(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1)p−トルエンスルホン酸塩、2)ベンゼンスルホン酸塩、または3)p−トルエンスルホン酸もしくはベンゼンスルホン酸と、硫酸、塩酸および臭化水素酸から選択される1つの酸の組み合わせから形成される塩である、請求項1記載の酸付加塩、またはその水和物。
2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩またはその水和物の単一相結晶、ならびに1モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.5モル当量の硫酸を含有する塩またはその水和物の単一相結晶を含有する請求項7〜9のいずれかに記載の混合結晶。
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度(2θ):8.2°±0.2°、10.1°±0.2°、13.0°±0.2°および20.3°±0.2°から選択される少なくとも3本のピークを有する、請求項7〜12のいずれかに記載の酸付加塩またはその水和物の結晶性固体。
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度(2θ):8.2°±0.2°、8.9°±0.2°、10.1°±0.2°、11.4°±0.2°、13.0°±0.2°、19.9°±0.2°、20.3°±0.2°、21.5°±0.2°および26.2°±0.2°から選択される少なくとも3本のピークを有する、請求項7〜12のいずれかに記載の結晶性固体。
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度(2θ):8.2°±0.2°、8.9°±0.2°、10.1°±0.2°、13.0°±0.2°、16.5°±0.2°、17.1°±0.2°、17.9°±0.2°、19.0°±0.2°、20.3°±0.2および26.2°±0.2°から選択される少なくとも3本のピークを有する、請求項7〜12のいずれかに記載の結晶性固体。
化合物(IA)を含有するカラム溶出液に対して約2.2〜2.5重量%のp−トルエンスルホン酸・1水和物および約5〜6重量%の75%硫酸を添加することを特徴とする、請求項17記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
化合物(IA)は、本明細書中、式(IA):
【化3】
で示されるが、実質的に式(IA‘):
【化4】
の状態も取り得るため、両方の構造を包含する。例えば、化合物(IA)のナトリウム塩は、
【化5】
および
【化6】
を包含する。
【0012】
塩形成の研究は、その化学構造を変更することなく薬剤の物理化学的特徴および得られる生物学的特徴を変更する手段を提供する。塩形成は薬剤の特性に劇的な影響を持ち得る。適切な塩の選択は、一部に、その結晶性構造の収率、割合、および量によって指定される。さらに、その塩形態の吸湿性、安定性、溶解度および加工特性も重要な観点である。塩形態の溶解度は、薬剤として使用するためのその適正に影響を及ぼし得る。水性溶解度が低い、すなわち、10mg/ml未満の場合、in vivo 投与における溶解速度は吸収過程に律速され、低いバイオアベイラビリティをもたらし得る。また、水性溶解度が低いことにより、注射による投与が困難となり得るため、適切な投与経路の選択に制限が生じ得る。
【0013】
化合物(IA)の酸付加塩を形成する酸としては、置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸および無機酸(例:硫酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、ホウ酸等)から選択される1または2種の酸である。特に、置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸等が好ましく、より好ましくは、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等である。無機酸は好ましくは、塩酸、硫酸等である。また該酸付加塩として、これらの酸から選択される2つ以上の組み合わせの混合酸塩であってもよく、置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸と無機酸との組み合わせの混合酸塩が好ましい。特にp−トルエンスルホン酸および塩酸の混合酸塩、またはp−トルエンスルホン酸および硫酸の混合酸塩は、湿度等に対する安定性が高く、保存安定性に優れている。また該酸付加塩は好ましくは結晶性固体であるが、単一相結晶でも混合結晶でもよい。
単一相結晶は、1種類の酸付加塩であっても、2種類以上の酸の混合酸塩であってもよい。混合結晶は、2種類以上の単一相結晶が混合物として存在する結晶性固体であるが、例えば、置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸付加塩の結晶性固体と、置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸と無機酸との組み合わせから形成される混合酸塩の結晶性固体との、混合物であってもよく、または、置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸と無機酸との組み合わせから形成される混合酸塩と、前記と異なる組み合わせの置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸と無機酸との組み合わせから形成される混合酸塩の混合物であってもよい。
【0014】
置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸と無機酸の混合酸の好ましい範囲としては、約1.0〜1.9モル当量の置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸および約0.1〜0.9モル当量の無機酸の任意の組み合わせの混合酸、より好ましくは約1.0〜1.5モル当量の置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸および約0.2〜0.7モル当量の無機酸の任意の組み合わせの混合酸である。さらに好ましくは、約1.2〜1.4モル当量の置換もしくは非置換のベンゼンスルホン酸基を有する酸および約0.3〜0.7モル当量の無機酸の任意の組み合わせの混合酸ある。該酸のモル当量数は付着酸等の残留溶媒としての酸を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の酸付加塩またはその溶媒和物、好ましくは結晶性固体の態様としては、化合物(IA)のp−トルエンスルホン酸塩(非溶媒和物)、p−トルエンスルホン酸塩の水和物、p−トルエンスルホン酸および硫酸の混合酸塩(以下、p−トルエンスルホン酸・硫酸混合酸塩)(非溶媒和物)、p−トルエンスルホン酸・硫酸混合酸塩の水和物、p−トルエンスルホン酸および塩酸の混合酸塩(以下、p−トルエンスルホン酸・塩酸混合酸塩)(非溶媒和物)、p−トルエンスルホン酸・塩酸混合酸塩の水和物、p−トルエンスルホン酸および臭化水素酸の混合酸塩(以下、p−トルエンスルホン酸・臭化水素酸混合酸塩)(非溶媒和物)、p−トルエンスルホン酸・臭化水素酸混合酸塩の水和物、p−トルエンスルホン酸および硝酸の混合酸塩(以下、p−トルエンスルホン酸・硝酸混合酸塩)(非溶媒和物)、p−トルエンスルホン酸・硝酸混合酸塩の水和物、ベンゼンスルホン酸塩(非溶媒和物)、ベンゼンスルホン酸塩の水和物等が例示できる。
【0016】
本発明の酸付加塩、その溶媒和物、またはそれらの結晶性固体に含まれる酸の種類と含量としては、化合物(IA)に対して、1)約1〜2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩、2)約1.0〜1.9モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.1〜0.9モル当量の硫酸の混合酸、3)約1.0〜1.9モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.1〜1.0モル当量の塩酸の混合酸、4)約1.0〜1.9モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.1〜1.0モル当量の臭化水素酸の混合酸、5)約1.0〜1.9モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.1〜1.0モル当量の硝酸の混合酸、および6)約1〜2モル当量のベンゼンスルホン酸等が例示できる。該酸のモル当量数は付着酸等の残留溶媒としての酸を含んでいてもよく、該溶媒和物のモル当量数は付着溶媒等の残留溶媒を含んでいてもよい。
【0017】
特に、化合物(IA)の約1.0〜1.9モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.1〜0.9モル当量の硫酸の混合酸塩の非溶媒和物または水和物の結晶性固体の好ましい態様としては、約1.0〜1.5モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.2〜0.6モル当量の硫酸の任意の組み合わせの混合酸塩の水和物である。より好ましくは、約1.2〜1.3モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.4〜0.5モル当量の硫酸の任意の組み合わせの混合酸塩の水和物または、約1.1〜1.4モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.3〜0.7モル当量の硫酸の任意の組み合わせの混合酸塩の水和物である。さらに好ましくは、約1.3モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.4〜0.5モル当量の硫酸の任意の組み合わせの混合酸塩の水和物である。別の好ましい態様としては、上記任意の組み合わせで示されるp−トルエンスルホン酸および硫酸の混合酸の水和物の混合結晶であるか、約1モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.5モル当量の硫酸の混合酸塩の水和物の結晶性固体である。
【0018】
溶媒和物を形成する際の溶媒としては、水、エタノール、2−プロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、1,2−ジメトキシエタン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル等が例示される。好ましくは、水、エタノールまたは2−プロパノールである。より好ましくは、水である。好ましい溶媒和物の量としては、約0.5〜20モル当量であり、より好ましくは約5〜17モル当量である。水和物の水としては、好ましくは結晶水であるが、付着水等の残留溶媒としての水が含まれていてもよい。
【0019】
本発明の水和物の水分含量は、例えば、約5〜20重量%の範囲から選択でき、約10〜20重量%であってもよく、約12〜17重量%でもよい。また該水和含量は、化合物(IA)に対して、例えば、約0.5〜20モル当量の範囲から選択でき、約5〜17モル当量でもよく、約6〜12モル当量でもよい。特に、本発明の結晶性固体は、水分含量が多い程、安定性が向上するものが多い。
【0020】
酸付加塩、その溶媒和物、好ましくはそれらの結晶性固体は、化合物(IA)の溶液に、通常約0.5〜50モル当量の酸を、約0℃〜室温で添加した後、必要に応じて約−5℃〜5℃に冷却して数時間〜数日、撹拌または静置することにより晶析させる。好ましい酸の量は、約5〜40モル当量であり、より好ましくは約10〜30モル当量である。好ましい溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、水、エタノール、2−プロパノール、またはそれらから選択される2種以上の混合溶媒であり、より好ましくは、アセトニトリル、水、またはその混合溶媒である。溶媒和物の結晶性固体の調製は、化合物(IA)の酸付加塩を、少なくとも溶媒和させる溶媒を含む可溶性溶媒に、約0℃〜室温で溶解し、約0℃〜室温で数時間〜3日、撹拌または静置することにより行う。晶析した溶媒和物は、濾過または遠心分離等の通常の分離手段で溶媒から分離し、洗浄、乾燥等の通常の精製手段により単離することができる。
【0021】
