を含む総細胞タンパク質の主な部分を成す。すべてではないが場合によって、ポリペプチドのこれらの凝集塊は、1000倍まで拡大した位相差顕微鏡下で細胞の中に可視の明るいスポットとして認識されうる。
【0016】
本明細書中で用いられる「誤って折り畳まれた」タンパク質なる用語は、屈折小体内に含有される沈殿したないしは凝集したポリペプチドを指す。本明細書中で用いられる「不溶性の」又は「誤って折り畳まれた」VEGF又は他の組み換えタンパク質は、原核生物の宿主細胞の周辺質又は細胞内腔内に含有されるか、またはさもなくば、付随する原核生物の宿主細胞である、沈殿したないしは凝集したVEGF又は組み換えタンパク質を指し、ミスマッチ又は形成されていないジスルフィド結合を有する生物学的に不活性な立体構造であると思われる。一般に、不溶性組み換えタンパク質は屈折小体に含有される必要はなく、すなわち、位相差顕微鏡下で可視化されることもあるし可視化されないこともある。
【0017】
本明細書中で用いられる「カオトロピック剤」は、水溶液中に適切な濃度であると、ポリペプチドを水溶媒質に可溶化させるために、その表面の変質によってポリペプチドの空間配位又は立体構造を変えることが可能である化合物を指す。変質は、例えば水和作用、溶媒環境又は溶媒-表面相互作用の状態を変えることで生じうる。カオトロピック剤の濃度はその強度および有効性に直接作用する。強力な変性カオトロピック溶液は、溶液中で、タンパク質二次構造を効果的に取り除く溶液中に存在するポリペプチドを効率的にほどく(unfold)高濃度のカオトロピック剤を含む。アンフォールディング(unfolding)は相対的に広範囲であるが、可逆性である。中程度の変性カオトロピック溶液は、溶液中に十分な濃度であると、ポリペプチドは部分的にしか折り畳まれない。内在性又は類似の生理学的条件下でその活性型を操作する場合、それ自体の空間的立体構造に、どんなに立体構造がねじれていようとポリペプチドは溶液中に溶ける中間生成物を経ると考えられているのでカオトロピック剤の例には、塩酸グアニジン、尿素および水酸化物、例えばナトリウム又は水酸化カリウムが含まれる。カオトロピック剤には、これらの試薬の組合せ、例として、尿素又は塩酸グアニジンと水酸化物の混合が含まれる。
【0018】
本明細書中で用いられる「還元剤」は、水溶液中に適切な濃度であると、フリーなスルフヒドリル基を維持して、分子内又は分子間ジスルフィド結合が化学的に崩壊される化合物を指す。適切な還元剤の代表的な例には、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、β-メルカプトエタノール(BME)、システイン、システアミン、チオグリコレート、グルタチオン、及び水素化ホウ素ナトリウムなどがある。
本明細書中で用いられる「緩衝溶液」はその酸-塩基コンジュゲート構成成分の作用によってpHの変化に耐える溶液を指す。
【0019】
本明細書中での目的のための「細菌」には真正細菌及び古細菌が含まれる。本発明のある実施態様では、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌を含む真正細菌は本明細書中に記載の方法及びプロセスに用いられる。本発明のある実施態様では、グラム陰性細菌、例えば腸内細菌科が用いられる。腸内細菌科に属する細菌の例は、エシェリキア属、エンテロバクター属、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、セラシア属、及びシゲラ属を含む。その他の種類の適切な細菌としては、アゾトバクタ、シュードモナス、根粒菌属、ビトレオシラ(Vitreoscilla)、及びパラコッカス(Paracoccus)が挙げられる。本発明のある実施態様では、大腸菌が用いられる。適切な大腸菌宿主には、大腸菌W3110(ATCC 27325)、大腸菌294(ATCC 31446)、大腸菌B及び大腸菌X1776(ATCC 31537)が含まれる。これらの例は、限定的なものではなく例示であり、W3110が一例である。上述の細菌の任意の突然変異細胞も使用できる。当然ながら、バクテリウム属の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮しながら適切な細菌を選択することが必要である。例えば、pBR322、pBR325,pACYC177、又はpKN410等の周知のプラスミドを使用してレプリコンを供給するとき、大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ属を宿主として適切に使用することができる。さらに、好適な細菌宿主細胞の例については以下を参照のこと。
【0020】
本明細書で使用する「細胞」「細胞系」「株」、及び「細胞培養物」という表現は、互いに交換可能に使用され、そのような名称は全て子孫を含んでいる。したがって、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は初代の対象細胞及び、継代回数には関係なく、それに由来する培養物を含んでいる。また、故意又は偶然の変異のために、全ての子孫はDNA含量が正確に一致しないかもしれないことも理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされるのと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異子孫が含まれる。明確な区別が意図される場合には、それは文脈から明らかになるだろう。
混合様式のカラムは、陽イオン交換の特性と疎水性相互作用を両方有する樹脂を有するカラムを指す。
【0021】
組み換えタンパク質
組み換えタンパク質、例えば酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子および血管内皮増殖因子などの増殖因子は、細菌を含む多くの供給源から回収されて、精製されている(Salter D.H. et al., (1996) Labor. Invest. 74(2): 546-556 (VEGF);Siemeister et al., (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 222(2): 249-55 (VEGF);Cao et al., (1996) J. Biol. Chem. 261(6): 3154-62 (VEGF);Yang et al., (1994) Gaojishu Tongxun, 4:28-31 (VEGF);Anspach et al., (1995) J. Chromatogr. A 711(1): 129-139 (aFGF and bFGF);Gaulandris (1994) J Cell. Physiol. 161(1): 149-59 (bFGF);Estape and Rinas (1996) Biotech. Tech. 10(7): 481-484 (bFGF);McDonald et al., (1995) FASEB J. 9(3): A410 (bFGF))。例えば、VEGFの優れた活性型は、2つの165-アミノ酸ポリペプチド(VEGF-165)のホモダイマーである。この構造では、各サブユニットは、2つのサブユニットの共有結合をもたらす7対の鎖内ジスルフィド結合と2つの付加的な対を有する。固有の立体構造は、容易にヘパリンを結合することが示されている強い塩基性のドメインを含む(上掲のFerrara et al (1991))。VEGFの共有結合性二量体化は有効なレセプター結合および生物活性に必要とされるが、(Potgens et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:32879-32885;Claffey et al., (1995) Biochim. et Biophys. Acta 1246:1-9)、細菌の生成物は潜在的にいくつかの誤って折り畳まれた、ジスルフィドが混在した中間生成物を含む。「屈折小体」の形態で、そして可溶タンパク質としても宿主細胞にあるタンパク質を単離、精製、及び再活性化する際に有用な手順を提供する。
【0022】
組み換えタンパク質の単離
不溶性の誤って折り畳まれた組み換えタンパク質は、当分野の多くの標準的な技術のいずれかによりタンパク質を発現する原核生物の宿主細胞から単離される。例えば、不溶性の組み換えタンパク質は、適切な単離バッファ中で、細胞を適切なイオン強度のバッファに曝露して殆どの宿主タンパク質を可溶化させるか(しかし対象のタンパク質は実質的に不溶性である)、又は封入体ないしは周辺質又は細胞内腔のタンパク質を放出させ、例えば遠心分離による回収に利用できるようにするために細胞を破壊することにより、単離される。この技術は周知であり、例えば米国特許第4511503号に記載されている。Kleid等は均質化の後に遠心分離をすることによる屈折小体の精製を開示している(Kleid等, (1984) in Developments, Industrial Microbiology, (Society for Industrial Microbiology, Arlington, VA) 25:217-235)。例としてFischer等, (1993) Biotechnology and Bioengineering 41:3-13も参照のこと。
米国特許第5410026号は、封入体からのタンパク質の回収のための典型的な方法を記載しており、以下のようにまとめられる。原核生物細胞を好適なバッファに懸濁する。典型的に、バッファはpH5〜9、又はおよそ6〜8に緩衝するために好適な緩衝剤と塩からなる。NaClなどの任意の好適な塩は、緩衝した溶液の十分なイオン強度を維持するために有用である。典型的には、約0.01から2M、又は0.1から0.2Mのイオン強度を用いる。細胞は、この緩衝液中に懸濁され、ついで、例えば機械的方法、例えばホモジナイザー(Manton-Gaulinプレス、マイクロフルイダイザー、又はNiro-Soavi)、フレンチプレス、ビーズミル、又は音波オシレーター、あるいは化学的又は酵素的方法のような通常用いられている技術を使用して破壊又は溶解する。
【0023】
