(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
計測流路の上流側と下流側とに離して配置された1対の超音波送受波器の間で超音波を送受波して、その超音波の伝搬時間に基づいて、前記計測流路を通過するガスの流量を計測する超音波流量計において、
遮断弁の開弁時に予め設定された異常事象が検知された場合に前記遮断弁を閉弁する開弁時異常検出手段と、
前記遮断弁の閉弁時に前記超音波送受波器に受波された超音波の波高が、予め設定された基準波高未満である場合に、前記超音波送受波器に異常有りと判定する閉弁時異常検出手段を備えたことを特徴とする超音波流量計。
前記開弁時異常検出手段は、前記超音波送受波器に受波された超音波の波高が前記基準波高未満であるという前記異常事象と、前記流量の計測結果が予め定めた基準流量以上であるという前記異常事象との何れかの前記異常事象を検知した場合に前記遮断弁を閉弁するように構成され、
前記閉弁時異常検出手段は、超音波の波高が前記基準波高未満である場合に、前記超音波送受波器の異常を意味する第1の判定結果を出す一方、前記超音波の波高が前記基準波高以上である場合に、前記流量の異常を意味する第2の判定結果を出すように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波送受波器で受波される超音波の波高は、
図6に示すように、ガスの流量が大きくなるに従って低下する。この為、超音波送受波器に異常は無くても、ガスが極めて大量に流れた場合には、受信波の波高が基準波高未満となって遮断弁が復帰不可能になる虞があった。即ち、本来は、継続使用しても問題のない超音波流量計であるにも拘わらず、交換を強いられる虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、超音波送受波器の異常の有無を正確に判別することが可能な超音波流量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る超音波流量計は、計測流路の上流側と下流側とに離して配置された1対の超音波送受波器の間で超音波を送受波して、その超音波の伝搬時間に基づいて、計測流路を通過するガスの流量を計測する超音波流量計において、遮断弁の開弁時に予め設定された異常事象が検知された場合に遮断弁を閉弁する開弁時異常検出手段と、遮断弁の閉弁時に超音波送受波器に受波された超音波の波高が、予め設定された基準波高未満である場合に、超音波送受波器に異常有りと判定する閉弁時異常検出手段を備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の超音波流量計において、開弁時異常検出手段は、超音波送受波器に受波された超音波の波高が基準波高未満であるという異常事象と、流量の計測結果が予め定めた基準流量以上であるという異常事象との何れかの異常事象を検知した場合に遮断弁を閉弁するように構成され、閉弁時異常検出手段は、超音波の波高が基準波高未満である場合に、超音波送受波器の異常を意味する第1の判定結果を出す一方、超音波の波高が基準波高以上である場合に、流量の異常を意味する第2の判定結果を出すように構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の超音波流量計において、遮断弁を遮断状態から復帰させるための復帰操作部と、閉弁時異常検出手段から第1の判定結果を受けて復帰操作部の操作による遮断弁の復帰を禁止する一方、第2の判定結果を受けて復帰操作部の操作による遮断弁の復帰を許可する復帰可否切替手段を備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の超音波流量計において、超音波送受波器にて受波された超音波を増幅する増幅部と、増幅後の超音波に含まれる特定のピークの波高が、予め設定された波高になるように増幅部における増幅度を調整する増幅度調整手段とを備え、閉弁時異常検出手段は、増幅度を超音波の波高の代用値とし、その増幅度が予め定められた基準増幅度以上である場合に、超音波送受波器に異常有りと判定するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1及び4の発明]
