(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
先ず、おむつの形状について説明する。本発明が包含し得るおむつは、ウェスト開口部と一対のレッグ開口部を有するおむつであり、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部と、を備えている。本体部は、腹側本体部及び背側本体部並びにこれらの間に位置し上記レッグ開口部の少なくとも一部を形成する股部からなっており、本体部は、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部に隣接して存在している。そして、股部を除くおむつのいずれかの部位が、伸張性の繊維集合体と、間隔を置いて複数配置された、ストランド状又はフィルム状(線状、曲線状、環状等)のエラストマー成形体とを含む積層体で構成されている。このような形状のおむつについて、
図1〜3を用いて説明する。なお、本発明が包含し得るおむつは、上述したように、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部と、を備えているが、これは、おむつが少なくとも腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部と、を含んでいることを意味しており、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部以外に他の部材を含んでいてもよい。
【0014】
図1は、第1の形状に係るおむつを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
図1に示す第1の形状に係るおむつ101は、ウェスト開口部1と一対のレッグ開口部2a,2bを有するおむつであって、ウェスト開口部1を形成する腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bと、本体部20と、から構成されている。斜視図に表されるように、ウェスト開口部1は、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bが連結することにより形成されている。また、本体部20は、腹側本体部20a及び背側本体部20b並びにこれらの間に位置する股部20cからなっており、股部20cは、一対のレッグ開口部2a,2bの間に存在する。このように、第1の形状に係るおむつ101は、パンツ型のおむつである。
【0015】
図2は、第2の形状に係るおむつを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
図2に示す第2の形状に係るおむつ102は、斜視図に表されるように、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bの間にサイド部40が位置し、これらが連結することによりウェスト開口部1が形成されている。なお、正面図又は背面図に表されるように、本体部20のレッグ開口部2a,2bが形成されている領域が股部20cに相当する。この股部20cは、第1の形状と同様に、腹側本体部20aと背側本体部20bの間に位置している。また、サイド部40は、伸張性のものとすることができる。このように、第2の形状に係るおむつ102は、パンツ型のおむつである。
【0016】
図3は、第3の形状に係るおむつを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
図3に示す第3の形状に係るおむつ103は、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aが、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの内側に挿入され、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの両端に設けられたイヤー部50に接合された固定部60が、腹側本体部20aに再剥離可能に連結することにより、ウェスト開口部1が形成されている。なお、イヤー部50は、背側ウェスト部10b又は背側本体部20bの両端に設けられていてもよく、固定部60は、腹側ウェスト部10aや、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの両方に対して、再剥離可能に連結していてもよい。イヤー部50の形状は、
図3に示されるように矩形状であってもよく、固定部60に向かって細くなる台形状であってもよい。股部20c、腹側本体部20a及び背側本体部20bの位置は、第2の形状と同様である。また、イヤー部50は、伸張性のものとすることができる。このように、第3の形状に係るおむつ102は、オープン型(フラット型)のおむつである。固定部60は、粘着部又はメカニカルファスニング部であり得る。
【0017】
図1〜
図3に示すおむつの形状について、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a、背側本体部20b、サイド部40及びイヤー部50の少なくとも一つの部位が、伸張性の繊維集合体とエラストマー成形体を含む積層体(以下、「伸張性積層体」という場合がある。)、により構成されている。なお、上記部位に加えて、股部20cが伸張性積層体で構成されていてもよい。
【0018】
図4は、2層構造の伸張性積層体の一例を示す斜視図である。2層構造の伸張性積層体5は、
図4に示すように、間隔を置いて一方向に並列に複数配置されたストランド状のエラストマー成形体6と、伸張性の繊維集合体7と、を有している。エラストマー成形体6は、伸張性の繊維集合体7に接合している領域と、伸張性の繊維集合体7から離間している領域とを有し、
図4の例では、伸張性の繊維集合体7は波状に形成されている。
【0019】
エラストマー成形体6は、伸張性の繊維集合体7と熱融着により接合している。熱融着による接合に好ましい材料については後述する。
【0020】
図4に示す伸張性積層体5の長手方向をMD(Machine Direction)、幅方向をCD(Cross Machine Direction)とする。MDは、伸張性積層体5の製造時における伸張性積層体5の送り方向を意味しており、CDは、MDに垂直な伸張性積層体5の幅方向を意味している。
【0021】
図4に示すように、ストランド状のエラストマー成形体6は、長手方向(MD)に沿って延在しており、幅方向(CD)で間隔を置いて多数配置されている。一方、波状に形成された繊維集合体7には、エラストマー成形体6に接合する領域(谷部7a)とエラストマー成形体6から離間した領域(アーチ状の山部7b)とが長手方向(MD)で交互に形成されている。谷部7a及び山部7bは、幅方向(CD)に沿って延在するように形成されている。谷部7a及び山部7bは、幅方向(CD)に沿って延在するように形成されている。谷部7aは、エラストマー成形体6に対して幅方向(CD)に伸びる線状に接合されている。なお、山部7bの形状は、幅方向(CD)から見てアーチ状となる形状に限られない。例えば山部7bは、幅方向(CD)から見て四角形状や三角形状となる形状であってもよい。
【0022】
伸張性積層体5によれば、長手方向(MD)に伸張性積層体5を伸ばす場合に生じる弾性力を二段階に変化させることができる。すなわち、伸張性積層体5を長手方向(MD)に伸ばす場合、伸縮性の繊維集合体7はエラストマー成形体6から離間して撓んでいる山部7bが伸ばされてフラットになるまで弾性力が十分に発揮されることはない。このため、最初の段階では、エラストマー成形体6の弾性力を上回る程度の軽い力で伸張性積層体5を伸ばすことができる。そして、山部7bがフラットとなるまで伸ばされると、伸縮性の繊維集合体7の弾性力がエラストマー成形体6の弾性力に加えられ、山部7bが伸ばされてフラットになるまでと同等の力で伸張性積層体5を伸ばすことができなくなる。
【0023】
従って、伸張性積層体5を用いたおむつでは、履きやすい大きさまでは軽い力で開口部を楽に広げることができ、履きやすい大きさに至った後は十分な弾性力を発揮することで、おむつが型崩れすることなく履きやすい形状を容易に維持することができる。しかも、伸張性積層体5を用いたおむつでは、谷部7a及び山部7bを有する繊維集合体7を表面とすることで、皺を目立たなくすることができる。更に、谷部7a及び山部7bが形成する模様によって下着のような印象を持つ、優れた外観を得ることができる。
【0024】
図5は、3層構造の伸張性積層体の一例を示す斜視図である。3層構造の伸張性積層体5’は、
図5に示すように、間隔を置いて長手方向(MD)に並列に複数配置されたストランド状のエラストマー成形体6と、エラストマー成形体6上で波状に形成された伸張性の繊維集合体7と、エラストマー成形体6に対して繊維集合体7の反対側に配置された伸縮性の繊維集合体8と、を有している。3層構造の伸張性積層体5’は、繊維集合体7側がおむつ表面側として用いられることが好ましく、繊維集合体8側がおむつ使用者側として用いられることが好ましい。