細胞破壊の化学的ないしは酵素的方法の例には、細菌壁を溶解するリゾチームの使用を伴うスフェロプラスティング(Neuら, Biochem.Biophys.Res.Comm.,17:215(1964))、及びポリペプチドの放出のために生細胞を高緊張度の溶液と低緊張度の冷水洗浄で処理することを含む浸透圧ショック(Neuら, J.Biol.Chem.,240:3685-3692(1965))が含まれる。一般的に、発酵培養物の分析スケール容量に含まれる細菌の破壊には超音波処理が用いられる。大きなスケールでは、高圧ホモジナイゼーションが典型的に用いられる。
細胞を破壊した後、典型的に、懸濁液を低速、一般的にはおよそ500〜15000×gで遠心し(本発明のある実施態様では、およそ12000×gが用いられる)、標準的な遠心では、不溶性タンパク質のすべてが実質的にすべてペレット状になるのに十分な時間遠心する。この時間は、遠心する容量並びに遠心設定に応じて単に決定されうる。典型的におよそ10分間〜0.5時間が不溶性タンパク質をペレット状にするために十分である。ある実施態様では、懸濁液を12000×gで10分間遠心する。
その結果生じたペレットは不溶性タンパク質分画の実質的にすべてを含む。細胞破壊プロセスが完全でないならば、ペレットはインタクトな細胞又は破壊された細胞断片も含有し得る。細胞破壊の完全性は、ペレットを少量の同じバッファ中に懸濁し、懸濁液を位相差顕微鏡で調べることにより検査することができる。破壊細胞断片もしくは全細胞の存在は、断片又は細胞及び随伴する非屈折性(non-refractile)ポリペプチドを除去するために更なる超音波処理又は破壊の他の手段が必要であることを示している。そのような更なる破壊後に、必要ならば、懸濁液を再び遠心分離し、ペレットを回収し、再懸濁し、再分析する。このプロセスを、視覚検査でペレット化材料中に破壊細胞断片がないことが明らかになるか、更なる処理でも得られるペレットのサイズを低減できなくなるまで繰り返す。
【0024】
不溶性タンパク質が細胞内又は周辺質のスペースのいずれにあっても、上記のプロセスは実施できる。本発明のある実施態様では、組み換えタンパク質を単離するために本明細書中に示した条件は、周辺質スペース又は細胞内スペースに沈殿した封入体と、特にVEGFに関する。しかしながら、この方法及び手順は、以降全体にわたって述べるように一般にわずかな変更がある組み換えタンパク質に適用することができると考えられる。本発明のある実施態様では、この方法及び手順は、組み換えタンパク質の製造又は工業規模の産生、再折り畳み、及び精製に適用することができる。
【0025】
一実施態様では、単離したペレット中の組み換えタンパク質は、組み換えタンパク質を実質的に可溶化するために十分な量の第一緩衝溶液中でインキュベートする。このインキュベートは、所望の量又は実質的にすべての組み換えタンパク質の可溶化を可能とする濃度、インキュベート時間、及びインキュベート温度の条件下で行う。
第一緩衝溶液は、バッファのpH範囲を少なくともおよそ9以上に維持するために好適な緩衝剤を含み、典型的な範囲は9−11である。ある実施態様では、VEGFのpHはpH11である。この後の範囲のpHをもたらす適切なバッファの例としては、トリス(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)、HEPPS (N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[3-プロパン-スルホン酸])、CAPSO(3-[シクロヘキシルアミノ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、CAPS(3-[シクロヘキシルアミノ]-1-プロパンスルホン酸)、CHES(2-[N-シクロヘキシルアミノ]エタンスルホン酸)、アルギニン、リジン、及びホウ酸ナトリウムが含まれる。一実施態様では、本明細書中のバッファはおよそpH11のCHES及びアルギニンを含む。他の実施態様では、本明細書中のバッファはおよそpH11のCHESを含む。他の実施態様では、本明細書中のバッファは、およそpH11のトリスを含む。ある実施態様では、第一緩衝溶液はカオトロピック剤を含む。
【0026】
本発明の実施に好適なカオトロピック剤には、例えば、尿素及びグアニジン又はチオシアン酸の塩類、例えば尿素、塩酸グアニジン、チオシアン酸ナトリウムなどが含まれる。バッファに存在するために必要なカオトロピック剤の量は、溶液中の組み換えタンパク質をアンフォールド(unfold)するために十分な量である。本発明のある実施態様では、カオトロピックは、およそ0.5モルと5モルの間で存在する。本発明の一実施態様では、カオトロピック剤は、およそ1Mの尿素である。
緩衝溶液中のタンパク質の濃度は、タンパク質が光学密度によって測定すると実質的に溶解されている程度でなければならない。用いる正確な量は、例えば、緩衝溶液中の他の成分の濃度と種類、特にタンパク質濃度、カオトロピック剤及びバッファのpHに依存するであろう。本発明の一実施態様では、組み換えタンパク質の濃度は、1ml当たり0.5〜5.5mg又は1.5〜5.0mg/mlの範囲である。典型的に、可溶化は、およそ0〜45℃、又はおよそ2〜40℃、又はおよそ20〜40℃、又はおよそ23〜37℃、又はおよそ25〜37℃、又はおよそ25℃で、少なくともおよそ1〜24時間かけて行う。一般的に、温度は、塩、還元剤およびカオトロピック剤のレベルによって見かけ上影響を受けない。ある実施態様では、可溶化は、大気圧下で行う。
【0027】
緩衝溶液中の可溶化の程度の測定は決定されてもよく、例えば濁度測定によって、遠心分離後の上清とペレット間の分画を分析することによって、還元SDS-PAGEゲル上で、タンパク質アッセイ(例えばBio-Radタンパク質アッセイキット)によって、またはHPLCによって適切に行われる。
場合によって、崩壊した細胞は遠心分離を行わずに、例えば、本明細書中に記載の第二緩衝溶液(折り畳みバッファ)にて1:4、1:6、1:8に希釈される。このインキュベートは、組み換えタンパク質の可溶化と再折り畳みを可能にする濃度、インキュベート時間および培養温度の条件下で行う。一実施態様では、およそ30%以上の組み換えタンパク質は、可溶化されて、再び折り畳まれる。
【0028】
再び折り畳まれる組み換えタンパク質
ポリペプチドが可溶化される後、あるいは細胞が破壊される後に、組み換えタンパク質の再折り畳みが可能となる濃度の少なくとも一の還元剤とカオトロピック剤を含む第二緩衝溶液に置くか又は希釈し、それとともに、例えば一定の質量移動係数k
La=0.004〜0.01分
−1(例えば、海洋型の羽根車を有する2.5L管の場合、空気散布速度は0.3〜10cc/分/L、又は0.3〜3cc/分/L、又は1cc/分/L、又は25cc/分/Lであり、混合速度は200〜400rpmとなる)を用いて空気又は酸素を添加する。再折り畳み反応のための酸素又は空気は、空気供与源または酸素の圧縮ガスによって供給することができる。気相から液相への物質移動の効率は、撹拌、散布および加圧によって制御され、質量移動係数(k
La)によって捕らえられる。例としてBlanch, & Clark, Biochemical engineering, Marcel Dekker, New York, 1997;及び、Aunins, & Henzler, Aeration in cell culture bioreactors, in Biotechnology:A multi-volume comprehensive treatise, G. Stephanopoulos, Ed., Weinheim, New York, 1993, pp. 219-281を参照のこと。一実施態様では、0.004分
−1のk
Laは、海洋型の羽根車を有する2.5L管では200〜400rpmの混合速度と0.3cc/分/Lの散布速度を表わして用いられる。他の実施態様では、k
La=0.01分
−1又は0.1分
−1は、適切に折り畳まれたタンパク質を生産するために用いる。
【0029】
本発明のある実施態様では、第二緩衝溶液は2以上の還元剤を含有する。ポリペプチドは、再折り畳みバッファにて例えば少なくとも5倍で、または少なくともおよそ10倍、又はおよそ20倍で、又はおよそ40倍に希釈してもよい。可溶性の折り畳まれていないタンパク質のこの第二インキュベートの条件は通常、所望の量のタンパク質又は実質的ないし完全なタンパク質の折り畳みが起こるようにするであろう。正確な条件は、例えばバッファのpHおよび、存在するカオトロピック剤と還元剤の種類と濃度に依存するであろう。インキュベート温度は通常およそ0〜40℃であり、インキュベートは通常、再折り畳みを引き起こすために少なくともおよそ1時間〜およそ48時間実行されるであろう。ある実施態様では、反応は、例えばおよそ0〜45℃、またはおよそ2〜40℃、又はおよそ20〜40℃、又はおよそ23〜37℃、またはおよそ25〜37℃、又はおよそ25℃で、少なくともおよそ3時間、少なくともおよそ10時間、またはおよそ3から30時間の間、又はおよそ3から24時間の間で行われる。ある実施態様では、反応は大気圧下で行われる。
【0030】
第二緩衝溶液は、バッファのpHを少なくともおよそ9又は9より大きい範囲に維持して、典型的に9〜11の範囲に維持するために好適な緩衝剤と、カオトロピック剤と少なくとも一の還元剤とを含む。ある実施態様では、第二緩衝溶液は2以上の還元剤を含む。一実施態様では、VEGFのpHはpH10である。pHを後者の範囲にする適切なバッファの例には、TRIS.(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)、HEPPS(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[3-プロパンスルホン酸])、CAPSO(3-[シクロヘキシルアミノ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、CAPS(3-[シクロヘキシルアミノ]-1-プロパンスルホン酸)、CHES(2-[N-シクロヘキシルアミノ]エタンスルホン酸)、アルギニン、リジンおよびホウ酸ナトリウムが含まれる。一実施態様では、本明細書中の第二緩衝溶液は、およそpH10のCHESとアルギニン(それぞれ10mMおよび100mMの終濃度のおよその濃度で)とともに、2以上の還元剤と少なくとも一のカオトロピック剤とを含む。他の実施態様では、本明細書中の第二緩衝溶液は、およそpH10のトリスとアルギニン(それぞれ10mMおよび100mMの終濃度のおよその濃度で)とともに、2以上の還元剤と少なくとも一のカオトロピック剤とを含む。
