(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記幹状部及び枝状部の内側に柔軟性を有する芯材が配設された状態において、幹状部及び枝状部の内側と芯材の外周部との間には、芯材の引き抜きを円滑にする材料が介在していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管状モデルの製造方法。
請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の管状モデルの製造方法によって作製され、幹状部及び枝状部が模擬血管であり、中空部の内径寸法が0.1mm〜2.0mmに形成されていること特徴とする血管モデル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような血管モデルを作製する場合、生産性、量産性に劣り、製造コストが高くなり経済的に有利ではないという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、生産性の向上を図ることができるとともに量産性に適し、経済的に有利な管状モデルの製造方法、血管モデル、血管モデルシミュレータ及び成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の管状モデルの製造方法サは、幹状部と、この幹状部から分岐された枝状部とを一体的に有して柔軟性を備えた管状モデルの製造方法であって、
材料の注入により芯材における各枝状部が形成される当該各材料注入空洞部間には切込みが形成されている弾性を有する成形型を用いて成形した柔軟性を有する芯材を用意し、前記幹状部及び枝状部の内側に
前記柔軟性を有する芯材が配設された状態において、芯材を引き抜いて幹状部及び枝状部の内側に連続的に中空部を形成する工程を具備することを特徴とする。
【0009】
管状モデルは、血管モデルが好適であるが、血管モデルに限らない。例えば、流体(液体や気体)の流通状態を実験、試験する流体流通モデル等にも適用できる。
【0010】
また、製造過程において「幹状部及び枝状部の内側に柔軟性を有する芯材が配設された状態」が存在すればよく、この状態に至るまでの加工方法や工程は格別限定されるものではない。
さらに、管状モデル及び芯材の材質は、所定の柔軟性を有していれば特段限定されるものではない。例えば、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等が適用できる。
かかる発明によれば、生産性の向上を図ることができるとともに量産性に適した管状モデルの製造方法を提供できる。
【0011】
請求項2に記載の管状モデルの製造方法は、請求項1に記載の管状モデルの製造方法において、前記芯材には、芯材を引き抜くための掴みしろが形成されていることを特徴とする。
かかる発明によれば、芯材を引き抜くのを容易化できる。
【0012】
請求項3に記載の管状モデルの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の管状モデルの製造方法において、前記幹状部及び枝状部の内側に柔軟性を有する芯材が配設された状態において、幹状部及び枝状部の内側と芯材の外周部との間には、芯材の引き抜きを円滑にする材料が介在していることを特徴とする。
かかる発明によれば、幹状部及び枝状部の内側と芯材の外周部との間の摩擦力を低下させることができ、芯材の引き抜きを円滑に行うことが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の血管モデルは、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の管状モデルの製造方法によって作製され、幹状部及び枝状部が模擬血管であり、中空部の内径寸法が0.1mm〜2.0mmに形成されていること特徴とする。
かかる発明によれば、微細な血管モデルを作製することが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の血管モデルシミュレータは、ベースの血管モデルと、このベースの血管モデルの末梢部に接続された請求項4に記載の血管モデルと、これら血管モデルを支持する支持部材と、を具備することを特徴とする。
