(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120410
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/027 20120101AFI20170417BHJP
【FI】
F16H57/027
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-106188(P2014-106188)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-222094(P2015-222094A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150800
【氏名又は名称】株式会社ツバキE&M
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】松田 星司
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−031963(JP,A)
【文献】
実開昭60−065484(JP,U)
【文献】
特開2000−266167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に歯車機構を具え、上壁部に空気排出孔を具え、潤滑油が封入されているハウジングと、
前記空気排出孔に取付けられているエアブリーザと、
前記潤滑油の油面と前記空気排出孔との間に設けられ、前記空気排出孔を覆う遮蔽部材と、
前記遮蔽部材の前記空気排出孔の直下以外の位置に設けられた、遮蔽部材の上面から下面に亘って貫通している連通孔を有する歯車装置において、
前記連通孔の空気排出孔側開口部の大きさが、該連通孔の歯車機構側開口部の大きさよりも大きく、
前記空気排出孔側開口部から歯車機構側開口部まで、該歯車機構側開口部の全周に向けて設けられている傾斜面を具えることを特徴とする、
歯車装置。
【請求項2】
前記連通孔の歯車機構側開口部が少なくとも2つ以上設けられている、請求項1の歯車装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材が前記潤滑油にその一部が浸る前記歯車機構の歯車の直上を覆う、請求項1又は2の歯車装置。
【請求項4】
前記歯車機構側開口部が前記潤滑油にその一部が浸る前記歯車機構の歯車の直上以外の位置に設けられている、請求項1から3のいずれかの歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置に関し、より具体的には、歯車装置に取付けられているエアブリーザから油が噴出することを防止する機能を具えた歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車機構を具えた歯車装置のハウジング内部には、歯車機構のための潤滑油が封入されている。歯車装置は、歯車機構の歯車の回転により、ハウジング内部の温度が上昇し、ハウジング内部の圧力(内圧)が高くなり、オイルシールから潤滑油が漏れる等の不具合が生じ得るので、ハウジング内部の空気を外部に排出して、内圧が高くなることを防止する必要がある。このため、歯車装置には、ハウジング内部と外部を連通させる空気排出孔が設けられ、さらに、その空気排出孔にエアブリーザが取付けられているものがある。
【0003】
エアブリーザは、主に、ハウジング内部の潤滑油が内圧によってハウジング外部に噴出することを防止するとともに、ハウジング内部の空気のみをハウジング外部に放出するために用いられる。しかし、歯車の回転によって掻き上げられた潤滑油の飛沫がエアブリーザにかかり続けると、エアブリーザ内部に潤滑油が浸入し、空気とともに潤滑油がハウジング外部に噴出してしまうことがある。
【0004】
そこで、エアブリーザに潤滑油の飛沫がかかることを防止できる技術が提案されており、その例として、特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−31963号公報
【0006】