【0031】
アルギニン(または他の正に荷電するアミノ酸)、例えばL-アルギニン/HClは、第一緩衝溶液および第二緩衝溶液に存在してもよい。本発明のある実施態様では、アルギニンの濃度は、例えば50〜500mM、およそ75〜300mM、又はおよそ100〜300mM、又はおよそ100mM又は300mMの終濃度などである。本発明のある実施態様では、タンパク質は、pHが9より大きく、0.5〜3M 尿素、50〜500mM アルギニンおよび5mM EDTA(終濃度)の第一緩衝溶液中にある。一実施態様では、10mMのCHES終濃度が使われる。他の実施態様では、10mMのトリス終濃度が使われる。一実施態様では、第一緩衝溶液は、1M 尿素、300mM アルギニン、10mM CHES、5mM EDTA、pH11の終濃度を含む。他の実施態様では、第一緩衝溶液は、1M 尿素、300mM アルギニン、10mM トリス、5mM EDTA、pH11の終濃度を含む。本発明のある実施態様では、タンパク質は、pHが9より大きく11以下であり、0.5〜3M 尿素、50〜500mM アルギニン、0.25〜1mM DTT、5〜20mM システインおよび2〜10mM EDTA(終濃度)を含む第二緩衝溶液(再折り畳み緩衝溶液)中にある。一実施態様では、10mMのCHES終濃度が使われる。他の実施態様では、10mMのトリス終濃度が使われる。一実施態様では、タンパク質は、1M 尿素、15mM システイン、2mM DTT、100mM アルギニン、10mM CHES、および5mM EDTA、pH9〜10(終濃度)を有する再折り畳み緩衝溶液中にある。他の実施態様では、タンパク質は、1M 尿素、15mM システイン、0.5〜2mM DTT、100mM アルギニン、10mM トリス、5mM EDTA、pH9〜10(終濃度)を有する再折り畳み緩衝溶液中にある。
【0032】
前述のように、溶液はまた少なくとも一の還元剤を含む。適切な還元剤の例は、ジチオトレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール(BME)、システイン、DTEなどを含むが、これらに限定されるものではない。バッファに存在する還元剤の量は、主に、還元剤およびカオトロピック剤の種類、使用されるバッファの種類とpH、溶液に混入させる又は溶液に導入する酸素の量、およびバッファ中のタンパク質の濃度に依存するであろう。例えば、還元剤は、システインについてはおよそ0.5からおよそ20mM、DTTについては0.25〜3.0mM(例えば0.5〜2mM DTT)及びBMEについてはおよそ0.2mM未満の濃度範囲の上記のものから適切に選択される。本発明の一実施態様では、2以上の還元剤、例えばおよそ0.5〜2mMのDTTと0.5〜およそ20mMのシステインがある。DTTおよびBMEが、一般に組み換えタンパク質について本明細書に提供される手順と関連して使われてもよいのに対して、上記のDTTとおよそ15mMのシステインとの組合せはVEGFの回収の例である。一実施態様では、還元剤は、終濃度、およそ2mMのDTTと15mMのシステインである。他の実施態様では、還元剤は、終濃度、およそ0.5mMのDTTと15mMのシステインである。
【0033】
第二緩衝溶液は、組み換えタンパク質の再折り畳みが起こるような濃度の少なくとも一のカオトロピック剤を含有する。通常、カオトロープは、およそ0.5から2モルの終濃度で存在する。本発明の一実施態様では、本明細書中のカオトロピック剤は、およそ0.5〜2M、0.5〜2M、またはおよそ1Mの終濃度の尿素である。本発明の他の実施態様では、カオトロピック剤は、およそ0.1〜1Mの終濃度のグアニジン塩酸塩である。
再折り畳みバッファは、更なる薬剤、例えば、TRITON
TMX-100、NONIDET
TMP-40、TWEEN
TMシリーズおよびBRIJ
TMシリーズなどの任意の様々な非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。非イオン性界面活性剤は、およそ0.01%から1.0%の終濃度で存在する。ある例では、非イオン性界面活性剤の濃度は、およそ0.025%から0.05%の間、またはおよそ0.05%の終濃度である。
【0034】
再生の程度は、例えばrpHPLCクロマトグラフィカラム、陽イオン交換HPLC(SP-5PW TSKゲルカラム、Tosoh Bioscience LLC)又は他の適切なヘパリンアフィニティーカラムを用いた高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によって、最適に測定される。陽イオン交換HPLCアッセイ又はヘパリン結合HPLCアッセイにおける正しく折り畳まれた組み換えピークサイズの増加は、バッファ中に存在する折り畳まれた生物学的に活性のある組み換えタンパク質の量の増加と直接相関する。インキュベートは、回収される誤って折り畳まれた組み換えタンパク質に対する正しく折り畳まれた組み換えタンパク質の比率を最大にするために行う。これはrpHPLCアッセイによって測定される。
一実施態様では、適切に折り畳まれたVEGFの質および量は、ヘパリン-結合アッセイを使用して評価される。希釈した組み換えタンパク質を含有する試料は、例えばヘパリン-5PWカラム(7.5×75mm、Tosoh Biosciences LLC, Tokyo, Japan)又は他の好適なヘパリンアフィニティカラムに流す。例えば、ヘパリン-5PWカラムは、0.15M 塩化ナトリウムを含有する10mM リン酸ナトリウム、pH7に平衡化する。1ml/分又は2ml/分の流速で、カラムは、0.15〜2M 塩化ナトリウムの直線的濃度勾配を含む10mM リン酸ナトリウム、pH7を用いて10分間にわたって溶出する。280nmで溶出をモニターする。一実施態様では、タンパク質は、生物学的に活性な適切に再び折り畳まれたVEGFに対応する単一のピークに回収される。本発明の一実施態様では、適切に折り畳まれたVEGFを決定するためのアッセイはRPHPLCである。ジスルフィド結合は場合によってペプチドマップによって確認してもよい。また、円偏光二色性が、2及び3D構造/折畳みを決定するために使われてもよい。
【0035】
一実施態様では、可溶化および再折り畳みは一工程で実行される。崩壊した細胞ペレットを得た後に、上記の第二緩衝溶液に置くか又は希釈する(この場合、組合せ緩衝溶液という)。ポリペプチドは、組み合わせ緩衝溶液にて、例えば少なくとも5倍、または少なくともおよそ10倍、又はおよそ20倍、又はおよそ40倍に希釈されてもよい。ペレットのこのインキュベートの条件は通常、空気又は酸素を添加しながら、所望の量のタンパク質又は実質的ないし完全なタンパク質の可溶化と折り畳みが起こるようにするであろう。一実施態様では、0.004分
−1のk
Laが使われ、これは200〜400rpmの混合速度と、海洋型の羽根車(marine type impeller)を有する2.5Lの管に0.3cc/分/Lの散布速度を表す。他の実施態様では、適切に折り畳まれたタンパク質を生産するためにk
La=0.01分
−1または0.1分
−1を用いる。例えば、正確な条件は、バッファのpH、および存在するカオトロピック剤と還元剤の種類と濃度に依存するであろう。インキュベート温度は通常およそ0〜40℃であり、インキュベートは通常、可溶化と再折り畳みを引き起こすために少なくともおよそ1時間〜およそ48時間実行されるであろう。反応は、例えばおよそ0〜45℃、またはおよそ2〜40℃、又はおよそ20〜40℃、又はおよそ23〜37℃、またはおよそ25〜37℃、又はおよそ25℃で、少なくともおよそ3時間、少なくともおよそ10時間、またはおよそ3から48時間の間、又はおよそ3から30時間の間で行われる。ある実施態様では、反応は大気圧下で実行される。
【0036】
組み換えタンパク質の回収と精製
組み換えタンパク質の回収と精製は、例えば、塩と溶媒分別法、コロイド性物質による吸着、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、免疫親和性クロマトグラフィ、電気泳動法及び高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)などの様々な方法及び公知の手法をタンパク質の分離のために実施することができるが、浄化工程及び多工程クロマトグラフィ手順の例が記載されている。浄化工程は、界面活性剤を1%の終濃度にまで加えること(例えば、トリトン-X-100)、pHをおよそ8.5〜9.5(またはおよそ8.7又はおよそ9)に調整すること、25〜30℃で1〜10時間溶液をインキュベートすること、溶液を遠心分離すること、そして遠心分離工程から回収した液体を濾過することを含む。多工程のクロマトグラフィの手順は、前記の再び折り畳まれた組み換えタンパク質を、混合様式の樹脂、陽イオンクロマトグラフィ支持体、第一疎水性クロマトグラフィ支持体および、場合によって、第二疎水性クロマトグラフィ支持体又はイオン交換支持体と接触させること、そして、各々の支持体から組み換えタンパク質を選択的に回収するかまたは溶出することを含む。いずれかの手順の工程もいずれの順序で行われてもよいことは理解される。本発明の一実施態様では、工程は連続して実行される。
【0037】
組み換えタンパク質の更なる分離と精製において適切な第一工程は、典型的に、組み換えタンパク質の濃縮と試料体積の減少をもたらすものである。例えば、上記の第二インキュベート工程により、回収された組み換えタンパク質の容量が大幅に増加し、再折り畳みバッファ中のタンパク質が同時に希釈される。適切な第一クロマトグラフィ支持体は、回収された組み換えタンパク質の容量の減少をもたらし、望ましくない混在タンパク質からタンパク質をいくらか有利に精製する。好適な第一クロマトグラフィ工程には、溶出されて、第二クロマトグラフィ支持体に直接添加されうるクロマトグラフィ支持体が含まれる。
例示的な第一クロマトグラフィ支持体には、限定するものではないが、混合様式の樹脂(例えばCaptoMMC