【0025】
エラストマー成形体6は、伸張性の繊維集合体7に接合している領域と、伸張性の繊維集合体7から離間している領域と、を有している。具体的には、エラストマー成形体6のうち繊維集合体7と対向する面が、繊維集合体7の谷部7aに対して接合している領域と、繊維集合体7の山部7bに対して離間している領域と、を有している。すなわち、エラストマー成形体6のうち繊維集合体7と対向する面の一部は、繊維集合体7に接合されていない。
【0026】
一方、エラストマー成形体6は、フラットな繊維集合体8と全面で接合していてもよい。すなわち、エラストマー成形体6のうち繊維集合体8と対向する面は、繊維集合体8に全面が接合されていてもよい。
【0027】
エラストマー成形体6は、伸張性の繊維集合体7,8と熱融着により接合している。熱融着による接合に好ましい材料については後述する。
【0028】
伸張性積層体5’では、エラストマー成形体6の両側に伸縮性の繊維集合体7、8を有する3層構造とすることにより、肌に接触するおむつ内側をフラットな繊維集合体8とすることができるので、締め付け圧力がより分散され、ゴム跡が残りにくく、おむつを脱着したときに肌に目立った跡を残すことが少なくなる。
【0029】
また、
図4及び
図5において、波状の繊維集合体7におけるピッチ(幅方向における1cm当たりの山部7bの数)は、0.39cm
−1以上、11.8cm
−1以下であることが好ましい。谷部7aの下端と山部7bの上端との高さの差は、0.1mm以上、5mm以下であることが好ましい。一方、山部7bの幅は、0.1mm以上、5mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0030】
エラストマー成形体6は、上述したストランド状のエラストマー成形体の他、フィルム状のエラストマー成形体とすることができる。フィルム状のエラストマー成形体には、線状、曲線状又は環状のエラストマー成形体が含まれる。
【0031】
図6(a)、(b)、(c)及び(d)は、伸張性積層体において、フィルム状(線状)のエラストマー成形体が間隔を置いて複数配置された状態の一例を示す模式図である。
図6(a)に示すように、形状の等しい矩形のエラストマー成形体6が一定の間隔をもって複数配置されていてもよく、
図6(b)に示すように、エラストマー成形体6が密に存在する部分と、疎に存在する部分とが形成されるように、矩形のエラストマー成形体6が異なる間隔をもって複数配置されていてもよい。また、
図6(c)に示すように、エラストマー成形体6は、長手方向に幅が徐々に変化する線状を有しており、幅の変化方向が同一になるように複数配置されていてもよく、
図6(d)に示すように、エラストマー成形体6は、長手方向に幅が徐々に変化する線状を有しており、幅の変化方向が相互に異なるように複数配置されていてもよい。
【0032】
図7(a)及び(b)は、伸張性積層体において、フィルム状(曲線状)のエラストマー成形体が、間隔を置いて複数配置された状態の一例を示す模式図である。エラストマー成形体6は、
図7(a)に示すように、曲線形状が揃うように複数配置されていてもよく、
図7(b)に示すように、曲線形状が向き合うように複数配置されていてもよい。
【0033】
図7(c)及び(d)は、伸張性積層体において、フィルム状(環状)のエラストマー成形体が、間隔を置いて複数配置された状態の一例を示す模式図である。この場合、
図7(c)に示すように、形状の等しい環状のエラストマー成形体6が、所定の間隔をもって均等に配置されていてもよく、
図7(d)に示すように、形状の異なる環状のエラストマー成形体6が、異なる間隔をもって均等に配置されていてもよい。エラストマー成形体6が、例えば
図6,
図7に示すような形状、配列、及び構造を有することで、通気性に優れた伸張性積層体を得ることができる。
【0034】
間隔を置いて複数配置された、ストランド状又はフィルム状のエラストマー成形体6の寸法について、ストランド状の場合、エラストマー成形体断面の直径が0.01mm以上、3mm以下であることが好ましい。一方、フィルム状の場合は、線状、曲線状又は環状のフィルムの場合共に、エラストマー成形体の幅が1mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。ストランド状又はフィルム状のエラストマー成形体6の寸法が上記範囲であり、且つエラストマー成形体6の間隔・配置を調整すると、締め付け圧力がより分散され、ゴム跡がより残りにくく、おむつを脱着したときに肌に目立った跡を残すことがより少なくなる。また、上記性能を損なわない限り、互いに離隔した複数のエラストマー成形体6は、弾性を有さないフィルム材料で架橋されていてもよい。一方、フィルム状のエラストマー成形体6における上限幅については、ウエスト部の幅等を考慮し、通常は、30mm以下、ある態様においては、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。また、隣接するエラストマー成形体6間の間隔は、1mm以上10mm以下とすることができる。1mmよりも狭いと通気性が悪くなる傾向があり、10mmより広いと締め付け圧が弱くなる傾向がある。上記の観点から、2mm以上5mm以下であるとよい。
【0035】
間隔を置いて複数配置された、フィルム状のエラストマー成形体6を形成する方法としては、例えば、
図6,
図7に示すエラストマー成形体6に対応するパターンを彫ったシリンダーに、溶融したエラストマーを流し込み、その後、繊維集合体7に転写させる方法や、エラストマー成形体から、
図6,
図7に示すエラストマー成形体6以外の部分に対応するパターンを型抜きし、型抜き後のエラストマー成形体6を繊維集合体7に貼付する方法が挙げられる。
【0036】
エラストマー成形体6は、伸縮性の調整が可能である材料からなることが好ましく、そのような材料としては、熱可塑性エラストマーが特に好適である。熱可塑性エラストマーは、一般に、分子中にゴム弾性を有する柔軟性成分(ソフトセグメント、軟質相)と、塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント、硬質相)とから構成されており、熱可塑性エラストマーは、そのハードセグメントの種類により分類することができる。エラストマー成形体6用の熱可塑性エラストマーとしては、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、(2)エステル系熱可塑性エラストマー、(3)オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー、(5)塩ビ系熱可塑性エラストマー、(6)アミド系熱可塑性エラストマー、(7)シンジオタクチックポリ(1,2−ブタジエン)、(8)ポリ(トランス−1,4−イソプレン)等の重合体を好ましく用いることができる。
【0037】
これらのうち、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(2)エステル系熱可塑性エラストマー、(3)オレフィン系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー又はこれらの組み合わせが好ましく、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(2)エステル系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー又はこれらの組み合わせがより好ましく、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマー又はこれらの組み合わせがさらに好ましい。
【0038】
(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーは、一般に、長鎖ポリオール又は短鎖ポリオール等のポリオール成分と、ジイソシアネート等のイソシアネートとを重付加反応させることにより得られ、分子内にウレタン結合を有している熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0039】
(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーの原料として用いられるポリオールとしては、ポリエステル系(アジペート系、ポリカプロラクトン系等)、ポリエーテル系等のポリオールが代表的である。長鎖ポリオールとしては、ポリエーテルジオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール)、ポリエステルジオール(例えば、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,6−ヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(ヘキサンジオール−1,6−カーボネート)グリコール)などが挙げられる。短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0040】