特許文献1には、ハウジング上壁部に空気排出孔を有するカバーが取付けられ、空気排出孔にエアブリーザが取付けられ、ハウジング上壁部の空気排出孔の直下ではない位置に少なくとも2つの連通孔が設けられた減速機の油噴出防止構造が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の減速機の油噴出防止構造は、ハウジングの上壁部の外側に、エアブリーザを取付けたカバーを後付けして、ハウジング上壁部であった部分を、潤滑油の飛沫を遮断するものとして利用したものである。ハウジング上壁部には、少なくとも2つの連通孔が設けられているため、潤滑油の飛沫によって1つの連通孔が塞がれた場合でも、他の連通孔を通じて、空気を通すことができ、また、ハウジング上壁部の上に溜まった油を歯車機構側に戻すことができるとされている。
【0008】
しかし、ハウジング上壁部の上面は、通常、水平面を形成しており、また、潤滑油の粘度等の事情により、ハウジング上壁部の上に浸入した潤滑油が、連通孔の位置まで移動せず、ハウジング上壁部の上にそのまま残留してしまう可能性がある。この場合、ハウジング上壁部の上に残留した潤滑油がエアブリーザに吸引されて、エアブリーザから噴出してしまう可能性もある。
【0009】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、油噴出防止機能を一層高めた歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内部に歯車機構を具え、上壁部に空気排出孔を具え、潤滑油が封入されているハウジングと、
前記空気排出孔に取付けられているエアブリーザと、
前記潤滑油の油面と前記空気排出孔との間に設けられ、前記空気排出孔を覆う遮蔽部材と、
前記遮蔽部材の前記空気排出孔の直下以外の位置に設けられた
、遮蔽部材の上面から下面に亘って貫通している連通孔を有する歯車装置において、
前記連通孔の空気排出孔側開口部の大きさが、該連通孔の歯車機構側開口部の大きさよりも大きく、
前記空気排出孔側開口部から歯車機構側開口部まで
、該歯車機構側開口部の全周に向けて設けられている傾斜面を具えることを特徴とする歯車装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連通孔の空気排出孔側開口部の大きさが歯車機構側開口部の大きさよりも大きく、空気排出孔側開口部から歯車機構側開口部までの傾斜面を具えているので、遮蔽部材上に潤滑油が浸入した場合であっても、潤滑油は傾斜面を伝い歯車機構側開口部に移動し、歯車機構側に落下し易い。これにより、潤滑油は、遮蔽部材上に溜まり難いので、潤滑油がエアブリーザに吸引されて、エアブリーザから噴出してしまう可能性を低減させることができ、従来のような空気排出孔側開口部と歯車機構側開口部の大きさが同一の連通孔が設けられた遮蔽部材を具える歯車装置に比べて、油噴出防止機能を一層高めることができる。
【0012】
また、連通孔の歯車機構側開口部を少なくとも2つ以上設ければ、いずれかの連通孔が潤滑油によって塞がっても、他の連通孔を空気が通り、結果として、潤滑油が連通孔から落下し易くなるので、全ての連通孔が潤滑油によって塞がることを防止することができる。
【0013】
また、遮蔽部材が潤滑油にその一部が浸る歯車機構の歯車の直上を覆う構成とすれば、歯車によって掻き上げられた潤滑油が遮蔽部材によって遮断されるので、遮蔽部材上に浸入し難い。よって、油噴出防止機能をさらに高めることができる。
【0014】
また、歯車機構側開口部が潤滑油にその一部が浸る歯車機構の歯車の直上以外の位置に設けられている構成とすれば、歯車によって掻き上げられた潤滑油が歯車機構側開口部に直接かかることを防ぐことができるので、歯車機構側開口部が潤滑油によって塞がり難い。よって、潤滑油を歯車機構側に落下させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(a)は、本発明の第一実施形態の遮蔽部材の平面図、(b)は、その正面図。
【
図3】本発明の連通孔と歯車及び空気排出孔との位置関係を説明する図。
【
図4】(a)は、本発明の第二実施形態の遮蔽部材の平面図、(b)は、その正面図。
【
図5】(a)は、本発明の第三実施形態の遮蔽部材の平面図、(b)は、その正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を、
図1〜5を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の第一実施形態の歯車装置10の一部縦断面図である。歯車装置10は、ハウジング12内部に、入力軸22上に設けられた傘歯車24aと、出力軸(図示省略。)上に設けられた、傘歯車24aと噛合う歯車(図示省略。)からなる歯車機構24を具えている。ハウジング12内部には、傘歯車24aの約半分が浸る程度の潤滑油16が封入されている。ハウジング12の上壁部12aには、ハウジング12内部の内圧が高くなったときにハウジング12内部の空気を外部に排出できるように、空気排出孔14が設けられている。なお、空気排出孔14には、別体のエアブリーザ18が取付けられている。