かかる発明によれば、カテーテル手技のトレーニングや治療器具としてのカテーテルの性能評価を行うことができる。
【0015】
請求項6に記載の成形型は、前記請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の芯材を作製するための弾性を有する成形型であって、材料の注入により芯材における各枝状部が形成される当該各材料注入空洞部間には切込みが形成されていることを特徴とする。
かかる発明によれば、一体化した成形型によって芯材を作製することが可能となる。
【0016】
請求項7に記載の成形型は、請求項6に記載の成形型において、前記切込みは、材料注入空洞部を形成する原型モデルに設けられた平面状の薄膜部よって形成されることを特徴とする。
かかる発明によれば、切込みの形成が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生産性の向上を図ることができ、経済的に有利な管状モデルの製造方法、血管モデル、血管モデルシミュレータ及び成形型を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る管状モデルの製造方法について
図1乃至
図12を参照して説明する。本実施形態においては管状モデルとして血管モデルの製造方法を示している。
【0020】
図1は、血管モデルの作製プロセスの概念図であり、
図2は、芯材を引き抜く工程を示している。
図3は、血管モデルを示し、
図4は、血管モデルの大きさ、柔軟性を視覚的に表わしている。
図5は、外壁鋳型を示し、
図6は、外壁鋳型の作製プロセスを示している。また、
図7は、内壁鋳型を示し、
図8及び
図9は、内壁鋳型の作製プロセスを示している。
図10及び
図11は、外壁鋳型に内壁鋳型を配置した状態を示し、
図12は、血管モデルの変形例を示している。
【0021】
図1において、血管モデル1、外壁鋳型2、内壁鋳型3及びシリコーン樹脂材料4が示されている。
図1(d)は、血管モデル1の完成品の一例を示しており、血管モデル1は、シリコーン樹脂製であり、具体的にはシリコーンゴムによって作られていて、幹状部11と、この幹状部11から枝分かれ状に分岐した枝状部12とを備えている模擬血管である。
【0022】
これら幹状部11及び枝状部12の内側には、連続して連通するように中空部13が形成されており、血管モデル1は管状の形態をなしている。この中空部13は、血液が流れる血管の内壁を模した部分である。
【0023】
詳しくは、血管モデル1は、幹状部11から枝状部12が二股に分岐されている。また、血管モデル1の構成材料にはシリコーンゴムが用いられていることにより透明で実際の生体における血管に近い柔軟性及び弾力性を有するようになっている。
すなわち、血管モデル1は、高い柔軟性及び弾力性を有し、日本工業規格(JIS K 6235)に準拠したタイプAでの硬度が10度以下となっている。
【0024】
さらに、中空部13の内径寸法は、好ましくは、φ0.1mm〜φ2.0mmの範囲内で形成される。φ0.1mm未満であるとカテーテルの挿入が困難となり、また、φ2.0mmを超えると、後述する作製過程において芯材の引き抜きが困難となる場合が生じるからである。本実施形態においては、これらを考慮して中空部13の内径寸法は、φ0.3mm〜φ1.0mmに設定されている。
このような構成の血管モデル1は、中空部13の内径寸法が微細であり、末梢血管の血管モデルとして適したものとなっている。
【0025】
次に、
図1(a)乃至(d)を参照して血管モデルの作製プロセスの概要について説明する。血管モデル1をモールディングによって作製する工程を示している。
【0026】
図1(a)に示すように、外壁鋳型2と内壁鋳型3が用いられる。外壁鋳型2は、合金製であり、略直方体形状に形成された上鋳型2aと下鋳型2bとからなる上下分割(図示上、左右)鋳型である。この上下分割鋳型の分割面には、それぞれ製品(血管モデル1)の外壁に沿った半分の縦分割形状の材料充填溝部21が形成されている。したがって、上鋳型2aと下鋳型2bとを相互の分割面で合わせると血管モデル1の外壁に沿った空洞部が形成されるようになる。