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの、芳香族系、脂肪族系、脂環式のいずれのイソシアネートも適用できる。
【0041】
ある態様においては、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)を60以上95以下にすることができる。(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)が60以上95以下の範囲にあると、エラストマー組成物を溶融してフィルムに製膜する際の膜安定性を高めることができ、また、良好な伸縮柔軟性を有するフィルムを得ることができる。また、ある態様においては、ウレタン系熱可塑性エラストマーを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
(2)エステル系熱可塑性エラストマーとして好ましく用いられるものとしては、例えば、ハードセグメントとして芳香族ポリエステルを有するブロックと、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル、又は脂肪族ポリエステルを有するブロックとから成るエステル系エラストマー等が挙げられる。
【0043】
(3)オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、加工性、コスト、耐光性、耐薬品性、及び皮膚刺激性等を考慮すると、メタロセンを触媒として用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体において、エチレンと共重合させるα−オレフィンとしては、炭素数が3〜30のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、オクタデセン等が挙げられる。これらの中でも1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく用いられる。エチレン−α−オレフィン共重合体におけるエチレンとα−オレフィンとの配合割合は、好ましくはエチレンが40重量%以上、98重量%以下であり、α−オレフィンが60重量%以上、2重量%以下である。
【0044】
(4)スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ビニル−共役ジエン(またはその不飽和結合の一部、またはすべてが水素添加されたもの)−芳香族ビニルブロック共重合体、を基本構造とする様々なタイプの3元系ブロックポリマー材料を使用することができる。芳香族ビニル重合体を構成するビニル単量体として望ましいのはスチレンである。また、共役ジエンを構成する単量体としては、イソプレンが望ましい。それらの不飽和結合の部分、またはすべては、スチレン系熱可塑性エラストマーとして使用される時点で水素添加されていてもよい。(4)スチレン系熱可塑性エラストマーの代表的なものとしては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS共重合体)が挙げられる。
【0045】
(4)スチレン系熱可塑性エラストマーとしてSIS共重合体が用いられる場合は、SIS共重合体全体の重量を100重量%としたときのスチレン比率が、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、45重量%以下が特に好ましい。
【0046】
SIS共重合体のメルトフローレート(200℃、5.0kg)は、流動性(加工性)及びエラストマー成形体6の原料組成物を層状にした際のフィルム安定性の点から高い方が好ましく、ある態様においては10以上45以下とすることができる。また、ある態様においては、SIS共重合体のメルトフローレートの下限を20、上限を40とすることができる。
【0047】
SIS共重合体としては、未変性タイプのものも、変性タイプのものも使用できる。変性SIS共重合体は、例えばSIS共重合体に不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を付加反応(例えばグラフト化)させることにより得ることができる。具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、エンド−ビ−シクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸およびそれらの無水物、イミド化物などが挙げられる。
【0048】
ある態様においては、SIS共重合体として、3個以上の分岐骨格を有するSIS共重合体を使用することもできる。また、ある態様においては、2種以上のSIS共重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
エラストマー成形体6の原料組成物には、上記重合体成分の他に、タッキファイヤー(粘着性付与剤)等の添加剤が含まれていてもよい。
【0050】
タッキファイヤーとしては、上記重合体との相溶性のよいものが好ましい。重合体成分として、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーと(4)スチレン系熱可塑性エラストマー(例えば、SIS共重合体)とのブレンドポリマーが用いられる場合には、ウレタン系熱可塑性エラストマーの構造を壊さず、またスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性のよいものが好ましい。タッキファイヤーとしては、ロジン系、テルペン系、石油系のもの等を使用することができる。
【0051】
ある態様においては、タッキファイヤーの軟化点を40℃以上160℃以下、又は70℃以上160℃以下の範囲とすることができる。また、ある態様においては、2種以上のタッキファイヤーを組み合わせて使用してもよい。
【0052】
タッキファイヤーの量は、エラストマー成形体6の原料組成物の全量を基準として、0.1重量%以上10重量%以下とすることができる。
【0053】
エラストマー成形体6の原料組成物は、更に、各種の添加剤(酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填材、オイル等)を含むこともできる。例えば、熱可塑性エラストマーの溶融流動性を改質するために、熱可塑性プラスチックやオイル成分等を添加してもよい。
【0054】
フィルム状のエラストマー成形体6は、積層体の伸縮性の観点から、坪量が300g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以下であることがより好ましく、100g/m
2以下であることがさらに好ましい。ここで示す坪量は、積層体全体の面積に対してエラストマー成形体6がどの程度存在しているかを表している。一方、耐久性の観点から、エラストマー成形体6の坪量は5g/m
2以上であることが好ましく、10g/m
2以上であることがより好ましい。また、ストランド状のエラストマー成形体6の配置は、伸張性積層体の幅方向(CD)において1本/cm以上、20本/cm以下であることが好ましい。
【0055】
フィルム状のエラストマー成形体6は、一層構造であっても、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、各層は異なるエラストマー成形体から構成することができる。その際、複数層のうち少なくとも1層は、上記のような熱可塑性エラストマーから構成される。伸縮性の観点から、エラストマー成形体6全体の厚さは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。一方、耐久性の観点から、エラストマー成形体6全体の厚さは、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。エラストマー成形体6は一様な厚みであっても、厚さが異なっていてもよい。エラストマー成形体6一枚当りの厚さは、約5μm以上、約100μm以下とすることができる。フィルム状のエラストマー成形体6の表面には、繊維集合体7,8の表面と熱融着性を有する層が設けられていてもよい。
【0056】
また、ストランド状のエラストマー成形体6については、並列型(サイド・バイ・サイド型)、分割型(繊維断面が円弧状に分割されたもの)又は鞘芯型[シース・コア型(同心円型及び偏心型)]等のストランド形態のものを使用することができる。
