(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120487
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】着脱が簡単な超軽量のルームシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 3/10 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
A43B3/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-46988(P2012-46988)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-180116(P2013-180116A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】595019474
【氏名又は名称】徳武産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】十河 孝男
【審査官】
栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭45−016099(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第3167269(JP,U)
【文献】
特開2007−236612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 3/10
A43B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲皮部及び足底部を有するルームシューズにおいて、甲皮部が幅方向より長手方向に弾性率が大きくなる伸縮性の高いストレッチ素材の一枚裁断生地でできており、生地端部同志はオーバーの縫製により縫着されており、かつ、甲皮履き口がゴム縁付き履き口となっており、更に足底部が防水生地でできており、足底部と甲皮部の二枚の生地がオーバーの縫製により縫い合わさって甲皮爪先部、甲皮側辺部、甲皮踵部及び足底部になっていること、甲皮踵部の外側上部に指でつまむ大きさのつまみが、それをつまんで脱ぐことで、ひっくり返して足底部を内側にして脱げるために縫着箇所に設けられていることを特徴とするルームシューズ。
【請求項2】
甲皮部の伸縮性の高いストレッチ素材の生地が2WAYトリコットの生地である請求項1に記載のルームシューズ。
【請求項3】
足底部の底はすべり止め加工が施された防水生地でできている請求項1または2に記載のルームシューズ。
【請求項4】
上記の防水生地にパイル地を貼着して中底としている請求項3に記載のルームシューズ。
【請求項5】
着用時に中底と靴下がすべらないように中底のつま先部分にすべり止めが形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のルームシューズ。
【請求項6】
片足が15g未満の軽量である請求項1ないし5のいずれかに記載のルームシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱が簡単な超軽量のソックスカバー様のルームシューズに関し、足入れ感が良く、着脱が簡単で毎日の洗濯にも耐える十分な強度があり、速乾性もあるルームシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内での歩行活動において、水に濡れた床ではソックスのままでは歩行できず、スリッパでは足のフィット感がなく、シューズは着脱に難があり、さらに重量もあり、ソックスを履いての通常の歩行活動における足の保護と、軽くて履き心地がよく、足にフィットし、足に負担のかからない簡便な対策品が求められている。