TM、GE Healthcare、又はMEP Hypercel、Pall Corporation)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ支持体、例えばCHTセラミックI型およびII型(形式的にMacroPrepセラミックとして知られる)、バイオゲルHT、バイオゲルHTP、Biorad, Hercules, CA、など;銅、ニッケルなどの固定した金属イオンの不活性な樹脂からなる金属キレート化クロマトグラフィ支持体;並びに非誘導体化シリカゲルが含まれる。本発明の一実施態様では、VEGFの精製および回収のための第一クロマトグラフィ支持体は、混合イオン交換クロマトグラフィ支持体である。第一クロマトグラフィ支持体からの溶出は当分野の標準的な手法に従って達成される。好適な溶出条件とバッファは、溶出した組み換えタンパクの、下記のような陽イオンクロマトグラフィ支持体への直接添加(loading)を容易にするであろう。
【0038】
クロマトグラフィのための陽イオン支持体を形成するために、様々な陰イオン成分が基質に付着されてもよい。陰イオン成分には、カルボキシメチル、スルフエチル基、スルホプロピル基、リン酸塩およびスルホン酸塩(S)が含まれる。SE52 SE53、SE92、CM32、CM52、CM92、P11、DE23、DE32、DE52、EXPRESS ION
TMSおよびEXPRESS ION
TMCなどのセルロースのイオン交換樹脂は、Whatman LTD, Maidstone Kent U.Kから入手可能である。SEPHADEX
TMおよびSEPHAROSE
TMベースのイオン交換体及び架橋結合したイオン交換体は、CM SEPHADEX
TMC−25、CM SEPHADEX
TMC−50およびSP SEPHADEX
TMC−25 SP SEPHADEX
TM C−50およびSP−SEPHAROSE
TMハイパフォーマンス、SP−SEPHAROSE
TM−XL SP−SEPHAROSE
TMFast Flow、CM-SEPHAROSE
TMFast Flow、およびCM-SEPHAROSE
TM、CL-6Bという製品名で知られており、すべてPharmacia ABから入手可能である。例えば、本発明の実施のためのイオン交換体の例には、BioRad, Hercules, CAの製品名MACROPREP
TM、例えばMACROPREP
TMS支持体、MACROPREP
TMHigh S支持体およびMACROPREP
TMCM支持体のイオン交換体が含まれるがこれらに限定されない。
【0039】
陽イオンクロマトグラフィ支持体からの溶出は通常、塩濃度を増やすことによって達成される。イオンカラムからの溶出は塩の添加を伴うので、また本明細書において言及されるように塩濃度においてHICが上がるので、イオン性の工程又は他の塩工程の後にHIC工程が導入されてもよい。本発明の一実施態様では、陽イオン交換クロマトグラフィの工程は、少なくともHIC工程、例えば第一疎水的相互作用クロマトグラフィ支持体および/または第二疎水的相互作用クロマトグラフィ支持体に先行する。
疎水カラムは、例えば、第二、第三および/または第四の精製工程の組み換えタンパク質の精製に使われてもよい。疎水性相互作用クロマトグラフィは当分野で周知であり、「クロマトグラフィ支持体」に付着した疎水性リガンドと相互作用する分子の疎水性部分の相互作用に基づく。基質にカップリングした疎水性リガンドは、HICクロマトグラフィ支持体、HICゲル又はHICカラムなどとさまざまに称される。さらに、タンパク質とHICとの相互作用の強度は、タンパク質上の極性表面に対する非極性表面の割合に依存するだけでなく、同様に非極性表面の関与にも依存する。
【0040】
多くの基質は、HICカラムの調製に使用されてもよい。アガロースが最も広く用いられるが、シリカや有機ポリマーの樹脂も用いられてもよい。有用な疎水性リガンドには、限定するものではないが、ブチル-、プロピル-、又はオクチル-などのおよそ2からおよそ10の炭素原子を有するアルキル基、又はフェニルなどのアリル基が含まれる。ゲルやカラムのための従来のHIC支持体は、製品名ブチル-SEPHAROSE
TM、ブチル-セファロース
TM-Fast Flow、フェニル-SEPHAROSE
TM CL-4B、オクチルSEPHAROSE
TM FF及びフェニルSEPHAROSE
TM FFとしてPharmacia, Uppsala, Swedenから、製品名TOYOPEARL
TM ブチル650M (フラクトゲルTSK ブチル-650)又はTSK-GELフェニル5PWとしてTosoh Corporation, Tokyo, Japanなどの供給元から市販されうる。
【0041】
リガンド密度は、タンパク質の相互作用の強度だけでなく同様にカラムの許容量に影響する重要なパラメーターである。市販のフェニル又はオクチルフェニルゲルのリガンド密度はおよそ5〜40μmol/mlゲル板である。ゲル容量は、対象の特定のタンパク質並びにpH、温度および塩濃度に依存するが、一般に、3〜20mg/mlゲルの範囲内であると思われる。
特定のゲルの選択は当業者により決定されうる。通常、タンパク質およびHICリガンドの相互作用の強度はアルキルリガンドの鎖長によって増加するが、およそ4からおよそ8の炭素原子を有するリガンドがほとんどの分離に適する。フェニル基はペンチル基とほぼ同じ疎水性を有するが、選択性はタンパク質の芳香族基とのπ-π相互作用の可能性のために異なりうる。
【0042】
HICカラムに対するタンパク質の吸着は高塩濃度によるものであるが、有効濃度はタンパク質の性質及び選択された特定のHICリガンドに応じて広範囲で変化しうる。一般におよそ1から4Mの間の塩濃度が有用である。
順に又は勾配の形態のいずれであっても、HIC支持体からの溶出は、例として、a) 塩濃度を変える、b) 溶媒の極性を変える、又はc) 界面活性剤を加えるなどの様々な方法で達成されうる。塩濃度を下げることによって、吸着したタンパク質は疎水性を増すに従って溶出される。極性の変化は、エチレングリコール又はイソプロパノールなどの溶媒の添加とこれによる疎水性相互作用の強度の低減に影響されうる。界面活性剤は、タンパク質のディスプレーサーとして機能し、膜タンパク質の精製と関連して主に使われていた。
VEGFを精製するための方法の例は、本明細書中の以下、例えば実施例IV及びVに記載する。
【0043】
組み換えタンパク質の発現
簡潔に言えば、自律複製が可能な発現ベクターと宿主の原核生物細胞ゲノムと関連するタンパク質発現を宿主細胞に導入する。適する発現ベクターの構築は、本明細書中に記載の組み換えタンパク質のヌクレオチド配列を含め、当分野で周知である。例えば、Sambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, New York) (2001);Ausubel等, Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols John Wiley and Sons (New Jersey) (2002);及びBaneyx, (1999) Current Opinion in Biotechnology, 10:411-421を参照。細菌を含む適切な原核生物細胞、発現ベクターは、例えばAmerican Type Culture Collection (ATCC), Rockville, Marylandにより市販されている。原核細胞、特に細菌細胞培養物の大規模増殖のための方法は当分野で周知であり、これらの方法が本発明の関係において用いられうる。
例えば、原核生物宿主細胞に対象の組み換えタンパク質をコードする発現ないしはクローニングベクターを形質移入し、プロモーターの誘導、形質転換体の選別、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に応じて変更した従来の栄養培地中で培養する。対象のポリペプチドをコードする核酸は、対象のポリペプチド(一又は複数)をコードする限りにおいて、好ましくは任意の供給源由来のRNA、cDNA又はゲノムDNAである。微生物宿主において異種性ポリペプチド(その変異体を含む)の発現に適する核酸を選別するための方法は周知である。ポリペプチドをコードする核酸分子は当分野で公知の様々な方法によって調整する。例えば、VEGFをコードするDNAは、例えば、VEGFをコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて、単離し、配列決定する。
【0044】
異種の核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、適切なプロモーターの制御の下、微生物における発現のための複製可能なベクターへ適切に挿入される。多くのベクターは、かかる目的のために利用可能であり、適当なベクターの選択は、主としてベクター内に挿入されるべき核酸のサイズ、及びベクターにより形質転換される特定の宿主細胞に依存する。各ベクターは、それが適合する特定の宿主細胞に依存する種々の成分を含む。特定の宿主の種類に依存し、一般にベクター成分には、限定はしないが、以下の一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、プロモーター、及び転写終結配列。
一般には、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターが、微生物宿主との関連で用いられる。そのベクターは、通常、複製部位、並びに形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を保持する。例えば、大腸菌は、典型的には、E.coli種由来のプラスミドであるpBR322を使って形質転換される(例えば、Bolivar等、Gene, 2: 95 (1977)参照)。pBR322は、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性の遺伝子を含んでおり、よって形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する。そのpBR322プラスミド、もしくは他の微生物プラスミド又はファージもまた、選択マーカー遺伝子の発現のために宿主によって使用され得るプロモーターを含むか、又は含むよう改変される。
【0045】
(i) シグナル配列
本発明のポリペプチドは、直接産生されるだけではなく、典型的にはシグナル配列あるいは成熟ポリペプチドないしはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても産生される。典型的には選択された異種性シグナル配列は、宿主細胞によって認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然のポリペプチドシグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換できる。