【0057】
図8(a)には、鞘芯型の形態であるストランド状のエラストマー成形体6の一例が示されている。ストランド状のエラストマー成形体6は、芯材E1と芯材E1を覆う鞘材E2とを有する。
【0058】
芯材E1としては、エラストマー成形体6に用いられるものとして上述した熱可塑性エラストマーを用いることができるが、なかでもスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、上述した(4)スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン比率、SIS共重合体の場合のメルトフローレート、未変性・変性の使用可能性、分岐構造の有無、タッキファイヤー等の添加剤の含有の有無、含有量及びその種類等についても上述のとおりである。
【0059】
鞘材E2としては、繊維集合体7に対して熱融着性を有する材料が好ましい。
図8(b)に示すように、繊維集合体7が芯材F1と芯材F1を覆う鞘材F2とを含む鞘芯型の複合繊維から構成される場合には、鞘材E2として鞘材F2と熱融着性の材料を用いることが好ましい。
図8(b)に示す鞘芯型の複合繊維、及びエラストマー成形体6と繊維集合体7との熱融着については後述する。
【0060】
鞘材F2と熱融着性の鞘材E2としては、非エラストマー成分を使用できる。非エラストマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。非エラストマー成分としては、結晶性のものも非結晶性のものも使用可能である。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、ポリプロピレンとしては、プロプレンホモポリマー、プロピレン系二元共重合体、又はプロピレン系三元共重合体が挙げられる。熱融着性の観点からは、結晶性ポリプロピレンを使用することが好ましい。
【0061】
結晶性ポリプロピレンとしては、ハードエラスチック性を有するものであれば特に制限無く用いることができる。結晶性ポリプロピレンの好ましい例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンを主体とするエチレンとのコポリマー、及びプロピレンを主体とするα−オレフィンとのコポリマー等が挙げられる。
【0062】
結晶性ポリプロピレンは、その結晶化度が40%以上であることが好ましい。結晶化度が40%満たないと繊維の伸張回復率が不十分となる場合がある。なお、結晶化度は、DSC(示差走査熱量測定)法に従って測定された結晶の融解に要するエネルギーをもとに算出した値である。
【0063】
結晶性ポリプロピレンは、そのメルトインデックスが、1g/10分以上、200g/10分以下であることが好ましく、3g/10分以上、50g/10分以下であることが更に好ましい。メルトインデックスが1g/10分に満たないと溶融粘度が高すぎて、紡糸が困難となる場合があり、200g/10分を超えると溶融粘度が低すぎて、繊維化する前に糸切れが発生する場合があるので上記範囲内とすることが好ましい。なお、メルトインデックスは、ASTM D−1238に従い、230℃、2.16kgf荷重下で測定された値である。
【0064】
また、結晶性ポリプロピレンは、伸縮弾性が容易に発現し得る点から、その重量平均分子量が、1万以上100万以下であることが好ましく、2万以上60万以下であることが更に好ましい。
【0065】
芯材E1及び鞘材E2の断面積の比率は、50:50から99.9:0.1の範囲であることが好ましい。
【0066】
このように、鞘芯型のエラストマー成形体6が、鞘材F2と熱融着性の鞘材E2を有することで、熱融着によるエラストマー成形体6及び繊維集合体7の強い接合を実現することができる。また、エラストマー成形体6及び繊維集合体7を熱融着により強固に接合することができるので、伸張性積層体5,5’の製造時に接着剤を不要とすることもできる。
【0067】
繊維集合体7及び繊維集合体8としては、伸張性を有し、通気性があり、手触りがよいものであれば特に制限はなく、例えば、上記の特性を有する単繊維、複合繊維から構成される不織布が挙げられる。以下、繊維集合体7,8を構成する繊維について詳細に説明する。繊維集合体7,8を構成する繊維は、同一のものであっても、異なるものであっても良い。
【0068】
繊維集合体を構成する繊維として具体的には、(i)ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、(ii)レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維、鞘材E2に用いられるとして上述した非エラストマー成分、特には上述の結晶性ポリプロピレンからなるハードエラスチック成分を第1成分とし、エラストマー成形体6に用いられるとして上述した熱可塑性エラストマーを第2成分とする2成分系の伸縮弾性複合繊維、又は、(iii)これらを混合した混紡繊維が挙げられる。
【0069】
これらの繊維を、スパンボンド法、スパンレース法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の方法によって加工し、繊維集合体7,8を得ることができる。
【0070】
例えば、スパンボンド不織布を、その製造後に所定の倍率で延伸加工したもの、刃溝延伸加工した不織布、低交絡スパンレース、プリーツ加工不織布などが挙げられる。特に、低荷重時の伸度の点から、スパンボンド不織布を、その製造後に所定の倍率で延伸加工したものを用いることが材料強度の面からも好ましい。
【0071】
繊維集合体7,8としては、弾性繊維を含む各種不織布製造方法で得られた不織布を用いてもよい。弾性繊維層の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層が積層されて構成されていてもよい。
【0072】
2つの非弾性繊維層のうちの少なくとも一方においては、その構成繊維の一部が弾性繊維層に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が少なくとも一方の非弾性繊維層に入り込んだ状態になっていてもよい。このような状態になっていることで、弾性繊維層と、非弾性繊維層との一体化が促進され、両層間に浮きが生じることが効果的に防止される。
【0073】
弾性繊維層は、弾性を有する繊維の集合体である。弾性を有する繊維の成形方法には、例えば溶融した樹脂をノズル孔より押出し、この押出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブロー法と半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法がある。また、メルトブロー法の特殊な方法として、メルトブロー法にスパンボンド法を組み合わせたスピニングブロー法がある。また、弾性繊維層は、弾性を有する繊維からなるウエブや不織布の形態であり得る。例えば、スピニングブロー法、スパンボンド法、メルトブロー法等によって形成されたウエブや不織布であり得る。特に好ましくは、スピニングブロー法で得られたウエブである。
【0074】
弾性繊維層の構成繊維としては、例えば、エラストマー成形体6に用いられるものとして上述した熱可塑性エラストマーや、ゴムなどを原料とする繊維を用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを原料とする繊維は、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られた繊維は熱融着させやすいので、エアスルー不織布を基本構成とする本実施形態の伸張性の繊維集合体に好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS、SIS、SEBS、SEPS等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
非弾性繊維層は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸長しなくても、繊維どうしの交点において熱融着していた両繊維どうしが離れたり、繊維どうしの熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層全体として伸長する場合の何れであってもよい。
【0076】
非弾性繊維層を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維層3を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。非弾性繊維層は、連続フィラメント又は短繊維のウエブ又は不織布であり得る。特に、短繊維のウエブであることが、厚みのある嵩高な非弾性繊維層を形成し得る点から好ましい。2つの非弾性繊維層は、構成繊維の材料、坪量、厚み等に関して同じであってもよく、或いは異なっていてもよい。鞘芯型の複合繊維の場合、芯がPET、PP、鞘が低融点PET、PP、PEが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、スチレン系エラストマーを含む弾性繊維層の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