【0018】
潤滑油16の油面16aと空気排出孔14との間には、それぞれと空間を空けるようにして、遮蔽部材30がハウジング12の内側に図示しないボルトで取付けられている。なお、遮蔽部材30は、潤滑油16に浸らないように、歯車装置10の運転時及び停止時における油面16aよりも上側に位置している。遮蔽部材30は、空気排出孔14を覆う大きさであるので(
図3参照。)、傘歯車24aが掻き上げた潤滑油16が空気排出孔14に取付けられているエアブリーザ18に直接かかることを防ぐことができる。
【0019】
図2(a)に示すように、遮蔽部材30には、
遮蔽部材30の上面から下面に亘って貫通している2つの連通孔34,34、及び複数のボルト連通孔32が設けられている。連通孔34は、潤滑油16によって塞がることを防止するために、一つだけでなく、歯車機構側開口部が2つ以上になるように設けるのがよい。連通孔34,34は、それぞれ、歯車機構側開口部36と、歯車機構側開口部36よりも大きい空気排出孔側開口部38を有し、空気排出孔側開口部38から歯車機構側開口部36まで
、歯車機構側開口部36の全周に向けて設けられている傾斜面37が形成されている(
図2(b)も参照。)。これにより、遮蔽部材30の上面31に、傘歯車24a(
図1参照。)から掻き上げられた潤滑油16が浸入しても、その潤滑油16は、空気排出孔側開口部38から傾斜面37を伝い、歯車機構側開口部36に移動し易く、歯車機構24側に落下し易い。よって、潤滑油16は、遮蔽部材30の上面31上に溜まり難いので、潤滑油16がエアブリーザ18から噴出してしまう可能性を低減させることができ、油噴出防止機能を一層高めることができる。
【0020】
次に、
図3を用いて、連通孔34と歯車24a,24b及び空気排出孔14との位置関係について説明する。
図3は、歯車24a,24b側から遮蔽部材30を見たときの概略図であり、歯車24a,24bは、その一部が潤滑油に浸っていることを想定している。なお、便宜上、入力軸、出力軸、及びハウジング等の図示は省略している。
図3に示されているように、遮蔽部材30には、3つの連通孔34が設けられ、それぞれが歯車機構側開口部36及び空気排出孔側開口部38を有している。連通孔34は、歯車24a,24bによって掻き上げられた潤滑油が空気排出孔14に取付けられたエアブリーザ(図示省略。)に直接かかることを防ぐため、空気排出孔14の直下以外の位置に設けられている。また、歯車24a,24bによって掻き上げられた潤滑油を遮蔽部材30によって遮断し、遮蔽部材30の上に潤滑油が浸入することを防止することができるように、遮蔽部材30を歯車24a,24bの直上を覆う大きさにするのがよい。また、歯車24a,24bが掻き上げた潤滑油が歯車機構側開口部36に直接かかることを防ぎ、歯車機構側開口部36が潤滑油によって塞がることを防止できるように、歯車機構側開口部36の位置を、歯車24a,24bの直上の位置以外に設けるのがよい。
【0021】
図4,5は、本発明の第二、第三実施形態の遮蔽部材30a,30bを示している。
図4(a)に示すように、空気排出孔側開口部38aを大きくすれば、遮蔽部材30aの上に浸入した潤滑油を傾斜面37a、歯車機構側開口部36a,36aに導き易くすることができる。また、図示しているように、複数の歯車機構側開口部36a,36aに対し、一つの空気排出孔側開口部38aとすることもできる。一方、
図5に示すように、複数の歯車機構側開口部36a,36aに対し、それぞれの空気排出孔側開口部38b,38bを設ける構成とすれば、傾斜面37bの傾斜角を比較的大きくすることができるので、傾斜面37b上の潤滑油を歯車機構側開口部36b,36bに移動させ易くすることができる。
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、油噴出防止機能を従来に比べて一層高めた歯車装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 歯車装置
12 ハウジング
12a 上壁部
14 空気排出孔
16 潤滑油
16a 油面
18 エアブリーザ
24 歯車機構
24a,24b 歯車
30 遮蔽部材
34 連通孔
36 歯車機構側開口部
37 傾斜面
38 空気排出孔側開口部