【0046】
(ii) 複製開始点成分
発現ベクターは、一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は様々な細菌についてよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大腸菌などの大部分のグラム陰性細菌に好適である。
【0047】
(iii) 選択遺伝子成分
通常、発現ベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。この遺伝子は、選択培地中で増殖する形質転換された宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されない宿主細胞は、培地中で生存できない。この選択可能マーカーは、本発明で利用され、定義されるような遺伝学的マーカーとは異なる。典型的な選択遺伝子は、(a)例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質又はその他の毒素に耐性を付与し、(b)遺伝学的マーカー(一又は複数)の存在によって誘導される欠陥以外の栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバチラス菌に対するD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子のような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択技術の一例においては、宿主細胞の増殖を抑止する薬物が用いられる。この場合、対象の核酸で首尾よく形質転換したこれらの細胞は、抗薬物性を付与し、選択工程を生存するポリペプチドを産生する。このような優性選択の例としては、薬物ネオマイシン(Southern等, J. Molec. Appl. Genet, 1:327 (1982))、ミコフェノール酸(Mulligan等, Science, 209:1422 (1980))又はハイグロマイシン(Sugden等, Mol. Cell. Biol., 5:410-413 (1985))が使用される。上述の3つの例は、各々、適当な薬剤であるG418又はネオマイシン(ジェネティシン)、xgpt(ミコフェノール酸)、又はハイグロマイシンに対する耐性を伝達するために、真核生物での制御下で、細菌性遺伝子を利用する。
【0048】
(iv) プロモーター成分
対象の組み換えタンパク質を産生するための発現ベクターは、宿主微生物によって認識され、対象のポリペプチドをコードする核酸と作用可能に連結される適切なプロモーターを含む。原核生物の宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系(Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979))、アラビノースプロモータシステム(Guzman等, J. Bacteriol., 174:7716-7728 (1992))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980);欧州特許第36776号)、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター(deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983))を含む。しかし、他の既知の細菌性プロモーターも適当である。それらのヌクレオチド配列は公表されており、それにより、任意の必要な制限酵素部位を供給するためのリンカー又はアダプターを用いて、当業者は対象のポリペプチドをコードするDNAにそれらを作用可能に連結する(Siebenlist等, Cell, 20:269 (1980))ことが可能となる。また、上記のSambrook等;及び上記のAusubel等も参照のこと。
また、細菌のシステムで使用されるプロモーターも、通常、対象のポリペプチドをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガルノ(S.D.)配列を有する。該プロモーターは、制限酵素による切断により細菌由来のDNAから取り外すことができ、所望のDNAを含むベクター中へ挿入することができる。
【0049】
(v) ベクターの構築及び分析
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの構築には標準的なライゲーション技術を用いる。必要とされるプラスミドの生成のために、単離されたプラスミド又はDNA断片を切断させ、整え、そして望ましい型に再ライゲーションする。
構築されたプラスミド中において正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31446)又は他の株を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、成功した形質転換細胞を選択する。形質転換細胞からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又はSanger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:5463-5467 (1977)又はMessing等, Nucleic Acids Res., 9:309 (1981)の方法により、又はMaxam等, Methods in Enzymology, 65:499(1980)の方法により配列決定を行った。また、上記のSambrook等;及び上記のAusubel等も参照のこと。
対象の組み換えタンパク質をコードする核酸は、宿主細胞に挿入される。これは、典型的に、上記の発現ベクターにて宿主細胞を形質転換させ、様々なプロモーターを誘導するために適するように変更した従来の栄養培地中で培養することによって達成される。
【0050】
宿主細胞の培養
本発明の実施のために用いる好適な原核生物細胞は当分野で周知である。典型的に、封入体の形態で、又は周辺質ないしは細胞内腔に大量に組み換えタンパク質を発現する宿主細胞が用いられる。適切な原核生物には、例として、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌、桿菌、例えば枯草菌、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌、ネズミチフス菌又はセラチア‐マルセスセンスなどがある。大腸菌宿主の一例は大腸菌294(ATCC 31,446)である。また、他の細胞株、例として、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)および大腸菌W3110(ATCC 27,325)も好適である。これらの例は限定するものでなく例示である。株W3110は、組換えDNA産生発酵のための共通の宿主株であるので典型的な宿主である。本発明のある態様では、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、タンパク質をコードする遺伝子に遺伝子変異を起こすように修飾してもよく、このような宿主の例には1995年4月25日発行の米国特許第5410026号に記載の大腸菌W3110株1A2、27A7、27B4及び27C7が含まれる。例えば、VEGFの産生のための株は、49B3と称される、遺伝子型tonAΔ ptr3 phoAΔE15 Δ(argF-lac)169 degP41 ilvgを有する大腸菌株W3110である。また、例えば国際公開第2004/092393号の頁23〜24にわたる表を参照のこと。
【0051】
対象の組み換えタンパク質を生産するために使用される原核細胞は、当技術分野で既知の培地において成長させたもので、選択された宿主細胞の培養に適しており、一般的にSambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, New York) (2001)に記載の培地を含む。細菌に適した培地には、AP5培地、栄養ブロス、Luria-Bertani(LB)ブロス、Neidhardt's最少培地、及びC.R.A.P.最少又は完全培地に必要な栄養を補ったものが含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施形態では、培地は発現ベクターの構造に基づいて選択された選択剤も含み、よって発現ベクターを含む原核細胞を選択的に成長させることができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を成長させるために、培地にアンピシリンを加える。炭素、窒素、及び無機リン酸塩の供給源に加え、必要な補充物は、単独で、或いは、別の補充物又は複合窒素源等の培地と組み合わせて導入され、適切な濃度で含有される。場合によっては、培養培地は、グルタチオン、システイン、システアミン、チオグリコール酸、ジチオエリスリトール、及びジチオスレイトールからなる群から選択された1又は複数の還元剤を含んでよい。
適切な培地の例は、米国特許第5304472号及び同第5342763号に見ることができる。C.R.A.P.リン酸塩制限培地は、3.57gの(NH
4)
2(SO
4)、0.71gのクエン酸Na-2H
2O、1.07gのKCl、5,36gの酵母菌抽出物(認証済み)、5.36gのHycaseSF
TM−Sheffieldからなり、KOHによりpHを7.3に、脱イオン化H
2Oによりqsを872mlに調整したものをオートクレーブしてから55℃に冷却し、110mlの1M MOPS(pH7.3)、11mlの50%グルコース、7mlの1M MgSO
4を補ったものである。次いでカルベニシリンを50μg/mlの濃度で導入培地に添加してもよい。
原核宿主細胞を適切な温度で培養する。例えば、大腸菌の成長に好ましい温度は約20〜約39℃、又は約25℃〜約37℃、又は約30℃である。
【0052】