【0077】
繊維集合体に伸張性を付与する観点から、繊維集合体を構成する繊維として、上述した伸縮弾性複合繊維、すなわち、非エラストマー成分(特には、ハードエラスチック成分)を第1成分とし、熱可塑性エラストマーを第2成分とする2成分系の伸縮弾性複合繊維(以下、単に「複合繊維」という)を用いることができる。上記複合繊維により構成された繊維集合体は、通常の不織布と同様に布様の感触を有し、風合いに優れたものである。従って、該繊維集合体を含む伸張性積層体を有するおむつは、快適な装着感を有するものとなる。
【0078】
上記複合繊維の第1成分として用いられる非エラストマー成分としては、上述した鞘材E2と同様の成分が挙げられる。熱融着性の観点からは上述した結晶性ポリプロピレンを使用することが好ましい。結晶性ポリプロピレンは、伸縮弾性が容易に発現し、且つ上記複合繊維を容易に紡糸し得る点から、その重量平均分子量が、1万以上100万以下であることが好ましく、2万以上60万以下であることが好ましい。
【0079】
複合繊維の第2成分は熱可塑性エラストマーからなる。この熱可塑性エラストマーとしては、エラストマー成形体6に用いられるものとして上述した熱可塑性エラストマーが使用できる。
【0080】
熱可塑性エラストマーは、その100%伸張時の伸張回復率が50%以上であることが、伸張性積層体5,5’が、人体の動作に対して破壊を起こさずに追従可能となる点から好ましい。
【0081】
複合繊維においては、好ましくは、第1成分の含有量が5重量%以上、70重量%以下であり、第2成分の含有量が30重量%以上、95重量%以下であり、更に好ましくは、第1成分の含有量が10重量%以上、60重量%以下であり、第2成分の含有量が40重量%以上、90重量%以下であり、一層好ましくは、第1成分の含有量が10重量%以上、50重量%以下であり、第2成分の含有量が50重量%以上、90重量%以下である。第1成分の含有量が上記の上限を超えるか又は第2成分の含有量が上記の下限に満たないと複合繊維の伸縮性が不十分となる場合があり、第1成分の含有量が上記の下限に満たないか又は第2成分の含有量が上記の上限を超えると複合繊維の表面に第2成分が露出する面積が多くなり、触感が低下する場合があるうえ、鞘芯型の複合繊維を紡糸することが困難となる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0082】
複合繊維は、伸縮弾性を発現し得る繊維形態であればその繊維形態に特に制限は無い。複合繊維の好ましい繊維形態としては、並列型(サイド・バイ・サイド型)、分割型(繊維断面が円弧状に分割されたもの)及び鞘芯型[シース・コア型(同心円型及び偏心型)]等が挙げられる。鞘芯型の場合、第1成分が鞘材として、第2成分が芯材として用いられる。
【0083】
図8(b)に示されるように、鞘芯型の複合繊維は、芯材F1と当該芯材F1を覆う鞘材F2とを含んでいる。鞘芯型の複合繊維は、芯材F1及び鞘材F2の断面積の比率が50:50から99.9:0.1の範囲内であることが好ましい。
【0084】
芯材F1としては、エラストマー成形体6に用いられるものとして上述した(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー、(4)スチレン系熱可塑性エラストマーを使用できる。これらの中では、(1)ウレタン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。ウレタン系熱可塑性エラストマーを構成するポリオール成分及びイソシアネートは上述のとおりであり、ショアーA硬度についても同様である。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン比率、SIS共重合体の場合のメルトフローレート、未変性・変性の使用可能性、分岐構造の有無、タッキファイヤー等の添加剤の含有の有無、含有量及びその種類等についても上述のとおりである。
【0085】
鞘材F2としては、鞘材E2に用いられるものとして上述した非エラストマー成分が挙げられる。鞘材F2を構成する成分は、鞘芯型のエラストマー成形体6に対する熱融着性の観点から、鞘材E2と同種類のポリマーであることが好ましい。
【0086】
このように、鞘芯型の複合繊維が、鞘材E2と熱融着性の鞘材F2を有することで、熱融着によるエラストマー成形体6及び繊維集合体7の強い接合を実現することができる。また、エラストマー成形体6及び繊維集合体7を熱融着により強固に接合することができるので、伸張性積層体5,5’の製造時に接着剤を不要とすることもできる。
【0087】
上記複合繊維は、公知の紡糸方法により製造することができる。公知の紡糸方法により製造された上記複合繊維は、紡糸後直接ウエブとなして不織布を形成してもよく、或いは、伸縮特性を一層発現させる点から、紡糸後所定の延伸処理に付した後にウエブとなして不織布を形成してもよい。上記延伸処理の条件としては、延伸温度が20℃以上130℃以下であることが好ましく、延伸倍率が1倍以上、6倍以下であることが好ましい。上記延伸処理における上記伸縮弾性複合繊維の加熱には、例えば、熱風、蒸気、赤外線等の加熱手段を用いることができる。
【0088】
上記複合繊維は、その繊維径が1デニール以上、20デニール以下であることが好ましく、2デニール以上、6デニール以下であることが更に好ましい。上記繊維径が1デニールに満たないと紡糸工程での紡糸性が低下し、繊維化しにくくなる場合があり、20デニールを超えると上記伸縮弾性不織布の実用性において、風合いが悪化する場合があるので上記範囲内とすることが好ましい。
【0089】
上記複合繊維は、その100%伸張時の伸張回復率が20%以上、100%以下であることが好ましく、50%以上、100%以下であることが更に好ましい。上記伸張回復率が20%に満たないと、上記伸縮性サイドパネルの、人体の動作に追従する機能が不十分となる場合がある。
【0090】
上記複合繊維は、ステープルファイバーのような短繊維の形態で用いられてもよく、連続フィラメントのような長繊維の形態で用いられてもよい。
【0091】
繊維集合体7は、上記複合繊維100%から構成されていてもよいが、他の繊維と混紡されたものであってもよい。上記複合繊維を他の繊維と混紡する場合には、上記伸縮弾性不織布は、上記複合繊維を好ましくは30重量%以上含み、更に好ましくは50重量%以上含む。上記複合繊維の量が30重量%に満たないと、上記伸縮弾性不織布の伸縮弾性が著しく低下して破断してしまう場合がある。上記複合繊維と混紡し得る他の繊維としては、不織布形成工程における熱処理により変質しない繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミド等の熱可塑性合成繊維、コットン、麻及び羊毛等の天然繊維、並びにレーヨン及びアセテート等の再生繊維や、上記熱処理により融着し得る各種バインダー繊維等が挙げられる。
【0092】
繊維集合体7は、例えば、カード機を用いる方法や直接シート法によって製造することができ、具体的には、レジンボンド、バインダー繊維の混紡、ヒートロール、及びウオーターニードリンク等の不織布製造法により不織布の形態として製造することができる。特に、上記繊維集合体7は、公知のウエブ形成方法を用いて上記複合繊維からなる(又は上記複合繊維を含む)ウエブを形成し、次いで該ウエブにおける繊維の交絡点間を、上記第1成分の融点と上記第2成分の融点との間の温度での熱処理により融着させ、多数の接合点を形成することにより好ましく製造される。上記ウエブ形成方法としては、上記複合繊維としてステープルファイバー等の短繊維を用いる場合には、カード機を用いて該複合繊維を開繊させてウエブを形成する方法が挙げられる。また、上記複合繊維として連続フィラメント等の長繊維を用いる場合には、溶融紡糸した上記複合繊維を高速の空気流に搬送させ、移動ネット上に堆積・開繊させてウエブを形成する方法(スパンボンド法)が挙げられる。
【0093】