【0027】
内壁鋳型3は、血管モデル1の内壁、つまり、中空部13を形成するものであり中子であり、いわゆる芯材である。この芯材は、血管モデル1の内側に配設されて、この芯材の除去によって中空部13を形成するものであるため、その外径寸法が中空部13の内径寸法と略等しく、血管モデル1と対応して同様に幹状部31と、この幹状部31から枝分かれ状に分岐した枝状部32とを備えている。
【0028】
芯材は、合成樹脂製であり、所定の柔軟性と引張強度を有しており、ウレタン樹脂を用いて作られている。具体的には、硬度は日本工業規格(JIS K 6235)に準拠したタイプAで100度以下、引張強さは100MPa以上であることが好ましく、本実施形態においては、硬度が90度、引張強さが210MPaのものが用いられている。
【0029】
図1(b)に示すように、上鋳型2aと下鋳型2bとの分割面における材料充填溝部21に所定の粘度を有するシリコーン樹脂材料4を配設する。次いで、内壁鋳型3である芯材を下鋳型2bの材料充填溝部21に合わせて配置し、上鋳型2aと下鋳型2bとの分割面に圧力がかかるようにサンドウィッチ状態で外側から図示矢印で示す方向にプレス力を付与する。
【0030】
この状態においては、芯材は、詳細な構成を省略する位置決め構成によって、外壁鋳型2における空洞部の中心に配置されるようになっており、シリコーン樹脂材料4は芯材の周囲に材料充填溝部21の形状に従って配設される。
【0031】
続いて、シリコーン樹脂材料4に熱を加えて硬化させる。その後、
図1(c)に示すように、血管モデル1の幹状部11及び枝状部12の内側に芯材が配設されている状態において、血管モデル1から芯材を図示矢印で示す方向に引き抜く。この場合、芯材には、幹状部11から外方に突出する掴みしろ33が形成されており、この掴みしろ33を工具等で掴んで芯材を引き抜くことができる。
【0032】
また、この芯材を引き抜く工程は、上記のように血管モデル1が外壁鋳型2によってサンドウィッチ状態になっているときに行うのが好ましいが、血管モデル1を外壁鋳型2から取り出した状態で行うこともできる。
このように芯材を引き抜いて中空部13を形成することにより、
図1(d)に示すように血管モデル1が作製される。
【0033】
次に、上述の芯材を引き抜く工程について
図2を参照して詳細に説明する。
図2(a)乃至(d)は、血管モデル1の幹状部11及び枝状部12の内側に芯材が配設されている状態において、芯材が引き抜かれる過程を経時的に示している。
【0034】
図2(a)は初期段階(第1段階)であり、芯材の掴みしろ33が幹状部11から突出している状態である。この状態から
図2(b)に示すように、掴みしろ33を掴んで図示上、上側に芯材を引っ張る。すると、芯材は、中空部13を移動し、幹状部1からの突出長が長くなるような状態となる。
【0035】
さらに、
図2(c)に示すように、芯材を引っ張る操作を進めると、芯材の幹状部11からの突出長がさらに長くなる。この場合、幹状部11における中空部13には、芯材の2本の枝状部32が通過、すなわち、実質的に径寸法が増大した枝状部32が通過して引き抜かれることとなる。この径寸法の増大は、主として幹状部11の柔軟性及び弾力性、加えて芯材の柔軟性によって吸収され芯材の引き抜きが可能となっている。
そして、
図2(d)に示すように、芯材の引き抜きが完了することにより中空部13が連続的に形成され血管モデル1が作製される。
【0036】
なお、芯材を引き抜く工程において、血管モデル1の内側、すなわち、内壁である中空部13と芯材の外周部との間に、芯材の引き抜きを円滑にする材料、例えば、界面活性剤を介在させるようにしてもよい。幹状部及び枝状部の内側と芯材の外周部との間の摩擦力を低下させることができ、芯材の引き抜きを円滑に行うことが可能となる。
【0037】
さらに、血管モデル1は、CTやMRI等の画像診断装置による個人の人体の撮影画像に基づいて血管を再現することができる。この場合、オーダーメイドで個人に応じた固有の血管モデル1の作製が可能となり、例えば、血管の狭窄状態を再現することも可能となる。