アルカリホスフェートプロモーターが使用される場合、本発明の対象のポリペプチドの生産のために使用される大腸菌細胞は、例えばSambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, New York) (2001)に一般的に記載されるようにアルカリホスフェートプロモーターが部分的に又は完全に誘導され得る適切な培地中で培養される。必要とされる培養は、無機リン酸塩の非存在下又はリン酸塩欠乏レベル下では、決して起こらない。第一に、培地はタンパク質合成の誘導レベル以上であり、細菌の増殖に十分な量の無機リン酸塩を含む。細胞が増殖し、リン酸塩を利用する場合、培地中のリン酸塩レベルを低下させ、それによりポリペプチドの合成の誘導を引き起こす。
プロモーターが、起こるべき誘導に関し誘導性プロモーターである場合、典型的に細胞はある最適な濃度、例えば、高い細胞濃度過程を用い、点誘導が開始される(例えば、誘導因子の添加、培地成分の除去により)約200のA
550が達成されるまで培養され、対象のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導する。
【0053】
必要ないかなる補充物も、単独で、或いは又は別の補充物ないしは複合窒素源等の培地と組み合わせて導入し、当業者に既知の適切な濃度で含めることができる。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、およそ5〜9とすることができる。大腸菌については、pHはおよそ6.8〜およそ7.4であり、又はおよそ7.0である。
【0054】
組み換えタンパク質の使用
こうして回収したポリペプチドは、薬学的に受容可能な担体に調製化してもよく、様々な診断、治療、又は該分子について公知の他の使用のために用いられる。例として、本明細書中に記載のタンパク質は、酵素免疫アッセイなどのイムノアッセイに使われてもよい。
本明細書中に記載の方法を用いて得られた組み換えタンパク質についての治療的使用も考慮される。例として、増殖因子又はホルモン、例えばVEGFは所望のように増殖を促すために用いられうる。例として、VEGFは、例えば急性の創傷(例えば熱傷、外科的創傷、通常の創傷など)又は慢性の創傷(例えば糖尿病性潰瘍、褥瘡、褥瘡性潰瘍、静脈潰瘍など)の創傷治癒の促進、発毛促進、組織増殖及び修復などのために用いられうる。
【0055】
組み換えタンパク質の治療製剤は、任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と所望の純度を有する分子、例えばポリペプチドを混合することによって(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18版, Osol,A編 [1980])、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で保存用に調製される。許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度では細胞に対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN
TM、PLURONICS
TM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0056】
ある実施態様では、インビボ投与のために使用される製剤は無菌である。これは滅菌濾過膜による濾過によって達成される。組み換えタンパク質は、凍結乾燥された形態、又は、水溶液又はゲル形態で保存されうる。より高い又はより低いpH値でも好適な場合があるが、組み換えタンパク質調製物のpHはおよそ4〜8(一実施態様ではpH5.0)まででありうる。賦形剤、担体、又は安定剤の使用により組み換えタンパク質の塩類が形成されうることは理解されるであろう。
ポリペプチド投与の手段は公知の方法、例えば局所投与、静脈内、腹膜内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、又は病巣内経路による注射又は注入に従って、または以下に記載の徐放性システムによるものである。ポリペプチドは、注入によって又は大量瞬時(ボーラス)投与によって連続的に投与されてもよい。
典型的に創傷治癒のために、組み換えタンパク質は部位特異的運搬用に調製される。局所に適応される場合、組み換えタンパク質は担体及び/又はアジュバントなどの他の成分と適切に組み合わされる。前記の他の成分の性質に制限はないが、ただし意図する投与のために効果的かつ薬学的に受容可能でなければならず、組成物の活性成分の活性を有意に分解することができないものである。精製されたコラーゲンの有無にかかわらず、適切な溶媒の例には、軟膏、クリーム、ゲル、噴霧又は懸濁液が含まれる。また、組成物は、場合によって液体又は半流動体形態で、滅菌包帯、経皮パッチ、絆創膏及び包帯にしみ込ませてもよい。
【0057】
ゲル製剤を得るため、液体組成物に調製される組み換えタンパク質は、有効量の水溶性多糖類又は合成ポリマー、例としてポリエチレングリコールと混合して、適切な粘性のゲルを形成して、局所に適応してもよい。使われうる多糖類には、例えば、エーテル化したセルロース誘導体などのセルロース誘導体、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース;澱粉及び分画された澱粉;寒天;アルギン酸及びアルギナート;アラビアゴム;プルラン;アガロース;カラギーナン;デキストラン;デキストリン;フルクタン;イヌリン;マンナン;キシラン;アラビナン;キトサン;グリコーゲン;グルカン;及び、合成バイオポリマー;並びに、キサンタンガムなどのガム;ガーゴム;ローカストビーンガム;アラビアゴム;トラガカントゴム;及び、インドゴム;及び、その誘導体及び混合物が含まれる。本発明のある実施態様では、本明細書中のゲル化剤は、例えば、生物系に不活性、非中毒性、調製がしやすく、及び/又はあまり流れやすくないか粘性がなくて、その中に含まれる組み換えタンパク質を不安定にしないものである。
【0058】
本発明のある実施態様では、多糖は、エーテル化されたセルロース誘導体であって、他の実施態様では、十分に限定され、精製され、USPに列挙されるもの、例えばメチルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース誘導体、例として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースである。一実施態様では、メチルセルロースが多糖である。
ゲル化のために有用なポリエチレングリコールは、一般的に、適当な粘性を得るために低分子量と高分子量のポリエチレングリコールの混合物である。この目的のために、例えば、分子量400〜600のポリエチレングリコールと分子量1500のポリエチレングリコールとの混合物は、ペーストを得るために適切な比率で混合される場合に有効である。
【0059】
多糖類及びポリエチレングリコールに用いる「水溶性」なる用語はコロイド溶液及び分散液を含むことを意味する。通常、セルロース誘導体の溶解性はエーテル基の置換の程度で決定され、本明細書において有用な安定化誘導体は誘導体を水溶性にするためにセルロース鎖のアンヒドログルコース単位当たりの該エーテル基を十分な量有しなければならない。一般的に、アンヒドログルコース単位当たり少なくとも0.35のエーテル基のエーテル置換の程度が十分である。さらに、セルロース誘導体は、アルカリ金属塩、例えばLi、Na、K又はCs塩類の形態であってもよい。
メチルセルロースがゲルに用いられる場合、ゲルの例えばおよそ2〜5%、又はおよそ3%、またはおよそ4%又はおよそ5%を含み、組み換えタンパク質は1mlのゲルにつきおよそ300〜1000mgの量で存在する。
【0060】
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 18th edition, Osol, A. Ed. (1995)において開示される。また、Johnson et al., Nat. Med., 2:795-799 (1996);Yasuda, Biomed. Ther., 27:1221-1223 (1993);Hora et al., Bio/Technology, 8:755-758 (1990);Cleland, "Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems," in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell and Newman, eds, (Plenum Press: New York, 1995), pp. 439-462;国際公開97/03692、国際公開96/40072、国際公開96/07399;及び、米国特許第5654010号を参照のこと。
【0061】
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、本発明のポリペプチドを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT
TM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、ポリ-乳酸-グリコール酸(PLGA)ポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に曝露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
また、徐放性ポリペプチド組成物はリポソーマル封入のポリペプチドを含む。タンパク質を含有するリポソームは、当然公知の方法によって調製される。DE3218121;Epstein et al., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688-3692;Hwang et al., (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 40304034;欧州特許第52322号;欧州特許第36676号;欧州特許第88046号;欧州特許第143949号;欧州特許第142641号;日本特許出願第83-118008号;米国特許第4485045号および同第4544545号;及び、欧州特許第102324号。通常、リポソームは、脂質含有量がおよそ30モルより大きい小(およそ200〜800オングストローム)単層タイプのものである。選択した割合である%コレステロールはポリペプチドによる最も有効な治療のために調製される。