本明細書中で用いる「結晶性固体」とは、固体を構成する原子,イオン,分子などが規則正しく並んだ構造を持ち,その結果周期性,異方性を持つような構造を有する固体を意味する。「単一相結晶」とは、単一成分・単一構造からなる結晶性固体を意味する。「混合結晶」とは、2種以上の単一相結晶の混合物、または、化学成分が異なる2種以上の物質によって,周期構造が構成される結晶性固体を意味する。「化学成分が異なる2種以上の物質によって,周期構造が構成される結晶性固体」には、例えば、1)化学的には成分物質が種々の割合で混合された混合物で,結晶学的には均一な固相をなす結晶性固体(例:非金属同士、または金属および非金属からなる固溶体)、2)化学成分が異なる2種以上の物質によって構成される,周期構造の一部が別の化学成分物質によって置換された結晶性固体、3)化学成分が異なる2種以上の物質によって構成される周期構造の間隙に溶質の原子または分子が侵入した結晶性固体等が挙げられる。すなわち、「結晶性固体」は、「単一相結晶」および「混合結晶」を包含する。特に言及がなければ、本明細書中の「結晶」は「結晶性固体」と同意義である。結晶形態の結晶化度は、例えば、粉末X線回折測定、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶液比色測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
本発明の結晶性固体は、単結晶、双晶、多結晶などであってもよく、通常、単結晶またはその混合結晶である場合が多い。結晶の形態(外形)は、特に制限されず、例えば、三斜晶、単斜晶、斜法晶(直法晶)、正方晶、立法晶、三方晶(菱面体晶)、六方晶などであってもよく、球晶、骸晶、樹皮状晶、針状晶(例えば、ヒゲ結晶)などであってもよい。結晶のサイズは、特に制限されず、例えば、レーザー回析法に基づいて、結晶の平均粒子径が0.5μm〜1mm、このましくは1〜500μm程度であってもよい。
【0022】
また、化合物(IA)の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、相対湿度の変化により水分の吸着が起こり、水和水が変化してもよい。すなわち、外部の湿度変化により、空気中の水分子が結晶水として容易に結晶格子内を出入りすることが可能な結晶性固体であってもよい。そのような結晶性固体については、水分含量の変動とともに粉末X線回折パターンが若干変化した場合であっても、本明細書記載の特徴的なピークを有する限り、実質的に同一の結晶性固体であると解釈することができる。該水分は結晶水、付着水等の残留溶媒のいずれでもよい。また該結晶性固体は、単一相結晶、混合結晶のいずれでもよい。
【0023】
化合物(IA)の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、好ましくは粉末X線回折スペクトルにおける回折ピークにより特徴付けられる。
【0024】
本発明は、粉末X線回折スペクトルにおいて、互いに異なる回折角度に回折ピークを有する複数の化合物(IA)含有の結晶性固体で構成された混合結晶も含有する。この混合結晶は、少なくとも下記回折ピークで特徴付けられる単一相結晶を含んでいる。
【0025】
なお、本明細書中、回折ピークは、1つの鋭いピーク(シングレット形)であってもよく、1つのなだらかなピーク(ブロード形)であってもよく、2〜5つ程度の多重ピーク(タブレット形、トリプレット形、カルテット形、クインテット形)などのマルチプレット形)であっても良いが、通常、1つの鋭いピークである場合が多い。
【0026】
化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩の8.5水和物の結晶性固体は
図1のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):8.1±0.2°、13.3±0.2°、17.4±0.2°、19.1±0.2°および21.3±0.2°に特徴的ピークを示す。
【0027】
化合物(IA)の1モル当量のp−トルエンスルホン酸および1モル当量の塩酸の混合酸塩の結晶性固体は
図2のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):8.5±0.2°、10.2±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°および26.2±0.2°に特徴的ピークを示す。
【0028】
化合物(IA)の1モル当量のp−トルエンスルホン酸および1モル当量の臭化水素酸の混合酸塩の結晶性固体は
図3のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):8.5±0.2°、10.3±0.2°、16.6±0.2°、24.7±0.2°および26.3±0.2°に特徴的ピークを示す。
【0029】
化合物(IA)の2モル当量のベンゼンスルホン酸の結晶性固体は
図5のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):10.3±0.2°、13.3±0.2°、16.5±0.2°、19.2±0.2°および20.8±0.2°に特徴的ピークを示す。
【0030】
化合物(IA)の1.05モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.65モル当量の硫酸の混合酸塩の結晶性固体は
図16のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):8.4±0.2°,10.2±0.2°,13.1±0.2°および20.4±0.2°に特徴的ピークを示す。
【0031】
化合物(IA)の1.0モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.5モル当量の硫酸の混合酸塩の結晶性固体は
図17のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.5±0.2 °および20.3±0.2 °に特徴的ピークを示す。
【0032】
化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸の水和物の結晶性固体は、
図18のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):5.3±0.2 °,8.0±0.2 °,13.0±0.2 °,19.0±0.2 °および20.3±0.2 °に特徴的ピークを示す。
【0033】
I型結晶(:化合物(IA)の1.3モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.35モル当量の硫酸の混合酸の水和物の結晶性固体)は、
図4、5または7〜15のような粉末X線回折パターンを示し、回折角度(2θ):8.2±0.2°、8.9±0.2°、10.1±0.2°、11.4±0.2°、13.0±0.2°、20.3±0.2°および26.2±0.2°に特徴的ピークを示す。特に、回折角度(2θ):8.2±0.2°、10.1±0.2°、13.0±0.2°および20.3±0.2°はより特徴的なピークである。
【0034】
化合物(IA)の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、好ましくは、回折角度(2θ):8.2±0.2°、10.1±0.2°、13.0±0.2°および20.3±0.2°から選択される少なくとも1本のピークを有する。
【0035】
または化合物(IA)の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、好ましくは、回折角度(2θ):8.2±0.2°、8.9±0.2°、10.1±0.2°、11.4±0.2°、13.0±0.2°、20.3±0.2°および26.2±0.2°から選択される少なくとも1本のピークを有する。
【0036】
または化合物(IA)の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、好ましくは、回折角度(2θ):8.2±0.2°、8.9±0.2°、10.1±0.2°、11.4±0.2°、13.0±0.2°、19.9±0.2°、20.3±0.2°、21.5±0.2°および26.2±0.2°から選択される少なくとも1本のピークを有する。
【0037】
または化合物(IA)の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、好ましくは、2θで表される回折角度として、回折角度(2θ):8.2±0.2°、8.9±0.2°、10.1±0.2°、13.0±0.2°、16.5±0.2°、17.0±0.2°、17.9±0.2°、19.0±0.2°、20.3±0.2および26.2±0.2°から選択される少なくとも1本のピークを有する。
【0038】
本発明の結晶性固体は、通常、化合物(IA)を晶析溶媒および/または酸に溶解した後、過飽和状態にして化合物(IA)を結晶化(又は晶析)することにより調整する場合が多い。結晶化方法(過飽和状態に移行する方法)としては、特に制限されず、例えば、蒸発法(晶析系から晶析溶媒を蒸発する方法)、冷却法(晶析系(又は化合物(IA)溶液を冷却する方法)、貧溶媒添加法(晶析系に化合物(IA)の貧溶媒を添加する方法)、種晶添加法(晶析系に化合物(IA)含有の種晶を添加する方法)などが例示できる。
例えば、蒸発法(化合物(IA)と晶析溶媒とを含む晶析系(又は溶液)から、晶析溶媒を蒸発して過飽和状態にし、この過飽和状態から結晶化する方法)や冷却法(化合物(IA)と晶析溶媒とを含む晶析系(又は溶液)を冷却して過飽和状態にし、この過飽和状態から結晶化する方法)などから得られた種晶を得た後、化合物(IA)と晶析溶媒および/または酸に溶解させた溶液に種晶を添加して結晶化する種晶添加法などにより本発明の結晶性固体は製造することができる。このような方法によれば、該結晶性固体を効率よく製造することができる。
【0039】
晶析溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのC
1−4アルカノール;ペンタン、ヘキサンなどのC
5−6アルカン;ジイソプロピルエーテルなどのジC
1−4アルキルエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのC
2−4ケトン;ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;アセトニトリル、水などが例示できる。これらの晶析溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
【0040】
晶析溶媒の使用量は、化合物(IA)1gに対して、例えば、1〜100mL、好ましくは2〜60mL、さらに好ましくは5〜55mL程度である。
【0041】
晶析操作は1回でもよいが、結晶性固体の純度を向上させるため、複数回繰り返しても良い。晶析により得られた晶析成分は、通常、濾過、遠心分離などの分離手段により、精製(非晶析成分と分離)する。分離した晶析成分は乾燥してもよい。
【0042】
乾燥方法としては、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥のいずれであってもよい。減圧乾燥では、例えば、約1〜100hpa、好ましくは約1〜40hpa(例えば、1.5〜10hpa、10〜35hPa)程度で乾燥させてもよい。乾燥温度は、例えば、室温〜加熱下、好ましくは20〜80℃程度であってもよい。乾燥時間は、例えば、0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間(例えば、0.5〜10時間)程度であってもよい。
【0043】
また本発明の酸付加塩またはその溶媒和物の結晶性固体は、化合物(IA)を含む反応溶液やカラム溶出液等の溶液に酸を添加することによっても合成できる。詳細には、化合物(IA)を含む反応溶液やカラム溶出液等に約2〜40重量%の該酸を添加し、必要に応じて種晶を加え、約−5〜5℃に冷却し、約1時間〜約4日間撹拌または静置することにより晶析させ、得られた結晶性固体を冷水または該酸で洗浄し、常圧または減圧により約0.5〜10時間乾燥させることにより、本発明の酸付加塩の結晶性固体を得ることができる。または、本発明の酸付加塩の結晶性固体(例えばZ結晶とする)を用いて晶析溶媒に溶解または懸濁させ、異なる酸を添加することで塩交換を行い結晶化させることにより、Z結晶とは異なる酸付加塩の結晶性固体を得ることもできる。
【0044】