【0038】
以上のように芯材を引き抜くことにより血管モデル1を作製するようにしたので、生産性の向上を図ることができる。また、量産性に適し、実際の生体における血管に近い微細な末梢血管を模した血管モデル1の作製が実現できる。
【0039】
次に、より具体的な血管モデル及びその製造方法について
図3乃至
図11を参照して説明する。なお、上述の血管モデル1及びその製造方法と基本的には同一であり、上述と同一又は相当部分には、同一符号を付し、重複する説明は省略若しくは簡略化する場合がある。
【0040】
図3に示すように血管モデル1は、シリコーン樹脂製であり、幹状部11と、この幹状部11から枝分かれ状に分岐した枝状部12とを備えている。また、一方の枝状部12からはさらに枝分かれ状に分岐した枝状部12aが形成されている。
【0041】
このように幹状部1から分岐した枝状部12、さらに枝状部12から分岐した枝状部12aというように連続して枝状部12a・・・が形成される場合であってもよい。また、幹状部11、枝状部12及び枝状部12aの内側には、連続して連通するように中空部13が形成されている。
【0042】
血管モデル1のサイズは、長さ寸法Lが10mm、拡開する開放端の幅寸法Wが9mmであり、幹状部11の中空部13における端部の内径寸法d
1がφ1.0mm、枝状部12の中空部13における端部の内径寸法d
2がφ0.65mmに形成されている。
【0043】
図4(a)(b)において、血管モデル1の大きさを人の手指との比較において、また、血管モデル1の柔軟性を指で摘んだ状態で視覚的に表わしている。小さなサイズであり、高い柔軟性を有していることが分かる。
【0044】
図5に示すように外壁鋳型2は、上鋳型2aと下鋳型2bとから構成されている。これら上鋳型2aと下鋳型2bの分割面には、材料充填溝部21が形成されていて上鋳型2aと下鋳型2bとを相互の分割面で合わせると血管モデル1の外壁に沿った空洞部が形成されるようになる。
【0045】
また、前記血管モデル1の幹状部11を形成する材料充填溝部21の端部及び枝状部12、12aを形成する材料充填溝部21の端部からは、後述の内壁鋳型3(芯材)に形成されたポールを受ける直線状の受溝22、23が外側に向かって延出して形成されている。
【0046】
このような外壁鋳型2は、
図6に示すように作製される。
図6(a)において、光造形法によって作られた光硬化性樹脂製、例えば、エポキシ樹脂製の樹脂モデル20が示されている。この樹脂モデル20は、外壁鋳型2を作製するための原型モデルであり、血管モデル1の外壁に沿った空洞部が形成されるようになっている。
この樹脂モデル20から耐熱性のシリコーン樹脂等を用いて反転型を作製し、次いで、反転型から
図6(b)に示すように合金製の外壁鋳型2を作製する。
【0047】
図7に示すように内壁鋳型3は、芯材であり、血管モデル1の内側に配設されて、この芯材の除去によって中空部13が形成される。このため芯材は、血管モデル1と対応して同様に、幹状部31と、この幹状部31から分岐した枝状部32、32aとを備えている。
【0048】
また、芯材における幹状部31の端部には、直線状に延出する第1のポール34が形成されている。さらに、枝状部32、32aの各端部には、同様に直線状に延出する第2のポール35が形成されている。これら第1のポール34及び第2のポール35は、芯材を外壁鋳型2に配置した際に位置決め機能を果たすものである。
【0049】
次に、内壁鋳型3(芯材)の作製工程について
図8及び
図9を参照して説明する。まず、
図8(a)に示すように光造形法によって光硬化性樹脂製の樹脂モデル30を作製する。この樹脂モデル30は、芯材を作製するための原型であり、当然のことながら芯材と同様な形状をなしている。また、
図9(a)を併せて参照して示すように芯材の枝状部32、32aと対応する対応部位302、302aの間、第2のポール35と対応する各対応部位304の間、さらに、樹脂モデル30の外周部には、平面状の薄膜部305が形成されている。この薄膜部305は、対応部位302、302a、304の断面中心位置に形成されていて(主として
図9(a)参照)、厚さ寸法は、50μm程度である。