本発明の超音波流量計によれば、遮断弁を閉弁して計測流路におけるガス流量をゼロにした状態で超音波送受波器間で超音波の送受波を行い、このときの受信波の波高を予め定められた基準波高と比較して超音波送受波器の異常の有無を判別する。即ち、ガスの流量の影響を排除した波高を検知することができるから、超音波送受波器の異常の有無を正確に判別することができる。しかも、わざわざ正常なガス供給を中断して超音波送受波器の検査を行うのではなく、何らかの異常事象が検知されて遮断弁が閉弁されたという状況を活用して、超音波送受波器の検査を行うから、超音波送受波器の検査のために消費者が新たな不便を強いられることを防ぐことができる。
【0012】
ここで、超音波センサに受波された超音波(特定のピーク)を直接、基準波高と比較してもよいが、超音波流量計では、通常、受波された超音波における特定のピークが所定の波高になるように増幅度を変更しているから、その増幅度を、超音波の波高の代用値とし、増幅度が予め設定された基準増幅度以上になったことを以て、超音波送受波器に異常有りと判定する構成にしてもよい(請求項4の発明)。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、開弁時異常検出手段は、超音波送受波器に受波された超音波の波高が基準波高未満である異常事象、又は、ガスの流量測定値が予め定めた基準流量以上であるという異常事象を検知した場合に遮断弁を閉弁するように構成されている。そして、閉弁時異常検出手段は、遮断弁によってガスの供給が遮断された状態で超音波送受波器に受波された超音波の波高が、基準波高未満である場合に、超音波送受波器の異常を意味する第1の判定結果を出し、超音波の波高が基準波高以上である場合に、流量の異常を意味する第2の判定結果を出すから、遮断弁の遮断原因が、超音波送受波器の異常によるものか、流量の異常によるものかを区別して、原因毎に異なる対処をすることが可能になる。例えば、判定結果に応じて表示部の表示内容や、ランプの点滅態様や、警告音等を異ならせたりすることができる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、閉弁時異常検出手段から第2の判定結果を受けた場合、即ち、遮断弁の遮断原因が「流量の異常」である場合は、復帰操作部の操作によって遮断弁の復帰が可能になり、超音波流量計を継続使用することが可能になる。一方、閉弁時異常検出手段から第1の判定結果を受けた場合、即ち、遮断弁の遮断原因が「超音波送受波器の異常」である場合には、そのような超音波流量計が継続使用されることは好ましくないから、遮断弁の復帰が禁止される。つまり、計測精度上の問題が生じ得る超音波流量計の使用を確実に禁止することができる一方で、計測精度上の問題が無い超音波流量計が不当に使用禁止となることを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した超音波流量計に係る一実施形態を、
図1〜
図6に基づいて説明する。本実施形態の超音波流量計10は、例えば、都市ガスメータであって、都市ガスのガス配管(図示せず)の途中に接続されたメータケース20を備えている。
【0017】
メータケース20は、ガス配管に接続される入口管21と出口管22とを備えており、それらが計測管収容室23と連通している。
【0018】
計測管収容室23は、その長手方向(
図1の左右方向)の中央部に設けられた隔壁24によって2つの部屋に隔絶されている。即ち、隔壁24は、計測管収容室23を上流側の流入部屋23Aと下流側の流出部屋23Bとに区画している。流入部屋23Aは入口管21と連通しており、流出部屋23Bは出口管22と連通している。また、隔壁24を断面円形の計測管25(本発明の「計測流路」に相当する)が貫通して、その両端部の開口が流入部屋23Aと流出部屋23Bとに配置されている。
【0019】
流入部屋23A及び流出部屋23Bのうち、計測管25の延長線上にはそれぞれ超音波送受波器30,30が配設されている。
【0020】
以下、1対の超音波送受波器30,30を区別する場合は、「上流側の超音波送受波器30」、「下流側の超音波送受波器30」という。
【0021】
入口管21及び出口管22にガス配管が接続されると、
図1の点線矢印に示すように、上流側の入口管21から流入部屋23Aにガスが流れ込み、計測管25を通過し、流出部屋23Bを経て出口管22からメータケース20の外部に排出される。
【0022】