形成されたウエブを熱処理して不織布を形成する方法(サーマルボンド法)としては、例えば、該ウエブを、スルー・エア・ドライヤ中を通過させ、熱風により該ウエブの構成繊維の交絡点間を熱融着させて、多数の接合点を形成する方法が挙げられる。この場合、熱風の温度や供給量は、上記ウエブの構成繊維の種類並びに上記ウエブの坪量及び搬送速度等にもよるが、一般に、熱風の温度が140℃以上、170℃以下であることが好ましく、流速又は風速が0.5m/分以上、3m/分以下であることが好ましい。また、上記熱処理の別法として、彫刻ロールと平滑ロールとからなる一対のエンボスロールを用いた熱エンボス加工が挙げられる。この場合、これら両ロールのうちの何れか一方又は両方を加熱して用いることにより、熱エンボス加工を行う。エンボスロールの加熱温度は、120℃以上、170℃以下とすることが好ましい。エンボスロールをこれよりも高い温度に加熱すると、上記ウエブが該エンボスロールに接合する場合がある。上記彫刻ロールとしては、例えば種々のパターンがその表面に彫刻された鉄ロールを用いることができる。一方、上記平滑ロールとしてはペーパーロール、ゴムロール、シリコーンゴムロール、ウレタンゴムロール、金属ロール等を用いることができる。上記彫刻ロールのパターンの例としては、例えば、ピン、点ドット、亀甲、格子、縦縞、横縞、編み目、絵柄等があり、特にそのパターンに限定されるものでは無い。上記熱エンボス加工時のエンボスロールの線圧は、上記ウエブの坪量及び搬送速度並びにエンボスロールの加熱温度等にもよるが、一般的な範囲として、10kg/cm以上、150kg/cm以下であることが好ましい。
【0094】
上記繊維集合体7は、その20%伸張時の伸張回復率が40%以上、100%以下であることが好ましく、60%以上、100%以下であることが更に好ましい。上記伸張回復率が40%に満たないと、伸張性積層体の、人体の動作等への追従が不十分で、抵抗が大きくなる場合がある。
【0095】
繊維集合体7としては、約200μm以下の厚さのものをそれぞれ使用することができ、十分な伸縮性を有しつつ、嵩高くなってやわらかい風合いを損うことがないよう、150μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。一方、耐久性の観点から、約30μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましい。また繊維集合体7は、1g/m
2以上、500g/m
2以下の目付けでそれぞれ使用することができ、生産性の観点から、400g/m
2以下が好ましく、300g/m
2以下がさらに好ましい。また200g/m
2以下であることが特に好ましい。一方、耐久性の観点から、3g/m
2以上が好ましく、5g/m
2以上がより好ましい。
【0096】
ここで、積層体におけるエラストマー成形体6と伸縮弾性複合繊維との接合について説明する。エラストマー成形体6と伸縮弾性複合繊維との接合としては、接着剤を用いた接合や熱融着による接合等を採用することができる。
【0097】
接着剤を用いた接合では、例えばスプレーやコーティングの態様で接着剤が用いられる。接着剤の種類について特に制限はなく、オレフィン系、天然ゴム系、ウレタン系、アクリル系、シリコーン系等が用いられる。
【0098】
熱融着による接合では、例えば200〜300℃における貼り合わせ(溶融ラミネート)が行われる。熱融着による接合を行う場合、エラストマー成形体6の表面の材料と繊維集合体7,8を構成する繊維表面の材料の化学構造が同一又は類似していることが好ましい。化学構造が同一又は類似とは、例えば、PPとPP(同一)、PPとPE(類似)等のような関係のように、原料となるモノマーの少なくとも1部に共通の構造が存在することをいう(上記例示では、炭素−炭素二重結合が共通である)。また、繊維集合体7,8を構成する繊維は、伸縮弾性複合繊維であることが好ましい。また、エラストマー成形体6の表面の一部に、伸縮弾性複合繊維の表面と熱融着性を有する層を有していてもよい。このように材料を選択することで、エラストマー成形体6は繊維集合体7,8と熱融着により接合することができる。
【0099】
その他、エラストマー成形体6及び伸縮弾性複合繊維を、編む、縫う等の物理的方法により接合してもよい。
【0100】
(伸張性積層体の製造方法)
以下、
図9を参照して、2層構造の伸縮性積層体5の製造方法の一例について説明する。まず、メルトブロー法によりシート状の繊維集合体7が製造される。製造されたシート状の繊維集合体7は、
図9の矢印に示すように、波状の凹凸パターンを有する成形ロール300,301の間に送り出され、谷部7a及び山部7bを有する波状の繊維集合体7に成形される。使用する成形ロール300,301を変えることにより、繊維集合体7の形状(谷部7a及び山部7bの形状)を任意に変更することができる。波状に成形された繊維集合体7は、成形ロール301の回転により、成形ロール301とチルロール302の間に送られる。
【0101】
一方、エクストルーダ303内では、エラストマーの可塑化が行われており、可塑化されたエラストマーはエクストルーダ303から押し出されてTダイ304に供給される。Tダイ304を通ることで、エラストマーは多数のストランド状のエラストマー成形体6へと成形される。Tダイ304から溶融状態で押し出されたエラストマー成形体6は、成形ロール301及びチルロール302の間に供給される。その後、成形ロール301及びチルロール302の間において、波状に成形された繊維集合体7と多数のエラストマー成形体6とが接合されることで、2層構造の伸縮性積層体5が製造される。
【0102】
繊維集合体7及びエラストマー成形体6の接合には、接着剤を用いてもよく、熱融着を利用してもよい。熱融着を利用する場合には、エラストマー成形体6や繊維集合体7の繊維の表面を前述した熱融着性の材料とすることで、接合強度を高めることができる。
【0103】
なお、3層構造の伸縮性積層体5’を製造する場合には、成形ロール301及びチルロール302の間に繊維集合体8を更に供給することで、3層構造の伸縮性積層体5’を得ることができる。
【0104】
次に、
図10〜12を用いて、本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。
図10(a)、(b)及び(c)は、第1の形状に係るおむつに上述の伸張性積層体5又は5’を適用した、本発明の第1、2及び3実施形態に係るおむつの斜視図である。
図10(a)は、第1実施形態に係るおむつ201の斜視図であり、腹側ウェスト部10aと背側ウェスト部10bに伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図10(a)中、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bにおける横縞線(黒太線)部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、当該エラストマー成形体6が伸張性の繊維集合体7の主面上に配置されている場合、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bは、
図4に示す形態の伸縮性積層体5から構成されることとなる。また、当該エラストマー成形体6が、対向する伸張性の繊維集合体7,8の間に配置されている場合、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bは、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されることとなる。股部20cには吸収体30が固定されている。なお、
図10のいずれの態様においても、理解の容易のため、エラストマー成形体6を黒太線で明示したが、伸縮性積層体5が適用される場合、エラストマー成形体6は、繊維集合体7に対しておむつの内面側に存在していても外面側に存在していてもよい。また、伸縮性積層体5’が適用される場合、エラストマー成形体6は繊維集合体7の間に存在する。このようなエラストマー成形体6の配置は、以下の第2〜第10実施形態においても同様である。
【0105】
図10(b)は、第2実施形態に係るおむつ202の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a及び背側本体部20bに伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図10(b)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0106】
図10(c)は、第3実施形態に係るおむつ203の斜視図であり、腹側本体部20a及び背側本体部20bに伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図10(c)中、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0107】
第1の形状に係るおむつは、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bが連結することによってウェスト開口部1が形成されているパンツ形状のおむつであり、おむつの各部位に伸張性積層体5又は5’が存在することにより、嵩高さがより一層解消された、よりコンパクトな形状のおむつを提供することができる。