【0050】
次いで、例えば、箱状の枠体の中に樹脂モデル30を配置し、枠体に透明なシリコーン樹脂を注ぎ、硬化させる。その後、
図8(b)に示すように樹脂モデル30が内包された略直方体形状のシリコーン樹脂成形体を枠体から取り出す。
続いて、シリコーン樹脂成形体から樹脂モデル30を取り出し分離する。これにより
図8(c)に示すように弾性を有する成形型5が作製される。
【0051】
なお、樹脂モデル30の取り出しにあたっては、
図8(b)に示す図示上、下側から取り出すことができる。樹脂モデル30の前記薄膜部305によって、シリコーン樹脂成形体は薄膜部305を境として分割されるような状態となっており、加えて、シリコーン樹脂成形体は弾性を有しているため、このシリコーン樹脂成形体の弾性変形を伴って樹脂モデル30を取り出すことができる。
【0052】
図8(c)に示す成形型5には、芯材の外周形状に沿った材料注入空洞部51が形成されている。具体的には、芯材の幹状部31及び枝状部32、32aに対応し、さらに、第1のポール34及び第2のポール35に対応した連続的な材料注入空洞部51が形成されている。
【0053】
また、
図9(b)の参照を加えて示すように、樹脂モデル30における薄膜部305に対応する部分は、分割されたシリコーン樹脂成形体が弾性によって密着するような状態となり、平面状の切込み52が形成されるようになる。
【0054】
つまり、切込み52は、芯材の枝状部32、32aが形成される材料注入空洞部51間、第2のポール35が形成される材料注入空洞部51間及び材料注入空洞部51の外周部に材料注入空洞部51と連続するように形成される。さらに、第2のポール35側の切込み52端部には、取出部53が形成されるようになる。
【0055】
次に、
図8(d)に示すように成形型5によって芯材を作製する。この場合、まず、成形型5の前面側及び背面側から所定のプレス力を加える。次いで、第1のポール34に対応した材料注入空洞部51側から図示しない材料注入口を介して材料注入空洞部51にウレタン樹脂を注入する。このとき、切込み52にはプレス力が加わっているので切込み52を境として対向するシリコーン樹脂成形体の密着性が高まり、切込み52への材料の浸入、すなわち、ウレタン樹脂の浸入を効果的に抑制することができる。
【0056】
ウレタン樹脂の硬化後、ウレタン樹脂(芯材)を成形型5から取り出し、
図8(e)に示すように芯材を作製する。芯材を成形型5から取り出す場合、
図8(d)に示すように第2のポール35側(図示上、下側)から取り出すことができる。成形型5は、弾性を有しており、かつ切込み52が形成されていることから、切込み52に従って取出部53をその弾性によって変形させて広げることが可能であり、拡開した開口とすることができ、この開口から芯材の柔軟性と相俟って、芯材を容易に取り出すことができる。
以上のような成形型5によれば、成形型5は一体化されており、成形型を分割して構成することなく、微細で複雑化した芯材を作製することが可能となる。
【0057】
図10に示すように外壁鋳型2の材料充填溝部21に内壁鋳型3である芯材を配置した状態においては、芯材は第1のポール34及び第2のポール35によって精度よく外壁鋳型2に位置決めされて配置される。
【0058】
詳しくは、
図11の参照を加えて示すように、第1のポール34が外壁鋳型2の受溝22に嵌合し、各第2のポール35が受溝23に嵌合する。
図11は、嵌合状態を第1のポール34について代表して示しており、
図11(a)は、第1のポール34が下鋳型2bの受溝22に嵌合する前の状態、
図11(b)は、第1のポール34が下鋳型2bの受溝22に嵌合した後の状態を示している。
【0059】
図11(b)に示すように下鋳型2bと上鋳型2aとの分割面Dsの略中央に第1のポール34が配置され、また、分割面Dsの略中央に第2のポール35が配置され、芯材は位置決めされるようになる。したがって、芯材における幹状部31及び枝状部32、32aに対応する材料充填溝部21には、幹状部31及び枝状部32、32aの周りに空洞部Cvが形成され、この空洞部Cvにシリコーン樹脂材料が充填され、血管モデル1が形成されるようになる。
【0060】