また、メータケース20のうち計測管収容室23より上流側には、遮断弁26が設けられている。遮断弁26は、常には開放状態になっており、何らかの異常事象が検知された場合に閉塞状態になって、超音波流量計10より下流側へのガス供給を遮断する。
【0023】
図2には、超音波流量計10のブロック図が示されている。コントロール部41は、送受切替スイッチ45,46を制御して、まずは
図2に示すように、上流側の超音波送受波器30を送波器駆動回路42に接続しかつ、下流側の超音波送受波器30を受信波検知部43に接続した状態にしてから、送波器駆動回路42及びクロックカウンタ44に送波指令信号を出力する。すると、送波器駆動回路42が上流側の超音波送受波器30を駆動し、超音波が上流側の超音波送受波器30から下流側の超音波送受波器30に向けて発信されると同時に、クロックカウンタ44がクロックパルスに基づいて時間計測を開始する。
【0024】
上流側の超音波送受波器30から発信された超音波は、下流側の超音波送受波器30にて受波される。超音波送受波器30にて受波された超音波W(以下、適宜「受信波W」という)は受信波検知部43に入力し、受信波検知部43は、受信波Wを検知すると受信波検知信号をクロックカウンタ44に出力する。クロックカウンタ44は、受信波検知信号の入力によってカウントを停止して、そのカウント値(即ち、超音波の伝搬時間)をコントロール部41に出力し、0リセットされる。
【0025】
コントロール部41にカウント値が入力すると、送波器駆動回路42は、上流側の超音波送受波器30を停止し、次にコントロール部41から出力される送波指令信号の待ち状態になる。また、この間にコントロール部41が送受切替スイッチ45,46を制御して、送波器駆動回路42を下流側の超音波送受波器30に接続し、受信波検知部43を上流側の超音波送受波器30に接続する。
【0026】
次いで、コントロール部41は、送波器駆動回路42に送波指令信号を出力する。これにより、今度は、超音波の送信方向を逆向きにして上記した場合と同様の処理が行われる。そして、コントロール部41において、ガスの流れに対する順方向と逆方向の両方向で計測されたクロックカウンタ44のカウント値の逆数差(伝搬時間の逆数差)が求められ、これに基づいて計測管25を流れるガスの流速が算出される。また、この流速に、計測管25の断面積を乗じて流量が算出される。
【0027】
受信波検知部43では、超音波送受波器30にて受波された受信波W(
図3の点線で示した受信波W)を増幅する。そして、増幅後の超音波W(
図3の実線で示した受信波W)に含まれる複数のピークのうち、予め定められたスレッショルドレベル(電圧レベル)を最初に越えた第n番目のピークPn(本実施形態では、第3ピークP3)の直後のゼロクロス点を検知したときに、受信波検知信号をクロックカウンタ44に出力する。受信波検知部43は、本発明の「増幅部」に相当する。
【0028】
受信波Wに含まれる第nピークPnは、以下のようにして特定される。即ち、
図3に示すように、予め複数のスレッショルドレベル(電圧レベル)Lv1〜Lv4が定められており、増幅後の受信波Wに含まれるピークが、その前のピークが越えていないスレッショルドレベルのうち、小さい方から所定数を一気に越えたときに、その一気に越えたピークを第nピークPnと特定する。
【0029】
具体的には、例えば、
図3に示す増幅後の受信波Wにおいて、第1ピークP1は、最小のスレッショルドレベルLv1のみを越えており、第3ピークP3は、第1ピークP1が越えていない3つのスレッショルドレベルLv2〜Lv4を一気に越えている。受信波検知部43は、これら3つのスレッショルドレベルLv2〜Lv4を一気に越えたピークを第3ピークP3として特定し、その第3ピークP3の直後のゼロクロス点を検知して受信波検知信号を出力する。なお、第nピークの特定方法は、公知(本願出願人が既に出願し特許された特許第4511257号公報を参照)であるので、詳細な説明は省略する。
【0030】
コントロール部41は、受信波検知部43に増幅度選択信号を出力し、増幅後の受信波Wに含まれる特定のピークの波高が予め設定された波高になるように増幅度を変更する。増幅度は、例えば、通常の流量計測の合間に定期的(例えば、1分間隔)に更新される。
【0031】
増幅度の更新は、
図4に示す増幅度更新処理に従って行われる。まずは、最小の増幅度で受信波Wを増幅する(S11)。そして、増幅された受信波Wによって受信波検知に成功したか否かを判定する(S12)。