【0062】
治療的に使用される組み換えタンパク質の有効量は、例えば、治療的目的、投与の手段および患者の状態に依存するであろう。したがって、最も有益な治療効果を得るために必要とされる通りに治療専門家が用量を滴定して、投与経路を変更することが必要であろう。代表的な1日の用量は、前述の因子に応じて、およそ1μg/kgから最高10mg/kg以上まで変動するかもしれない。典型的に、所望の効果を達成する用量に達するまで、臨床医はポリペプチドを投与するであろう。また、患者は、臨床医の指導の下にポリペプチドを投与してもよい。この治療の進行は常法のアッセイによって容易にモニターされる。
【0063】
以下の実施例は例示として示すものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1:大腸菌において発現した組み換えヒトVEGFの可溶化と再折り畳み
方法
VEGF
165発現のためのプラスミド− プラスミドpVEGF171を大腸菌周辺質におけるヒトVEGF
165の発現のために設定した(例えばLeung等, (1989) Science, 246:1306-1309を参照)。VEGFコード配列の転写は、アルカリホスファターゼ(AP)プロモーターの厳格なコントロール下にあるのに対して(例えばKikuchi等, (1981) Nucleic Acids Research, 9:5671-8を参照)、翻訳開始に必要な配列はシャイン-ダルガーノ領域にある(例えばYanofsky等, (1981) Nucleic Acids Research, 9:6647-68を参照)。VEGFコード配列は、その後の大腸菌周辺質への分泌のために細菌性耐熱性毒素II(STII)シグナル配列の下流に融合した(例えばLee等, (1983) Infect. Immun. 42:264-8;及びPicken等, (1983) Infect. Immun. 42:269-75を参照)。STIIシグナル配列のコドン修飾により翻訳レベルが調節され、その結果、周辺質におけるVEGFが最適レベルに集積した(例えばSimmons and Yansura, (1996) Nature Biotechnoloy, 14:629-34を参照)。転写終結区に対するラムダ(例えばScholtissek and Grosse, (1987) Nucleic Acids Research 15:3185を参照)はVEGF翻訳終止コドンの下流に位置した。複製起点と、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性遺伝子は、プラスミドpBR322から得た。例えば、Bolivar等, (1977) Gene 2:95-113を参照。
【0065】
細胞均質化と屈折小体の調製− 組み換えタンパク質を生産する大腸菌細胞の全細胞ブロスを、マイクロフルイダイザー又はNiro Soaviにて8000psidより大きい圧力をかけてホモジナイズする。ホモジネートを、160mM MgSO
4、0.0375のデキストラン硫酸および1%トリトンX-100にて1:1二希釈し、遠心分離法(BTUX centrifuge, Alfa Laval, Sweden)にてペレットを回収する。
【0066】
可溶化および再折り畳み− ペレット(例えば1g)を、4容量(例えば4ml)の可溶化バッファ:1M 尿素/300mM アルギニン、10mM トリス又はCHES、5mM EDTA、pH11、終濃度(4L/kgペレット)に懸濁する。懸濁液は、室温(15〜30℃)で1〜2時間かけて完全に混合される。1容量の可溶化バッファ当たり3容量(1:4v/v)のバッファを添加して、その結果再折り畳みバッファの終濃度を1M 尿素、15mM システイン、0.5〜2mM DTT、100mM アルギニン、10mM トリス又はCHES、5mM EDTA、pH9〜10として、再折り畳みを開始させた。混合物は、一定の質量移動係数k
La(例えば、空気の場合、2.5L管k
La=0.004〜0.01分
−1で散布し、散布速度は0.3〜3cc/分/Lであり、混合速度は200〜400rpmである)で空気又は酸素を添加しながら撹拌する。再折り畳みの時間経過については
図1を参照のこと。場合によって、6時間後に空気の代わりに窒素(例えば、2.5Lタンクの場合0.3〜3cc/分/L)を添加して再折り畳みバッファ中でVEGFを安定化してもよい。
図7を参照のこと。再折り畳みは、SDS-PAGE、陽イオン交換HPLC及びrpHPLCクロマトグラフィ、及び/又はヘパリンHPLCにてモニターされる。
低レベルの変性剤と還元剤を含有する高いpHのバッファ中で再折り畳みさせることによって、回収したVEGFダイマーの収率を保ったまま、工程の体積(5-倍)を有意に低減される。この方法は他の組み換えタンパク質、例えば他の増殖因子の再折り畳みに適用できると予想される。
【0067】
実施例II:大腸菌において発現した組み換えヒトVEGFの一工程の可溶化と再折り畳み
可溶化および再折り畳み− ペレットを、1kgの細胞ペレット当たり10〜39リットル容量の再折り畳みバッファに懸濁する(この場合「組み合わせ緩衝溶液」と称する)。このとき組み合わせ緩衝溶液は1M 尿素、15mM システイン、0.5又は2mM DTT、100mM アルギニン、10mM トリス又はCHES、5mM EDTA、pH9.5〜10.5の終濃度を含有する。再折り畳み緩衝溶液の尿素及びアルギニン添加の効果については
図6を参照のこと。
図6は、室温で、pH9.5、室温、15時間、この実施例に記載のように、1-工程のペレット再折り畳み(組み合わせ緩衝溶液)の結果を示す。変性剤濃度は以下のように変える。(1) 1M 尿素および100mM アルギニン;(2) 1M 尿素(及び0mM アルギニン);(3) 2M 尿素(及び0mM アルギニン)、一方すべての他のバッファ構成成分(例えばトリス又はCHES、DTTなど)は同じ濃度のままにする。これらから抽出されるVEGF力価は、陽イオン交換HPLCアッセイによって測定するところ同等である。
図6は、rpHPLCプロファイルがアルギニンの存在の有無にかかわらず同等であることを示す。
【0068】
可溶化及び再折り畳みのインキュベートは、室温で3〜24時間行い、質量移動係数k
La=0.004〜0.01分
−1(例えば、海洋型の羽根車を有する2.5L管の場合、空気散布速度は0.3〜10cc/分/L、又は0.3〜1cc/分/L、又は1cc/分/L、又は25cc/分/Lであり、混合速度は200〜400rpmであろう)で空気を散布する。再折り畳み状態に対する空気散布速度の変化の効果については
図8を参照のこと。例えば、ペレットを含有するVEGFは、1:39(バッファLに対するペレットkg)の比率でpH10の組み合わせ緩衝溶液に添加した。3つの2.5Lの反応タンクを調製し、混合速度および空気散布速度は(a) 0.004、(b) 0.01、(c) 0.1分
−1のk
Laを達成するためにそれぞれについて変化させた。各々のタンクの試験した混合速度は314rpmであったのに対して、空気散布の範囲は1cc/L/分から25cc/L/分であった。収率および生成物の品質について経時的に反応をモニターした。
図8に示される複数のrpHPLCプロファイルは、12時間後に結果として生じる折り畳まれたVEGFが同程度の生成物品質であることを示す。場合によって、インキュベートは室温でおよそ48時間まで行ってもよい。場合によって、6時間後に空気の代わりに同じ散布速度及び混合速度の窒素を添加して再折り畳みバッファ中でVEGFを安定化してもよい。空気(例えば2.5Lのタンクに対してk
La=0.004分
−1又は0.3cc/分/L)がある場合の、2工程のペレット再折り畳み(実施例Iに記載のもの)から得た結果を示す
図7を参照のこと。この
図7では、6時間目にモノマーピークが減少している(したがって、再折り畳み反応が実質的に同程度であることを示す)。空気散布は48時間までN
2と置き換えられる(例えばk
La=0.004分
−1)。
図7に示すように、rpHPLC線に示されるように、物質は安定している。再折り畳みは、SDS-PAGE、陽イオン交換HPLC及びrpHPLCクロマトグラフィカラム、及び/又はヘパリンHPLCにてモニターされる。
【0069】
実施例III:組み換えタンパク質の非ペレット再折り畳み
組み換えタンパク質を生産する大腸菌全細胞ブロスを、モデル15M研究室ホモジナイザーGaulin15M(少量)又はM3(大量)(Gaulin Corporation, Everett, MA)にてホモジナイズし、1容量のホモジネート当たり再折り畳みバッファにて1:4(v/v)に希釈し、質量移動係数k
La=0.004〜0.01分
−1(例えば、海洋型の羽根車を有する2.5L管の場合、空気散布速度は0.3〜3cc/分/L、又は0.3〜1cc/分/L、又は1cc/分/L、又は3cc/分/Lであり、混合速度は200〜400rpmであろう)で空気を散布する。再折り畳みバッファは、1M 尿素、15mM システイン、2mM DTT、100mM アルギニン、10mM トリス又はCHES、5mM EDTA、pH9〜10の終濃度を含有する。再折り畳みインキュベートは室温で3〜24時間行う。場合によって、3時間の再折り畳みインキュベートの後に空気の代わりに窒素を添加して再折り畳みバッファ中でVEGFを安定化させてもよい。折畳みは、陽イオン交換HPLC、rpHPLCクロマトグラフィおよび/またはヘパリンHPLCによってモニターされる。
【0070】
実施例IV:再折り畳みの後の組み換えヒトVEGF(rhVEGF)の精製
精製: 再折り畳み貯蔵物を、トリトンX-100を1%の終濃度まで加え、pH9に調整して、その後遠心分離(10000g、4℃で20分間)することによって浄化する。次いで、上清を濾過して(キューノーデプスフィルター+0.22又は0.45μメンブランフィルター)、pH9及び伝導率10mS/cm未満で混合様式樹脂(CaptoMMC
TM、GE Healthcare, Piscataway, NJ)上に捕獲(キャプチャー)する。場合によって、再折り畳み貯蔵物を、平衡化添加バッファにて少なくとも1:5に希釈し、次いで、濾過して(キューノーデプスフィルター+0.22又は0.45μメンブランフィルター)、pH9及び伝導率10mS/cm未満で混合様式樹脂(CaptoMMC