【0108】
図11(a)、(b)及び(c)は、第2の形状に係るおむつに上述の伸張性積層体5又は5’を適用した、本発明の第4、5及び6実施形態に係るおむつの斜視図である。
図11(a)は、第4実施形態に係るおむつ204の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40に伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図11(a)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40は、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0109】
図11(b)は、第5実施形態に係るおむつ205の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、サイド部40、腹側本体部20a及び背側本体部20bに伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図11(b)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、サイド部40、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、サイド部40、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0110】
図11(c)は、第6実施形態に係るおむつ206の斜視図であり、サイド部40に伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図11(c)中、サイド部40における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、サイド部40は、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0111】
第2の形状に係るおむつは、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40が連結することによってウェスト開口部1が形成されているパンツ形状のおむつであり、おむつの各部位に伸張性積層体5又は5’が存在することにより、嵩高さがより一層解消された、よりコンパクトな形状のおむつを提供することができる。また、サイド部40に伸張性積層体5又は5’が存在することにより、体へのフィット感をより一層向上させることができる。
【0112】
図12(a)、(b)、(c)及び(d)は、第3の形状に係るおむつに上述した伸張性積層体5又は5’を適用した、本発明の第7、8、9及び10実施形態に係るおむつの斜視図である。
図12(a)は、第7実施形態に係るおむつ207の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、イヤー部50に、伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図12(a)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、イヤー部50における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、イヤー部50は、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0113】
図12(b)は、第8実施形態に係るおむつ208の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、イヤー部50、腹側本体部20a、及び、背側本体部20bに伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図12(b)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、イヤー部50、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、イヤー部50、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されることとなる。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0114】
図12(c)は、第9実施形態に係るおむつ209の斜視図であり、腹側本体部20a、背側本体部20a、及び、イヤー部50に伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図12(c)中、腹側本体部20a、背側本体部20a、及び、イヤー部50における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、腹側本体部20a、背側本体部20a、及び、イヤー部50は、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0115】
図12(d)は、第10実施形態に係るおむつ210の斜視図であり、イヤー部50に伸張性積層体5又は5’が存在している。すなわち、
図12(d)中、イヤー部50における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置されたフィルム状(線状)のエラストマー成形体6であって、イヤー部50は、
図4に示す形態の伸縮性積層体5、又は、
図5に示す形態の伸縮性積層体5’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
【0116】
第3の形状に係るおむつにおいては、イヤー部50に接合された固定部60が、腹側本体部20aに再剥離可能に連結することによってウェスト開口部1が形成されているオープン型のおむつである。第3の形状に係るおむつは、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aが、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの内側に挿入されている構造ゆえに、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの端部と、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの端部とが重なり合う部分が生じる。そのため、通常嵩高い形状になり易い。しかしながら、本実施形態に係るおむつによれば、オープン型のおむつでありながらも、嵩高さがより一層解消された、よりコンパクトな形状のおむつを提供することができる。なお、腹側ウェスト部10a、腹側本体部20a、背側ウェスト部10b、及び、背側本体部20bの全部位に伸張性積層体が使用された
図12(b)に示す第8実施形態において、特にこの効果が大きい。
【0117】
本発明は、
図10〜12に示した実施形態に係るおむつに限定されず、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a、背側本体部20b、サイド部40、及びイヤー部60の少なくとも一つの箇所に伸張性積層体5又は5’を適用したものであれば同様の効果が得られる。また、上記のおむつの各部位それぞれの全域に伸張性積層体が形成されていなくてもよく、少なくとも一部に伸張性積層体5又は5’を有していればよい。
【0118】
(おむつの製造方法)
以下、
図13〜15を参照し、第1実施形態、第4実施形態及び第7実施形態に係るおむつの製造方法について説明する。
【0119】
第1実施形態に係るおむつ201の製造方法においては、例えば、伸張性積層体5又は5’が含まれるシート状の外装体と、着用時に使用面となる内装体とがそれぞれ別のラインで製造され、これら外装体及び内装体の一体化工程以降が一つのラインで製造されることがある。当該製造方法は、例えば、外装体形成工程、股部形成工程、内装体取付工程、側部接合工程、及び、ウェスト部切り離し工程を有している。
【0120】
外装体形成工程は、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、本体部20を含むおむつ本体部80を構成する外装部分を形成する工程である。おむつ本体部80を構成する外装部分全体が、一種類の繊維集合体7や繊維集合体8で形成される場合、具体的には、繊維集合体7や繊維集合体8上にエラストマー成形体6を設けたり、繊維集合体7や繊維集合体8をエラストマー成形体6を介して張り合わせたりする。繊維集合体7を設けない部位については、繊維集合体7や繊維集合体8上に糸ゴム等の弾性伸縮部材を設けたり、繊維集合体7や繊維集合体8に糸ゴム等の弾性伸縮部材挟みつつ、繊維集合体7や繊維集合体8をホットメルト接着剤等により順次貼り合わせることによりシート状の外装体を連続的に形成する。