【0032】
例えば、受信波Wに含まれる複数のピークの中で、スレッショルドレベルLv4を最初に越えたピークが、第3ピークP3(本発明の「特定のピーク」に相当する)であるか否かを判定し、スレッショルドレベルLv4を最初に越えたピークが第3ピークP3であった場合には「受信波検知の成功」と判定する。なお、本発明に係る「特定のピーク」は、第3ピークP3に限定するものではなく、その他のピークであってもよい。
【0033】
増幅度が小さく、受信波検知に成功しなかった場合(S12でNo)には、増幅度を1段階上げて(S13)、再度、受信波Wの増幅を行い、受信波検知(S12)を試みる。受信波検知に成功するまで増幅度を1段階ずつ上げていき、受信波検知に成功した場合(S12でYes)、即ち、第3ピークP3がスレッショルドレベルLv4を最初に超えたピークとなった場合に、その増幅度(受信波Wを検知可能な最低増幅度)を受信波検知部43に記憶する(S14)。
【0034】
上記した増幅度更新処理(
図4参照)は、ガスの流れに沿った順方向で超音波を送受波した場合と、ガスの流れに逆行した逆方向で超音波を送受波した場合とでそれぞれ行われ、順方向用の増幅度と逆方向用の増幅度とが決定される。そして、少なくとも次回の増幅度更新時(例えば、1分後)までは、この増幅度で受信波Wを増幅して流量計測を行う。なお、増幅度更新処理(
図4参照)を行っているときのコントロール部41は、本発明の「増幅度変更手段」に相当する。
【0035】
さて、コントロール部41は、遮断弁26の開弁時に、以下のような異常事象を検知した場合に遮断弁26を閉弁して、ガスの供給を遮断する。例えば、ホース外れ等によって流量の計測結果が予め設定された基準流量以上になった「流量異常」を検知した場合、又は、図示しない感震器が地震等の「異常振動」を検知した場合、又は、超音波送受波器30による増幅前の受信波Wの波高が予め定められた基準波高未満(
図6参照。例えば、流量がゼロのときの波高の50%未満)となった「波高異常」を検知した場合に、遮断弁26を閉弁してガスの供給を遮断する。なお、コントロール部41は、本発明の「開弁時異常検出手段」に相当する。
【0036】
また、遮断弁26の遮断方式には「復帰許可モード」と「復帰禁止モード」とが設けられている。「復帰許可モード」の遮断では、超音波流量計10に備えられた復帰ボタン27(
図2参照。本発明の「復帰操作部」に相当する)の操作によって遮断弁26を復帰させることが可能である。一方、「復帰禁止モード」の遮断では、復帰ボタン27の操作が禁止されるか操作が無効となるため、遮断弁26を復帰させることが不可能になる。つまり、「復帰許可モード」の遮断では、超音波流量計10をそのまま継続使用することが可能であるのに対し、「復帰禁止モード」の遮断では、超音波流量計10の交換が必要になる。
【0037】
上記した異常事象のうち「波高異常」は、超音波送受波器30の異常(劣化や異物の付着)が原因となっている可能性があり、超音波送受波器30の異常は、計測精度に関わる問題である。そのため、「波高異常」が検知された場合の遮断モードは、超音波流量計10の交換が必要な「復帰禁止モード」となる。これに対し、「流量異常」や「異常振動」は、計測精度に問題があるわけではないから、それらが検知された場合の遮断モードは、超音波流量計10の継続使用が可能な「復帰許可モード」の遮断となる。
【0038】
受信波Wの「波高異常」は、上述した増幅度更新処理(
図4参照)によって決定された増幅度に基づいて検知している。即ち、増幅前の受信波Wの波高が小さくなるに従って、増幅度は大きくなるから、波高の代用値としての増幅度が、予め定められた基準増幅度を越えて大きくなったことを以て、受信波の波高が基準波高未満となった「波高異常」と判定する。
【0039】
以上の点を踏まえて、異常事象が検知された場合の超音波流量計10の動作を
図5を参照しつつ説明する。上述したように遮断弁26の開弁時に、「流量異常」、「異常振動」又は「波高異常」が検知されると、遮断弁26が閉弁して、超音波流量計10より下流側へのガスの供給が遮断される。「流量異常」又は「異常振動」が検知されかつ「波高異常」が検知されていない場合、遮断弁26は「復帰許可モード」の遮断となる。従って、これら異常事象に対して適切な対処をした後で、復帰ボタン27の操作を行うことで、ガスの供給を再開させることができる。