例えば、化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩水和物の結晶性固体は以下のようにして得られる。すなわち、化合物(IA)を含むアセトニトリル溶液、アセトン溶液、水溶液またはそれらの混合溶液に、約2〜20モル当量のp−トルエンスルホン酸の水溶液を加え溶解させ、室温または約0〜5℃で約1〜4日静置して晶析させ、得られた結晶性固体を冷水で洗浄し、室温で約1〜3時間風乾することにより、目的の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩水和物の結晶性固体を得ることができる。
また、化合物(IA)のI型結晶(:1.3モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.35モル当量の硫酸の混合酸塩の水和物の混合結晶)は以下のようにして得られる。すなわち、化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩水和物の結晶性固体を硫酸‐水混合液に溶解させ、0〜5℃で約1〜4日静置して晶析させ、得られた結晶性固体を冷水で洗浄し、室温で約0.5〜2時間風乾することによりI型結晶を得ることができる。または、化合物(IA)を含むアセトニトリル‐水混合溶液にp−トルエンスルホン酸および硫酸を加え、必要に応じて種晶を加え、約−5〜5℃に冷却し、約1時間〜約4日間撹拌または静置することにより晶析させ、得られた結晶性固体を冷水または酸で洗浄し、常圧または減圧により約0.5〜10時間乾燥させても、I型結晶を得ることができる。I型結晶は、さらに約0.01〜0.1モル当量のp−トルエンスルホン酸および/または約0.01〜0.1モル当量の硫酸が残留した形で含有される場合もある。該残留酸は結晶に付着または結晶内に取り込まれる形で含有される場合もある。
また、本発明の酸付加塩の結晶性固体は、異なる組成の酸付加塩結晶から塩交換により合成することができる。例えば、2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩水和物の結晶性固体を晶析溶媒およびまたは酸に溶解または懸濁させ、対応する酸を加えて約‐5〜5℃に冷却し、約1時間〜約4日間撹拌または静置することにより塩交換を行いながら晶析させ、得られた結晶性固体を冷水または該酸で洗浄し、常圧または減圧により約0.5〜10時間乾燥させることにより、本発明の酸付加塩の結晶性固体を得ることができる。
【0045】
化合物(IA)のI型結晶(:1.3モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.35モル当量の硫酸の混合酸塩の水和物の混合結晶)の製造方法において好ましい酸の量は、化合物(IA)を含有する溶液に対してp−トルエンスルホン酸・1水和物が約2〜3重量%、より好ましくは約2.2〜2.5重量%であり、75%硫酸が約4.5〜7重量%、より好ましくは約5〜6重量%である。または、化合物(IA)1重量部に対して、p−トルエンスルホン酸・1水和物が約1.2〜1.5重量部であり、75%硫酸は約2.7〜3.5重量部である。
【0046】
以下に本発明の結晶性固体を特定する方法につき説明する。
特に言及がなければ、本明細書中および特許請求の範囲の記載の数値は、おおよその値である。数値の変動は、装置キャリブレーション、装置エラー、物質の純度、結晶サイズ、サンプルサイズ、その他の因子に起因する。
【0047】
本発明の結晶性固体は、分光学的プローブ(例:X線回折、赤外スペクトル、ラマンスペクトルおよび固体NMR)によって明確に識別される。
【0048】
化合物(IA)、その酸付加塩、もしくはそれらの溶媒和物の結晶性固体は、好ましくは粉末X線回折プロフィールによって識別される。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本、さらに好ましくは約3本から選択される。
【0049】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、上記の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶性固体だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶性固体も本発明に含まれる。
【0050】
一般に、後述の表及び図において表示されるピークの絶対強度、及び相対強度は、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶性固体の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度又はサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観察された回折パターンから選択されるピークである。複数の結晶性固体を区別する上では、ピークの大きさよりも、その結晶性固体に見られ、他の結晶性固体で見られないピークが、その結晶性固体を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つ又は二つのピークでも、当該結晶性固体を特徴付けることができる。
【0051】
特にI型結晶は、特徴的な回折ピークの存在によって本明細書中に開示する他の結晶形態(例えば、無水物など)から区別することができる。また、測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折スペクトルが実質的に一致するといえる。I型結晶は、相対湿度の変化によって水分含量が変化し、水和状態が変化し得る。このような水分含量の異なるI型結晶は、
図4、5または8〜15で示されるように共通する特徴的なピークを有する。
共通する特徴的なピークは、回折角度(2θ):8.2±0.2°、8.9±0.2°、10.1±0.2°、11.4±0.2°、13.0±0.2°、19.9±0.2°、20.3±0.2°および26.2±0.2°から選択される少なくとも3本のピークである。より好ましい共通する特徴的なピークは、回折角度(2θ):8.2±0.2°、10.1±0.2°、13.0±0.2°および20.3±0.2°から選択される少なくとも3本のピークである。
【0052】
単結晶構造解析(桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X−Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)などを参照)は結晶を特定する方法のひとつで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)及び3次元構造モデルを得ることができる。本発明のような複合体の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
【0053】
赤外吸収スペクトル測定法は、赤外線が試料を通過するときに吸収される度合いを、各波数について測定する方法である。
赤外吸収スペクトルは通例、横軸に波数を、縦軸に透過率または吸光度をとったグラフで示される。吸収ピークの波数をおよび透過率(または吸光度)はグラフ上で読み取ることができるほか、データ処理装置による産出値を用いることができる。赤外吸収スペクトルはその物質の化学構造によって定まる。したがって、種々の波数における吸収を測定して物質を確認または定量することができる。結晶多形の判別は、その結晶多形に特徴的な官能基、すなわち、主として結晶構造中の水素結合に関与する官能基、例えばC=O結合、OH結合およびNH結合等ならびに、その他特徴的な官能基、例えば、C−X(ハロゲン)、C=CおよびC≡C等の吸収帯を比較することによって行うことができる。特徴的な官能基に対応する約20個の吸収ピーク、より好ましくは約10個の吸収ピーク、最も好ましくは約5個の吸収ピークから選択される。通例、試料の吸収スペクトルは波数4000cm
−1〜400cm
−1 の範囲で測定する。吸収スペクトルの測定は装置の分解能、波数目盛り及び波数精度の確認を行なったときと同一の操作条件の下で行う。
【0054】
一般に、赤外吸収スペクトル測定における吸収帯(cm
−1)は±2cm
−1の範囲内で誤差が生じ得るから、上記の吸収ピークの値は±2cm
−1程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。従って、赤外吸収スペクトル測定における吸収帯のピークに完全に一致する結晶だけでなく、吸収帯のピークが±2cm
−1程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0055】
赤外吸収スペクトルの測定方法は、臭化カリウム錠剤法、溶液法、ペースト法、液膜法、薄膜法、気体試料測定法、ATR法、拡散反射法などがある。このうち、ATR法(Attenuatedtotalreflection)は全反射測定法を呼ばれ、反射法の一つである。この方法は、KRS−5のような高い屈折率の物質で作られたプリズムの表面に試料を密着させ、プリズムに対して臨界角以上の角度で光を入射させ、プリズムと試料の境界で全反射された光を測定して吸収スペクトルを得る方法である。ATR法で測定できる条件の一つは、プリズムの屈折率が試料よりも大きいことであるので、試料によってプリズムの材質を変える必要がある。また、その他の条件として、プリズムと試料が密着していなければならない。したがって、液体、粉末、プラスチック、柔らかいゴムなどの測定に適しており、試料を化学的にまたは物理的に処理することなく測定できる利点がある。一方、拡散反射法は、粉末試料の測定において臭化カリウム錠剤を作らず、粉末のまま測定をする方法である。光を試料にあてると、粉末表面で正反射して外部に出る光と、試料内部に入って投下と拡散を繰り返したのちに表面に出る拡散反射光(散乱光)とが生じるが、拡散反射法においては、後者を用いて吸収スペクトルを得る。
【0056】
ラマンスペクトルは分子または複合体系の振動の特徴を示す。その期限は分子と光線を含む光の粒子である光子との間の非弾性的な衝突にある。分子と光子の衝突はエネルギーの交換をもたらし、その結果エネルギーが変化し、これにより光子の波長が変化する。すなわち、ラマンスペクトルは入射光により照射されるときに対象分子から発せられる極めて狭いスペクトルの線のセットである。各スペクトル線の幅は入射光のスペクトルの幅により大きく影響され、したがって厳密に1色の光源、例えばレーザーを使用する。各ラマン線の波長は入射光からの波数シフトにより表示され、これはラマン線と入射光の波長の逆数の間の差である。ラマンスペクトルは分子の振動状態を測定するものであり、これはその分子構造により決定される。
一般に、ラマンスペクトルにおける吸収帯(cm
−1)は±2cm
−1の範囲内で誤差が生じ得るから、上記の吸収ピークの値は±2cm
−1程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、ラマンスペクトルにおける吸収帯のピークが完全に一致する結晶だけでなく、吸収帯のピークが±2cm
−1程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0057】
固体
13C−NMR(核磁気共鳴)は、(i)スペクトル数と対象化合物の炭素数が一致すること、(ii)化学シフト範囲が
1H−NMRに比べ広いこと、(iii)シグナルが固体
1H−NMRに比べてシャープであること、(iv)添加物が含まれていても、相互作用がない場合は、化学シフトが変化しないこと等から、結晶形の特定に有用である。なお、用いられる特定の分光計および分析者の使用調製技法に応じて観察される化学シフトは、わずかに変動することが予想される。固体
13C−NMRスペクトルにおける誤差範囲はおよそ±0.5ppmである。
【0058】
本発明の結晶性固体は熱分析の手法によっても特定することができる。
DSC(示差走査熱量測定)は、熱分析の主要な測定方法のひとつで、原子・分子の集合体としての物質の熱的性質を測定する方法である。DSCにより、医薬活性成分の温度または時間に係る熱量の変化を測定し、得られたデータを温度または時間に対してプロットすることにより示差走査熱量曲線が得られる。示差走査熱量曲線より、医薬活性成分が融解する際のオンセット温度、融解に伴い吸熱ピーク曲線の最大値およびエンタルピーに関する情報を得ることができる。
DSCについて、観察される温度は、温度変化速度ならびに用いる試料調製技法および特定の装置に依存し得ることが知られている。したがって、DSCにおける「融点」とは試料の調製技法の影響を受けにくいオンセット温度のことを指す。示差走査熱量曲線から得られるオンセット温度における誤差範囲はおよそ±2℃である。結晶の同一性の認定においては、融点のみならず全体的なパターンが重要であり、測定条件や測定機器によって多少は変化し得る。