TM、GE Healthcare, Piscataway, NJ)上に捕獲する。充填したカラムを25mM HEPES pH9にて平衡化して、試料をカラムに添加する。pH6〜9(例えばpH7.5)の1M アルギニン/25mM HEPESにて均一濃度でMMCカラムからVEGFを溶出させる。
図2を参照のこと。
【0071】
CaptoMMC
TM貯蔵物は、0.1N 水酸化ナトリウムにてpH7.5に調整し、20mS/cm伝導率にWFIにて希釈し、その後SP-セファロースHPカラム(50mM HEPES pH7.5にて平衡化したもの)に添加する。50mM HEPES/0−1.2M 酢酸ナトリウム pH7.5からなる直線的塩濃度勾配を用いて10〜20カラム容量(例えば15カラム容量)に対してVEGFを溶出し、分画を回収する(1カラム容量)。280nmで最も高い吸光度(42mS/cm以下でOD最大)を有する分画は、典型的に、90%より多くのVEGFを含み、更なる工程のために貯蔵する。
図3を参照のこと。
第三のクロマトグラフィ工程は疎水性樹脂(例えば、Hi Propyl、J.T. Baker、フェニルセファロース高速(low sub)、GE Healthcare, Piscataway, NJ)を含む。SP-セファロースHP溶出貯蔵物は、酢酸ナトリウム又は硫酸ナトリウムを用いて50mS/cm伝導率に調整し、その後平衡化したカラム(50mM HEPES、1.2M 酢酸ナトリウム、pH7.5)に添加する。
図4を参照のこと。50mM HEPES、pH7.5に均一濃度でVEGFを溶出し、宿主細胞不純物および可溶性集合体の残余について分析する。分画を回収し、適切に折り畳まれたVEGFを含有するものを貯蔵する。この折り畳みは本明細書中に記載のアッセイによって測定する。場合によって、例えば、第二疎水性樹脂(例えばフェニルTSK)又はイオン交換樹脂を用いて更なるクロマトグラフィ工程を行う。
【0072】
限外濾過/ダイアフィルトレーション− プールしたVEGFを研究室規模のTFFシステムの5kD再生セルロースメンブレンにて、6g/L(UF1)の濃度に限外濾過する。試料は、TFFシステムによって5mM コハク酸ナトリウムと7−14DV(Diavolume)にて10g/Lにダイアフィルトレートし、次いで5g/Lで製剤化して−80℃で貯蔵する。使用する製剤バッファは、5mM コハク酸ナトリウム/275mM トレハロース無水/0.01%ポリソルベート20/pH5.0であった。
【0073】
実施例V:再折り畳み後の組み換えヒトVEGF(rhVEGF)の精製
精製: 再折り畳み貯蔵物を、トリトンX-100を1%の終濃度まで加え、pH8.5〜9.5(例えばpH8.7)に調整して、25〜30℃で1〜10時間保ち、その後遠心分離することによって浄化する。大きな密度分子を除去するために遠心分離(10000g、4℃で20分間)にて処理した後、回収された液体(centrate)を一連のデプスフィルターに通し、無菌のガード(0.22又は0.45μメンブラン)フィルターに通して微粒子を除去する。次いで、pH8.7及び伝導率10mS/cm未満で混合様式樹脂(CaptoMMC
TM、GE Healthcare, Piscataway, NJ)上にrhVEGFを捕獲(キャプチャー)する。充填したカラムは25mM CHES pH8.7にて平衡化して、カラムに試料を添加する。pH6〜9(例えばpH7.5)の0.9M L-アルギニンHCl/25mM HEPESにて均一濃度でMMCカラムからVEGFを溶出させる。
【0074】
CaptoMMC
TM貯蔵物は、0.1N 水酸化ナトリウムにてpH7.5に調整し、20mS/cm伝導率にWFIにて希釈し、その後SP-セファロース高性能カラム(25mM HEPES pH7.5にて平衡化したもの)に添加する。50mM HEPES/0−1.2M 酢酸ナトリウム pH7.5からなる直線的塩濃度勾配を用いて10〜20カラム容量(例えば15カラム容量)に対してVEGFを溶出し、分画を回収する(1カラム容量)。280nmで最も高い吸光度(42mS/cm以下でOD最大)を有する分画は、典型的に、90%より多くのVEGFを含み、更なる工程のために貯蔵する。第三のクロマトグラフィ工程は疎水性樹脂(例えば、Hi Propyl、J.T. Baker、フェニルセファロース高速(low sub)、GE Healthcare, Piscataway, NJ)を含む。SP-セファロースHP溶出貯蔵物は、平衡化したHICカラム(50mM HEPES、0.75M 酢酸ナトリウム、pH7.5)に直接添加する。
図5を参照のこと。50mM HEPES、pH7.5に均一濃度でVEGFを溶出し、宿主細胞不純物および可溶性集合体の残余について分析する。分画を回収し、適切に折り畳まれたVEGFを含有するものを貯蔵する。この折り畳みは本明細書中に記載のアッセイによって測定する。場合によって、例えば、第二疎水性樹脂(例えばフェニルTSK)又はイオン交換樹脂を用いて更なるクロマトグラフィ工程を行い、さらに宿主不純物を取り除く。
【0075】
限外濾過/ダイアフィルトレーション− プールしたVEGFを市販のTFFシステム(Pellicon 2カセット、Millipore, Billerica, MA)の5kD再生セルロースメンブレンにて、10g/Lの濃度に限外濾過し、その後製剤バッファに7−14ダイア量(diavolume)(例えば10DV)にてダイアフィルターしてもよい。最終調製物は、5mM コハク酸ナトリウム/275mM トレハロース無水/0.01%ポリソルベート20/pH5.0に5g/LのVEGFを含有する溶液とし、それを−80℃で貯蔵することができる。
【0076】
実施例VI:折り畳まれた及び/又は精製した組み換えタンパク質を測定するためのアッセイ
本明細書中に記載の方法及び工程では、最終純度及び/又は活性は、ペプチドマッピング、ジスルフィドマッピング、SDS-PAGE(還元及び非還元)、円偏向二色性、リムルスアメーバ様細胞可溶化液(LAL)、陽イオン交換HPLC、ヘパリンHPLC(例えば、ヘパリンHPLCを用いてVEGFダイマー濃度及び誤って折り畳まれた(misfolded)種のレベルを測定してもよい)、逆相(rp)HPLCクロマトグラフィ(例えば、還元した試料のrpHPLCを用いて全VEGF濃度を測定する一方で、天然の試料のrpHPLCは再び折り畳まれたVEGFの質を評価することができる)、レセプター結合(例えば、VEGFについて、例えばKDRレセプター結合-Bioanalytic R&D、及び/又はFlt1レセプター結合)、SEC分析、細胞アッセイ、HUVEC力価アッセイ、VEGF抗体によるELISA、質量スペクトル分析などによって評価してもよい。
【0077】
総VEGF発現を決定するためのアッセイ
(1) 還元した試料のrpHPLC− 発現されたVEGFの量は、C18カラム(Jupiter C18カラム(4.6×250mm、5ミクロン、Phenomenex, Torrance, CAより)の逆相HPLCアッセイを用いて測定する。カラムは、0.22%のトリフルオロ酢酸にて平衡化し、0.2%トリフルオロ酢酸を含有する25%〜45%のアセトニトリルの直線的濃度勾配を用いて1mL/分の流速にて30分で溶出させる。280nmで溶出をモニターする。試料を処理して、グアニジンおよびDTTにおいて十分に還元して、注射する。還元したVEGFタンパク質は26分の辺りで溶出し、ピーク領域を用いて既知の標準曲線の試料における総VEGFの量を算出する。
【0078】
再び折り畳まれたVEGFについてのアッセイ
(1) 陽イオン交換HPLCアッセイ− 適切に再び折り畳まれたVEGFダイマーの量は、分析用陽イオン交換カラム、例えばSP-5PWカラム(TSKゲルSP-5PW、7.5×75mm、10ミクロン、Tosoh Biosciences LLC, Japanより)を用いて測定する。カラムは、50mM リン酸ナトリウムpH7.5にて平衡化する。1mL/分の流速では、カラムは、0から2Mの塩化ナトリウムの直線的濃度勾配を含む平衡化バッファを用いて60分にわたって溶出される。280nm又は214nmで溶出をモニターする。一般的に、大多数のタンパク質は始めの30分に溶出され、VEGFは40分の辺りで溶出される。
図9を参照のこと。
【0079】
(2) rp-HPLCアッセイ− 適切に再び折り畳まれたVEGFの質は、Zorbax 300SB-C8カラム(4.6×150mm、3.5ミクロン、Agilent Technologies, Santa Clara, CAより)を用いて測定する。カラムは、0.1%のトリフルオロ酢酸にて平衡化し、0.08%トリフルオロ酢酸を含有する0%〜50%のアセトニトリルの直線的濃度勾配を用いて1mL/分の流速にて溶出させる。214nmで溶出をモニターする。一般的に、VEGFは35分の辺りで溶出され、ピークのプロファイルはメインピークとの相対で末端疎水性種のパーセント含量について評価する。折り畳まれていないVEGFモノマーは2、3分後に溶出される。
【0080】
(3) ヘパリン-結合HPLCアッセイ− 適切に再び折り畳まれたVEGFの質および量は、固定したヘパリンを含有するカラムを用いて測定する。カラムヘパリン-5PW(7.5×75mm、10ミクロン、TSKゲル、Tosoh Biosciences LLC, Japanより)は、0.15M 塩化ナトリウムを含有する10mM リン酸ナトリウム、pH7.4にて平衡化する。1mL/分の流速では、カラムは、0.15Mから1.6Mの塩化ナトリウムの直線的濃度勾配を含む平衡化バッファを用いて20分にわたって溶出される。いくつかのアッセイにおいて、溶出は16分にで行う。280nmで溶出をモニターする。一般的に、大多数のタンパク質は空隙容量に溶出され、3種類のVEGFは識別されうる。最も高い親和性で、最後に溶出される種は、適切に折り畳まれたVEGFとして同定され、「ピーク3のVEGF」として同定されることが多い。
【0081】
本明細書に記載の寄託、実施例及び実施態様は例示的な目的のみであり、この見地の様々な修飾及び変更は当業者に示唆されており、本出願の精神及び権限と添付の特許請求の範囲内に包含されることは理解されるものである。本明細書において引用されるすべての刊行物、参考文献、特許および特許出願は、すべての目的のために出典明記によりその全体がここに援用される。