【0040】
これに対し、「波高異常」が検知された場合には、遮断弁26が「復帰禁止モード」の遮断となる(S21)。ここで、
図6に示すように、受信波Wの波高は、ガスの流量が大きくなるに従って低下するので、「波高異常」は、超音波送受波器30が異常な場合だけでなく、極めて大量のガスが流れた場合にも発生し得る。具体的には、例えば、超音波流量計10より上流側に設けられた整圧器(図示せず)で圧力異常が発生して、超音波流量計10に対して異常な高圧でガスが供給され、しかも、超音波流量計10の出口管22に接続されたガス管が外れた場合には、計測管25を極めて大量のガスが流れる。この場合、超音波送受波器30の異常の有無に関わらず、受信波Wの波高は、基準波高未満となり得る。
【0041】
そこで、本実施形態の超音波流量計10では、異常事象が検知されて遮断弁26が閉弁された(流量がゼロになった)という状況を活用して、再度、「波高異常」の検知を行う、異常判定部47(本発明の「閉弁時異常検出手段」に相当する)を備えている。異常判定部47は、コントロール部41から「波高異常」によって遮断弁26が遮断されたことを意味する信号を受けると、異常判定部47がコントロール部41に対して測定開始信号を出力する。すると、流量がゼロの状態で、1対の超音波送受波器30,30同士の間で超音波の送受波が行われる。そして、異常判定部47は、増幅前の受信波W(特定のピーク)の波高に応じて増幅度更新処理(
図4参照)にて決定された増幅度を取得する(S22)。
【0042】
増幅前の受信波Wの波高が基準波高よりも小さかった場合、即ち、増幅度が基準増幅度よりも大きかった場合(S23でNo)には、受波側の超音波送受波器30の異常が疑われるため、異常判定部47は「超音波送受波器の異常」を意味する第1の判定結果を出し、その判定結果に基づいてコントロール部41に復帰禁止信号を出力する。コントロール部41は復帰禁止信号を受けて、「復帰禁止モード」を維持する(S24)。即ち、超音波流量計10の継続使用を禁止する。
【0043】
一方、増幅前の受信波Wの波高が予め定められた基準波高以上であった場合、即ち、増幅度更新処理によって決定された増幅度が予め定められた基準増幅度以下であった場合(S23でYes)には、超音波送受波器30の異常と認められないので、異常判定部47は「流量の異常(超音波送受波器の異常無し)」を意味する第2の判定結果を出し、その判定結果に基づいてコントロール部41に復帰許可信号を出力する。コントロール部41は復帰許可信号を受けて、遮断モードを「復帰禁止モード」から「復帰許可モード」に切り替える(S25)。この場合、流量の異常原因に対して適切に対処(整圧器の調整、ガス管の再接続)した後で、復帰ボタン27の操作を行うことで、超音波流量計10を継続使用することが可能になる。
【0044】
つまり、ガスの通常使用中に「波高異常」が検知された場合、遮断弁26は、ひとまず「復帰禁止モード」でガス供給を遮断する。その遮断状態で再度、「波高異常」が検知された場合には、超音波送受波器30に異常があることが確定するので、「復帰禁止モード」を維持し、再度「波高異常」が検知されなかった場合には、超音波送受波器30の異常が認められないとして、「復帰禁止モード」を「復帰許可モード」に切り替える。なお、コントロール部41は、本発明の「復帰可否切替手段」に相当する。
【0045】
このように本実施形態の超音波流量計10によれば、遮断弁26を閉弁して計測管25におけるガス流量をゼロにした状態で超音波送受波器30,30間で超音波の送受波を行い、このときの受信波の増幅度(波高の代用値)を予め定められた基準増幅度(基準波高の代用値)と比較して超音波送受波器30,30の異常の有無を判別する。即ち、ガスの流量の影響を排除した増幅度(波高の代用値)を検知することができるから、超音波送受波器30,30の異常の有無を正確に判別することができる。しかも、わざわざ正常なガス供給を中断して超音波送受波器30,30の検査を行うのではなく、「流量異常」、「波高異常」、「異常振動」等の異常事象が検知されて遮断弁26が閉弁されたという状況を活用して、超音波送受波器30,30の検査を行うから、超音波送受波器30,30の検査のために消費者が新たな不便を強いられることを防ぐことができる。
【0046】