【0059】
ここでTG/DTA(示差熱熱重量同時測定)は、熱分析の主要な測定方法のひとつであって、原子・分子の集合体としての物質の重量および熱的性質を測定する方法である。TG/DTAは医薬活性成分の温度または時間に係る重量および熱量の変化を測定する方法であり、得られたデータを温度または時間に対してプロットすることにより、TG(熱重量)およびDTA(示差熱)曲線が得られる。TG/DTA曲線より、医薬活性成分の分解、脱水、酸化、還元、昇華、蒸発に関する重量および熱量変化の情報を得ることができる。
TG/DTAについて、観察される温度、重量変化は、温度変化速度ならびに用いる試料調製技法および特定の装置に依存し得ることが知られている。したがって、TG/DTAにおける「融点」とは試料の調製技法の影響を受けにくいオンセット温度のことを指す。結晶の同一性の認定においては、全体的なパターンが重要であり、測定条件や測定機器によって多少変化し得る。
【0060】
水分吸脱着等温線測定(DVS)は、測定対象の固体について各相対湿度条件下での重量変化を測定する事で、水分の吸着、脱着挙動を計測する測定法である。
基本的な測定法として、0%RH(相対湿度0%)での乾燥重量を基準とし、5%、もしくは10%ごとに相対湿度を上げ、それぞれの相対湿度での重量安定化後、基準値からの重量増加から、吸着水の量を求める事が出来る。同様に,100%RHから5%、もしくは10%ごとに相対湿度を下げる事で、水の脱着量を測定する事が可能である。
各相対湿度での重量変化値をプロットする事で、吸脱着等温線を得る事ができる。この結果から、各湿度における付着水分の吸着、脱着現象の考察が可能である。また、無水物結晶が湿度により水和物結晶と相互に結晶転移する場合には、結晶転移が起こる湿度,並びに結晶水の量を計算する事が可能である。
付着水,及び結晶水の吸脱着は粒子径、結晶化度、晶癖等の影響を受けるため、測定結果は多少変化し得る。
【0061】
化合物(IA)のナトリウム塩またはその溶媒和物は、化合物(IA)を含有する溶液に水酸化ナトリウムまたは重曹等のNaソースを加え、pHを約5〜6.5に調節し、減圧濃縮および/または凍結乾燥することにより得られる。該ナトリウム塩またはその溶媒和物は、1)水に対する溶解度が高く、2)熱、湿度、溶解および/または光に対する安定性が良好であり、3)比容積が小さく、4)帯電しにくく、5)環境負荷が少ない条件で製造され、6)大量製造が可能であり、7)静脈への投与時に血管痛を伴わない適切なpH範囲に制御可能であり、8)凍結乾燥製剤に適した性質を有し、または9)水に対する溶解速度が速い等の有利な特徴を持つ。
化合物(IA)のナトリウム塩は、医薬活性成分またはその原料として有用である。該ナトリウム塩は、化合物(IA)から直接製造することも可能であるが、化合物(IA)の酸付加塩もしくはその溶媒和物、好ましくはそれらの結晶性固体と水酸化ナトリウム、および所望によりその他の添加剤(例:糖類、pH調整剤、塩化ナトリウムまたは塩化マグネシウム)を含む水溶液を当業者周知の方法に従い、凍結乾燥することによっても得られる。化合物(IA)のナトリウム塩は、好ましくは非結晶、すなわち非晶質形態であり、水溶解性が非常に高い。
【0062】
凍結乾燥を行う条件としては、凍結の条件として、約−50〜−3℃で0.5〜5時間、好ましくは、約−40〜−5℃で1〜4時間、アニーリングの条件として、約−40〜−20℃で1〜3時間、好ましくは約−35〜−25℃で1.5〜2.5時間、一次乾燥の条件として、約−50〜−10℃で0.1〜150時間、真空圧が約5〜20Pa、好ましくは約−40〜−20℃で0.5〜130時間、真空圧が約7.5〜15Pa、二次乾燥の条件として、約15〜70℃で1〜7時間、真空圧が約5〜20Pa、好ましくは約20〜65℃で1.5〜6.5時間、真空圧が約5〜20Paである。
【0063】
凍結乾燥後の本発明製剤は、用時に注射用蒸留水、生理食塩液またはブドウ糖液などの溶解液を加えて、溶解し、投与する。本願発明の医薬組成物は、グラム陽性菌、陰性菌に対して強い抗菌スペクトラムを示し、特にβ−ラクタマーゼ産生グラム陰性菌に対し強い抗菌活性を示すとともに、既存のセフェム薬やカルバペネム薬と交叉耐性を示さない。
【0064】
本発明の化合物(IA)、そのナトリウム塩、その酸付加物、またはそれらの溶媒和物は、広範な抗菌スペクトルを有し、特にβ−ラクタマーゼ産生菌グラム陰性菌(例:クラスB型のメタロ‐β−ラクタマーゼ産生グラム陰性菌)に対し強い抗菌活性を有している。したがって、ヒトを含む各種哺乳動物における病原性細菌により生ずる種々の疾病、例えば気道感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、敗血症、腎炎、胆のう炎、口腔内感染症、心内膜炎、肺炎、骨髄膜炎、中耳炎、腸炎、蓄膿、創傷感染、日和見感染等の予防又は治療に対して有効である。
【0065】
本発明の塩またはその溶媒和物、およびそれらの結晶性固体は溶解性が高いため、特に注射剤として好適である。また、本発明の塩またはその溶媒和物、およびそれらの結晶性固体は、体内動態として、血中濃度が高く、効果の持続時間が長く、および/または組織移行性が顕著である等の利点も有している。さらに、本発明の塩またはその溶媒和物、およびそれらの結晶性固体は、ヒト血漿中における高い安定性を有しており、医薬品として非常に有効である。また、本発明の塩またはその溶媒和物、およびそれらの結晶性固体は、(1)熱、湿度、溶解および/または光に対する安定性が良好であり、(2)保存安定性および/または着色安定性が良好であり、(3)高純度の原体の提供を可能とし、(4)濾過または遠心分離の操作性に優れ、(5)溶媒除去効率が向上し、(6)比容積が小さく、(7)帯電しにくく、(8)環境負荷が少ない条件で製造され、(9)大量製造が可能である等の製造面における有利な特徴も有しており、医薬品製造用原体としても有用である。
【0066】
本発明の塩またはその溶媒和物、およびそれらの結晶性固体はそれ自体でヒト患者に投与することができるか、または前述した結晶性固体を適当な単体または賦形剤と混合した医薬組成物にて投与することができる。薬物の処方および投与のための技術は、「Remington’s Pharmacological Sciences」 MackPublishingCo.,Easton, PA.最新版に見出すことができる。
【0067】
本発明の医薬組成物を投与する場合、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。非経口投与の方法としては、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、経粘膜、吸入、経鼻、点眼、点耳、膣内投与等が挙げられる。
【0068】
経口投与は常法に従って、内用固形製剤(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、フィルム剤等)、内用液剤(例えば、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、酒精剤、芳香水剤、エキス剤、煎剤、チンキ剤等)等の通常用いられるいずれの剤型に調製して投与すればよい。ここで、錠剤は、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、徐放錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠、チュアブル錠または口腔内崩壊錠であってもよく、散剤および顆粒剤はドライシロップであってもよく、カプセル剤は、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤または徐放性カプセル剤であってもよい。
【0069】
非経口投与は、注射剤(例えば、静脈注射、筋肉注射、点滴、皮下注射用アンプル剤、バイアル剤、液剤、懸濁剤など)、局所投与剤(例えば、点耳剤、点鼻剤、点眼剤、軟膏剤、乳剤、スプレー剤、エアロゾール剤、吸入剤、坐剤など)、外用剤(例えば、ローション剤、注入剤、塗布剤、含嗽剤、浣腸剤、軟膏剤、硬膏剤、ゼリー剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、外用散剤、坐剤等)等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。ここで、注射剤は、O/W、W/O、O/W/O、W/O/W型等のエマルジョンであってもよい。特に注射剤は、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を含む粉末充填製剤または凍結乾燥製剤を用いて調整できる。好ましくは、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を含む凍結乾燥製剤である。本発明の凍結乾燥製剤は、注射剤などの用途に水溶液として使用され得る。この場合、水への溶解度や溶解速度が良好な塩または結晶性固体が好ましい。好ましくは、化合物(IA)のナトリウム塩である。
【0070】
本発明化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。さらに、該医薬組成物は、本発明化合物の有効量、剤型および/または各種医薬用添加剤を適宜変更することにより、小児用、高齢者用、重症患者用または手術用の医薬組成物とすることもできる。小児用医薬組成物は、12歳または15歳未満の患者に投与するのが好ましい。また、小児用医薬組成物は、出生後27日未満、出生後28日〜23か月、2歳〜11歳または12歳〜16歳若しくは18歳の患者に投与されうる。高齢者用医薬組成物は、65歳以上の患者に投与するのが好ましい。
【0071】
適当な投与経路は、限定されるものではないが、経口、直腸、経粘膜または腸投与あるいは筋肉内、皮下、脊髄内、鞘内、直接的心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、眼内、注射を含むことができる。好ましい投与経路は静脈注射である。本発明の医薬組成物は、当該分野でよく知られた製法、例えば、慣用的な混合、溶解、顆粒化、糖衣‐作成、粉末化、乳化、カプセル化、包括、凍結乾燥プロセスによって製造することができる。
【0072】
本発明で用いられる医薬組成物は、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体の、医薬的に使用することができる製剤への製造を容易とする賦形剤および補助剤を含めた1以上の製薬学上許容される単体を用いて公知の方法で処方することができる。適切な処方は選択された投与経路に依存する。上記製剤は、投与形態に応じて適切な添加物;例えば、賦形剤、助剤、安定剤、浸潤剤、乳化剤、その他の添加剤などを含有しても良い。それらは製剤学的、薬理学的に利用可能で、セファロスポリン誘導体に対しても影響を与えない物質であることが必要である。例えば、経口用の製剤には、乳糖、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、白土、シュークロース、コンスターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、落花生油、オリーブ油、カカオ脂、エチレングリコール、酒石酸、クエン酸、フマル酸などが含有される。非経口用の製剤には、溶剤(アルコール、緩衝剤、オレイン酸メチル、水など)、緩衝剤、分散剤、溶解補助剤、安定化剤(p−ヒドロシキ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸など)、吸収促進剤(グリセリンのモノまたはジオクタン酸エステルなど)、抗酸化剤、芳香剤、鎮痛剤、懸濁剤、副作用抑制剤、作用増強物質(吸収排泄調節剤、酵素分解防止剤、β―ラクタマーゼ阻害剤、他種抗菌剤など)などが含有され得る。
【0073】
前記、添加物の他、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を安定化し、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されており、注射剤に使用できる抗酸化剤、緩衝剤、無痛化剤および保存剤等を添加することができる。具体的には、抗酸化剤として、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等がある。緩衝剤として、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩等がある。無痛化剤として、プロカイン塩酸塩、リドカイン塩酸塩、クロロブタノール、ベンジルアルコール等がある。保存剤として、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、クロロクレゾール等がある。