なお、第1のポール34の先端部は、外壁鋳型2の外方に延出するようになっており、掴みしろ33として機能するようになっている。したがって、第1のポール34は、位置決め及び掴みしろ33としての機能を併せ持っているものである。
【0061】
血管モデル1の作製にあたっては、上述の
図1に示したように、上鋳型2aと下鋳型2bとの分割面における材料充填溝部21にシリコーン樹脂材料を配設し、芯材を下鋳型2bの材料充填溝部21に位置決めして配置し、上鋳型2aと下鋳型2bとを合わせてにプレス力を付与する。
【0062】
そして、シリコーン樹脂材料の硬化後、血管モデル1の幹状部11及び枝状部12、12aの内側に芯材が配設されている状態において、掴みしろ33を工具等で掴んで血管モデル1から芯材を引き抜く。このように芯材を引き抜いて中空部13を形成することにより、
図3に示すように血管モデル1が作製される。
【0063】
以上のように芯材を引き抜くことにより血管モデル1を作製するようにしたので、生産性の向上を図ることができる。また、量産性に適し、微細な末梢血管を模した血管モデル1の作製が可能となる。
続いて、
図12は、血管モデル1の変形例を示している。なお、上述の血管モデル1と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明を省略する。
【0064】
この血管モデル1は、幹状部11から枝分かれ状に多岐に分岐した枝状部12、12aを備えている。このような複雑化した形態であっても血管モデル1の幹状部11及び枝状部12,12aの内側に芯材が配設されている状態において、血管モデル1から芯材を引き抜いて中空部13を形成することが可能である。
【0065】
次に、上記血管モデル1を適用した血管モデルシミュレータの実施形態について
図13を参照して説明する。
図13は、血管モデルシミュレータの平面的な構成図を示している。
【0066】
血管モデルシミュレータ6は、ベースの血管モデル61と、このベースの血管モデル61に接続された上記血管モデル1と、これら血管モデル61及び血管モデル1を支持する支持部材62と、ポンプ63と、このポンプ63を制御する制御ユニット64とを備えている。
【0067】
ベースの血管モデル61は、人体の胸部を中心として構成されたモデルであり、その血管系が3次元的に作られている。この血管モデル61は、シリコーンゴム等の合成樹脂材料から作製されていて、その末梢部には、上記血管モデル1が接続されている。
【0068】
これらベースの血管モデル61及び血管モデル1は、支持部材62によって支持され保持されている。支持部材62は、具体的には、血管モデル1が接続されたベースの血管モデル61を支持しカバーする合成樹脂製の透明のケースであり、中央部Cから左右に開閉可能となっている。なお、血管モデル61及び血管モデル1は、支持部材62に直接的に支持してもよいし、補助部材を介在させて支持するようにしてもよい。さらに、支持部材62は、アルミニウム等の金属材料を用いて形成してもよい。
【0069】
ポンプ63は、血管モデル61及び血管モデル1に擬似血液を流し循環させる機能を有しており、このポンプ63は、ベースの血管モデル61に流通チューブ65を介して連結されている。
【0070】
また、ポンプ63には、拍動ポンプを用いることができる。この場合、血管の脈動を再現することが可能となる。制御ユニット64は、ポンプ63に接続されポンプ63の動作を制御するものであり、その制御により擬似血液の流通速度等を調整する。
【0071】
このような血管モデルシミュレータ6によって、カテーテル手技のトレーニングや治療器具としてのカテーテルの性能評価、具体的にはバルーンやステント等の性能評価、また、手術のリハーサルを行うことができる。
【0072】
例えば、カテーテル手技のトレーニングを行う場合、ベースの血管モデル61に擬似血液を循環させて、カテーテルを血管モデル61内に挿入し、さらに、末梢の血管モデル1まで挿入して、血管モデル1の中空部13を内側からバルーンで押し広げてステントを留置するような治療法のトレーニングを行うことができる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。