従来、ソックスカバーの足底部や爪先側の足底部に縫着部の設けられたものがみられるが、足底部に縫着部が設けられている場合は、歩行時或いは走行時に凸状の縫着部が足裏側に不快感を与え、着用感を低下させる欠点があった(特許文献1)。また爪先部側において足底部を形成する立壁状の両側辺部に甲部被覆用生地を縫着したものがみられるが、立壁状の足底部と甲部被覆用生地との間における空間(隙間)が空き過ぎる恐れがあり、ソックスカバーと爪先や甲部との密着度が甘くなって脱げ易くなり、着用感を低下させる欠点があった(特許文献2)。前記の如く、ソックスカバーの足底部に縫着部が設けられている場合は、着用時に凸状の縫着部が足裏側に異物様の不快感を与えることになり、着用時は、疲労感を覚え、着用感を低下させる原因となっていた。また足底部と甲部被覆用生地間の隙間が大きくなる場合は、着用時のソックスカバーが不安定で脱げ易くなる恐れがあり、これらの欠点を解決すべき問題が多くみられるのである。
【0003】
【特許文献1】実公昭41−14091号公報
【特許文献2】実開昭53−68333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水に濡れた床でも歩行することができ、足のフィット感があり、着脱が容易で、さらに重量も超軽量であり、ソックスを履いての通常の歩行活動における足の保護と、軽くて履き心地がよく、足にフィットし、足に負担のかからないソックスカバー様のルームシューズの提供を目的とする。
また、本発明は、着脱が簡単な超軽量のルームシューズに関し、足入れ感が良く、着脱が簡単で毎日の洗濯にも耐える十分な強度があり、速乾性もあるルームシューズの提供を目的とする。
ルームシューズの足底部に縫着部がなく、着用時に足裏側に異物様の不快感を与えることがなく、着用時に疲労感を感じることがなく、着用感の低下がないソックスカバー様のルームシューズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の(1)ないし(6)のルームシューズを要旨とする。
(1)甲皮部及び足底部を有するルームシューズにおいて、甲皮部が幅方向より長手方向に弾性率が大きくなる伸縮性の高いストレッチ素材の一枚裁断生地でできており、生地端部同志はオーバーの縫製により縫着されており、かつ、甲皮履き口がゴム縁付き履き口となっており、更に足底部が防水生地でできており、足底部と甲皮部の二枚の生地がオーバーの縫製により縫い合わさって甲皮爪先部、甲皮側辺部、甲皮踵部及び足底部になっていること、甲皮踵部の外側上部に指でつまむ大きさのつまみが、それをつまんで脱ぐことで、ひっくり返して足底部を内側にして脱げるために縫着箇所に設けられていることを特徴とするルームシューズ。
(2)甲皮部の伸縮性の高いストレッチ素材の生地が2WAYトリコットの生地である上記(1)に記載のルームシューズ。
(3)足底部の底はすべり止め加工が施された防水生地でできている上記(1)または(2)に記載のルームシューズ。
(4)上記の防水生地にパイル地を貼着して中底としている請求項3に記載のルームシューズ。
(5)着用時に中底と靴下がすべらないように中底のつま先部分にすべり止めが形成されている上記(1)ないし(4)の
いずれかに記載のルームシューズ。
(6)片足が15g未満の軽量である上記(1)ないし(5)の
いずれかに記載のルームシューズ。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、水に濡れた床でも歩行することができ、足のフィット感があり、着脱が容易で、さらに重量も超軽量であり、ソックスを履いての通常の歩行活動における足の保護と、軽くて履き心地がよく、足にフィットし、足に負担のかからないソックスカバー様のルームシューズを提供することができる。
また、本発明により、着脱が簡単な超軽量のルームシューズに関し、足入れ感が良く、着脱が簡単で毎日の洗濯にも耐える十分な強度があり、速乾性もあるルームシューズを提供することができる。
さらに、本発明により、ルームシューズの足底部に縫着部がなく、着用時に足裏側に異物様の不快感を与えることがなく、着用時に疲労感を感じることがなく、着用感の低下がないルームシューズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のルームシューズ右片足部分の平面図である。
【
図2】本発明のルームシューズ右片足部分の左側面図である。
【
図3】本発明のルームシューズ右片足部分を裏返ししたものの平面図である。
【
図4】本発明のルームシューズ右片足部分を裏返ししたものの左側面図である。
【
図5】本発明のルームシューズ右片足部分を裏返ししたものの底面図である。
【
図6】ルームシューズを脱ぐために、かかとのタグを持った状態を示す図面である。
【
図7】
図6に続き、つま先に向かって脱ぐ状態を示す図面である。
【