【0074】
注射による投与を行う場合は、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を溶解した水性溶液、好ましくは、生理学上適合する、リンゲル液または生理食塩水のような緩衝液に溶解して投与することができる。またpH調節のための塩基(例えば、水酸化ナトリウムなど)等を使用してもよい。経粘膜投与を行う場合は、浸透させるべきバリアーに適した浸透剤を用いて投与することができる。該浸透剤は一般に当該分野で知られているものを用いることができる。カプセル剤、顆粒剤、錠剤として用いられる場合の単体は、公知の賦形剤(例:デンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例:デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースなど)、滑沢剤(例:ステアリン酸マグネシウム、タルクなど)等である。
【0075】
本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を含有する医薬組成物は、適当な固体またはゲル相の単体または賦形剤を含むこともできる。そのような単体または賦形剤は、例えば、無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、有機塩(例えば、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、糖または糖アルコール(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、トレハロース、マンニトールなど)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸など)ポリマー(例えば、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなど)などが挙げられる。好ましくは、無機塩および有機塩から選択される1以上の塩、および糖または糖アルコールである。
【0076】
本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を含有する医薬組成物は、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体、および添加物を水に溶解または懸濁し、乾燥したものであるが、この乾燥法としては、本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体が安定である乾燥法であればよい。具体的には、エバポレーターによる吸引乾燥法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等があるが、好ましくは凍結乾燥法であり、本願発明の医薬組成物は凍結乾燥物が望ましい。
【0077】
具体的な本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を含有する医薬組成物の製造方法としては、
1)注射用水に本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体を投入し、酸性のスラリー液を調製する、
2)1)のスラリー液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH5.5〜6に調整し、添加物を添加する、
3)注射用水を追加添加して5w/w%に濃度調整、無菌ろ過し、製剤液とする、
4)3)の製剤液の一定量をバイアルまたはアンプル等に分注し、凍結乾燥して製造される。
凍結乾燥機としては、真空凍結乾燥機を用いることができる。
【0078】
本発明の塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの結晶性固体の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、または投与経路等を考慮したうえで設定することが望ましいが、経口投与の場合、通常1μg〜1g/日であり、好ましくは0.01〜200mg/日であり、非経口投与の場合には通常1μg〜10g/日であり、好ましくは0.1mg〜10mg/日である。これを1日1回〜数回に分けて投与すればよい。
【実施例】
【0079】
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明する。これらは本発明を限定するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証する努力をしているが、いくらかの誤差および偏差は考慮されるべきである。特に示さなければ、%は成分の重量%および組成物の全重量の重量%であり、当量は成分のモル当量を意味する。圧力は大気圧かまたはそれに近い圧力である。本明細書で使用する他の略語は以下のように定義される。:gはグラム、Lはリットル、mgはミリグラム、mLはミリリットル、EDCは1−エチル‐3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを表す。
【0080】
(粉末X線回折パターンの測定)
各実施例で得られた結晶性固体の粉末X線回折測定は、日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、以下の測定条件1〜3のいずれかの条件で行った。なお、試料フォルダとしてアルミ板を用いている。2-Theta (2θ)値が38°付近にあらわれているピークは、アルミのピークである。
【0081】
測定条件1:
(装置)
Bruker社製D−8Discover
(操作方法)
測定法:反射法
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:40mA
管電圧:40Kv
試料プレート:Al
測定範囲:3°―40°
露光時間:120s
【0082】
測定条件2:
(装置)
Rigaku社製RINT TTR III
(操作方法)
試料について、以下の条件で測定を行った。
測定法:反射法,平行ビーム法
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:300mA
管電圧:50Kv
X線の入射角(2θ):4°〜40°
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:5°/min
【0083】
測定条件3:
(装置)
Rigaku社製RINT2100 Ultima+
(操作方法)
測定法:反射法
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:40mA
管電圧:40Kv
試料プレート:Al
測定範囲:5°〜35°
サンプリング幅:0.020°
スキャンスピード:30°/min
【0084】
(TG/DTAデータの測定)
各実施例で得られた各結晶性固体約5mgを量り、アルミニウムパンにつめ、開放系にて測定することができる。(測定条件)
装置:SEIKO社製TG/DTA6300
測定温度範囲:25℃−300°
昇温速度:10℃/分
【0085】
(固体
13C−NMRスペクトルの測定)
各実施例で得られた結晶性固体の固体
13C−NMRスペクトルを、Varian 600MHz NMR Systemsを用いて、以下の条件により測定することができる。
Spectral width:43103.4Hz
Acquisition Time:0.04s
Sequence:tancpx
Recycle Delay:10s
Contact Time: 3ms
外部標準:アダマンタン (38.52ppm)またはグリシン (43.67ppm)
測定温度:10℃
回転速度:20000rps
プローブ:3.2mm T3 HX Probe
【0086】
(水分吸脱着等温線測定の測定)
各実施例で得られた結晶性固体の水分吸脱着等温線測定を行った.サンプルパンに試料約18.0mgを測り取り測定を行った。測定条件を以下に示す。
装置:Surface Measurement Systems Ltd.社製 DVS Advantage
測定ポイント:95%RHから5%ごとに0%RHまで.
温度:25℃
【0087】
(カール・フィッシャー法の測定方法)
水分については,日本薬局方 一般試験法 水分(電量滴定)より試験を行った。ただし,陽極液として三菱化学製アクアミクロン(登録商標)AX,陰極液としてアクアミクロン(登録商標)CXUを用いた。カール・フィッシャー法による水分測定は±0.3%の範囲内で誤差が生じ得るので、水分含量の値は±0.3%程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。
【0088】
(キャピラリー電気泳動法 (capillary electrophoresis法,CE法)の測定方法)
キャピラリーゾーン電気泳動技術を用いた手法で,電解質を含む緩衝液中での各試料成分の自由泳動を利用した分離方法である。
pH2.5〜11.5に調製した緩衝液が充填されたフューズドシリカキャピラリーに、化合物溶液を注入した後、キャピラリーに高電圧 (Inlet側+,Outlet側−) をかけると、化合物は緩衝液pHにおけるイオン化状態を反映した速度 (+チャージした化合物は速く、−チャージした化合物は遅く) で移動する。この化合物の移動時間と中性分子 (DMSO) の移動時間との差をpHに対してプロットし、フィッティングをかけてpKaを算出した。測定条件を以下に示す。
使用装置:Beckman P/ACEシステムMDQ PDA
泳動液:pH2.5〜11.5 Buffer (10vol% MeOH含有)
サンプル溶液: Blank DMSO 10μL+注用水90μL混合
Sample 10mM DMSO stock solution 4uL + DMSO 6uL + 注用水 90uL
(メソッド)
キャピラリー :Fused silica capillary (BECKMAN COULTER,内径50 μm,全長30.2 cm,有効長20.0 cm)
印加電圧 :10kV (331 V/cm)
印加空気圧 :0.7 psi
キャピラリー温度 :25 ℃
電気浸透流マーカー :DMSO
検出 :紫外部多波長吸光検出 (測定波長;215 nm,238 nm)
試料注入 :加圧法 (0.5 psi,5 sec)
本明細書において、pKaは、25℃におけるpKaであり、複数のpKa値を有する酸においては、最も低い値のpKaを意味する。
【0089】
化合物(IA)の合成
た。
化合物(IA)は、国際公開第2010/050468号に記載の方法に従って調整し 化合物(IA)のpKaを測定した結果、pKa1=4.2、pKa2=7.2であった。
【実施例1】
【0090】
<化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩の種晶Aの合成>
化合物(IA)(100mg)を1.0 mol/Lのp−トルエンスルホン酸水溶液(2mL)に室温で超音波を用いて溶解し、4℃で4日間静置した。析出物をろ過して種晶A(73mg)を得た。顕微鏡により、針状結晶であることを確認した。
【実施例2】
【0091】
<化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩の4水和物結晶性固体の合成>
化合物(IA)(2.00g)にp−トルエンスルホン酸1水和物(7.58g)、アセトニトリル(5mL)および水(5mL)を加え溶かした。その溶液中に水をさらに30mL 加えた。その水溶液に種晶Aを一欠片加え、室温で3時間、5℃で16時間静置した。析出物を濾過し、冷水で洗浄した後、乾燥窒素ガスを吹き付けながら45分間乾燥して結晶性固体(2.00g)を得た。
元素分析:(C
30H
34ClN
7O
10S
2・2.0C
7H
8O
3S・4.0H
2Oとして計算)
計算値: C 45.22(%), H 5.00(%),N 8.39(%), C1 3.03(%), S 10.97(%), H
2O 6.17(%)
実測値: C 45.22(%), H 4.91(%), N 8.25(%), Cl 2.86(%), S 11.23(%), H
2O(KF法) 6.21(%)
測定条件1で測定した粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度(2θ):5.1±0.2 °、8.2±0.2 °、12.1±0.2 °および13.9±0.2 °にピークが認められた。