また、遮断弁26の開弁時に、超音波送受波器30に受波された受信波Wの波高が基準波高未満であるという異常事象、又は、ガスの流量測定値が予め定めた基準流量以上であるという異常事象を検知した場合に、遮断弁26を閉弁してガスの供給を遮断するように構成されており、遮断弁26によってガスの供給が遮断された状態で超音波送受波器30に受波された受信波Wの波高が、基準波高未満であった場合に、「超音波送受波器に異常有り」と判定する一方、受信波Wの波高が基準波高以上であった場合に、「流量に異常有り(超音波送受波器に異常無し)」と判定するから、遮断弁26の遮断原因が、超音波送受波器30の異常によるものなのか、流量異常によるものなのかを区別して、原因毎に異なる対処をすることが可能になる。
【0047】
さらに「流量異常」や「異常振動」は、計測精度に関わる異常事象ではないから、その超音波流量計10を継続使用しても問題はなく、復帰ボタン27の操作によって遮断弁26の復帰が可能となる。一方、「超音波送受波器30の異常」は、計測精度に関わる異常事象であるから、その超音波流量計10が交換されずに継続使用されることがないように、遮断弁26の復帰を禁止する。つまり、計測精度上の問題が生じ得る超音波流量計10の使用を確実に禁止することができる一方で、計測精度上の問題が無い超音波流量計10が不当に使用禁止となることを回避することができる。
【0048】
なお、消費者に新たな不便を強いることなく超音波送受波器の検査を行うために、例えば、計測管25を迂回するバイパス流路を設けておき、「異常波高」の検知を行う際には、計測管25へのガスの流入を遮断し、バイパス流路によってガス供給を行うようにすることが考えられる。しかしながら、この場合には、超音波流量計の構造を大幅に変更(バイパス流路や流路切替弁の増設等)する必要があり、さらに、バイパス流路を悪用したガスの不正使用を防止するための対策も必要になる。これに対し、本実施形態の超音波流量計10によれば、超音波流量計10の構造自体を変更する必要はないから、上述した問題を回避することができる。
【0049】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0050】
(1)上記実施形態では、1対の超音波送受波器30,30が、計測管25の軸方向(ガスの流れに沿った方向)で向かい合わせにして配置されていたが、ガスの流れと斜めに交差する方向で向かい合わせに配置してもよいし、計測管25の内壁で1回以上、超音波を反射させて送受波するように配置してもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、受信波Wにおける第3ピークP3の波高が所定の波高(スレッショルドレベルLv4以上)になるように増幅度を変更しており、その増幅度を、受信波Wの波高の代用値としていたが、増幅前の受信波Wにおける特定のピーク(例えば、最大のピーク)の波高を、そのまま予め定められた基準波高と比較し、基準波高未満であることを以て「波高異常」とするようにしてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、受信波Wに含まれる第3ピークP3が、規定のスレッショルドレベルLv4を最初に超えたピークとなるように増幅度が決定されていたが、増幅度は、その他の条件で決定してもよい。例えば、受信波Wに含まれる特定のピーク(例えば、最大のピーク)の波高が、規定の範囲内に収まるように増幅度を決定してもよい。
【0053】
(4)ガスの通常使用中に波高異常が検知された場合の処理は、例えば、
図7に示すようにしてもよい。まずは、遮断弁26を「復帰禁止モード」で遮断し(S21)、次に、波高異常が検知されたときの流量の計測結果を取得する(S31)。流量の計測結果が基準流量未満である場合(S32でYes)には、超音波送受波器30の異常であるとして、コントロール部41に復帰禁止信号を出力し、遮断弁26の「復帰禁止モード」を維持する(S24)。
【0054】
一方、流量の計測結果が基準流量以上である場合(S32でNo)には、遮断弁26が閉じた状態で超音波の送受波を行って、以下、上記実施形態と同じ処理を行い、再度、「波高異常」が検知された場合(S23でNo)には、「復帰禁止モード」を維持し(S24)、再度「波高異常」が検知されなかった場合(S23でYes)には、「復帰禁止モード」を「復帰許可モード」に切り替える(S25)ようにしてもよい。