図8】
図7に続き、汚れた底面にさわらずに、また汚れた底が内側にひっくり返る状態で脱ぎ終わった状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例えば、在宅介護ヘルパーは、介護利用者の自宅へ訪問し一日に複数件を一人で担当している。利用者宅を訪問する際に、スリッパやルームシューズを履くと、自宅が汚いのが理由ではないのかと余計に気を使わせたりして、スムーズに人間関係を築けない恐れがある。そこで、スリッパなどを履いていないように見せる工夫が求められており、靴下の2重履きで対応することが多い。それは、次の利用者宅へ雑菌を運び込まない工夫でもあり、上の靴下を脱いで、新しい靴下をまた履くことがなされている。そのような靴下の代替え品を求める需要に応えるべく開発を開始した。
【0009】
[ルームシューズ]
本発明のルームシューズについて説明する。
本発明のルームシューズは、従来は靴下の2重履きをして対応している環境下において、靴下の2重履きよりも脱ぎやすく、滑り止めや防水になっており、履いているのを忘れるくらいやさしいフィット感のある、靴下の代替え品となるカバータイプのルームシューズであり、以下の特徴を有する。
(1)甲皮部及び足底部を有するルームシューズである。
(2)甲皮部を伸縮性の高いストレッチ素材の一枚裁断生地で形成し、生地端部同志をオーバーの縫製により縫着している。甲の生地は、好ましくは伸縮性のある水着に使われる2WAYトリコットを使用する。毎日の洗濯にも耐える十分な強度があり、速乾性がある。
(3)甲皮履き口をゴム縁付き履き口としている。
(4)足底部を防水生地で形成し、オーバーの縫製により足底部と甲皮部の二枚の生地を縫い合わせて甲皮爪先部、甲皮側辺部、甲皮踵部及び足底部で構成している。
【0010】
[伸縮性の高いストレッチ素材]
本発明は、甲皮部には、伸縮性の高いストレッチ素材が用いられる。このストレッチ素材には、弾性繊維のポリウレタンを使用した2WAYトリコットが使用でき、その組成としてはポリエステル(またはナイロン)70〜90%、ポリウレタン30〜10%程度とすることができるが、それに限定されない。毎日の洗濯にも耐える十分な強度があり速乾性がある。このストレッチ素材の伸縮率(JISL1018)は、縦35.5、横36.8程度のものが例示される。甲皮部の伸縮性の高いストレッチ素材の生地を幅方向より長手方向に弾性率が大きくなるように用いることが望ましい。例えば、常法に従って製造された44デシテックスのポリエーテル系ポリウレタン糸及び、50デシテックス/36フィラメントのポリエステルマルチフィラメントを用いて、32ゲージのトリコット編み機を使用して作成した、ハーフ組織の2WAYトリコットを用いることができる。
【0011】
[一枚裁断生地]
本発明は、甲皮爪先部、甲皮側辺部および甲皮踵部からなる甲皮部を一枚裁断生地で形成したことにより、甲皮爪先部と甲皮側辺部の間、ならびに、甲皮側辺部と甲皮踵部の間に縫目がない状態で縫い上げることができる。一枚裁断生地が伸縮性の高いストレッチ素材であることにより、足の収まり感が良くなり、優れた着用感が得られる。
【0012】
[オーバーの縫製]
オーバーの縫製により足底部と甲皮部の二枚の生地を縫い合わせており、足に縫い目を感じない縫製仕様となっている。
【0013】
[甲皮履き口をゴム縁付き履き口]
本発明のルームシューズは、着用時、脱げにくい甲部の深さと形状であり、履き口(開口部)は、甲皮が立ち上がっており、脱ぎ履きし易いデザインである。例えば、1日平均3件の訪問を担う在宅介護ヘルパーにおいては、次の訪問先への移動がスムーズになるように、シューズの中底の長手方向の1/2以上を露出させる大きさに構成することが好ましい。
【0014】
[すべり止め加工が施された防水生地]
足底部の底はすべり止め加工が施された防水生地で構成している。防水生地採用で、滑り止め効果もあり、また、薄いのに底のすべり止め加工により、床からの冷えを予防し、暖かく履くことができる。さらにまた、底は防水生地なので汚れてもサッと拭くだけで汚れが落ちやすい。上記の防水生地にパイル地を貼着して中底としている。足底部の底はすべり止め加工されているため、中底と靴下のすべりを適度に調整する必要があり、パイル地が靴下と接触するようした。
【0015】
[つまみ(タグ)]
甲皮踵部の外側上部に指でつまむ大きさのつまみ(タグ)が、それをつまんで脱ぐことで、ひっくり返して足底部を内側にして脱げるように、縫着箇所に設けられている。