【実施例3】
【0092】
<化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩の8.5水和物結晶性固体の合成>
化合物(IA)(2.00g)をp−トルエンスルホン酸1水和物(7.58g)、アセトン(5mL)および水(5mL)を加え溶かした。その溶液中に水をさらに30mL 加えた。その水溶液に種晶Aを一欠片加え、室温で3時間、5℃で16時間静置した。析出物を濾過し、冷水で洗浄した後、乾燥窒素ガスを吹き付けながら45分間乾燥して結晶性固体(2.30g)を得た。
元素分析:(C
30H
34ClN
7O
10S
2・2.0C
7H
8O
3S・8.5H
2Oとして計算)
計算値: C 42.28(%), H 5.40(%),N 7.84(%), C1 2.84(%), S 10.26(%), H
2O 12.25(%)
実測値: C 42.37(%), H 5.26(%), N 7.79(%), Cl2.70(%), S 10.69(%), H
2O(KF法) 12.11(%)
測定条件1で測定した粉末X線回折の結果を
図1および表1に示す。
【表1】
【実施例4】
【0093】
<化合物(IA)の1モル当量のp−トルエンスルホン酸および1モル当量の塩酸の混合酸塩の結晶性固体の合成>
種晶A(50mg) を6mol/L HCl(0.5mL)に室温で超音波水浴上、溶解した。その溶液に1mol/L HCl(2mL)を加えた後、4℃で2日間静置した。析出した固体を濾過した後、氷冷水で洗浄して結晶性固体(23mg)を得た。顕微鏡により、結晶性固体であることを確認した。
測定条件1で測定した粉末X線回折の結果を
図2および表2に示す。
【表2】
【実施例5】
【0094】
<化合物(IA)の1モル当量のp−トルエンスルホン酸および1モル当量の臭化水素酸の混合酸塩の結晶性固体の合成>
種晶A(50mg)を6mol/L HBr水溶液(0.25mL)に室温で超音波水浴上溶解した。その溶液に1mol/L HBr 水溶液(2mL)を加えた後、4℃で2日間静置した。析出物を濾過した後、氷冷水で洗浄して結晶性固体(11mg)を得た。顕微鏡により、結晶性固体であることを確認した。
測定条件1で測定した粉末X線回折の結果を
図3および表3に示す。
【表3】
【実施例6】
【0095】
<I型結晶:化合物(IA)の1.3モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.35モル当量の硫酸の混合酸塩の水和物の結晶性固体の合成>
(実施例6−1)I型結晶Dの合成
工程1:種晶Cの合成
種晶A(50mg)を室温で6mol/L H
2SO
4(3mL)に超音波浴上で溶解させ、4℃で2日間静置した。析出した結晶性固体をろ過後、氷冷水で洗浄して種晶C(23mg)を得た。
【0096】
工程2:化合物(IA)の合成およびI型結晶Dの合成
【化7】
窒素雰囲気下、化合物1(18.0kg、22.6mol)をN,N-ジメチルアセトアミド(41L)に溶解し、0℃に冷却した。ヨウ化ナトリウム(6.8kg、45.2mol)、化合物2(13.1kg、24.9mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(4L)を加え、0℃で6時間撹拌した。7℃に昇温し、16時間撹拌した。0℃に冷却し、ヨウ化ナトリウム(5.1kg、33.9mol)を加えた後、塩化アセチル(8.9kg、113.0mol)を0℃で90分かけて滴下し、0℃で5時間撹拌した。
反応液にアニソール(36L)を加え、この液をメチルエチルケトンおよび亜硫酸水素ナトリウム水溶液の混合液に加え、抽出した。有機層を硫酸と食塩水の混合液で2回洗浄した。アニソール(90L)を加え、15℃に冷却し75%硫酸(36.0kg)を加え、28℃で2時間撹拌した。水(90L)と酢酸エチル(36L)を加え、抽出した。得られた水層を酢酸エチルで2回洗浄した後、クロマト分離用小粒径合成吸着剤(ダイヤイオン
TMHP20SS)を用いた逆層カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル−硫酸水溶液)により精製した。得られた溶出液に75%硫酸(33.4kg)とp−トルエンスルホン酸一水和物(16.7kg)の水溶液を加えた後、種晶Cを適量加え、固体を析出させた。5℃に冷却し、5℃で10時間撹拌し、析出した結晶性固体をろ過した。その結晶性固体を5℃に冷やした水で洗浄し、その後約33hPaで約3時間減圧乾燥することにより化合物(IA)のI型結晶D(12.7kg、含量換算収率49%)を得た。
【0097】
I型結晶D中のp−トルエンスルホン酸および硫酸の含有量は以下の方法により定量した。
(p−トルエンスルホン酸含有量測定方法)
工程1:試料溶液の調製
試料約40mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし,正確に25mLとした。この液2mLを正確に量り、試料希釈溶媒を加えて正確に20mLとした。
工程2:標準溶液の調製
25℃/60%RHの環境で恒湿化したp−トルエンスルホン酸ナトリウム標準品約25mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし、正確に100mLとした。この液5mLを正確に量り、試料希釈溶媒を加えて正確に50mLとした。
上記の試料希釈溶媒は5mmol/Lリン酸塩緩衝液/液体クロマトグラフィー用アセトニトリル混液(9:1)を用いた。ここでリン酸塩緩衝液は水:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液:0.05mol/Lリン酸水素二ナトリウム試液混液=18:1:1(pHが約7.1)を用いた。
工程3:測定および定量
上記試料溶液および標準溶液を下記試験条件で液体クロマトグラフィーにより測定を行い、p-トルエンスルホン酸のピーク面積を自動積分法により測定した。なお、脱水物換算とは、全量から水分含量を除いたものを100%として計算した値である。
(試験条件)
カラム:Unison UK-C18, φ4.6 × 150 mm, 3 μm,Imtakt製
カラム温度:35℃付近の一定温度
流量:毎分1.0mL (p-トルエンスルホン酸の保持時間 約7分)
検出器:紫外吸光光度計 (測定波長:218nm)
移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸溶液
移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエントプログラム
以下の計算式を用いて、試料中のp-トルエンスルホン酸の含有量を求めた。
p-トルエンスルホン酸の量 (%)
M
S:p−トルエンスルホン酸ナトリウム標準品の秤取量 (mg)
M
T:試料の秤取量 (mg)
P:p−トルエンスルホン酸ナトリウム標準品の純度 (%)
W
T:試料の水分 (%)
A
T:試料溶液から得られるp-トルエンスルホン酸のピーク面積
A
S:標準溶液から得られるp-トルエンスルホン酸のピーク面積
172.20:p-トルエンスルホン酸の分子量
194.18:p-トルエンスルホン酸ナトリウムの分子量
【0098】
(硫酸含有量測定方法)
工程1:標準溶液の調製
無水硫酸ナトリウム 約50mgを精密に量り、移動相に溶かし正確に25mLとした。この液2mLを正確に量り、移動相を加えて正確に50mLとした。さらにこの液2mLを正確に量り、移動相を加えて正確に20mLとした。
工程2:試料溶液の調製
試料約30mgを精密に量り、移動相に溶かし正確に25mLとした。この液2mLを正確に量り、移動相を加えて正確に20mLとした。
工程3:測定および定量
上記試料溶液および標準溶液を下記試験条件で液体クロマトグラフィー(イオンクロマトグラフィー)により測定を行い、硫酸イオンのピーク面積を自動積分法により測定した。(試験条件)
カラム:Shim-pack IC-A3,φ4.6×150 mm,5 μm,島津製作所
カラム温度:40℃付近の一定温度
流量:毎分1.2mL (硫酸イオンの保持時間 約15分)
検出器:電気伝導度検出器 (ノンサプレッサ方式)
移動相:Bis-Tris約0.67g,ホウ酸約3.09g,及び粉砕したp-ヒドロキシ安息香酸約1.11gを精密に量り,水に溶かし正確に1000mLとした溶液
以下の計算式を用いて、試料中の硫酸の含有量を求めた。
硫酸の量 (%) = M
S / M
T × 100 / (100-W
T) × A
T / A
S × 98.08 / 142.04 × 1 / 25 × 100
M
S:無水硫酸ナトリウムの秤取量 (mg)
M
T:試料の秤取量 (mg)
W
T:試料の水分 (%)
A
S:標準溶液から得られる硫酸イオンのピーク面積
A
T:試料溶液から得られる硫酸イオンのピーク面積
98.08:硫酸の分子量
142.04:無水硫酸ナトリウムの分子量
1 / 25:希釈倍率
(結果)
p−トルエンスルホン酸:22.2±0.2%(脱水物換算)
硫酸:4.3±0.1%(脱水物換算)
【0099】
元素分析:(C
30H
34N
7ClO
10S
2・1.32C
7H
8O
3S・0.45H
2SO
4・9.0H
2Oとして計算)
計算値:C 39.75(%), H 5.39(%),N 8.27(%), C1 2.99(%), S 10.19(%), H
2O 13.67(%)
実測値:C 39.73(%), H 5.33(%),N 8.53(%), C1 3.08(%), S 10.11(%), H
2O(KF法) 13.69(%)
測定条件2で測定した粉末X線回折の結果を
図4および表4に示す。なお、試料フォルダとしてアルミ板を用いている。2−Theta(2θ) 値が38 °付近にあらわれているピークは、アルミのピークである。
【表4】
【0100】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,9.0±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.3±0.2 °,17.3±0.2 °,18.1±0.2 °,19.1±0.2 °,20.3±0.2 °および26.2±0.2 °である。好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.3±0.2 °および20.3±0.2 °である。さらに好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0101】
(実施例6−2)I型結晶Eの合成
実施例6−1記載の方法で得られたI型結晶D(25.0g)を5℃に冷却した水(125mL)に懸濁させた後、5℃で26時間撹拌し、結晶性固体をろ過した。その結晶性固体を5℃に冷却した水(75mL)で洗浄して化合物(IA)のI型結晶E(22.92g)を得た。
【0102】
I型結晶E中のp−トルエンスルホン酸および硫酸の含有量を上記実施例6−1に記載の方法により定量した。
(結果)
p−トルエンスルホン酸:21.9±0.2%(脱水物換算)
硫酸:3.9±0.1%(脱水物換算)
【0103】
元素分析:(C
30H
34N
7ClO
10S
2・1.30C
7H
8O
3S・0.35H
2SO
4・9.0H
2Oとして計算)
計算値:C 40.05(%), H 5.42(%),N 8.36(%), C1 3.02(%), S 9.98(%), H
2O 13.82(%)
実測値:C 39.96(%), H 5.32(%),N 8.59(%), C1 2.99(%), S 10.11(%), H
2O(KF法) 13.78(%)。
測定条件2で測定した粉末X線回折の結果を
図5および表5に示す。なお、試料フォルダとしてアルミ板を用いている。2−Theta(2θ) 値が38 °付近にあらわれているピークは、アルミのピークである。
【表5】
【0104】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,9.0±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.3±0.2 °,17.3±0.2 °,18.1±0.2 °,19.1±0.2 °,20.3±0.2 °および26.2±0.2 °である。好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.3±0.2 °および20.3±0.2 °である。さらに好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0105】