【0121】
股部形成工程は、
図13(a)に示すように、シート状の外装体の中央部において、その両側に括れが形成されるように、シート状の外装体に湾曲した切り込みを入れる工程である。当該工程により形成された括れにより、おむつ形成時、又は、着用時には、
図13(b)に示すようなレッグ開口部2a,2bが形成される。
【0122】
内装体取付工程は、外装体に、例えば吸収体30を有する内装体を取り付ける工程である。内装体は、例えば、上記シート状の外装体の表面上、上記股部形成工程において形成された括れ部分を覆うようにホットメルト接着剤等により添付される。
【0123】
側部接合工程は、おむつ本体部80が、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bと、腹側本体部20a及び背側本体部20bとがそれぞれ重なるように、股部20cの中央部にて折り畳み、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの左側部3aと、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3bとが、熱融着又はホットメルト接着剤などによって接合され、かつ、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの右側部4aと、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの右側部4aとが、熱融着又はホットメルト接着剤などによって接合される工程である。これにより、ウェスト開口部1及びレッグ開口部2a,2bが形成され、
図13(b)に示すようなパンツ型紙おむつが組み立てられる。
【0124】
ウェスト部切り離し工程は、形成されたシート状の外装体の残部を、腹側ウェスト部分10a又は背側ウェスト部10bの端部から切り離す工程である。以上の工程により、第1の形態に係るおむつ110が製造される。
【0125】
第4の実施形態に係るおむつ204は、
図14(a)及び(b)に示すように、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3b及び右側部4bに、それぞれ、伸張性のサイド部40を接合する。伸張性のサイド部40は、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7上に、上述のエラストマー成形体6、又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設けることによって形成してもよく、或いは、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7とは別の繊維集合体7上に、上述のエラストマー成形体6又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設け、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bに接着剤で接合して形成してもよい。
【0126】
第7の実施形態に係るおむつ207は、
図15(a)及び(b)に示すように、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3b及び右側部4bに、それぞれ、粘着又はメカニカルファスニング部60を先端に備える伸張性のイヤー部50を接合する。伸張性のイヤー部50は、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7上に、上述のエラストマー成形体6、又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設けることによって形成してもよく、或いは、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7とは別の繊維集合体7上に、上述のエラストマー成形体6又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設け、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bに接着剤で接合して形成してもよい。
【0127】
上述の製造方法においては、例えば、
図13(a)及び(b)では、おむつ着用時に体側に沿う部分で、腹側ウェスト部10a及び背側本体部20aの左側部3a及び右側部4aと、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3b及び右側部4bをそれぞれ接合しているが、実施形態に係るおむつは、このような製造方法によって得られるおむつに限定されない。例えば、実施形態に係るおむつにおいては、腹側ウェスト部10a及び背側本体部20aから構成される前身頃の幅と、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bから構成される後身頃の幅とがほぼ同じ長さになっているが、例えば前身頃又は後身頃のいずれか一方の幅を長くすることにより、例えば、前身頃側又は後身頃側に接合部が形成されてもよい。また、腹側から背側に亘って一枚の伸張性積層体が適用され、前身頃側又は後身頃側に接合部が形成されてもよい。また、前身頃と後身頃が連続して筒状の胴回りが形成され、別途作成された股部20cの両端が、前身頃及び後身頃にそれぞれ接合されてもよい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例に基づいて本発明のおむつを構成する3層構造の伸張性積層体をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
(3層構造の伸張性積層体)
繊維集合体(波状):サーモプラスチックポリウレタン(TPU)からなる芯材をポリプロピレン(PP)からなる鞘材で覆った鞘芯型の複合繊維により構成された繊維集合体を用意した。繊維断面における鞘材と芯材との面積比率は、10:90である。
繊維集合体の坪量は30g/m
2とした。繊維集合体のピッチ(幅方向における1cm当たりの山部7bの数)が3.93cm
−1、谷部7aの下端と山部7bの上端との高さの差が1mm、山部7bの幅が1mmの波状となるように繊維集合体を成形した。
繊維集合体(フラット):波状の繊維集合体と同じ鞘芯型の複合繊維によりフラットに構成した。繊維集合体の坪量は15g/m
2とした。
エラストマー成形体:Tダイ1軸溶融押出し機とチルロールとからなるフィルム製造装置(田辺プラスチック機械工業株式会社製、型番:VS30)を用い、SIS共重合体からなる芯材をポリプロピレン(PP)からなる鞘材で覆った、直径0.5mmの円形状断面を有するストランド状のエラストマー成形体を作製した。断面における鞘材と芯材との面積比率は、2:98である。
ストランド状のエラストマー成形体を、幅方向で5本/cmとなるように並べた。エラストマー成形体の坪量は50g/m
2とした。
エラストマー成形体に対する繊維集合体の接合は、200℃以上、300℃以下の温度のラミネート(熱融着)によって行い、伸張性積層体を作製した。
【0130】
(ひずみ試験)
得られた伸張性積層体を幅25mm、長さ80mmの長方形状に形成して、ひずみ試験を行った。ひずみ試験では、伸張性積層体を25mmのチャック間距離で挟み込み、引張速度を300mm/minとして、伸張性積層体の伸びが100%となるまで引張した後に戻すサイクルを二回行った。
図16は、ひずみ試験において伸張性積層体に生じる応力と伸びとの関係を示す図である。
図16に示すように、第1の荷重工程及び第1の戻り工程を1回目のサイクル、第2の荷重工程及び第2の戻り工程を2回目のサイクルとして、2回目のサイクル後のひずみ(第2のひずみ)の計測を行った。
【0131】
計測の結果、第2のひずみは試験前の長さの15%であった。この値は、従来の伸張性積層体と比べて十分に小さいものであった。
【0132】
(接合強度(デラミネーション)試験)
得られた伸張性積層体を幅25mm、長さ80mmの長方形状に形成して、接合強度(デラミネーション)試験を行った。接合強度試験では、3層の伸張性積層体の端部を割いて繊維集合体(波状)と繊維集合体(フラット)とエラストマー成形体とに分け、分かれた繊維集合体(波状)と繊維集合体(フラット)のそれぞれを別々のチャックで挟み込んだ。チャック間距離は25mmとした。引張速度を500mm/minとして伸張性積層体の接合強度(伸張性積層体を剥がすために必要な荷重)の平均値を測定した。
【0133】
計測の結果、伸張性積層体の接合強度の平均は3.3N/cmであった。この値は、従来の伸張性積層体と比べて大きく、接着剤を用いない熱融着のみの接合であっても十分な耐久性を実現することができた。