【0016】
[中底のつま先部分にすべり止め]
着用時に中底と靴下がすべらないように中底のつま先部分にすべり止めが形成されている。中底と靴下のすべりを適度に調整するために、このすべり止めとパイル地を併用した。
【0017】
[片足が15g未満の軽量である]
片足が15g未満、好ましくは12g未満の軽量である。このように軽量であることは、履いていることを忘れてしまうほどのフィット感をもたらす。商品は、軽くて持ち運びしやすく、例えば、3足持って移動しても、90g未満、好ましくは72g未満である。また、毎日洗うものであるが、乾くのは食事をしている間に乾くほどの速さである。
【0018】
以下、実施例で本発明の詳細を説明するが、本発明はその実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
添付図面に従って一実施例を説明する。
本発明のルームシューズの一例が、
図1には右片足部分の平面図として、
図2には左側面図として示されている。
図3には右片足部分を裏返ししたものが平面図として、
図4には左側面図として、
図5には底面図として示されている。
【0020】
1はルームシューズ、2は甲皮部であり、甲皮部2は、甲皮爪先部2−1、甲皮側辺部2−2、甲皮踵部2−3がすべて伸縮性の高いストレッチ素材の一枚裁断生地で、踵部でオーバーの縫製6により縫い合わせて作られている。オーバーの縫製6により足底部と甲皮部の二枚の生地を縫い合わせており、足に縫い目を感じない縫製仕様となっている。縫い合わせの際につまみ(タグ)4をはさみ込んでいる。生地には、弾性繊維のポリウレタンを使用した組成がナイロン86%、ポリウレタン14%の2WAYトリコットを用いた。甲皮履き口はゴム縁付き履き口2−4とした。
【0021】
床が汚れていたり、濡れていたりする時のために、底に防水機能とすべり止めを兼ねた素材の足底とした。足底部3の底3−1はすべり止め加工が施された防水生地で構成し、オーバーの縫製6により足底部と甲皮部の二枚の生地を縫い合わせて甲皮爪先部2−1、甲皮側辺部2−2、甲皮踵部2−3及び足底部3からなるルームシューズ1を縫い上げた。底3−1は、その防水生地は滑り止め効果もあり、また、汚れてもサッと拭くだけで汚れが落ちやすい。着用時に中底3−2と靴下がすべらないように中底のつま先部分にすべり止め5がすべり止めフィルムを貼付して形成されている。
底3−1の防水生地は滑り止めが良くきくので、中底3−2の上を靴下(足)がつま先の方へすべる感じがする。そのため、中底3−2にも滑り止め5付きとした。すなわち、中底3−2のつま先部分にすべり止めフィルム5を貼り加工する。これにより、靴下の底と中底3−2と底3−1が安定する。さらにその安定性を高めるために中底3−2をパイル地としている。
【0022】
このようにして片足が11gの軽量のルームシューズができあがった。このように軽量であることは、履いていることを忘れてしまうほどのフィット感をもたらし、軽くて持ち運びしやすく、例えば、3足持って移動しても、100g未満である。また、毎日洗うものであるが、乾くのは食事をしている間に乾くほどの速さである。また、
図6〜8に示すように、ルームシューズを脱ぐために、かかとのタグを持ち、つま先に向かって脱ぎ、汚れた底面にさわらずに、また汚れた底が内側にひっくり返る状態で脱ぎ終えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の着脱が簡単な超軽量のルームシューズは、在宅介護ヘルパー向けとして開発したが、その使用態様に限定されず、家庭用を含め広く一般的な使用に向く製品として、年令や性別に関係なく全ての層のユーザーを対象としている。商品デザインについては、甲皮部の2WAYトリコットの生地と底が黒でつまみ部分に印刷を施し、中底に無地(色違い)のパイル地を採用すると、色違いが、履き口(開口部)からは識別されるが履くとわからない(隠れてしまう)さりげないオシャレを演出することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ルームシューズ
2 甲皮部
2−1甲皮爪先部
2−2甲皮側辺部
2−3甲皮踵部
2−4ゴム縁付き履き口
3 足底部
3−1すべり止め加工が施された防水生地の足底
3−2中底
4 つまみ(タグ)
5 すべり止め
6 オーバーの縫製