以上のとおり、I型結晶DおよびI型結晶Eはp−トルエンスルホン酸および硫酸の含量に差があるが、同一の粉末X線回折パターンを有することから、同一の結晶形である。すなわち、I型結晶DはI型結晶Eに約0.02モル当量のp−トルエンスルホン酸および約0.1モル当量の硫酸が残留した結晶性固体である。
I型結晶は、約0.01〜0.1モル当量のp−トルエンスルホン酸および/または約0.01〜0.1モル当量の硫酸が残留した形で含有される場合もある。該残留酸は、結晶に付着した形であっても、結晶内に取り込まれる形であってもよい。
I型結晶の好ましいp−トルエンスルホン酸含量は約20.2±0.2〜23.2±0.2%(脱水物換算)であり、好ましい硫酸含量は約3.5±0.1〜5.0±0.1%(脱水物換算)である。I型結晶のより好ましいp−トルエンスルホン酸含量は約21.5±0.2〜22.3±0.2%(脱水物換算)であり、より好ましい硫酸含量は約4.2±0.1〜4.9±0.1%(脱水物換算)である。I型結晶のさらに好ましいp−トルエンスルホン酸含量は約21.5〜22.3%(脱水物換算)であり、さらに好ましい硫酸含量は約4.2〜4.9%(脱水物換算)である。
【実施例7】
【0106】
<化合物(IA)の2モル当量のベンゼンスルホン酸塩の結晶性固体の合成>
化合物(IA)のベタイン(100mg)を1.0mol/Lのベンゼンスルホン酸水溶液(5.5mL)に室温で超音波を用いて溶解した。この溶液に種晶Aを一欠片加え、5℃で4日間静置した。析出物をろ過して、種晶B(27mg)を得た。
化合物(IA)のベタイン(300mg)をアセトニトリル(0.30mL)および水(0.75mL)に溶解させ、ベンゼンスルホン酸(949mg)を加えた。その溶液にさらに水(3.0mL)を加えた後、種晶Bを一欠片加え、5℃で5日間静置した。析出物をろ過して結晶性固体(79.8mg)を得た。
測定条件1で測定した粉末X線回折の結果を
図6および表6に示す。
【表6】
【実施例8】
【0107】
<I型結晶Dの水分吸脱着等温線測定および各湿度条件下での粉末X線回折測定>
実施例6−1によって得られたI型結晶Dの水分吸脱着等温線測定結果を
図7および表7に示す。水分吸脱着等温線測定は±0.5%の範囲内で誤差が生じ得る。水分の増加量(%)は0%RH時におけるI型結晶の重量に対する増加量を表す。
【表7】
【0108】
測定条件3で測定した、各相対湿度条件下で3時間以上保持したI型結晶Dの粉末X線回折の結果を以下に示す。
30%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図8および表8に示す。
【表8】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは8.4±0.2 °,9.1±0.2 °,10.2±0.2 °,11.6±0.2 °,13.0±0.2 °,20.1±0.2 °,20.4±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.4±0.2 °,10.2±0.2 °,13.0±0.2 °および20.4±0.2 °である。
【0109】
40%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図9および表9に示す。
【表9】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.4±0.2 °,9.1±0.2 °,10.2±0.2 °,11.5±0.2 °,13.0±0.2 °,20.0±0.2 °,20.3±0.2 °,21.7±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.4±0.2 °,10.2±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0110】
50%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図10および表10に示す。
【表10】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.4±0.2 °,9.1±0.2 °,10.2±0.2 °,11.5±0.2 °,13.0±0.2 °,20.0±0.2 °,20.3±0.2 °,21.7±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.4±0.2 °,10.2±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0111】
60%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図11および表11に示す。
【表11】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,9.1±0.2 °,10.2±0.2 °,11.5±0.2 °,13.0±0.2 °,19.9±0.2 °,20.3±0.2 °,6±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.3±0.2 °,10.2±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0112】
70%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図12および表12に示す。
【表12】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,0±0.2 °,1±0.2 °,11.5±0.2 °,13.0±0.2 °,19.9±0.2 °,20.3±0.2 °,21.6±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0113】
80%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図13および表13に示す。
【表13】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,0±0.2 °,10.1±0.2 °,11.5±0.2 °,13.0±0.2 °,19.9±0.2 °,20.3±0.2 °,21.6±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0114】
90%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図14および表14に示す。
【表14】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,9.0±0.2 °,10.1±0.2 °,11.5±0.2 °,13.1±0.2 °,19.9±0.2 °,20.3±0.2 °,21.6±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.1±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0115】
95%RH条件下での粉末X線回折の結果を、
図15および表15に示す。
【表15】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.2±0.2 °,9.0±0.2 °,10.1±0.2 °,11.5±0.2 °,13.0±0.2 °,19.9±0.2 °,20.3±0.2 °,5±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.2±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0116】
以上の結果から、I型結晶は相対湿度の変化により水分の吸着が起こり水和水となり、該水和水の多くは結晶水として結晶格子に取り込まれているということが示唆される。すなわち、I型結晶は、外部の湿度変化により、水分子が結晶水として容易に結晶格子内を出入りすることが可能な結晶性固体である。すなわち、
図7〜
図15で示される通り、I型結晶は異なる湿度環境下に数時間保持する程度で水和水の数が変動する結晶性固体であり、水和水の数すなわち水分含量が異なる組成であっても実質的にI型結晶に同一の結晶性固体であると解釈することができる。該水和水は結晶水でも付着水でも残留溶媒であってもよい。
I型結晶の好ましい水分含量は約12〜17%であり、より好ましくは約12〜15%である。I型結晶の好ましい水和水は約7.5〜12モルであり、より好ましくは約8〜11.5モルである。
これらの異なる水分含量のI型結晶は共通する特徴的な回折ピークを有する。特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.2±0.2 °、8.9±0.2 °、10.1±0.2 °、11.4±0.2 °、13.0±0.2 °、19.9±0.2 °、20.3±0.2 °、21.5±0.2 °および26.2±0.2 °である。好ましくは、8.2±0.2 °、8.9±0.2 °、10.1±0.2 °、11.4±0.2 °、13.0±0.2 °、19.9±0.2 °、20.3±0.2 °および26.2±0.2 °である。より好ましくは、8.2±0.2 °、10.1±0.2 °、13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【実施例9】
【0117】
<化合物(IA)のナトリウム塩の合成>
【化8】
工程1 化合物8の合成
化合物6(970g、713mmol、78w/w%純度)をジクロロメタン(7.13L)に溶解し、内温15℃下で化合物7を加えた。この懸濁液を−25℃に冷却し、EDC塩酸塩(150.35g、784mmol)、ピリジン(46mL、570mmol)を加え、反応液を−20℃で3時間撹拌した。この反応液を氷冷撹拌化の2mol/L塩酸(285mL)、冷水(7.2L)、酢酸エチル(2.4L)混合液に加え、ジクロロメタンを減圧留去した。得られた溶液に酢酸エチル(4.5L)を加え、食塩水で2回洗浄した。有機層を減圧濃縮し化合物8を含む粗雑物(1250g)を得た。化合物8を含む粗雑物は精製せずに次の工程で使用した。
【0118】
工程2 化合物8の合成
アニソール(1.54L)をドライアイス-エタノール浴で冷却し、塩化アルミニウム(495.4g、3.71mol)、次いでジクロロメタン(0.93L)を加えた。工程1で得られた化合物8を含む粗雑物のうち610gをジクロロメタン(0.51L)、アニソール(1.03L)の混液に溶解し、−40℃に再冷却した先の塩化アルミニウム溶液に1時間をかけて滴下した。滴下に用いた容器をジクロロメタン(0.36L)、アニソール(0.51L)の混合液で洗浄し、反応液に加えた。反応液を−20℃下、2時間撹拌して得られた溶液を、氷冷撹拌下のエタノール(7.1L)、1mol/L 塩酸(7.1L)混液に加えた。混合液を氷冷下30分撹拌し、ジクロロメタン(5.14L)、飽和食塩水(257mL)を加え、分離した水層をジクロロメタン(5.14L)で洗浄した。有機層を水(2.57L)、飽和食塩水(100mL)の混液で抽出し、分離した水層は先の水層と合わせた。この水層を氷冷撹拌し、2mol/L 水酸化ナトリウム水溶液を加えることによってpHを1.5に調整し、一晩静置した。水層を濃縮してHP20SSカラムで精製した(溶離液:13%アセトニトリル水)。集めた目的物を含むフラクションに炭酸水素ナトリウム(8.75g)を加えて500mLになるまで減圧濃縮した。水(1.6L)を加えて希釈し、綿栓濾過後、濾液を凍結乾燥し化合物9(77.8g)を得た。
元素分析:(C30H33ClN7O10S2Na・4.5H2Oとして計算)
計算値 C;42.13, H;4.95, N;11.46, S;7.50, Cl;4.14, Na;2.69 (%)
実測値 C;42.22, H;4.88, N;11.24, S;7.01, Cl;4.04, Na;2.74 (%)
得られた化合物9の各種水媒体(注射用水、生理食塩水、ブドウ糖液)に対する溶解度は、いずれも100mg/mL以上であり、非常に高い溶解度であった。
【実施例10】
【0119】
<化合物(IA)の1モル当量のp−トルエンスルホン酸および1モル当量の硝酸の混合酸塩の結晶性固体の製法>
【0120】
実施例1と同様にして得た種晶A(20mg)を2mol/L−HNO
3水溶液(0.3mL)に溶解した。その溶液を4℃で2日間静置した。析出した固体を集めて結晶性固体を得た。顕微鏡により、結晶性固体であることを確認した。
測定条件1で測定した粉末X線回折の結果を表16に示す。
【表16】
【実施例11】
【0121】
<化合物(IA)の1.05モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.65モル当量の硫酸の混合酸塩の結晶性固体の製法>
【0122】
<化合物(IA)の1.05モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.65モル当量の硫酸の混合酸塩の9.0水和物結晶性固体>
実施例6−1記載の方法によって得られたI型結晶D(2.00g)を50%アセトニトリル水(10mL)に溶解し、水(40mL)、75%硫酸(4.0g)を加え、15℃で5時間20分撹拌した。0℃に冷却し、1時間10分撹拌した後、14時間10分冷蔵庫で静置した.析出した結晶をろ取し、冷水(6mL)で洗浄し通気乾燥することで結晶性固体(1.74g)を得た。
得られた結晶性固体(1.5g)を50%アセトニトリル水(7.5mL)に溶解し、水(30mL)、75%硫酸(3.0g)を加え、15℃で3時間30分撹拌した。0℃に冷却し、3時間撹拌した後、14時間50分冷蔵庫で静置した.析出した結晶性固体をろ取し,冷水(4.5mL)で洗浄し通気乾燥することで結晶性固体(1.17g)を得た。
水分量測定はカール・フィッシャー法により測定した。p−トルエンスルホン酸および硫酸の含量は、実施例6−1に記載と同様の方法で測定した。
(結果)
水分含量:14.0±0.3%
p−トルエンスルホン酸:18.2±0.2%(脱水物換算)
硫酸:6.4±0.1%(脱水物換算)
以上の結果より、本結晶性固体はC
30H
34N
7ClO
10S
2・1.05C
7H
8O
3S・0.65H
2SO
4・9.0H
2Oである。
測定条件1で測定した粉末X線回折の結果を
図16および表17に示す。
【表17】
【0123】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.4±0.2 °,9.1±0.2 °,10.2±0.2 °,13.1±0.2 °,16.3±0.2 °,17.3±0.2 °,19.2±0.2 °,20.4±0.2 °および26.3±0.2 °である。好ましくは、8.4±0.2 °,10.2±0.2 °,13.1±0.2 °,16.3±0.2 °および20.4±0.2 °である。さらに好ましくは、8.4±0.2 °,10.2±0.2 °,13.1±0.2 °および20.4±0.2 °である。
【実施例12】
【0124】
<化合物(IA)の1.0モル当量のp−トルエンスルホン酸および0.5モル当量の硫酸の混合酸塩の水和物結晶性固体>
実施例6−1記載の方法によって得られたI型結晶D(50.0g)をエタノール(300mL)と水(200mL)の混合液に溶解させた。室温にて75%硫酸(100g)を水(500mL)に混合した溶液を加えた後、さらに水(400mL)を加えた。0℃に冷却し結晶を析出させ6時間撹拌し、析出した結晶性固体をろ過した。その結晶を5℃に冷やした水(600mL)で洗浄して結晶性固体(26.8g)を得た。
得られた結晶性固体のp−トルエンスルホン酸および硫酸の含有量を上記実施例6−1に記載の方法により定量した。
(結果)
p−トルエンスルホン酸:18.3±0.2%(脱水物換算)
硫酸:4.9±0.1%(脱水物換算)
【0125】
元素分析:(C
30H
34N
7ClO
10S
2・1.0C
7H
8O
3S・0.5H
2SO
4・10.0H
2Oとして計算)
計算値:C 38.52(%), H 5.50(%),N 8.50(%), C1 3.07(%), S 9.73(%), H
2O 15.61(%)
実測値:C 38.69(%), H 5.31(%),N 8.67(%), C1 3.04(%), S 9.84(%), H
2O(KF法) 15.85(%)。
測定条件2で測定した粉末X線回折の結果を
図17および表18に示す。なお、試料フォルダとしてアルミ板を用いている。2−Theta(2θ) 値が38 °付近にあらわれているピークは、アルミのピークである。
【表18】
【0126】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、8.3±0.2 °,9.0±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.5±0.2 °,17.2±0.2 °,18.1±0.2 °,19.1±0.2 °,20.3±0.2 °および26.3±0.2 °である。好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °,16.5±0.2 °および20.3±0.2 °である。さらに好ましくは、8.3±0.2 °,10.1±0.2 °,13.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【実施例13】
【0127】
<化合物(IA)の2モル当量のp−トルエンスルホン酸塩の水和物結晶性固体の合成>
実施例6−1記載の方法によって得られたI型結晶D(25.9g)をアセトニトリル(40mL)と水(40mL)の混合液に溶解させた。室温にて水(259mL)を加えた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(103.5g)を加えた。5℃に冷却して65時間静置し、析出した結晶性固体をろ過した。その結晶を5℃に冷やした水(80mL)で洗浄して結晶性固体(15.0g)を得た。
得られた結晶性固体中のp−トルエンスルホン酸および硫酸の含有量を上記実施例6−1に記載の方法により定量した。
(結果)
p−トルエンスルホン酸:31.3±0.2%(脱水物換算)
硫酸:0.0±0.1%(脱水物換算)
【0128】
元素分析:(C
30H
34N
7ClO
10S
2・2.0C
7H
8O
3S・10.5H
2Oとして計算)
計算値:C 41.10(%), H 5.57(%),N 7.63(%), C1 2.76(%), S 9.97(%), H
2O 14.71(%)
実測値:C 40.82(%), H 5.43(%),N 7.75(%), C1 2.83(%), S 10.05(%), H
2O(KF法) 14.91(%)。
測定条件2で測定した粉末X線回折の結果を
図18および表19に示す。なお、試料フォルダとしてアルミ板を用いている。2−Theta(2θ) 値が38 °付近にあらわれているピークは、アルミのピークである。
【表19】
【0129】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、5.3±0.2 °,8.0±0.2 °,8.8±0.2 °,10.5±0.2 °,10.9±0.2 °,13.1±0.2 °,17.4±0.2 °,19.0±0.2 °,19.7±0.2 °,20.3±0.2 °,21.3±0.2 °,24.4±0.2 °および26.3±0.2 °である。好ましくは、5.3±0.2 °,8.0±0.2 °,8.8±0.2 °,13.1±0.2 °,17.4±0.2 °,19.0±0.2 °,20.3±0.2 °および26.3±0.2 °である。さらに好ましくは、5.3±0.2 °,8.0±0.2 °,13.0±0.2 °,19.0±0.2 °および20.3±0.2 °である。
【0130】
試験例1
結晶性固体の固体安定性試験
I型結晶D 約1gをポリエチレン袋に入れて、コンベックスで締めた。この袋を更にポリエチレン袋に入れ、同様にコンベックスで締めた。同じ保存条件の上記検体をまとめて、金属缶に入れ、安定性評価用検体とした。保存条件、保存期間及び試験項目は以下の通りである。
I型結晶Dは下記保存条件・保存期間で、外観変化はなく、類縁物質の増加も見られず、極めて安定であることを確認した。
【0131】
(保存条件)
温度:−20±5℃または5±5℃
遮光
包装形態:二重ポリエチレン袋・コンベックス・金属缶
保存期間:0, 3, 6, 9, 12箇月
(測定)
上記保存条件・保存期間で保存したI型結晶Dを用いて、外観変化を目視した後、下記方法により類縁物質および化合物(IA)の含量を測定した。
【0132】
工程1:試料溶液の調製
試料 約40mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし、正確に25mLとした。
上記の試料希釈溶媒は5mmol/Lリン酸塩緩衝液/液体クロマトグラフィー用アセトニトリル混液 (9:1)を用いた。ここで、リン酸塩緩衝液は 水:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液:0.05mol/lリン酸水素二ナトリウム試液混液=18:1:1 (pHが約7.1)を用いた。
【0133】
工程2:類縁物質のHPLC測定
上記試料溶液を下記試験条件で液体クロマトグラフィーにより測定を行い、化合物(IA)及び類縁物質のピーク面積を自動積分法により測定した。
(HPLC条件)
カラム:YMC-UltraHT Pro C18,φ2.0 × 100 mm,2 μm,YMC
カラム温度:35℃
UV検出波長:261nm
移動相:[A] 0.1%トリフルオロ酢酸溶液、[B]液体クロマトグラフィー用アセトニトリルを以下のようにグラジエントした。
グラジエントプログラム
流量:毎分0.5mL (化合物(IA)の保持時間 約5分)
以下の計算式を用いて、試料中の類縁物質の量を求めた。
A
i:p−トルエンスルホン酸を除く個々の類縁物質のピーク面積
ΣA
i:p−トルエンスルホン酸を除く個々の類縁物質のピーク面積の合計
A
T:システムピーク及びp-トルエンスルホン酸を除くピーク面積の合計
【0134】
工程3:化合物(IA)のHPLC測定
(標準溶液の調製)
化合物(IA)のI型結晶Dの標準品を 約40mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし、正確に25mLとした。
(試料溶液の調製)
恒湿化後の試料 約40mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし、正確に25mLとした。
上記の試料希釈溶媒は5mmol/Lリン酸塩緩衝液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル混液 (9:1)を用いた。ここで、リン酸塩緩衝液は、水/0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液:0.05mol/Lリン酸水素二ナトリウム試液混液=18:1:1 (pHが約7.1)を用いた。
上記標準溶液及び試料溶液を下記試験条件で液体クロマトグラフィーにより測定を行い、化合物(IA)のピーク面積を自動積分法により測定した。
(HPLC条件)
カラム:YMC-UltraHT Pro C18,φ2.0 × 100 mm,2 μm,YMC
カラム温度:35℃
UV検出波長:261nm
流量:毎分0.5mL (化合物(IA)の保持時間 約5分)
移動相:[A] 0.1%トリフルオロ酢酸溶液、[B]液体クロマトグラフィー用アセトニトリルを以下のようにグラジエントした。
グラジエントプログラム
以下の計算式を用いて、試料中の類縁物質の量を求めた。
化合物(IA) (C
30H
34ClN
7O
10S
2) の脱水物換算含量 (%)
= M
S / M
T × C / 1000 × 100 / (100 - W
T) × A
T / A
S × 100
M
S:化合物(IA)のI型結晶標準品の秤取量 (mg)
M
T:試料の秤取量 (mg)
C:化合物(IA)のI型結晶標準品の含量 (μg/mg)
W
T:試料の恒湿化水分 (%)
A
S:標準溶液から得られる化合物(IA)のピーク面積
A
T:試料溶液から得られる化合物(IA)のピーク面積
【0135】
製剤例1
I型結晶D(123.1g:化合物(IA)として82.5g)を1155gの注射用水に懸濁させ、8wt%の水酸化ナトリウム水溶液をpH6になるまで添加 (添加量159.2g) した後、重量調整用の注射用水を添加し、化合物(IA)として50mg/gの溶解液を調製した。この際、中和溶解には2時間を要した。この溶液を0.2μm孔径のPVDF膜で滅菌ろ過した。得られたろ液をガラス瓶にいれ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥の条件としては、1)5℃冷却、2)−5℃で1時間冷却、3)−40℃で4時間凍結、4)−℃で123時間、10Pa真空圧で一次乾燥、5)60℃で6時間、10Pa真空圧で二次乾燥を行い、凍結乾燥物を製造した。